JPS6136793Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、自動車エンジン用内接ギア式オイル
ポンプに関するもので、特にオイルシールからの
オイル洩れを防止する問題を取扱うものである。

一般に、自動車エンジン用内接ギア式オイルポ
ンプに於いては、エンジンのクランク軸により駆
動され、このクランク軸とポンプハウジングの軸
受部との間にオイルシールを装着し、該オイルシ
ールの作用により、ポンプハウジングと外歯ギア
（駆動ギア）との間からオイルシール内に流れる
オイルのエンジン外部への洩れを防止している。
また、余分なオイルをクランクケース内に戻すた
めに、ポンプハウジングにクランクケース内のオ
イルパンと連通するオイル逃がし穴が形成されて
いる。しかしながら、このオイル逃がし方式で
は、ポンプハウジングの肉厚寸法の制約から、通
常このオイル逃がし穴は小径の細穴形状となつて
いる。そのため、逃がし穴を通り得るオイル流量
が十分ではなく、オイルシール内に過大な圧力が
加わりやすい。この様に、高い圧力がオイルシー
ルに加わると、オイルのエンジン外部への洩れの
原因となる。そこで、オイルシールに加わる圧力
の過度な上昇を防止するために、逃がし穴の直径
を大きく設定する技術手段が考えられるが、この
技術的手段によると、オイルポンプの外径および
クランク軸長を増加させる必要があるという問題
点があつた。

従つて本考案は、上記した従来技術の問題点に
鑑みて、オイルポンプの外径およびクランク軸の
軸長を何ら変更することがなく、オイルシールに
加わるオイル圧力の過大な上昇を防止すること
を、その技術的課題とする。

上記技術的課題を解決するために講じた本考案
の技術的手段は、クランク軸の平坦部に対向する
駆動ギアの内周面に該駆動ギアの軸心に対して対
象の位置に一対の凹状オイル逃がし溝を設け、該
オイル逃がし溝を介して更にオイルシール内のオ
イルをクランクケースに戻すようにし、前記駆動
ギアを焼結材で形成する、ことである。

本考案の構成は以上のようであるので、エンジ
ン回転時にオイルシール内のオイル圧が過大に上
昇して、ポンプハウジングに形成されるオイル逃
がし穴のみでオイルシール内のオイルを十分にク
ランクケース内に戻すことが出来ない場合でも、
クランク軸と駆動ギアとの間に設けられる一対の
オイル逃がし溝により、オイルシール内のオイル
を確実にクランクケース内に戻すことが出来、オ
イルシールからエンジン外部へのオイル洩れを事
前に防止することが可能となる。

以下本考案を具体化した実施例について、添付
図面に従つて説明する。第１図は本考案のオイル
ポンプが、自動車エンジンのフロント側に取付け
られた状態を示す断面図である。図において、ポ
ンプ本体１０はボルト１１により、エンジンブロ
ツクＥに固定されている。ポンプハウジング１２
内には、エンジンのクランク軸Ｓに嵌着固定され
た駆動ギア１３と、該駆動ギア１３と内接噛合す
る従動ギア１４とが配設され、その際駆動ギア１
３は従動ギア１４の内部に偏心して嵌装されるも
のである。駆動ギア１３は焼結材で形成されるも
ので、該駆動ギア１３の外周に設けられた外歯１
３ａと、従動ギア１４の内周に設けられた内歯１
４ａとの噛合は、図示しないオイルの吸込側と吐
出側との間の密封場所１５で行われる。該密封場
所１５に対向した直径の駆動ギア１３と従動ギア
１４との間の隙間にクレセント状の充填部材１６
が配置されており、該充填部材１６は駆動ギア１
３及び従動ギア１４の各歯形空間に封入されたオ
イルを夫々高圧側へ移送するように、図示しない
吸込側（負圧側）と吐出側（正圧側）を仕切る働
きを成すものである。

ポンプハウジング１２のクランク軸Ｓに対応す
る軸受部１２ａにはオイルシール１７が装着され
ている。つまり、クランク軸Ｓと軸受部１２ａと
の間に装着される該オイルシール１７は、クラン
ク軸Ｓの外周面とポンプハウジング１２の軸受部
１２ａとの隙間からのオイル洩れを防止するもの
であり、スプリング１８を配設することにより更
にそのオイル洩れの防止を確実にしている。通常
オイルシール１７の材質は、シール性能は勿論の
こと、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性、耐油性等に優
れることが必要とされる。オイルシール１７内の
余分のオイルは、ポンプハウジング１２に形成さ
れるオイル逃がし穴２１を介して、クランクケー
ス内に戻される。更に、クランク軸Ｓの平坦部に
対向し、該平坦部に嵌着固定される駆動ギア１３
の内周面１３ｂに、凹状の一対のオイル逃がし溝
１９，２０が駆動ギア１３のギア軸心に対して対
称の位置に設けられている。オイルシール１７内
の油圧が高くなると、該シール１７内のオイルは
上記オイル逃がし穴２１のほかに逃がし溝１９，
２０を介してエンジンのクランクケース内部に流
れ、その結果オイルシール１７内の油圧の低下が
計られる。

