JPS6221144Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はシリンダ内に回転を規制して嵌合した
ピストンにより画成された液圧室内に、多条ねじ
螺合部をピストン側に、液圧に応じて回転しまた
は回転が規制されるクラツチ部をシリンダ側にそ
れぞれ配置してアジヤスタ機構を内蔵し、このク
ラツチ作動によつて回転するアジヤストボルト頭
部の凹部に、カムシヤフトに回転を規制して係合
されたロツドを当接し、カムシヤフトの回転によ
る機械的制動作動が可能な車両用ブレーキシリン
ダ装置に関するものである。

本考案の特徴は、この種アジヤスタ機構を有
し、マスタシリンダよりの液圧による液圧作動
と、ハンドブレーキレバーより機械力による機械
的作動とが行なえる車両用ブレーキシリンダ装置
において、液圧に応じて回転しクラツチ作用をす
るアジヤストボルトの頭部に形成された凹部に環
状溝を形成し、この環状溝にゴム等の弾性部材を
嵌合し組付後アジヤストボルトの回転を妨げない
ようにロツドを仮止めしたことにあり、その目的
とするところは、アジヤストボルトとカムシヤフ
トとの間に介装されるロツドがアジヤストボルト
の組付と同時に組込むことが可能で組付作業を著
しく向上することができるとともに、組付後にお
いてはアジヤストボルトの回転を妨げることがな
くアジヤスト作用を円滑かつ確実に行なうことが
できる前記車両用ブレーキシリンダ装置を提供す
るにある。

以下、図面により本考案をデイスクブレーキに
適用した一実施例に基いて説明する。

キヤリパ１は作動部１ａと反作動部１ｂとこれ
らを結ぶブリツジ部１ｃとからなり、ブリツジ部
１ｃによりデイスク２を跨ぎ、ブラケツト３にデ
イスク軸方向に移動可能に設けられている。作動
部１ａにはデイスク２側を開口したシリンダ４が
形成されており、このシリンダ４の大径部４ａ内
にはコツプ状のピストン５がピストンシール６に
よつて密に摺動可能に嵌合され、これによりシリ
ンダ４内に液圧室７が画成され、マスタシリンダ
（図示せず）と連通する液通孔８により液圧室７
内に圧液が供給される。デイスク２の両側には摩
擦パツト９，９′が配置され、このシリンダ側の
摩擦パツド９はブラケツト３にデイスク軸方向に
移動可能であるが回転を規制して支持され、他方
の摩擦パッド９′は反作動部１ｂに係合してい
る。

前記ピストン５の頭部５ａには適数箇所に凹部
５ｂが形成されており、この凹部５ｂはこれに対
応して摩擦パツト９の裏板９ａに形成された凸部
９ｂと嵌合し、これによりピストン５は摩擦パツ
ド９をデイスク軸方向には押動するが、摩擦パツ
ド９によりその回転は規制されている。

液圧室７内にはアジヤストボルト１０とナツト
部材１１とからなるアジヤスタ１２が内蔵されて
おり、このナツト部材１１には多条の雌ねじ１１
ａが、またアジヤストボルト１０の小径軸部には
多条の雄ねじ１０ａがそれぞれ刻設され、両者１
１ａ，１０ａは螺合隙間を小さく多条ねじ螺合し
ている。

このナツト部材１１の頭部１１ｂの下側には半
径方向に凸条１１ｃが形成され、この凸条１１ｃ
はピストン５の中心に穿設された穴部５ｃより放
射状に形成された溝部５ｄのうち下側溝部に係合
し、かつナツト部材１１の頭部１１ｂはピストン
５の内面に当接し、更にアジヤストボルト１０の
先端は穴部５ｃにピストン５と干渉しないように
遊びを有して嵌合されている。これにより、ナツ
ト部材１１はピストン５により回転が規制され、
かつピストン５の内面に形成された凸条１１ｃが
嵌合していない上側の溝部がエア抜き通路１３と
なり、組付時に多条ねじ１０ａ，１１ａおよび穴
部５ｃ等に溜まるエアを確実に抜くことができる
ようになつている。

