JPS6249445B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、２サイクルエンジンの排気タイミン
グを変更する装置に関する。

従来の排気タイミング変置装置は、第１図およ
び第２図に示す如く、シリンダＡの内周面に開口
する排気孔Ｂのシリンダヘツド側縁部に、回転形
の弁体Ｃを設けたものであつた。

この弁体Ｃはその周面がシリンダＡの内周面に
沿うようなつづみ形をなしており、上記排気孔Ｂ
のシリンダヘツド側縁部に形成した凹部Ｄ内に、
その回転軸方向がシリンダＡの軸方向と直交する
ように回転自在に設けられている。そして、この
弁体Ｃをエンジン回転数に応じて回動させること
により、この弁体ＣのシリンダＡの内面側に対向
する周面の縁部がシリンダＡの軸方向に移動し、
排気孔Ｂの開口高さを変えて排気タイミングを変
更するように構成されていた。

しかし、この従来の構成によると、弁体Ｃの直
径がこの回転軸中心と排気孔Ｂの側縁部間の距離
の２倍近くとなり、その径が大きくなつてしまう
ために、弁体Ｃを収容する凹部Ｄもこれに対応し
て大きくなり、この部分のシリンダＡの壁をこれ
に沿わせた形状にせざるを得ないものであつた。
このため、弁体回りの放熱が悪くなり、シリンダ
Ａの温度分布が不均一となる等の不具合が生じる
ので、これを防止するため凹部Ｄの部分に対応し
て、シリンダＡの外周に補助的な放熱フインＥ…
を増設する等の必要を生じる。

また、弁体Ｃやこれを収容する凹部Ｄの形状が
複雑となるために、製造が困難でコストが高くな
る等の不具合があつた。

本発明は以上の事情にもとづいてなされたもの
で、排気タイミング変更用の弁体付近のシリンダ
壁の厚さを比較的薄く形成でき、放熱が良好とな
るとともに、構造が簡単で製造が容易で、しか
も、高回転時に弁体が排気の流れを妨げることも
なく、高出力が得られる２サイクルエンジンの排
気タイミング変更装置の提供を目的とする。

すなわち、本発明は上記目的を達成するため、
シリンダ壁に、シリンダの内周面に開口された排
気孔に連なる排気通路を形成し、この排気通路の
壁面に上記排気孔のシリンダヘツド側の開口縁部
に対応して浅底の凹部を設け、この凹部内にシリ
ンダの軸方向に往復移動される排気タイミング変
更用の弁体を収容し、この弁体のシリンダ側の縁
部はシリンダの内面に近接対向するとともに、こ
の弁体にエンジン回転数に応じてシリンダの軸方
向に往復動されて、上記排気孔の開口縁部に対す
る弁体の位置を変化させる摺動ロツドを連結し、
この摺動ロツドにより弁体が凹部内に収容された
状態においては、この弁体と排気通路のシリンダ
ヘツド側の壁面とが略同一面上に位置することを
特徴とする。

以下本発明を図面に示す一実施例にしたがつて
説明する。この一実施例は本発明を自動二輪車用
の２サイクルエンジンに適用したものであつて、
図中１はシリンダ壁、２はシリンダヘツド、３は
クランクケース、４はピストン、５は点火プラグ
である。シリンダ壁１にはピストン４を収容する
シリンダ１ａが形成されており、このシリンダ１
ａの内周面には、ピストン４によつて開閉される
吸気孔６、掃気孔７，８および排気孔１０が開口
されている。排気孔１０はシリンダ壁１の前面側
に位置しており、この排気孔１０の開口形状は略
矩形となつている。

なお、第３図中符号９は吸気リード弁を示す。

ところで、上記シリンダ壁１には排気孔１０に
連なる排気通路１０ａが形成されており、この排
気通路１０ａのシリンダヘツド２側の上壁面に
は、排気孔１０の開口上縁部に対応して凹部１１
が形成されている。凹部１１は排気通路１０ａの
上壁面を上方に向つて浅く凹ませたもので、第４
図に示すようにシリンダ１ａの内周面に沿いつつ
排気孔１０の開口上縁部の全幅に亘つて設けら
れ、その平面形状が略半月状をなしている。そし
て、この凹部１１におけるシリンダ１ａ側の縁部
には、シリンダ１ａから一体に下方に向けて突部
１２が突設されており、この突部１２の先端縁部
が実質的に排気孔１０の開口上縁部を構成してい
る。

