JPH0620368B2 - 田植機の苗植装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、田植機において、苗載台上の苗マットから苗
を一株づつ分割したのちこれを圃場面に植付けるための
回転式の苗植装置に関するものである。

〔従来の技術〕 従来、この種の苗植装置は、例えば特公昭４９−２７７
６２号公報に記載されているように、先端に苗の分割爪
を有する植付け体の基端を、機体側に扇動リンクを介し
て連結する一方、該植付け体の中途部を、エンジンにて
回転駆動される爪軸に固着したクランクの先端を枢着
し、該クランクの回転により植付け体を、その分割爪の
先端が、上下方向に長い楕円状閉ループの軌跡を描くよ
うに上下揺動させるように構成することによって、苗マ
ットからの苗分割時に苗を傷めず、苗を圃場面に植えた
あと分割爪が苗から素早く逃げて苗の植付け姿勢を安定
化するようにしたものであった。

しかし、このものは、その上下揺動のために振動が大き
く、しかも、植付け速度が遅い等の問題があった。

そこで、振動を低減すると共に、植付け速度を向上する
ために、回転体の外周部に、分割爪付き植付け体の複数
個を装着して成るいわゆる回転式の苗植装置が、例え
ば、特公昭４９−１７８０６号公報や特公昭４９−１７
８０７号公報等によって提案されている。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところが、この従来の回転式苗植装置では、各植付け体
を、その各々における分割爪の先端が上下方向に長い楕
円状閉ループの軌跡を描くように運動するための機構が
必要であって、従来は、この運動をクランク機構にて行
うように構成しているが、このクランク機構であると、
トルク変動が大きいために、圃場面に対する苗の植付け
姿勢が不安定であると共に、振動の低減を充分に達成す
ることができないのであり、しかも、耐久性が低いと言
う問題があった。

本発明は、回転式苗植装置において、前記の従来の問題
を解消し、且つ、小型化すると共に、この苗の植付けの
確実性を向上することが、構造の複雑化及び大型化を招
来することなく達成できるようにすることを目的とす
る。

〔課題を解決するための手段〕

この目的を達成するため本発明は、苗載台の近くにおけ
る機体に、動力源からの動力伝達にて回転駆動される中
空状の回転体を、略水平横向きに延びる回転軸の廻りに
回転するように配設し、該回転体の外周部における円周
方向の複数個所に、植付け軸を、前記回転軸と平行に軸
支して、この植付け軸の一端を、前記回転体における左
右両側面板のうち前記機体とは反対側の側面板を貫通し
て機体と反対方向に突出して、この突出端に、分割爪を
備えた植付けケースを、その分割爪が前記苗載台側に向
かう姿勢で装着して成る苗植装置において、前記回転体
内に、当該回転体の回転に伴って前記各植付け軸に対し
て不等速回転を伝えるようにした歯車列を設けて、前記
各植付けケースを、当該植付けケースにおける分割爪の
先端が上下方向に長い楕円状閉ループの軌跡を描くよう
に首振り回動させるように構成する一方、前記分割爪
に、当該分割爪による分割苗に対する押し出し具を設
け、前記各植付けケース内に、当該植付けケースにおけ
る首振り回動に伴って前記押し出し具を作動する作動体
を設け、更に、前記各植付け軸を中空軸に形成して、該
植付け軸の内部に、前記作動体に対する駆動軸を回転自
在に挿入し、該駆動軸の一端を、前記回転体における左
右両側面板のうち前記機体側の側面板の内面に凹み形成
した凹所内に、回転不能に挿入すると言う構成にした。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例を図面について説明すると、図に
おいて符号１は田植機の機体における伝動ケースで、該
伝動ケース１の側面には、ボス体２が略水平横向きで且
つ苗載台１０と略平行に突出し、該ボス体２内には、田
植機の機体に搭載したエンジン（図示せず）からの動力
伝達にて回転駆動される回転軸３が挿入され、この回転
軸３の前記ボス体２からの突出端には、小判型で且つ中
空状に形成した回転体４が嵌着され、該回転体４は側面
視において矢印Ａの右方向に回転されるように構成され
ている。

