JPS6312124B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は傾動炉、主として転炉の炉口密閉装置
に関する。

転炉は正立位置で吹錬され、その際に発生する
ガスは炉口をフードで覆いダストを捕集する集塵
装置、熱交換器等を経て排気フアンにより吸引し
て排出される。

炉口に対するフードの密閉は後記の種々の理由
により不完全となり易い。この密閉性を改善する
手段としては、従来、特開昭55―89413、実公昭
55―46725等が知られているが、依然として密閉
性の不完全さの問題が残つている。従来、多くの
場合、転炉は炉口、フードの内圧を排気フアンの
吸引圧力により負圧に保持して操業される。この
場合、不完全密閉の部分から外気が侵入して発生
ガス中のCOが燃焼して熱エネルギーの損失を生
じ熱回収の効率を悪化させることになる。そのた
め、内圧を大気圧に保持することも考慮されては
いるが、安定的な常圧保持が困難であつて正圧、
負圧に変動し、正圧時には不完全密閉部から発生
ガスが逸出しフード外でCOガスの燃焼を起した
りする。

本発明は、転炉等の傾動炉の炉口に対する発生
ガス捕集フードの密閉性を維持することにより炉
内圧を正圧に安定して保持できるようにすること
を目的としてなされたものである。炉内圧を密閉
状態で正圧に保持することの利益は、発生ガス中
のCOが侵入空気により燃焼してCO₂となること
がなくなり、また発生ガスに空気中のN₂が混入
することにより発生ガスの成分比率が変化し、
CO濃度が低下することが防止され、それらによ
り発生ガスのC₁化学原料としての付加価値の低
下が防がれ、熱エネルギーの損失が減少し、炉口
付近の燃焼による炉口近傍部分の熱影響が軽減さ
れ、排気フアンに要求される吸引圧力が低くなつ
てフアン動力が低減される等、諸般にわたる。

しかしながら、傾動炉の炉口の密閉には数多の
阻害要因がある。すなわち、１吹錬時に炉体が振
動し、密閉保持を困難にする。２炉口金物は消耗
品であるため、密閉性向上を目的とする高精度機
械加工により費用が上昇することは好ましくな
い、３しかも炉口金物は吹錬中および出鋼時に熱
影響を受けて変形、亀裂が生ずる、４さらに炉口
金物はスクラツプ投入時にスクラツプシユートに
当たり破損する、５炉口金物には吹錬終了後の排
滓時に高温のスラグが付着するのでシール材が焼
損する。また付着スラグはフード部材の密着性を
妨げ、例えば１mmの間隙が生ずれば炉内はほぼ大
気開放に等しい状況となる、６炉体の傾動時の停
止精度が悪く、約±1゜の誤差を免れないため、シ
ール部のセンターがずれて密閉性を害する、７出
鋼中に溶鋼鍋からの輻射熱を受けてシール材が焼
損する、8COガスでパージすると爆発の可能性が
ある、９蛇腹やベローズを使用した場合、寿命が
短かい。

本発明は、前記の種々の阻害要因を脱却する解
決を与え、吹錬時の炉口の密閉化を成し、炉内正
圧の維持を可能とするものであつて、炉体、炉口
が変形してもシール機能を維持できるようにする
こと、炉体の停止精度が悪くても容易にシールで
きるようにすること、シール材の焼損、破損の恐
れがないようにすることを主眼としてなされたも
のである。

以下、本発明を添付図の実施例により説明す
る。

第１図は本発明の第１実施例を示す。傾動炉の
代表例として転炉が示され、その炉体１はトラニ
オンリング２に取付けられ、リングの両側のトラ
ニオン軸３により軸受４に水平軸線のまわりに傾
動可能に支承される。この転炉は吹錬のための正
立位置として図示されており、炉口金物からなる
炉口５は上向に開口している。

正立位置の炉口５の上位には、排ガス設備（図
示せず）に連なるフード部材６が固設され、フー
ド部材６は中心にガス通路６ａを有し、そのまわ
りに盤状部６ｂが形成され、１次水封手段として
の水封筒６ｃが盤状部から下向に形成されてい
る。フード部材６の端方には昇降シリンダ７の上
端が枢支され、昇降シリンダ７のロツド７ａの下
端にスカート部材８が枢支され、かくしてスカー
ト部材８はフード部材６に懸吊状態に支持されシ
リンダ７の伸縮により炉口５に向い昇降する。