ナツト部材１１の軸部に巻装した第１スプリン
グ１４の一端はナツト部材１１の頭部１１ｂに、
他端はピストン５の円筒部５ｅ内周の環状溝５ｆ
に嵌合した受座ストツパ１５にスプリング受座１
６を介してそれぞれ当接され、これによつてナツ
ト部材１１はデイスク方向に付勢され、その頭部
１１ｂの前面がピストン５の内面に当接してい
る。そして、ピストン５の円筒部５ｅ内面には前
記環状溝５ｆより深いエア排出溝１７が、ピスト
ン軸方向に環状溝５ｆを跨いて形成されており、
組付時におけるピストン５の内面等に溜まるエア
の排出を容易にしている。

前記アジヤストボルト１０はその頭部１０ｂが
シリンダ４の小径部４ｂにカツプ１８により密
に、摺動可能でかつ回転できるように嵌合されて
いる。このシリンダ小径部４ｂの後方には、円筒
状の後方壁１ｄが、小径部４ｂと直交して作動部
１ａと一体に小径部４ｂに連通して形成されてお
り、この後方壁１ｄにはカムシヤフト１９が大小
２個のベアリング２０を介して回転可能に嵌合さ
れている。

アジヤストボルト１０の頭部１０ｂに形成され
た凹部２１とカムシヤフト１９に軸方向に形成さ
れたカム溝２２との間にはロツド２３が介装され
ている。

このアジヤストボルト１０はシリンダ４内への
組付前において、アジヤストボルト頭部１０ｂの
凹部２１に形成された環状溝２４にゴム等の弾性
部材２５を緩く嵌合し、この弾性部材２５にロツ
ド２３の球面状部２３ａを凹部２１の底部側に当
接するまで挿入して組付ける。これにより、ロツ
ド２３は側面が弾性部材２５によつて押圧保持さ
れ、凹部２１にアジヤストボルト１０と略平行に
なるように仮止めされるとともに、凹部２１とロ
ツド２３の球面状部２３ａの当接部（クラツチ
部）は弾性部材２５より凹部２１の底部側に位置
するため、カムシヤフト側からクラツチ部への異
物の侵入を防止できる。そして、ロツド２３はこ
の仮止め状態でアジヤストボルト１０がシリンダ
４の小径部４ｂに組付けられるときに、アジヤス
トボルト１０と同時に組込まれ、ロツド２３の楔
状部２３ｂをカムシヤフト１９のカム溝２２に当
接して組付けられる。これにより、ロツド２３は
アジヤストボルト１０の回転を許容するが、カム
溝２２でロツド２３自身の回転は規制され、カム
シヤフト１９の回転により押されてアジヤストボ
ルト１０を押動し、カムシヤフト１９の回転を制
動方向推進力に変換可能となつている。

この組付後においては、弾性部材２５はアジヤ
ストボルト頭部１０ｂの凹部に形成された環状溝
２４に緩く嵌合しているので、アジヤストボルト
１０の回転を妨げることはない。そして、アジヤ
ストボルト頭部１０ｂの凹部２１にはグリース排
出路２６が底部より後方室２７に連通して溝状に
形成されており、組付時にロツド２３の球面状部
２３ａと凹部２１の底部との間にグリースが密封
されることをなくし、クラツチ作用が確実に行な
われるようにしている。

第５図はロツド２３を仮止めする他の実施例を
示すもので、ロツド２３に環状溝２８を形成し、
弾性部材２５をまずこの環状溝２８に嵌合し、つ
いでこのロツド２３をアジヤストボルト頭部１０
ｂの凹部２１に押し込み、弾性部材２５を凹部２
１に形成された環状溝２４に緩く嵌合して前記実
施例と同様にロツド２３を凹部２１にアジヤスト
ボルト１０と略平行になるように仮止めするもの
である。

前記アジヤストボルト１０の小径ストレート軸
部１０ｃに巻装した第２のスプリング２６の一端
はシリンダ小径部４ｂの口端に取付けられたリテ
ーナ３０に、他端はベアリング３１を介して頭部
１０ｂに当接され、これによつてアジヤストボル
ト１０はシリンダ後方に付勢されている。

