JPH1171579A - 蓄熱剤 - Google Patents

蓄熱剤

Info

Publication number
JPH1171579A
JPH1171579A JP10187540A JP18754098A JPH1171579A JP H1171579 A JPH1171579 A JP H1171579A JP 10187540 A JP10187540 A JP 10187540A JP 18754098 A JP18754098 A JP 18754098A JP H1171579 A JPH1171579 A JP H1171579A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
heat storage
temperature
heat
storage agent
agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10187540A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshio Irie
好夫 入江
Tomonori Gomi
知紀 五味
Tomomi Ieuji
智美 家氏
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP10187540A priority Critical patent/JPH1171579A/ja
Publication of JPH1171579A publication Critical patent/JPH1171579A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 潜熱を利用した蓄熱および放熱の効率を向上
させて、蓄熱・放熱時における潜熱を有効に利用でき
る、工業的に入手容易で、使用に当たり経済性が高い蓄
熱剤を提供する。 【解決手段】 本発明の蓄熱剤に用いられる蓄熱性を有
する分子量100以上の蓄熱性化合物は、蓄熱率10
%を示す温度と蓄熱率90%を示す温度との温度差が3
℃以下、光線透過度0.1を示す温度と光線透過度
0.9を示す温度との温度差が3℃以下、比硬度が
0.6以上、比針入度が0.8以上、という4つのパ
ラメータのうちの少なくとも一つを満足するものであ
る。上記蓄熱性化合物を含む蓄熱剤は、融解し易く、か
つ、凍結し易いため、相変化の際に潜熱を有効に利用す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビル空調などの冷
暖房に好適に用いられる、相変化による潜熱を利用して
蓄熱する蓄熱剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱をエネルギーとして家庭用
や産業用に用いる際に、熱を運搬、または一時的に貯蔵
する媒体、いわゆる蓄熱体を用いることが提案されてい
る。このような蓄熱体は、熱を発生させる場所と発生し
た熱を用いる場所とが異なる場合や、熱の発生時間と利
用時間との間に時間差がある場合などに、特に有効に用
いることができる。
【0003】上記の蓄熱体としては、蓄熱体となる化合
物における相変化時の潜熱を利用した潜熱蓄熱体がよく
用いられている。この潜熱蓄熱体としては、水系の蓄熱
剤、無機水和塩系の蓄熱剤、炭化水素などの有機系の蓄
熱剤が知られている。
【0004】上記の水系の蓄熱剤は、水にブラインなど
を添加したものである。通常、このような蓄熱剤は、パ
イプなどに充填した蓄熱材などとして利用するが、この
水系の蓄熱剤は蓄熱密度が小さいため、上記蓄熱材を蓄
熱槽に大量に充填しなければならない。それゆえ、上記
水系の蓄熱剤は、蓄熱効率が低いという問題点を有して
いる。
【0005】また、上記無機水和塩系の蓄熱剤として
は、たとえば、LiClO3・3H2O、Na2SO4・10H2O 、 CaCl2
・6H2Oなどの無機水和塩や、Na2SO4/NaCl/KCl /H2O
、Ca(NO3)2・4H2O/Mg(NO3)2・6H2Oなどの無機共晶塩
が挙げられる。ところが、これら無機水和塩系の蓄熱剤
は、過冷却が大きく、凝固点以下となっても凍結が抑制
される。したがって、放熱される熱密度が著しく低下し
て、蓄熱体として有効に機能しなくなる。それゆえ、凝
固点調整剤などをさらに添加する必要がある。
【0006】このように凝固点調整剤を添加した無機水
和塩系の蓄熱剤としては、たとえば、特開平4−502
86号公報に記載されている材料組成物が挙げられる。
この材料組成物では、無機水和塩類としてNaOHが用いら
れ、凝固点調整剤としてNa2Cr2O7・2H2Oである核剤が添
加されており、さらに、上記核剤を分散させるため分散
助剤として微粉砕粘土などの増粘剤が添加されている。
上記の構成を有する材料組成物は、伝熱媒体を冷却する
ための熱エネルギー量、すなわち、冷熱量の蓄積に好適
な蓄熱剤であり、特に、蓄熱剤の過冷却を十分に抑制す
ることができるものとなっている。
【0007】ところが、上記の無機水和塩系の蓄熱剤に
対して凝固点調整剤を添加すると、該蓄熱剤の有する潜
熱量の理論値を算出することが実質的に不可能となる。
加えて、この無機水和塩系の蓄熱剤では、繰り返し凍結
・融解することによって蓄熱剤としての性能の劣化が顕
著に現れるという不都合を有している。
【0008】一方、有機系の蓄熱剤は、上記水系の蓄熱
剤と比較して過冷却による弊害が少なく、また、無機水
和塩系の蓄熱剤における性能の劣化があまり見られない
という特徴点を有している。このような有機系の蓄熱剤
としては、たとえば、ポリエチレン、ポリエチレングリ
コール(PEG)、アミン類、脂肪酸類、多価アルコー
ル類、パラフィン類などが挙げられる。これら蓄熱剤
は、広い温度範囲の凝固点を有するものがそれぞれ存在
するため、用途に応じた最適の凝固点を有する化合物を
適宜選択することが可能となる。
【0009】しかし、特開平5−117639号公報に
記載のように、パラフィン類として、たとえばn−ペン
タデカンは凍結・融解し易い蓄熱剤であるが、工業的に
入手することが困難であって高価な上に、凝固点を任意
に変えることができない。
【0010】さらに、特開平6−346047号公報で
は、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサ
デカンを所定比率で混合し調整して得られる凍結・融解
し易い蓄熱剤が開示されている。該蓄熱剤を得るには、
各パラフィンを高純度で得る必要があるが、通常の工業
的手法では炭素数が大きい高純度のパラフィンは高価で
容易に入手できないという問題点がある。しかも、不純
物として含まれる炭素数の低いパラフィンや炭素数の高
いパラフィンは、少量でも凝固点に大きく影響し、凍結
・融解しにくくなるという問題点がある。
【0011】なお、上記有機系の蓄熱剤を屋内で大量に
用いるような場合は、可燃性である該蓄熱剤の使用に対
する消防法などの規制に適合させるため、該蓄熱剤が液
化時に流動することによる容器から外部への漏れを防止
する対策が必要となる。
【0012】たとえば、パラフィン系蓄熱剤を用いた場
合における蓄熱剤の漏れの対策としては、(a)特開平
6−58686号公報や特開昭56−103273号公
報に記載のように、パラフィン系蓄熱剤に、凝固剤やゲ
ル化剤を添加してゲル化させ、その流動性を低下・抑制
させる方法や、(b)特開平4−85387号公報に記
載のように、バインダ成分としての炭化水素系有機高分
子と蓄熱成分としてのパラフィン類とを機械的手段によ
り混合して、その流動性を低下させる方法などが挙げら
れる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記潜熱蓄
熱体では、該蓄熱体となる蓄熱性化合物(蓄熱剤)が凍
結・融解する際に、相変化が生じることによって、蓄熱
および放熱を行っている。ここで、上記の相変化の温度
幅が広いと蓄熱や放熱を効率よく行うことができなくな
るという問題点を招来している。たとえば、冷熱蓄熱の
場合、冷熱蓄熱時の冷却温度が高いと蓄熱剤が完全に凍
結せず潜熱蓄熱が十分に行われなくなり、また、放熱時
の融解温度が低いと蓄熱剤が完全に融解しないため潜熱
が十分活用されない。そのため、相変化の温度幅が広い
潜熱蓄熱体では、蓄熱や放熱を効率よく行うことができ
ない。
【0014】たとえば、上記特開平4−50286号公
報の材料組成物などの無機水和塩系の蓄熱剤では、該蓄
熱剤を凍結・融解させるために必要な温度幅が広くなっ
ている。そのため、温度変化に伴う蓄熱剤の相変化がな
されにくくなり、相変化の際に、潜熱が十分活用されな
い。
【0015】また、上記の有機系の蓄熱剤においても、
該蓄熱剤の相変化の温度幅が広いため、上記の無機水和
塩系の蓄熱剤と同様に、相変化の際における潜熱が十分
活用されない。
【0016】さらに、蓄熱剤の相変化に伴って、上述し
た蓄熱剤の漏れの対策が不十分となるという問題点も招
来する。具体的には、上記(a)の方法では、熱を貯蔵
・放出する際の凍結・融解の繰り返しによってゲル状態
や固体状態が崩壊し、含有されたパラフィン系蓄熱剤が
流動化して容易に流出し、危険性が増大化することにな
る。一方、(b)の方法でも、パラフィンの凍結・融解
時に該パラフィンがしみ出して漏出が多くなり、やはり
危険性が増大する。しかも、この方法では、パラフィン
を高含有率で用いることが困難となるという不都合も生
じる。
【0017】加えて、上記(a)・(b)の方法では、
蓄熱剤を、あらかじめゲル状や固体状としたりバインダ
成分に混合したりすることで成形物とするため、熱を伝
達する媒体との接触表面積を大きくすることができる複
雑な形状の容器(たとえば、チューブ状、ドーナツ状、
コイル状など)中に該成形物を充填する作業が煩雑化す
るという問題点も招来する。しかも、上記成形物は、容
器内に隙間なしに充填することが困難であり、充填率の
低下から熱効率の低下も招来する。
【0018】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
であり、その目的は、従来に比べ、工業的に入手容易
で、使用に当たり経済性が高く、潜熱が十分活用できる
蓄熱剤を提供することにある。さらに、凍結・融解する
際の相変化の温度幅が所定の範囲内である蓄熱性化合物
を用いることにより、潜熱を利用した蓄熱および放熱の
効率を向上させた蓄熱剤と、上記蓄熱性化合物の流動性
を低下させてなる安全性の高い蓄熱剤とを提供すること
にある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
蓄熱剤は、上記の課題を解決するために、工業的に入手
容易で、使用に当たり経済性が高い、相変化による潜熱
を利用して蓄熱する蓄熱剤であって、蓄熱率10%を示
す温度と蓄熱率90%を示す温度との温度差が3℃以下
であり、かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含ん
でいることを特徴としている。
【0020】本発明の請求項2記載の蓄熱剤は、上記の
課題を解決するために、工業的に入手容易で、使用に当
たり経済性が高い、相変化による潜熱を利用して蓄熱す
る蓄熱剤であって、次式、
【0021】
【数4】
