JPH119294A - S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸の製造法 - Google Patents
S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸の製造法Info
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- JPH119294A JPH119294A JP18596297A JP18596297A JPH119294A JP H119294 A JPH119294 A JP H119294A JP 18596297 A JP18596297 A JP 18596297A JP 18596297 A JP18596297 A JP 18596297A JP H119294 A JPH119294 A JP H119294A
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Abstract
物の存在下、フマル酸とエチレンジアミンの混合物から
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸を酵
素反応により製造する方法において、フマル酸およびエ
チレンジアミンの総仕込み濃度をそれぞれ500〜25
00mMおよび250〜1250mMとし、水酸化アル
カリまたはアンモニアにより反応液のpHを7.5〜
9.5の範囲に調整し、反応温度を0〜45℃の範囲と
する。 【効果】反応系の基質を高濃度に仕込み、さらに諸条件
を最適化することにより、フマル酸とエチレンジアミン
からのS,S−EDDS製造における酵素反応収率を飛
躍的に改善し、効率的にS,S−EDDSならびにその
ナトリウム塩等を製造できる。
Description
フマル酸とエチレンジアミンからS,S−エチレンジア
ミン−N,N’−ジコハク酸を製造する方法に関する。
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸は重
金属を補足するという特異な性質を持ち、自然界に放出
された後に生分解を受け易く、キレート剤、洗剤用ビル
ダーや写真用漂白剤などの用途が見込まれる。
酸(以下EDDSと略記)の立体異性体混合物(S,S
−、R,R−、meso−体)は有機合成的手法により
マレイン酸とエチレンジアミンから〔米国特許第3,158,
635 号参照〕、また、その光学活性体であるS,S−体
はL−アスパラギン酸とジブロムエタンから〔John A.N
eal et al. Inorganic Chem. 7, 2405 (1968) 参
照〕、各々製造できるとの報告がある。しかし、L−ア
スパラギン酸とジブロムエタンからの製法では、製造原
料が比較的高価であるため、安価で汎用性のある光学活
性体を供給することは困難である。
S−EDDSが放線菌MG417−CF17株の培養液
からホスホリパーゼCの特異的阻害剤として単離同定さ
れており〔T. Nishikiori et al., J. Antibiotics 37,
426 (1984) 参照〕、これらの放線菌を用いて発酵法に
よりS,S−EDDSを生産する方法が提案されている
が〔PCT/EP96/01868号公報参照〕、製造時に微生物の生
育を伴うため、生産物の高濃度蓄積が難しく生産性に限
界がある。
酵素反応によりフマル酸と各種ジアミンから効率よく光
学活性ジアミノアルキレン−N,N’−ジコハク酸など
を製造する新規な方法を提案した〔特願平8-79404 号明
細書、EP 0731171 A公報参照〕。しかしながら、収率の
面で必ずしも充分な成果を得るに至らなかった。
法として、本発明者らは、既に該反応系にマグネシウム
等の多価金属イオンを存在させることにより反応収率を
大幅に向上させる方法を見出している〔特願平9-124700
および及び同9-31399 号明細書参照〕。ところで、S,
S−EDDSをキレート剤や洗剤用ビルダーとして使用
する際には、ナトリウム等の1価の陽イオンとの塩とし
て用いるのが一般的であるが、上記多価金属イオンを用
