JPS621482Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、ギヤシフト用のカム筒を駆動する
機構の小型化を図り、これによつてエンジン自体
を小型にできるようにした多段歯車変速機の変速
装置に関するものである。

多段歯車変速機には、回転軸に一体に取り付け
られてこの回転軸と一体に回転するギヤに対し、
回転軸と平行に設けられた他の軸に移動自在に支
持したギヤを適宜噛み合わせて動力伝達を行なう
ようにしたものがある。このような多段歯車変速
機において、軸に移動自在に支持され、回転軸と
一体のギヤに適宜噛み合うギヤは、ギヤシフト用
のカム筒の回転によつて移動するギヤシフトフオ
ークにより軸の長手方向に移動することになる。

これをオートバイの多段歯車変速機について説
明すると、オートバイの場合には、エンジンと多
段歯車変速機とが１つのケースに納められてお
り、このケースから突出したギヤシフトシヤフト
をその一端に取り付けたギヤシフトレバーにより
回動させることにより、これと連係したカム筒を
回転させ、このカム筒の表面に設けられたカム溝
でギヤシフトフオークを軸の長手方向に移動さ
せ、このギヤシフトフオークによつて前述のギヤ
を動かして回転軸と一体のギヤに適宜噛み合わせ
るのである。

このような多段歯車変速機において、ギヤシフ
トシヤフトとカム筒との連係機構には、カム筒の
一端に複数本のギヤシフトドライブピンを等間隔
に円形に配列し、このギヤシフトドライブピン
を、前述のギヤシフトシヤフトに取り付けられた
ギヤシフトアームの先端と中間部に設けられた爪
によつて引掛けてカム筒を回転させるようにした
ものと、カム筒の一端とギヤシフトシヤフトの先
端にそれぞれギヤを設け、これらのギヤを噛み合
わせることによつてギヤシフトシヤフトの回動力
をカム筒に伝えるようにしたものとがある。この
うち前者のものは作動の円滑性の点でいま１つ問
題があり、後者のものはこの問題はないが、ギヤ
シフトシヤフトとカム筒との軸間距離が大きくな
り、したがつてエンジン全体が大型となつてしま
う問題があつた。

この考案はこのような問題を解決し、エンジン
自体を小型にできるようにしたもので、その一実
施例を展開図である第１図について説明すると、
１はカム筒であつて、外周面にカム溝２が設けら
れており、ギヤシフトフオーク３の基部を係合さ
せている。ギヤシフトフオーク３は、ケース４に
両端を支持（一端は図示省略）された軸５に、そ
の長手方向に移動自在に支持されている。そして
ギヤシフトフオーク３の先端には、前述した可動
側のギヤが支持されており、近接して設けられた
軸と一体の複数個のギヤに適宜噛み合うようにな
つているが、この部分の図示は省略する。

カム筒１はケース４に回動自在に支持されてい
て、このカム筒１に近接したところには、カム筒
１の軸線と並行のギヤシフトシヤフト６が、ベア
リング７を介してケース４に回動自在に支持され
ている。このギヤシフトシヤフト６のケース４よ
り突出した基端には、ギヤシフトレバー８が取付
けられている。ギヤシフトシヤフト６の先端側に
は、第２図に示すような形状のギヤ板９が、孔１
０にギヤシフトシヤフト６を貫通させて固着され
ている。

ギヤ板９には、孔１０の近傍にピン１１が植立
されており、また、孔１０を貫通しているギヤシ
フトシヤフト６の中心とピン１１の中心とを結ぶ
直線上のギヤ板９の近傍位置には、ピン１２が、
ケース４に植立されている。そしてこれら２つの
ピン１１，１２の両側には、ギヤシフトシヤフト
６に巻回されたコイルスプリング１３の両端が接
している。

ギヤ板９には、前述のギヤシフトシヤフト６の
中心とピン１１の中心とを結ぶ直線の両側に同じ
角度で延びている弧状の切欠き１４が、ピン１２
に沿うように設けてあつて、ギヤ板９の回動角を
一定の角度ａ（たとえば左右に15゜）となるよう
に規制している。

ギヤ板９にはさらに、孔１０を中心とした円弧
状になつている孔１５が設けられており、この孔
１５の外縁にインタナルギヤ１６が刻設されてい
る。一方、前述のカム筒１の一端にある軸部１７
には、カム筒１の方へ回転を伝えるワンウエイ機
構１８を備えたギヤ１９が取付けられている。そ
してこのギヤ１９はギヤ板９の孔１５内に位置
し、インタナルギヤ１６に噛み合わされている。