この回転体４内における中心部には、前記ボス体２に回
転自在に被嵌し且つ回転体４に対して回転自在に構成し
た太陽歯車５が配設され、この太陽歯車５は、伝動ケー
ス１に対して適宜の回転位相調節手段（図示せず）に
て、回転不能に係止されている。

前記回転体４の左右両端には、回転軸３からの距離
（Ｌ）が等しい位置に、駆動軸６を前記回転軸３と平行
に軸支して、該各駆動軸６を、その一端に形成した断面
角型部６ａを前記回転体４における左右両側面板４ａ，
４ｂのうち前記伝動ケース１側の側面板４ｂの内面に凹
み形成した凹所４ｃ内に着脱自在に且つ回転不能に挿入
することによって、回転体４に対して回転不能に保持す
るように構成し、更に、この各駆動軸６に中空状の植付
け軸７を回転自在に被嵌し、該植付け軸７の一端を、前
記前記回転体４における左右両側面板４ａ，４ｂのうち
前記伝動ケース１とは反対側の側面板４ａから伝動ケー
ス１と反対方向に突出して、該各植付け軸７の突出端に
は、前記苗載台１０に向かって延びるようにした分割爪
９を備えた中空状の植付けケース８を、その基部におい
て取付ける一方、前記回転体４内には、回転軸３と各植
付け軸７との中間の位置に中間軸１１を両軸と平行に回
転自在に軸支し、該各中間軸１１上には、前記太陽歯車
５に噛合し且つ太陽歯車５と同歯数の中間歯車１２を嵌
着する。

そして、前記中間軸１１上には前記中間歯車１２と同歯
数の連動歯車１３を嵌着する一方、前記植付け軸７上に
は、前記中間軸１１上の連動歯車１３と同歯数で且つこ
れに常時噛合する連動歯車１４を嵌着して、前記中間軸
１１と植付け軸７とを連動歯車１３，１４にて連動連結
することにより、前記回転体４の一回転により植付け軸
７が回転体４の回転方向と逆方向に一回転するように構
成する。

更に、前記中間軸１１と植付け軸７とを連動連結する同
じ歯数の連動歯車１３，１４を、これら各歯車の中心
（Ｏ）をその各々の軸１１，７の回転中心から適宜寸法
（ｅ）だけ偏芯した偏芯歯車に構成する。

一方、前記中空状の各植付けケース８内に、前記駆動軸
６の一端を挿入して、これにカム１５を固着し、各植付
けケース８には、その分割爪９と略平行に延びるガイド
軸１６が上下摺動自在に設けられ、該ガイド軸１６の下
端には押し出し具１７が固着され、また、各植付けケー
ス８内には、押し出し用レバー１８を配設して、その一
端を前記ガイド軸１６の上端の摺動子１９に係合する一
方、押し出し用レバー１８の基端を前記駆動軸６の上方
位置においてピン２０枢着し、該押し出し用レバー１８
の下面に突設した突起２１を、前記カム１５の外周面に
ばね２２の押圧にて接当し、且つカム１５の外周面を、
前記各植付けケース８がその下降下限の近傍に来たとき
のみ、前記押し出し用レバー１８がばね２２力にて下向
き回動するような形状に構成する。なお、前記駆動軸６
の中心と押し出し用レバー１８の基端ピン２０の中心と
を結ぶ線２３が、前記ガイド軸１６の軸線２４と略平行
となるように配設する。

この構成において、回転体４がその回転軸３により矢印
Ａの右方向に公転すると、伝動ケース１に対して回転不
能の太陽歯車５に噛合する中間歯車１２は、回転体４の
公転に伴って、その公転の回転角度と同じ回転角度だけ
矢印Ｂの右方向に自転する。この中間歯車１２に連動歯
車１３，１４を介して連動する植付け軸７は、当該中間
歯車１２の自転により矢印Ｃの左方向つまり回転体４の
公転方向と逆方向に自転するから、この植付け軸７に取
付く植付けケース８は、その分割爪９が第１図に示すよ
うに苗載台１０の方向を向いた姿勢状態のまま、回転軸
３を中心に旋回運動することになり、この旋回運動中に
おいて、苗載台１０に面する側を上から下に下降すると
きその分割爪９の先端部にて苗載台１０上の苗マットか
ら苗を一株だけ分割したのち、その下降下限の近傍にお
いて圃場面２５に植付けし、その後において圃場面２５
より上昇するのである。