以上詳述した様に、本考案による自動車エンジ
ン用内装ギア式オイルポンプに於いては、駆動ギ
ア１３とクランク軸Ｓとの間に、オイルの逃がし
溝１９，２０が設けられているので、オイルシー
ル１７内の油圧が高くなると該シール１７内のオ
イルがオイル逃がし穴２１のほかに逃がし溝１
９，２０を介してエンジン内部に流れて、その結
果オイルシール１７内の油圧の低下を計ることが
出来る。従つて、オイルシール１７からのエンジ
ン外部へのオイル洩れを確実に防止することが可
能で、オイル洩れに伴う諸トラブルを解消するこ
とが出来るという効果がある。

ところで、駆動ギアに単一のオイル逃がし溝を
形成するものにあつては、駆動ギアがクランク軸
に嵌着固定される構成であることから、その中心
にオイル逃がし溝を形成することができず、回転
時のアンバランス原因となるが、本考案のオイル
逃がし溝１９，２０は駆動ギア１３のギア軸心に
対して対称の位置に設けられるものであるから、
回転バランスにすぐれているという効果がある。
また、本考案のオイル逃がし溝は、駆動ギアとク
ランク軸との間に一対形成されるものであるか
ら、例えば特公昭45−25058号公報の第５図に示
される様に単一の細穴状のオイル逃がし溝がオイ
ル中のスラツジにより詰る恐れが大である従来技
術に比し、スラツジによる目詰りの発生が低減で
き、低温時にオイル粘度が高くなる場合でもオイ
ルをスムーズに逃がすことが可能となる。また、
駆動ギアは、クランク軸に嵌着固定されるもので
あることから、この嵌着部を円状とすると両者を
一体回転させるためのキー部材等を必要とするた
め、クランク軸に平坦部を設け、この平坦部に対
応する駆動ギア部分を厚肉にすることが考えられ
るが、本考案のオイル逃がし溝は駆動ギアの内周
面に凹状に形成されるのであるから、上記厚肉部
を凹状に形成することができる。従つて、この様
に形成すれば、駆動ギアの各部の肉厚の差異を低
減でき、各部の剛性を比較的均一化でき、更に駆
動ギアが焼結材で形成されているので、焼結成形
時の歪の発生を低下できるという効果がある。且
つ、オイル逃がし溝が駆動ギアの内周面に凹状形
成されるものであるから、長穴状のものに比し、
焼結成形等、各種の加工が容易にできるという効
果もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案内接ギア式オイルポンプを自動
車のエンジンに取付けた状態を示す断面図、第２
図は第１図に於けるＡ−Ａ断面図である。 Ｅ……エンジンブロツク、Ｓ……クランク軸、
１２……ポンプハウジング、１２ａ……軸受部、
１３……駆動ギア、１３ａ……外歯、１４……従
動ギア、１４ａ……内歯、１７……オイルシー
ル、１９，２０……オイル逃がし溝、２１……オ
イル逃がし穴。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ポンプハウジングと、エンジンのクランク軸に
   嵌着固定された駆動ギアと、該駆動ギアの外周に
   設けられた外歯と内接噛合をする内歯を内周に設
   けた従動ギアと、前記クランク軸と前記ポンプハ
   ウジングの軸受部との間に装着されたオイルシー
   ルと、該オイルシール内のオイルをクランクケー
   スに戻すために前記ポンプハウジングに形成され
   たオイル逃がし穴とを有するオイルポンプに於い
   て、前記クランク軸の平坦部に対向する前記駆動
   ギアの内周面に前記駆動ギアの軸心に対して対象
   の位置に一対の凹状のオイル逃がし溝を設け、該
   オイル逃がし溝を介して更に前記オイルシール内
   のオイルを前記クランクケースに戻すようにし、
   前記駆動ギアを焼結材で形成する、自動車エンジ
   ン用内接ギア式オイルポンプ。