いる反応においては、鉱酸等を用いて、一旦、S,S−
EDDSを晶析、回収後、水酸化ナトリウム等のアルカ
リを添加して塩にする必要があり、操作面および晶析後
の母液中に含まれる多量の無機塩等の処理の面、さらに
は使用した多価金属の除去の面で問題があった。したが
って、本発明は、微生物によるS,S−EDDSの製造
において、反応収率を向上させ、効率的にS,S−ED
DSならびにそのナトリウム塩等を製造することを課題
とする。
を解決すべく鋭意研究を行った結果、反応系の基質を高
濃度に仕込み、さらに諸条件を最適化することにより、
フマル酸とエチレンジアミンからのS,S−EDDS製
造における酵素反応収率を飛躍的に改善し、効率的に
S,S−EDDSならびにそのナトリウム塩等を製造で
きることを見い出し本発明に到達した。
る微生物または該処理物の存在下、フマル酸とエチレン
ジアミンの混合物からS,S−エチレンジアミン−N,
N’−ジコハク酸を酵素反応により製造する方法におい
て、フマル酸およびエチレンジアミンの総仕込み濃度を
それぞれ500〜2500mMおよび250〜1250
mMとすること、水酸化アルカリまたはアンモニアによ
り反応液のpHを7.5〜9.5の範囲に調整するこ
と、および反応温度を0〜45℃の範囲とすることを特
徴とするS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハ
ク酸の製造法である。
び反応温度が、それぞれ上記条件において、化学平衡点
を基質側から、より生成物側へ移動させるとの本発明者
による実験的知見に基づくものである。
媒の種類に左右されることはない。したがって、諸条件
を等しくした場合、本発明における化学平衡点は副反応
やその他の反応が関わらない限り、すべての触媒につい
て一様の値を示す。すなわち、本発明の触媒であるリア
ーゼがいずれの微生物由来であるかは、それがS,S−
EDDSを生成する能力を有する限り、特に限定されな
い。
ば、バークホルデリア(Burkholderia)属、アシドボラ
ックス(Acidovorax)属、シュードモナス(Pseudomona
s)属、パラコッカス(Paracoccus)属、スフィンゴモナ
ス(Sphingomonas)属、ブレブンジモナス(Brevundimo
nas)属等の細菌を挙げることができる。
〔FERM BP−5412〕、同KK−9株〔FER
M BP−5413〕、Acidovorax sp.TN−51株
〔FERM BP−5416〕、Pseudomonas sp. TN
−131株〔FERM BP−5418〕、Paracoccus
sp.KK−6株〔FERM BP−5415〕、Sphing
omonas sp.TN−28株〔FERM BP−5419〕
およびBrevundimonas sp. TN−3株〔FERM BP
−5886〕を挙げることができる。
から新たに分離され、上記番号にて通産省工業技術院生
命工学工業技術研究所に寄託されている。本菌の菌学的
性質は以下に示す通りである。
ystematic Bacteriology Vol.1(1984)およびBergey's M
anual of Determinative Bacteriology 9 版(1994)によ
り分類すると、KK−5株およびKK−9株はバークホ
ルデリア(Burkholderia)属に、TN−51株はアシド
ボラックス(Acidovorax)属に、TN−131株はシュ
ードモナス(Pseudomonas)属に、Bergey's Manual of S
ystematic Bacteriology Vol.1(1984)により分類すると
KK−6株はパラコッカス(Paracoccus)属に、Berge
y's Manual of Determinative Bacteriology 9 版(199
4)およびMicrobiol. Immunol. 34, 99(1990)により分類
するとTN−28株はスフィンゴモナス(Sphingomona
s)属に、また、Bergey's Manual of Determinative Ba
cteriology9 版(1994)およびInt. J. Syst. Bacteriol.