このような凹部１１内には、シリンダ１ａの軸
方向に沿つて往復移動される排気タイミング変更
用の弁体１３が設けられている。この弁体１３は
上記凹部１１の形状に対応した半月状に形成さ
れ、その断面形状はシリンダ１ａの内周面側に向
つて厚さが減少する楔形をなし、そのシリンダ１
ａの内周面に対向する側面は、シリンダ１ａの内
周面に沿いかつその下縁がシリンダ１ａの内周面
側に突出するように傾斜されている。そして、こ
の弁体１３は凹部１１内に収容されたときには、
その排気通路１０ａに面する下面１３ａが排気孔
１０の開口上縁部ならびに排気通路１０の上壁面
と同一面上に位置するように構成され、また凹部
１１の側面との間にはこれがシリンダ１ａの軸方
向に沿つて移動する際に干渉しない程度の微少間
隙が形成されている。また、この弁体１３が下降
した場合には、これが凹部１１内から突出し、排
気孔１０の開口上部を閉塞するとともに、そのシ
リンダ１ａ側の側面がピストン４の外周面とわず
かな間隙をもつて近接対向するようになつてお
り、このことにより排気孔１０の実質的な開口高
さが減じられて排気タイミングが変更される。

一方、符号１４，１４は弁体１３をシリンダ１
ａの軸方向に沿つて移動自在に案内し、かつこの
弁体１３をシリンダ１ａの軸方向に往復移動させ
る摺動ロツドである。これら摺動ロツド１４，１
４はシリンダ１ａの周方向に間隔を存して配列さ
れており、上記シリンダ壁１にその軸方向に沿つ
て形成された摺動孔１５，１５内の摺動自在に挿
通されている。摺動ロツド１４，１４の下端部は
上記凹部１１内に突出し、この下端部に上記弁体
１３が連結されているとともに、これら摺動ロツ
ド１４，１４の上端部はシリンダ壁１の上面に突
出している。また、上記摺動孔１５，１５の上部
には摺動ロツド１４，１４が貫通するブツシユ１
６，１６が設けられており、これらブツシユ１
６，１６内には、摺動ロツド１４，１４の貫通部
分の気密を保つシール部材１７，１７が設けられ
ている。

さらに、シリンダ壁１の上面前部には、シリン
ダ１ａの径方向に離間して一対の支承突部１８，
１８が形成されている。これら支承突部１８，１
８の間には、操作軸１９が回転自在に架設されて
おり、この操作軸１９はサークリツプ２０によつ
て抜け止め保持されている。操作軸１９の先端部
には面取部２１が形成され、この面取部２１に
は、操作アーム２２の基端部が操作軸１９と一体
的に回動するように嵌着されている。この操作ア
ーム２２の先端部には長孔２３が形成され、この
長孔２３には連結部材２４がこの長孔２３に沿つ
て摺動自在かつ回転自在に貫通して設けられてい
る。この連結部材２４の両端部には平板状の取付
部２５，２５が形成されている。そして、前記摺
動ロツド１４，１４の上端部には径の縮少した径
小部２６，２５が形成され、これら径小部２６，
２６は連結部材２４の取付部２５，２５を貫通す
るとともに、サークリツプ２７，２７によつて取
付部２５，２５に対して抜け止め保持されてい
る。したがつて、上記操作軸１９が回動されると
操作アーム２２が回動し、連結部材２４を介して
摺動ロツド１４，１４が昇降されて、弁体１３が
シリンダ１の軸方向に沿つて昇降動される。そし
て、この操作軸１９は制御機構たとえばエンジン
の回転数に対応して連動するサーボモータあるい
はガバナ等に連結され、エンジンの回転数に対応
してこの操作軸１９が回動されて、上記のように
弁体１３が昇降動するようになつている。

なお、シリンダヘツド２のベースフイン２８
は、その前部が上方に向うように傾斜して設けら
れており、このベースフイン２８の前部とシリン
ダ壁１の前部上面との間には比較的大きな空間が
形成され、この空間内に上記操作軸１９、操作ア
ーム２２、連結部材２４等が配置されている。

以上の如く構成された本発明の一実施例は、エ
ンジンの回転数に対応して操作軸１９が回動さ
れ、操作アーム２２、連結部材２４、および摺動
ロツド１４，１４を介して弁体１３がシリンダ１
の軸方向に沿つて第６図に示す如く移動し、排気
孔１０の開口高さを変えて排気タイミングを変更
する、そして、この弁体１３はシリンダ１の軸方
向に沿つて移動するものであるから、この弁体１
３のシリンダ１ａの径方向の幅は、必要な強度を
得るためおよび摺動ロツド１４，１４を取付ける
ために必要な幅だけあればよい。このため、弁体
１３の径方向の幅は比較的小さくできるので、こ
れに対応して凹部１１の幅も小さくでき、凹部１
１自体の凹み量が浅いことと相まつて、この部分
のシリンダ壁１の厚さを従来に比べて薄くするこ
とができる。それとともに、弁体１３を動かす摺
動ロツド１４，１４も小径で、かつシリンダ１ａ
の軸方向に沿つて設けられているものであるか
ら、この摺動ロツド１４，１４が貫通する部分の
シリンダ壁１の厚さも比較的薄くでき、その分、
シリンダ壁１の放熱性が良好となる。

また、弁体１３の形状も半月形板状の比較的単
純な形状となるとともに、この弁体１３はその側
面が凹部１１の側面に微小間隙をもつて近接する
ように仕上げるだけでよく、製造が容易でコスト
を低減できる。

