JPS6327457B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は熱可塑性合成繊維マルチフイラメント
糸から成り、製編織した場合ドレープ性に富み且
つソフトなシヤリ味を呈し、外観はかすり調効果
を有した編織物が得られるフアンシー調の特殊加
工糸の製造方法に関するものである。 近年、フイラメント糸使用の衣料製品に対する
要求は機能性のみならず触感，外観的にも高級多
様化し、特に高級感要素としてドレープ性，ソフ
トなシヤリ味のある手触り感と自然な外観が強く
求められてきた。 従来からドレープ性とシヤリ感を有する製品を
得る手段として強撚糸が用いられて来た。しかし
ながらこれらの強撚糸は通常2000〜3000T／Ｍの
実撚を必要とするため生産性が極度に低く、この
ために加工コストも高くつくという欠点を有して
いた。更に触感的にもフイラメント原糸に強撚を
加えただけのものであるから、撚による凹凸のみ
のシヤリ感であり、また外観的にもフイラメント
糸特有の均斉さを有し、十分満足しうるものでは
ない。従つて糸条長手方向に微妙な見掛繊度変化
を有した天然繊維風の、より自然味を有した糸条
であつて且つ前記した風合いを兼ね備えた糸条の
出現が強く望まれている。 本発明は従来の強撚糸では得られなかつたソフ
トなシヤリ感を有し、且つドレープ性のある布帛
に製編織することのできる糸条であつて、外観は
長手方向に強撚部と嵩高部を交互に有した自然味
にあふれたフアンシー調特殊加工糸を従来の強撚
糸より高い生産性で製造できるフアンシー調特殊
加工糸の製造方法を提供することを目的とするも
のであり、次の構成を有する。 すなわち、本発明は、熱可塑性合成繊維に軟化
点以上融点以下の温度で、かつ15％以上のオーバ
ーフイード率で仮撚加工を施してＳ・Ｚ交互撚糸
となし、次いで該交互撚糸に前記仮撚加撚方向と
同方向の追撚を施して、糸条の長手方向に融着緊
束状態の強撚部分Ａと、無撚に近い状態でふくら
みを持つた捲縮形態の嵩高部分Ｂとを交互に形成
し、かつ前記強撚部分Ａおよび嵩高部分Ｂのいず
れにも10mm以上の長さの部分を存在させることを
特徴とするフアンシー調特殊加工糸の製造方法を
要旨とするものである。 以下、本発明について、詳細に説明する。 本発明では、まず熱可塑性合成繊維に軟化点以
上融点以下の温度で、かつ15％以上のオーバーフ
イード率で仮撚加工を施してＳ・Ｚ交互撚糸を得
る。Ｓ・Ｚの交互撚を有する仮撚加工糸とは、第
１図に示すごとく仮撚加撚方向の撚を有する加撚
集束部１と仮撚加撚方向と逆の撚を有する解撚集
束部２とを交互に有し、前記加撚集束部１は強固
に融着緊束されて見かけが細く、また解撚集束部
２はほとんどの単フイラメント糸が融着されるこ
となく仮撚加撚が解撚されて捲縮が付与されて、
更にオーバー解撚されたものであるため見かけが
太く嵩高であり、且つ該加撚集束部１と解撚集束
部２の長さがそれぞれ10mm以上のものが存在して
いるものをいう。 本発明では、前記の仮撚加工で得られたＳ・Ｚ
の交互撚糸を有する仮撚加工糸に仮撚加撚方向と
同方向の追撚を、仮撚加撚方向の撚を有する部分
は融着緊束状態のままとなし、仮撚解撚方向の撚
を有する部分のみの撚を解くように選択的に施し
てフアンシー調特殊加工糸を得る。 本発明で得られるフアンシー調特殊加工糸は、
第２図に示すごとく融着緊束状態の強撚部分Ａと
ふくらみを持つた捲縮形態の嵩高部分Ｂとを糸条
