JPS6221779Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、車輛のクラツチ装置に装着されたク
ラツチペダルの振動防止装置に係り、特に油圧式
クラツチ装置のマスタシリンダとスレーブシリン
ダとの間の配管経路の途中に緩衝バルブを設けた
クラツチペダルの振動防止装置に関する。

従来、車輛、特に中、大型車輛の油圧クラツチ
装置は、クラツチペダルの操作によつてマスタシ
リンダを作動させ、これによつて生じた油圧をオ
イルパイプを介してクラツチ本体に取り付けられ
たスレーブシリンダに伝えてシフトホークを作動
させ、エンジンとトランスミツシヨンのクラツチ
操作を行つていた。この場合エンジンから伝わつ
てくるフライホイールの振動がクラツチに伝わ
り、この振動がクラツチで拡大されてシフトホー
ク、スレーブシリンダ更にはオイルパイプを通し
てマスタシリンダに伝わり踏込み操作中のクラツ
チペダルを振動させるという欠点があつた。この
ためエンジンが回転している状態でクラツチペダ
を踏み込みシフト操作を行なう場合、クラツチペ
ダルが振動し足に不快な振動を感じさせ、また振
動により騒音を発生することもあつて運転者に不
快感を与えるという不具合があつた。

本考案は、上記した従来技術の欠点を除くため
になされたものであつて、その目的とするところ
は、油圧式クラツチ装置を設けた車輛において、
マスタシリンダとスレーブシリンダとの間の配管
経路の途中に緩衝バルブを設けることによつて、
スレーブシリンダから伝播するクラツチからの振
動を減衰させることであり、またこれによつてク
ラツチペダル踏込み時におけるクラツチペダルの
振動及び騒音を防止できるようにすることであ
る。また他の目的は、この振動が大きくなり易い
ため、従来困難であつた大型車輛へのダイヤフラ
ム式油圧クラツチ装置の採用を可能とし中、大型
車輛用クラツチ装置の軽量化を図ることである。

要するに本考案は、油圧式クラツチ装置を設け
た車輛において、マスタシリンダとスレーブシリ
ンダとの間の配管経路の途中に該スレーブシリン
ダから伝播する振動を減衰させるようにした緩衝
バルブを備え、該緩衝バルブは中空部と該中空部
に連通接続されかつ前記マスタシリンダ及び前記
スレーブシリンダに前記配管経路を介して夫々連
通接続された開口穴を形成したケーシングと、該
ケーシングの前記中空部に摺動自在に嵌挿されか
つ該中空部に連通接続された連通穴を形成したピ
ストンと、前記ケーシングの中空部に収容され前
記ピストンを前記マスタシリンダ側に押圧するよ
うに付勢している第１の圧縮ばねと、前記ピスト
ンの前記マスタシリンダ側の端面に形成され前記
連通穴に連通接続された凹部に遊嵌され該凹部の
壁面に当接することで前記ピストンの連通穴と中
空部との連通を遮断し該壁面から離れることで該
連通穴と該中空部とを連通させるようにその周囲
をオイルが流れ得るようにしたバルブと該バルブ
と一体的に形成され該バルブが前記壁面に当接し
ている場合に前記ピストンの前記スレーブシリン
ダ側に突出する軸部とからなるバルブロツドと、
前記凹部に収容され前記バルブロツドを前記スレ
ーブシリンダ側に押圧するように付勢している第
２の圧縮ばねと、前記ピストンの外周面に嵌入さ
れ該ピストンと前記ケーシングとの気密性を保持
すると共に振動を吸収するためのシールリングと
を備えたものである。

以下本考案を図面に示す実施例に基いて説明す
る。本考案に係るクラツチペダルの振動防止装置
の緩衝バルブ１は、第１図に示すように、油圧式
クラツチ装置２のマスタシリンダ３とスレーブシ
リンダ４との間の配管経路の一例たるオイルパイ
プ５の途中に設けられている。そして該緩衝バル
ブは、第２図に示すように、ケーシング８と、ピ
ストン９と、第１の圧縮ばね１０と、バルブロツ
ド１１と、第２の圧縮ばね１２と、シールリング
の一例たるＯリング２０とを備えている。

ケーシング８は、本体１５と該本体に取付けボ
ルト１６によつて固着された蓋板１７とからなつ
ており、両部材によつて円筒状の中空部８ａが形
成されている。本体１５及び蓋板１７には中空部
８ａに連通接続された開口穴１５ａ、１７ａが
夫々形成されており、これら開口穴にはオイルパ
イプ５が連結されている。また本体１５と蓋板１
７との間には、両部材からのオイルもれを防ぐた
めにオイルシール１８が設けられている。