【0022】で定義される光線透過度が0.1を示す温
度と光線透過度が0.9を示す温度との温度差が3℃以
下であり、かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含
んでいることを特徴としている。
【0023】本発明の請求項3記載の蓄熱剤は、上記の
課題を解決するために、工業的に入手容易で、使用に当
たり経済性が高い、相変化による潜熱を利用して蓄熱す
る蓄熱剤であって、次式、
【0024】
【数5】
【0025】で定義される比硬度が0.6以上であり、
かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含んでいるこ
とを特徴としている。
【0026】本発明の請求項4記載の蓄熱剤は、上記の
課題を解決するために、工業的に入手容易で、使用に当
たり経済性が高い、相変化による潜熱を利用して蓄熱す
る蓄熱剤であって、次式、
【0027】
【数6】
【0028】で定義される比針入度が0.8以上であ
り、かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含んでい
ることを特徴としている。
【0029】ここで、工業的に入手容易で、使用に当た
り経済性が高い蓄熱剤とは、製造に際して供給量が多
く、かつ、安価に得られる蓄熱剤と定義される。本発明
では、たとえば、蓄熱剤としてパラフィン類を選択した
とすると、原油、石油、重油、ナフサ、灯油、軽油、ガ
ソリンなどの安価な原料から、蒸留精製などの方法によ
り、容易に上記請求項1ないし4の何れかに記載のパラ
メータを満たす蓄熱性化合物を含む蓄熱剤を多量にかつ
安価に得ることができる。
【0030】上記の構成によれば、上記蓄熱性化合物
は、温度変化に伴う、固相から液相または液相から固相
への相変化が容易になされる蓄熱性化合物である。すな
わち、上記蓄熱性化合物は、融解し易く、かつ、凍結し
易い蓄熱性化合物である。
【0031】そのため、上記蓄熱性化合物を用いた蓄熱
剤は、たとえば冷熱蓄熱の場合、冷熱量を十分蓄えるの
に必要な冷却温度を従来よりも高くすることができると
ともに、冷熱量を十分に取り出せる融解温度も低くする
ことができる。すなわち、上記蓄熱性化合物を用いた蓄
熱剤では、あまり低い温度で冷却しなくても蓄熱が可能
であり、あまり高い温度で融解しなくても冷熱を取り出
すことができる。
【0032】それゆえ、蓄熱剤に熱を蓄積したり、蓄熱
剤を冷却したりすることが、従来の蓄熱剤よりも容易と
なる。したがって、蓄熱剤への蓄熱のためのヒーター
や、冷却のための冷却機への負担が少なくてすみ、ヒー
ターや冷却機を小型化することが可能となる。
【0033】また、放熱および蓄熱がなされている期間
においては、上記蓄熱剤は、ほぼ一定の温度を維持する
ことができる。そのため、本発明にかかる蓄熱剤を、た
とえば空調機に用いた場合、該空調機にとって最適な熱
源または冷熱源となり、一定の熱量を供給できる。それ
ゆえ、空調機を安定して運転することが可能であるとと
もに、空調機の冷暖房能力を高めることもできる。
【0034】したがって、本発明にかかる蓄熱剤は、上
記各構成に示された各パラメータにおいて所定の範囲内
に入っている蓄熱性化合物を含んでいることになる。そ
のため、上記構成の蓄熱剤は、蓄熱・放熱時における潜
熱が十分活用され、蓄熱・放熱の効率を上昇させること
ができる。
【0035】本発明の請求項5記載の蓄熱剤は、上記の
課題を解決するために、請求項1ないし4の何れか1項
に記載の蓄熱剤中で単量体成分を重合して得られる重合
体中に、相変化により液化する上記蓄熱剤の流動性が低
下するように該蓄熱剤を上記重合体中に保持してなるこ
とを特徴としている。
【0036】上記構成によれば、単量体成分を重合して
なる重合体を蓄熱剤中で形成することにより、上記重合
体中に、相変化により液化する蓄熱剤の流動性を低下さ
せるように該蓄熱剤を保持させて、蓄熱剤をゲル状また
は固体状とすることができる。そのため、熱を貯蔵・放
出する際の凍結・融解の繰り返しによっても、該蓄熱剤
のしみ出しなどの漏出を抑制することが可能となり、安
全性をより一層向上させることができる。
【0037】また、上記重合体は蓄熱剤中で形成するた
め、重合前の単量体成分などを含む蓄熱剤を容器中に充
填してから、該単量体成分を重合させることが可能とな
る。それゆえ、熱を伝達する媒体との接触表面積を大き
くすることができる複雑な形状の容器(たとえば、チュ
ーブ状、ドーナツ状、コイル状など)中に容易に蓄熱剤
を充填することができるとともに、ゲル状または固体状
の蓄熱剤を容器内に隙間なしに充填することも可能であ
るため、容器に充填した状態でも、熱効率の低下を回避
することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態について以
下に詳しく説明する。なお、これによって本発明が限定
されるものではない。本発明にかかる蓄熱剤は、相変化
時の潜熱を利用した蓄熱性化合物、すなわち、固相から
液相への相変化時に蓄熱し、液相から固相への相変化時
に放熱する蓄熱性化合物を含んでいる。この蓄熱性化合
物は、固相から液相または液相から固相への相変化が容
易になされる。つまり、上記蓄熱性化合物は、融解し易
く、かつ、凍結し易い性質を有している。
【0039】本発明にかかる蓄熱剤として用いられる上
記蓄熱性化合物としては、相変化の際の潜熱を利用して
熱を蓄積(蓄熱)する蓄熱性化合物であり、溶解し易
く、かつ、凍結し易い性質を有している蓄熱性化合物で
あれば特に限定されるものではないが、分子量100以
上の蓄熱性化合物が好ましい。これは、上記蓄熱性化合
物が可燃性や毒性などを有している場合、該蓄熱性化合
物が揮発することによって、使用上の安全性に問題が生
じることを回避するためである。
【0040】また、上記蓄熱性化合物としては、潜熱を
有効に利用するために、潜熱量10〜60 cal/gの蓄
熱性化合物が好ましい。さらに、上記蓄熱性化合物は水
を含有してもよいが、該蓄熱性化合物の腐敗や藻類など
の発生を防止するために、含水率10wt%以下である
ことが好ましい。このような蓄熱性化合物としては、た
とえば、有機系の油性物質が挙げられる。
【0041】この油性物質としては、具体的には、多価
アルコール類、エステル類、エーテル類、パラフィン
類、ポリエチレングリコール(PEG)、アミン類など
がある。上記の油性物質の中でも、液相と固相との間の
相変化の際に、30 cal/gを越える比較的高い潜熱を
有しているとともに、組成を適宜選択することによっ
て、相変化温度を広い範囲で自由に設定できるという点
から、パラフィン類が好ましい。
【0042】また、上記パラフィン類などの油性物質
は、上記のように相変化温度を容易に変えられるため、
2つ以上の成分からなることが好ましい。このような油
性物質は、たとえば、パラフィン類の場合は、工業的に
入手容易な粗パラフィンなどを蒸留による分離・精製を
行ったり、メタノール中に滴下して析出させることによ
る精製などを行うことによって得ることができる。
【0043】本発明にかかる蓄熱剤は、上述した蓄熱性
化合物を含んでいるため、融解し易く、かつ、凍結し易
い性質を有しているが、この融解し易く、かつ、凍結し
易い性質とは、相変化時において、以下の4つのパラメ
ータのうち、少なくとも1つが所定の範囲内であること
として定義する。
【0044】このパラメータは、蓄熱剤となる蓄熱性化
合物の相変化の度合いとそのときの温度との関係を表す
ものであって、蓄熱率10%を示す温度と蓄熱率90
%を示す温度との温度差、光線透過度0.1を示す温
度と光線透過度0.9を示す温度との温度差、比硬
度、および比針入度の4つが挙げられる。これら4つ
のパラメータの測定方法について、以下に詳しく説明す
る。
【0045】蓄熱率10%を示す温度と蓄熱率90%
を示す温度との温度差 示差走査熱量測定(以下、DSCと称する)を用いて、
JIS K 7122に準じて対象となる蓄熱剤の全蓄
熱量を求める。次に、所定量の上記蓄熱剤を金属などか
らなる熱伝導性の高い容器に入れ、所定温度t0 ℃で1
5時間以上保持して平衡に達するまで蓄熱を行う。この
とき、上記所定温度t0 ℃は、上記蓄熱剤が蓄熱を行う
ために適当であると思われる温度に設定する。
【0046】蓄熱された上記容器入りの蓄熱剤を、温度
t℃の所定量の水の入ったデュワーびん内に入れて、所
定時間における水温変化を測定する。なお、上記温度t
℃は、水温変化が測定し易い温度域であれば特に限定さ
れるものではない。
【0047】上記の水温変化に基づいて上記蓄熱剤から
の放熱量を算出する。この放熱量から容器および蓄熱剤
の顕熱(熱容量)を差し引いて、上記所定温度t0 ℃に
おける蓄熱量を求める。この蓄熱量から蓄熱率10%
(全蓄熱量の10%にあたる熱量が蓄積・放出される状
態)の温度t1 ℃を決定する。また、同様に、蓄熱率9
0%(全蓄熱量の90%にあたる熱量が蓄積・放出され
る状態)の温度t2 ℃を決定し、温度差|t1 −t2
を算出する。
【0048】本発明においては、このパラメータ、す
なわち、上記|t1 −t2 |が3℃以下である蓄熱剤
を、融解し易く、かつ、凍結し易い蓄熱剤であると定義
する。
【0049】光線透過度0.1を示す温度と光線透過
度0.9を示す温度との温度差 まず、対象となる蓄熱剤を−50℃まで冷却した後、8
0℃まで2℃/分で昇温させてDSC曲線を作成する。
このDSC曲線から、JIS K 7121に基づい
て、蓄熱量が10 cal/g以上で、かつ、最大吸熱ピー
クを示す温度である相変化温度tp ℃を算出する。
【0050】次に、対象となる蓄熱剤を、上記パラメー
タと同様に、所定温度t0 ℃で15時間以上保持して
平衡に達するまで蓄熱する。この蓄熱剤について、JI
SK 7105に準じて所定温度t0 ℃における全光線
透過率Tt(t0 )を測定する。また、上記相変化温度
p ℃より50℃低い温度(tp −50)℃と、相変化
温度tp ℃より20℃高い温度(tp +20)℃におい
ても、上記と同様に全光線透過率Tt(tp −50)お
よびTt(tp +20)を測定する。
【0051】上記全光線透過率Tt(t0 )、Tt(t
p −50)およびTt(tp +20)を用いて、次式か
ら上記蓄熱剤の光線透過度を算出する。
【0052】光線透過度={Tt(t0 )−Tt(tp
−50)}/{Tt(tp +20)−Tt(tp −5
0)} 本発明においては、この光線透過度が0.1を示す温度
3 ℃と、同じく光線透過度が0.9を示す温度t4
との温度差|t3 −t4 |がパラメータであり、この
パラメータが3℃以下である蓄熱剤を、融解し易く、
かつ、凍結し易い蓄熱剤であると定義する。
【0053】比硬度 上記パラメータと同様にして、対象となる蓄熱剤のD
SC曲線を作成し、相変化温度tp ℃を算出する。次
に、上記蓄熱剤を、相変化温度tp ℃より20℃以上と
なるように加熱する。その後、相変化温度tp ℃より
1.5℃低い温度である(tp −1.5)℃、または、
相変化温度tp ℃より50℃低い温度である(tp −5
0)℃まで冷却して、15時間以上保持する。この蓄熱
剤を、硬度計(JIS K 6301のA形試験器)に
よって、それぞれの温度における硬度Hd(tp −1.
