JPS6029656Y2 - 内燃機関のピストン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は、内燃機関のピストンに係るものである。

〔従来技術〕

第１図に示すような内燃機関のピストン１において、ピ
ストンリング２を装着するための従来のリング溝４は、
第２図ａに示すようにピストン１の熱変形を考慮してピ
ストン１の軸線Ｘ−Ｘに直角に交差するＹ−Ｙ方向の面
に対し約５′程度の上向き角度に傾斜する傾斜溝４に形
成されており、この上向き方向に傾斜する傾斜溝４には
、ピストン１の軸線Ｘ−Ｘに直角に交差するＹ−Ｙ方向
に上下面を有するピストンリング２を装着するようにな
っている。

しかしながら、内燃機関の爆発行程では、最も高くなる
シリンダ内圧が、ピストンリング２に背圧となって作用
するため、ピストンリング２は、下面が第２図ａに示す
ように上向きに傾斜するリング溝４の下面に押圧され、
その外周面がシリンダライナ３全面に全面接触する形状
となり、運転時間の経過とともに上向き状態のピストン
リング２は、その外周面がシリンダライナ３面に沿う形
状に摩耗する傾向となる。

そして、この摩耗中には、ピストン１の熱変形に伴うリ
ング溝４位置のの変形により、予め上向き角度に設定さ
れたピストンリング２を、さらに第３図ａのようにシリ
ンダライナ３面に直角となる方向に摩耗させる摩耗が加
算され、このピストンリング２の外周面は、主としてシ
リンダライナ３面に直角となる方向に摩耗する傾向とな
る。

したがって、従来の予め上向き角度に設定されたピスト
ンリング２にあっては、ピストンリング２の外周面は、
第３図ａのようにシリンダライナ３面に直角となる状態
に摩耗して、シリンダライナ３面に全面接触する状態と
なるため、シリンダ内圧が低下してピストンリング２を
リング溝４の下面に押圧する作用が無くなる内燃機関の
排気行程では、水平姿勢に復元したピストンリング２が
シリンダライナ３面を第３図すのような全面接触状態で
上昇することになり、このピストン１が上昇する排気工
程では、全面接触するピストンリング２がシリンダライ
ナ３面の油膜を掻き上げながら上昇するので、油膜上げ
量が多くなるという欠点がある。

また、吸入行程では、シリンダ内圧も低く、ピストン１
が下降行程にあるため、水平姿勢に復元したピストンリ
ング２は、第３図すのように面圧の低い全面接触状態で
下降し、シリンダライナ３１面に残る油膜が厚くなるい
う欠点がある。

さらに圧縮行程では、排気行程と同様に全面接触するピ
ストンリング２がシリンダライナ３面の油膜を掻き上げ
ながら上昇するので、油膜上げ量が多くなるという欠点
がある。

また、直噴式深皿アルミピストン等では、冷却効果の大
小により幾分異なるも熱変形は角度で約１０′以上とな
るが、この種のピストンに上向き角度約５′程度で傾斜
する傾斜溝４を形成した際には、爆発行程におけるピス
トン１の熱変形中に伴うピストンリング２の変位中に、
ピストンリング２がシリンダライナ３面に一旦は直角に
なる位置を経過するため、ピストンリング２の外周面は
シリンダライナ３面に対し直角方向で全面接触する状態
に摩耗する傾向となり、長機間にわたって潤滑油の消費
量を少なくすることができないという欠点があった。

〔考案の目的〕

本考案は上述した従来の実情に鑑み、それらの欠点を解
消すべく創案されたものであって、潤滑油消費量の少な
い内燃機関のピストンを提供することを目的とするもの
である。

〔考案の構成〕

上記目的を達成する本考案による内燃機関のピストンは
、ピストンの軸線に対し直角に交差する面方向に上下面
を有するピストンリングを装着するリング溝を、ピスト
ンの軸線に直角に交差する面に対し下向き角度に傾斜す
る少なくとも下面を有する傾斜溝に構成したことを特徴
とするものである。

