JP4668541B2 - 蓄熱材、その製造方法、加温あるいは冷却システムおよび蓄熱性物品、および共重合体 - Google Patents

蓄熱材、その製造方法、加温あるいは冷却システムおよび蓄熱性物品、および共重合体 Download PDF

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本発明は、長鎖アルカンの固体−液体間の相変化(融解・凝固)に伴って発生する融解潜熱を利用して蓄熱を行う潜熱蓄熱方式に用いられる蓄熱材に関し、さらに詳しくは長鎖アルカンを含有する安定性の高い蓄熱材、その製造方法、それを装填した蓄熱性物品およびそれを使用した加温あるいは冷却システム、およびそれに使用する共重合体に関する。
業務用および家庭用冷房の普及が進んだ現代では、夏季日中の電力需要ピークを平準化させるため、夜間電力を用いて冷房用に冷熱を貯蔵するための蓄熱材の開発が盛んに進められている。ここで、蓄熱材としては、溶融潜熱の大きな水が広く用いられているが、循環用冷媒に水を用いる場合の凍結防止対策、水の過冷却対策などの課題も多い。そこで、融点・凝固点の選択範囲の広い、長鎖アルカンなどの炭化水素化合物の固体−液体間の相変化(融解・凝固)に伴って発生する発熱・吸熱現象を利用した蓄熱材の利用も進められている。潜熱蓄熱方式は、(1)流動性のない蓄熱成分を蓄熱槽内に固定して載置した蓄熱方式と、(2)流動性の蓄熱成分を流すことで、蓄熱槽から熱交換器に熱搬送・熱伝導させる蓄熱材搬送方式とに大別される。蓄熱材搬送方式は熱効率や制御性の点で優れているため、近年特に注目を浴びつつある。
流動性のある蓄熱材としては、例えば、パラフィンワックス、水、および界面活性剤よりなるエマルジョンからなる蓄熱材が知られている(特許文献1)。パラフィンワックスは分子量が異なるものなどの不純物を少量乃至多量に含有しているために、「純物質」とは異なり「過冷却現象」は起こりにくい(過冷却状態を経ずに凝固する)。なお、純物質は純度が高い程凝固のきっかけとなる「核」が発生しにくく、過冷却状態となって、本来の凝固点よりも低い温度で凝固する過冷却現象を起こし易いことが知られている。
一方、純度の高い長鎖アルカンを、界面活性剤を用いて水性エマルジョンとした場合にも、エマルジョン粒子、すなわち、長鎖アルカン粒子内にも界面活性剤が存在すること、およびエマルジョン粒子の粒径が小さくなるほど結晶化の核ができる確率が低くなることから、過冷却現象が生じることが知られている。
そこで、過冷却防止対策として、相変化を伴う有機化合物と前記有機化合物のアミン誘導体、アルコール誘導体またはカルボン酸誘導体から選択される一種以上の核発生剤とを含んでなる蓄熱材が提案されている(特許文献2)。また、相変化を伴う飽和炭化水素(例えば、ヘキサデカン)、水、界面活性剤、および核発生剤として上記飽和炭化水素の相変化温度よりも1℃〜30℃高い相変化温度を有する飽和炭化水素(例えば、オクタデカン)を用いたエマルジョンからなる蓄熱材が提案されている(特許文献3)。
しかしながら、界面活性剤が長鎖アルカンに溶質として溶け込んでいる場合には、エマルジョン状態の長鎖アルカンが溶融−凝固のサイクルを繰り返す過程で、「再結晶精製」の原理で界面活性剤が徐々に長鎖アルカン粒子から排除され、また、エマルジョン自体も徐々に崩壊し、やがて長鎖アルカン成分が「液別れ」する(水相の表面に浮いてくる)という欠点を有している。
また、過冷却の防止に核発生剤を添加する手法は、充分な効果が得られなかったり、界面活性剤の場合と同様にエマルジョン粒子(長鎖アルカン)内から徐々に排除されたりするという欠点も有している。さらに、核活性剤の極性が高い場合には、流動性蓄熱材が流れる配管経路および熱交換器経路の金属材料を腐食するという欠点がある。
界面活性剤や核発生剤がエマルジョン粒子から徐々に排除され、エマルジョンが崩壊することを避けるため、長鎖アルカンと核発生剤などを封入したマイクロカプセルのスラリーを用いる方法も提案されている(特許文献4)が、上記の欠点は根本的には解決されない。
特開昭57−40582号公報 特開平9−31451号公報 特開2000−336350公報 特開平5−237368号公報
従って、本発明の目的は、上記の従来技術の問題点が解決された、長鎖アルカンの相変化に伴って長鎖アルカンのエマルジョン粒子から界面活性剤が排除されたり、エマルジョン崩壊が起こったりすることのない安定性を有し、核発生剤なしでも過冷却現象を起こし難く、相変化を円滑に起こす、長鎖アルカンの水性エマルジョン型蓄熱材、マイクロカプセル型長鎖アルカン微粒子状蓄熱材およびその水性分散液型蓄熱材、ならびにこれらの蓄熱材を使用する加温あるいは冷却システムを提供することである。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、ポリエチレングリコールセグメント(以下「PEGセグメント」という場合がある)と長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体が、長鎖アルカンおよび水性媒体に充分に溶解性乃至親和性を有し、且つ長鎖アルカンの相変化に伴う過冷却を防止し、また、長鎖アルカンを微細に水系媒体中に乳化でき、且つ得られた長鎖アルカンの水分散液が非常に安定であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、長鎖アルカンと、PEGセグメントと上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体(以下単に「本発明の共重合体」または「共重合体」という場合がある)とからなることを特徴とする蓄熱材を提供する。すなわち、本発明は、炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体とを含んでなる蓄熱材において該ポリエチレングリコールセグメントが、分子量200〜2,000のポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートであり、該長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントを形成するための単量体が、上記長鎖アルカンの炭素数±2の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を50質量%以上含む炭素数8〜30の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレートであり、かつ該単量体の前記共重合体の構成単位中の含有量が30〜70質量%であることを特徴とする蓄熱材を提供する。
上記蓄熱材は、前記長鎖アルカンが、前記共重合体によって水系媒体(水系媒体としては主に水を使用するので、以下水を代表例として説明する)中に微分散されてなること;前記共重合体によって水系媒体中に微分散された長鎖アルカン微粒子が、さらに重合体被膜によって被覆されてマイクロカプセル化されているマイクロカプセル型であること;前ポリエチレングリコール(以下「PEG」という場合がある)のモノ(メタ)アクリレートが、PEGのモノアルキル(アルキル基の炭素数は1〜4)エーテル、モノアルキルアシレート(アルキル基の炭素数は1〜4)、モノ−カルボキシアルキルアシレート(アルキル基の炭素数は2〜6)、モノサルフェートおよびモノフォスフェート誘導体から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