44, 499(1994) により分類すると、TN−3株はブレブ
ンジモナス(Brevundimonas)属に属する細菌と同定され
た。
反応の基質であるフマル酸をリンゴ酸に水和し、収率を
低下させる要因となるため、使用する菌株のフマラーゼ
活性が弱いか、容易に失活する場合を除いて、除去ある
いは阻害するのが望ましい。例えば、フマラーゼの除
去、阻害方法としては、菌体破砕液からクロマトグラフ
ィー、塩析、電気泳動等の手法で除去する方法、阻害剤
により阻害する方法、菌体のままでフマラーゼを失活さ
せる方法〔I.Umehara et al.,Appl. Microbiol Biotech
nol 20,291(1984)および湯川ら農芸化学59.279(1985)〕
などが知られている。
ら特別の制限がなく、資化しうる炭素源、窒素源、無機
塩、更に微量の有機栄養物などを適当に含有するもので
あれば合成培地、天然培地のいずれでもよい。また、培
養にあたっては培地へのEDDS、エチレンジアミン−
N−モノコハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒ
スチジンなどのアミノ酸やフマル酸等の添加は、目的と
する活性の高い菌体が得られることがあり好ましい。培
養条件は菌体や培地により異なるが、培地のpHは4〜
10、好ましくは6〜9の範囲、培養温度は20〜45
℃、好ましくは25〜35℃の範囲で好気的に行い、活
性が最大となるまで1〜10日間培養すればよい。
エチレンジアミンを含む水溶液中で、所定の条件下、上
記菌体または該菌体処理物(乾燥菌体、菌体の破砕物、
粗・精製酵素、固定化菌体・酵素など)を接触させるこ
とにより行われるが、菌体培養液に、エチレンジアミン
とフマル酸を直接添加しても行うことができる。
ンの総仕込み濃度は、それぞれ500〜2500mM、
好ましくは800〜2000mMおよび250〜125
0mM、好ましくは400〜1000mMであり、これ
らは反応開始時に一括添加しても、あるいは反応経過と
共に逐次添加しても構わない。通常、逐次添加が行われ
るが、この場合、反応液中のフマル酸濃度は10mM〜
飽和濃度、好ましくは20〜1300mM、およびエチ
レンジアミン濃度は10〜2000mM、好ましくは1
5〜1000mMの範囲である。また、フマル酸とエチ
レンジアミンの仕込みモル比は、通常2:1である。
換算で、通常、0.01〜5重量%である。
水酸化カリウム、アンモニア等をフマル酸を含む水溶液
に添加することにより行われるが、これらのアルカリと
フマル酸からなる塩として添加して行うこともできる。
pHは7.5〜9.5、好ましくは8〜9に調整する。
反応収率の向上の面からは低温の方がよく0〜30℃、
好ましくは0〜20℃である。したがって、反応前期、
例えば、基質の転換率が50%未満、好ましくは80%
未満では反応速度の面で有利な高い温度、例えば、30
〜45℃で行い、その後は反応温度を0〜30℃、好ま
しくは0〜20℃に下げて行うことが、反応速度および
収率の両面で有効である。
ことができる。また、エチレンジアミン、フマル酸を他
化合物から供給し得る反応系を、本反応系に共存させた
としても、本発明の効果が得られる限り差し支えない。
ら回収する場合は、除菌、pH調整、濃縮などの操作に
より、目的の塩あるいはその水溶液を得ることができ
る。一方、反応終了液からS,S−EDDSを遊離のア
ミノ酸として取得するには、除菌後の母液に対し、通
常、鉱酸による晶析を行えばよい。晶析pHは1.5〜
4.5、好ましくは2〜4の範囲である。
る。
−28株、Pseudomonas sp. TN−131株を斜面培地
から1白金耳取り、下記の培地に接種し、30℃、4日
間好気的に振とう培養した。
得 菌体培養液20mlを遠心管に取り10,000rp
m、5℃、15分間遠心分離し菌体を集めた後、50m
Mリン酸緩衝液(pH8.0)で2回洗浄した。得られ
た菌体に対し50W、5分間の超音波処理を行い、1
0,000rpm、20分間の遠心分離により粗酵素液
を得た。さらに、60%飽和硫安沈殿、透析による脱塩
の後、50mMリン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化さ
れたDEAE−セファセル〔ファルマシア〕に吸着さ
せ、同緩衝液から、0.6M食塩を含む同緩衝液までの
直線勾配法で溶出させた。さらに、必要に応じ、同条件
で、DEAE−セファセルの代わりにHPLC〔TSK-ge
l DEAE-5PW(東ソー)〕を用い、フマラーゼ等のフマル
酸減少活性をできるだけ除去した画分を得た。
ミン、上記活性画分を含み、6N水酸化ナトリウムによ
ってpH8.5に調整したものを用い、30℃、10〜
30日間、S,S−EDDSの生成がほぼ見られなくな
るまで反応させた。また、反応中、12N水酸化ナトリ
ウムによりpHを8.5に保った。反応終了液中の生成
物であるS,S−EDDSの定量は、不溶物を15,0
00rpm、5℃で5分間遠心除去した後、WAKOSIL 5C
8 (和光純薬)〔溶出液;10mM 水酸化テトラ−n
−ブチルアンモニウムと0.4mM CuSO4 を含む
50mMリン酸(pH2)〕およびMCI GEL CRS 10W
