JPH0143483Y2

JPH0143483Y2 -

Info

Publication number: JPH0143483Y2
Application number: JP1984076070U
Authority: JP
Priority date: 1984-05-24
Filing date: 1984-05-24
Publication date: 1989-12-18
Also published as: JPS60188851U

Description

【考案の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本考案は、内然機関のピストンに関し、特に、
スカート部の摺動面に係る。

〔従来技術〕

ピストンのスカート部は、ピストンがシリンダ
内を往復運動する際に、ピン孔の軸方向と直交す
る方向のスラスト力を受けつつシリンダボア面と
油膜を介して摺動している。ピストンスカート部
の外周面はピンボス付近を除いたほとんどの面が
ボア面との摺動面となつているため、往復運動の
際に流体潤滑域では、この二面間の潤滑油をせん
断する仕事（油粘度に起因する内部摩擦）が大き
くなる。特に、爆発工程では、スラスト力を受け
るスカート部の摺動面とボア面との間の油膜は小
さくなり、部分的には混合潤滑状態に至る場合も
あり、二面間接触（摩擦係数増大）による摩擦仕
事が大きい。ちなみにガソリンエンジン車の一般
走行時において供給エネルギの５〜10％（図示出
力の20〜30％）が機関の摩擦損失に費やされる。
その摩擦損失のうち約10〜20％がピストン（ピス
トンリングを除く）によるものである。

以上の摩擦損失をできるかぎり少なくするため
に、特開昭58−38357号のように、スラスト力を
受けるスカート部の摺動面に台地状の支え面を設
けて接触面積を少なくする工夫が成されている。
しかし、上記の公報中にも述べられているよう
に、単に、接触面積を少なくするだけでは、面圧
が高くなつて油膜の厚さも薄くなり、金属接触が
生じて摩擦力が上昇するという懸念があり、シリ
ンダボアに大きな摩耗を併発する恐れがある。そ
して、スカート部の摺動面とボア面と、の間にで
きる油膜が、吸気行程中、燃焼室へ吸出されるオ
イル上りの現象面から考慮しても、前述の摩耗は
好ましくない。従つて、摩擦損失を少なくするに
あたつては、これまでの点を考慮し、改良してい
く必要がある。

〔考案の目的〕

本考案の目的は、スカート部の摺動面に油膜を
保持する機能を与えることとともに、接触面積を
減少させたことによつて、生ずる恐れのある悪影
響を少なくして機関の出力を向上させることにあ
る。

〔考案の構成〕

この目的を、達成するために、本考案のピスト
ンにおいては、スカート部の摺動面に条痕を施
し、その条痕に起伏を設け条痕面の一部の領域が
台地状の支え面を形成したことを特徴とする。

〔考案の作用〕

上記構成により、支え面周辺の領域を含むスカ
ート部の摺動面に施された条痕が油膜を保持する
ことになる。

〔考案の効果〕

上記作用により、支え面とボア面との間は流体
潤滑から境界潤滑に移行しにくくなり、円滑な潤
滑を保つとともに、機関の出力を向上させること
にある。

〔実施例〕

以下、本考案の望ましい実施例を図面に基づい
て説明する。

〔第１実施例〕第１図の如く、ピストン１はピストンリング装
着溝４を備えたヘツド部２とスカート部３とから
成る。ピストン１のピン孔５の軸方向と直交（図
の紙面に垂直な方向）するスラスト力を受ける方
向のスカート部３の摺動面に条痕が施され、条痕
の起伏によつて条痕面の一部領域が矩形型をした
台地状の支え面６，７としてそれぞれ一対づつ設
けられている（ただし、図面には片側のみしか現
われていない。）支え面６は、スカート部３の上
側に形成されており、ピン孔５のボスの近傍に向
かつて円周方向に溝４に沿つて延びている。支え
面７は、スカート部３の下側に形成されており、
円周方向に延びている。次に、支え面６，７の起
伏形状を明らかにするために断面線の方向に比較
して半径方向の比率を大きくした拡大図を第２図
に示す。ここで、第１図の−断面におけるａ
〜ｇまでの各点が第２図のａ〜ｇに相当する。そ
して、第２図に示されるように、スカート部３の
摺動面には、円周方向に沿つて細い条痕９が施さ
れている。条痕９は第３図のａ，ｂ，ｃの拡大図
に示されるように幅Ｈ＝100〜500μm、深さｌ＝
５〜20μmの範囲とする。ここで、第３図ａは条
痕９の溝を円弧形状としたものであり、第３図ｂ
は条痕９の溝をＶ字型とし、第３図ｃは条痕９の
頂部９ａを平坦にしたものである。

