JPS6320486B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、田植機において、一つの回転体ケー
スに複数の植付け杆を備えたロータリー式の苗植
装置に関するものである。

〔従来の技術とその問題点〕

従来、この種のロータリー式の苗植装置は、例
えば実公昭47−35534号公報又は実公昭47−28104
号公報等に記載されているように、動力源からの
動力伝達によつて回転駆動される回転軸に回転体
ケースを取付け、該回転体ケースに、前記回転軸
を中心とする円周上に複数の植付け軸を回転自在
に軸支し、該各植付け軸に、前記回転体ケースの
側部に配設した苗載台側に延びる植付け杆を取付
ける一方、前記回転体ケース内には、その中心位
置に非回転の太陽歯車を、植付け軸上に前記太陽
歯車と同じ歯数の遊星歯車を各々配設し、前記太
陽歯車と遊星歯車との間に、その両者に噛合する
中間歯車を配設したものであつた。

しかして、この従来のロータリー式苗植装置
は、回転体ケースが一回公転する間において植付
け軸が、前記回転体ケースの公転方向と逆方向に
一回自転することにより、各植付け杆を、苗載台
の方向に向けた状態のまま、上下動することがで
きるから、例えば、特公昭49−27762号公報等に
記載されている従来周知の上下揺動式の苗植装置
に比較して、振動が少なく、且つ、一回転中に複
数の苗植付けができる利点を有する。

しかし、その反面、各植付け杆における分割爪
の先端における運動軌跡の閉ループが曲率の大き
い円状になるので、当該分割爪が苗マツトに侵入
するときに苗の葉を傷め易く、且つ、苗を圃場面
に植付けたあと分割爪が植付け後の苗から素早く
逃げないので、苗の植付け姿勢が不安定である等
の不具合があつた。

そこで先行技術としての特公昭49−17806号公
報は、前記従来のロータリー式苗植装置におい
て、植付け杆を備えた植付け軸と遊星歯車とを分
離し、植付け軸を遊星歯車の回転中心に対して偏
芯する一方、この植付け軸と遊星歯車との間に、
遊星歯車の側面に設けた長溝に植付け軸に固着し
たクランクアーム先端のピンを摺動自在に係合し
て成るクランク機構を介在し、回転体ケースの一
公転中に、植付け軸、延いては植付け杆を、前記
クランク機構にて上下方向に一回俯仰回動するこ
とにより、各植付け杆の分割爪先端における運動
軌跡の閉ループの曲線を上下方向に長くして、前
記した従来のロータリー式苗植装置の不具合を解
消することを提案している。

ことろが、先行技術のロータリー式苗植装置
は、各植付け杆の分割爪先端における閉ループの
運動軌跡を、上下方向に長くするために、植付け
軸と遊星歯車との間に、クランク機構を介在した
構成にしているので、これらクランク機構及び遊
星歯車を収容した回転体ケースの厚さが厚くな
り、大型化すると共に、重量が増大するのであ
り、しかも、クランク機構を使用したため構造が
複雑になり、製造コストが可成りアツプするばか
りか、クランク機構における溝と、これに摺動自
在に嵌まるピンとの摺動磨滅が大きく、換言する
と、クランク機構の耐久性が低いのである。

その上、前記クランク機構における溝と、これ
に摺動自在に嵌まるピンとの間には、ガタ付きが
存在し、このガタ付きのために分割爪先端の運動
軌跡が変位すから、苗載台からの苗の取り出し量
が、増減変動するのであり、特に、この苗取り出
し量の変動は、前記溝とピンとの摺動磨滅が進行
するにつれて一層増大するのであつた。

本発明は、前記先行技術の問題を一挙に解消し
たロータリー式の苗植装置を提供することを目的
とするものである。

〔問題点を解決するための手段〕

この目的を達成するため本発明は、動力源から
の動力伝達によつて回転駆動される回転軸に回転
体ケースを取付け、該回転体ケースに、前記回転
軸を中心とする円周上に複数の植付け軸を回転自
在に軸支し、該各植付け軸に、前記回転体ケース
の側部に配設した苗載台側に延びる植付け杆を取
付ける一方、前記回転体ケース内には、その中心
位置に非回転の太陽歯車を、各植付け軸上に前記
太陽歯車と同じ歯数の遊星歯車を各々配設し、前
記太陽歯車と各遊星歯車との間に、その両者に噛
合する中間歯車を配設して成る苗植装置におい
て、前記太陽歯車及び各中間歯車並びに各遊星歯
車を、太陽歯車に対して各中間歯車及び各遊星歯
車が横一列又は略横一列に並んだとき、これら各
歯車の中心を、これら各歯車の回転中心に対して
前記苗載台から離れる方向に適宜距離だけ偏芯し
た偏芯歯車に各々構成したものである。

