JPH11323321A - 蓄熱剤組成物の製造方法および蓄熱材の製造方法 - Google Patents

蓄熱剤組成物の製造方法および蓄熱材の製造方法

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JPH11323321A
JPH11323321A JP10130619A JP13061998A JPH11323321A JP H11323321 A JPH11323321 A JP H11323321A JP 10130619 A JP10130619 A JP 10130619A JP 13061998 A JP13061998 A JP 13061998A JP H11323321 A JPH11323321 A JP H11323321A
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JP
Japan
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heat storage
oily substance
polymer
agent composition
storage agent
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Application number
JP10130619A
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English (en)
Inventor
Tomonori Gomi
知紀 五味
Yoshio Irie
好夫 入江
Hiroshi Nagamura
洋 長村
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 油性物質の含有量を例えば80%以上と高く
した場合において、熱を貯蔵・放出する際に、凝固・融
解を繰り返しても、形状が元通りに復元され、ゲル等に
歪みが生じないため保形性に優れ、油性物質の流動化を
招来せず、かつ、液体状の油性物質が分離して滲み出す
ことが無い蓄熱剤組成物を製造する方法を提供する。ま
た、該蓄熱剤組成物が充填され、熱効率に優れた蓄熱材
を製造する方法を提供する。 【解決手段】 蓄熱剤組成物は、例えば、油性物質中で
単量体成分を重合して重合体を形成した後、油増粘剤お
よび架橋剤を添加して上記重合体に架橋構造を導入し、
この架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下するよう
に上記油性物質並びに油増粘剤を保持することにより製
造される。該蓄熱剤組成物は、油性物質100重量部
に、架橋重合体が2重量部〜50重量部の範囲内、油増
粘剤が0.1重量部〜5重量部の範囲内で含まれてなる
ことが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蓄熱剤組成物の製
造方法および蓄熱材の製造方法に関するものである。よ
り詳しくは、本発明は、例えばビル空調等の冷暖房に好
適に用いられる、相変化による潜熱を利用した蓄熱剤組
成物、およびその製造方法、並びに蓄熱剤組成物を用い
た蓄熱材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、エネルギーである熱を家庭用
や産業用に用いる際に、蓄熱体を用いることが提案され
ている。上記の蓄熱体としては、その蓄熱体の熱容量を
利用した顕熱や、蓄熱体の相変化による潜熱を利用した
ものが知られている。潜熱とは、固体から液体への相変
化時に蓄熱し、液体から固体への相変化時に放熱する現
象である。
【0003】顕熱を利用した蓄熱体として、例えば水や
石塊、各種金属類等が知られている。ところが、これら
顕熱を利用したものは、熱容量が低く蓄熱密度が小さい
ために、蓄熱槽を大きくする必要があるという不都合を
有している。また、熱を取り出す際の温度幅が大きくな
るために、熱源および熱の利用先の温度に制限を生じる
ことがあるという不都合を有している。
【0004】一方、潜熱を利用した蓄熱体としては、無
機水和塩、パラフィン等の炭化水素が提案されている。
しかしながら、無機水和塩については、一般に過冷却が
大きく、融点以下になっても凝固が阻害されて、放熱さ
れる熱密度が著しく低下するという、実用上において重
大な障害を招来することがあるという欠点が知られてい
る。
【0005】これに対し、パラフィン等の炭化水素は、
無機水和塩よりも過冷却による弊害が小さく、また、潜
熱が凡そ20cal/g〜60cal/gと大きい上
に、種類によって融点が凡そ−40℃〜96℃という広
い温度範囲にわたってそれぞれ存在するので、用途に応
じて最適な性質のものを選択することができるという利
点を備えている。
【0006】ところが、上記パラフィン等の炭化水素に
おいても、長期間、高温に曝されると、その物性に劣化
が生じ、過冷却による弊害が大きくなるという問題点を
生じることとなる。
【0007】この問題点を回避するために、上記パラフ
ィン等の炭化水素に、ゼオライト粉末等の造核剤を添加
して過冷却を防止することが提案されている。しかしな
がら、該造核剤は、使用している間に、特に、炭化水素
が液化している間に、造核剤が液状の炭化水素から比重
差で分離する。このため、造核剤が備える充分な効果を
炭化水素に付与することができなくなるという問題点を
有している。
【0008】また、潜熱蓄熱用に用いる上記の蓄熱剤
は、屋内で大量に用いられることが多い。従って、パラ
フィン等の炭化水素を蓄熱剤に用いると、可燃性である
該蓄熱剤は、消防法等の規制を受けることとなる。それ
ゆえ、消防法等の規制に適合させるため、パラフィン等
の炭化水素が液化時に流動することによって容器から外
部へ漏れることを防止する対策が必要となるという問題
点を有している。
【0009】そこで、上記の各問題点を回避するため
に、特開平6−58686号公報には、ゼラチン若しく
は12−ヒドロキシステアリン酸等の凝固剤をパラフィ
ン系化合物に添加してなるパラフィン系蓄熱剤、具体的
には、ゼリー状にゲル化させた上記パラフィン系蓄熱剤
が充填されたカプセルを有する伝熱媒体を用いた潜熱蓄
熱装置が開示されている。
【0010】また、上記の各問題点を回避するために、
特開昭56−103273号公報には、N−アシルアミ
ノ酸のアミド、エステル、アミン塩、並びに、12−ヒ
ドロキシステアリン酸の中から選ばれる少なくとも一種
の化合物をゲル化剤として含有する蓄熱材料、つまり、
液化時の流動性が抑制されたパラフィンからなる蓄熱材
料が開示されている。
【0011】また、特開平4−85387号公報には、
蓄熱成分としてのパラフィン類と、ポリオレフィン系ポ
リマー類等の炭化水素系有機高分子からなるバインダ成
分とが互いに機械的手段にて混合・複合化されてなる蓄
熱材、つまり、液化時の流動性が抑制された蓄熱材が開
示されている。尚、上記機械的手段による混合とは、パ
ラフィン類およびバインダ成分のうちの少なくとも1成
分の溶融物に、残余の成分が少なくとも膨潤好ましくは
溶解することにより、或いは高温度により、混合対象と
なる何れの成分も外力にて流動変形し得る状態におい
て、撹拌、混合、混練する操作を意味する。
【0012】さらに、特開平10−60423号公報に
は、蓄熱性を有する油性物質中で、単量体成分を重合し
て、上記単量体成分を重合してなる重合体中に、相変化
により液化する油性物質の流動性が低下するように上記
油性物質を保持する蓄熱剤の製造方法が開示されてい
る。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記特開平
6−58686号公報に記載の方法で得られるパラフィ
ン系蓄熱剤は、熱を貯蔵・放出する際に、凝固・融解を
繰り返すと、そのゲルが崩壊してパラフィン系蓄熱剤が
流動化する。それゆえ、例えばカプセルが破損したとき
には、上記パラフィン系蓄熱剤が容易に流出するので、
火災等の危険性が増大化するという問題点を有してい
る。また、利用することのできる潜熱を大きくするため
に、パラフィン系蓄熱剤に含まれるパラフィン系化合物
の割合を例えば80%以上と高くすると、凝固・融解を
繰り返すに従って、ゲル状の該パラフィン系蓄熱剤から
液体状のパラフィン系化合物が分離して滲み出してく
る。このため、物性が経時的に変化してしまうので、パ
ラフィン系蓄熱剤が経時的な安定性に劣るという問題点
を有している。
【0014】また、上記特開昭56−103273号公
報に記載の方法で得られる蓄熱材料は、熱を貯蔵・放出
する際に、凝固・融解を数回繰り返すと、そのゲルが崩
壊してパラフィンが流動化する。それゆえ、上記パラフ
ィンが外部に容易に流出するので、火災等の危険性が増
大化するという問題点を有している。また、蓄熱材料に
含まれるパラフィンの割合を例えば80%以上と高くす
ると、凝固・融解を繰り返すに従って、ゲル状の該蓄熱
材料から液体状のパラフィンが分離して滲み出してく
る。このため、物性が経時的に変化してしまうので、蓄
熱材料が経時的な安定性に劣るという問題点を有してい
る。
【0015】さらに、上記特開平4−85387号公報
に記載の方法、即ち、パラフィン類とバインダ成分とを
機械的手段にて混合・複合化する方法では、蓄熱材に含
まれるパラフィン類の割合を例えば80%以上にするこ
とが困難である。また、仮にパラフィン類の割合を高く
することができたとしても、凝固・融解を繰り返すに従
って、蓄熱材から液体状のパラフィン類が分離して滲み
出してくる。このため、物性が経時的に変化してしまう
ので、蓄熱材が経時的な安定性に劣るという問題点を有
している。
【0016】その上、上記従来の方法では、パラフィン
系蓄熱剤や蓄熱材料がゲル状の成形物であり、また、蓄
熱材が複合化した成形物であるので、これら蓄熱剤等を
容器に充填することが困難である。具体的には、上記蓄
熱剤等は、熱媒体との接触表面積ができるだけ大きくな
るように、例えば細いチューブ状やドーナツ状、コイル
状の複雑な形状の容器に充填して用いられる。しかしな
がら、蓄熱剤等は成形物であるので、容器に入れるのに
手間が掛かると共に、該容器内に隙間無く蓄熱剤等を詰
め込むことが難しい。それゆえ、容器に充填することが
困難であり、しかも、容器内に隙間ができて充填率が低
下するので熱効率に劣るという問題点を有している。
【0017】尚、上記特開昭56−103273号公報
に記載の方法で得られる蓄熱材料を容器に充填する際に
は、該蓄熱材料を高温に加熱して溶融させ、液体状にし
て作業を行う必要がある。それゆえ、容器が例えばポリ
塩化ビニル等の耐熱性に劣る材質からなっている場合に
は、該容器に蓄熱材料を充填することが実質的にできな
い。つまり、容器に、耐熱性に優れた材質、例えば、高
耐熱性を備えているが高価な耐熱性樹脂、或いは、耐腐
