JPH1193038A - 強撚糸織物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピーチ感と張り、腰、反発性を具備する強撚
糸織物を提供する。 【解決手段】 経糸及び又は緯糸がポリエステル異収縮
混繊糸の強撚糸であって、該異収縮混繊糸を構成する少
なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレート繊維
であることを特徴とする強撚糸織物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は強撚糸織物に関し、
更に詳しくは強撚糸織物を構成する少なくとも一成分が
ポリトリメチレンテレフタレート繊維である強撚糸織物
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ポリエステル異収縮混繊糸を用いた織物
は、本絹的な表面タッチ、優雅な光沢及びピーチ感を有
するいわゆるシルキーライクな織物として人気を博して
いるが、一般的に異収縮混繊糸織物は張り、腰、反発性
が不足する欠点がある。これを改善する方法として例え
ば、異収縮混繊糸を強撚糸にすることが考えられるが、
強撚糸にすることによって異収縮混繊糸の特徴であるシ
ルキー風合特にピーチ感が損なわれるために通常は甘撚
程度の撚糸が用いられている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる欠点を
改善し、本絹的な表面タッチ、優雅な光沢及びピーチ感
を有し、張り、腰、反発性を具備する強撚糸織物を提供
することを目的とするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を
重ねた結果、異収縮混繊糸を構成する繊維として特定の
ポリエステル繊維を用い、かつこれを強撚糸にすること
によりかかる欠点が改善されることを見出し、本発明に
到達した。一般的に異収縮混繊糸を強撚することは異収
縮混繊糸の特徴を大きく損なうためにタブーとなってい
たことであり、本発明は該業界の既成概念を打破したも
のである。本発明はカバーファクターが１５００〜３５
００の強撚糸織物であって、経糸及び／又は緯糸が撚係
数１００００〜３００００のポリエステル異収縮混繊糸
であり、かつ該異収縮混繊糸を構成する少なくとも一成
分がポリトリメチレンテレフタレート繊維であることを
特徴とする強撚糸織物である。

【０００５】本発明は、ポリトリメチテレフタレート繊
維を少なくとも一成分とする異収縮混繊糸を用いること
に加えて、この異収縮混繊糸を経糸及び／又は緯糸に用
いるに際し、撚係数が１００００〜３００００、好まし
くは１４０００〜２７０００、さらに好ましくは１７０
００〜２７０００の強撚糸とし、かつ、カバーファクタ
ーが１５００〜３５００、好ましくは１７００〜２７０
０の強撚糸織物となすことにより特にピーチ感と張り、
腰、反発性を合わせ持った織物が得られるものである。

【０００６】ここで、撚係数、カバーファクターとは次
の式で表されるものである。 撚係数 ＝ 撚数×√糸の繊度 カバーファクター ＝ 経密度×√経糸の繊度＋緯密度
×√緯糸の繊度 本発明の強撚糸織物では、特にかかる異収縮混繊糸の強
撚糸を経糸及び緯糸に用いたジョーゼットに代表される
経緯強撚糸織物や、異収縮混繊糸の強撚糸を緯糸に用
い、経糸に撚係数が０〜４０００好ましくは０もしくは
１５００〜３５００の無撚糸や甘撚糸を用いたいわゆる
特にデシンに代表される緯強撚織物にした場合に最も効
果的である。

【０００７】異収縮混繊糸の撚係数が１００００未満で
は張り、腰、反発性が不足し、３００００を越えると二
重撚や断糸が生じる。さらにカバーファクターが１５０
０未満では経糸と緯糸のスリップによりいわゆる目ズレ
が発生し、３５００を越えると風合いが硬くなり強撚糸
の表面外観、風合いが損なわれる。本発明において異収
縮混繊糸とは、熱収縮率の異なる少なくとも二種の繊維
群からなり、最も高い熱収縮率を有する繊維群（高収縮
群）と最も低い熱収縮率を有する繊維群（低収縮群）と
の沸水収縮率の差が６％以上、好ましくは１０％〜２５
％であり、トータル沸水収縮率は１０％以上、好ましく
は１５〜３５％のものである。本発明の特徴はかかる異
収縮混繊糸の少なくとも一成分をポリトリメチレンテレ
フタレート繊維で構成したものであり、特にポリトリメ
チレンテレフタレート繊維を低収縮群に用いたものであ
り、該適用が最適である。