〔作用〕

回転体ケースが一回公転すると、その中心に設
けた非回転の太陽歯車に中間歯車及び遊星歯車を
介して連動する各植付け軸が、回転体ケースの公
転方向とは逆方向に、一回自転するから、この各
植付け軸に取付く分割爪付き植付け杆は、苗載台
の方向を向いた姿勢の状態のまま前記回転体ケー
スの回転中心点を中心として旋回運動する。

この場合、相互に噛合する前記太陽歯車及び中
間歯車並びに遊星歯車を、それぞれ偏芯歯車に構
成したことより、前記回転体ケースの公転に伴つ
てこれと逆方向に自転する各植付け軸は、回転体
ケースと逆方向の自転速度が、その一回の自転中
において回転体ケースの公転速度より早くなつた
り、遅くなつたりするから、当該各植付け軸に取
付く植付け杆の分割爪先端における運動軌跡は、
細長い楕円状の閉ループ曲線となるのである。

しかも、前記太陽歯車及び各中間歯車並びに各
遊星歯車をそれぞれ偏芯歯車にするに際し、太陽
歯車に対して各中間歯車及び各遊星歯車が横一列
又は略横一列に並んだとき、これら各歯車の中心
を、これら各歯車の回転中心に対して前記苗載台
から離れる方向に適宜距離だけ偏芯した形態の偏
芯歯車に構成したことにより、前記各植付け軸に
取付く植付け杆の分割爪先端における閉ループ曲
線状の運動軌跡を、上下方向に細長い楕円状の閉
ループ曲線にすることができるのである。

〔実施例〕

以下本発明の実施例を図面について説明する
と、図において符号１は、田植機の機体における
伝動ケースを示し、該伝動ケース１の側面には、
ボス体２が水平横向きに突出し、該ボス体２内に
は、田植機の機体に搭載したエンジン（図示せ
ず）の動力がスプロケツト３′を介して伝達され
て回転駆動される中空状の回転軸３が挿入され、
この回転軸３の前記ボス体２からの突出端には、
小判型で、且つ、中空状に構成された回転体ケー
ス４が嵌着され、該回転体ケース４は、側面視に
おいて矢印Ａの右方向に回転されるように構成さ
れている。

前記中空状回転軸３内には、中心軸５が当該回
転軸３に対して回転自在に挿入され、該中心軸５
の前記回転体ケース４内への突出端には、回転体
ケース４に対して非回転の太陽歯車６が嵌着され
ている。

この太陽歯車６が取付く中心軸５の前記伝動ケ
ース１内への突出端部には、太陽歯車６を回転不
能に保持すると共に、当該太陽歯車６の位相位置
を調節する位相調節機構７が設けられている。こ
の位相調節機構７は、例えば次のように構成され
ている。

すなわち、中心軸５に摺動自在に被嵌したスリ
ーブ８を備え、該スリーブ８と一体のピン９を前
記中心軸５に刻設した溝１０に係合する一方、前
記スリーブ８から突出したレバー１１を、伝動ケ
ース１の外側に設けた調節ねじ軸１２に連結する
ことより、前記中心軸５ひいては太陽歯車６を回
転不能に保持する一方、前記中心軸５における溝
１０を当該中心軸５の軸線に対して傾斜状にし
て、前記調節ねじ軸１２の回し操作でスリーブ８
が、中心軸５の軸線方向に摺動し、この摺動によ
つて、太陽歯車６の位相位置を調節するように構
成されている。

前記回転体ケース４内の左右両端、つまり回転
軸３の中心を中心とする半径Ｒの円周上の２箇所
には、支軸１３を前記中心軸５と平行に回転体ケ
ース４に対して回転不能に各々軸支して、該両支
軸１３には、中空状の植付け軸１４を回転自在に
各々被嵌し、該両植付け軸１４の一端を回転体ケ
ース４の外側に突出して、その突出端に分割爪１
６を備えた植付け杆１５を、当該植付け杆１５に
おける分割爪１６が苗載台１７に向かうように取
付ける一方、前記回転体ケース４内には、中心軸
５と両植付け軸１４との中間の位置に中間軸１８
を両軸と平行に回転自在に軸支し、該両中間軸１
８上には、前記太陽歯車６に常時噛合する中間歯
車１９を回転自在に設ける。