次に、台地状の支え面６，７は、平坦部ｂ，ｆ
と、傾斜部ａ，ｃ，ｅ，ｇとから成り、平坦部
ｂ，ｆと傾斜部ａ，ｃ，ｅ，ｇそしてスカート底
面ｄは、それぞれ滑らかに接続している。ここ
で、平坦部ｂ，ｆとスカート底面ｄとの起伏は15
〜150μmの範囲とし、傾斜部ａ，ｃ，ｅ，ｇの傾
斜角を3゜以内としている。

以下、第１実施例の作用・効果について図面に
基づいて説明する。

支え面６，７の平坦部ｂ，ｆがスラスト力を受
ける方向の摺動領域となり、シリンダボア面と接
触する。ここで、摩擦力をＦ、摩擦係数をμ、粘
度をη、スラスト力をＰ、油膜厚さをｈ、摺動速
度をＶ摺動面積をＡ、スラスト面圧をｐ（＝Ｐ／
Ａ）とすると、Ｆ∝（η・Ｖ・Ａ）／ｈ μ∝（η・Ｖ・Ａ）／（Ph）あるいは、（η・Ｖ）／（ph）となる関係が示される。従つて、摺動面積Ａを小
さくすることおよび面圧ｐの増大によつて、摩擦
力Ｆと摩擦係数μを小さくする効果が大きく現わ
れる。ここで条痕９が油膜を保持しやすい形状で
設けられているため、面圧ｐが高くなつても油膜
厚さｈの減少を抑制することができ、流体潤滑状
態が確保できる。

以上のように、スカート部３の摺動面とボア面
との間の潤滑油保持能力が向上するので、摩擦
力、摩擦係数が減少する。この結果、機関の摩擦
損失を大きく減らすことができる（全装備摩擦損
失が５〜10％減）。これに伴つて、燃費が改善さ
れ（２〜４％）、NOxが低減されて排気ガスエミ
ツシヨンの適合が容易となり、さらに機関の信頼
性、寿命が向上する。

〔第２実施例〕第４図に示す如く、第１実施例と異なるところ
は、条痕の起伏によつて形成される支え面１０，
１１のうち支え面１０を長円状にしたところであ
る。条痕の起伏位置をずらすことによつて支え面
１０にＲを施すことにより、支え面１０とスカー
ト部３とが接続する裾に沿つて、潤滑油が溝４に
進むのを困難にしている。これによりオイル上り
をできるだけ少なくすることを狙つたものであ
る。また、支え面１０，１１の両方を長円状にし
ても同じである。

〔第３実施例〕第５図に示す如く、第１実施例の条痕の起伏に
よつて形成される支え面６に変わり、スラスト力
が強くかかる中央部に切欠き１３を設けた条痕の
起伏によつて形成される支え面１２を形成してい
る。これにより摺動面積をさらに小さくして、摩
擦損失の減少効果を大きくすることが狙いであ
る。

〔第４実施例〕第６図に示す如く、条痕の起伏によつて形成さ
れる支え面１４，１５を第３実施例の支え面１２
と同形状にしたものである。第３実施例と比較し
てスラスト力の最もかかる中央部の摺動面積を小
さくし、他の部分で摺動面積を大きく採つてい
る。これにより、摩擦損失の低減効果を落とさず
に、ボア面へのあたりを緩和することが狙いであ
る。

〔第５実施例〕第６図に示す如く、条痕の起伏によつて形成さ
れる支え面１６をＴの字にして、スラスト力の強
くかかる部分の摺動面積を増している。これによ
りボア面の損傷防止を図るとともに、摩耗により
オイル消費が増えるのを抑えることを狙つてい
る。

最後に、上記各実施例の効果をより明瞭にする
ために、実験データを第７図に示す。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案の第１実施例によるピストン
の正面図、第２図は、ピストン表面を示す拡大
図、第３図は、ピストンに施された条痕の拡大
図、第４図は、本考案の第２実施例によるピスト
ンの正面図、第５図は、本考案の第３実施例によ
るピストンの正面図、第６図は、本考案の第４実
施例によるピストンの正面図、第７図は、本考案
の第５実施例によるピストンの正面図、第８図
は、本実施例の実験データ図である。１……ピストン、３……スカート部、６，７，
１０，１２，１４，１５，１６……条痕の起伏に
より形成される支え面、９……条痕。

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

ピン孔の軸方向と直交する方向のスラスト力を
受けるスカート部に条痕を施したピストンにおい
て、前記条痕に起伏を設け条痕面の一部の領域が
前記スラスト力を支持する台地状の支え面を形成
したことを特徴とするピストン。