前記カムシヤフト１９の基部１９ａにはレバー
３２がナツト３３により固定されており、このレ
バー３２を第３図においてＡ方向に回動するとカ
ムシヤフト１９が第２図において反時計方向に回
転し、ハンドブレーキがかかり、ブレーキを解除
するとリターンスプリング３４によつてＢ方向に
回転して元の位置に復帰するようになつている。

次に、この実施例の作用について説明する。

マスタシリンダよりの圧液が液通孔８を通つて
液圧室７に導入されると、ピストン５は第２図に
おいて左方に移動して一方の摩擦パツド９をデイ
スク２の一側に押圧し、これによりキヤリパ１は
反作用を受けて逆方向の右方へ移動して反作用部
１ｂが他方の摩擦パツド９′をデイスク２の他側
に押圧し、ブレーキ作用がなされる。

このときの液圧をP₁とすると、ピストン５の前
進によつてナツト部材１１も第１スプリング１４
によつて一体に前進するが、この移動量はナツト
部材１１の多条の雌ねじ１１ａとアジヤストボル
ト１０の多条の雄ねじ１０ａとの螺合隙間を埋め
る量であり、多条ねじ螺合部に作用する軸力は生
じないので、回転トルクは発生せず、したがつて
アジヤストボルト１０は回転することなくブレー
キ作用が行なわれる。

そして、液圧P₁より高い液圧P₂が液圧室７内に
供給されると、ナツト部材１１はピストン５との
係合状態を保持したまま一体に前進してナツト部
材１１とアジヤストボルト１０との多条ねじ螺合
隙間が無くなり、更に液圧P₁より高い分の液圧が
右方へ生じアジヤストボルト１０を右方へ移動す
る力が発生して、前記多条ねじ螺合部に軸力が生
じ、この軸力によつて回転トルクが発生する。こ
の回転トルクはナツト部材１１がピストン５に凹
凸係合してその回転が規制されているため、アジ
ヤストボルト１０を回転させようとする力にな
る。このときのアジヤストボルト１０の回転を規
制しようとする力、すなわちシリンダ小径部４ｂ
とアジヤストボルト１０の頭部１０ｂおよびカツ
プ１８との間の摩擦抵抗であり、頭部１０ｂの凹
部２１とロツド２３の球面状部２３ａとの間の摩
擦抵抗は極めて小さく、液圧P₂によつて生じる前
記回転トルクはこれらの摩擦抵抗より大きく設定
されているので、アジヤストボルト１０は回転
し、ナツト部材１１とアジヤストボルト１０との
螺合状態が変化しアジヤスタ１２が伸長する。そ
して、圧液の供給を解除すると、ピストン５はピ
ストンシール６により元の位置に復帰しようとす
るが、伸長したアジヤスタ１２によつて規制さ
れ、デイスク２と摩擦パツド９，９′間の制動間
隙が自動的に常に一定になるように調整される。

次に、前記液圧P₂より更に高い液圧P₃が液圧室
７内に供給されると、ナツト部材１１とアジヤス
トボルト１０との多条ねじ螺合部に作用する軸力
によつて、回転トルクが発生することは前記液圧
P₂のときと同様であるが、アジヤストボルト１０
をシリンダ後方すなわち第２図において右方へ押
圧する力が大きくなり、アジヤストボルト頭部１
０ｂの凹部２１をロツド２３の球面状部２３ａへ
強く圧接して摩擦抵抗が増大する。これによつ
て、アジヤストボルト１０の回転を規制しようと
する摩擦抵抗の方が前記回転トルクより大きくな
りアジヤストボルト１０は回転しなくなる。

そして、ナツト部材１１はピストン５に凹凸係
合されているので、高い液圧P₃あるいはこのとき
キヤリパ１等に変形が生じても、ナツト部材１１
は回転せずピストン５のみが第１カムシヤフト１
４を圧縮して前進する。これによりピストン５の
内面とナツト部材１１の頭部１１ｂとの間に隙間
が生じるが、頭部１１ｂの凸状１１ｃはピストン
５の濃部５ｄとの係合が外れないように設定され
ているので、ナツト部材１１が回転してアジヤス
トすることはない。

