JPH0143482Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、内燃機関のピストンに関し、特に、
スカート部の摺動面に係る。

〔従来技術〕

ピストンのスカート部は、ピストンがシリンダ
内を往復運動する際に、ピン孔の軸方向と直交す
る方向のスラスト力を受けつつシリンダボア面と
油膜を介して摺動している。ピストンスカート部
の外周面はピンボス付近を除いたほとんどの面が
ボア面との摺動面となつているため、往復運動の
際に流体潤滑域では、この二面間の潤滑油をせん
断する仕事（油粘度に起因する内部摩擦）が大き
くなる。特に、爆発工程では、スラスト力を受け
るスカート部の摺動面とボア面との間の油膜は小
さくなり、部分的には混合潤滑状態に至る場合も
あり、二面間接触（摩擦係数増大）による摩擦仕
事が大きい。ちなみにガソリンエンジン車の一般
走行時において供給エネルギの５〜10％（図示出
力の20〜30％）が機関の摩擦損失に費やされる。
その摩擦損失のうち約10〜20％がピストン（ピス
トンリングを除く）によるものである。

以上の摩擦損失をできるかぎり少なくするため
に、実開昭56−29246号のように、スカート部外
周の円周方向にテーパー状溝断面を有する複数の
条痕を設けて接触面積を少なくする工夫が成され
ている。しかし、上記の公報中にも述べられてい
るように、単に、接触面積を少なくするだけで
は、面圧が高くなつて油膜の厚さも薄くなり、金
属接触が生じて摩擦力が上昇するという懸念があ
り、シリンダボアに大きな摩耗を併発する恐れが
ある。そして、スカート部の摺動面とボア面との
間にできる油膜が、吸気行程中、燃焼室へ吸出さ
れるオイル上りの現象面から考慮しても、前述の
摩耗は好ましくない。従つて、摩擦損失を少なく
するにあたつては、これまでの点を考慮し、改良
していく必要がある。

〔考案の目的〕

本考案の目的は、スカート部の摺動面に油膜を
保持する機能を与えることとともに、接触面積を
減少させたことによつて、生ずる恐れのある悪影
響を少なくして機関の出力を向上させることにあ
る。

〔考案の構成〕

この目的を、達成するために、本考案のピスト
ンにおいては、支え面をスカート部の円周方向に
連続して形成するとともに、ピストンの運動方向
に沿つた断面が山と谷から成る円弧列の形状を成
すことを特徴とする。

〔考案の作用〕

上記構成により、スカート部摺動面積を大幅に
減少させ、かつ円弧列の谷の部分の油保持性が向
上されることになる。

〔考案の効果〕

上記作用により、支え面とボア面との間は流体
潤滑から境界潤滑に移行しにくくなり、円滑な潤
滑を保つとともに、機関の出力を向上させること
にある。

〔実施例〕

以下、本考案の望ましい実施例を図面に基づい
て説明する。

〔第１実施例〕 第１図の如く、ピストン１はピストンリング装
着溝４を備えたヘツド部２とスカート部３とから
成る。ピストン１のピン孔（図示せず）の軸方向
と直交（図の紙面に垂直な方向）する方向のスラ
スト力を受けるスカート部３の摺動面に、円周方
向に帯状分布した支え面６が複数形成されてい
る。さらに、ピストン１の運動方向に断面を切る
と、第２図の如く、山７と谷８とから成る円弧列
９の形状が示されるように、支え面６はその表面
を円弧状に施されている。ところで、支え面６の
高さHo＝15〜150μm、幅lo＝１〜５mmの範囲と
する。

以下、第１実施例の作用・効果について図面に
基づいて説明する。

支え面６はピストンのスラスト力を受け、かつ
シリンダボア面との摺動領域となる。ここで、摩
擦力をＦ、摩擦係数をμ、粘度をη、スラスト力
をＰ、油膜厚さをｈ、摺動速度をＶ、摺動面積を
Ａ、スラスト面圧をｐ（＝Ｐ／Ａ）とすると、 Ｆ∝（η・Ｖ・Ａ）／ｈ μ∝（η・Ｖ・Ａ）／（Ph） あるいは （η・Ｖ）／（ph） となる関係が示される。円弧列の谷８の部分では
潤滑油保持性が高いため、面圧ｐが高くなつても
油膜が破壊されにくく油膜厚さｈをほぼ一定に保
てる。従つて、摺動面積Ａを小さくすることおよ
び面圧ｐの増大によつて、摩擦力Ｆと摩擦係数μ
を小さくする効果が大きく現われる。

以上のように、スカート部３の摺動面とボア面
との間の潤滑油保持能力が向上するので、摩擦
力、摩擦係数が減少する。この結果、機関の摩擦
損失を大きく減らすことができる（全装備摩擦損
失が４〜10％減）。これに伴つて、燃費が改善さ
れ（２〜４％）、NOxが低減されてガスの適合が
容易となり、さらに機関の信頼性、寿命が向上す
る。

〔第２実施例〕 第３図に示す如く、ピストン１の運動方向に切
つた断面において、円弧列１０の谷１１の部分が
平面底をしている。これにより、潤滑油を保持す
る量を増す効果を有する。

〔第３実施例〕 第４図に示す如く、円弧列を成す低摩擦材１２
をピストン１に嵌合または鋳込むことにより、ス
カート部３に円弧列９を形成してものである。ピ
ストン１と材質を変えることで、摺動摩擦抵抗の
低減をいつそう図つている。

〔第４実施例〕 第５図に示す如く、第２実施例のような円弧列
１０のタイプに対しては、円弧状の低摩擦材１４
が個々に嵌合または鋳込まれている。

〔第５実施例〕 第６図に示す如く、ピストン２１はスカート部
２３の表面に支え面２６を螺旋状に形成されてい
る。そして、第２図ないし第５図に示すような円
弧列が設けられる。

最後に、上記実施例の効果をより明瞭にするた
めに、実験データを第７図に示す。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の第１実施例によるピストン
の正面図、第２図は、第１図のピストンのスカー
ト部の表面を示す部分断面図、第３図は、本考案
の第２実施例によるピストンのスカート部の表面
を示す部分断面図、第４図は、本考案の第３実施
例によるピストンのスカート部の表面を示す部分
断面図、第５図は、本考案の第４実施例によるピ
ストンのスカート部の表面を示す部分断面図、第
６図は、本考案の第５実施例によるピストンの正
面図、第７図は、本実施例の実験データ図であ
る。 １，２１……ピストン、３，２３……スカート
部、６，２６……支え面、９，１０……円弧列。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピン孔の軸方向と直交する方向のスラスト力を
   受けるスカート部の摺動面に台地状の支え面を形
   成したピストンにおいて、前記支え面を前記スカ
   ート部の円周方向に連続して形成するとともに、
   ピストンの運動方向に沿つた断面が山と谷から成
   る円弧列の形状を平行または螺旋状に成すことを
   特徴とするピストン。