また、本発明は、上記蓄熱材の製造方法、これらの蓄熱材を使用する加温あるいは冷却システム、該システムに使用される蓄熱性物品、および本発明の蓄熱材に使用される共重合体を提供する。すなわち、本発明は、炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと、上記長鎖アルカンの炭素数±2の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を含む単量体によって形成した上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体を、水系媒体中に添加し、上記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させて長鎖アルカンの水性エマルジョンとし、水性エマルジョン型蓄熱材を得ることを特徴とする蓄熱材の製造方法を提供する。また、炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと、上記長鎖アルカンの炭素数±2の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を含む単量体によって形成した上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体を、水系媒体中に添加し、上記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させて得た長鎖アルカンの水性エマルジョン中で、殻となる重合体(重合体被膜)を生成させ、上記水性エマルジョン中の微粒子を重合体被膜でマイクロカプセル化してマイクロカプセル型蓄熱材を得ることを特徴とする蓄熱材の製造方法を提供する。
本発明の蓄熱材は、長鎖アルカンと特定の共重合体とを使用することにより、核発生剤なしでも過冷却現象を起こし難く、相変化を円滑に起こすことができる。また、本発明の蓄熱材は、長鎖アルカンと特定の共重合体とを使用することにより、エマルジョンの崩壊を起こすことなしに、溶融−凝固のサイクルを繰り返すことができ、安定なマイクロカプセル型の蓄熱材を提供することができる。また、本発明の蓄熱材は人為的な冷房システムや暖房システムに有効である他、自然環境の変化である寒暖、風雨、散水などを利用して昇温防止、凍結防止あるいは融雪など寒さ、暑さをできるだけ緩和させるようにする使い方に好適である。
以下に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明の蓄熱材は、長鎖アルカンとともに、本発明の共重合体を使用することが特徴である。
本発明で用いられる長鎖アルカンは、炭素数10以上、好ましくは炭素数13〜28のアルカンである。炭素数が28を超えると炭素数が一個増加しても融点の上昇が3℃以下であり、効果はあまり変わらない。長鎖アルカンは、それが使用される環境の温度条件によって適切な凝固点および融点を有するものを選択して使用される。好ましい長鎖アルカンの具体例としては、例えば、n−トリデカン(凝固点−5.5℃)、n−テトラデカン(融点5.5℃)、n−ペンタデカン(同10℃)、n−ヘキサデカン(同18.1℃)、n−ヘプタデカン(同22℃)、n−オクタデカン(同27.6℃)、n−ノナデカン(同32℃)、n−エイコサン(同36〜37℃)、n−ヘンエイコサン(同40.5℃)、n−ドコサン(同47℃)、トリコサン(同47.3℃)、テトラコサン(同54℃)などの直鎖アルカンを挙げることができる。
これらの直鎖アルカンは、それが使用される温度領域に融点を示すものを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して、混合物としての融点を調整して使用してもよい。また、工業的には、単一成分のものよりも2種類以上の混合物の方が入手し易い。ただし、2種類以上の純物質を混合するとエントロピー効果によって、モル当たりの蓄熱量が純物質の場合よりも減少することは避けることができないので、高効率を目指す場合は単一化合物の使用が好ましい。直鎖アルカンの他に、分岐アルカンや環式アルカンを混合して、直鎖アルカンの融点を調整して用いることもできる。
本発明に使用する共重合体は、PEGセグメントと長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体である。該共重合体としては、例えば、ビニル系、(メタ)アクリル系などの付加(共)重合体;ポリエステル系、ポリアミド系などの縮合(共)重合体;ポリウレタン系、エポキシ系などの付加縮合(共)重合体系などが挙げられる。
PEGセグメントを有する単量体としては、PEGあるいはそのモノアルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エーテル、モノアルキルアシレート(アルキル基の炭素数1〜4)、モノ−カルボキシアルキルアシレート(アルキル基の炭素数2〜6)、モノサルフェートあるいはモノフォスフェート誘導体の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
上記PEGセグメントとしては、エチレングリコール単位を、例えば、およそ50質量%以上含有することによって実質的に親水性を示すアルキレン(アルキレンの炭素数3、4)オキシドとの共重合体セグメントも包含する。エチレングリコール共重合体セグメントの例としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド(質量比99:1〜50:50)のブロック共重合体セグメントあるいはランダム共重合体セグメントが挙げられる。PEGセグメントの分子量としては200以上が好ましく、さらに好ましくは400〜2,000である。なお、本発明において単に「分子量」という場合は、重量平均分子量を意味する。分子量が200未満であると、得られる共重合体の水溶性やその親水性能力が不足し、長鎖アルカンの良好なエマルジョン化が行われない。分子量が大きすぎると、得られる共重合体の親水性が大きくなり、共重合体における親水性と疎水性のバランスがくずれ、界面活性機能が充分に発揮されない結果となる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」および「メタクリレート」との双方を意味する。
上記のようなPEGセグメントを有する単量体としては、PEGセグメントを有する、(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジエステルなどが好ましいものとして挙げられる。共重合体中のPEGセグメントを有する単量体単位の含有量は、共重合体の構成全単位中5〜95質量%が好ましく、さらに好ましくは30〜70質量%である。
また、長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントを有する単量体としては、例えば、炭素数が8〜30の炭化水素基を有する単量体が好ましい。例えば、上記炭素数のアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジアルキルエステル;ビニルアシルエステル;アルキルスチレン;モノ〜トリアルキルシクロアルキル(メタ)アクリレート;アルコキシ(アルキル基の炭素数4〜30)〔アルキレン(アルキレン鎖の炭素数2〜6)グリコール〕n(メタ)アクリレート(nは1〜10);アルキル(アルキル基炭素数4〜30)フェノキシ〔アルキレン(アルキレン鎖の炭素数2〜6)グリコール〕n(メタ)アクリレート(nは1〜10);アシルオキシ(アルキル基の炭素数8〜30)〔アルキレン(アルキレン鎖の炭素数2〜6)グリコール〕n(メタ)アクリレート(nは1〜10)などが挙げられる。
本発明の共重合体に、長鎖アルカンに対する親和性を付与するためには、使用される長鎖アルカンの炭素数±2の炭素数(以下、長鎖アルカンの炭素数をnとし、n±2で示す場合がある。)の長鎖アルキル基を有する単量体を含む単量体を用いて共重合体を形成することを要す。本明細書において、「長鎖アルカンの炭素数±2」とは、長鎖アルカンの炭素数をnとしたとき、n+2からn−2の範囲の炭素数を意味する。より好ましくは、上記したような長鎖アルキル基を有する単量体を50質量%乃至100質量%含有する単量体を使用して本発明の共重合体を製造することが好ましい。
このような長鎖アルキル基を有する単量体としては、例えば、炭素数n±2の直鎖アルキル基を有する直鎖アルキル(メタ)アクリレート50質量%乃至100質量%と、炭素数が10以上の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルとの混合物が好ましい。該脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルは、従来公知の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが使用される。