の長手方向に交互に有することであつて、該フア
ンシー調特殊加工糸の製造原理はＳ・Ｚの交互撚
を有する仮撚加工糸の持つ特殊な撚構成を巧みに
応用したものである。 本発明において、追撚に供する仮撚加工糸の
Ｓ・Ｚの交互撚を詳しく観察すると、該仮撚加工
糸の仮撚加撚方向と同方向の撚を有した加撚集束
部１はフイラメント間融着して見かけ上細くなつ
ており、１ｍ当りの実測撚数は仮撚加撚数と同程
度、もしくはやや多く観察される。また、該仮撚
加工糸の仮撚加撚方向とは逆の撚を有する解撚集
束部２はほとんどの単フイラメント糸が融着され
ることなく嵩高であり、１ｍ当りの実測撚数は仮
撚加撚数の1/4〜3/4程度である。 上記のごとき撚数構成を持つ該仮撚加工糸に仮
撚加撚方向と同方向の追撚を施すと、仮撚加撚方
向と同方向の撚を有する加撚集束部１には、実質
上その繊度が許容する限界撚数が存在している
が、追撚作用の張力によつて該仮撚加工糸の糸長
が長くなりわずかに追撚が施される。従つて加撚
集束部１は融着緊束状態が解繊されることなく強
撚されたままの状態であり、シヤリ感を呈する糸
条形態の強撚部分Ａとなる。また、仮撚加撚方向
とは逆の撚を有する解撚集束部２は、加撚集束部
１に比べ融化が進んでなく柔かいために、優先的
に追撚が施されて撚がもどされ、嵩高を一層増し
てふくらみのある捲縮形態の嵩高部分Ｂとなる。 本発明において、仮撚加撚方向と同方向に追撚
することは、前記加撚集束部１と解撚集束部２の
両当該部分の性質を有効に発揮するため必須の要
件であり、必要な追撚数は従来の強撚糸に必要な
追撚数に比べはるかに低い撚数で初期の目的を達
成でき、また、強撚糸には不可欠のビリ防止に必
要なスチームセツトなどの対策を必要とせずに製
編織ができる。 また、追撚に供する前記Ｓ・Ｚ交互撚を有する
仮撚加工糸の加撚集束部１、解撚集束部２の個々
の長さは10mm以上の長さが存在することが必要で
あり、当該部が10mm以上の長さがなければ、なん
ら有効な強撚調風合を呈する効果は得られない
し、かすり調の表面効果も発揮できない。望まし
くは20〜200mmの範囲の長さのものが大半であつ
て且つランダムに現われることが最も有効であ
る。 さらに追撚に供する。Ｓ・Ｚの交互撚を有する
仮撚加工糸を得るには、従来の仮撚加工条件に比
べ通常採用されることのないきわめて高温、且つ
高オーバーフイード下で仮撚加工を行うことが必
要条件であつて、15％以上の高オーバーフイード
率で熱可塑性合成繊維マルチフイラメント糸を仮
撚域に供給し、該糸条の軟化点近傍から融点以下
の温度において仮撚加工することによつて得られ
る。仮撚ゾーンのオーバーフイード率を15％以下
にした通常の仮撚条件において、ヒーター温度の
みを高温にして得られるＳ・Ｚの交互撚を有した
仮撚加工糸の場合は、加撚集束部と解撚集束部の
融着の程度が概略同程度となり、また当該部分を
それぞれ10mm以上の長さとすることはできない。
なお本発明において、該仮撚加工糸のトルクが強
く、追撚工程においてビリ混入が懸念される場合
などには必要に応じて弛緩熱処理を施してもよ
い。 また、本発明において、適宜仮撚条件および追
撚条件を選定することによつて様々の効果を発揮
する糸条を得ることが可能である。すなわちＳ・
Ｚの交互撚を有する仮撚加工糸を得るに際し、高
オーバーフイードで仮撚加工することによつて長
手方向に融着程度の不均一化が進み、加撚集束部