食性を備えているが高価なステンレス等を使用しなけれ
ばならないという不都合も有している。
【0018】即ち、上記従来の方法で得られる蓄熱剤等
では、凝固・融解を数回繰り返すと、パラフィンが流動
化するので、火災等の危険性が増大化するという問題点
を有している。また、蓄熱剤等に含まれるパラフィンの
割合を例えば80%以上と高くすると、該蓄熱剤等から
液体状のパラフィンが分離して滲み出してくるので、蓄
熱剤等が経時的な安定性に劣るという問題点を有してい
る。さらに、蓄熱剤等は成形物であるので、容器に充填
することが困難であり、従って熱効率に劣るという問題
点を有している。
【0019】さらに、上記特開平10−60423号公
報に記載の方法で得られる蓄熱剤は、該蓄熱剤に含まれ
るパラフィンの割合が高い場合には、凝固・融解を繰り
返すと、ゲル状の蓄熱剤から液体状のパラフィンが分離
して滲み出してくる。また、凝固・融解を繰り返すこと
によってゲル状の蓄熱剤の形状に歪みが生じるので、容
器内面や熱交換機接触面から該蓄熱剤の剥離が起こって
伝熱特性が低下するという問題点を有している。
【0020】それゆえ、利用することのできる潜熱を大
きくするために、油性物質(パラフィン)の含有量を例
えば80%以上と高くした場合において、熱を貯蔵・放
出する際に、凝固・融解を繰り返しても、形状が元通り
に復元され、ゲル等に歪みが生じないため保形性に優
れ、油性物質の流動化を招来せず、かつ、液体状の油性
物質が分離して滲み出すことが無い蓄熱剤組成物を製造
する方法が嘱望されている。また、該蓄熱剤組成物が充
填され、熱効率に優れた蓄熱材を製造する方法が嘱望さ
れている。
【0021】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、油性物質(パラフィン)の
含有量を例えば80%以上と高くした場合において、熱
を貯蔵・放出する際に、凝固・融解を繰り返しても、形
状が元通りに復元され、ゲル等に歪みが生じないため保
形性に優れ、油性物質の流動化を招来せず、かつ、液体
状の油性物質が分離して滲み出すことが無い蓄熱剤組成
物を製造する方法を提供することにある。また、他の目
的は、該蓄熱剤組成物が充填され、熱効率に優れた蓄熱
材を製造する方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明の蓄
熱剤組成物の製造方法は、上記の課題を解決するため
に、蓄熱性を有し、相変化により液化する油性物質中
で、単量体成分を重合して重合体を形成した後、油増粘
剤および架橋剤を添加して上記重合体に架橋構造を導入
し、この架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下する
ように上記油性物質並びに油増粘剤を保持することを特
徴としている。
【0023】請求項2記載の発明の蓄熱剤組成物の製造
方法は、上記の課題を解決するために、蓄熱性を有し、
相変化により液化する油性物質と油増粘剤との混合物中
で、単量体成分を重合して重合体を形成した後、架橋剤
を添加して上記重合体に架橋構造を導入し、この架橋重
合体中に、油性物質の流動性が低下するように上記油性
物質並びに油増粘剤を保持することを特徴としている。
【0024】請求項3記載の発明の蓄熱剤組成物の製造
方法は、上記の課題を解決するために、蓄熱性を有し、
相変化により液化する油性物質と油増粘剤との混合物中
で、架橋性単量体を含む単量体成分を重合して架橋重合
体を形成し、この架橋重合体中に、油性物質の流動性が
低下するように上記油性物質並びに油増粘剤を保持する
ことを特徴としている。
【0025】上記の方法によれば、架橋重合体中に、油
性物質の流動性が低下するように該油性物質並びに油増
粘剤を保持することができる。具体的には、架橋重合体
および油増粘剤の相乗作用によって、油性物質の蓄熱特
性を阻害することなく、該油性物質をゲル状または固体
状にすることができる。それゆえ、上記の方法によれ
ば、油性物質の含有量を例えば80%以上と高くした場
合において、熱を貯蔵・放出する際に、凝固・融解を繰
り返しても、形状が元通りに復元され、ゲル等に歪みが
生じないため保形性に優れ、例えば70℃においても油
性物質の流動化を招来せず、かつ、液体状の油性物質が
分離して滲み出すことが無い蓄熱剤組成物を製造するこ
とができる。
【0026】請求項4記載の発明の蓄熱剤組成物は、上
記の課題を解決するために、蓄熱性を有し、相変化によ
り液化する油性物質100重量部に、架橋重合体が2重
量部〜50重量部の範囲内、油増粘剤が0.1重量部〜
5重量部の範囲内で含まれてなることを特徴としてい
る。
【0027】上記の構成によれば、熱を貯蔵・放出する
際に、凝固・融解を繰り返しても、保形性に優れ、例え
ば70℃においても油性物質の流動化を招来せず、か
つ、液体状の油性物質が分離して滲み出すことが無い蓄
熱剤組成物を提供することができる。また、架橋重合体
中に油性物質を保持するので、油増粘剤だけで油性物質
の流動性を低下させる従来の蓄熱剤と比較して、該油増
粘剤の含有量を少なくすることができる。それゆえ、常
温において、複雑な形状の容器に隙間無く蓄熱剤組成物
を充填することができる。さらに、上記の構成によれ
ば、蓄熱剤組成物は、凝固・融解を繰り返しても、形状
が元通りに復元され、ゲル等に歪みが生じないため保形
性に優れるので、容器内面や熱交換機接触面から該蓄熱
剤組成物の剥離が起こることはない。従って、蓄熱剤組
成物は、伝熱特性に優れている。
【0028】請求項5記載の発明の蓄熱材の製造方法
は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3の
何れか1項に記載の製造方法を実施するに際し、油性物
質を含む混合物を、架橋重合体が形成される迄に容器に
充填した後、該容器内で架橋重合体を形成することを特
徴としている。
【0029】上記の方法によれば、混合物が常温で液体
状のときに該混合物を容器に充填することができるの
で、容器に耐熱性に優れた材質を使用する必要が無い。
そして、混合物を容器に充填した後、該容器内で蓄熱剤
組成物が形成され、架橋重合体中に油性物質が保持され
るので、複雑な形状の容器に、簡単に隙間無く蓄熱剤組
成物が詰め込まれることになる。これにより、蓄熱剤組
成物が容器に密に充填され、熱効率に優れた蓄熱材を製
造することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明にかかる蓄熱剤組成物の製
造方法は、蓄熱性を有し、相変化により液化する油性物
質中で、単量体成分を重合して重合体を形成した後、油
増粘剤および架橋剤を添加して上記重合体に架橋構造を
導入し、この架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下
するように上記油性物質並びに油増粘剤を保持する方法
である。また、本発明にかかる蓄熱剤組成物の製造方法
は、油性物質と油増粘剤との混合物中で、単量体成分を
重合して重合体を形成した後、架橋剤を添加して上記重
合体に架橋構造を導入し、この架橋重合体中に、上記油
性物質並びに油増粘剤を保持する方法である。また、本
発明にかかる蓄熱剤組成物の製造方法は、油性物質と油
増粘剤との混合物中で、架橋性単量体を含む単量体成分
を重合して架橋重合体を形成し、この架橋重合体中に、
上記油性物質並びに油増粘剤を保持する方法である。
【0031】上記の油性物質は、熱エネルギーを貯蔵・
放出することができる蓄熱性を有し、相変化により液化
する化合物であればよい。具体的には、油性物質は、常
温(25℃)付近、常圧(1気圧)において油性であ
り、かつ、単量体成分を重合して重合体を形成する反
応、重合体に架橋構造を導入する反応、並びに、架橋性
単量体を含む単量体成分を重合して架橋重合体を形成す
る反応を阻害することの無い化合物であればよく、特に
限定されるものではない。また、油性物質は、顕熱蓄
熱、潜熱蓄熱、化学反応蓄熱等の何れの蓄熱を利用する
化合物であってもよいが、蓄熱密度が高いこと、並び
に、一定温度付近での蓄熱・放熱が可能であることか
ら、相変化、または、相転移の際の潜熱を利用する潜熱
蓄熱を利用する化合物であることがより好ましい。尚、
油性物質は、重合体と互いに相溶する組み合わせ(極性
的に近いもの同士)であることが望ましい。
【0032】潜熱蓄熱を利用する油性物質としては、例
えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、パラフ
ィン等の炭化水素化合物が挙げられる。該炭化水素化合
物としては、具体的には、例えば、C14〜C16パラフィ
ン、C15〜C16パラフィン、ペンタデカン、C14パラフ
ィン、C16パラフィン、等の常温で液体である中級パラ
フィン;常温で固体である高級パラフィン;1−デカノ
ール等の高級アルコール;等が挙げられる。
【0033】上記例示の化合物のうち、パラフィンが特
に好ましく、パラフィンのうち、ペンタデカンが最も好
ましい。パラフィンは容易に入手でき、かつ、単量体成
分や重合体を容易に溶解し、しかも、上記反応に対して
不活性である。また、パラフィンは、構造が互いに異な
る各パラフィンにおいて融点の温度範囲が広く分布して
いるので、用途に応じて最適な性質のものを選択するこ
とができるという利点を有している。つまり、油性物質
として種々の融点を有する幾つかのパラフィンを選定し
て用いることにより、用途に応じて最適な温度範囲を有
する蓄熱剤組成物を、簡便に、かつ、安定して製造する
ことができる。
【0034】本発明にかかる架橋重合体を1工程で形成
する単量体成分(つまり、架橋剤を用いないで架橋重合
体を形成する単量体成分、以下、単量体成分(A)と記
す)は、分子内に重合性不飽和基を1つ有する単量体
(a)を主成分として含むと共に、分子内に重合性不飽
和基を2つ以上有する架橋性単量体(b)を含んでい
る。
【0035】上記単量体(a)は、溶解度パラメーター
(SP値)が9(cal/cm3 1/2 以下であること
がより好ましい。上記溶解度パラメーターとは、化合物
の極性を表す尺度として一般に用いられている値であ
り、本明細書では、Smallの計算式にHoyの凝集
エネルギー定数を代入して導いた値を適用する。
【0036】単量体成分(A)における単量体(a)の
含有量は、50重量%以上であることが好ましく、70
重量%以上であることがより好ましい。単量体(a)の
含有量が50重量%未満である場合には、得られる架橋
重合体は、油性物質をゲル状または固体状にすることが
できないか、若しくは、著しく少量の油性物質しか保持
することができない。
【0037】要するに、溶解度パラメーターが9(ca
l/cm3 1/2 を越える単量体を用いた場合、即ち、
単量体成分(A)の主成分が該単量体である場合には、
得られる架橋重合体は、油性物質をゲル状または固体状