この場合において、前記中間軸１１と植付け軸７とを連
動連結する同じ歯数の連動歯車１３，１４を、これら各
歯車の中心（Ｏ）をその各々の軸１１，７の回転中心か
ら適宜寸法（ｅ）だけ偏芯した偏芯歯車に構成したこと
により、回転体４の右方向への公転に伴う植付け軸７の
左方向への自転は、その一回転中において偏芯型の両連
動歯車１３，１４の直径差にて回転体４の自転速度に対
して早くなったり、遅くなったりすることになるから、
回転体４の公転に対して植付け軸７の左方向への自転が
遅くなる時期が、植付けケース８の圃場面１５に近付く
ように下降する時期に、植付け軸７の左方向への自転が
早くなる時期が、植付けケース８の上昇上限に近付くよ
うに上昇する時期に各々該当するように設定することよ
り、各植付けケース８は、圃場面２５に近付くように下
降するときに回転体４の公転よりも左方向に遅れ勝手に
自転して姿勢を下向きに変え、上昇上限に近付くとき回
転体４の公転よりも余分に左方向に進み勝手に自転して
姿勢を上向きに変えるように首振り回動するから、各植
付けケース８の分割爪９における先端部の運動軌跡の閉
ループは、第１図に二点鎖線で示すように、上下方向に
細長い楕円状の閉ループ曲線２６となり、例えば、前記
特公昭４９−２７７６２号等に記載されている上下揺動
式苗植装置の場合と同じ形状の閉ループ曲線が得られる
ことになる。

そして、前記回転体４の矢印Ａの右方向への公転中に、
各植付けケース８が、回転体４に回転不能に保持された
駆動軸６に対して矢印Ｃの左方向つまり回転体４の公転
方向と逆方向に自転することにより、各植付けケース８
において駆動軸６のカム１５に接当する押し出し用レバ
ー１８は、植付けケース８の下降下限においてその分割
爪９の先端が圃場面２５に侵入したとき、前記カム１５
の形状に基づきばね２２にて下向き方向に回動するか
ら、この押し出し用レバー１８の下向き回動によりガイ
ド軸１６下端の押し出し具１７が、第５図に二点鎖線で
示すように、分割爪９の先端に向かって下降動して、苗
を圃場面２５中に押し込むようにして植付けを行う。こ
の押し込み植付けが終わると、分割爪９が圃場面２５か
ら上昇すると略同時に、押し出し具１７が分割爪９の先
端から後退した元の位置に復帰するのである。

なお、前記実施例は回転体４に対して植付けケース８を
二個設けた場合を示したが、植付けケース８は二個２個
に限らず、回転体４における外周部の円周方向に等分の
３個以上の複数個にすることも任意にできるのであり、
更に、他の実施例においては、第６図に示すように、押
し出し用レバー１８の基端枢着ピン２０をカム軸６の下
方位置に設けても良いのである。

また、前記実施例のように、押し出し用レバー１８の基
端を、駆動軸６の上方位置又は下方位置において植付け
ケース８に枢着し、且つ駆動軸６の中心と押し出し用レ
バー１８の基端ピン２０中心とを結ぶ線２３が、前記ガ
イド軸１６の軸線２４と略平行になるように配設する構
成にすると、第５図及び第６図に示すように、駆動軸６
の中心から分割爪９の先端までの高さ方向の距離
（Ｘ）、及び駆動軸６の中心からガイド軸１６までの横
方向の距離（Ｙ）を短くすることができるから、強制植
付け式の植付けケース８を小型に構成することが可能と
なり、ひいては苗植装置の全体の小型化・軽量化ができ
るメリットがある。