5)またはHd(tp −50)を測定する。これら硬度
を用いて、次式から上記蓄熱剤の比硬度を算出する。
【0054】 比硬度=Hd(tp −1.5)/Hd(tp −50) 本発明においては、このパラメータ、すなわち、上記
比硬度が0.6以下である蓄熱剤を、融解し易く、か
つ、凍結し易い蓄熱剤であると定義する。
【0055】比針入度 上記パラメータと同様にして、対象となる蓄熱剤のD
SC曲線を作成し、相変化温度tp ℃を算出する。次
に、上記蓄熱剤を、相変化温度tp ℃より20℃以上と
なるように加熱する。その後、相変化温度tp ℃より
1.5℃低い温度である(tp −1.5)℃、または、
相変化温度tp ℃より50℃低い温度である(tp −5
0)℃まで冷却して、15時間以上保持する。この蓄熱
剤について、JIS K 2235に準じて、それぞれ
の温度における針入度Nd(tp −1.5)またはNd
(tp −50)を測定し、以下の式から上記蓄熱剤の比
針入度を算出する。
【0056】 比針入度=Nd(tp −50)/Nd(tp −1.5) 本発明においては、このパラメータ、すなわち、上記
比針入度が0.8以下である蓄熱剤を、融解し易く、か
つ、凍結し易い蓄熱剤であると定義する。
【0057】本発明にかかる蓄熱剤は、上述したよう
に、上記各パラメータにおいて、それぞれ所定の範囲内
に入る性質を有している。しかしながら、本発明にかか
る蓄熱剤は、上記各パラメータ全てについて所定の範囲
内に入っている必要はなく、少なくとも一つのパラメー
タにおいて、所定の範囲内に入っていればよい。
【0058】上記の各パラメータにおいて、所定の範囲
内に入る蓄熱剤は、融解し易く、かつ、凍結し易い性質
を有しているが、この蓄熱剤の作用について、図1ない
し図3に基づいて説明する。なお、以下の説明において
は、上記各パラメータのうち、パラメータを適用す
る。
【0059】以下の説明では、本発明にかかる蓄熱剤
が、冷熱量を蓄積する目的で用いられたとする。ここ
で、上記冷熱量とは、伝熱媒体から熱量を奪うことによ
って該伝熱媒体を冷却するための熱エネルギー量であ
る。また、そのときの蓄熱剤への冷熱量の蓄積は、液相
から固相への相変化においてなされることになる。
【0060】したがって、冷却機(チラー)によって、
上記蓄熱剤を凍結させて液相から固相への相変化を生じ
させ、冷熱量を蓄積することになる。また、上記蓄熱剤
における冷熱量の放出は、伝熱媒体である、たとえば水
が有する熱量を該蓄熱剤が奪い、その熱量を固相から液
相への相変化を生じることによってなされる。
【0061】上記蓄熱剤は、円筒状の容器に充填された
蓄熱材として、蓄熱槽に複数本、たとえば、5000本
投入されて用いられる。そして、上記冷却機によってこ
の蓄熱材を冷却して冷熱量を蓄積する。このようにして
冷熱量の蓄積が終了した当初の状態で、蓄熱槽の出口温
度がtb ℃であるとする。また、この蓄熱槽の入口温度
が、たとえば(ta +x)℃であるとする(x>0、t
a >tb )。
【0062】上記蓄熱槽に(ta +x)℃の水が流入し
てくると、蓄熱槽内部の水はta ℃よりも少し上昇す
る。しかしながら、蓄熱剤が冷熱量を放出するため、こ
の温度の高い水は徐々に冷却されていき、流出する。こ
のとき、蓄熱槽からの出口温度は、図2の(a)に示す
ように、上記当初の状態の温度であるtb ℃となってい
る。なお、図2は、上記蓄熱槽の出口温度の変化を示し
ている。
【0063】上記蓄熱槽の出口温度は、上記蓄熱槽に流
入してくる(ta +x)℃の水を冷却していくに伴っ
て、図2の(b)に示すように、すぐに当初の温度tb
℃から上昇していく。しかしながら、ある温度ta ℃に
まで達すると、図2の(c)に示すように、出口温度の
上昇はほとんど見られなくなる。すなわち、上記蓄熱槽
は、ほぼ温度変化のない温度ta ℃の水を流出し続ける
ことになる。
【0064】そして、この出口温度の変化が見られない
状態が長時間継続した後、図2の(d)に示すように、
ふたたび出口温度の上昇が始まり、最終的には、蓄熱槽
から流出する水の温度は、入口温度と同一の(ta
x)℃となる。この時点で、蓄熱剤に蓄積された冷熱量
は完全に消費される。
【0065】したがって、本発明にかかる蓄熱剤を用い
た上記蓄熱槽は、ある所定の時間、一定の温度ta ℃の
水を供給することができる安定した冷熱源として機能す
ることになる。そのため、この冷熱源をたとえば空調機
として用いたとすると、一定かつ低温の冷熱量を安定し
て供給することが可能であるため、該空調機の除熱能力
を上昇させることができるとともに、空調機の安定な運
転が可能となる。
【0066】これに対して、従来の蓄熱剤が上記と同様
の条件で使用されたとする。その場合、上記と同様に、
蓄熱槽に対して(ta +x)℃の水が流入すると、上記
従来の蓄熱剤が冷熱量を放出するため蓄熱槽内は冷却さ
れる。このとき、出口温度は、図3の(e)に示すよう
に、当初、温度tb ℃であり、その後、図2の場合と同
様に、温度上昇する。
【0067】しかも、上記従来の蓄熱剤では、本発明に
かかる蓄熱剤とは異なり、図3の(f)に示すように、
ある温度ta ℃にまで達しても出口温度は上昇を続け
る。このように出口温度が徐々に上昇していくことは、
流出される水の温度が一定の温度ではないことを示して
いる。つまり、(ta +x)℃の温度で流入してくる水
は、蓄熱槽を経由して流出してもta ℃まで冷却され
ず、時間の経過に伴って、温度が上昇していく不安定な
状態となる。
【0068】最終的には、蓄熱槽の出口温度が入口温度
(ta +x)℃にまで上昇することは、上記従来の蓄熱
剤も本発明にかかる蓄熱剤も同一である。しかしなが
ら、冷熱量を放出している間、従来の蓄熱剤では、流入
する水を一定の温度で冷却し続けることができない。つ
まり、本発明にかかる蓄熱剤のように、一定かつ低温の
水を流出することができない。そのため、空調機の安定
な運転ができなくなるとともに、冷熱量の蓄積・放出時
に該冷熱量のロスが大きくなる。
【0069】上記の冷熱量のロスについて、図1に基づ
いて説明すると次のようになる。本発明にかかる蓄熱剤
は、図1に示すように、該蓄熱剤の蓄熱率DH が変化す
る間、温度Tはあまり変化しないという関係を有してい
る。すなわち、本発明にかかる蓄熱剤は、該蓄熱剤がわ
ずかな温度変化であっても、冷熱量を蓄積・放出するこ
とが可能であるという性質を有している。
【0070】なお、本発明にかかる蓄熱剤の説明におい
ては、冷熱量を蓄積・放出する場合について例示してい
るため、以下、蓄熱率DH に代えて、冷熱量蓄積率DC
を用いる。この冷熱量蓄積率DC は、蓄熱剤の蓄熱率D
H が低下することによって、冷熱量が蓄積されていくこ
とを意味している。
【0071】より具体的に説明すると、本発明にかかる
蓄熱剤の温度は、冷熱量の蓄積が完了した冷熱量蓄積率
C 100%の状態(このとき蓄熱率DH は0%)で
は、相変化温度よりもある程度低温となっている。な
お、この場合の蓄熱剤の相変化温度は、たとえば、0℃
から20℃の範囲内であるとする。
【0072】この冷熱量蓄積率DC 100%の状態にあ
る上記蓄熱剤から、冷熱量が徐々に放出されていくと、
蓄熱剤自身の温度は上昇しているにもかかわらず、冷熱
量はあまり放出されない。このとき、上述した蓄熱槽の
場合では、図2の(b)に示す、出口温度がtb ℃から
a ℃にまで上昇している期間に相当する。
【0073】ところが、上記蓄熱剤の冷熱量蓄積率DC
が90%の状態である点A付近に達した時点で、該蓄熱
剤の温度の上昇が緩やかになり始める。なお、この点A
における蓄熱剤の温度はt1 ℃となっている。そして、
この点A以降、冷熱量蓄積率DC が10%に達するま
で、あまり急激な温度の上昇が見られず、緩やかに温度
が上昇し続ける。ところが、蓄熱剤の冷熱量蓄積率DC
は、90%から10%へ急激に低下していることから、
上記蓄熱剤自身はほとんど温度変化することなく、冷熱
量を大量に放出していることになる。
【0074】上記のように、蓄熱剤にほとんど温度変化
が見られない状態は、上述した蓄熱槽の場合では、図2
の(c)に示す、出口温度ta ℃の状態が維持されてい
る期間に相当する。このとき、上記蓄熱剤が冷却しなけ
ればならない水の温度差はx℃である。それゆえ、上記
蓄熱剤からは、x℃の冷却に必要な量の冷熱量が一定に
放出されつづける。そのため、上記蓄熱相では、出口温
度ta ℃の状態が一定期間維持されることになる。
【0075】そして、冷熱量蓄積率DC が10%の状態
である点B付近に達した時点で、ふたたび急激な温度の
上昇が始まり、冷熱量蓄積率DC 0%(このときの蓄熱
率は100%)に達するまで、蓄熱剤の温度は急激に上
昇し続ける。このとき、上述した蓄熱槽の場合では、図
2の(d)に示す、出口温度が入口温度(ta +x)℃
に近づく期間に相当する。なお、上記点Bにおける蓄熱
剤の温度はt2 ℃となっている。
【0076】図1に示す冷熱量蓄積率DC の変化を、蓄
熱率DH の変化に置き換える。その場合、蓄熱率DH
0%(冷熱量蓄積率DC 100%)の状態から、蓄熱剤
が冷熱量を放出し始めると、蓄熱剤の温度がある程度上
昇しても、点Aに達するまでは、蓄熱率DH はあまり上
昇しない。
【0077】ところが、点Aに達した時点で、蓄熱剤の
温度の変化に伴う冷熱量の放出は、急激に増加する。こ
のように、少しの温度変化で大量の冷熱量が放出される
状態は、点Bに達するまで維持される。そして、点Bに
達した時点で、ふたたび冷熱量の放出がなされにくくな
り、最終的に、蓄熱率DH が100%(冷熱量蓄積率D
C 0%)に達する。
【0078】このように、本発明にかかる蓄熱剤では、
冷熱量を放出する、すなわち、蓄熱剤として用いられて
いる蓄熱性化合物が固相から液相に相変化する際に、蓄
熱剤に急激な温度変化が見られないにもかかわらず、大
量に冷熱量が放出されることになる。これは、所定の冷
熱量を放出できる温度変化量|t1 −t2 |が従来の蓄
熱剤よりも小さく、所定の温度範囲内となっているため
である。
【0079】上記のような場合では、蓄熱率DH が90
%で温度がt1 である点Cを考えた場合、この点Cと点
Aとを結ぶ直線と、点Cと点Bとを結ぶ直線と、図1に
おける点Aから点Bまでのほぼ直線に近いグラフとの3
つの線で一つの三角形状の領域1が形成される。この領
域1の面積は、蓄熱剤に対する冷熱量の蓄積時または冷
熱量の放出時における、冷熱量のロスの大きさを相対的
に示している。
【0080】図1に示すグラフにおいて、線分ACは、
蓄熱率DH が10%のときと90%のときの蓄熱率DH
の差分である。図1に示すグラフでは、縦軸は、蓄熱さ
れた量をパーセンテージで示しているため、蓄熱剤を別
の蓄熱性化合物に代えても変化することはない。これに
対して、線分BCは、蓄熱率DH が10%のときと90
%のときの温度変化量|t1 −t2 |であり、この温度
変化量は蓄熱剤として用いる蓄熱性化合物によって異な
っている。この線分BCの長さが、上記パラメータに
相当する。
【0081】この線分BCの長さをできる限り短くす
る、つまり、パラメータの大きさをできる限り小さく
