JPS627878Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、撓み噛合い式歯車装置のベアリング
の潤滑油封止装置に関する。

撓み噛合い式歯車装置の代表的なものとして、
剛性円形内歯歯車と、この内歯歯車の１部としか
噛み合わないように該歯車の内側に設けられた可
撓性の外歯歯車と、この外歯歯車の内側に設けら
れて外輪と内輪とが可撓性にされ外輪が外歯歯車
に嵌合するボールベアリングと、このベアリング
の内輪の内側に嵌合し、前記外歯歯車の１部の歯
を内歯歯車１の１部の歯に噛合せるように外歯歯
車とボールベアリングとを撓ませる楕円形状の板
状のウエーブ・ジエネレータとから成るものがあ
り、ウエーブ・ジエネレータを入力軸に、内歯歯
車を出力軸に連結して、大きな減速比を得てい
る。

なお、ウエーブ・ジエネレータは、波発生器、
歪波動発生器とも呼称されているが、いずれも外
歯歯車の外周面に波のようなうねりを発生させて
外歯歯車の、内歯歯車に噛合う歯を周面方向に徐
徐に移動させるように作用するもので、本書で
は、ウエーブ・ジエネレータと呼称する。

従来の撓み噛合い式歯車装置においては、ベア
リングの側面が開放しているためグリースを充填
してもウエーブ・ジエネレータが高速で回転させ
られると、発熱と遠心力により飛散し、潤滑不足
を生ずるという欠点があつた。

従つて本考案の目的は、側面開放型ベアリング
を用いた撓み噛合い式歯車装置のベアリング内の
潤滑油を密封する封止装置を提供することにあ
る。

かかる目的を達成するため、本考案によれば、
前記した撓み噛合い式歯車装置において、前記ベ
アリングの側面に、前記ウエーブ・ジエネレータ
によつて楕円にされた該ベアリングの外輪より全
周に亘つてやや小径の板状体が設けられ、この板
状体はウエーブ・ジエネレータとともに回転しう
るように取付けられ、該板状体の、前記外歯歯車
の内面に対面する外周面には全周に亘つて少なく
とも１本の溝が形成されて成るベアリングの潤滑
油封止装置が提供される。

かかる封止装置によりウエーブ・ジエネレータ
が高速回転してもベアリングから潤滑油が飛散す
ることがなく、潤滑不足を生ずることがなくベア
リングの寿命を長くできる。特に、潤滑油封止用
の板状体がベアリングの外輪より小径にされてい
るため外歯歯車の内面とは接触せず、しかも封止
用板状体の外周面には溝が形成されてこの中に充
填された潤滑油が封止幕を形成するので摩擦によ
る動力損失、摩耗等の欠点がなく、更に、撓み噛
合い式歯車装置を傾斜させたり垂直にしたりして
も潤滑油が流出あるいは飛散したりすることがな
い。

本考案の実施態様において、封止用板状体はウ
エーブ・ジエネレータの側方突出部に嵌合しても
よく、また、ウエーブ・ジエネレータに固着され
たハブのフランジに固着されてもよい。これらに
より、封止用板状体は、撓み噛合い式歯車装置に
一体的に組込まれる。

以下本考案の実施例について図面を参照しなが
ら説明する。先ず、撓み噛合い式歯車装置の概略
について一般的な説明をする。第１図に示される
ように、撓み噛合い式歯車装置は、最も外側に、
剛性の円形内歯歯車１を有し、この内歯歯車１の
内側に、順に、可撓性の外歯歯車２と、可撓性の
外輪３及び内輪４の間に多数のボールが設けられ
たボールベアリング５と、楕円形の板状のウエー
ブ・ジエネレータ６が設けられており、ウエー
ブ・ジエネレータ６は、ボールベアリング５の外
輪３及び内輪４を楕円形状に撓ませ、これにより
外歯歯車２も楕円形状に撓まされ、外歯歯車２の
歯が内歯歯車１の歯に対し180度の対称の位置で
部分的にしか係合しないようにされている。第１
図では、矢印Ａ，Ｂの２点が係合点となる。な
お、内歯歯車１の歯数は、外歯歯車２の歯数より
数枚（代表例では２枚）多く形成されている。ま
たウエーブ・ジエネレータ６には中央に孔７が設
けられ、ここに入力軸が取付けられ、該入力軸は
モータ等により例えば矢印Ｃ方に回転させられ
る。更に、出力軸は、外歯歯車２に取付けられて
もよく、内歯歯車１に取付けられてもよく、いず
れでも大きな減速比を得ている。