〔実施例〕

以下、本考案を一実施例として示す第４図〜第６図につ
いて説明する。

本考案にあっては、ピストンの軸線Ｘ−Ｘに対し直角に
交差するＹ−Ｙ方向の面に上下面を有するピストンリン
グ２を装着するリング溝４を、ピストンの軸線Ｘ−Ｘに
直角に交差するＹ−Ｙ方向の面に対し下向き角度で最大
１０′に傾斜する少なくとも下面を有する傾斜溝に構成
したものである。

つまり、第４図ａに示すリング溝４は、第５図に示すよ
うに上面の傾斜角θ１と下面の傾斜角θ２とはθ１＝０
２となるようになっているが、ピストンリング２が第４
図すのようにシリンダ内圧が低くなって水平状態に復元
するピストン１の吸気行程では、リング溝４の上面での
シール効果を良くするため、第６図に示す本考案の実施
例２のようにリング溝４の上面のみの傾斜角θ１は、０
′または下面の傾斜角θ２よりも小さくすることもでき
る。

このように、少なくともリング溝４の下面が下向き角度
で最大１０′傾斜するリング溝４に、ピストンリング２
を装着するようにした本考案にあっては、シリンダ内圧
が最も高くなる内燃機関の爆発行程では、第４図ａのよ
うにピストンリング２は、その下面が下向きに傾斜する
リング溝４の下面に押圧され、その外周面がシリンダラ
イナ３面に全面接触することになる。

この下向き角度で全面接触するピストンリング２の外周
面は、運転時間の経過に伴ってシリンダライナ３全面に
沿って摩耗し、ピストンリング２の外周には、下面側が
鋭角となるテーパ一部が形成されることになる。

そして、シリンダ内圧が低くピストンリング２をリング
溝４の下面に押圧する作用が無くなって水平姿勢に復元
したピストンリング２のテーパ一部には、第４図すのよ
うに下面側のみがシリンダライナ３面に線接触する線接
触部が形成されると共に、上面側にシリンダライナ３面
に接触しない隙間部が形成されることになる。

ピストン１が上昇する排気行程では、水平方向に復元し
たピストンリング２の線接触部が上昇側後位となるため
、シリンダライナ３面の油はがピストンリング２の上昇
側前位となる隙間部から入り込み、後位となったピスト
ンリング２の線接触部を、シリンダライナ３面から引き
離す方向に作用し、ピストンリング２の線接触部はシリ
ンダライナ３面の油膜上を通過しながら上昇するので、
上昇時における油膜げ量を少なくすることができる。

これにより従来の全面接触するピストンリング２のよう
に、上昇時に油膜上げ量が多くなるという欠点を解消す
ることができる。

また、吸入行程にあっては、シリンダ内圧も低くピスト
ン１が下降行程にあるため、ピストンリング２は、その
上面がリング溝４の上面に接当して下降する第４図すの
姿勢で線接触部が下降側前位となって下降し、この線接
触部は、シリンダライナ３面に対し面圧が高い線接触状
態で下降するため、シリンダライナ３面に残る油膜を薄
くすることができる。

これによって、従来のピストンリング２のように、吸入
行程では、シリンダライナ３面に残る油膜が厚くなると
いう欠点を解消することができる。

さらに圧縮行程おいては、排気工程と同様に、シリンダ
ライナ３面の油がピストンリング２の上昇側前位にある
隙間部に入り込み、ピストンリング２の上昇側後位の線
接触部を、シリンダライナ３面から引き離す方向に作用
するので、ピストンリング２の線接触部はシリンダライ
ナ３面の油膜上を通過しながら上昇し、上昇時の油膜上
げ量を少なくすることができ、これにより従来のピスト
ンリング２のように、上昇時にはシリンダライナ３面の
油膜を掻き上げながら上昇し、油膜土量が多くなるとい
う欠点を解消することができる。

