JPS6138659Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

この考案は、調理器において、調理器庫内壁お
よびその他の調理用部材に適用して、調理時に食
物から飛散付着した油脂等の汚れを調理時の温度
で自動的に浄化することができる自己浄化型被覆
板に関するものである。 オーブンなどの調理器を用いて食品の調理を行
なう際に、調理器庫内壁面等に飛散付着した汚れ
を自動的に浄化する方法としては、米国特許第
3266477号をはじめとして、特公昭47−17832号や
その後も幾多の提案がなされている。これらのも
のの主流となる自己浄化方法は、結合剤すなわち
被覆形成材料としてガラス質フリツトを下地金属
の上に塗布されたエナメル基層上に焼き付け被覆
して多孔質層を形成し、この多孔質層中に含有さ
れた酸化触媒の働きにより調理時の温度で食物か
ら飛散付着した汚れを酸化分解してしまうもので
ある。しかし、これらのものは、800℃以上の高
温で焼成するため、酸化触媒の能力が低下する。
板厚がある程度厚くないと歪む、エネルギーを多
量に消費するなどの欠点があつた。これらの欠点
を補うものとして、たとえば、特公昭49−28120
号のように結合剤としてアルカリケイ酸塩を用い
るものが提案された。このものは焼付け温度が
260〜316℃（500〜600〓）程度で十分であり、こ
の意味では、上記欠点を補うものであると言え
る。 実験では、このような利点をもち、かつ耐熱性
があつてしかも多孔質な被覆を形成できる結合剤
として、アルカリケイ酸塩のほかにコロイダルシ
リカ、コロイダルアルミナ、ケイ素樹脂（すなわ
ちシリコーン）、アルミニウムホスフエート等の
金属第１りん酸塩も使用できることが確かめられ
た。ところが、これらの被覆材を下地金属（鋼
板、ステンレス鋼板、アルミナイズド鋼板など）
上に被覆したものは、下地との付着性が悪く、ヒ
ートシヨツクにより下地との熱膨張率の相違のた
めに、クラツクが生じたり、剥離したりし易く、
被覆層として長期の寿命を保障でききるものでは
ないのが現状である。 この考案は上記事情を十分考慮し、従来のもの
がもつ欠点を解消し、かつ浄化能力の高い自己浄
化型被覆板を提供するものである。 以下、図示実施例にしたがい、この考案を詳細
に説明する。 第１図は、不地金属１（アルミナイズド鋼板）
上にアルカリケイ酸塩を結合剤とした被覆２を施
した従来の自己浄化型被覆層の概略拡大断面図で
ある。３はアルカリケイ酸塩被覆２中に含有分散
された酸化触媒粒子である。 第２図はこの考案の自己浄化型被覆板を示す概
略拡大断面図である。４は下地の役目および被覆
２と強固に結合する役目をなす三次元網目すなわ
ち海綿状構造を有する金属多孔体であり、材質は
Niである。金属多孔体の材質としては、Niのほ
かにCu，Fe，Ag，Ni−Cr合金、Fe−Cr合金な
どが市販されているが、400℃程度で耐熱性およ
び耐食性があればいずれを用いてもよい。ただ
し、実験によれば、金属多孔体の比表面積が少な
くとも2000m²／m³を有しないものは、結合剤中に
酸化触媒３を含む被覆２（アルカリケイ酸塩を使
用）を第２図のように孔内に充てんし、しかも表
面を被覆することは行ないにくく、またたとえ行
ない得ても強固、堅牢なものは製作し難い。した
がつて、この考案で用いる金属多孔体の比表面積
は2000m²／m³以上である方がよいであると考えら
れる。また、板状の金属多孔体では、ハケ塗り
法、スプレー法、浸漬法のいずれを用いても、片
面のみでなく、両面にも第２図のような被覆を施
すことができる。 つぎに、第１図に示したような従来のアルカリ
ケイ酸塩を被覆したものと第２図のようなこの考
案の自己浄化型被覆板とについて、下地金属との
付着性を調べるため、ヒートサイクルテスト
（400℃←→室温各１時間で１サイクル）ならびに沸
騰水浸漬テストを行なつた。この結果を下の表に
示す。表の結果からわかるように第２図のように
形成したこの考案の自己浄化型被覆板は、金属多
孔体と結合剤とが強固に結合しており剥離やクラ
ツクを生じにくい。

【表】 同様の試験により、下地金属としてシヨツトブ
ラスト鋼板や金属表面をエツチングして粗くした
ものを用いて、被覆材との付着性を調べたが、こ
れらのものよりも、この考案の自己浄化型被覆板
の方がはるかに良好であつた。この理由は、この
考案のものでは、三次元網目状構造中に結合剤が
はいり込み、これと表面層にある結合剤とが金属
多孔体を骨材として強固にロツキングされるため
である。したがつて、結合剤としては、前記実施
例で用いたようなアルカリケイ酸塩のほかに、一
般には、下地金属との熱膨張率の相違により剥離
やクラツクが生じやすいことが知られているコロ
イダルシリカ、コロイダルアルミナ、金属の第１
りん酸塩などの無機質コーテイングをはじめ、ケ
イ素樹脂を塗布後高温で焼成したものも使用する
ことができ、実験では前記アルカリケイ酸塩の場
合と同様に堅牢な被覆を形成できることがわかつ
た。 つづいて、この考案の自己浄化型被覆板の調理
器への適用例を示す。 第３図は、この考案の自己浄化型被覆板を調理
器庫内壁８に適用した実施例を示したものであ
る。５は調理皿、６は食物、７は調理に使用する
ヒータである。なお、自己浄化型被覆板を調理器
庫内壁にはり合わせるためには、第３図のように
ネジ９によりネジ止めを行なえばよい。また、第
３図には描いてないが、この考案の自己浄化型被