【０００８】本発明において、ポリトリメチレンテレフ
タレート繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を
主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、ト
リメチレンテレフタレート単位を約５０モル％以上、好
ましくは７０モル％以上、さらには８０モル％以上、特
に好ましくは９０モル％以上のものをいう。従って、第
三成分として他の酸成分及び／又はグリコール成分の合
計量が約５０モル％以下、好ましくは３０モル％以下、
さらに好ましくは２０モル％以下、特に好ましくは１０
モル％以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフ
タレートを包含する。

【０００９】ポリトリメチレンテレフタレートは、テレ
フタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコ
ール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当
な反応条件下に結合せしめることにより製造される。こ
の製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成
分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、
ポリエチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレ
フタレート以外のポリエステル、ナイロンなどとポリト
リメチレンテレフタレートとを別個に製造した後、ブレ
ンドしたり、複合紡糸（鞘芯、サイドバイサイド等）し
てもよい。

【００１０】添加する第三成分としては、脂肪族ジカル
ボン酸（シュウ酸、アジピン酸等）、脂環族ジカルボン
酸（シクロヘキサンジカルボン酸等）、芳香族ジカルボ
ン酸（イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸
等）、脂肪族グリコール（エチレングリコール、１，２
−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール
等）、脂環族グリコール（シクロヘキサンジオール
等）、芳香族ジオキシ化合物（ハイドロキノンビスフェ
ノールＡ等）、芳香族を含む脂肪族グリコール（１，４
−ビス（β−ヒドロキシエトキシ）ベンゼン等）、ポリ
エーテルグリコール（ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール等）、脂肪族オキシカルボン酸（ω
−オキシカプロン酸等）、芳香族オキシカルボン酸（Ｐ
−オキシ安息香酸等）等が挙げられる。また、１個又は
３個以上のエステル形成性官能基を有する化合物（安息
香酸等又はグリセリン等）も重合体が実質的に線状であ
る範囲内で使用できる。

【００１１】さらに本発明のポリトリメチレンテレフタ
レート繊維には、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の
安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸
収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、
ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制
電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含
有されていてもよい。また、繊維の形態は、長さ方向に
均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても
丸型、三角、Ｌ型、Ｔ型、Ｙ型、Ｗ型、八葉型、偏平、
ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形
なものでもよい。

【００１２】本発明においては、かかるポリトリメチレ
ンテレフタレート繊維を異収縮混繊糸の少なくとも一成
分とするものであるが、組み合わせる他のポリエステル
繊維としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、
ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフ
タレート繊維及びこれらに第三成分を共重合したコポリ
エステルがあるが、特に高収縮群としては共重合ポリエ
チレンテレフタレート繊維が好ましい。

【００１３】かかるポリエステル異収縮混繊糸を製造す
る方法としては、例えば特公昭６１ー１３００９号公報
で示される低収縮群と高収縮群とを同一口金より紡糸し
てなるいわゆる紡糸混繊糸や、特公昭４８ー２５３８８
号公報、特公昭５５ー２２５８６号公報、特公昭６２ー
４６６５６号公報、特公昭６２ー４９３８０号公報に例
示されているような特性の異なるポリエステルマルチフ
ィラメント糸を延撚工程等の紡糸以降の工程で合糸混繊
されてなるいわゆる後混繊糸等がある。本発明のポリエ
ステル異収縮混繊糸の太さは５０〜１５０ｄ、好ましく
は７５〜１２０ｄがよく、又、低収縮群と高収縮群の混
合重量比は１：３〜３：１が好ましい。

【００１４】本発明においては、かかる異収縮混繊糸の
強撚糸を経糸及び又は緯糸用いたものであるが、希望に
応じて撚係数の異なる糸条を配列してもよく、無地かス
トライブ等希望する織物外観に応じて適宜選定すればよ
く、例えば、１本交互〜６本交互（１：１〜６：６）や
１本：２本交互、１本：３本交互、１本：４本交互等が
あり、さらに希望するシボ立てや撚バランスを考慮して
撚方向の異なる糸条即ちＳ撚糸（Ｓ）とＺ撚糸（Ｚ）を
適宜組み合わせて配列してもよく、例えば、Ｓ−Ｚ、Ｓ
−Ｓ−Ｚ−Ｚ、Ｓ−Ｚ−Ｚ−Ｓ等がある。