一方、エンジン回転数が高回転域にまで上昇す
ると、弁体１３が凹部１１内に収容されて排気タ
イミングが早くなるが、この際、弁体１３の下面
１３ａは排気孔１０の開口上縁部および排気通路
１０ａの上壁面と同一面上に位置するので、この
弁体１３が上昇するエンジンの高回転時に、排気
の流れ経路に排気の流れを乱すような段差が生じ
ることはない。したがつて、排気抵抗が増大する
こともなく、高回転時の出力が向上する。

加えて、弁体１３のシリンダ１ａ側の側面は、
シリンダ１ａの内周面に近接対向しているので、
シリンダ１ａの内周面、つまりピストン４との摺
動面はあくまでもシリンダ壁１にて一体に構成さ
れる。このため、シリンダ１ａの内周面に継ぎ目
が位置することもなく、ピストン４との摺動面の
寸法精度が向上して、ピストン４の引掛りや偏摩
耗を未然に防止することができる。

さらに、本実施例では、シリンダヘツド２のベ
ースフイン２８の前部を上方に傾斜させて、シリ
ンダ壁１の上面との間に空間を形成し、ここに操
作軸１９、操作アーム２２等の操作用の部品を配
置したので、全体を小形化することができ、また
傾斜したベースフイン２８によつて前方からの走
行風がこれらの操作軸１９、操作アーム２２等に
向けて導入され、これらの冷却をなすので、これ
ら操作用の部品の過熱が防止される。

なお、本発明は上記の一実施例には限定されな
い。

たとえば、凹部のシリンダ内周面側の縁部に
は、必らずしも突部を形成しなくてもよく、凹部
がシリンダ内周面に開口して、弁体の内側面が常
時シリンダ内周面に露出するようにしておいても
よい。

また、弁体の内側面は必らずしも傾斜していな
くてもよく、この弁体の内側面はシリンダ内周面
と平行であつてもよい。

さらに、弁体の移動方向も厳密にシリンダの軸
方向に沿つていなくとも良く、このシリンダの軸
方向に対し僅かに傾いていても何等差しつかえな
い。

さらに、本発明は自動二輪車用の２サイクルエ
ンジンに限らず、その他の２サイクルエンジン一
般に適用できることはもちろんである。

以上詳述した本発明によれば、弁体はシリンダ
の軸方向に移動して排気タイミングを変化させる
ので、この弁体におけるシリンダの径方向の幅は
必要な強度および摺動ロツドを取付けるに必要な
幅さえあれば良く、これに対応して凹部の幅も小
さくすることができる。このため、凹部自体の凹
み量が浅いことと相まつて、弁体回りのシリンダ
壁の厚さを従来に比べて薄くすることができ、そ
の分、シリンダ壁の放熱性が良好となる。

また、弁体は板状のような単純な形状のもので
良く、しかも、その凹部の周面に対応する面を精
度良く仕上げるだけで良いから、製造が容易とな
り、コストの低減が可能となる。

それとともに、排気タイミングを早くする必要
のあるエンジンの高回転時には、弁体と排気通路
の壁面とが同一面上に位置するから、排気の流れ
経路に排気の流れを乱すような段差が生じること
もなく、このため、弁体を設けたにも拘わらず、
排気抵抗が増大することもなく、高回転時の出力
が向上する。

さらに、弁体のシリンダ側の面はシリンダ内周
面に対し僅かに離間対向しているからシリンダの
内周面はあくまでもシリンダ壁にて一体に構成さ
れることになり、このため、シリンダの内周面に
継ぎ目が存在することもなく、その分、シリンダ
内周面の寸法精度が向上して、ピストンの引掛り
や偏摩耗を未然に防止できる利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来例を示し、第１図は
要部の縦断面図、第２図は平面図である。また第
３図ないし第６図は本発明の一実施例を示し、第
３図は要部の縦断面図、第４図は第３図の―
矢視図、第５図は第３図の―矢視図、第６図
は作動の説明図である。 １…シリンダ壁、１ａ…シリンダ、２…シリン
ダヘツド、４…ピストン、１０…排気孔、１０ａ
…排気通路、１１…凹部、１３…弁体、１４…摺
動ロツド。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダ壁に、シリンダの内周面に開口され
   た排気孔に連なる排気通路を形成し、この排気通
   路の壁面に上記排気孔のシリンダヘツド側の開口
   縁部に対応して浅底の凹部を設け、この凹部内に
   シリンダの軸方向に往復移動される排気タイミン
   グ変更用の弁体を収容し、この弁体のシリンダ側
   の縁部はシリンダの内面に近接対向するととも
   に、この弁体にエンジン回転数に応じてシリンダ
   の軸方向に往復動されて、上記排気孔の開口縁部
   に対する弁体の位置を変化させる摺動ロツドを連
   結し、この摺動ロツドにより弁体が凹部内に収容
   された状態においては、この弁体と排気通路のシ
   リンダヘツド側の壁面とが略同一面上に位置する
   ことを特徴とする２サイクルエンジンの排気タイ
   ミング変更装置。