共重合体中の長鎖アルキル基を有する単量体単位の含有量は、該共重合体の全構成単位中95〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは70〜30質量%である。
なお、上記直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、使用される長鎖アルカンの炭素数(n)に応じたアルキル基を有するものを使用することが好ましい。例えば、長鎖アルカンとしてヘキサデカン(n=16)を使用する場合は、アルキル基の炭素数が16±2、例えば、14〜18のアルキル(メタ)アクリレート、すなわち、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシルなどが挙げられ、その一種以上を使用して、本発明の共重合体を得ることができる。
また、本発明で使用する共重合体には、上記以外の単量体単位を必要により共重合させることができる。このような単量体としては、共重合可能な従来公知の他のα,β−エチレン性不飽和単量体を使用することができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸やその各種エステル化物、アルキルアリールまたはアリールエステル、スチレン、メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を組合せて使用することができる。これらの単量体を必要により共重合して得られる単位は、共重合体を構成する全単量体単位中40質量%以下である。
また、他のイオン性を持ったα,β−エチレン性不飽和単量体を必要により共重合させることにより、本発明の共重合体に他のイオン性を付与することができ、さらに親水性を高めることができる。アニオン性単量体としては、例えば、前記したメタクリル酸やアクリル酸のアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸アルカリ金属塩などのカルボン酸塩やスルホン酸塩を含有する従来公知のアニオン性単量体が使用できる。これらはアルカリ中和する前の単量体を共重合させ、次いで水酸化物にて中和することによって得ることができる。このようなアニオン性単量体を使用した場合、本発明の共重合体はノニオン・アニオン系の親水性となる。
また、カチオン性単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、塩化トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート、塩化ベンジルジメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートや塩化トリメチルアンモニウムエチルメタクリルアミドなどのアミノ基や第4級アンモニウム塩などを有する従来公知のカチオン性単量体が使用できる。カチオン性単量体を使用した場合、本発明の共重合体はノニオン・カチオン系の親水性となる。アニオン性単量体またはカチオン性単量体を共重合した場合のこれらの単量体単位は、共重合体を構成する全単量体単位中30質量%以下である。
本発明の共重合体は、上記の単量体を従来公知の重合方法により共重合させることによって得ることができる。重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合および塊状重合などを用いることができる。好ましい重合方法は、溶剤中でアゾ系あるいは過酸化物系重合開始剤を使用し、温度60〜120℃での溶液重合である。
共重合体の分子量は、GPC(ゲル パーミエーション クロマトグラム)で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、2,000〜1,000,000の範囲であり、好ましくは2,000〜100,000の範囲、より好ましくは5,000〜30,000の範囲である。分子量が小さすぎるとエマルジョンの安定性が損なわれ、大きすぎると添加部数によるポリマーの分子数が少なくなり、界面活性剤として良好なエマルジョンが得られない。また、添加部数を増やすとエマルジョンとしての粘度増加や粒子径が大きくなり好ましくない。
本発明の蓄熱材は、前記の長鎖アルカンと、本発明の共重合体を用いて製造される。
本発明の蓄熱材の製造方法の態様としては、例えば、
(1)長鎖アルカンを、本発明の共重合体が添加された水中に微分散する方法、
(2)上記の共重合体が添加された長鎖アルカンを、水中に、あるいは上記の共重合体が添加された水中に微分散する方法、
(3)長鎖アルカンを、上記の共重合体が添加された水中に微分散し、長鎖アルカン微粒子を重合体被膜で被覆して上記微粒子をマイクロカプセル化する方法、
(4)上記の共重合体が添加された長鎖アルカンを、水中に、あるいは上記の共重合体が添加された水中に微分散し、長鎖アルカン微粒子を重合体被膜で被覆して上記微粒子をマイクロカプセル化する方法、
(5)上記の方法(1)〜(4)で得られた蓄熱材に、さらに増粘安定剤を含有させて軟らかい、あるいは硬いゲル状の蓄熱材とする方法、
(6)上記の方法(1)〜(5)で得られた蓄熱材を硬い固形樹脂あるいは柔軟な樹脂中に微分散する方法、あるいは硬い固形の樹脂製容器、柔軟な樹脂製容器、フィルム製容器や金属製容器中に注入させて固形状の蓄熱材とする方法、
などが挙げられる。
次に上記のような態様の本発明の蓄熱材の製造方法についてさらに詳しく説明する。
本発明で用いられる水としては、種々の純度および由来の水を使用することができ、特に限定されない。ただし、地下水などで、珪素化合物やカルシウム塩を含む水は、熱交換器部分で昇温したときに、これらの無機成分がスケールとして沈着し易いため、イオン交換水、限外濾過水、または蒸留水を用いることが好ましい。また、上記の(1)〜(4)などの水分散液や水性エマルジョンの態様の蓄熱材の安定性を増すために、これらの分散液などのpHを制御してもよい。さらに、これらの分散液などに水溶性有機化合物を混合して、不凍液化することもできる。また、これらの分散液などに公知のスケール付着防止剤、防かび剤、防錆剤、防腐剤、消泡剤を添加してもよい。ただし、添加する成分によって上記態様の蓄熱材が不安定化しないようにすることが必要である。
本発明の蓄熱材、例えば、エマルジョンを不凍液化するための水溶性有機化合物としては、公知のものを任意に用いることができる。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール;炭素数1〜4の低級アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、それらの炭素数1〜5のモノエーテル、ジエーテル、モノエステル;炭素数3〜6の多価アルコール;炭酸エチレンなどを好適に使用することができる。これらの水溶性有機化合物はエマルジョン中の水を不凍液化する目的で、任意の割合でエマルジョン中に添加することができる。好ましい添加量は、エマルジョン中の水100質量部に対して、5乃至200質量部、さらに好ましくは10乃至100質量部である。これよりも添加量が少ないと混合液の凝固点が純粋な水と大差がなくなり、添加量が多すぎるとエマルジョンの安定性が低下したり、粘度が増大したりして好ましくない。これらの水溶性有機化合物は、長鎖アルカンを水中に微細に分散させる際に共存させても、エマルジョンを作成してから添加してもよい。また、これらの水溶性有機化合物で液体のものを本発明の共重合体を合成する際の溶剤として使用し、得られた共重合体溶液をそのまま、本発明の蓄熱材の製造に用いてもよい。
本発明の蓄熱材は、その態様によらず、長鎖アルカンを水中に微細に分散させることが必要であり、そのために長鎖アルカンに対して前記共重合体を所定の割合で使用する。長鎖アルカンに対する共重合体の使用割合は、長鎖アルカン100質量部に対して共重合体は0.3〜50質量部の割合が好ましく、さらに好ましくは0.5〜15質量部の割合である。長鎖アルカンを水中に微分散化するに当たり、共重合体は長鎖アルカン中に添加したり、水中に添加したり、その両者に添加することができる。共重合体を長鎖アルカンおよび/または水中に添加する場合は、上記の割合となるように両者の分配比率を適当に設定すればよく、分配比率は特に限定されない。