覆板を調理器庫内の天井板に適用することもで
い、この部位は汚れの清掃が行ないにくい部位で
あるため非常に有効である。 第４図は、この考案の自己浄化型被覆板をヒー
タが上下に可動なタイプの調理器において、可動
ヒータ１０の上に配置して使用する反射板１２に
適用した実施例を示したものである。１１は可動
ヒータ１０が上下するための溝（レール）であ
る。反射板１２はヒータ１０の熱を反射すること
により、食物６への加熱効率を向上させ、かつ調
理時に食物６からの汚れを受け止めて、広く飛散
させないような役目をもつものである。 被覆材としてアルミニウムホスフエート（第１
りん酸アルミニウム）を用い、酸化触媒として二
酸化マンガンを用いて、第２図のように製作した
自己浄化型被覆板を第３図および第４図のように
調理器に適用して調理を行なつたところ、食物か
ら飛散した汚れが、調理時においてきれいに浄化
されることを確かめた。 さらに、第２図のように製作したこの考案の自
己浄化型被覆板の汚れ浄化能力を第１図のような
従来のものと比較して測定した。それぞれの表面
にバター約50mgを表面10点に付着させ、150℃か
ら350℃まで50℃おきにそれぞれ電気炉中で加熱
した後の重量変化から浄化率特性図を作成した。
この結果を第５図および第６図に示す。いずれも
曲線Ａはこの考案の実施例を示す特性図、曲線Ｂ
は従来のものの特性図であり、第５図では酸化触
媒としてPtを用い、第６図では同じくNiおよび
Cuの酸化物を混合して用いたものである。ただ
し、いずれの図の場合も、この考案のものならび
に従来のものとも被覆材としては、アルミニウム
とホスフエートを使用した。第５図および第６図
からわかるように、この考案のものの方が従来の
ものよりも各温度における浄化率が優れているこ
とがわかる。この理由としては、この考案のもの
が第２図のような構造を有しているため、表面に
付着した汚れが三次元網目構造の内部まで浸透
し、内部に含有されている酸化触媒と接触する機
会が多いためであると考えられる。 また、第５図と第６図を比べると、第５図のよ
うに高価なPtを酸化触媒として用いずとも、この
考案のものではNiやCuの酸化物でも実調理温度
である250〜300℃においてかなり高い浄化率を示
すことがわかる。一般に、有機物等を酸化分解す
る触媒としては、白金族金属や金属酸化物が知ら
れており、前者は酸素を脱吸着する能力を有し、
後者は自身の構造中にある酸素の働きにより、そ
れぞれ酸化触媒作用をなすと言われている。第５
図および第６図の場合と同様にして行なつた実験
によれば、食物から飛散する油、バター、サラダ
油ならびに調味料等の汚れを浄化する酸化触媒と
しては、PtのほかにPdの金属粒子や、Ni，Cuの
酸化物のほかにはMn，Cr，Co，Feの金属の酸
化物粒子も汚れ浄化率がすぐれており、この考案
で使用できることを見い出した。 以上説明したように、三次元網目状構造を有す
る金属多孔体において、金属多孔体の孔内に充て
んされ、しかも表面にも被覆されている結合剤中
に酸化触媒粒子が全体に均一に含有分散されてい
るこの考案の自己浄化型被覆板であれば、調理器
の庫内壁および調理時に使用する部材に適用した
場合に、食物から飛散付着した汚れを調理時の温
度において高効率で自動浄化できるばかりでな
く、結合剤の剥離やクラツクを生じにくく堅牢で
あるため実用上きわめて価値の高いものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は、従来の自己浄化型被覆層を示す拡大
断面図、第２図はこの考案の自己浄化型被覆板を
示す概略拡大断面図、第３図はこの考案の自己浄
化型被覆板を調理器庫内壁に適用した例を示す斜
視図、第４図は同じく調理用反射板に適用した例
を示す斜視図、第５図と第６図はこの考案の自己
浄化型被覆板の汚れ浄化能力を示す特性図であ
る。 図中同一符号は同一または相当部分を示し、１
は下地金属、２は被覆層、３は酸化触媒粒子、４
は三次元網目状構造を有する金属多孔体、５は調
理皿、６は食物、７はヒータ、８は調理器庫内
壁、９はネジ、１０は可動ヒータ、１０はレー
ル、１２は反射板である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 三次元網目状構造を有する金属多孔体と、こ
   の孔内に充てんされ、かつその表面にも被覆さ
   れている結合剤とから成り、この結合剤中に酸
   化触媒粒子が全体に均一に含有分散されている
   ことを特徴とする自己浄化型被覆板。 (2) 上記金属多孔体の比表面積が2000m²／m³以上
   であることを特徴とする実用新案登録請求の範
   囲第１項記載の自己浄化型被覆板。 (3) 上記結合剤の主成分がアルカリケイ酸塩、コ
   ロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ケイ素
   樹脂、金属の第１りん酸塩のうちのいずれか１
   つであることを特徴とする実用新案登録請求の
   範囲第１項または第２項記載の自己浄化型被覆
   板。 (4) 上記酸化触媒が、Pt，Pdの金属およびMn，
   Cr，Ni，Co，Cu，Feの金属の酸化物よりなる
   群から選択された少なくとも１種のものである
   ことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第１
   〜３項記載のいずれかの自己浄化型被覆板。