にすることができないか、若しくは、著しく少量の油性
物質しか保持することができない。つまり、架橋重合体
中に、油性物質の流動性が低下するように上記油性物質
を保持することができない。
【0038】単量体(a)としては、例えば、不飽和カ
ルボン酸エステル、炭化水素基を有する(メタ)アクリ
ルアミド、α−オレフィン、脂環式ビニル化合物、脂肪
族炭化水素基を有するアリルエーテル、脂肪族炭化水素
基を有するビニルエステル、脂肪族炭化水素基を有する
ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。これら化合物は、一
種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用して
もよい。
【0039】不飽和カルボン酸エステルとしては、具体
的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル
(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレー
ト、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)
アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−
エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル
(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレー
ト、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メ
タ)アクリレート、オクチルフェニル(メタ)アクリレ
ート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ジノニル
フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、イ
ソボニル(メタ)アクリレート、ジブチル(メタ)アク
リレート、ジブチルマレエート、ジドデシルマレエー
ト、ドデシルクロトネート、ジドデシルイタコネート等
が挙げられる。
【0040】炭化水素基を有する(メタ)アクリルアミ
ドとしては、具体的には、例えば、(ジ)ブチル(メ
タ)アクリルアミド、(ジ)ドデシル(メタ)アクリル
アミド、(ジ)ステアリル(メタ)アクリルアミド、
(ジ)ブチルフェニル(メタ)アクリルアミド、(ジ)
オクチルフェニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ
る。α−オレフィンとしては、具体的には、例えば、1
−ヘキセン、1−オクテン、イソオクテン、1−ノネ
ン、1−デセン等が挙げられる。脂環式ビニル化合物と
しては、具体的には、例えば、ビニルシクロヘキサン等
が挙げられる。
【0041】脂肪族炭化水素基を有するアリルエーテル
としては、具体的には、例えば、ドデシルアリルエーテ
ル等が挙げられる。脂肪族炭化水素基を有するビニルエ
ステルとしては、具体的には、例えば、カプロン酸ビニ
ル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリ
ル酸ビニル等が挙げられる。脂肪族炭化水素基を有する
ビニルエーテルとしては、具体的には、例えば、ブチル
ビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられ
る。芳香族ビニル化合物としては、具体的には、例え
ば、スチレン、t−ブチルスチレン、オクチルスチレン
等が挙げられる。
【0042】上記例示の化合物のうち、炭素数1〜30
の脂肪族炭化水素基を少なくとも1つ有し、かつ、アル
キル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)
アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アル
キルアリール(メタ)アクリルアミド、脂肪酸ビニルエ
ステル、アルキルスチレンおよびα−オレフィンからな
る群より選ばれる少なくとも一種の不飽和化合物が特に
好ましい。つまり、該不飽和化合物を主成分とする単量
体(a)を用いることにより、得られる架橋重合体が備
えるべき、油性物質をゲル状または固体状にして保持す
る性質を、より一層向上させることができる。
【0043】尚、単量体成分(A)には、必要に応じ
て、溶解度パラメーターが9(cal/cm3 1/2
越え、かつ、分子内に重合性不飽和基を1つ有する単量
体が50重量%未満の範囲内で含まれていてもよい。該
単量体としては、具体的には、例えば、メトキシポリエ
チレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポ
リエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げら
れる。
【0044】上記架橋性単量体(b)としては、具体的
には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロ
ピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレン
グリコール・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アク
リレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アク
リレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’
−プロピレンビスアクリルアミド、グリセリントリ(メ
タ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メ
タ)アクリレート、ジビニルベンゼン、および、多価ア
ルコール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパ
ン、テトラメチロールメタン等)のアルキレンオキシド
付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得
られる多官能(メタ)アクリレート等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。これら化合物は、一種類
のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよ
い。
【0045】単量体成分(A)における単量体(a)と
架橋性単量体(b)との割合は、両者の合計を100重
量%として、単量体(a)が96重量%〜99.999
重量%の範囲内であり、架橋性単量体(b)が0.00
1重量%〜4重量%の範囲内であることが好ましい。
【0046】本発明にかかる重合体を形成する単量体成
分(つまり、架橋剤を用いて架橋重合体を形成する単量
体成分、以下、単量体成分(B)と記す)は、上記の単
量体(a)を主成分として含むと共に、分子内に重合性
不飽和基を1つ有し、かつ、架橋剤と化学的に結合する
官能基を有する反応性単量体(c)を含んでいる。
【0047】反応性単量体(c)は、架橋剤が有する縮
合性官能基(Y)(後述する)と縮合して化学的な結合
を形成する縮合性官能基(X)を有する化合物であれば
よい。上記の縮合性官能基(X)としては、具体的に
は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカ
プト基、ニトリル基、アミノ基、アミド基、イソシアナ
ート基、エポキシ基、酸無水物の重合性不飽和基等が挙
げられる。
【0048】反応性単量体(c)としては、例えば、カ
ルボキシル基を有するビニル系単量体、ヒドロキシル基
を有するビニル系単量体、メルカプト基を有するビニル
系単量体、ニトリル基を有するビニル系単量体、アミノ
基を有するビニル系単量体、アミド基を有するビニル系
単量体、イソシアナート基を有するビニル系単量体、エ
ポキシ基を有するビニル系単量体、重合性不飽和基を有
する酸無水物等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、
また、二種類以上を併用してもよい。
【0049】カルボキシル基を有するビニル系単量体と
しては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、フ
マル酸、イタコン酸等が挙げられる。ヒドロキシル基を
有するビニル系単量体としては、具体的には、例えば、
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレン
グリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリ
コールモノ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリ
レート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0050】メルカプト基を有するビニル系単量体とし
ては、具体的には、例えば、ビニルメルカプタン、メル
カプトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ニ
トリル基を有するビニル系単量体としては、具体的に
は、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ
る。アミノ基を有するビニル系単量体としては、具体的
には、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ビ
ニルピリジン等が挙げられる。
【0051】アミド基を有するビニル系単量体として
は、具体的には、例えば、(メタ)アクリルアミド等が
挙げられる。イソシアナート基を有するビニル系単量体
としては、具体的には、例えば、ビニルイソシアナート
等が挙げられる。エポキシ基を有するビニル系単量体と
しては、具体的には、例えば、グリシジル(メタ)アク
リレート等が挙げられる。重合性不飽和基を有する酸無
水物としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸等
が挙げられる。
【0052】単量体成分(B)における単量体(a)と
反応性単量体(c)との割合は、両者の合計を100重
量%として、単量体(a)が90重量%〜99.995
重量%の範囲内であり、反応性単量体(c)が0.00
5重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましい。
【0053】本発明にかかる架橋剤は、反応性単量体
(c)が有する上記縮合性官能基(X)と縮合して化学