本発明の蓄熱材を長鎖アルカンの水エマルジョンとして使用する場合には、蓄熱材構成成分の使用割合は、単位質量当たりの蓄熱量を大きくするためには水の量を少なくすればよいが、長鎖アルカンの水性エマルジョンに流動性を付与するため、長鎖アルカン100質量部に対し水を10質量部以上の割合で用いる必要がある。流動性を高めるためには、水の量が多いほど好ましいが、単位質量当たりの蓄熱量を確保するためには長鎖アルカン100質量部に対し水300質量部の割合が上限である。また、長鎖アルカン100質量部に対する共重合体の使用割合が0.3質量部未満であると、安定なエマルジョンが形成されにくくなる。一方、共重合体の量が50質量部を超えると、長鎖アルカンの含有量が減少し、蓄熱材としての効率が低下するとともに、エマルジョンの粘度が高くなるという弊害が生ずる。すなわち、使用する長鎖アルカンによって共重合体の使用割合には最適値があり、前記範囲内で実験によって最適値を求めることが望ましい。
本発明において長鎖アルカンの水性エマルジョン(O/W)を製造するには、共重合体を、それが易水溶性であれば直接水中に添加溶解し、難水溶性の場合にはそれが可溶の親水性溶剤(例えば、アルコールなど)に溶解して水中に添加し、次いで長鎖アルカンを添加して水中に微細に分散させる。長鎖アルカンに共重合体を添加する場合には、共重合体を直接に、あるいは予め長鎖アルカンの濃厚溶液にして長鎖アルカンに添加する。共重合体が添加された長鎖アルカンを、水中に、または共重合体が添加された水中に微細に分散させる。長鎖アルカンを微細に分散させるには公知の乳化装置がいずれも使用できる。例えば、高速攪拌式ディスパーミキサー、ホモジナイザー、ウルトラミキサー、流路固定式ジェット水流対向衝突微細分散機、超音波乳化分散機、スタティックミキサー、膜乳化装置などを好適に用いることができる。
生成した長鎖アルカンの液滴を融合させないために、必要により融合防止剤として保護コロイド、例えば、コロイダルシリカ水性分散液、エーロゲル(aerogel)、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、微粒子酸化チタンなどの無機微粒子;ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ヒドロキシプロピルキトサン、グリセリルキトサンなどの高分子保護コロイドなどを添加することができる。
また、上記で得られる本発明の蓄熱材を用いる加温あるいは冷却システムにおいて、長鎖アルカンの水性エマルジョンの循環配管系内にスタティックミキサーやインライン・ホモジナイザーを設けてもよい。さらに、循環用ポンプとしてホモジナイザーとして作用するものを用いてもよい。
また、長鎖アルカンの水性エマルジョンの形態では、蓄熱材を固体の用途では使用できない。本発明の蓄熱材を固体の形態で使用するためには、上記長鎖アルカンの水性エマルジョンの微粒化油滴を重合体被膜(殻)で被覆してマイクロカプセル化することが好ましい。
マイクロカプセル化するためには上記の水性エマルジョン中で殻となる重合体を生成させる。本発明では殻(重合体被膜)となる重合体は特に限定されず、上記の水性エマルジョン中で生成可能な重合体はいずれも使用できる。例えば、従来公知のビニル系、(メタ)アクリル系などの付加(共)重合体;ポリエステル系、ポリアミド系、メラミン−ホルムアルデヒド系などの縮合(共)重合体;ポリウレタン系、エポキシ系などの付加縮合(共)重合体などが挙げられる。また、硬化被膜を形成する場合には、上記のような重合体を形成する単量体とともに官能基が2個以上の単量体乃至オリゴマーなどが使用される。
重合体形成単量体としては、例えば、アルキルアシル(アルキル基の炭素数1〜30)ビニル、スチレン、メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、アルキル(炭素数1〜30)(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、モノ乃至ポリ(2〜10)アルキレン(炭素数2〜4)グリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレン(炭素数5〜12)グリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、炭素数3〜12の多価アルコールポリ(3〜12)(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタレートメチレンビス(メタ)アクリルアミド;アジピン酸ジビニル;ジビニルベンゼン;(ポリ・テトラメチレングリコール−ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタン)−ビスアクリレートなどのウレタンアクリレート系、ビスフェノールA系エポキシ樹脂−ビスアクリレートなどのエポキシアクリレート系、(トリメチロールプロパン−アジピン酸系ポリエステル)−ポリアクリレートなどのポリエステルアクリレート系などのアクリル系オリゴマー;ビニルアルコール共重合体−ポリアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体−ポリアクリレート、ヒドロキシ基を側鎖に有するポリエステル−ポリアクリレート、ヒドロキシ基を側鎖に有するポリウレタン−ポリアクリレートなどが挙げられる。さらに、アクリルポリオール−ポリイソシアネート、ポリエステルポリオール−ポリイソシアネートなどのウレタン樹脂系反応性組成物、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂初期縮合物などのアミノ樹脂系反応性組成物、エポキシ樹脂−アミン硬化剤などのエポキシ樹脂系反応性組成物などである。
マイクロカプセル化は、使用する重合体被膜を形成する材料に基づき、その従来公知の方法に基づいて実施される。例えば、前記の長鎖アルカンの水性エマルジョンに、上記の被膜形成性成分、熱重合開始剤、紫外線重合開始剤、硬化触媒などの添加剤を添加し、さらに必要に応じて保護コロイド、水溶性重合体、フィラーなどを加え、加熱、pHの変化、重金属イオンの添加、紫外線照射、あるいは電子線照射などにより重合体被膜を形成させる。
長鎖アルカンと共重合体とからなる混合物の微粒子を重合体被膜で被覆したマイクロカプセル化物は、上記で得られたような水中に微細分散した微分散液で使用される場合と、それをさらに乾燥して粉末状で使用される場合とがある。さらに固着剤や溶剤や水と混合してコーティング剤や含浸剤としても使用される。
本発明の蓄熱材である長鎖アルカンの水性エマルジョン、マイクロカプセル、その分散液などは、周囲の環境が冷えて液状の長鎖アルカンが凝固して放熱する性質、また、周囲の環境が高温になり、固体状の長鎖アルカンが溶融して吸熱する性質を利用して放熱・吸熱材料として利用される。長鎖アルカンの液化−固化の相変化を人為的にシステムとして利用する際には、本発明の蓄熱材を冷暖房用の循環媒体、冷却機能性材料として、保冷材、冷蔵庫、保冷庫、保冷車、自動販売機、商品陳列台、果物や野菜、魚類の鮮度保持剤、冷却湿布、加温湿布などに使用することができる。
また、夜と昼の温度差、雨や水の散布など自然環境の変化を利用することにより寒さや暑さをできるだけ緩和させるようにする使い方がある。例えば、住宅、ビルディング、建物、構造物などの壁材、屋根、屋上、その他建物空間などに塗布したり、シートやボードにしたり、壁紙に混在させて温度調節機能を持たせたり、道路、広場、駐車場、駅、空港、橋などの舗装した地面の材料に混合したり、シートやボードにして地中に敷いたりして昇温防止、凍結防止あるいは融雪させるなどである。これらは、また、人為的な冷却システムあるいは加温システムとしても行うこともできる。