そして、回転体ケース４内における両植付け軸
１４上には、前記中間軸１８上の中間歯車１９に
常時噛合する遊星歯車２０を嵌着して、前記回転
体ケース４の一回公転に伴い、両植付け軸１４が
前記回転体ケース４の公転方向とは逆方向に一回
だけ自転するように連動連結する。

そして、太陽歯車６及び両中間歯車１９並びに
両遊星歯車２０を、太陽歯車６に対して両中間歯
車１９及び両遊星歯車２０が横一列又は略横一列
に並んだとき、これら各歯車６，１９，２０の中
心０，０′，０″をこれら各歯車６，１９，２０の
回転中心である軸５，１８，１４の中心に対して
前記苗載台１７から離れる方向に適宜距離ｅだけ
偏芯した偏芯歯車に各々構成して成るものであ
る。

この構成において、回転体ケース４がその回転
軸３により矢印Ａの右方向に公転すると、伝動ケ
ース１に対して回転不能に保持した太陽歯車６に
噛合する両中間歯車１９は、回転体ケース４の公
転に伴つて、その公転の回転角度と同じ回転角度
だけ矢印Ｂの右方向に自転する。この両中間歯車
１９に各々遊星歯車２０を介して連動する両植付
け軸１４は、前記両中間歯車１９の自転により矢
印Ｃの左方向、つまり回転体ケース４の公転方向
とは逆方向に自転するから、この植付け軸１４に
取付く植付け杆１５は、苗載台１７の方向を向い
た状態のまま、回転軸３を中心に旋回運動するこ
とになり、この旋回運動中において、苗載台１７
に面する側を上から下に下降するときその分割爪
１６の先端にて苗載台１７上の苗マツトから苗を
一株だけ分割したのち、その下降下限の近傍にお
いて圃場面２１に植付けし、その後において圃場
面２１より上昇するのである。

この場合、前記太陽歯車６及び両中間歯車１９
並びに両遊星歯車２０が、偏芯歯車でないときに
は、両植付け軸１４の矢印Ｃの左方向への自転の
回転角度が、回転体ケース４における矢印Ａの右
方向への公転の回転角度とが同じであるために、
両植付け軸１４に取付く分割爪１６付き植付け杆
１５は、回転体ケース４の公転に伴つて、その公
転方向と逆方向に、同じ回転角度だけ遅れ回転す
ることにより、両植付け杆１５は苗載台１７の方
向を向いた状態で、しかも苗載台１７に対して一
定の姿勢を保つた状態のもとで旋回運動するか
ら、その分割爪１６の先端における運動軌跡の閉
ループ曲線は、回転軸３から植付け軸１４までの
距離を半径とする円状にしかならない。

これに対して、前記太陽歯車６及び両中間歯車
１９並びに両遊星歯車２０を、前記のようにそれ
ぞれ偏芯歯車に構成すれば、回転体ケース４の右
方向への公転に伴う両植付け軸１４の左方向への
自転速度は、その一回の自転中において各偏芯型
歯車６，１９，２０の直径差にて回転体ケース４
の公転速度に対して早くなつたり、遅くなつたり
することになるから、両植付け杆１５の分割爪１
６の先端における運動軌跡の閉ループ曲線は、細
長い楕円状になる。

しかし、太陽歯車６及び両中間歯車１９並びに
両遊星歯車２０を、前記のようにそれぞれ偏芯歯
車に構成する場合であつても、太陽歯車６に対し
て両中間歯車１９及び両遊星歯車２０が横一列又
は略横一列に並んだとき、これら各歯車６，１
９，２０の中心０，０′，０″を、第６図に示すよ
うに、これら各歯車６，１９，２０の回転中心で
ある軸５，１８，１４の中心に対して前記苗載台
１７に近付く方向に適宜距離ｅだけ偏芯した偏芯
歯車とした場合には、両植付け杆１５の分割爪１
６の先端における運動軌跡の閉ループ曲線は、第
６図に符号２２ａで示すように横方向に細長い楕
円状になるから、苗植装置として到底使用できる
ものではなかつた。

