JPS6325213B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は車輌用自動変速機の摩擦係合装置に関
する。

［従来の技術］ 従来、摩擦係合装置のリターンスプリングは摩
擦係合要素の径方向内側に配設されていた。

［発明が解決しようとする問題点］ しかし、リターンスプリングはピストンと、該
ピストンを外包せしめるシリンダに配設される係
止部材との間で摩擦係合要素の径方向内側に配設
されていたため、摩擦係合要素の径方向内側のス
ペースがリターンスプリング配設のために使用さ
れるので、軸方向寸法の短縮が図れず、しかも摩
擦係合要素解放時に於てスプリングによつてピス
トンが摩擦板を解放するときにもバツキングプレ
ートと摩擦板との間で油の表面張力により、ひき
ずり現象が生じ円滑な解放がなされにくいという
問題点を有していた。

そこで本願発明はリターンスプリングを摩擦係
合要素の径方向外側に配設しスペースのコンパク
ト化を図るとともに解放時に於るきひきずり現象
を防止することを目的とする。

更に摩擦係合要素と一方向クラツチとを併設し
て一方向クラツチのインナレースと摩擦係合要素
を係合させるタイプの摩擦係合装置に於て、一方
向クラツチを摩擦係合要素に連結するインナレー
スの有するハブの側から組み付けるには、少なく
ともインナーレースに連結するハブの径が一方向
クラツチの径方向寸法より小さくなくてはならな
い。インナレースの有するハブの径方向外周を嵌
通せしめて一方向クラツチをインナレース外周部
に配設するためである。

しかも一方向クラツチと摩擦係合要素がインナ
レースの有するハブを介して連結される構造であ
るため、摩擦係合要素または一方向クラツチの作
動にともなつて生ずる一方向クラツチの偏心を防
止せしめるべくインナレースの径方向内側を支持
する手段が必要となる。

そこで本願発明は、ピストンのリターンスイツ
チを径方向外側に配設することにより摩擦係合装
置の軸方向寸法を短縮するとともに、一方向クラ
ツチの同心性を確保することにより一方向クラツ
チの偏心を防止し一方向クラツチ耐久性を向上し
コンパクト化を図ることを目的とする。

［問題点を解決するための手段］ 本願発明は上記技術的課題を達成するために、
回転部材と被連結部材との間で着脱自在に結合せ
しめられる摩擦係合要素を有する摩擦係合装置に
於て、前記摩擦係合要素は前記回転部材と被連結
部材との間に配設される摩擦板と、該摩擦板を軸
方向に支持せしめるバツキングプレートと、前記
摩擦板に当接し該摩擦板を係脱自在に制御すべく
シリンダ内を軸方向に摺動自在に作動せしめられ
るピストンと、該ピストンを前記摩擦板を解放せ
しめる方向に付勢せしめるリターンスプリングを
有し、前記リターンスプリングは前記ピストンの
径方向外部に回転自在に配設され被連結部材にス
プライン結合せしめられる環板状部と、該環板状
部に一端を固着され他端を前記バツキングプレー
トによつて支持せしめられるスプリングとからな
り前記摩擦板の径方向外側に配設されたことを特
徴とする車輌用自動変速機の摩擦係合装置の構造
を有するものである。

［作用及び効果］ 本願発明のリターンスプリングは、摩擦板に当
接せしめられるピストンの径方向外部に回転自在
に配設され、被連結部材にスプライン結合せしめ
られる環板状部とからなる構造を有するので、ピ
ストン係合時において、ピストンが摩擦板に係合
することによつて摩擦板の回転力の反力をピスト
ンが受けたとしても、リターンスプリングはピス
トンと相対回転可能に配設されていることによ
り、その反力の影響を受けることはないので、リ
ターンスプリングがスプライン結合している被連
結部材の側で「圧痕」等を生ずることもなく、従
つてリターンスプリングの軸方向の摺動に関して
何ら支障はなく、摩擦板の解放時のひきずりを防
止することができる。

また本願発明のスプリングは、環板状部に一端
を固着され他端をバツキングプレートによつて支
持せしめられた構造を有するので、摩擦板の解放
時に確実にバツキングプレートと摩擦板との間に
クリアランスを確保し、バツキングプレートと摩
擦材との間に油による表面張力によつて生ずる摩
擦板の解放時のひきずりを防止することができ、
円滑な解放が可能となる。