以上のような蓄熱材の用途に応じて、本発明の蓄熱材である長鎖アルカンの水性エマルジョン、またはマイクロカプセルの分散液に公知の増粘安定剤(Thickener)を添加し、高粘度液体または非流動性のゲルとして使用してもよい。増粘安定剤としては、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、非架橋および部分架橋したポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、それらを主成分とする共重合体、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、アラビアガム、トラガントガム、キトサンなどが挙げられる。
さらに、増粘安定剤として、PEGセグメントに対する両端の疎水基の会合による拘束相の形成によるゲル構造を形成させるPEGジステアレート、PEGジベンゾエートなどの低分子化合物、ポリアクリル酸ナトリウム鎖やPEGセグメントなどの親水性重合体セグメントに対するポリスチレンセグメント、ポリメタクリル酸メチル鎖などの疎水性重合体セグメントのグラフト共重合体、ブロック共重合体などを好適に使用することができる。これら増粘安定剤の添加量は、本発明の蓄熱材である長鎖アルカンの水性エマルジョンまたはマイクロカプセル分散液中の水100質量部に対して、好ましくは0.01乃至100質量部、さらに好ましくは0.1乃至10質量部である。添加量がこれよりも少なすぎると、目的とする増粘またはゲル化効果が得られず、添加量が前記よりも多すぎると、蓄熱材全質量中に占める長鎖アルカンの割合が減少して潜熱量が不足したりする。
これら増粘安定剤は長鎖アルカンの水性エマルジョンまたはマイクロカプセル分散液を製造した後、添加し、さらに、必要に応じて容器などに注入した後、pHを調整したり無機塩濃度を調整したりして増粘乃至ゲル化させることが好ましい。ただし、ゲル化剤ではなく、増粘剤として作用するものは長鎖アルカンの水性エマルジョンまたはマイクロカプセル分散液を製造する際に予め共存させてもよい。
上記した長鎖アルカン、共重合体あるいはそれらのマイクロカプセル化物が水中に分散している蓄熱材を硬い固形樹脂あるいは柔軟な樹脂中に微分散して封入させた、あるいは硬い固形のあるいは柔軟な樹脂製容器、フィルム製容器や金属製容器中に注入させた固形状の蓄熱材を作ることができる。硬い固形樹脂あるいは柔軟な樹脂中に微分散して封入させる方法としては、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化する前の原料に上記の各種蓄熱材を微分散した後、成型機などに注入し、硬化・樹脂化反応を行い、固形化した蓄熱材とする。また、上記で得られた蓄熱材をポリプロピレン樹脂製容器、ポリスチレン製容器、ゴム製容器、ポリエチレンテレフタレートフィルム製袋、ポリエチレン製袋などの樹脂容器や金属製の容器に注入して使用することも好ましい。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、文中、「部」または「%」とあるのは質量基準である。
実施例1
(1)〔共重合体−1の合成〕
攪拌機、逆流コンデンサー、温度計、窒素導入管および滴下装置を取り付けたセパラブルフラスコに、エタノール200部を仕込み、78℃に加熱した。別容器にPEGモノメチルエーテルメタクリレート(以下では「MPEGMA」と記す。重量平均分子量420)100部、アルキルメタクリレート(炭素数16の直鎖アルキル基を有するメタクリレート70%とアルキル基の炭素数が16を除く14〜18の直鎖アルキル基を含有する直鎖アルキルメタクリレート30%との混合物)100部およびエタノール100部を混合し、次いでセパラブルフラスコに重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル6部を添加し、上記別容器の単量体混合液を2時間に渡って滴下した。その間、80℃に発熱し、エタノールは還流した。滴下終了後、78℃で5時間重合させ、冷却し、共重合体−1のエタノール溶液を得た。GPC法で測定した共重合体−1の重量平均分子量は15,000であった。
(2)〔共重合体−1の各種長鎖アルカン溶液の調製〕
上記と同様の反応装置に上記(1)で得た共重合体−1のエタノール溶液を200部添加し、次いで長鎖アルカンとしてヘキサデカン100部を添加し、加熱してエタノールを留去し、共重合体−1のヘキサデカン溶液を作製した。同様にして、長鎖アルカンとしてペンタデカンまたはテトラデカンを100部添加し、加熱してエタノールを留去し、共重合体−1のペンタデカンおよびテトラデカン溶液をそれぞれ作成した。
実施例2〜12〔共重合体−2〜12の合成〕
共重合体−1と同様にして、表1〜4に記載の量および種類の単量体を用いて共重合体−2〜12を合成した。実施例1と同様にしてこれらの共重合体のヘキサデカン溶液、ペンタデカン溶液およびテトラデカン溶液を作製した。
アルキルメタクリレートは、表1および2では実施例1と同じものを、表3ではアルキル基の炭素数が14の直鎖アルキルメタクリレートを70%とアルキル基の炭素数が15〜18の直鎖アルキルメタクリレートを30%含有する直鎖アルキルメタクリレート混合物を、表4ではアルキル基の炭素数が18の直鎖アルキルメタクリレートを70%とアルキル基の炭素数が14〜17の直鎖アルキルメタクリレートを30%含有する直鎖アルキルメタクリレート混合物を用いた。また、MPEGMA(PEGモノメチルエーテルメタクリレート)の平均分子量(Mw)は重量平均分子量である。
Figure 0004668541
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実施例13〔蓄熱材−1の調製〕
ヘキサデカン39部に共重合体−1の50%ヘキサデカン溶液2部を加えて混合した後、水57部に共重合体−2の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−1を作製した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜2μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−1の50部を20℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は15.0℃であることが判った。すなわち、後述のように純物質のヘキサデカン(融点18.1℃)よりも融点は低く、16.5℃と測定された。凝固点降下は僅か1.5℃であった。
蓄熱材−1の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で昇温し、温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は16.5℃であることが判った。純物質のヘキサデカン(融点18.1℃)よりも融点が僅か1.6℃低く測定された。エマルジョンの温度を2℃まで冷却しても顕著な粘度上昇は観察されず、マグネチックスターラーで充分な攪拌を行うことができた。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−1を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であり、光学顕微鏡で観察した粒子の大きさに変化は認められなかった。
比較例1
蓄熱材−1における共重合体−1および2の替わりに、低分子界面活性剤であるソルビタンモノオレエート(HLB:4.3)2部とポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(HLB:15.6)2部をそれぞれ用い、比較例1の蓄熱材を得た。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜35μm(3〜8μmが主体)の球形の粒子が観察された。
比較例1の蓄熱材の50部を20℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は15.5℃であった。この値は、蓄熱材−1の場合とほぼ同等である。しかしながら、比較例1の蓄熱材をエマルジョン中のヘキサデカンが完全に凝固する温度(10℃以下)まで冷却を続けたところ、粘度の増大が観察された。次いで、昇温してヘキサデカンを溶融させ、光学顕微鏡で観察したところ、エマルジョンの一部が崩壊し、約100μmの大きさまで成長していることが判った。すなわち、たった1回の冷却過程でエマルジョンの崩壊が起こった。