そこで本発明では、太陽歯車６及び両中間歯車
１９並びに両遊星歯車２０をそれぞれ偏芯歯車に
するに際し、太陽歯車６に対して両中間歯車１９
及び両遊星歯車２０が横一列又は略横一列に並ん
だとき、これら各歯車６，１９，２０の中心０，
０′，０″を、これら各歯車６，１９，２０の回転
中心である軸５，１８，１４の中心に対して前記
苗載台１７から離れる方向に適宜距離ｅだけ偏芯
した形態の偏芯歯車に構成したもので、これによ
り、前記両植付け軸１４に取付く植付け杆１５の
分割爪１６先端における閉ループ曲線状の運動軌
跡を、第１図及び第５図に符号２２で示すよう
に、上下方向に細長い楕円状の閉ループ曲線にす
ることができるから、苗載台１７上の苗マツトか
ら苗を一株だけ分割し、これを圃場面２１に対し
て植付ける作業を確実に行うことができるのであ
る。

なお、前記実施例は、一つの回転体ケース４に
対して、二つの植付け杆１５を設けた場合を示し
たが、一つの回転体ケース４に設けられる植付け
杆１５は２個に限らず、円周方向に等分箇所に配
設した３個以上の複数個にすることも任意にで
き、また、図面の実施例のように植付け杆１５の
植付け軸１４への取付け基部と、分割爪１６が取
付く部分又は分割爪１６の先端とを、第２図の平
面視において回転軸３の軸方向に適宜寸法Ｓだけ
ずらせておけば、分割爪１６の先端と植付け杆１
５の基部との衝突干渉を回避することができるの
である。

〔発明の効果〕

以上の通り本発明によれば、回転体ケース内に
おける太陽歯車及び中間歯車並びに遊星歯車を、
特定方向に偏芯した偏芯歯車にそれぞれ構成する
ことによつて、回転体ケースに設けた各植付け杆
における分割爪先端の運動軌跡を、上下方向に細
長い楕円状の閉ループ曲線にでき、前記先行技術
にようなクランク機構を用いる必要がないから、
構造がきわめて簡単になり、安価に提供できると
共に、回転体ケース、延いてはロータリー式苗植
装置の小型・軽量化を図ることができるのであ
る。

しかも、本発明は、回転体ケースに取付く各植
付け杆を、歯車の噛合により、回転体ケースの公
転に伴つて逆方向に自転するもので、前記先行技
術のクランク機構のように溝とこれに嵌まり係合
するピンとの摺動部分を備えていないから、各植
付け杆のガタ付きがきわめて小さく、苗取り出し
量の安定性を向上できると共に、苗植装置の耐久
性を向上できる効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示し、第１図は正面
図、第２図は平面図、第３図は第１図の−視
拡大断面図、第４図は第３図の−視断面図、
第５図は偏芯歯車の回転状態を示す図、第６図は
本発明に至る以前のものを示す図である。 １……伝動ケース、３……回転軸、４……回転
体ケース、５……中心軸、６……太陽歯車、１４
……植付け軸、１５……植付け杆、１６……分割
爪、１７……苗載台、１９……中間歯車、２０…
…遊星歯車。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 動力源からの動力伝達によつて回転駆動され
   る回転軸に回転体ケースを取付け、該回転体ケー
   スに、前記回転軸を中心とする円周上に複数の植
   付け軸を回転自在に軸支し、該各植付け軸に、前
   記回転体ケースの側部に配設した苗載台側に延び
   る植付け杆を取付ける一方、前記回転体ケース内
   には、その中心位置に非回転の太陽歯車を、各植
   付け軸上に前記太陽歯車と同じ歯数の遊星歯車を
   各々配設し、前記太陽歯車と各遊星歯車との間
   に、その両者に噛合する中間歯車を配設して成る
   苗植装置において、前記太陽歯車及び各中間歯車
   並びに各遊星歯車を、太陽歯車に対して中間歯車
   及び遊星歯車が横一列又は略横一列に並んだと
   き、これら各歯車の中心を、これら各歯車の回転
   中心に対して前記苗載台から離れる方向に適宜距
   離だけ偏芯した偏芯歯車に各々構成したことを特
   徴とする田植機の苗植装置。