(三菱化学)〔溶出液;10mM CuSO4 〕による
液体クロマトグラフィーで行った。また、S,S−ED
DSの分離精製は、T, Nishikiori et al., J. Antibio
tics 37, 426 (1984)に記載のイオン交換樹脂を用いる
手法で行い、結晶を取得した後にNMRとマススペクト
ルによる分析で化学構造の確認を行った。結果を表1に
示す。
条件で培養した。
得 実施例1と同様。
ジアミン、上記活性画分を含み、表2に記したアルカリ
(6N)によってpH8.5に調整したものを用い、3
0℃、10〜30日間、S,S−EDDSの生成がほぼ
見られなくなるまで反応させた。また、反応中、表2に
記したアルカリ(12N)によりpHを8.5に保っ
た。反応終了液中の生成物であるS,S−EDDSの定
量は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
得 実施例1と同様。
ジアミン、上記活性画分を含み、6N水酸化ナトリウム
によってpH8.5に調整したものを用い、表3に記し
た温度で、10〜30日間、S,S−EDDSの生成が
ほぼ見られなくなるまで反応させた。また、反応中12
N水酸化ナトリウムによりpHを8.5に保った。反応
終了液中の生成物であるS,S−EDDSの定量は、実
施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
得 実施例1と同様。
アミン、上記活性画分を含み、6N水酸化ナトリウムに
よってpH6または8.5に調整したものを用い、30
℃、10〜30日間、S,S−EDDSの生成がほぼ見
られなくなるまで反応させ比較した。また、反応中、1
2N水酸化ナトリウムによりpHを8.5に保った。反
応終了液中の生成物であるS,S−EDDSの定量は、
実施例1と同様に行った。結果を表4に示す。
諸条件を最適化することにより、フマル酸とエチレンジ
アミンからのS,S−EDDS製造における酵素反応収
率を飛躍的に改善し、効率的にS,S−EDDSならび
にそのナトリウム塩等を製造できる。
Claims (4)
- 【請求項1】 リアーゼ活性を有する微生物または該処
理物の存在下、フマル酸とエチレンジアミンの混合物か
らS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸を
酵素反応により製造する方法において、フマル酸および
エチレンジアミンの総仕込み濃度をそれぞれ500〜2
500mMおよび250〜1250mMとすること、水
酸化アルカリまたはアンモニアにより反応液のpHを
7.5〜9.5の範囲に調整すること、および反応温度
を0〜45℃の範囲とすることを特徴とするS,S−エ
チレンジアミン−N,N’−ジコハク酸の製造法。 - 【請求項2】 フマル酸およびエチレンジアミンの総仕
込み濃度が、それぞれ800〜2000mMおよび40
0〜1000mMである請求項1記載のS,S−エチレ
ンジアミン−N,N’−ジコハク酸の製造法。 - 【請求項3】 反応液のpHが8〜9の範囲である請求
項1記載のS,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコ
ハク酸の製造法。 - 【請求項4】 反応後期における反応温度を0〜30
℃、好ましくは0〜20℃の範囲とする請求項1記載の
S,S−エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸の製
造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18596297A JP3836952B2 (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18596297A JP3836952B2 (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸の製造法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH119294A true JPH119294A (ja) | 1999-01-19 |
JP3836952B2 JP3836952B2 (ja) | 2006-10-25 |
Family
ID=16179930
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP18596297A Expired - Lifetime JP3836952B2 (ja) | 1997-06-27 | 1997-06-27 | S,s−エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3836952B2 (ja) |
-
1997
- 1997-06-27 JP JP18596297A patent/JP3836952B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3836952B2 (ja) | 2006-10-25 |
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