この撓み噛合い式歯車装置の動作について、第
２図ａ〜ｄを用いて説明する。なお、内歯歯車１
の歯数は外歯歯車２の歯数より２枚多く形成され
ているものとする。ウエーブ・ジエネレータ６
が、第２図ａの矢印Ｄで示す位置にあるとき、内
歯歯車１の１つの歯８は外歯歯車２の１つの歯９
に噛合つている。ウエーブ・ジエネレータ６を第
２図ｂに示すように90゜回転させると、外歯歯車
２はベアリング５により回転することなくその楕
円形状が変化し、内歯歯車１と外歯歯車２の噛合
う位置が、楕円形状のウエーブ・ジエネレータ６
の長軸の移動に従つて移動する。第２図ｃに示す
ように、ウエーブ・ジエネレータ６が180゜回転
すると歯８と歯９とが再び噛合うが、その位置は
歯数１枚分だけ回転方向とは反対の方にずれてい
る。そして、第２図ｄに示すように、ウエーブ・
ジエネレータ６が360゜回転すると歯８と歯９と
は歯数２枚分だけ回転方向とは反対の方向にずれ
る。このように、噛合い位置が順次ずれる動きを
出力としてとり出せば、大きな減速比を得ること
ができる。

因みに、内歯歯車１を固定し、外歯歯車２に出
力軸を設けた場合の速度比は、外歯歯車２の歯数
をZf、内歯歯車の歯数をZc（＝Zf＋２）とする
と、 速度比＝Ｚｆ−Ｚｃ／Ｚｆ＝−２／Ｚｆ として表わされる。例えば、、Zf＝200 Zc＝202で
ある場合、２／200（＝１／100）の速度比とな
り、大きな減速比を得ることができる。なお、速
度比における負（−）の符号は出力軸が入力軸の
回転方向とは逆の方向に回転することを示してい
る。

次に外歯歯車２を固定し、内歯歯車１に出力軸
を設けた場合の速度比は、 速度比＝Ｚｃ−Ｚｃ／Ｚｆ＝−２／Ｚｃ として表わされる。この場合出力軸は入力軸と同
方向に回転する。

以下、本考案による潤滑油封止装置を設けた撓
み噛合い式歯車装置について説明する。

第３図において、内歯歯車１はハウジング１０
に固定され、可撓性の外歯歯車２が出力軸１１に
連結されている。ベアリング５の外輪３及び内輪
４の間にはボール１２を保持するリング状の保持
部材１３が設けられ、ボール１２を回転可能に且
つ等間隔に保持している。ウエーブ・ジエネレー
タ６は、入力軸１４に対し、フランジ付ハブ１５
を介して連結されており、入力軸１４がモータ
（図示せず）等によつて駆動されると、ウエー
ブ・ジエネレータ６も回転し、前記したように、
出力軸１１が入力軸１４と反対の方向に大きな減
速比で回転する。なおハブ１５のフランジ１６と
ウエーブ・ジエネレータ６との間にはインサート
１７が設けられ、フランジ１６とともにウエー
ブ・ジエネレータ６への入力軸１４の取付けの中
心ずれを吸収するようになつているが、本考案の
要旨に係りないので説明を省略する。

本考案においては、ボールベアリング５の側面
に、該ベアリングの中に充填されるグリース等の
潤滑油の散逸を防止する潤滑油封止用板状体１
８，１９が設けられている。これらの板状体１
８，１９は、ウエーブ・ジエネレータ６によつて
楕円にされたベアリング５の外輪よりやや小径に
されて、楕円にされた外歯歯車２の内面に対して
僅かではあるが隙間を保ち、該歯歯車２と板状体
１８，１９とは決して接触しないようになつてい
る。一方の板状体１８は、ウエーブ・ジエネレー
タ６の中央の側方突出部２０に直接嵌合され、該
ウエーブ・ジエネレータ６とともに回転するよう
になつている。他方の板状体１９はハブ１５のフ
ランジ１６の側方突出部２１に嵌合され、前記の
ようにハブ１５はウエーブ・ジエネレータ６に連
結されているので、ウエーブ・ジエネレータ６と
ともに回転する。従つて、両板状体１８，１９
は、外歯歯車２に対し、接触することなく回転す
ることになる。