【００１５】本発明において、かかるポリエステル異収
縮混繊糸の強撚糸と他の繊維を混用する形態としては、
例えば、 経糸又は緯糸の一方にポリエステル異収縮混繊糸の強
撚糸、他方に他の繊維を用いたり、 経糸及び緯糸にポリエステル異収縮混繊糸の強撚糸、
他の繊維を混用して用いたり、 経糸又は緯糸の一方にポリエステル異収縮混繊糸の強
撚糸と他の繊維を混用して用い、他方にポリエステル異
収縮混繊糸の強撚糸又は他の繊維を用いたり、する方法
がある。

【００１６】混用する他の繊維としては、例えば、本発
明のポリエステル異収縮混繊糸の甘撚糸、単糸デニール
が０．１〜５デニールのポリトリメチレンテレフタレー
ト繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレ
ンテレフタレート繊維及びこれらに第三成分を共重合し
たコポリエステル等のポリエステルマルチフィラメント
糸並びにその甘撚糸ないしは強撚糸、部分延伸糸（ＰＯ
Ｙ）の延伸仮撚糸（ＤＴＹ）、６０００ｍ／分好ましく
は７０００ｍ／分以上の巻取り速度で紡糸したスピンテ
イクアップ方式や４０００ｍ／分好ましくは５０００ｍ
／分以上の巻取り速度で紡糸ー延伸ー巻取りを一連工程
で行うスピンドローテイクアップ方式で得られたいわゆ
る高速紡糸のポリエステル糸条、従来のポリエステル異
収縮混繊糸、例えば特に高収縮成分として、２・２ービ
ス｛４ー（２ーヒドロキシエトキシ）フェニル｝プロパ
ンを含む共重合ポリエチレンテレフタレートからなり、
糸全体の沸水収縮率が８〜３０％で、両繊維群の沸水収
縮率差が６〜２５％であるポリエステル異収縮混繊糸、
好ましくは同じく本出願人が先に特開平４−１００９４
５号公報で提案した単糸デニールが１．５デニール以下
でかつ沸水収縮率８％以下、沸水収縮処理後の初期引張
抵抗度９００ｋｇ／ｍｍ² のポリエステルマルチフィラ
メント糸と、沸水収縮率２０％以上、沸水収縮処理後の
初期引張抵抗度１００〜５００ｋｇ／ｍｍ² のポリエス
テルマルチフィラメントとを交絡度２０〜８０コ／ｍで
混繊交絡した異収縮混繊糸、同時仮撚、位相差や伸度差
仮撚によって得られる複合構造加工糸、１フィード又は
２フィードの流体噴射加工糸等並びにこれらの無撚糸や
甘撚糸（撚係数が０〜４０００、好ましくは０もしくは
１５００〜３５００）ないしは強撚糸（撚係数が１００
００〜３００００、好ましくは１４０００〜２７００
０）がある。

【００１７】織物の組織については、平、綾、朱子及び
これら変化組織があるが特に朱子組織が好ましい。仕上
げ工程としては、製織後、通常異収縮混繊糸が１５％以
上収縮するような条件で精練リラックス処理し、その後
減量率１０〜３０％程度のアルカリ減量加工を行い、染
色、仕上げ加工を行うが、さらに、例えばエメリーペー
パー、ブラシ、針布等によりいわゆるピーチスキンのよ
うな起毛を付与してもよく、その他エンボス、プリント
等の各種の仕上げ加工を施しても良い。又、柔軟剤、揆
水剤、制電剤等の仕上げ処理剤を用いても良い。