スカート部材８の中心は内腔の筒状部８ａに形
成され、その底面はスカート部材８の下降時に炉
口５の上面に当接する。スカート部材８の筒状部
８ａには１次水封手段として上向開口の水封タン
ク８ｂが形成され、常時封止水を保有し、スカー
ト部材８の下降位置においても水封筒６ｃを受入
れ水封を遂行する。８ｃは水封タンク８ｂの内周
に設けられたダスト受溝を示す。以上の盤状部６
ｂ、水封筒６ｃおよび水封タンク８ｂにより囲ま
れる１次密閉空間９が画成される。この１次密閉
空間９には盤状部６ｂに設けたガス吹込口６ｄか
ら不活性ガス、例えばN₂ガスが炉の発生ガス圧
より高いガス圧で吹込まれ、炉内発生ガスの滞留
や粉塵の堆積を防止するようになつているが、固
体同志の当接による筒状部８ａの底面と炉口５上
面との間の密封は炉口への飛散金属、スラグ等の
付着により不完全であることを免れない。

本発明においては、スカート部材８には外周盤
状部８ｄの外端から下方に２次水封手段として水
封筒８ｅが形成され、炉体１に付着させて上向開
口の水封タンク１ａが形成され、下降位置の水封
筒８ｅを受入れる。水封タンク１ａは封止水の導
入、排出が可能であり、封止水の導入による１次
密閉空間９のまわりに２次密閉空間１０が形成さ
れる。２次密閉空間１０にも高圧N₂ガスが前同
様の目的で可撓管１１、ガス吹込口８ｆを経て吹
込まれる。

水封タンク１ａには封止水給排手段としてクイ
ツクジヨイント１２が付設され、クイツクジヨイ
ント１２はシリンダ１３により接続、切放しを行
うことができる。クイツクジヨイント１２は可撓
管１４を経て水封タンク１ａへの給排水管系に接
続され、この水管系はクイツクジヨイント１２の
接続時にポンプ１５により貯水タンク１６から弁
１７，１８を経て水封タンク１ａに封止水を供給
して２次密閉空間１０の水封を遂行する。そして
炉体１の傾動時には、水封タンク１ａからポンプ
１５により弁１９，２０を経て貯水タンク１６に
排水し、のちクイツクジヨイント１２を点線図示
のように切離し、スカート部材８を上昇させて炉
口上方の待機位置へ移動させることにより、炉体
１を支障なく傾動させることができ、炉体傾動時
に水が洩れることはない。

水封タンク１ａへの封止水の給排は、第２図に
示すように、それに接続した補助タンク２１を実
線位置と点線位置との間に昇降させることによつ
ても行うことができる。水封タンク１ａから排水
したのちに残る水滴が炉体１の傾動時に集つて洩
れ注ぐことを防止するため、第３図に示すよう
に、内向樋状の集水部１ｂを水封タンク１ａ内に
設けることができる。

以上のように本発明においては、１次、２次密
閉と水封手段を効果的に組込んだ構成により、炉
体、炉口に変形が生じていても、炉口の完全な密
閉がなされ炉内圧を所定の設定圧力に保持するこ
とができ、最初に述べた正圧保持の諸利益が得ら
れる。炉体の停止精度の誤差は水封手段における
余裕範囲により水封筒が水封タンクに進入するの
に支障を生じない。シール材を使用しないで、そ
れらの焼損、破損の恐れから解放される。

第４図は本発明の第２実施例を示す。第１実施
例と均等の部分については同一符号を記入して指
示し説明の重複は省略する。この実施例において
は第１実施例のクイツクジヨイント１２、水封タ
ンク１ａへの給排水管系に代り、２次水封手段の
水封タンク１ａの下方に封止水入替用の密閉タン
ク２２が炉体１に付属させて設けられている。水
封タンク１ａの底部から弁２３を有する水管２４
が密閉タンク２２内の底部に導かれ、密閉タンク
２２内の上部から弁２５を有する給排気管２６が
トラニオン軸３を通る管路２７を経て外部に導か
れている。

この実施例は、次のように操作される。すなわ
ち炉体１を正立位置に保持した状態で昇降シリン
ダ７を伸長させてスカート部材８を炉口５上に着
座させ、またフード部材の水封筒６ｃをスカート
部材の水封タンク８ｂ内の封止水中に保つたまま
スカート部材の水封筒８ｅを炉体付属の水封タン
ク１ａに挿入される。弁２３，２５を開いた状態
で管路２７、給排気管２６を経て圧縮ガスを密閉
タンク２２内に導入すると密閉タンク２２の圧力
が上りタンク２２内の水管２４を経て水封タンク
１ａに流入する。水封タンク１ａに所要量の水が
流入すると弁２３，２５を閉じることにより第５
図に示す状態となり、２次水封が行なわれる。