的な結合を形成する縮合性官能基(Y)を、分子内に2
つ以上有する化合物であればよい。上記の縮合性官能基
(Y)は、縮合性官能基(X)に応じて選定すればよ
い。つまり、架橋剤は、反応性単量体(c)に応じて適
宜選択すればよい。
【0054】架橋剤としては、具体的には、例えば、縮
合性官能基(X)がカルボキシル基やメルカプト基、ニ
トリル基、エポキシ基である場合に好適な、ジメチロー
ルフェノール、ポリメチロールフェノール等のフェノー
ル樹脂;縮合性官能基(X)がカルボキシル基やヒドロ
キシル基である場合に好適な、メラミンやベンゾグアナ
ミン、尿素等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒドやア
ルコールとを付加縮合してなるアミノ樹脂;縮合性官能
基(X)がカルボキシル基やイソシアナート基、エポキ
シ基である場合に好適な、ヘキサメチレンジアミン、ジ
エチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等の多
価アミノ化合物;縮合性官能基(X)がカルボキシル基
やヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナート基、
アミド基、アミノ基、エポキシ基である場合に好適な、
ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシ
アナート、p−フェニレンジイソシアナート、2,4−
トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシ
アナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、およ
び、これらイソシアナートとメチルアルコールやフェノ
ール等を縮合してなるブロックドイソシアナート、等の
イソシアナート化合物;縮合性官能基(X)がイソシア
ナート基やエポキシ基である場合に好適な、マロン酸、
コハク酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸等の多
価カルボン酸;縮合性官能基(X)がヒドロキシル基や
イソシアナート基、エポキシ基である場合に好適な、無
水フタル酸、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸無水物等の酸無水物;縮合性官能基
(X)がヒドロキシル基やメルカプト基、アミノ基、ア
ミド基である場合に好適な、グリオキサール、テレフタ
ルアルデヒド等のアルデヒド化合物;縮合性官能基
(X)がヒドロキシル基やイソシアナート基、エポキシ
基である場合に好適な、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオー
ル等の多価アルコール;縮合性官能基(X)がカルボキ
シル基やヒドロキシル基、メルカプト基、イソシアナー
ト基である場合に好適な、トルエングリシジルエーテ
ル、ヘキサメチレングリシジルエーテル、ビスフェノー
ルAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール
ジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;等が挙げら
れる。
【0055】これら化合物は、縮合性官能基(X)に応
じて、つまり、反応性単量体(c)に応じて、一種類の
みを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよ
い。そして、特に好ましい反応性単量体(c)と架橋剤
との組み合わせは、縮合性官能基(X)としてカルボキ
シル基、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基およ
びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官
能基を有する反応性単量体(c)と、縮合性官能基
(Y)としてイソシアナート基、エポキシ基および無水
カルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種の
官能基を有する架橋剤との組み合わせである。
【0056】上記例示の組み合わせから反応性単量体
(c)と架橋剤とを選択することにより、架橋重合体に
おける未反応の官能基の残存量を低減させることができ
る。従って、架橋重合体中に、油性物質の蓄熱特性を阻
害することなく、該油性物質をゲル状または固体状にし
て保持することができる。さらに、縮合性官能基(X)
としてヒドロキシル基を有する反応性単量体(c)と、
縮合性官能基(Y)としてイソシアナート基を有する架
橋剤とを組み合わせることにより、該油性物質を低温で
ゲル状または固体状にすることができ、しかも、長期安
定性に優れた蓄熱剤組成物を得ることができる。従っ
て、蓄熱材を製造する際には、容器に耐熱性に優れた材
質を使用する必要が無い。尚、架橋重合体における未反
応の官能基の残存量が比較的多いと、油性物質の蓄熱特
性が阻害されるおそれがある。
【0057】さらに、架橋重合体における未反応の官能
基の残存量をより一層低減させるために、必要に応じ
て、上記縮合性官能基(X)および縮合性官能基(Y)
と重縮合可能な官能基を有する化合物を、架橋剤と併用
することができる。該化合物の使用量は、反応性単量体
(c)と架橋剤との反応、即ち、重合体(架橋構造が導
入される前の重合体)と架橋剤との反応(架橋反応)を
阻害しない範囲内とすればよい。上記の化合物として
は、例えば、縮合性官能基(X)または縮合性官能基
(Y)が多価イソシアナート基である場合には、長鎖カ
ルボン酸等が好適である。尚、上記の化合物を添加する
タイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、
該化合物を添加した後に架橋剤を添加してもよく、架橋
剤を添加した後に該化合物を添加してもよく、或いは、
架橋剤と該化合物とを一緒に添加してもよい。
【0058】反応性単量体(c)と架橋剤との割合、即
ち、重合体と架橋剤との割合は、該重合体に含まれる縮
合性官能基(X)のモル数と、架橋剤が有する縮合性官
能基(Y)のモル数とを考慮に入れて設定すればよい。
具体的には、縮合性官能基(X)1モルに対する縮合性
官能基(Y)の割合が、0.1モル〜10モルの範囲内
となるように、重合体と架橋剤との割合を設定すること
が好ましい。
【0059】縮合性官能基(Y)の割合が0.1モル未
満である場合には、上記重合体に架橋構造を充分に導入
することができないので、強度に劣った架橋重合体、つ
まり、保形性に劣った蓄熱剤組成物が形成されることに
なり、好ましくない。一方、上記の割合が10モルを越
える場合には、多量の油性物質を保持することができる
架橋重合体が形成されないので好ましくない。
【0060】本発明にかかる油増粘剤としては、具体的
には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
ブテン等のポリオレフィン(ホモポリマー)、エチレ
ンを主体としてエチレンと炭素数3〜12のα−オレフ
ィンとが共重合してなるポリオレフィン、プロピレンを
主体としてプロピレンと炭素数2,4〜12のα−オレ
フィンとが共重合してなるポリオレフィン等のポリオレ
フィン(コポリマー)、例えば酢酸ビニルやアクリル
酸エチル、メタクリル酸エチル等のモノマーとα−オレ
フィンとが共重合してなるコポリマー、等のポリオレフ
ィン系ポリマー並びにこれらポリマーが一部ハロゲン化
されてなるハロゲン化物;ポリスチレンとポリブタジ
エンやポリイソプレン或いはこれらポリオレフィンの水
素付加物とのブロック共重合体等のスチレン系エラスト
マー、ポリオレフィン(ホモポリマー)とポリオレフ
ィン(コポリマー)との混合物、ポリオレフィン(コポ
リマー)にオレフィンがグラフト重合してなるコポリマ
ー等のオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラス
トマー、エステル系エラストマー、等の化合物、即
ち、ゴム並びにプラスチックの分野において、室温以上
でゴム弾性を備えている、いわゆる熱可塑性エラストマ
ーとして知られている化合物;天然ゴム、スチレン−ブ
タジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、
イソプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、スチ
レン−エチレン−ブチレン三元共重合体ゴム、エチレン
−酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレン−アクリル酸エチ
ル共重合体ゴム等の炭化水素系ゴム;ベンジリデンソル
ビトール;12−ヒドロキシステアリン酸; N−ラウロイルグルタミン酸ジアミド、N−ラウロイ
ルグルタミン酸ジブチルアミド、N−ラウロイルグルタ
ミン酸ジステアリルアミド、N−アセチルグルタミン酸
ジステアリルアミド、N−オクチルグルタミン酸ジオク
チルアミド、N,N−ジカプリロイルリジンアミド、
N,N−ジカプリロイルリジンラウリルアミド、N,N
−ジラウロイルリジンオクチルアミド、N−ラウロイル
バリンラウリルアミド、N−ラウロイルフェニルアラニ
ンラウリルアミド等のN−アシルアミノ酸アミド、
N,N−ジラウロイルリジンオクチルアミン塩、N,N
−ジラウロイルリジンステアリルアミン塩、N,N−ジ
カプリロイルリジンラウリルアミン塩、N−ステアロイ
ルグルタミン酸ステアリルアミン塩等のN−アシルアミ
ノ酸アミン塩、N,N−ジカプリロイルリジンラウリ
ルエステル、N,N−ジラウロイルリジンラウリルエス
テル、N,N−ジラウロイルリジンステアリルエステ
ル、N−ステアロイルグルタミン酸ステアリルエステル
等のN−アシルアミノ酸エステル、等のN−アシルアミ
ノ酸誘導体;等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら油増粘剤は、一種類のみを用いてもよ
く、また、二種類以上を併用してもよい。
【0061】上記ポリオレフィン系ポリマー並びにその
ハロゲン化物は、非結晶性、低結晶性、結晶性の何れで
あってもよい。但し、非結晶性や低結晶性のポリオレフ
ィン系ポリマーは、その物性によって、炭化水素系ゴム
に分類される場合もある。上記熱可塑性エラストマーと
しては、室温以上、かつ、より好ましくは油性物質の融
点(結晶転移温度)よりも20℃高い温度迄の範囲内、
さらに好ましくは10℃高い温度迄の範囲内において、
ゴム弾性を備えている化合物が好適である。
【0062】油性物質100重量部に対する油増粘剤の
割合は、0.1重量部〜5重量部の範囲内が好ましく、
0.2重量部〜4重量部の範囲内がより好ましく、0.