実施例14〔蓄熱材−2の調製〕
ペンタデカン39部に共重合体−1の50%ペンタデカン溶液2部を加えて混合した後、水57部に共重合体−2の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて13,000rpmで2分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−2を作成した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜7μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−2の50部を25℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は8.5℃であり、後述の凝固点降下した融点9.6℃から見て凝固点降下は僅か1.1℃相当であった。蓄熱材−2の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で昇温し、温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は9.6℃であった。エマルジョンの温度を2℃まで冷却しても顕著な粘度上昇は観察されず、マグネチックスターラーで充分な攪拌を行うことができた。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−2を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
実施例15〔蓄熱材−3の調製〕
テトラデカン39部に共重合体−7の50%テトラデカン溶液2部を加えて混合した後、水57部に共重合体−8の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−3を作成した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜3μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−3の50部を25℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は4.0℃であり、後述の凝固点降下した融点5.0℃から見て凝固点降下は僅か1.0℃であった。蓄熱材−3の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で昇温し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は5.0℃であった。エマルジョンの温度を2℃まで冷却しても顕著な粘度上昇は観察されず、マグネチックスターラーで充分な攪拌を行うことができた。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−3を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
実施例16〔蓄熱材−4の調製〕
テトラデカン10部にペンタデカン40部と共重合体−1の50%ヘキサデカン溶液2部を加えて混合した後、水57部に共重合体−2の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−4を作製した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜3μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−4の50部を25℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は6.5℃であることが判った。蓄熱材−4の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら昇温し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は7.0℃であることが判った。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−4を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
比較例2
蓄熱材−4における共重合体−1および2の替わりに、低分子界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(HLB:13.3)2部とポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(HLB:10.0)2部を用い、比較例2の蓄熱材を得た。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜70μm(10〜50μmが主体)の球形の粒子が観察された。
比較例2の蓄熱材の50部を20℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら1分間に1〜2℃の速度で冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は1.9℃であった。この値を蓄熱材−4の場合と比較すると、4.6℃もの過冷却が起きたことが判る。特開2000−336350公報(前記特許文献3)の記述に準拠すれば、少量添加されているヘキサデカンが「核発生剤」として作用し、このような顕著な過冷却は観察されないはずであるが、炭素鎖数の大きい副成分が過冷却を防止するとは限らないことが判る。
比較例2の蓄熱材をエマルジョン中のヘキサデカンが完全に凝固する温度(1.0℃)に保って冷却を続けたところ、粘度の増大が観察された。次いで、昇温してヘキサデカンを溶融させ、光学顕微鏡で観察したところ、エマルジョンの一部が崩壊し、液面に長鎖アルカン分が浮いていることが判った。すなわち、たった1回の冷却過程でエマルジョンの顕著な崩壊が起こった。
実施例17〔蓄熱材−5の調製〕
テトラデカン18部にヘキサデカン22部と共重合体−10の50%ヘキサデカン溶液2部を加えて混合した後、水57部に共重合体−11の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで4分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−5を作成した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜10μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−5の50部を25℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は6.0℃であることが判った。蓄熱材−5の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら昇温し、温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は4.5℃であることが判った。凝固点よりも融点が低く測定されることは純物質ではあり得ないが、本実施例のような混合物の場合、温度上昇時は低融点成分から融解が始まり、冷却時は高融点部分から凝固した、と解釈することができる。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−5を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
実施例18〔蓄熱材−6の調製〕