することができれば、上記領域1の面積を小さくするこ
とができる。この領域1の面積が小さくなるということ
は、冷熱量を蓄積・放出する過程である蓄熱剤の蓄熱・
放熱過程において、高い冷却温度で冷熱量を蓄え、低い
融解温度で冷熱量を放出することができる。
【0082】一方、上記線分BCの長さが長くなる、つ
まり、パラメータの大きさが大きくなると、上記領域
1の面積が大きくなり高い冷却温度で冷熱量を蓄えるこ
とができず、低い融解温度で冷熱量を取り出すことがで
きない。つまり、蓄熱剤の相変化が効率よくなされない
ため、冷熱量の蓄積・放出が効率よく行われなくなる。
ここで、上記蓄熱剤の相変化が効率よくなされないとい
うことは、蓄熱剤となる蓄熱性化合物が、温度変化によ
っても融解しにくく、かつ、凍結しにくいことを示す。
【0083】これに対して、本発明にかかる蓄熱剤は、
上述したように、該蓄熱剤の相変化における温度幅が所
定の範囲内であることから、冷熱量の蓄積・放出時に相
変化が効率よくなされる。それゆえ、蓄熱剤に対して冷
熱量を蓄積する場合、その温度を従来よりも高くするこ
とができる。つまり、本発明にかかる蓄熱剤は冷却し易
いため、蓄熱剤に冷熱量を蓄積させるための冷却機にか
かる負担を少なくすることができる。その結果、冷却機
を小型化することが可能となる。
【0084】また、蓄熱剤の相変化における温度幅が小
さいために、冷熱量を放出している間、該蓄熱剤は、ほ
ぼ一定の温度となっている。それゆえ、上記蓄熱剤を利
用した蓄熱槽内もほぼ一定の温度となり、冷却のための
空調機にとって良質な常に一定の冷熱を供給することが
できる冷熱源となる。その結果、空調機を安定して運転
することが可能となるとともに、空調機の除熱能力を高
くすることも可能となる。
【0085】なお、本発明にかかる蓄熱剤は、冷熱量の
蓄積だけでなく、通常の蓄熱にも好適に用いることがで
きる。つまり、前記パラメータの範囲内である蓄熱剤
を、空調機において、暖房のための蓄熱に用いたとする
と、該蓄熱剤に対しては、蓄熱時の温度を従来よりも低
くすることができるとともに、放熱時の温度も高くする
ことができる。すなわち、蓄熱時に融解のため過大な高
温も必要なく、経済的に蓄熱でき、放熱時の放熱温度も
高く保つことができるため、多くの熱を取り出すことが
できる。それゆえ、蓄熱・放熱を効率よく行うことが可
能となる。
【0086】また、上記蓄熱剤は蓄熱し易いため、該蓄
熱剤に蓄熱するためのヒーターへの負担が少なくてす
む。それゆえ、ヒーターを小型化することが可能とな
る。さらに、放熱は、常にほぼ一定の温度でなされるた
め、空調機にとって良質な常に一定の熱量を供給する熱
源となる。それゆえ、空調機を安定して運転することが
可能であるとともに、空調機の暖房能力を高めることも
できる。
【0087】以上のように、本発明にかかる蓄熱剤は、
上記パラメータが所定の範囲内に入っている蓄熱性化
合物を含んでいる。このパラメータは、蓄熱剤の蓄熱
率にて、該蓄熱剤の固相と液相との間の相変化の度合い
を示し、そのときの温度差に基づいて、本発明にかかる
蓄熱剤の相変化のされ易さを規定している。
【0088】そのため、上記蓄熱剤は、温度変化に伴っ
て融解し易く、かつ、凍結し易い蓄熱性化合物を含んで
いることになる。それゆえ、上記蓄熱剤を用いた場合に
おいて、蓄熱時に過大に高い融解温度も必要なく、放熱
時の放熱温度も高くできるため、蓄熱・放熱の効率を上
昇させることが可能となる。
【0089】また、本発明にかかる蓄熱剤は、上述した
ように、図1における蓄熱率を全光線透過率、硬度、針
入度にそれぞれ代えることによって、前記パラメータ
〜を得ることができる。つまり、上記パラメータ〜
は、上記蓄熱剤における相変化の度合いを、蓄熱率で
はなく、全光線透過率、硬度、針入度を用いてそれぞれ
表したものである。
【0090】したがって、図1における、領域1の面積
を小さくする、すなわち、相変化における温度幅を所定
の範囲内とすることについては、上記パラメータとパ
ラメータ〜とは全く同様である。それゆえ、上記パ
ラメータ〜についての具体的な説明は省略する。ま
た、上記パラメータ〜の所定の範囲は、後述する実
施例において、実験的に得られた結果に基づいて設定さ
れたものである。
【0091】上述してきた本発明にかかる蓄熱剤におい
ては、該蓄熱剤の蓄熱性を阻害せず、かつ、相変化にお
ける温度幅を大きくするような影響を与えることのない
限り、種々の添加剤が含まれていてもよい。上記の添加
剤としては、伝熱向上剤、比重調整剤、難燃性付与剤、
過冷却防止剤などがあり、必要に応じて、さらに、酸化
防止剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、防菌剤などを加え
てもよい。
【0092】上記伝熱向上剤としては、金属粉(鉄、銅
など)、金属繊維、金属酸化物、カーボン粉、カーボン
ファイバーなどが挙げられる。また、比重調整剤として
は、砂、粘土、石、金属粉(鉄、鉛など)が挙げられ
る。難燃付与剤としては、水、含水ゲル、金属粉、炭酸
カルシウムなどの無機化合物、難燃剤(臭素系、塩素
系、リン系など)が挙げられる。さらに、過冷却防止剤
としては、金属粉などが挙げられる。
【0093】本発明にかかる蓄熱剤は、油性ゲル体とし
て用いてもよい。上記蓄熱剤を油性ゲル体として用いる
ことによって、上記蓄熱剤の蓄熱性化合物、すなわち油
性物質の流動性が減少し、該油性物質が漏出して引火す
るなどの危険性を低下させることができる。このような
油性ゲル体の形成方法としては、(A)上記油性物質中
で、単量体成分を重合して得られる重合体中に、相変化
により液化する上記油性物質の流動性が低下するように
該油性物質を上記重合体中に保持させる方法や、(B)
吸油性樹脂にそのまま上記油性物質を吸収させる方法な
どがある。
【0094】上記油性ゲル体の形成方法としては、上記
(A)・(B)の方法の他に、ゲル化剤や凝固剤を加え
てゲル状態や固体状態とする方法、あるいはバインダ成
分に油性物質を保持させる方法などが挙げられるが、上
記(A)・(B)のように、油性ゲル体に油性物質を保
持させる方法を用いることがより好ましい。これは、前
者の方法よりも後者の方法の方が、熱を貯蔵・放出する
際の凍結・融解を繰り返しても、ゲル状態や固体状態が
崩壊することがなく、該蓄熱剤のしみ出しなどの漏出を
抑制して、安全性をより一層向上させることができるた
めである。
【0095】さらに、上記(A)・(B)の方法の中で
も(A)の方法が特に好ましい。この(A)の方法で
は、安全性のより一層の向上だけでなく、重合体を蓄熱
剤中で形成するため、重合前の単量体成分などを含む蓄
熱剤を容器中に充填してから、該単量体成分を重合させ
て蓄熱剤を重合体に保持させることができる。
【0096】それゆえ、熱を運搬する媒体との接触表面
積を大きくすることができる複雑な形状の容器(たとえ
ば、チューブ状、ドーナツ状、コイル状など)中に容易
に蓄熱剤を充填することができるとともに、ゲル状また
は固体状の蓄熱剤を容器内に隙間なしに充填することも
可能であるため、容器に充填した状態でも、熱効率の低
下を回避することができる。
【0097】上記蓄熱剤では、単量体成分を重合させた
重合体は、架橋構造を有していることが好ましい。これ
は、得られる重合体における油性物質を保持する状態を
より安定に維持することができるためである。上記重合
体に対して架橋構造を付与するためには、単量体成分
が、重合性を有する不飽和基を分子中に少なくとも2個
以上有する単量体、あるいは、架橋のための官能基を備
えた単量体(以下、何れも架橋性単量体とする)を含ん
でいることが好ましい。
【0098】単量体成分が上記架橋性単量体を含んでい
る場合は、架橋構造を有している重合体が得られる。す
なわち、上記架橋性単量体を含む単量体成分を油性物質
中で共重合させて重合体を得た状態では、該重合体は、
上記油性物質を含有した状態で、かつ、架橋剤により上
記官能基間が架橋されて架橋構造を有している重合体が
得られる。
【0099】上記の単量体成分を重合させる際に用いら
れる油溶解性ラジカル重合開始剤としては、例えばベン
ゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ク
メンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,
2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビ
ス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合
物などを挙げることができる。
【0100】上記の油溶解性ラジカル重合開始剤は、一
般に、単量体成分に対して0.1〜5重量%の範囲内で
用いることができる。重合温度は、油性物質の融点や単
量体成分の種類や重合開始剤の種類により、用いた油性
物質が液体状を維持できる温度であり、かつ、0〜15
0℃の範囲内で適宜選択することができるが、より好ま
しくは0〜80℃である。
【0101】上記の単量体成分としては、分子中に1個
の重合性不飽和基を有する単量体(a)を主成分に、お
よび分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する
架橋性単量体(b)を含む単量体成分を挙げることがで
きる。
【0102】上記の単量体(a)と架橋性単量体(b)
との配合割合は、それらの合計に対し、単量体(a)9
6〜99.999重量%、架橋性単量体(b)0.00
1〜4重量%(ただし単量体(a)および架橋性単量体
(b)の合計は100重量%である)が好ましい。
【0103】上記単量体(a)としては、溶解度パラメ
ーター(SP値)が9以下の単量体が好ましい。上記溶
解度パラメーター(SP値)とは、化合物の極性を表す
尺度として一般に用いられており、本明細書では、Smal
l の計算式に Hoyの凝集エネルギー定数を代入して導い
た値を適用するものとし、単位が( cal/cm3 1/2
表される。
【0104】溶解度パラメーター(SP値)が9を越え
る単量体を、単量体成分における主成分として用いた場
合、上記単量体成分から得られた重合体が、油性物質を
ゲル状または固体状にできないものであったり、著しく
少量の油性物質しか含有できないものであったりして、
得られた蓄熱剤に対し油性物質を保持する性質を確保で
きないものとなる。
【0105】溶解度パラメーター(SP値)が9以下
で、分子中に少なくとも1個の重合性不飽和基を有する
上記の単量体(a)としては、不飽和カルボン酸エステ
ル、炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミド、α−
オレフィン、脂環式ビニル化合物、脂肪族炭化水素基を
有するアリルエーテル、脂肪族炭化水素基を有するビニ
ルエステル、脂肪族炭化水素基を有するビニルエーテ
ル、芳香族ビニル化合物などを挙げることができ、これ
らの単量体を1種または2種以上用いることができる。
【0106】不飽和カルボン酸エステルとしては、メチ