〔発明の作用・効果〕

本発明は、以上のように、回転式苗植装置において、回
転体内に設けた歯車列によって、分割爪付き植付けケー
スを、当該植付けケースにおける分割爪の先端が上下方
向に長い楕円状閉ループの軌跡を描くように首振り運動
させるものであるから、前記従来の回転式苗植装置に比
べて、前記植付けケースを首振り運動する場合のトルク
変動が小さくなり、圃場面に対する苗の植付け姿勢の安
定化を図ることができると共に、振動を大幅に低減で
き、且つ、耐久性を向上できるのである。

しかも、前記の回転式苗植装置において、前記各植付け
ケースにおける分割爪に、押し出し具を設けることによ
って、苗の植付けの確実性を向上するに際して、前記植
付けケースを取付けた植付け軸を、中空軸に形成して、
その内部に、前記押し出し具の作動体に対する駆動軸を
挿入する構成にしたことにより、前記各植付けケースが
取付く植付け軸と、押し出し具の駆動軸とを、別々の位
置に設ける場合に比べて、構造を簡単化できると共に、
大型化を回避できるのである。

一方、前記押し出し具の駆動軸は、回転体に対して回転
不能に保持することが必要であり、この回転不能に保持
することを、駆動軸の一端を回転体の外側に突出し、こ
の突出端において行うように構成することは、構造がそ
れだけ複雑になって大型化すると共に、当該駆動軸が回
転体から突出する部分にオイル漏れが発生すると言う問
題を招来することになる。

これに対して、本発明は、各駆動軸を、前記のように、
当該駆動軸の一端を前記回転体における左右両側面板の
うち前記機体側の側面板の内面に凹み形成した凹所内に
回転不能に挿入することによって、回転体に対して回転
不能に保持したもので、これにより、各駆動軸を回転体
に対して回転不能に保持することを、構造の複雑化ひい
ては大型化、及びオイル漏れの発生を招来することなく
達成できるのであり、しかも、前記駆動軸の一端を回転
ケースにおける凹所に挿入するだけで良いから、その組
立ても至極簡単にできる効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示し、第１図は正面図、第２図
は平面図、第３図は第１図のIII−III視拡大断面図、第
４図は第３図のIV−IV視断面図、第５図は第３図のＶ−
Ｖ視拡大断面図、第６図は別の実施例を示す図である。 １……伝動ケース、３……回転軸、４……回転体、５…
…太陽歯車、６……駆動軸、７……植付け軸、８……植
付けケース、９……分割爪、１０……苗載台、１１……
中間軸、１２……中間歯車、１３，１４……連動歯車、
１５……カム、１６……ガイド軸、１７……押し出し
具、１８……押し出し用レバー、２０……基端ピン、２
２……ばね。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】苗載台の近くにおける機体に、動力源から
   の動力伝達にて回転駆動される中空状の回転体を、略水
   平横向きに延びる回転軸の廻りに回転するように配設
   し、該回転体の外周部における円周方向の複数個所に、
   植付け軸を、前記回転軸と平行に軸支して、この植付け
   軸の一端を、前記回転体における左右両側面板のうち前
   記機体とは反対側の側面板を貫通して機体と反対方向に
   突出して、この突出端に、分割爪を備えた植付けケース
   を、その分割爪が前記苗載台側に向かう姿勢で装着して
   成る苗植装置において、前記回転体内に、当該回転体の
   回転に伴って前記各植付け軸に対して不等速回転を伝え
   るようにした歯車列を設けて、前記各植付けケースを、
   当該植付けケースにおける分割爪の先端が上下方向に長
   い楕円状閉ループの軌跡を描くように首振り回動させる
   ように構成する一方、前記分割爪に、当該分割爪による
   分割苗に対する押し出し具を設け、前記各植付けケース
   内に、当該植付けケースにおける首振り回動に伴って前
   記押し出し具を作動する作動体を設け、更に、前記各植
   付け軸を中空軸に形成して、該植付け軸の内部に、前記
   作動体に対する駆動軸を回転自在に挿入し、該駆動軸の
   一端を、前記回転体における左右両側面板のうち前記機
   体側の側面板の内面に凹み形成した凹所内に、回転不能
   に挿入したことを特徴とする田植機の苗植装置。