4重量部〜3重量部の範囲内がさらに好ましい。油増粘
剤の割合が0.1重量部よりも少ない場合には、該油増
粘剤を添加することによって得られる効果、つまり、架
橋重合体および油増粘剤の相乗作用によって、油性物質
の蓄熱特性を阻害することなく、該油性物質をゲル状ま
たは固体状にするという効果が乏しくなり、蓄熱剤組成
物から液体状の油性物質が分離して滲み出すので、好ま
しくない。一方、油増粘剤の割合が5重量部よりも多い
場合には、架橋重合体が形成される以前に蓄熱剤組成物
が成形物若しくは高粘性を有する組成物となってしまう
ので、複雑な形状の容器に隙間無く蓄熱剤組成物を充填
することができない。また、重合体または架橋重合体を
形成する反応や、重合体に架橋構造を導入する反応が油
増粘剤によって阻害されるので、保形性に優れた蓄熱剤
組成物を製造することができなくなる。
【0063】本発明にかかる蓄熱剤組成物は、油性物
質に単量体成分(B)を混合し、油性物質中で該単量体
成分(B)を重合して重合体を形成した後、両者の混合
物或いは反応物に、油増粘剤および架橋剤を添加して上
記重合体に架橋構造を導入し、この架橋重合体中に油性
物質並びに油増粘剤を保持する方法; 油性物質に単量体成分(B)および油増粘剤を混合
し、油性物質と油増粘剤との混合物中で該単量体成分
(B)を重合して重合体を形成した後、三者の混合物或
いは反応物に架橋剤を添加して上記重合体に架橋構造を
導入し、この架橋重合体中に油性物質並びに油増粘剤を
保持する方法; 油性物質に単量体成分(A)および油増粘剤を混合
し、油性物質と油増粘剤との混合物中で該単量体成分
(A)を重合して架橋重合体を形成し、この架橋重合体
中に油性物質並びに油増粘剤を保持する方法;によって
製造することができる。
【0064】さらには、本発明にかかる蓄熱剤組成物
は、油性物質に単量体成分(B)を混合し、油性物質
中で該単量体成分(B)を重合して重合体を形成した
後、両者の混合物或いは反応物に、架橋剤を添加して上
記重合体に架橋構造を導入し、この架橋重合体中に油性
物質を保持すると共に、該架橋重合体に油増粘剤を吸収
させる方法; 油性物質に単量体成分(A)を混合し、油性物質中で
該単量体成分(A)を重合して架橋重合体を形成し、こ
の架橋重合体中に油性物質を保持すると共に、該架橋重
合体に油増粘剤を吸収させる方法;等によって製造する
こともできる。
【0065】油性物質に単量体成分(A)または単量体
成分(B)を混合する方法、若しくは、油性物質に単量
体成分(A)または単量体成分(B)と、油増粘剤とを
混合する方法並びに混合順序は、特に限定されるもので
はない。また、上記製造方法において、重合体を形成
した後、混合物に油増粘剤および架橋剤を添加する方法
並びに混合順序は、特に限定されるものではない。上記
製造方法において、重合体を形成した後、混合物に架
橋剤を添加する方法は、特に限定されるものではない。
上記製造方法において、重合体を形成した後、混合物
に架橋剤を添加する方法は、特に限定されるものではな
い。
【0066】油性物質100重量部に対する架橋重合体
の割合は、2重量部〜50重量部の範囲内が好ましく、
4重量部〜20重量部の範囲内がより好ましく、6重量
部〜15重量部の範囲内がさらに好ましい。架橋重合体
の割合が2重量部よりも少ない場合には、該架橋重合体
を形成することによって得られる効果、つまり、架橋重
合体および油増粘剤の相乗作用によって、油性物質の蓄
熱特性を阻害することなく、該油性物質をゲル状または
固体状にするという効果が乏しくなり、保形性に劣るの
で、好ましくない。一方、架橋重合体の割合が50重量
部よりも多い場合には、蓄熱剤組成物における油性物質
の含有量が相対的に少なくなり、該蓄熱剤組成物の蓄熱
密度が低下するので好ましくない。
【0067】油性物質中で単量体成分(A)または単量
体成分(B)を重合する重合方法は、特に限定されるも
のではない。単量体成分(A)または単量体成分(B)
の重合は、油溶解性のラジカル重合開始剤を添加するこ
とによって開始される。上記のラジカル重合開始剤とし
ては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイ
ド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオ
キサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブ
チロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチ
ルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチ
ルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メト
キシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合
物;等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、一
種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用して
もよい。尚、単量体成分(A)または単量体成分(B)
の重合を促進させる触媒を必要に応じて用いて、重合速
度(反応速度)を速めることもできる。
【0068】ラジカル重合開始剤の使用量は、特に限定
されるものではないが、単量体成分(A)または単量体
成分(B)に対して、0.1重量%〜5重量%の範囲内
とすればよい。ラジカル重合開始剤を添加するタイミン
グは、特に限定されるものではなく、例えば、油性物質
に単量体成分(A)または単量体成分(B)を添加した
後にラジカル重合開始剤を添加してもよく、油性物質に
ラジカル重合開始剤を添加した後に単量体成分(A)ま
たは単量体成分(B)を添加してもよく、或いは、油性
物質に、単量体成分(A)または単量体成分(B)と、
ラジカル重合開始剤とを一緒に添加してもよい。
【0069】重合条件は、単量体成分(A)または単量
体成分(B)の組成、ラジカル重合開始剤の種類や使用
量、油性物質の組成(融点)、或いは、油増粘剤の組成
等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではな
い。例えば、重合温度は、油性物質が液体の状態を維持
することができる温度範囲であればよく、具体的には、
0℃〜150℃の範囲内がより好ましく、0℃〜80℃
の範囲内がさらに好ましい。重合時間は、重合温度等に
応じて適宜設定すればよい。
【0070】さらに、単量体成分(A)または単量体成
分(B)を重合する重合方法として、懸濁重合法を採用
することもできる。つまり、水等の水系溶媒に、油性物
質と、単量体成分(A)または単量体成分(B)とを懸
濁させた後、ラジカル重合開始剤を添加して懸濁重合さ
せる方法(水中懸濁重合法)を採用することもできる。
単量体成分(A)または単量体成分(B)とを懸濁(分
散)させるには、必要に応じて、保護コロイド剤や界面
活性剤を用いればよい。保護コロイド剤としては、具体
的には、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエ
チルセルロース、ゼラチン等が挙げられる。また、界面
活性剤としては、具体的には、例えば、アルキルスルホ
ン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸石鹸
等が挙げられる。尚、単量体成分(A)または単量体成
分(B)を水不溶性の有機溶媒に予め溶解した後、該溶
液を水系溶媒に添加して懸濁重合させる方法を採用する
こともできる。
【0071】油性物質中で重合体に架橋剤を反応(架橋
反応)させる反応方法は、特に限定されるものではな
い。架橋反応は、重合体に架橋剤を添加することによっ
て開始される。
【0072】上記製造方法・において、架橋重合体
に油増粘剤を吸収させる方法としては、具体的には、例
えば、(i) 油増粘剤を架橋重合体表面に塗布またはコー
ティングすることによって吸収させる方法、(ii)油増粘
剤を溶解した油性物質を架橋重合体表面に塗布またはコ
ーティングすることによって吸収させる方法、(iii)架
橋重合体を液体状の油増粘剤に投入することによって吸
収させる方法、(iv)架橋重合体を油増粘剤を溶解した油
性物質に投入することによって吸収させる方法、等が挙
げられるが、特に限定されるものではない。要するに、
架橋重合体と油増粘剤とを互いに接触させることによっ
て、架橋重合体に油増粘剤を吸収させればよい。
【0073】上記の製造方法〜によって、本発明に
かかる蓄熱剤組成物が得られる。上記の方法によれば、
架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下するように該
油性物質並びに油増粘剤を保持することができる。具体
的には、架橋重合体および油増粘剤の相乗作用によっ
て、油性物質の蓄熱特性を阻害することなく、該油性物
質をゲル状または固体状にすることができる。それゆ
え、上記の方法によれば、油性物質の含有量を例えば8
0%以上と高くした場合において、熱を貯蔵・放出する
際に、凝固・融解を繰り返しても、保形性に優れ、例え
ば70℃においても油性物質の流動化を招来せず、か
つ、液体状の油性物質が分離して滲み出すことが無い蓄
熱剤組成物を製造することができる。
【0074】そして、上記製造方法〜によって得ら
れる蓄熱剤組成物、つまり、油性物質100重量部に、
架橋重合体が2重量部〜50重量部の範囲内、油増粘剤