ル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)ア
クリレート、 iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−
ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メ
タ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレー
ト、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メ
タ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、オ
クチルフェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル
(メタ)アクリレート、ジノニルフェニル(メタ)アク
リレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メン
チル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アク
リレート、ジブチル(メタ)アクリレート、ジブチルマ
レエート、ジドデシルマレエート、ドデシルクロトネー
ト、ジドデシルイタコネートなどが挙げられる。
【0107】炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミ
ドとしては、(ジ)ブチル(メタ)アクリルアミド、
(ジ)ドデシル(メタ)アクリルアミド、(ジ)ステア
リル(メタ)アクリルアミド、(ジ)ブチルフェニル
(メタ)アクリルアミド、(ジ)オクチルフェニル(メ
タ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0108】α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、
1−オクテン、イソオクテン、1−ノネン、1−デセン
などが挙げられる。脂環式ビニル化合物としては、ビニ
ルシクロヘキサンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素基
を有するアリルエーテルとしては、ドデシルアリルエー
テルなどが挙げられる。
【0109】脂肪族炭化水素基を有するビニルエステル
としては、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パル
ミチン酸ビニル、ステアリル酸ビニルなどが挙げられ
る。脂肪族炭化水素基を有するビニルエーテルとして
は、ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルな
どが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレ
ン、t-ブチルスチレン、オクチルスチレンなどが挙げら
れる。
【0110】これらの中でも、液化した油性物質の流動
性を低下させて上記油性物質をゲル状または固体状にし
て保持する、より優れた性質を、得られた重合体に対し
与える単量体としては、少なくとも1個の炭素数1〜3
0の脂肪族炭化水素基を有し、かつ、アルキル(メタ)
アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレー
ト、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリー
ル(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエステル、ア
ルキルスチレンおよびα−オレフィンからなる群より選
ばれる少なくとも一種の不飽和化合物を主成分とする単
量体(a)が特に好ましい。
【0111】上記の架橋性単量体(b)としては、分子
中に少なくとも2個の重合性不飽和単量体を有する単量
体であって、例えば、エチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルア
ミド、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド、グリ
セリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロ
パントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタ
ンテトラ(メタ)アクリレート、多価アルコール(例え
ばグリセリン、トリメチロールプロパン、テトラメチロ
ールメタン)のアルキレンオキシド付加物と(メタ)ア
クリル酸とのエステル化によって得られる多官能(メ
タ)アクリレートやジビニルベンゼンなどが好ましく、
これらの架橋性単量体を1種または2種以上用いること
ができる。
【0112】また、上述してきた単量体成分とは異なる
他の単量体成分としては、前述の単量体(a)を主成分
として含み、かつ、後述する架橋剤と化学的に結合する
官能基、および1個の重合性不飽和基を有する架橋性単
量体(c)を含むものを挙げることができる。
【0113】上記の単量体(a)と架橋性単量体(c)
との配合割合は、それらの合計に対し、単量体(a)9
0〜99.995重量%、反応性単量体(c)0.00
5〜10重量%(ただし単量体(a)および反応性単量
体(c)の合計は100重量%である)が好ましい。
【0114】このような架橋性単量体(c)としては、
後述する架橋剤が有する縮合性官能基(Y)と縮合して
化学的な結合を形成する縮合性官能基(X)を有する化
合物であればよい。このような縮合性官能基(X)とし
ては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト
基、ニトリル基、アミノ基、アミド基、イソシアナート
基、エポキシ基、酸無水物の重合性不飽和基が挙げられ
る。
【0115】架橋性単量体(c)としては、例えば、カ
ルボキシル基を有するビニル系単量体、ヒドロキシル基
を有するビニル系単量体、メルカプト基を有するビニル
系単量体、ニトリル基を有するビニル系単量体、アミノ
基を有するビニル系単量体、アミド基を有するビニル系
単量体、イソシアナート基を有するビニル系単量体、エ
ポキシ基を有するビニル系単量体、重合性不飽和基を有
する酸無水物などを挙げることができ、これらの単量体
を1種または2種以上用いることができる。
【0116】カルボキシル基を有するビニル系単量体と
しては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸な
どが挙げられる。ヒドロキシル基を有するビニル系単量
体としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プ
ロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプ
ロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセ
リン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン
(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げら
れる。
【0117】メルカプト基を有するビニル系単量体とし
ては、ビニルメルカプタン、メルカプトエチル(メタ)
アクリレート等が挙げられる。ニトリル基を有するビニ
ル系単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙
げられる。アミノ基を有するビニル系単量体としては、
アミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等
が挙げられる。
【0118】アミド基を有するビニル系単量体として
は、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。イソシア
ナート基を有するビニル系単量体としては、ビニルイソ
シアナート等が挙げられる。エポキシ基を有するビニル
系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート等
が挙げられる。重合性不飽和基を有する酸無水物として
は、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0119】上記の架橋剤は、分子中に少なくとも2個
の縮合性官能基(Y)を有するものであり、重合体に含
有された縮合性官能基(X)に応じて適宜選定される。
このような架橋剤の例としては、縮合性官能基(X)
が、カルボキシル基、メルカプト基、ニトリル基、エポ
キシ基である場合に縮合可能な、ジメチロールフェノー
ルやポリメチロールフェノールなどのフェノール樹脂が
挙げられる。
【0120】上記架橋剤の他の例としては、縮合性官能
基(X)が、カルボキシル基、ヒドロキシル基である場
合に縮合可能な、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素な
どのアミノ化合物とホルムアルデヒドやアルコールとを
付加縮合したアミノ樹脂が挙げられる。
【0121】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、カルボキシル基、イソシアナート
基、エポキシ基である場合に縮合可能な、ヘキサメチレ
ンジアミンやジエチレントリアミンやテトラエチレンペ
ンタミンなどの多価アミノ化合物が挙げられる。
【0122】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、
メルカプト基、イソシアナート基、アミド基、アミノ
基、エポキシ基である場合に縮合可能な、ヘキサメチレ
ンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、p
−フェニレンジイソシアナート、2,4−トルエンジイ
ソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、
1,5−ナフタレンジイソシアナート、およびこれらの
イソシアナートとメタノールやフェノール等を縮合させ
たブロックドイソシアナートなどのイソシアナート化合
物が挙げられる。
【0123】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、イソシアナート基、エポキシ基であ
る場合に縮合可能な、マロン酸やコハク酸やアジピン酸
やフタル酸やテレフタル酸などの多価カルボン酸が挙げ
られる。
【0124】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、ヒドロキシル基、イソシアナート
基、エポキシ基である場合に縮合可能な、無水フタル酸
やピロメリット酸無水物やベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸無水物などの酸無水物が挙げられる。