１をより細くした融着部となし、更に触撚集束部
２をより嵩高化した非融着部と成すことができ
る。また高オーバーフイードで仮撚加工すること
は解撚集束部２を長くすると同時に、加撚集束部
１も同様長くする。更にまたヒーター温度の高温
化は加撚集束部１を長くする。なお加撚集束部１
の長さがほぼ強撚部分Ａの長さとなり、解撚集束
部２の長さが嵩高部分Ｂの長さを決定することと
なる。 すなわち、仮撚オーバーフイード率を高くする
と、加撚集束部と解撚集束部との融着程度が異な
つてくるが、仮撚オーバーフイード率が15％以上
になるとこの差が顕著になり、本発明の追撚操作
が有効になる。 また、仮撚温度は、熱可塑性合成繊維の軟化点
以上融点以下の範囲に設定するが、加撚集束部と
解撚集束部の融着程度により、前記範囲でさらに
温度を特定すべきものであり、この温度は、使用
する熱可塑性合成繊維の配向度、結晶化度、加撚
加熱中の張力等により、適宜変更しなければなら
ない。具体的には、加撚集束部と解撚集束部の断
面写真により判断する（加撚集束部と解撚集束部
における、構成フイラメントの一部でも接着して
いるフイラメント本数の比が10：１より大きく開
いており、かつ加撚集束部で接着しているフイラ
メント本数が構成フイラメントの30％以上存在す
る温度を選定する）か、あるいは実際に追撚操作
を施し、解撚集束部を選択的に追撚できるＳ・Ｚ
交互撚糸となしうる温度を選定するものである。 追撚数はＳ・Ｚの交互撚を有する仮撚加工糸の
実存撚数に対応するものであつて、多すぎても少
なすぎても効果を有効に発揮できない関係にあ
る。すなわち仮撚加工糸の加撚集束部１に残存し
た撚数と解撚集束部２に残存した撚数とは全体的
には同数であるが、前記したように加撚集束部１
の長さは、仮撚条件によつて異なるが、いずれも
解撚集束部２に比べ短かく、このために局部的に
見ると解撚集束部２の単位長さ当りの撚数が少な
く嵩高化されている。本発明で得られるフアンシ
ー調特殊加工糸の嵩高部分Ｂの無撚に近い状態と
は全く撚が無いという状態を指すものではなく、
実質上嵩高捲縮状態であれば本発明の意図する形
態となる。従つて本発明の意図する強撚部分Ａと
嵩高部分Ｂを発現させるためには、本発明者等の
実験によれば極く低い撚数（100T／Ｍ以上）で
も嵩高部分Ｂの発現が認められる。このことは、
本来追撚した撚は細い部分に優先的に加撚される
が、加撚集束部１が融着緊束し硬化状態にあるた
めに、比較的柔化した解撚集束部２の解撚撚とし
て追撚数の大半が働らくことによるものと推察さ
れる。また加撚集束部１は融着緊束状態のまま仮
撚加撚が存続し強撚調を呈するのである。解撚集
束部２における嵩高の発現は前記のごとく極く低
い撚数から認められるが、追撚数の決定は糸条全
体のトルクが安定する撚数とすることが好まし
い。実験の結果から仮撚加撚数をＴ（Ｔ／Ｍ）と
すると、追撚数Ｓ（Ｔ／Ｍ）はＴ／20≦Ｓ≦Ｔ／
２が適当であり、好ましくはＴ／10≦Ｓ＜Ｔ／２
の追撚数を採用すれば良い。 また、本発明で得られるフアンシー調特殊加工
糸を製編織して得られた製品に、よりすぐれたド
レープ性を付与し、ソフトなシヤリ感を顕著にす
るためには、用いる糸条の単フイラメント繊度の
小さいものを使用する方が良く、単糸繊度５デニ
ール好ましくは３デニール以下のフイラメントで
構成される仮撚加工糸を用いる方が望ましい。 以上のごとく本発明で得られるフアンシー調特