炉体１を傾動させるには、昇降シリンダ７を収
縮させてスカート部材８を炉口上方の待機位置へ
移動させ、弁２５を開いて密閉タンク２２内の圧
縮ガスを管２６，２７を経て吸引または開放して
密閉タンク２２外に排出し、のち弁２３を開くと
水封タンク１ａ内の封止水は密閉タンク２２に戻
る。水封タンク１ａ内の水が流出し終ると弁２
３，２５を閉じ、傾動を開始する。

この実施例における炉口密閉の作用、効果は第
１実施例に関し既述したのとほぼ均等であり、給
排水系が簡単化される効果が加わる。

第６および７図は、本発明の第３実施例を示
し、前実施例と均等の部分は同一の符号により指
示し説明の重複は省略する。この実施例において
は、炉体付属の水封タンク１ａは下方に開閉弁２
８により連通または遮断される付属水室２９を有
し、上方から、例えばフード部材６から可撓管３
０を経てスカート部材８に取付けられた給排水管
３１が開閉弁２８を通して付属水室２９に挿入で
きるようになつている。

この実施例の装置は次のように操作される。す
なわち、炉体１を正立位置に保持し開閉弁２８を
開いた状態で、昇降シリンダ７を伸長させてスカ
ート部材８を炉口５上面に着座させかつ水封筒６
ｃをスカート部材の水封タンク８ｂ内の封止水中
に保つたままで、スカート部材の水封筒８ｅを炉
体付属の水封タンク１ａ内に挿入し、同時に給排
水管３１を弁２８を通して付属水室２９に挿入す
る。給排水管３１から付属水室２９および水封タ
ンク１ａに水を流入させ、炉口部の２次水封を行
なわせる。

炉体１を傾動させるには、給排水管３１を経由
し水封タンク１ａおよび付属水室２９内の水を吸
引排水し、昇降シリンダ７を収縮してスカート部
材８および給排水管３１を待機位置に移動させ、
開閉弁２８を閉じて水室２９内の残留水の洩出が
起らないようにしてから、炉体傾動を開始する。
この実施例における炉口部密閉の作用、効果は前
実施例に関し既述したのとほぼ均等である他、封
止水の給排水施設の簡単化の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の傾動炉の炉口密閉装置の第
１実施例の部分縦断側面図、第２図は水封タンク
への封止水の給排のための変形手段の側面図、第
３図は集水部を設けた水封タンクの側面図、第４
図は本発明の第２実施例の部分縦断側面図、第５
図は水封タンクおよび密閉タンクのある作動状態
の縦断側面図、第６図は本発明の第３実施例の部
分縦断側面図、第７図は第６図Ａ―Ａ視縦断正面
図である。 １……炉体、１ａ……水封タンク、１ｂ……集
水部、２……トラニオンリング、３……トラニオ
ン軸、４……軸受、５……炉口、６……フード部
材、６ａ……ガス通路、６ｂ……盤状部、６ｃ…
…水封筒、６ｄ……ガス吹込口、７……昇降シリ
ンダ、７ａ……ロツド、８……スカート部材、８
ａ……筒状部、８ｂ……水封タンク、８ｃ……ダ
スト受溝、８ｄ……外周盤状部、８ｅ……水封
筒、８ｆ……ガス吹込口、９……１次密閉空間、
１０……２次密閉空間、１１……可撓管、１２…
…クイツクジヨイント、１３……シリンダ、１４
……可撓管、１５……ポンプ、１６……貯水タン
ク、１７，１８，１９，２０……弁、２１……補
助タンク、２２……密閉タンク、２３……弁、２
４……水管、２５……弁、２６……給排気管、２
７……管路、２８……開閉弁、２９……付属水
室、３０……可撓管、３１……給排水管。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 傾動炉に対しその正立位置の炉口に向い上位
   に設置される排ガス設備のフード部材に下降する
   スカート部材を昇降自在に設け、スカート部材を
   炉口に当接させるとともに、フード部材とスカー
   ト部材との間に水封する手段を設けることでその
   内方に１次密閉空間を形成し、他方前記スカート
   部材を炉口に当接させた外方にはスカート部材と
   炉の上部に張設された水封タンクとの間に水封す
   る手段を設けることで２次密閉空間を形成したこ
   とを特徴とする傾動炉の炉口密閉装置。