が0.1重量部〜5重量部の範囲内で含まれてなる蓄熱
剤組成物は、架橋重合体中に油性物質を保持するので、
油増粘剤だけで油性物質の流動性を低下させる従来の蓄
熱剤と比較して、該油増粘剤の含有量を少なくすること
ができる。それゆえ、常温において、複雑な形状の容器
に隙間無く蓄熱剤組成物を充填することができる。
【0075】本発明にかかる蓄熱剤組成物は、必要に応
じて、添加剤をさらに含んでいてもよい。上記の添加剤
としては、具体的には、例えば、伝熱性を向上させるの
に好適な、鉄粉や銅粉等の金属粉、金属繊維、金属酸化
物、カーボンブラック、カーボンファイバー;比重調整
に好適な、砂、粘土、石、鉛粉や鉄粉等の金属粉;燃焼
性の低減や延焼防止、水蒸気による引火点の消滅、燃焼
熱量低減効果等のいわゆる難燃性を付与するのに好適
な、水、水ゲル、金属粉、炭酸カルシウム等の無機化合
物、臭素系や塩素系、リン系等の難燃剤;過冷却を防止
するのに好適な、金属粉、高分子パラフィン(ワック
ス);凝固点を調整するのに好適な、ワックス類;酸化
防止や経時的な劣化防止に好適な、フェノール系やチオ
系、リン系等の酸化防止剤;着色剤、顔料、帯電防止
剤、防菌剤、安定剤;等が挙げられる。これら添加剤
は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。
【0076】さらに、油性物質の潜熱を調整するため
に、包接化合物を添加剤として添加してもよい。上記の
包接化合物としては、具体的には、例えば、C4 8
O・17H2 O、 (CH3)3 N・10.25 H2 O、 (C4
9)4 NCHO2 ・32H2 O、 (C4 9)4 NCH3 CO
2 ・32H2 O等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。
【0077】添加剤の添加方法は、特に限定されるもの
ではないが、架橋重合体が形成される迄に、油性物質を
含む混合物に添加剤を添加することが好ましい。また、
添加剤の添加量は、その種類に応じて適宜設定すればよ
く、特に限定されるものではない。具体的には、例え
ば、難燃性を付与するために炭酸カルシウムを添加する
場合には、油性物質および架橋重合体の合計量に対し
て、該炭酸カルシウムを10重量%〜40重量%の範囲
内で添加すればよい。炭酸カルシウムの添加量が10重
量%未満である場合には、燃焼性の低減や延焼防止、燃
焼熱量低減効果等の難燃性を付与する効果が乏しくな
る。一方、炭酸カルシウムの添加量が40重量%を越え
る場合には、蓄熱剤組成物における油性物質の含有量が
相対的に少なくなり、該蓄熱剤組成物の蓄熱密度が低下
するので好ましくない。
【0078】本発明にかかる蓄熱剤組成物においては、
架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下するように上
記油性物質並びに油増粘剤が保持されている。つまり、
上記添加剤も架橋重合体中に保持されているので、熱を
貯蔵・放出する際に、凝固・融解を繰り返しても、蓄熱
剤組成物に含まれている添加剤が偏る(沈降する)おそ
れがない。それゆえ、本発明にかかる蓄熱剤組成物にお
いては、油性物質との比重差が1以上である例えば金属
粉を添加剤として用いた場合においても、該金属粉を架
橋重合体中に均一な状態で保持することができるので、
金属粉を添加することによって得られる効果を充分に得
ることができる。また、油性物質との相溶性に劣る添加
剤を用いた場合、例えば油性物質の溶解度パラメーター
と添加剤の溶解度パラメーターとの差が2(cal/c
3 1/2 以上である場合においても、該添加剤を架橋
重合体中に均一な状態で保持することができるので、油
性物質と添加剤とが互いに分離してしまうことが回避さ
れ、添加剤を添加することによって得られる効果を充分
に得ることができる。
【0079】本発明にかかる蓄熱材の製造方法は、上記
の製造方法〜を実施するに際し、油性物質を含む混
合物を、架橋重合体が形成される迄に容器に充填した
後、該容器内で架橋重合体を形成する方法である。つま
り、油性物質を含む常温で液体状の混合物を容器に充填
した後、該容器内で反応(注型重合、塊状重合)させる
方法である。
【0080】即ち、蓄熱材の製造方法としては、例え
ば、上記の製造方法を実施する場合には、ア)容器に
常温で液体状の油性物質と単量体成分(B)とを仕込ん
で重合体を形成した後、該容器に油増粘剤および架橋剤
を仕込んで上記重合体に架橋構造を導入する方法;イ)
重合体を形成した後、容器に常温で液体状の該重合体、
油増粘剤および架橋剤を仕込んで上記重合体に架橋構造
を導入する方法;等を採用することができる。
【0081】また、例えば、上記の製造方法を実施す
る場合には、ウ)容器に常温で液体状の油性物質と単量
体成分(B)と油増粘剤とを仕込んで重合体を形成した
後、該容器に架橋剤を仕込んで上記重合体に架橋構造を
導入する方法;エ)重合体を形成した後、容器に常温で
液体状の該重合体および架橋剤を仕込んで上記重合体に
架橋構造を導入する方法;等を採用することができる。
【0082】また、例えば、上記の製造方法を実施す
る場合には、オ)容器に常温で液体状の油性物質と単量
体成分(A)と油増粘剤とを仕込んで架橋重合体を形成
する方法;等を採用することができる。
【0083】また、例えば、上記の製造方法を実施す
る場合には、カ)容器に常温で液体状の油性物質と単量
体成分(B)とを仕込んで重合体を形成した後、該容器
に架橋剤を仕込んで上記重合体に架橋構造を導入し、次
いで、架橋重合体に油増粘剤を吸収させる方法;キ)重
合体を形成した後、容器に常温で液体状の該重合体およ
び架橋剤を仕込んで上記重合体に架橋構造を導入し、次
いで、架橋重合体に油増粘剤を吸収させる方法;等を採
用することができる。
【0084】また、例えば、上記の製造方法を実施す
る場合には、ク)容器に常温で液体状の油性物質と単量
体成分(A)とを仕込んで架橋重合体を形成した後、該
架橋重合体に油増粘剤を吸収させる方法;等を採用する
ことができる。
【0085】容器は、蓄熱剤組成物や熱媒体に対して不
活性な材質、より具体的には、例えば耐腐食性や、水系
の熱媒体に長期間浸漬されても変質しない耐水性等の耐
久性を備えた材質で形成されていればよく、特に限定さ
れるものではない。該材質としては、例えば、ポリ塩化
ビニル等の合成樹脂が、成形性に優れており、かつ安価
であるのでより好ましい。
【0086】また、容器の形状や大きさ等は、蓄熱材の
用途や蓄熱槽の大きさ等に応じて選択すればよく、特に
限定されるものではないが、熱媒体との接触表面積がで
きるだけ大きくなるような形状や大きさが好ましい。具
体的には、例えばビル空調等の冷暖房に用いる場合に
は、細いチューブ状や折れ曲がったチューブ状、コイル
状、球状、円筒状(ドーナツ状)等の中空部を有する形
状がより好ましく、例えば床暖房に用いる場合には、板
状がより好ましい。
【0087】上記の製造方法ア)〜ク)によって、本発
明にかかる蓄熱材が得られる。上記の方法によれば、油
性物質を含む混合物が常温で液体状のときに該混合物を
容器に充填することができるので、容器に耐熱性に優れ
た材質を使用する必要が無い。そして、混合物を容器に
充填した後、該容器内で蓄熱剤組成物が形成され、架橋
重合体中に油性物質が保持されるので、複雑な形状の容
器に、簡単に隙間無く蓄熱剤組成物が詰め込まれること
になる。これにより、蓄熱剤組成物が容器に密に充填さ
れ、熱効率に優れた蓄熱材を製造することができる。
【0088】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。
【0089】〔実施例1〕直径4cm、高さ25cmの
ポリ塩化ビニル製の透明円筒状パイプの下部に、ポリ塩
化ビニル製の蓋を融着することによって容器を作成し、
この容器を用いて蓄熱材を製造した。即ち、単量体成分
としての2−エチルヘキシルアクリレート(SP値:
7.8)19gおよびエチレングリコールジメタクリレ
ート0.9g、重合開始剤としての2,2’−アゾビス
−(2−メチルブチロニトリル)0.1g、油増粘剤と
しての12−ヒドロキシステアリン酸0.4g、並び
に、油性物質としてのペンタデカン180gを、均一と
なるように混合することにより、混合溶液を調製した。
【0090】次に、該混合溶液を上記の容器に充填する
と共に、容器上部に装着したガス導入管から窒素ガスを
混合溶液中に充分に導入することにより、混合溶液内の
酸素ガスを窒素ガスに置換した。
【0091】次いで、容器内を窒素ガス雰囲気に保ちな
がら、該容器を、75℃に保温された恒温槽中に8時間
静置した。そして、混合溶液の重合反応・架橋反応が進
行して、ペンタデカンをゲル状に保持した架橋重合体が
形成されたことを目視にて確認した後、ガス導入管を外
した。これにより、本実施例にかかる蓄熱剤組成物、お
よび、これを用いた蓄熱材を得た。
【0092】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、下記の方法によって確認した。即ち、蓄熱
材を恒温槽中に載置し、2℃で8時間保持した後、30
℃で8時間保持する凝固・融解操作、つまり、蓄熱剤組
成物の凝固・融解を1セットとするタイムプログラムを
20回繰り返した。そして、ゲル状の蓄熱剤組成物から
液体状のペンタデカンが分離しているか否か、つまり、
ペンタデカンが滲み出しているか否かを目視によって確
認することにより、蓄熱剤組成物が有する物性の経時的
変化の有無を確認した。
【0093】その結果、上記の蓄熱剤組成物には、相変
化によって液化したペンタデカンの滲み出しが認められ