更に一方向クラツチのインナレースは摩擦板に
係合し一方向クラツチの内径よりも小径なるハブ
を有する構造であるため、一方向クラツチを摩擦
係合要素に連結するインナレースの有するハブの
側より組み付けることが容易に可能となる。また
前記ハブは径方向内側をサポート手段によつて支
持せしめられる構造を有するので、摩擦係合要素
及び一方向クラツチの作動にともなつて生じる一
方向クラツチの偏心を防止し、一方向クラツチの
耐久性を向上することができる。

［実施例］ 第１図はフロントエンジン、フロントドライブ
式の自動車用自動変速機を示す。

この自動変速機は流体継手１００とその側方に
配されたデイフアレンシヤルギヤ３００との間
に、流体継手１００に直列された第１の遊星歯車
機構１１０と、該第１の遊星歯車機構１１０と逆
向きに並列された第２の遊星歯車機構１２０とか
らなる遊星歯車変速機構２００を配してなる。

前記流体継手１００は、エンジン出力軸１０１
に連結されたフロントカバー１０２と、該フロン
トカバー１０２に連結されたポンプインペラ１０
３と、出力軸１０４に連結されたタービンランナ
１０５と、一方向クラツチを介して自動変速機の
ケースに連結されたステータ１０７と、直結クラ
ツチ１０８とからなるトルクコンバータである。

前記第１の遊星歯車機構１１０は、前記流体継
手１００の出力軸１０４と同一の入力軸１０４と
該入力軸１０４に直列された出力軸１１１との間
に、第１のプラネタリギヤセツト１１３、第２の
プラネタリギヤセツト１１４、これらプラネタリ
ギヤセツトの構成要素を係合、または解放または
固定して前進３段、後進１段のアンダードライブ
を行なしめる多板クラツチＣ１，Ｃ２、多板ブレ
ーキＢ１，Ｂ２，Ｂ３、一方向クラツチＦ１，Ｆ
２及び前記クラツチ及びブレーキを作動させる油
圧サーボｃ１，ｃ２，ｂ１（図示せず）、ｂ２，
ｂ３よりなり、前記出力軸の端（流体継手と反対
側端、以下同じ）には出力ギヤ１１２が取り付け
られている。

第２の遊星歯車機構１２０は前記第１の遊星歯
車機構１１０の出力軸１１１と平行して配された
入力軸１２１と、該入力軸１２１の流体継手側に
回転自在に外嵌されるとともに該入力軸１２１に
支持された出力軸１２３との間に第３のプラネタ
リギヤセツト１２４、該第３のプラネタリギヤセ
ツト１２４の構成要素を係合、または解放または
固定して前進２段のアンダードライブを行なわせ
る多板クラツチＣ３、板ブレーキＢ４、及び一方
向クラツチＦ３、これらクラツチＣ３及び多板ブ
レーキＢ４（摩擦係合要素）を作動させる油圧サ
ーボｃ３及びｂ４からなり、前記入力軸１２１の
端には前記第１の遊星歯車機構１１０の出力ギヤ
１２２が取り付けられ、前記出力軸１２３には出
力ギヤ１２５が形成されている。

前記デイフアレンシヤルギヤ３００は、前記第
２の遊星歯車機構１２０の出力ギヤ１２５に噛合
する駆動大歯車３０１、ギヤボツクス３０２、差
動ギヤ３０３、及び車輪に連結させる出力軸３０
４、３０５からなる。

この伝動装置はエンジンとの締結面４００Ａが
開口し流体継手であるトルクコンバータ１００が
収納されたトルクコンバータルーム４１１を形成
するトルクコンバータハウジング４１０と、エン
ジンと反対側面が開口したたデイフアレンシヤル
ギヤ３００が収納されたデイフアレンシヤルルー
ム４２１を形成するデイフアレンシヤルハウジン
グ４２０からなるトルクコンバータケース４００
と、前記第１の遊星歯車機構１１０が収納される
第１ルーム５１０、該第１ルーム５１０と隔壁５
０１を介して区隔され、前記第２の遊星歯車機構
１２０が収納される第２ルーム５２０及び前記デ
イフアレンシヤルハウジング４２０の開口部を蓋
するデイフアレンシヤルルーム側壁部５０２とか
らなるトランスミツシヨンケース５００、及び該
トランスミツシヨンケース５００のトルクコンバ
ータ１００（またはエンジン）と反対側壁に締結
されたギヤカバー６００とからなる自動変速機内
に装着されている。