【0125】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、ヒドロキシル基、メルカプト基、ア
ミノ基、アミド基である場合に縮合可能な、グリオキザ
ルやテレフタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物が挙
げられる。
【0126】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、ヒドロキシル基、イソシアナート
基、エポキシ基である場合に縮合可能な、エチレングリ
コールやジエチレングリコール、プロピレングリコール
やヘキサンジオールなどの多価アルコールが挙げられ
る。
【0127】上記架橋剤のさらに他の例としては、縮合
性官能基(X)が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、
メルカプト基、イソシアナート基である場合に縮合可能
な、トルエングリシジルエーテルやヘキサメチレングリ
シジルエーテルやビスフェノールAジグリシジルエーテ
ルやポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルな
どのエポキシ化合物が挙げられる。
【0128】このような架橋剤としての各化合物は、重
合体に含有されている縮合性官能基(X)の種類により
その組合せが適宜定められ、これらの1種または2種以
上用いられる。
【0129】これらの中で特に好ましい縮合性官能基
(X)と、架橋剤の縮合性官能基(Y)との組合せは、
カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミ
ノ基およびアミド基からなる群より選ばれる少なくとも
1つの官能基と、イソシアナート基、エポキシ基、無水
カルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの
官能基との組合せである。
【0130】上記の組合せから縮合性官能基(X)と架
橋剤の縮合性官能基(Y)とを選択することにより、未
反応の官能基の残存量が低減された重合体を得ることが
できる。従って、該重合体に前記油性物質を保持させる
ことにより、該油性物質の蓄熱特性を阻害しない蓄熱剤
を得ることができる。そして、特に上記縮合性官能基
(X)がヒドロキシル基であり、架橋剤の縮合性官能基
(Y)がイソシアナート基である組合せ、つまり、上記
反応性単量体がヒドロキシル基を有し、架橋剤が分子中
に少なくとも2個のイソシアナート基を有するものであ
る組合せを選択することにより、油性物質を低温でゲル
化することが可能となる。このため、耐熱容器でなくと
も油性物質をゲル状で保持することができるとともに、
長期安定性に優れた蓄熱剤を得ることができる。
【0131】架橋させる重合体に対し、用いられる架橋
剤の比率は、重合体の構成単位である縮合性官能基
(X)のモル数と、架橋剤が有する縮合性官能基(Y)
のモル数の関係から決定され、縮合性官能基(X)1モ
ルに対する縮合性官能基(Y)のモル数が0.1〜10
の範囲内であることが好ましい。
【0132】縮合性官能基(Y)のモル数が縮合性官能
基(X)モル数1に対して0.1未満である場合、架橋
が充分に行えず強度の低い、架橋された重合体しか得ら
れないことがあるので好ましくない。一方、10を越え
た場合、油性物質を多く保持するといった優れた性質を
有する架橋された重合体が形成されなくなることがある
ので好ましくない。
【0133】このような架橋剤を用いて有効な蓄熱剤を
得るには、単量体成分を重合させた架橋前の重合体と、
架橋剤とを混合した後、架橋反応が進行する前に、例え
ば容器内に混合物を注入し、油性物質が溶融して液体状
を維持でき、かつ、0〜80℃といった温度下で架橋反
応させて硬化させればよい。また、必要に応じて、各種
重合反応や架橋反応を促進する触媒を選択し用いること
により反応速度を速めることも可能である。
【0134】さらに、架橋反応後に上記縮合性官能基
(X)および縮合性官能基(Y)がそれぞれ未反応で残
存することを抑制するために、上記架橋反応を阻害しな
い範囲内で、これら縮合性官能基(X)または縮合性官
能基(Y)と重縮合可能な反応基を有する化合物を、予
めまたは架橋反応後に添加してもよい。例えば、上記縮
合性官能基(X)または縮合性官能基(Y)が多価イソ
シアナートである場合には、上記化合物としては、長鎖
カルボン酸などを用いることができる。上記各官能基
(X)および(Y)が、それぞれ未反応で残存すること
は、油性物質の蓄熱特性を損なうおそれがあるので好ま
しくない。
【0135】本発明では、溶解度パラメーター(SP
値)が9以下の単量体(a)の単量体成分中における使
用量は、単量体成分の全体に対して50重量%以上、よ
り好ましくは70重量%以上となる割合である。上記単
量体(a)の使用量が50重量%未満のときは、得られ
た蓄熱剤における、保持できる油性物質の含有率が著し
く低下することがあり、望ましくない。
【0136】本発明では、単量体成分中に溶解度パラメ
ーター(SP値)が9以下の単量体(a)が50重量%
以上含有されている必要があるが、単量体成分中に50
重量%未満の割合で溶解度パラメーター(SP値)が9
を越える分子中に1個の重合性不飽和基を有する単量体
で、前述の架橋性単量体(b)および反応性単量体
(c)と異なる他の単量体が含有されていてもよい。
【0137】このような単量体としては、例えばメトキ
シポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェ
ノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等
が挙げられる。
【0138】本発明にかかる蓄熱剤を製造するに当た
り、油性物質と、単量体成分とを水系溶媒中で互いに相
溶させて混合し懸濁させた状態にて、前述の油溶解性ラ
ジカル重合開始剤の共存下において懸濁重合させる方法
(水中懸濁重合)を用いることもできる。
【0139】このように、水などの水系溶媒中において
例えば懸濁重合を用いる場合、その懸濁重合は、前記単
量体成分を、水などの水系媒体中に保護コロイド剤や、
界面活性剤を溶解した例えば界面活性剤水溶液中に、懸
濁粒子の状態にて分散させて、例えば油溶解性ラジカル
重合開始剤を用いて重合させることにより行われる。な
お、必要に応じて、前記単量体成分を、予め水不溶性の
有機溶媒に溶解させてから、その溶液を水系溶媒中にて
懸濁重合させることもできる。
【0140】上記保護コロイド剤としては、ポリビニル
アルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチンな
どを挙げることができ、また、上記界面活性剤として
は、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼン
スルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル、脂肪酸石鹸などを挙げることができる。
【0141】本発明にかかる蓄熱剤は、蓄熱あるいは、
冷熱量の蓄積を目的として、そのまま加温あるいは冷却
することができるが、蓄熱材や蓄熱装置として使用する
こともできる。たとえば、上記蓄熱剤を容器に充填する
ことによって蓄熱材を形成し、この蓄熱材を蓄熱槽など
に充填して蓄熱装置としたり、上記蓄熱剤をそのまま蓄
熱槽などに充填するなどして蓄熱装置として用いること
ができる。このように、本発明にかかる蓄熱剤を蓄熱材
や蓄熱装置として用いることで、蓄熱や、冷熱量の蓄積
をより効率的に行うことができる。
【0142】上記蓄熱剤を充填する容器の形状について
は特に限定されるものではないが、たとえば、円筒状や
球状、コイル状、折れ曲がったチューブ状のものなどを
用いることができる。このような形状の容器に上記蓄熱
剤を充填してなる蓄熱材は、蓄熱槽に充填した場合、該
蓄熱槽内で、伝熱媒体(水など)との接触面積を大きく
することができるため好ましい。また、床暖房などに用
いる場合では、板状の容器が好ましい。
【0143】上記の容器の材質としては、熱を伝達する
ための伝熱媒体や油性物質と長期間接触することによっ
ても互いに腐食することがなく、かつ、経時的な耐久性
を有するものであれば特に限定されるものではない。た
とえば、成形性に優れ、かつ、安価な材質であるポリ塩
化ビニルなどを挙げることができる。
【0144】本発明にかかる蓄熱剤を上記の容器内に充
填する場合、前述したように、単量体成分または架橋前
の重合体を、液体状態で容器に充填して、容器内で硬化
させることが好ましい。具体的には、油性物質と、架
橋性単量体を含む単量体成分とを液体状態にて容器内に
投入し、油性物質中にて上記単量体成分を、油溶解性ラ
ジカル重合開始剤の共存下において塊状架橋重合させて
硬化させる方法(注型重合)、反応性単量体を含む単
量体成分を、油性物質中にて油溶解性ラジカル重合開始
剤の共存下において重合させた架橋前の重合体と、架橋
剤とを混合した混合物を、上記官能基と架橋剤とによる
架橋が完了する前に、液体状態にて容器内に投入して充
填し上記架橋を容器内で完了させて硬化させる方法(注
型重合)などが挙げられる。
【0145】上記のおよびによる方法では、油性物
質と単量体成分または架橋前の重合体とを常温付近にお
いて液体状態とすることが容易に可能であることから、
上記油性物質と単量体成分または架橋前の重合体とを容
器中に密に充填することが容易にできる。続いて、上記
単量体成分または架橋前の重合体を上記容器中で常温付
近にて重合または架橋させることにより、上記単量体成
分を重合させて硬化させた架橋重合体を、油性物質を保
持した状態で上記容器中に密に充填できる。
【0146】したがって、上記方法では、油性物質を保
持した重合体を容器内に充填するといった手間が従来よ
り簡便となる一方、重合体に保持された蓄熱性を有する
油性物質を容器中に、より密に、かつ、より多く充填で
きるから、上記油性物質による熱効率が従来より改善さ
れた蓄熱材を得ることができる。
【0147】前述の容器の形状については特に限定され
るものではないが、ビル空調に用いる場合では、蓄熱槽
内にて熱を伝達する媒体との接触表面積を大きくするこ
とが好ましいことから、折れ曲がったチューブ状や、コ
イル状や、球状、円筒状などの中空部を有する形状の容
器が好ましく、床暖房に用いる場合には板状が望まし
い。
【0148】上記の容器の材質としては、熱を伝達する
ための媒体や油性物質や重合体との間にて互いに腐食し
ないで、かつ、水系の媒体中に長年にわたり浸漬される
際の長期間の耐水性といった経時的な耐久性を有するも
のであれば特に限定されるものではないが、安価かつ成
形性に優れたポリ塩化ビニルなどが好ましい。次に、実
施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明す
る。
【0149】〔実施例1〕市販の軽油を蒸留によって分
離・精製し、パラフィンaを得た。そのときの蒸留結果
を表1に示す。このパラフィンaの相変化温度は10.