このように、高い液圧P₃が液圧室７内に供給さ
れ、またキヤリパ１等の変形によつてピストン５
が過度にシリンダ４内より進出することがあつて
も、液圧P₂の設定圧以外ではアジヤスタ１２は伸
長することがないので、キヤリパ１の変形等ブレ
ーキ構成部品の変形量を含んだ過度のアジヤスト
が防止される。

次に、ハンドブレーキ作用について説明する。

ハンドブレーキレバー（図示せず）を引くと、
レバー２９はこれからの機械力を受けて第３図に
おいてＡ方向に回動する。これにより、カムシヤ
フト１９は第２図において反時計方向に回転し、
ロツド２３を左方へ押し出し、これによつてピス
トン５がアジヤスタ１２によつて押されて左方へ
前進し、一方の摩擦パツド９をデイスク２の一側
に押圧し、この反作用によつてキヤリパ１が逆方
向の右方へ移動し、他方の摩擦パツド９′をデイ
スク２の他側に押圧してハンドブレーキがかか
る。

このとき、ロツド２３の球面状部２３ａがアジ
ヤストボルト頭部１０ｂの凹部２１を押圧し、両
者間の摩擦抵抗が増大するので、アジヤストボル
ト１０は回転することはない。したがつて、ナツ
ト部材１１とアジヤストボルト１０の多条ねじ螺
合状態は変化せず、アジヤスタ１２が縮小するこ
とはない。

本考案は前記の如く、アジヤストボルトの凹部
にカムシヤフトの回転によつてアジヤストボルト
を押動するロツドを弾性部材により仮止めしたか
ら、アジヤストボルトおよびロツドをシリンダ内
に一方向から同時に組込むことが可能となり、シ
リンダ内でロツドが倒れたり組付位置がずれたり
する等の不具合はなくなり位置決めが容易で組付
の作業能率を著しく向上することができるととも
に、組付後においては弾性部材がアジヤストボル
トの回転を妨げることがないので、クラツチ作用
が確実に行なわれ、これによりアジヤスタ機構は
適格に作動し常に一定の制動間隙が得られる。ま
た、アジヤストボルト頭部の凹部とロツドの球面
状部の当接部であるクラツチ部は環状溝に嵌合さ
れた環状弾性部材より凹部の底部側に位置するた
め、カムシヤフト側からクラツチ部への異物の侵
入を防止できる等の効果を有している。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の一実施例を示すもので、第１図
は正面図、第２図は第１図の−断面側面図、
第３図はカムシヤフト取付部の斜視図、第４図は
カムシヤフト取付部の一部切断斜視図、第５図は
本考案の他の実施例を示す要部の断面側面図であ
る。 １はキヤリパ、４はシリンダ、１０はアジヤス
トボルト、１０ｂはその頭部、１１はナツト部
材、１９はカムシヤフト、２３はロツド、２４，
２８は環状溝、２５は弾性部材である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダ内に回転を規制して嵌合したピストン
   により画成された液圧室内に、アジヤストボルト
   とこれに多条ねじ螺合したナツト部材とを有する
   アジヤスタ機構を内蔵し、この多条ねじ螺合部を
   ピストン側に、液圧に応じて回転しまたは回転が
   規制されるクラツチ部をシリンダ側にそれぞれ配
   置し、この回転可能なアジヤストボルト頭部の凹
   部に、カムシヤフトに回転を規制して係合された
   ロツドを当接し、カムシヤフトの回転による機械
   的制動作動が可能な車両用ブレーキシリンダ装置
   において、前記ロツドの一端側に大径の球面状部
   を形成し、一方前記アジヤストボルト頭部の凹部
   に環状溝を形成してこの環状溝にゴム等の環状弾
   性部材を嵌合するとともに、前記ロツドの球面状
   部を前記アジヤストボルト頭部の凹部に挿入して
   クラツチ部となる両者の当接部を環状弾性部材よ
   りも凹部の底部側に位置させて、アジヤストボル
   トの回転及びロツドの揺動を妨げないように該ロ
   ツドを仮止めしたことを特徴とする車両用ブレー
   キシリンダ装置。