ず、物性の経時的変化は無かった。しかも、上記の蓄熱
剤組成物は、形状が元通りに復元され、ゲルに歪みが生
じなかったので、容器内面からの剥離は観察されなかっ
た。従って、該蓄熱剤組成物は、経時的な安定性に優れ
ていることが判った。
【0094】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、下
記の方法によって評価した。即ち、蓄熱剤組成物をサン
プル瓶に中程まで入れた後、該サンプル瓶を恒温槽中に
載置し、70℃で2時間保持した。その後、直ちにサン
プル瓶を取り出して倒し、入っている蓄熱剤組成物が流
動するか否かを目視によって確認することにより、該蓄
熱剤組成物が有する保形性を評価した。その結果、上記
の蓄熱剤組成物は流動せず、保形性に優れていることが
判った。
【0095】〔実施例2〕12−ヒドロキシステアリン
酸を、油増粘剤としてのスチレン−エチレン−ブチレン
三元共重合体エラストマー(シェルジャパン株式会社
製;商品名 クレイトン1650)4.0gに変更した
以外は、実施例1の反応・操作と同様の反応・操作を実
施した。これにより、本実施例にかかる蓄熱剤組成物、
および、これを用いた蓄熱材を得た。
【0096】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、実施例1と同様にして確認した。その結
果、上記の蓄熱剤組成物には、相変化によって液化した
ペンタデカンの滲み出しが認められず、物性の経時的変
化は無かった。しかも、上記の蓄熱剤組成物は、形状が
元通りに復元され、ゲルに歪みが生じなかったので、容
器内面からの剥離は観察されなかった。従って、該蓄熱
剤組成物は、経時的な安定性に優れていることが判っ
た。
【0097】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、実
施例1と同様にして評価した。その結果、上記の蓄熱剤
組成物は流動せず、保形性に優れていることが判った。
【0098】〔実施例3〕温度計、撹拌機、ガス導入
管、2つの滴下ロートおよび還流冷却器を備えた1Lの
フラスコに、ペンタデカン20gを仕込んだ後、撹拌し
ながらフラスコ内を窒素ガス置換した。次に、該ペンタ
デカンを、窒素ガス気流下、65℃に加熱した。
【0099】また、単量体成分としての2−エチルヘキ
シルアクリレート76gおよびヒドロキシエチルアクリ
レート4g、並びに、ペンタデカン80gを、均一とな
るように混合することにより、混合溶液Aを調製し、該
混合溶液Aを一方の滴下ロートに仕込んだ。さらに、重
合開始剤としての2,2’−アゾビス−(4−メトキシ
−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2g、並び
に、油性物質および希釈液としてのペンタデカン20g
を、均一となるように混合することにより、混合溶液B
を調製し、該混合溶液Bを他方の滴下ロートに仕込ん
だ。
【0100】そして、これら混合溶液A・Bを上記のフ
ラスコ内に同時に1時間かけて滴下した後、反応溶液を
混合・撹拌しながら窒素ガス気流下で重合反応を行っ
た。その後、反応溶液を80℃に昇温し、さらに2時
間、該温度を維持することにより、重合反応を完結さ
せ、架橋前の重合体を形成した。
【0101】一方、架橋剤としてのトルエンジイソシア
ナート1.1g、添加剤(安定剤)としてのジブチルス
ズジラウレート0.1g、油増粘剤としてのブタジエン
エラストマー(日本合成ゴム株式会社製;商品名 BR
01)4.0g、並びに、油性物質および希釈液として
のペンタデカン150gを、均一となるように混合する
ことにより、混合溶液Cを調製した。
【0102】そして、反応溶液を放冷した後、該反応溶
液のうちの50gを500mLのフラスコに移し、該フ
ラスコ内に上記の混合溶液Cを一度に添加し、撹拌し
た。その後、直ちに、フラスコの内容物を、実施例1で
用いた容器と同様の容器に充填した。次いで、該容器を
常温で4時間静置し、架橋反応を進行させることによ
り、ペンタデカンをゲル状に保持した架橋重合体を形成
した。これにより、本実施例にかかる蓄熱剤組成物、お
よび、これを用いた蓄熱材を得た。
【0103】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、実施例1と同様にして確認した。その結
果、上記の蓄熱剤組成物には、相変化によって液化した
ペンタデカンの滲み出しが認められず、物性の経時的変
化は無かった。しかも、上記の蓄熱剤組成物は、形状が
元通りに復元され、ゲルに歪みが生じなかったので、容
器内面からの剥離は観察されなかった。従って、該蓄熱
剤組成物は、経時的な安定性に優れていることが判っ
た。
【0104】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、実
施例1と同様にして評価した。その結果、上記の蓄熱剤
組成物は流動せず、保形性に優れていることが判った。
【0105】〔実施例4〕混合溶液Cの調製に用いたブ
タジエンエラストマーを、油増粘剤としてのスチレン−
エチレン−ブチレン三元共重合体エラストマー(シェル
ジャパン株式会社製;商品名 クレイトン1650)
6.0gに変更した以外は、実施例3の反応・操作と同
様の反応・操作を実施した。これにより、本実施例にか
かる蓄熱剤組成物、および、これを用いた蓄熱材を得
た。
【0106】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、実施例1と同様にして確認した。その結
果、上記の蓄熱剤組成物には、相変化によって液化した
ペンタデカンの滲み出しが認められず、物性の経時的変
化は無かった。しかも、上記の蓄熱剤組成物は、形状が
元通りに復元され、ゲルに歪みが生じなかったので、容
器内面からの剥離は観察されなかった。従って、該蓄熱
剤組成物は、経時的な安定性に優れていることが判っ
た。
【0107】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、実
施例1と同様にして評価した。その結果、上記の蓄熱剤
組成物は流動せず、保形性に優れていることが判った。
【0108】〔実施例5〕混合溶液Cの調製に用いたブ
タジエンエラストマーを用いること無く、代わりに、油
増粘剤としてのスチレン−ブタジエン共重合体エラスト
マー(日本合成ゴム株式会社製;商品名 SBR150
2)2.0gを混合溶液Aに添加して用いた以外は、実
施例3の反応・操作と同様の反応・操作を実施した。こ
れにより、本実施例にかかる蓄熱剤組成物、および、こ
れを用いた蓄熱材を得た。
【0109】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、実施例1と同様にして確認した。その結
果、上記の蓄熱剤組成物には、相変化によって液化した
ペンタデカンの滲み出しが認められず、物性の経時的変
化は無かった。しかも、上記の蓄熱剤組成物は、形状が
元通りに復元され、ゲルに歪みが生じなかったので、容
器内面からの剥離は観察されなかった。従って、該蓄熱
剤組成物は、経時的な安定性に優れていることが判っ
た。
【0110】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、実
施例1と同様にして評価した。その結果、上記の蓄熱剤
組成物は流動せず、保形性に優れていることが判った。
【0111】〔実施例6〕単量体成分としてのドデシル
アクリレート(SP値:7.9)29gおよびエチレン
グリコールジメタクリレート0.9gと、重合開始剤と
しての2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)0.1gとからなる混合物を、70℃で予め
融解させた油性物質としてのパラフィンワックス(融点
50℃;日本製蝋株式会社製;製品名 120)170
gと、12−ヒドロキシステアリン酸4.0gとからな
る混合物に添加し、均一となるように混合することによ
り、混合溶液を調製した。
【0112】次に、該混合溶液を、実施例1で用いた容
器と同様の容器に充填すると共に、該容器を60℃に保
温された恒温槽中に入れた。そして、容器上部に装着し
たガス導入管から窒素ガスを混合溶液中に充分に導入す
ることにより、混合溶液内の酸素ガスを窒素ガスに置換
した。
【0113】次いで、容器内を窒素ガス雰囲気に保ちな
がら、該容器を上記恒温槽中に8時間静置した。そし
て、混合溶液の重合反応・架橋反応が進行して、パラフ
ィンワックスをゲル状に保持した架橋重合体が形成され
たことを目視にて確認した後、ガス導入管を外した。こ
れにより、本実施例にかかる蓄熱剤組成物、および、こ
れを用いた蓄熱材を得た。
【0114】上記蓄熱剤組成物が有する物性の経時的変
化の有無を、下記の方法によって確認した。即ち、蓄熱
材を恒温槽中に載置し、40℃で8時間保持した後、6
0℃で8時間保持する凝固・融解操作、つまり、蓄熱剤
組成物の凝固・融解を1セットとするタイムプログラム
を20回繰り返した。そして、ゲル状の蓄熱剤組成物か
ら液体状のパラフィンワックスが分離しているか否か、
つまり、パラフィンワックスが滲み出しているか否かを
目視によって確認することにより、蓄熱剤組成物が有す
る物性の経時的変化の有無を確認した。
【0115】その結果、上記の蓄熱剤組成物には、相変
化によって液化したパラフィンワックスの滲み出しが認
められず、物性の経時的変化は無かった。しかも、上記
の蓄熱剤組成物は、形状が元通りに復元され、ゲルに歪
みが生じなかったので、容器内面からの剥離は観察され