3℃であり、同じく融解熱は34.0 cal/gであり、
同じく含水率は0.2wt%であった。また、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCとす
る)分析から、このパラフィンaの分子量は210であ
った。さらに、このパラフィンaの蓄熱率90%の温度
2 は8.5℃であり、蓄熱率10%の温度t1 は1
1.3℃であるため、温度差|t1 −t2 |、すなわ
ち、パラメータは、2.8℃であった。
【0150】このパラフィンaを、内径60mm、長さ
1.4mの硬質ポリ塩化ビニル製パイプに2.45kg
充填して蓄熱材(1)を形成した。この蓄熱材(1)を
36m3 の水槽に5000本投入した。この水槽に直列
に配置した冷却機から、該水槽に7℃の冷水を700リ
ットル/分で供給し、水温を7℃で10時間保持した。
その後、この水槽の一端からポンプにより冷水を汲み出
して空調器に供給する一方、他端から12℃の戻り水を
返還して、空調器を運転した。上記ポンプ吸い込み口
で、水槽からの供給温度を測定したところ、8℃以下の
冷水が7時間保持された。
【0151】〔比較例1〕市販の灯油を蒸留によって分
離・精製し、パラフィンbを得た。そのときの蒸留結果
を表1に示す。このパラフィンbの相変化温度は9.0
℃であり、同じく融解熱は32.8 cal/gであり、同
じく含水率は0.3wt%であった。また、GPC分析
から、このパラフィンbの分子量は200であった。さ
らに、このパラフィンbの蓄熱率90%の温度t2
6.7℃であり、蓄熱率10%の温度t1 は11.0℃
であるため、温度差|t1 −t2 |、すなわち、パラメ
ータは4.3℃であった。
【0152】このパラフィンbを、内径60mm、長さ
1.4mの硬質ポリ塩化ビニル製パイプに2.54kg
充填して蓄熱材(2)を形成した。この蓄熱材(2)を
上記実施例1における蓄熱材(1)に代えた以外は同様
の方法で空調器を運転した。上記ポンプ吸い込み口で水
槽からの取り出し温度を測定たところ、8℃以下の冷水
は3時間しか保持されなかった。
【0153】
【表1】
【0154】〔実施例2〕市販の125°Fのパラフィ
ンワックスを60℃で加熱融解した。その後、54℃に
保温した大量のメタノール中に、上記融解したパラフィ
ンワックスを徐々に滴下した。滴下後、析出した析出物
を素早く濾別して冷却した。得られた析出物に対して上
記の操作を5回繰り返した後、40℃の減圧乾燥機で5
時間保持し、メタノールを除去した石油ワックスaを得
た。この石油ワックスaの相変化温度tp ℃は、53.
2℃であり、同じく融解熱は、55.0 cal/gであ
り、同じく含水率は0.3wt%であった。また、GP
C分析から、この石油ワックスaの分子量は365であ
った。
【0155】この石油ワックスaの(tp +20)℃=
73・2℃における全光線透過率Tt(73.2)は9
6.6%であり、同じく(tp −50)℃=3.2℃に
おける全光線透過率Tt(3.2)は20.9%であっ
た。これら全光線透過率Ttから算出した石油ワックス
aの光線透過度90%における温度t3 ℃は54.7℃
であり、同じく光線透過度10%における温度t4 ℃は
51.8℃であるため、温度差|t3 −t4 |、すなわ
ち、パラメータは2.9℃であった。
【0156】上記石油ワックスaを内容積18リットル
のステンレス製の板状の蓄熱容器内に12kg充填し
た。この板状蓄積容器を蓄積ユニットとして、ビルの窓
際などに設置される蓄熱式のペリメータ冷暖房装置に用
いた。この蓄積ユニットに直接接した面状ヒータを用い
て該蓄積ユニットを55℃、8時間加熱し蓄熱を行い、
次いで、送風ファンを風量40リットル/sで作動させ
て、10℃の室内の空気を上記ペリメータ冷暖房装置に
て加熱・排風した。上記ペリメータ冷暖房装置の出口温
度を測定したところ、30℃以上の空気が45分間保持
された。
【0157】〔比較例2〕市販の130°Fのパラフィ
ンワックスを石油ワックスbとした。この石油ワックス
bの相変化温度tp ℃は、54.5℃であり、同じく融
解熱は、53.1cal/gであり、同じく含水率は0.
3wt%であった。また、GPC分析から、この石油ワ
ックスbの分子量は375であった。
【0158】この石油ワックスbの(tp +20)℃=
74.5℃における全光線透過率Tt(74.5)は9
6.1%であり、同じく(tp −50)℃=4.5℃に
おける全光線透過率Tt(4.5)は22.0%であっ
た。これら全光線透過率Ttから算出した石油ワックス
aの光線透過度90%における温度t3 ℃は55.8℃
であり、同じく光線透過度10%における温度t4 ℃は
47.4℃であるため、温度差|t3 −t4 |、すなわ
ち、パラメータは8.4℃であった。
【0159】上記石油ワックスb12.4kgを上記実
施例2における石油ワックスaに代えた以外は同様にし
て、ペリメータ冷暖房装置を運転した。このペリメータ
冷暖房装置の出口温度を測定したところ、30℃以上の
空気は19分間しか保持されなかった。
【0160】〔実施例3〕市販の軽油を蒸留によって分
離・精製し、パラフィンcを得た。そのときの蒸留結果
を表2に示す。このパラフィンcの相変化温度tp ℃は
36.3℃であり、同じく融解熱は53.3 cal/gで
あり、同じく含水率は0.3wt%であった。また、G
PC分析から、このパラフィンcの分子量は225であ
った。これら相変化温度tp ℃からパラフィンcの硬度
を算出すると、(tp −1.5)℃=34.8℃におけ
るパラフィンcの硬度Hd(34.8)は52であり、
同じく(tp −50)℃=−13.7℃における硬度H
d(−13.7)は82であるため、比硬度、すなわ
ち、パラメータは0.64であった。
【0161】このパラフィンcを、内径32mm、全長
3mのU字型ポリ塩化ビニル製パイプに2.0kg充填
して蓄熱材(3)を作成した。この蓄熱材(3)を室温
32℃に保持された40m3 の稲の恒温苗床倉庫におけ
るその側面に直列となるように備えつけられた蓄熱室内
に200本吊り下げた。
【0162】夜間、この蓄熱室に、ヒータとブロワーと
により倉庫内空気を37℃に加熱して2.4m3 /時
間、10時間通気して蓄熱させた。次いで、昼間、ブロ
ワーのみを運転し、倉庫内空気を蓄熱室に通気して倉庫
に戻した。このようにして倉庫内の温度を一定に維持す
る運転を行った。蓄熱室から倉庫へ導入される空気温度
を測定したところ、34℃以上の温風が8時間保持され
た。
【0163】
【表2】
【0164】〔比較例3〕100重量部のNa2SO4・10H2
O に5重量部のベントナイト、2重量部のNaClを混合
し、無機水和物aを得た。この無機水和物aの相変化温
度tp ℃は、35.6℃であり、同じく融解熱は、5
6.4 cal/gであり、同じく含水率は56wt%であ
った。また、上記無機水和物aの分子量は322であっ
た。これら相変化温度tp ℃と融解熱とから無機水和物
aの硬度を算出すると、(tp −1.5)℃=34.1
℃における無機水和物aの硬度Hd(34.1)は26
であり、同じく(tp −50)℃=−14.4℃におけ
る硬度Hd(−14.4)は80であるため、比硬度、
すなわち、パラメータは0.33であった。
【0165】上記無機水和物aを、内径32mm、全長
3mのU字型ポリ塩化ビニル製パイプに1.9kg充填
して蓄熱材(4)を作成した。この蓄熱材(4)を、上
記実施例3における蓄熱材(3)に代えた以外は同様の
方法で倉庫内の温度を一定に維持する運転を行った。蓄
熱室から倉庫へ導入される空気温度を測定したところ、
34℃以上の温風は2時間しか保持されなかった。
【0166】〔実施例4〕市販の110°Fのパラフィ
ンワックスを50℃で加熱融解した。その後、45℃に
保温した大量のメタノール中に、上記融解したパラフィ
ンワックスを徐々に滴下した。滴下後、析出した析出物
を素早く濾別して冷却した。得られた析出物に対して上
記の操作を5回繰り返した後、40℃の減圧乾燥機で5
時間保持し、メタノールを除去した石油ワックスcを得
た。この石油ワックスcの相変化温度tp ℃は、45.
6℃であり、同じく融解熱は、55.2 cal/gであ
り、同じく含水率は0.2wt%であった。また、GP
C分析から、この石油ワックスcの分子量は330であ
った。
【0167】この相変化温度tp ℃から石油ワックスc
の針入度を算出すると、(tp −1.5)℃=44.1
℃における石油ワックスcの針入度Nd(44.1)は
44であり、同じく(tp −50)℃=−4.4℃にお
ける針入度Nd(−4.4)は36であるため、比針入
度、すなわち、パラメータは0.81であった。
【0168】5kgの上記石油ワックスcをポリエチレ
ンフィルムで覆い、さらに、アルミニウム箔でラミネー
トしてシールすることにより、蓄熱板(縦30cm×横
20cm×厚さ10cm)を作成した。この蓄熱板を床
用蓄熱ヒーターにおけるヒーターの上部、かつ、床材の
下となるように埋設した。上記ヒーターで蓄熱板を8時
間加熱したところ、該蓄熱板は60℃となった。次い
で、ヒーターによる加熱を停止し、床材の表面温度を計
測したところ、42℃以上の床温が5時間保持された。
【0169】〔比較例4〕市販のラウリン酸を脂肪酸a
とした。この脂肪酸aの相変化温度tp ℃は、44.0
℃であり、同じく融解熱は、42.5 cal/gであり、
同じく含水率は0.5wt%であった。また、この脂肪
酸aの分子量は200であった。これら相変化温度tp
℃と融解熱とから脂肪酸aの針入度を算出すると、(t
p −1.5)℃=42.5℃における脂肪酸aの針入度
Nd(42.5)は68であり、同じく(tp −50)
℃=−6.0℃における針入度Nd(−6.0)は41
であるため、比針入度、すなわち、パラメータは0.