ピストン９は、ケーシング８の中空部８ａに摺
動自在に嵌挿されかつ該中空部に連通接続された
連通穴９ａが形成されている。またピストン９と
ケーシング８の本体１５との間には、両部材の気
密性を良好にすると共に振動を吸収するためＯリ
ング２０がピストン９の外周面に嵌入されてい
る。

第１の圧縮ばね１０は、ケーシング８の中空部
８ａに収容されピストン９をマスタシリンダ３側
（第２図において左方）に押圧するように付勢し
ている。バルブロツド１１は、ピストン９のマス
タシリンダ３側の端面に形成され連通穴９ａに連
通接続された凹部９ｂに遊嵌され該凹部の壁面に
当接することでピストン９の連通穴９ａと中空部
９ｃとの連通を遮断し、該壁面から離れることで
該連通穴９ａと該中空部９ｃとを連通させるよう
にその周囲をオイルが流れ得るように溝９ｄを形
成したバルブ１１ａと、連通穴９ａに遊嵌され先
端がピストン９のスレーブシリンダ４側の端面
（第２図において右端面）より突出し得る軸部１
１ｂとからなつている。第２の圧縮ばね１２は、
ピストン９の凹部９ｂ内に固定されたスナツプリ
ング２１によつて該凹部に止められており、中空
部９ｃに収容されバルブロツド１１をスレーブシ
リンダ４側（第２図において右方）に押圧するよ
うに付勢している。

第１図において、クラツチペダル２３はマスタ
シリンダ３のプツシユロツド２４に連結されてお
り、ピン２５を中心として一定角度揺動し所定の
踏込み量l₁が得られるようになつている。ホーク
２６はスレーブシリンダ４に連結されており、ピ
ポツト２８を中心として一定角度揺動して所定の
移動量l₂が得られるようになつている。クラツチ
３０は図示しないフライホイールに取り付けられ
ており、ホーク２６の作動により変形しエンジン
とトランスミツシヨン（図示せず）に対するクラ
ツチ操作を行うようになつている。なお同図にお
いて、３１はオイルタンク、３２はクラツチペダ
ル２３の高さ調整ねじ、３３はシフトホーク２６
の揺動調整ねじである。

本考案は、上記のように構成されており、以下
その作用について説明する。クラツチペダル２３
を踏み込んでいない状態、即ちクラツチ非作動時
の状態においては、緩衝バルブ１は第３図に示す
ようになつている。即ちピストン９は第１の圧縮
ばね圧によつて押圧され蓋板１７に当接してお
り、バルブロツド１１は第２の圧縮ばね１２のば
ね圧によつて押圧されバルブ１１ａがピストン９
の凹部９ｂの壁面に当接している。またバルブロ
ツド１１の軸部１１ｂの先端は、ピストン９の右
端面より突出している。この状態からクラツチペ
ダル２３を踏み込むと、第１図に示すように、該
クラツチペダルがピン２５を中心として矢印Ａの
方向に揺動すると共にプツシユロツド２４が矢印
Ｂの方向に移動しマスタシリンダ３に油圧が発生
する。この油圧はオイルパイプ５を通して緩衝バ
ルブ１に伝達され、第４図に示すように、ピスト
ン９を第１の圧縮ばね１０のばね圧に抗して矢印
Ｃの方向に押圧しスレーブシリンダ４に伝達され
る。すると第１図に示すように、スレーブシリン
ダ４が矢印Ｄの方向に移動し、シフトホーク２６
がピポツト２８を中心として矢印Ｅの方向に揺動
し、クラツチ３０に作用してクラツチが非接続状
態となる。このときフライホイールの振動がクラ
ツチ３０に伝わり、この振動がシフトホーク２
６、スレーブシリンダ４に伝わり、第１図に示す
ように、大きな振幅の脈動３５となつて緩衝バル
ブ１に伝わる。該バルブ内では、第４図に示す如
くピストン９及びバルブ１１ａによりスレーブシ
リンダ４側とマスタシリンダ３側の２室に分離し
ているので振動はピストン９及びＯリング２０に
より吸収されることにより緩衝バルブ１とマスタ
シリンダ３間の脈動３５は、第１図に示すように
小さな振幅の脈動３６となり、この結果クラツチ
ペダル２３には殆ど振動が伝わることなく、従つ
てクラツチペダル２３の踏込時におけるクラツチ
ペダル２３の振動及び該振動による騒音がなくな
る。