つまり、本考案にあっては、内燃機関の爆発行程におい
て、ピストンリング２の下面を、ピストン１の軸線Ｘ−
Ｘに直角に交差するＹ−Ｙ方向の面よりも下向き角度に
傾斜するリング溝４の下面に押圧させることにより、水
平状態に復元したピストンリング２の外周テーパ一部に
は、下面側の線接触部と上面側の隙間部とを形成するこ
とができる。

そして、この線接触部と隙間部とにより、ピストン１が
下降する吸入行程では、シリンダライナ３面に残る油膜
を少なくできることと、またピストン１が上昇する圧縮
・排気工程では、シリンダライナ３面の油膜を掻き上げ
るという油膜土量を少なくすることができる。

また、爆発動程におけるピストンリング２は、当初から
ピストン１の軸線Ｘ−Ｘに直角に交差するＹ−Ｙ方向の
面よりも下向き角度となるように設定されており、従来
の予め上向き傾斜に設定されたピストンリング２のよう
に、ピストン１の熱変形量に伴って一旦はシリンダライ
ナ３に対し直角方向に規制されるという直角方向への規
制工程を経過しないため、従来のようにピストンリング
４の外周面がシリンダライナ３の面に対して全面接触す
る状態に摩耗することがなく、線接触部と隙間部とを維
持することができるので、潤滑油の消費量を長期間にわ
たって少なくすることができる。

〔考案の効果〕

これを要するに本考案による内燃機関のピストンは、ピ
ストンの軸線に対し直角に交差する面方向に上下面を有
するピストンリングを装着するリング溝を、ピストンの
軸線に直角に交差する面に対し下向き角度に傾斜する少
なくとも下面を有する傾斜溝に構成したが故に、爆発行
程においてピストンリングの下面を、ピストンの軸線に
直角に交差する面に対し下向き角度のリング溝下面に押
圧することにより、水平状態に復元したピストンリング
の外周を、下面側の線接触部と上面側の隙間部とを有す
るテーパ一部に形成することができる。

このピストンリングの外周テーパ一部に形成される線接
触部と隙間部とにより、ピストンが下降する吸入行程で
は、シリンダライナ面に残る油膜を少な（できることと
、またピストンが上昇する圧縮・排気行程では、シリン
ダライナ面の油膜を掻き上げるという油膜土量を少なく
することができることとが相俟って、潤滑油の消費量を
少なくすることができる。

しかも、爆発行程におけるピストンリングは、当初より
ピストンの軸線に直角に交差する方向の面よりも下向き
角度のリング溝下面によって規制され、従来の予め上向
き傾斜に設定されたピストンリングのように、ピストン
の熱変形量に伴って一旦はシリンダライナに対し直角方
向に規制されるという直角方向への規制行程を経過しな
いため、本考案にあっては、ピストンリングの外周側が
シリンダライナ３の面に対して全面接触する状態に摩耗
することがなく、潤滑油の消費量を長期間にわたって少
なくすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は従来例を示すものであって、第１図は
ピストンの一部を断面して示す側面図、第２図ａおよび
第２図すはリング溝とピストンリングとを拡大して示す
側面断面図、第３図ａおよび第３図すは第２図ａ・第２
図すの運転時間経過時の状態を示す側面断面図である。 第４図〜第６図は本考案の実施例を示すものであって、
第４図ａおよび第４図すはリング溝とピストンリングと
を拡大して示す側面断面図、第５図は第４図ａのリング
溝のみを示す側面断面図、第６図は実施例２におけるリ
ング溝とピストンリングとを拡大して示す側面断面図で
ある。 １・・・・・ゼストン、２・・・・・ピストンリング、
３・・・・・・シリンダライナ、４・・・・・・リング
溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンの軸線に対し直角に交差する面方向に上下面を
   有するピストンリングを装着するリング溝を、ピストン
   の軸線に直角に交差する面に対し下向き角度に傾斜する
   少なくとも下面を有する傾斜溝に構成したことを特徴と
   する内燃機関のピストン。