ヘキサデカン40部を水57部に共重合体−1の50%エタノール溶液4部および共重合体−2の50%エタノール溶液2部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−6を作成した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜2μmの球形の粒子が観察された。熱的性質は蓄熱材−1と同様な性質を示した。
実施例19〔蓄熱材−7の調製〕
メラミン40部、35%ホルマリン100部、アラニン6.6部を反応させて得たアミノ酸変性、部分メトキシ化メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物のナトリウム塩の10%水性溶液40部を準備した。別に、ヘキサデカン39部に共重合体−1の50%ヘキサデカン溶液2部を加えて混合した後、水60部に加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとし、さらに水を加えて800部に希釈した。次いで反応容器に仕込み、酢酸水溶液でpHを4.5〜5にし、80℃〜90℃で上記の樹脂溶液40部を2時間を要して滴下した。さらに、酢酸水溶液でpHを4.5〜5にして3時間攪拌を続け形成された被膜を硬化させた。その後、濾過、水洗、乾燥してカプセル化したヘキサデカンを得た。これを蓄熱材−7とした。得られたヘキサデカンカプセルを光学顕微鏡で観察したところ、5〜20μmの球形の粒子が観察された。熱的性質は蓄熱材−1と同様な性質を示した。
実施例20〔蓄熱材−8の調製〕
ヘキサデカン32部、ビス(アクリクリロイルオキシエチル)ビスフェノールA2部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート2部および共重合体−1の50%ヘキサデカン溶液4部を攪拌、混合し、さらにジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)0.2部を添加し、溶解させた。次いでポリビニルアルコール3部および共重合体−2の50%エタノール溶液2部を溶解させた水溶液60部に上記の混合液を加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間攪拌し、懸濁液の懸濁粒子径を整えた。懸濁液を重合反応装置に移し、70℃〜80℃にて重合反応を行った。これを蓄熱材−8とした。得られたカプセル化したヘキサデカンの分散液を光学顕微鏡で観察したところ、1〜5μmの球形の粒子が観察された。熱的性質は蓄熱材−1と同様な性質を示した。
実施例21〔蓄熱材−9の調製〕
テトラデカン8部にペンタデカン32部と共重合体−1の50%ヘキサデカン溶液4部を加えて混合した後、水53部に共重合体−2の50%エタノール溶液2部および部分ケン化ポリビニルアルコール(日本化学社製ゴーセノールGL−05)0.1部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて10,000rpmで5分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−9を作製した。
得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、1〜2μmの球形の粒子が観察された。蓄熱材−9の50部を25℃に温度調節した後、−15℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、凝固点は7.0℃であることが判った。蓄熱材−9の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら昇温し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は7.0℃であることが判った。すなわち、凝固点と融点は同一であり、過冷却が起きていないことが判った。温度が20℃まで上昇した蓄熱材−9を再度、−15℃の冷凍庫中に入れて冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
実施例22
(1)〔共重合体−1のエチレングリコール溶液の調製〕
実施例1の場合と同様の反応装置に実施例1の(1)で得た共重合体−1のエタノール溶液を200部添加し、次いでエチレングリコール400部を添加し、加熱してエタノールを留去し、共重合体−1のエチレングリコール溶液を作製した。
(2)〔蓄熱材−10の調製〕
ペンタデカン27部とヘキサデカン16部を加えて混合した後、水37部に共重合体−1の20%エチレングリコール溶液20部を混合したものに加え、ホモジナイザーを用いて20,000rpmで60分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−10を作製した。このエマルジョンの水相は水37部とエチレングリコール16部からなり、エチレングリコール含有量は30%である。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンをレーザー散乱式粒度分布計(マイクロトラック社製HRA9320−X100型)で測定したところ、体積平均のメディアン径は0.52μmであった。蓄熱材−10の5.0mgをアルミニウム製密閉セルに入れ、示差熱分析装置(セイコーインスツルメント社製DSC−120型)にて30℃から−10℃の温度範囲で、冷却および昇温速度を毎分1℃として熱分析を行ったところ、65J/gの蓄熱能力があることが判った。
蓄熱材−10の50部を25℃に温度調節した後、−25℃の冷凍庫中に入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら冷却し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、エマルジョン化されたペンタデカンとヘキサデカンの混合物(組成比63:37)の凝固点は9.5℃であることが判った。さらに冷却を続けたところ、水相(エチレングリコール含有量30%)の凝固開始温度は−15℃であることが確認された。
蓄熱材−10の50部を2℃に温度調節した後、25℃の室内に置き、マグネチックスターラーで攪拌しながら昇温し温度変化を0.1℃の精度で測定したところ、融点は10.0℃であることが判った。すなわち、凝固点と融点の差異は0.5℃であり、過冷却は僅かであることが判った。
温度が20℃まで上昇した蓄熱材−10を再度、2℃まで冷却した。以上のような温度サイクル(凝固→溶融)の繰り返しを100回行ったが、エマルジョンの状態は安定であった。
実施例23〔蓄熱材−11および蓄熱材−12の調製〕
オクタデカン49.5部に共重合体−10の50%ヘキサデカン溶液9部を加えて混合した溶液を、水31.5部中にホモジナイザーにて5,000rpmで攪拌しながら10分かけて添加し、次いでホモジナイザーを用いて20,000rpmで20分間分散し、白色のエマルジョンとして蓄熱材−11を作製した。得られたエマルジョンはO/W型で、このエマルジョンを光学顕微鏡で観察したところ、約1μmの球形の粒子が観察された。
蓄熱材−11の5.0mgをアルミニウム製密閉セルに入れ、示差熱分析装置(セイコーインスツルメント社製DSC−120型)にて30℃から−10℃の温度範囲で、冷却および昇温速度を毎分1℃として熱分析を行ったところ、110J/gの蓄熱能力があることが判った。真空混合攪拌機中、エマルジョン型蓄熱材−11の90部に、固形分45%のポリアクリル酸エマルジョン5.5部を加えてかき混ぜた後、10%水酸化ナトリウム水溶液4.5部を加え、減圧下で混練し、高粘度型蓄熱材−12を作成した。
蓄熱材−12の1kgをポリエチレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムを積層してなる水枕型の袋(外寸300mm×180mm×25mm)に充填し、袋中の空気を追い出した後、ヒートシーラーにて袋の口を封印し、適度な柔軟性を有する蓄熱材入り水枕を作成した。この水枕を20℃の室内に16時間放置した後、横になった人の頭に当てて水枕として使用し、水枕の表面温度を測定したところ、3時間に渡り、20乃至25℃を保つことが確認された。このような蓄熱性能は「安眠枕」として好適である。この水枕を毎日、就寝時に使用する耐久性試験を半年間行ったが、蓄熱性能および柔軟性に変化は認められなかった。
