JPH115711A - セラミックス歯冠用陶材組成物 - Google Patents

セラミックス歯冠用陶材組成物

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JPH115711A
JPH115711A JP15856597A JP15856597A JPH115711A JP H115711 A JPH115711 A JP H115711A JP 15856597 A JP15856597 A JP 15856597A JP 15856597 A JP15856597 A JP 15856597A JP H115711 A JPH115711 A JP H115711A
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firing temperature
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度および透明性の高いセラミックス歯冠用
シェルに好適な歯冠用陶材組成物を提供する。 【解決手段】 20〜100℃の焼成温度差を持つ、焼
成温度の異なる少なくとも二種のガラス粉末を用い、こ
れら複数のガラス粉末からなる陶材組成物の焼成温度が
650〜800℃であるセラミックス歯冠用陶材組成
物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックス歯冠
に好適に使用される新規な陶材組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年歯冠用セラミックスの分野では、オ
ールセラミックスと呼ばれる材料が需要を拡大しつつあ
る。従来、審美的なインレーまたはクラウン修復には、
メタルボンドポーセレンと呼ばれる金属コアにセラミッ
クスを焼き付けた材料が用いられてきた。しかし、メタ
ルボンドポーセレンでは内部の金属が光を透過しないた
め天然歯と同様の自然感を再現できず、また金属の影響
により歯肉が変色するという問題点を有していた。これ
に対し、オールセラミックスとは金属コアを用いずに歯
冠全体をセラミックスで形成する手法である。このセラ
ミックスには通常半透明の材料が用いられ、天然歯と同
様に光を透過することができる。このためより自然感の
高い歯冠が得られ、且つ歯肉の変色に関する問題も解消
される。このためオールセラミックスは、それ自身の材
料強度向上とあいまって、応用範囲を拡大しつつある。
【0003】一方、インレー、クラウン等修復物の審美
性を追求すると、その構造は歯と同様の2層またはそれ
以上の層状構造を有することが望ましい。これは歯の硬
組織がデンチン、エナメルの2層構造であり、これらの
層内または層界面で可視光が複雑に散乱し、その散乱光
が審美性に顕著な影響を及ぼすためである。従って、近
年のオールセラミックス修復物は、コアとシェルの2層
構造を形成できるシステムであることが不可欠の条件と
なっている。
【0004】コアには、従来マイカ系、アパタイト系、
ディオプサイド系等の結晶化ガラスが主に用いられてお
り、これらは 熔融状態からのキャストまたは高温プレ
スにより成形される。一方シェルの形成には、通常歯科
用陶材と呼ばれるガラスまたは結晶化ガラスの粉末が用
いられる。この歯科用陶材を練和液でスラリー状とし
て、コアの表面に盛り付けた後に焼成することにより、
シェルが形成される。
【0005】このシェルには、当然のこととして口腔内
での耐久性が要求される。しかし、上述のようにガラス
の粉末を焼成する場合、焼成の過程において気泡が内部
に閉じ込められることがあり、この気泡がシェル焼成体
の強度を低下せしめる原因となっていた。
【0006】また上記シェルには、使用部位により天然
歯と同様の透明感を要求される。特に歯の切端に用いら
れる場合にはシェルに高度の透明性が求められ、この高
度の透明性の再現には、気泡による濁りの除去が不可欠
である。一方、後述するように近年焼成温度の低いシェ
ルへの需要が高まっているにも関わらず、焼成温度の低
いガラス粉末は、焼成温度の高いガラス粉末に比べ焼成
過程において内部に気泡を取り込みやすく、良好な強度
及び透明性を有するシェルが得られないという問題を有
していた。
【0007】最近歯冠用セラミックスとして開発された
ディオプサイド結晶化ガラスは、強度が高くまた低温で
のプレス成形が可能なため、上記コア用材料として有望
視されている。そのガラス転移点は730〜750℃程
度であるが、陶材をこの材料の上に築盛する場合、コア
の熱変形防止のため陶材の焼成温度は上記ガラス転移点