前記トランスミツシヨンケース５００の前記第
２ルーム５２０の入力ギヤ１２２側には、中央に
取付穴２１が形成された側壁５３０が設けられて
おり、該取付穴２１には端にフランジ２３が周設
された筒状のサポート２２（サポート部材）が流
体継手方向に嵌め込まれて該フランジ２３がボル
ト２４で前記側壁５３０に締結されて取付られて
いる。前記サポート２２は、内部に入力軸１２１
が貫通され、内周に軸方向溝３１が形成されると
ともにパイプ３６が嵌め込まれ、外周には前記フ
ランジ２３側に前記側壁５３０、前記第２ルーム
５２０の内周壁５２１ともに油圧サーボｂ４の環
状油圧シリンダ１を構成するシリンダ壁３５が形
成されている。

前記多板ブレーキＢ４は、前記一方向クラツチ
Ｆ３のインナレース１１ら延長されたプレートハ
ブ１２に内周がスプライン嵌合された円環板から
なるデイスクプレート１３（摩擦板）と、前記ト
ランスミツシヨンケース５００（被連結部材）の
前記第２ルーム５２０の内周壁に軸方向に周設さ
れた突条１４に外周がスプライン嵌合された円環
板からなるフエーシングプレート１５とで構成さ
れる。

前記一方向クラツチＦ３はブレーキＢ４のデイ
スクプレート１にスプライン結合されるプレート
ハブ１２（ハブ）に連結され、サポート２２によ
つてハブ部１２の内径側が支持されるインナレー
ス１１とトランスミツシヨンケース５００にスプ
ライン結合されるアウタレース３７とからなる。
ハブ１２には一方向クラツチＦ３をブレーキＢ４
側から嵌通して組み付けができるように一方向ク
ラツチＦ３の内径よりも小径となるように形成さ
れている。

リターンスプリング機構３は、リターンスプリ
ングアセンブリ４とバツキングプレート５とから
なる。該リターンスプリングアセンブリ４は、ピ
ストン２の外壁２Ａに回転自在に係合される環板
状部４１と、該環板状部４１から延展されリター
ンスプリング固着座４３が設けられたリターンス
プリング保持部４２とからなり、該固着座４３に
はスプリング６の一端が溶接して固着されてい
る。前記バツキングプレート５は、本実施例では
ブレーキバツキングプレートを兼ねており、環板
状部５１と、該環板状部５１の外周から前記リタ
ーンスプリング固着座に対応してスプリング座部
５２が突設され、該スプリング座部５２にはスプ
リング６の他端を保持する凹所５３が設けられて
いる。

第３図はバツキングプレートの他の実施例を示
し、スプリング座部５２に設けたスプリング６の
他端保持機構がスプリングに対応して設けた突起
５４となつている。

なお、スプリング６の他端保持機構は上記実施
例に限定されず他の保持手段が利用できる。

以上の如く本発明の車輌用自動変速機の摩擦係
合装置におけるリターンスプリングは、摩擦板に
当接せしめられるピストンの径方向外部に回転自
在に配設され、被連結部材にスプライン結合せし
められる環板状部とからなる構造を有するので、
ピストン係合時において、ピストンが摩擦板に係
合することによつて摩擦板の回転力の反力をピス
トンが受けたとしても、リターンスプリングはピ
ストンと相対回転可能に配設されていることによ
り、その反力の影響を受けることはないので、リ
ターンスプリングがスプライン結合している被連
結部材の側で「圧痕」等を生ずることもなく、従
つてリターンスプリングの軸方向の摺動に関して
何ら支障はなく、摩擦板の解放時のひきずりを防
止することができる。

また本願発明のスプリングは、環板状部に一端
を固着され他端をバツキングプレートによつて支
持せしめられた構造を有するので、摩擦板の解放
時に確実にバツキングプレートと摩擦板との間に
クリアランスを確保し、バツキングプレートと摩
擦材との間に油による表面張力によつて生ずる摩
擦板の解放時のひきずりを防止することができ、
円滑な解放が可能となる。

更に、一方向クラツチのインナレースは摩擦板
に係合し一方向クラツチの内径よりも小径なるハ
ブを有する構造であるため、一方向クラツチを摩
擦係合要素に連結するインナレースの有するハブ
の側より組み付けることが容易に可能となる。ま
た前記ハブは径方向内側をサポート手段によつて
支持せしめられる構造を有するので、摩擦係合要
素及び一方向クラツチの作動にともなつて生じる
一方向クラツチの偏心を防止し、一方向クラツチ
の耐久性を向上することができる。