60であった。
【0170】上記脂肪酸a6.5kgを、上記実施例4
における石油ワックスcに代えた以外は同様の方法で蓄
熱板を作成して加熱した。この床材の表面温度を測定し
たところ、42℃以上の床温は2時間しか保持されなか
った。
【0171】〔実施例5〕ジムロート冷却器、窒素ガス
導入管、およびバドル羽根付撹拌機を備えた500cc
セパラブルフラスコ内に、実施例1で得られたパラフィ
ンa80g、2−エチルヘキシルアクリレート79.5
g、β−ヒドロキシエチルアクリレート0.5g、およ
び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)0.135gをそれぞれ加えて撹拌しながら、窒素
ガスを100cc/分で30分間気相部に供給した。そ
の後、湯浴を用いてフラスコ内の温度を60℃まで昇温
し、4時間重合を行った後に、さらに80℃に昇温して
1時間熟成することによって、ポリマーのパラフィン溶
液dを得た。
【0172】次いで、実施例1で用いた硬質ポリ塩化ビ
ニル性パイプに、上記のポリマーのパラフィン溶液d
0.490kg、パラフィンa1.960kg、ジブチ
ルスズジラウレート1.47g、および硬化剤としての
イソホロンジイソシアネート1.48gをよく混合した
ものを充填し、60℃で12時間静置して硬化させて、
蓄熱剤(5)を形成した。なお、上記ジブチルスズジラ
ウレートは、イソホロンジイソシアネートの硬化反応を
促進する反応促進剤(触媒)である。
【0173】この蓄熱剤(5)を実施例1における蓄熱
剤(1)に代えた以外は同様の方法で空調機を運転し
た。すなわち、蓄熱剤(5)を36m3 の水槽に500
0本投入し、この水槽に直列に配置した冷却機から、該
水槽に7℃の冷水を700リットル/分で供給し、水温
を7℃で10時間保持した後、この水槽の一端からポン
プにより冷水を汲み出して空調器に供給する一方、他端
から12℃の戻り水を返還して、空調器を運転した。上
記ポンプ吸い込み口で、水槽からの供給温度を測定した
ところ、8℃以下の冷水が6.5時間保持された。
【0174】以上の結果から明らかなように、前記パラ
メータ〜の範囲内を満たす蓄熱剤(実施例1〜5の
蓄熱剤)は、固相から液相または液相から固相への相変
化が効率よくなされ、かつ、相変化の際における潜熱が
十分活用されていることがわかる。これに対して、前記
パラメータ〜の範囲から外れている蓄熱剤(比較例
1〜4の蓄熱剤)は、相変化がされにくく、かつ相変化
の際の潜熱が十分活用されていないことがわかる。
【0175】それゆえ、前記パラメータ〜の範囲内
である蓄熱剤は、空調機などに対して好適に用いること
ができる、凍結し易く、かつ、融解し易い蓄熱剤である
ことがわかる。
【0176】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の蓄熱剤は、以上
のように、工業的に入手容易で、使用に当たり経済性が
高い、相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱剤であ
って、蓄熱率10%を示す温度と蓄熱率90%を示す温
度との温度差が3℃以下であり、かつ、分子量100以
上の蓄熱性化合物を含んでいる構成である。
【0177】本発明の請求項2記載の蓄熱剤は、以上の
ように、工業的に入手容易で、使用に当たり経済性が高
い、相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱剤であっ
て、次式、
【0178】
【数7】
【0179】で定義される光線透過度が0.1を示す温
度と光線透過度が0.9を示す温度との温度差が3℃以
下であり、かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含
んでいる構成である。
【0180】本発明の請求項3記載の蓄熱剤は、以上の
ように、工業的に入手容易で、使用に当たり経済性が高
い、相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱剤であっ
て、次式、
【0181】
【数8】
【0182】で定義される比硬度が0.6以上であり、
かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含んでいる構
成である。
【0183】本発明の請求項4記載の蓄熱剤は、以上の
ように、工業的に入手容易で、使用に当たり経済性が高
い、相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱剤であっ
て、次式、
【0184】
【数9】
【0185】で定義される比針入度が0.8以上であ
り、かつ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含んでい
る構成である。
【0186】それゆえ、本発明にかかる蓄熱剤は、上記
構成に示された各パラメータにおいて所定の範囲内に入
っている蓄熱性化合物を含んでいることになる。そのた
め、上記蓄熱剤は、融解し易く、かつ、凍結し易いもの
となっている。したがって、上記蓄熱剤は、蓄熱・放熱
時における潜熱を十分に活用でき、蓄熱・放熱の効率を
上昇させることができるという効果を奏する。
【0187】本発明の請求項5記載の蓄熱剤は、以上の
ように、請求項1ないし4の何れか1項に記載の蓄熱剤
中で単量体成分を重合して得られる重合体中に、相変化
により液化する上記蓄熱剤の流動性が低下するように該
蓄熱剤を上記重合体中に保持してなる構成である。
【0188】それゆえ、熱を貯蔵・放出する際の凍結・
融解の繰り返しによっても、該蓄熱剤のしみ出しなどの
漏出を抑制することが可能となり、安全性をより一層向
上させることができる。しかも、熱を運搬する媒体との
接触表面積を大きくすることができる複雑な形状の容器
(たとえば、チューブ状、ドーナツ状、コイル状など)
中に容易に蓄熱剤を充填することができるとともに、容
器に充填した状態でも、熱効率の低下を回避することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である蓄熱剤における蓄
熱率/冷熱量蓄積率と温度との関係を示すグラフであ
る。
【図2】上記の蓄熱剤を用いた蓄熱槽における出口温度
の変化を示すグラフである。
【図3】従来の蓄熱剤を用いた蓄熱槽における出口温度
の変化を示すグラフである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱
    剤であって、蓄熱率10%を示す温度と蓄熱率90%を
    示す温度との温度差が3℃以下であり、かつ、分子量1
    00以上の蓄熱性化合物を含んでいることを特徴とする
    蓄熱剤。
  2. 【請求項2】相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱
    剤であって、次式、 【数1】 で定義される光線透過度が0.1を示す温度と光線透過
    度が0.9を示す温度との温度差が3℃以下であり、か
    つ、分子量100以上の蓄熱性化合物を含んでいること
    を特徴とする蓄熱剤。
  3. 【請求項3】相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱
    剤であって、次式、 【数2】 で定義される比硬度が0.6以上であり、かつ、分子量
    100以上の蓄熱性化合物を含んでいることを特徴とす
    る蓄熱剤。
  4. 【請求項4】相変化による潜熱を利用して蓄熱する蓄熱
    剤であって、次式、 【数3】 で定義される比針入度が0.8以上であり、かつ、分子
    量100以上の蓄熱性化合物を含んでいることを特徴と
    する蓄熱剤。
  5. 【請求項5】請求項1ないし4の何れか1項に記載の蓄
    熱剤中で単量体成分を重合して得られる重合体中に、相
    変化により液化する上記蓄熱剤の流動性が低下するよう
    に該蓄熱剤を上記重合体中に保持してなることを特徴と
    する蓄熱剤。
JP10187540A 1997-07-04 1998-07-02 蓄熱剤 Pending JPH1171579A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10187540A JPH1171579A (ja) 1997-07-04 1998-07-02 蓄熱剤

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-180115 1997-07-04
JP18011597 1997-07-04
JP10187540A JPH1171579A (ja) 1997-07-04 1998-07-02 蓄熱剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1171579A true JPH1171579A (ja) 1999-03-16

Family

ID=26499753

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10187540A Pending JPH1171579A (ja) 1997-07-04 1998-07-02 蓄熱剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH1171579A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0011411B1 (en) Thermal energy storage material and a heat-exchange device containing this material
JP5096486B2 (ja) マイクロカプセル
Li et al. Morphology, structure and thermal stability of microencapsulated phase change material with copolymer shell
US4470917A (en) Thermal energy storage compositions
US6083417A (en) Thermal storage agent, manufacturing method thereof, thermal storage material, manufacturing method thereof, thermal storage device and accumulating method
CN100345930C (zh) 微胶囊水分散体作为传热液体的用途
EP2133324A1 (en) Inclusion hydrate having quaternary ammonium salt as guest compound
CN102858902A (zh) 热膨胀性微囊以及热膨胀性微囊的制造方法
JPH11152465A (ja) 蓄熱装置およびその製造方法
JP4668541B2 (ja) 蓄熱材、その製造方法、加温あるいは冷却システムおよび蓄熱性物品、および共重合体
JP6814771B2 (ja) 蓄熱材組成物及び建築物の冷暖房用の蓄熱システム
JP2009046638A (ja) 蓄熱材
JPH1180723A (ja) 蓄熱剤およびその製造方法並びに蓄熱材の製造方法
KR101627183B1 (ko) 상변화 물질을 이용하여 축열성이 증가된 경량 콘크리트 및 이의 제조방법
JPH1171579A (ja) 蓄熱剤
Ryu et al. Heat transfer characteristics of cool-thermal storage systems
JP3638072B2 (ja) 蓄熱剤の製造方法および蓄熱材の製造方法
JPH11323321A (ja) 蓄熱剤組成物の製造方法および蓄熱材の製造方法
JPH10251627A (ja) 複合粒子、その製造方法および熱搬送媒体
JP2006083276A (ja) パラフィンエマルション
JP2004168792A (ja) 熱搬送媒体及びその製造方法、並びに、それを用いた空調システム
Shah et al. Nanostructures encapsulated phase-change materials for sustained thermal energy storage in concrete
JPH11152466A (ja) 蓄熱材マイクロカプセル
JP2005098677A (ja) 蓄熱体
JPH0931452A (ja) 蓄熱剤組成物と空調システム