以下でなければならない。
【0008】更に、シェルとコアの熱膨張係数は互いに
近似していることが必要であり、さもなくば焼成後の冷
却時に生じる成形物中の内部応力により、クラックの発
生を招いてしまう。コアの熱膨張係数は従来の歯冠用セ
ラミックスの場合、7×10-6〜13×10-6/℃程度
であった。しかし、最近では例えばディオプサイド系結
晶化ガラス等で6×10-6/℃程度の熱膨張係数を有す
るものが現れてきており、この様な低膨張のコアに対応
するシェルは未だ開発されていない。
【0009】一般にガラスでは、二酸化珪素等の網目構
造が種々の物性を支配するため、網目構造が強固なほど
熱膨張係数は低くなる。しかし一方では、高温での流動
性が上昇し、焼成温度も同時に高くなる。即ち、低膨張
と低焼成温度を両立するガラスを得ることは、ガラスの
特性に伴う二律背反の克服を意味していた。
【0010】上記条件に加え、シェルには口腔内環境で
の耐久性が要求される。しかし、低焼成温度用シェルは
口腔環境下での長期に亘る浸漬により表面からイオンが
溶出し、色調の微妙な変化や透明性の低下等が起きるこ
とが問題となっていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、第一
に焼結後の強度および透明性の高いセラミックス歯冠用
シェル並びに該シェルの製造に好適に使用される陶材組
成物を提供することにあり、更には、強度および透明性
が高く、且つ低焼成温度、低膨張、化学的耐久性に優れ
るセラミックス歯冠用シェル並びに陶材組成物を供給す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記技術
課題を克服すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の
温度差で焼成温度の異なるガラス粉末を混合することに
より、焼成後に強度並びに透明性の高いセラミックス歯
冠用陶材組成物の得られることを見いだした。また当該
特性に加え、低焼成温度、低熱膨張係数であり、且つ化
学的耐久性に優れる歯冠用陶材組成物の得られることを
見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明は、焼成温度の異なる少なく
とも二種のガラス粉末を含んでなるセラミックス歯冠用
陶材組成物であって、組成物中最も高い焼成温度を有す
るガラス粉末と最も低い焼成温度を有するガラス粉末と
の焼成温度差差が20〜100℃であり、且つ当該陶材
組成物の焼成温度が650〜800℃である前記セラミ
ックス歯冠用陶材組成物であり、他の発明は、該セラミ
ックス歯冠用陶材組成物を焼成してなるセラミックス歯
冠用シェルである。
【0014】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物
は、焼成温度の異なる少なくとも二種のガラス粉末を含
む。該組成物中、焼成温度が最も高いガラス粉末を以下
高温焼成ガラス粉末といい、焼成温度が最も低いガラス
粉末を以下低温焼成ガラス粉末という。必要に応じて、
その中間温度域に焼成温度を有する中温焼成ガラス粉末
を用いることもできる。
【0015】全ガラス粉末を混合したセラミックス歯冠
用陶材組成物の焼成温度は650〜800℃、好ましく
は650〜750℃の範囲である。陶材組成物の焼成温
度が800℃より高いとコアが熱変形を起こす可能性が
ある。一方焼成温度が650℃より低いと、ガラスの特
性上酸溶解量の悪化する場合が多く、また技工操作中に
陶材組成物に付着した有機物が完全に分解することなく
シェルの中に取り込まれ、シェルの色調を不良なものと
する恐れが生じる。
【0016】本発明で用いられる各ガラス粉末の焼成温
度は、高温焼成ガラス粉末と低温焼成ガラス粉末との焼
成温度差が20〜100℃の条件を満足し且つ上記の通
り、二種以上のガラス粉末を混合したセラミックス歯冠
用陶材組成物の焼成温度が650〜800℃である限
り、各々のガラス粉末の焼成温度が650〜800℃の
範囲を外れるてもよい。
【0017】代表的には、高温焼成ガラス粉末の焼成温
度範囲は、670〜810℃、好ましくは700〜76
0℃から選択され、低温焼成ガラス粉末の焼成温度範囲
は、600〜790℃、好ましくは630℃〜740℃
から選択される。更に、中焼成ガラス粉末の焼成温度
は、上記高および低温焼成ガラス粉末の間にあれば良
い。各ガラス粉末の焼成温度が上記範囲を外れると、焼
成体の透明性が低下する傾向にある。尚、本発明におけ
る焼成温度とは、ガラス粉末または陶材組成物を水と練