また油圧系統に空気が入つているときは、クラ
ツチペダル２３の踏込みによつて発生するマスタ
シリンダ３の油圧が十分にスレーブシリンダ４に
伝わらないためエア抜き作業をする必要がある。
この場合は、第５図に示すようにピストン９の右
端面が本体１５に当接する寸前までクラツチペダ
ル２３を踏み込む。すると第１の圧縮ばね１０が
圧縮されると共にバルブロツド１１の軸部１１ｂ
の先端が本体１５に当接し、バルブロツド１１が
矢印Ｇの方向に第２の圧縮ばね１２のばね圧に抗
して移動し、バルブ１１ａが凹部９ｂの壁面から
離れ、該バルブ１１ａの外周に形成された溝１１
ｄを介してピストン９の連通穴９ａと中空部９ｃ
とが連通し、スレーブシリンダ４からのオイル
は、中空部８ａから連通穴９ａに流入し、バルブ
１１ａの周囲の溝１１ｄを通つて中空部９ｃに流
れ、開口穴１７ａからオイルパイプ５を通つてオ
イタンク３１に流れてスレーブシリンダ４から空
気が抜けることになるので、エア抜き作業にも支
障はない。

本考案は、上記のように構成され、作用するも
のであるから、油圧式クラツチ装置を設けた車輛
において、マスタシリンダとスレーブシリンダと
の間のオイルパイプの途中に緩衝バルブが設けら
れているので、クラツチ装置においてスレーブシ
リンダから伝播するフライホイールの振動を減衰
させることができ、これによつてクラツチペダル
踏込み時におけるクラツチペダルの振動及び騒音
が防止できる効果が得られる。またこの結果、従
来困難であつた大型車輛へのダイヤフラム式油圧
クラツチ装置の採用が可能になり、大型車輛用ク
ラツチ装置の軽量化が図れるという効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るクラツチペダルの振動防
止装置を装着したクラツチ装置の概略図、第２図
は緩衝バルブの縦断面図、第３図から第５図は
夫々緩衝バルブの作動状態を示し、第３図はクラ
ツチの接続状態を示す縦断面図、第４図はクラツ
チペダルの踏込み状態を示す縦断面図、第５図は
エア抜き状態を示す縦断面図である。 １は緩衝バルブ、２はクラツチ装置、３はマス
タシリンダ、４はスレーブシリンダ、５は配管経
路の一例たるオイルパイプ、８はケーシング、８
ａは該ケーシングの中空部、９はピストン、９
ａ，９ｂは該ピストンの連通穴及び凹部、９ｃは
中空部、１０は第１の圧縮ばね、１１はバルブロ
ツド、１１ａはバルブ、１１ｂは軸部、１２は第
２の圧縮ばね、１５ａ，１７ａは夫々開口穴、２
０はシールリングの一例たるＯリングである。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 油圧式クラツチ装置を設けた車輛において、
   マスタシリンダとスレーブシリンダとの間の配
   管経路の途中に該スレーブシリンダから伝播す
   る振動を減衰させるようにした緩衝バルブを備
   え、該緩衝バルブは中空部と該中空部に連通接
   続されかつ前記マスタシリンダ及び前記スレー
   ブシリンダに前記配管経路を介して夫々連通接
   続された開口穴を形成したケーシングと、該ケ
   ーシングの前記中空部に摺動自在に嵌挿されか
   つ該中空部に連通接続された連通穴を形成した
   ピストンと、前記ケーシングの中空部に収容さ
   れ前記ピストンを前記マスタシリンダ側に押圧
   するように付勢している第１の圧縮ばねと、前
   記ピストンの前記マスタシリンダ側の端面に形
   成され前記連通穴に連通接続された凹部に遊嵌
   され該凹部の壁面に当接することで前記ピスト
   ンの連通穴と中空部との連通を遮断し該壁面か
   ら離れることで該連通穴と該中空部とを連通さ
   せるようにその周囲をオイルが流れ得るように
   したバルブと該バルブと一体的に形成され該バ
   ルブが前記壁面に当接している場合に前記ピス
   トンの前記スレーブシリンダ側に突出する軸部
   とからなるバルブロツドと、前記凹部に収容さ
   れ前記バルブロツドを前記スレーブシリンダ側
   に押圧するように付勢している第２の圧縮ばね
   と、前記ピストンの外周面に嵌入され該ピスト
   ンと前記ケーシングとの気密性を保持すると共
   に振動を吸収するためのシールリングとを備え
   たことを特徴とするクラツチペダルの振動防止
   装置。 ２ 前記シールリングは、Ｏリングであることを
   特徴とする実用新案登録請求の範囲第１項に記
   載のクラツチペダルの振動防止装置。