実施例24
硬化触媒を含む不飽和ポリエステル樹脂溶液50部をホモジナイザーで高速攪拌しながら実施例23で得られた蓄熱材−11の100部を流下注入し、充分攪拌して(O/W)/O型のエマルジョンを調製した。それをポリプロピレン製の容器に入れ、加熱して重合反応を行い、硬化させた。固形の蓄熱材としてビルディング用、住宅用、道路用、保冷庫用など大型の固定する用途に好適である。また、箱の板材を二重にしてその間に注入して箱を作成することにより保冷箱、保温箱などとして好適に使用することができる。
以上、詳細に説明したように、本発明の蓄熱材は長鎖アルカンと特定の共重合体を使用することにより核発生剤なしでも過冷却現象を起こし難く、相変化を円滑に起こすことができる。また、本発明の蓄熱材は長鎖アルカンと特定の共重合体を使用することにより、エマルジョンの崩壊を起こすことなしに、溶融−凝固のサイクルを繰り返すことができ、安定なマイクロカプセル型の蓄熱材を提供することができる。また、本発明の蓄熱材は人為的な冷房システムや暖房システムに有効である他、自然環境の変化である寒暖、風雨、散水などを利用して昇温防止、凍結防止あるいは融雪など寒さ、暑さをできるだけ緩和させるようにする使い方にも好適である。

Claims (15)

  1. 炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体とを含んでなる蓄熱材において、
    該ポリエチレングリコールセグメントが、分子量200〜2,000のポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートであり、
    該長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントを形成するための単量体が、上記長鎖アルカンの炭素数+2から長鎖アルカンの炭素数−2の範囲の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を50質量%以上含む炭素数8〜30の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレートであり、かつ該単量体の前記共重合体の構成単位中の含有量が30〜70質量%であることを特徴とする蓄熱材。
  2. 前記長鎖アルカンが、前記共重合体によって水系媒体中に微分散されてなる請求項1に記載の蓄熱材。
  3. 前記共重合体によって水系媒体中に微分散された長鎖アルカン微粒子が、さらに重合体被膜によって被覆されてマイクロカプセル化されているマイクロカプセル型の請求項2に記載の蓄熱材。
  4. 前記ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートが、ポリエチレングリコールのモノアルキル(アルキル基の炭素数は1〜4)エーテル、モノアルキルアシレート(アルキル基の炭素数は1〜4)、モノ−カルボキシアルキルアシレート(アルキル基の炭素数は2〜6)、モノサルフェートおよびモノフォスフェート誘導体から選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルである請求項1に記載の蓄熱材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱材を得るための蓄熱材の製造方法であって、
    炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと、上記長鎖アルカンの炭素数+2から長鎖アルカンの炭素数−2の範囲の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を含む単量体によって形成した上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体を、水系媒体中に添加し、上記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させて長鎖アルカンの水性エマルジョンとし、水性エマルジョン型蓄熱材を得ることを特徴とする蓄熱材の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱材を得るための蓄熱材の製造方法であって、
    炭素数が12〜18の長鎖アルカンの少なくとも一種と、ポリエチレングリコールセグメントと、上記長鎖アルカンの炭素数+2から長鎖アルカンの炭素数−2の範囲の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を含む単量体によって形成した上記長鎖アルカンに親和性を有する疎水性セグメントとを有する共重合体を、水系媒体中に添加し、上記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させて得た長鎖アルカンの水性エマルジョン中で、殻となる重合体(重合体被膜)を生成させ、上記水性エマルジョン中の微粒子を重合体被膜でマイクロカプセル化してマイクロカプセル型蓄熱材を得ることを特徴とする蓄熱材の製造方法。
  7. 前記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させるために、前記共重合体を含有した前記長鎖アルカンを、水系媒体中に微細に分散させる請求項5または6に記載の蓄熱材の製造方法。
  8. 前記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させるために、前記長鎖アルカンを、前記共重合体を含有している水系媒体中に微細に分散させる請求項5または6に記載の蓄熱材の製造方法。
  9. 前記長鎖アルカンを水系媒体中に微細に分散させるために、前記共重合体を含有した前記長鎖アルカンを、前記共重合体を含有した水系媒体中に微細に分散させる請求項5または6に記載の蓄熱材の製造方法。
  10. 前記長鎖アルカンの微粒子が、保護コロイド成分により粒子融合が防止されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の蓄熱材。
  11. さらに、増粘安定剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄熱材。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の蓄熱材あるいはその製造方法によって得られた蓄熱材を、樹脂中に微分散して封入させた、あるいは樹脂製容器、フィルム製容器および金属製容器のいずれかの中に上記蓄熱材を注入させて固形状に形成したことを特徴とする蓄熱材。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の蓄熱材あるいはその製造方法によって得られた蓄熱材を使用することを特徴とする加温あるいは冷却システム。
  14. 請求項1〜1のいずれか1項に記載の蓄熱材あるいはその製造方法によって得られた蓄熱材を使用してなることを特徴とする加温あるいは冷却システムに使用される蓄熱性物品。
  15. 請求項1〜1のいずれか1項に記載の蓄熱材あるいはその製造方法に用いられる前記共重合体であって、重量平均分子量が200〜2,000のポリエチレングリコール、そのモノアルキル(C1〜C4)エーテル、モノアルキルアシレート(C1〜C4)、モノ−カルボキシアルキルアシレート(C2〜C6)、モノサルフェートおよびモノフォスフェート誘導体から選ばれる少なくとも1種のセグメントを有する単量体単位5〜95質量%と、前記長鎖アルカンの炭素数+2から長鎖アルカンの炭素数−2の範囲の炭素数を有する長鎖アルキル基を有する単量体を50質量%以上含む炭素数8〜30の炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート95〜5質量%とを含有し、重量平均分子量が2,000〜1,000,000であることを特徴とする共重合体。
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