なかった。従って、該蓄熱剤組成物は、経時的な安定性
に優れていることが判った。
【0116】また、蓄熱剤組成物が有する保形性を、実
施例1と同様にして評価した。その結果、上記の蓄熱剤
組成物は流動せず、保形性に優れていることが判った。
【0117】〔比較例1〕実施例2で用いたフラスコと
同様のフラスコに、ペンタデカン180gを仕込んだ
後、撹拌しながら、窒素ガス気流下、90℃に加熱し
た。次に、上記のフラスコ内に12−ヒドロキシステア
リン酸20gを一度に添加した後、回転数300rpm
で内容物を5分間、混合・撹拌した。その後、直ちに、
フラスコの内容物を、実施例1で用いた容器と同様の容
器に充填し、室温にまで放冷した。これにより、比較用
蓄熱剤組成物、および、これを用いた比較用蓄熱材を得
た。
【0118】上記比較用蓄熱剤組成物が有する物性の経
時的変化の有無を、実施例1と同様にして確認した。そ
の結果、上記の比較用蓄熱剤組成物には、相変化によっ
て液化したペンタデカンの滲み出しが多量に認められ、
それゆえ、物性が経時的に変化していた。従って、該比
較用蓄熱剤組成物は、経時的な安定性に劣っていること
が判った。
【0119】また、比較用蓄熱剤組成物が有する保形性
を、実施例1と同様にして評価した。その結果、上記の
比較用蓄熱剤組成物は流動し、保形性に劣っていること
が判った。
【0120】〔比較例2〕実施例2で用いたフラスコと
同様のフラスコに、ペンタデカン180gを仕込んだ
後、撹拌しながら、窒素ガス気流下、140℃に加熱し
た。次に、上記のフラスコ内に、油増粘剤としてのN−
ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ジ−n−ブチ
ルアミド(味の素株式会社製;商品名 GP−1)20
gを一度に添加した後、回転数300rpmで内容物を
5分間、混合・撹拌した。次いで、フラスコの内容物を
80℃にまで冷却した後、該内容物を実施例1で用いた
容器と同様の容器に充填した。これにより、比較用蓄熱
剤組成物、および、これを用いた比較用蓄熱材を得た。
【0121】上記比較用蓄熱剤組成物が有する物性の経
時的変化の有無を、実施例1と同様にして確認した。そ
の結果、上記の比較用蓄熱剤組成物には、相変化によっ
て液化したペンタデカンの滲み出しが多量に認められ、
それゆえ、物性が経時的に変化していた。従って、該比
較用蓄熱剤組成物は、経時的な安定性に劣っていること
が判った。
【0122】また、比較用蓄熱剤組成物が有する保形性
を、実施例1と同様にして評価した。その結果、上記の
比較用蓄熱剤組成物は流動し、保形性に劣っていること
が判った。
【0123】〔比較例3〕ブタジエンエラストマーを用
いない以外は、実施例3の反応・操作と同様の反応・操
作を実施した。即ち、油増粘剤を用いないで、実施例3
の反応・操作と同様の反応・操作を実施した。これによ
り、比較用蓄熱剤組成物、および、これを用いた比較用
蓄熱材を得た。
【0124】上記比較用蓄熱剤組成物が有する物性の経
時的変化の有無を、実施例1と同様にして確認した。そ
の結果、上記の比較用蓄熱剤組成物には、相変化によっ
て液化したペンタデカンの滲み出しが僅かに認められ、
それゆえ、物性が経時的に変化していた。しかも、上記
の比較用蓄熱剤組成物は、形状が元通りに復元されず
に、ゲルに歪みが生じたので、容器内面からの剥離が観
察された。従って、該比較用蓄熱剤組成物は、経時的な
安定性に劣っていることが判った。
【0125】また、比較用蓄熱剤組成物が有する保形性
を、実施例1と同様にして評価した。その結果、上記の
比較用蓄熱剤組成物は軟弱なゲル状となり、保形性に劣
っていることが判った。
【0126】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の蓄熱剤組成物の
製造方法は、以上のように、蓄熱性を有し、相変化によ
り液化する油性物質中で、単量体成分を重合して重合体
を形成した後、油増粘剤および架橋剤を添加して上記重
合体に架橋構造を導入し、この架橋重合体中に、油性物
質の流動性が低下するように上記油性物質並びに油増粘
剤を保持する方法である。
【0127】本発明の請求項2記載の蓄熱剤組成物の製
造方法は、以上のように、蓄熱性を有し、相変化により
液化する油性物質と油増粘剤との混合物中で、単量体成
分を重合して重合体を形成した後、架橋剤を添加して上
記重合体に架橋構造を導入し、この架橋重合体中に、油
性物質の流動性が低下するように上記油性物質並びに油
増粘剤を保持する方法である。
【0128】本発明の請求項3記載の蓄熱剤組成物の製
造方法は、以上のように、蓄熱性を有し、相変化により
液化する油性物質と油増粘剤との混合物中で、架橋性単
量体を含む単量体成分を重合して架橋重合体を形成し、
この架橋重合体中に、油性物質の流動性が低下するよう
に上記油性物質並びに油増粘剤を保持する方法である。
【0129】上記の方法によれば、架橋重合体および油
増粘剤の相乗作用によって、油性物質の蓄熱特性を阻害
することなく、該油性物質をゲル状または固体状にする
ことができる。それゆえ、上記の方法によれば、油性物
質の含有量を例えば80%以上と高くした場合におい
て、熱を貯蔵・放出する際に、凝固・融解を繰り返して
も、形状が元通りに復元され、ゲル等に歪みが生じない
ため保形性に優れ、例えば70℃においても油性物質の
流動化を招来せず、かつ、液体状の油性物質が分離して
滲み出すことが無い蓄熱剤組成物を製造することができ
るという効果を奏する。
【0130】本発明の請求項4記載の蓄熱剤組成物は、
以上のように、蓄熱性を有し、相変化により液化する油
性物質100重量部に、架橋重合体が2重量部〜50重
量部の範囲内、油増粘剤が0.1重量部〜5重量部の範
囲内で含まれてなる構成である。
【0131】上記の構成によれば、熱を貯蔵・放出する
際に、凝固・融解を繰り返しても、保形性に優れ、例え
ば70℃においても油性物質の流動化を招来せず、か
つ、液体状の油性物質が分離して滲み出すことが無い蓄
熱剤組成物を提供することができるという効果を奏す
る。また、架橋重合体中に油性物質を保持するので、油
増粘剤だけで油性物質の流動性を低下させる従来の蓄熱
剤と比較して、該油増粘剤の含有量を少なくすることが
できる。それゆえ、常温において、複雑な形状の容器に
隙間無く蓄熱剤組成物を充填することができるという効
果も併せて奏する。さらに、上記の構成によれば、蓄熱
剤組成物は、凝固・融解を繰り返しても、形状が元通り
に復元され、ゲル等に歪みが生じないため保形性に優れ
るので、容器内面や熱交換機接触面から該蓄熱剤組成物
の剥離が起こることはない。従って、蓄熱剤組成物は、
伝熱特性に優れているという効果も併せて奏する。
【0132】本発明の請求項5記載の蓄熱材は、以上の
ように、請求項1ないし3の何れか1項に記載の製造方
法を実施するに際し、油性物質を含む混合物を、架橋重
合体が形成される迄に容器に充填した後、該容器内で架
橋重合体を形成する方法である。
【0133】上記の方法によれば、混合物が常温で液体
状のときに該混合物を容器に充填することができるの
で、容器に耐熱性に優れた材質を使用する必要が無い。
そして、混合物を容器に充填した後、該容器内で蓄熱剤
組成物が形成され、架橋重合体中に油性物質が保持され
るので、複雑な形状の容器に、簡単に隙間無く蓄熱剤組
成物が詰め込まれることになる。これにより、蓄熱剤組
成物が容器に密に充填され、熱効率に優れた蓄熱材を製
造することができるという効果を奏する。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蓄熱性を有し、相変化により液化する油性
    物質中で、単量体成分を重合して重合体を形成した後、
    油増粘剤および架橋剤を添加して上記重合体に架橋構造
    を導入し、この架橋重合体中に、油性物質の流動性が低
    下するように上記油性物質並びに油増粘剤を保持するこ
    とを特徴とする蓄熱剤組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】蓄熱性を有し、相変化により液化する油性
    物質と油増粘剤との混合物中で、単量体成分を重合して
    重合体を形成した後、架橋剤を添加して上記重合体に架
    橋構造を導入し、この架橋重合体中に、油性物質の流動
    性が低下するように上記油性物質並びに油増粘剤を保持
    することを特徴とする蓄熱剤組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】蓄熱性を有し、相変化により液化する油性
    物質と油増粘剤との混合物中で、架橋性単量体を含む単
    量体成分を重合して架橋重合体を形成し、この架橋重合
    体中に、油性物質の流動性が低下するように上記油性物
    質並びに油増粘剤を保持することを特徴とする蓄熱剤組
    成物の製造方法。
  4. 【請求項4】蓄熱性を有し、相変化により液化する油性
    物質100重量部に、架橋重合体が2重量部〜50重量
    部の範囲内、油増粘剤が0.1重量部〜5重量部の範囲
    内で含まれてなることを特徴とする蓄熱剤組成物。
  5. 【請求項5】請求項1ないし3の何れか1項に記載の製
    造方法を実施するに際し、油性物質を含む混合物を、架
    橋重合体が形成される迄に容器に充填した後、該容器内
    で架橋重合体を形成することを特徴とする蓄熱材の製造
    方法。
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