殊加工糸は、従来のフアンシー糸に比べ長手方向
の変化が節糸などの際立つた変化を指向するもの
ではなく、比較的細い強撚部分Ａと、比較的太い
嵩高部分Ｂとが交互に存在し、適度なかすり効果
を有しているため、製品にした場合上品にして優
美な感覚を与えるフアンシー調効果を得ることが
できる。また嵩高部分Ｂのソフトさと強撚部分Ａ
のシヤリ感とが相まつて、一種独特のソフトなシ
ヤリ感を呈するものであつて、しかも糸条長手方
向に微妙な見掛変化を有し、フアンシー調効果を
同時に満足しうる製品を得ることができる。 以下、本発明について実施例を用いて説明す
る。 実施例 １ ポリエステルマルチフイラメント75D／72Fを
次表の仮撚加工条件で仮撚加工し、Ｓ・Ｚの交互
撚を有する仮撚加工糸を得た。

【表】 得られた仮撚加工糸をＺ方向に400T／Ｍの追
撚を石川製作所製合撚機DTF型にて行つた。得
られた糸条の強撚部分Ａの平均長さは約24.7mm、
最大長さは95.5mm、嵩高部分Ｂの平均長さは約
37.6mm、最大長さは150mmのものとなり、本発明
の意図するフアンシー調特殊加工糸を得ることが
できた。 上記フアンシー調特殊加工糸を用いて経緯使い
の平組織に織成し、アルカリ減量処理、分散染料
染色および仕上げを行つたところ、ドレープ性と
ソフトなシヤリ感に富み、強撚部分Ａと嵩高部分
Ｂとが交差しておだやかなかすり調効果を呈し、
好ましい表面形態を持つ織物が得られた。 また、本糸条を丸編機（テイロツトI3P）に
て、タツク組織に編成し、染色仕上げを行つた。
得られた編地は、ソフトなシヤリ感が感じられ、
表面もかすり調を呈し好ましい優雅な製品であつ
た。 実施例 ２ ポリエステルマルチフイラメント150D／48F、
異形断面糸を次表の仮撚加工条件で仮撚加工し、
Ｓ・Ｚの交互撚を有する仮撚加工糸を得た。

【表】

【表】 得られた仮撚加工糸をＺ方向に300T／Ｍの追
撚を東芝製Ｒ―107型合撚機にて行つた。 得られた糸条は強撚部分Ａの平均長さは約16.3
mm、最大長さは約17.1mm、嵩高部分Ｂの平均長さ
は約26.9mm、最大長さは29.5mmとなり、本発明の
意図するフアンシー調特殊加工糸を得ることがで
きた。 得られた糸条を平織に織成しアルカリ減量処理
染色、仕上げを施したところ、得られた織物はド
レープ性とソフトなシヤリ感に富んだフアンシー
な感覚の製品であつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明において追撚に供するＳ・Ｚの
交互撚を有する仮撚加工糸の模式図であり、第２
図は本発明で得られるフアンシー調特殊加工糸の
模式図である。 １…加撚集束部、２…解撚集束部、Ａ…強撚部
分、Ｂ…嵩高部分。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 熱可塑性合成繊維に軟化点以上融点以下の温
   度で、かつ15％以上のオーバーフイード率で仮撚
   加工を施してＳ・Ｚ交互撚糸となし、次いで該交
   互撚糸に前記仮撚加撚方向と同方向の追撚を施し
   て、糸条の長手方向に融着緊束状態の強撚部分Ａ
   と、無撚に近い状態でふくらみを持つた捲縮形態
   の嵩高部分Ｂとを交互に形成し、かつ前記強撚部
   分Ａおよび嵩高部分Ｂのいずれにも10mm以上の長
   さの部分を存在させることを特徴とするフアンシ
   ー調特殊加工糸の製造方法。