【００１８】

【実施例】以下、本発明を実施例で具体的に説明する
が、本発明は実施例などにより何ら限定されるものでは
ない。なお、本発明における沸水収縮率はＪＩＳ−Ｌ１
０９５に準じて測定した。 ＜異収縮混繊糸の製法＞低収縮成分糸条として、ηｓｐ
／ｃ＝０．８のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸
温度２６５℃、紡糸速度１２００ｍ／分で紡糸して未延
伸糸を得た。次いで得られた未延伸糸をホットロール温
度６０℃、ホットプレート温度１４０℃、延伸倍率３
倍、延伸速度８００ｍ／分で延撚して、２５ｄ／１２ｆ
の延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度、弾性率並びに１
０％伸長時の弾性回復率は、各々３．２ｇ／ｄ、４６
％、３０ｇ／ｄ並びに９８％であった。又、沸水収縮率
は１１％であった。

【００１９】尚、１０％伸長時の弾性回復率は、試料に
０．０１ｇ／ｄの初荷重をかけ、毎分２０％の伸びの一
定割分の速度で伸ばし、伸度１０％になったところで今
度は逆に同じ速度で収縮させて、応力−歪曲線を画き、
収縮中、応力が初荷重と等しい０．０１ｇ／ｄにまで低
下した時の残留伸度をＬとすると、下記式で算出した値
である。 １０％伸長時の弾性回復率＝〔（１０−Ｌ）／１０〕×
１００（％） 高収縮成分糸条として、固有粘度（η）＝０．７５、
２，２ービス｛４−（２−ヒドロキシエトキシ）フェニ
ル｝プロパンを全グリコール成分に対して１０モル％共
重合したポリエチレンテレフタレートを紡糸し８００ｍ
／分の速度で巻き取った後、熱延伸を行い２５ｄ／１２
ｆの糸条（沸水収縮率２２％）を得た。これら低収縮成
分糸条と高収縮成分糸条とをインターレース混繊して交
絡数６４、トータルの沸水収縮率２１％の５０ｄ／２４
ｆの異収縮混繊糸を得た。

【００２０】（実施例１）経糸及び緯糸に、上記で得ら
れた５０ｄ／２４ｆの異収縮混繊糸にＳ方向とＺ方向の
２５００Ｔ／ｍの追撚を施して強撚糸条としたものを２
本交互でに用いて平ジョーゼットクレープを作製した。
得られた平ジョーゼットクレープの織物規格は経糸密度
が９５本／吋、緯糸密度が７２本／吋であった。該平ジ
ョーゼットクレープを常法に従い精練リラックス、プレ
セットを行った後、２０％の減量加工、次いで染色し、
仕上げた。得られた平ジョーゼットクレープの織物規格
は経糸密度１４８本／吋、緯糸密度１１４本／吋；カバ
ーファクターは１８５２であった。該平ジョーゼットク
レープはシルキー風合い特に、ピーチ感に優れ、張り、
腰、反発性の富んだものであった。

【００２１】（比較例１）実施例１において、異収縮混
繊糸の低収縮成分糸条としてポリトリメチレンテレフタ
レート糸条に代えて２５ｄ／１２ｆのポリエチレンテレ
フタレート糸条（沸水収縮率７％）を用いた以外は実施
例１同様にして平ジョーゼットクレープを作製した。得
られた平ジョーゼットクレープはシルキー風合い、特に
ピーチ感が損なわれたものであった。

【００２２】（比較例２）実施例１において用いた異収
縮混繊糸にＳ方向の２５０Ｔ／ｍの甘撚を施したものを
経糸及び緯糸に用いて羽二重を作製した。得られた羽二
重の織物規格は経糸密度が１００本／吋、緯糸密度が９
０本／吋であった。該羽二重を常法に従い精練リラック
ス、プレセットを行った後、１０％の減量加工、次いで
染色し、仕上げた。得られた羽二重の織物規格は経糸密
度１１８本／吋、緯糸密度１１２本／吋；カバーファク
ターは１６２６であった。該羽二重はシルキー風合い、
特にピーチ感には優れたものであったが、張り、腰、反
発性に劣るものであった。

【００２３】

【発明の効果】本発明により、ピーチ感と張り、腰、反
発性を具備する強撚糸織物を提供することができた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カバーファクターが１５００〜３５００
   の強撚糸織物であって、経糸及び／又は緯糸が撚係数１
   ００００〜３００００のポリエステル異収縮混繊糸であ
   り、かつ該異収縮混繊糸を構成する少なくとも一成分が
   ポリトリメチレンテレフタレート繊維であることを特徴
   とする強撚糸織物。