また、インナレースは摩擦板に係合し一方向ク
ラツチの内径よりも小径なるハブを有し、リター
ンスプリングはピストンの径方向外部に配設され
る環板状部と、該環板状部に一端を固着され他端
をバツキングプレートによつて支持せしめられる
スプリングとからなり摩擦板の径方向外側に配設
された構造を有するので、摩擦板の摩擦面積が増
大せしめられことにより摩擦板の熱容量に対する
耐久性が増大せしめられ従来のタイプの摩擦板に
比してより少い摩擦板の枚数で足り、従つて軸方
向寸法を短縮せしめられることができる。更にイ
ンナレースは摩擦板に係合し一方向クラツチの内
径よりも小径なるハブを有し、該ハブは径方向内
側を前記サポート手段によつて支持せしめられる
ことにより、一方向クラツチのインナレースがサ
ポート手段との同心性を確実に維持せしめられる
ので一方向クラツチのアウタレース及びインナレ
ースの有するハブとのスプライン結合部分を遊嵌
せしめて組付性を向上することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は車輌用自動変速機の断面図、第２図は
リターンスプリング機構の分解図、第３図はバツ
キングプレートの他の実施を示す斜視図である。 図中 Ｂ４……油圧サーボ、Ｆ３……一方向ク
ラツチ、１……油圧シリンダ、２……環状ピスト
ン、３……リターンスプリング機構（リターンス
プリング）、４……リターンスプリングアセンブ
リ、５……バツキングプレート、６……スプリン
グ、１１……インナレース、１３……デイスクプ
レート、１４……プレートハブ（ハブ）、２２…
…サポート（サポート手段）、３７……アウタレ
ース、４１……環板状部、５００……トランスミ
ツシヨンケース（被連結部材）。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 回転部材と被連結部材との間で着脱自在に結
   合せしめられる摩擦係合要素を有する摩擦係合装
   置に於て、 前記摩擦係合要素は前記回転部材と被連結部材
   との間に配設される摩擦板と、該摩擦板を軸方向
   に支持せしめるバツキングプレートと、前記摩擦
   板に当接し該摩擦板を係脱自在に制御すべくシリ
   ンダ内を軸方向に摺動自在に作動せしめられるピ
   ストンと、該ピストンを前記摩擦板を解放せしめ
   る方向に付勢せしめるリターンスプリングを有
   し、 前記リターンスプリングは前記ピストンの径方
   向外部に回転自在に配設され前記被連結部材にス
   プライン結合せしめられる環板状部と、該環板状
   部に一端を固着され他端を前記バツキングプレー
   トによつて支持せしめられるスプリングとからな
   り前記摩擦板の径方向外側に配設されたことを特
   徴とする車輌用自動変速機の摩擦係合装置。 ２ 回転部材と被連結部材との間で着脱自在に結
   合せしめられる摩擦係合要素と、前記回転部材と
   被連結部材に一方向のみに回転自在に連結する一
   方向クラツチと、前記一方向クラツチのインナレ
   ースの径方向内側を支持せしめるサポート手段か
   らなる摩擦係合装置に於て、 前記摩擦係合要素は前記回転部材と被連結部材
   との間に配設される摩擦板と、該摩擦板を軸方向
   に支持せしめるバツキングプレートと、前記摩擦
   板に当接し該摩擦板を係脱自在に制御すべくシリ
   ンダ内を軸方向に摺動自在に作動せしめられるピ
   ストンと、該ピストンを前記摩擦板を解放せしめ
   る方向に付勢せしめるリターンスプリングを有
   し、 前記一方向クラツチのアウタレースは前記被連
   結部材に連結され、前記一方向クラツチのインナ
   レースは前記摩擦板に係合し前記一方向クラツチ
   の内径よりも小径なるハブを有し、該ハブは径方
   向内側を前記サポート手段によつて支持せしめら
   れ、 前記リターンスプリングは前記ピストンの径方
   向外部に回転自在に配設され前記被連結部材にス
   プライン結合せしめられる環板状部と、該環板状
   部に一端を固着され他端を前記バツキングプレー
   トによつて支持せしめられるスプリングとからな
   り前記摩擦板の径方向外側に配設されたことを特
   徴とする車輌用自動変速機の摩擦係合装置。