潤滑油封止用板状体１８，１９の、外歯歯車２
の内面に対面する外周面には、その全周に亘つて
少なくとも一本の溝２２が形成されている。この
溝２２の数は、第４図に詳細に示すように、複数
本であつてもよく、板状体の板厚が足りないとき
には、フランジとして形成しその外周面に溝２２
を形成してもよい。

グリース等の潤滑油が、第４図に示すように、
板状体１８と１９とによつて囲まれる空間２３に
充填され、ベアリング５のボール１２の回転を滑
らかにしている。潤滑油は、溝２２の中にも充填
されており、この部分の潤滑油は、ウエーブ・ジ
エネレータ６が高速で回転されると遠心力により
外歯歯車２の内面に向けて押出され、溝上の外歯
歯車２の内面との間の隙間に板状体の周面全体に
亘つて潤滑油の膜を作り、この膜が空間２３の潤
滑油の外方への飛散を防止する。従つて、ベアリ
ング５は常に潤滑油によつて満たされた状態とな
り、潤滑油切れを生じることがなくなる。

本考案によれば、潤滑油封止用板状体がウエー
ブ・ジエネレータとともに高速回転しても外歯歯
車に対して非接触で回転するので摩耗や動力損失
等の問題がなく、溝内の潤滑油が膜を形成して潤
滑油の散逸を防止しているのでベアリングが滑ら
かに回転するだけでなく寿命を長くし、更に潤滑
油膜の形成により撓み噛合い式歯車装置を任意の
姿勢で作動させることもできる。

【図面の簡単な説明】

第１図は撓み噛合い式歯車装置の概略正面図、
第２図ａ〜ｄは撓み噛合い式歯車装置の動作説明
図、第３図は本考案による潤滑油封止装置を備え
た撓み噛合い式歯車装置の縦断面図、第４図は第
３図の装置の１部の詳細を示す図である。 １……内歯歯車、２……外歯歯車、３……ベア
リングの外輪、４……ベアリングの内輪、５……
ベアリング、６……ウエーブ・ジエネレータ、１
０……ハウジング、１１……出力軸、１４……入
力軸、１５……ハブ、１８，１９……潤滑油封止
用板状体、２２……溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 剛性円形内歯歯車と、この内歯歯車の少なく
   とも１箇所で噛合うように該内歯歯車の内側に
   設けられた可撓性の外歯歯車と、この外歯歯車
   の内側に設けられて、外輪と内輪とが可撓性に
   され外輪が前記外歯歯車に嵌合するボールベア
   リングと、このベアリングの内輪の内側に嵌合
   し、前記内歯歯車の少なくとも１つの歯を前記
   外歯歯車の１つと噛合せるようにベアリングと
   外歯歯車とを撓ませる楕円形状の板状のウエー
   ブ・ジエネレータとから成る撓み噛合い式歯車
   装置において、前記ベアリングの側面に、ウエ
   ーブ・ジエネレータによつて楕円にされた該ベ
   アリングの外輪より全周に亘つてやや小径の板
   状体が設けられ、この板状体はウエーブ・ジエ
   ネレータと共に回転しうるように取付けられ、
   該板状体の、前記外歯歯車の内面に対面する外
   周面には全周に亘つて少なくとも１本の溝が形
   成されていることを特徴とするベアリングの潤
   滑油封止装置。 (2) 前記板状体は、前記ウエーブ・ジエネレータ
   の側面方向への突出部に嵌合されている前記第
   １項記載の装置。 (3) 前記板状体は、前記ウエーブ・ジエネレータ
   に固着されたハブのフランジに嵌合されている
   前記第１項記載の装置。