ギヤシフトレバー８を足で操作しない通常の状
態では、ピン１１，１２の両側に接しているコイ
ルスプリング１３の力によつて、ギヤシフトシヤ
フト６、ピン１１，１２の各中心は一直線上に並
び、弧状の切欠き１４の長さの中心にピン１２が
位置するようになる。

いま、ギヤシフトレバー８を踏んでギヤシフト
シヤフト６を回動させると、同時に回動するギヤ
板９のインタナルギヤ１６により、これと噛み合
つたギヤ１９も回動する。このときコイルスプリ
ング１３の一方の端部がピン１１に押されて側方
に変位し、ピン１１を介してギヤ板９およびギヤ
シフトシヤフト６にはコイルスプリング１３によ
る復元力が与えられると共に、切欠き１４とピン
１２によつて、ギヤ板９およびギヤシフトシヤフ
ト６の回動角規制も行なわれる。

ギヤ１９の回動角は、その歯数とインタナルギ
ヤ１６の円周に対応する歯数との比で決定される
が、一例として、ギヤシフトシヤフト６の回動角
の約４倍の角度（たとえばギヤシフトシヤフト６
が左右に15°回動するとき、左右に60゜）回動す
るように設定する。ギヤ１９の回動はワンウエイ
機構１８を介してカム筒１に伝えられ、カム筒１
を回動させることになる。カム筒１が回動するこ
とにより、ギヤシフトフオーク３が軸５に沿つて
移動し、変速操作が行なわれる。

ギヤシフトレバー８を踏まずに足で持ち上げ、
ギヤシフトシヤフト６を反対方向に回動させたと
きの作動も、カム筒１が逆方向に回動するほか
は、前述したのと変るところがない。

この考案は上述のように、ギヤシフトシヤフト
６に固着したギヤ板９にインタナルギヤ１６を形
成して、これにカム筒１のギヤ１９を噛み合わせ
たので、ギヤシフトシヤフト６とカム筒１との間
の距離を小さくすることができる。このため、多
段歯車変速機のケース、従つて多段歯車変速機を
内蔵したエンジンではエンジンケースを小型にす
ることができ、軽量化、コストダウン化が図れる
ことになる。

またピン１２と切欠き１４とにより、ギヤ板９
およびギヤシフトシヤフト６の回動角を一定角度
に規制するので、確実に変速段を変えることがで
き、足でギヤシフトレバー８を操作していないと
きには、コイルスプリング１３の復元力により、
切欠き１４の中心にピン１２が位置するようにな
り、一定の変速段に保持されると共にギヤ板９お
よびギヤシフトシヤフト６を何れの方向にも回動
できる態勢におかれるので、錯覚を生ずることが
なく間違いのない変速操作をすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の一実施例を展開して示した
断面図、第２図は第１図のギヤ板部分を右方から
見た正面図である。 １……カム筒、４……ケース、６……ギヤシフ
トシヤフト、８……ギヤシフトレバー、９……ギ
ヤ板、１１，１２……ピン、１３……コイルスプ
リング、１４……切欠き、１６……インタナルギ
ヤ、１９……ギヤ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ケースにギヤシフト用のカム筒とギヤシフトシ
   ヤフトとを回動自在に支持し、前記カム筒を回動
   させるギヤを前記カム筒の一端に設け、前記ギヤ
   を前記ギヤシフトシヤフトの先端側に固着したギ
   ヤに噛み合わせ、前記ギヤシフトシヤフトをその
   基端に取付けたギヤシフトレバーを足で操作する
   ことにより回動させて前記カム筒を回動させるよ
   うにした多段歯車変速機において、前記ギヤシフ
   トシヤフトの先端側に固着するギヤをインタナル
   ギヤを有するギヤ板に形成し、該ギヤ板のインタ
   ナルギヤに前記カム筒の一端に設けたギヤを噛み
   合せ、ケースの前記ギヤ板の近傍位置にピンを植
   立し、該ピンに沿う切欠きを前記ギヤ板に設けて
   前記ギヤ板の回動角を一定角度に規制し、前記切
   欠きの中心とギヤシフトシヤフトの中心とを結ぶ
   直線上において前記ギヤ板にピンを植立し、前記
   ギヤシフトシヤフトに巻回したコイルスプリング
   の両端を前記２つのピンの両側に当接し、前記切
   欠きの中心に前記ケースに植立したピンが位置す
   るようにしたことを特徴とする多段歯車変速機の
   変速装置。