和後作製した成形体が、充分な焼結に至る温度であり、
その詳細は実施例に記す。
【0018】またガラス粉末の粒径については特に限定
されることはないが、セラミックス歯冠用陶材組成物に
用いるためには、練和液との混合、築盛、コンデンス
等、種々の操作性を満足することが望ましく、平均粒径
は20〜70μm程度の範囲であることが好ましい。
【0019】更に、焼成体に残留する気泡を可究的に少
なくするためには、上記二種以上のガラス粉末の内、焼
成温度の高いものについては小さい粒子を含まないこと
が望ましく、平均粒子径は30〜70μmの範囲である
ことが好ましく、40〜60μmの範囲であることがよ
り好ましい。一方焼成温度の低いガラス粉末について
は、平均粒子径は20〜50μmの範囲であることが好
ましく、25〜50μmの範囲であることがより好まし
い。
【0020】上記二種以上のガラス粉末の屈折率は特に
限定されることはないが、特に透明性の高い陶材組成物
を必要とする場合には、複数のガラス粉末間で屈折率の
差が小さいほうが好ましい。具体的には、二種以上のガ
ラス粉末の屈折率は、その最大値と最小値の差は0.0
3以下であることが好ましく、0.02以下であること
がより好ましい。
【0021】高温焼成ガラス粉末と低温焼成ガラス粉末
の配合比は、上記の通り二種以上のガラス粉末を混合し
たセラミックス歯冠用陶材組成物の焼成温度が650〜
800℃になるように、各ガラス粉末の焼成温度を勘案
して決定される。例えば、高温焼成ガラス粉末と低温焼
成ガラス粉末との両者の重量比で表示すれば、2:8〜
7:3の範囲が好ましく、3:7〜6:4の範囲がより
好ましい。必要に応じて中温焼成ガラス粉末を配合する
ときは、該ガラス粉末の焼成温度及び量を考慮して、高
温焼成温ガラス粉末と低温焼成ガラス粉末との配合比が
決定される。
【0022】これらガラス粉末の混合方法は、特に限定
されず公知の方法を採用することができる。混合に用い
る装置を例示すれば、V−ブレンダー、揺動ミキサー、
シェイカー、ボールミル、ライカイ機等を挙げることが
できるが、中でも混合中にガラスが過剰に粉砕されるこ
との無いものが好ましく、その様な装置として、V−ブ
レンダー、揺動ミキサー、シェイカー等を挙げることが
できる。
【0023】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物に
用いるガラスは特に限定されず、公知のガラスを使用す
る事が出来る。ここで言うガラスとは、完全に非晶質の
ガラス、および非晶質のガラスをマトリックスとしてそ
の中に結晶成分を含むいわゆる結晶化ガラスの両者を意
味する。このガラスとして一般に好適に使用されるもの
を例示すれば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ホウ
素、及びアルカリ金属酸化物を主成分とするボロシリケ
ートガラスを挙げることができる。代表的なボロシリケ
ートガラスの組成を以下に示す。
【0024】二酸化珪素(SiO2換算)の好適な含有
量は50〜75重量%であり、より好ましくは55〜7
0重量%である。SiO2の含有量が75重量%を越え
るとガラスを調製するための溶融温度が高くなりすぎ、
また高温でガラスを調製できたとしてもそのガラスの焼
成温度が高くなる。一方、55重量%以下では酸溶解量
が大きくなりすぎる。
【0025】また、酸化アルミニウム(Al23換算)
の好適な含有量は2〜20重量%であり、より好ましく
は5〜15重量%である。Al23の含有量が20重量
%を越えるとガラスの高温粘性が高くなるため焼成温度
が高くなり、2重量%以下では酸溶解量が大きくなりす
ぎる。
【0026】また、酸化ホウ素(B23換算)の含有量
は5〜25重量%が好適であり、より好ましくは8〜2
0重量%である。B23の含有量が25重量%を越える
と酸溶解量が大きくなりすぎ、5重量%以下ではガラス
を調製するための溶融温度が高くなりすぎ、また高温で
ガラスを調製できたとしてもその焼成温度が高くなる。
更に、アルカリ金属酸化物としては、熱膨張係数の点
から酸化リチウム(Li2O換算)および/又は酸化ナ
トリウム(Na2O換算)が好適である。これらの合計
含有量は3〜15重量%が好適であり、より好ましくは
5〜12重量%である。Li2O+Na2Oの含有量が1
5重量%を越えると熱膨張係数が大きくなると同時に酸
溶解量が大きくなりすぎ、5重量%以下ではガラスを調
製するための溶融温度が高くなりすぎ、また高温でガラ
スを調製できたとしてもその焼成温度が高くなる。特
に、熱膨張係数を低く抑えるためには、Li2Oを3重
量%以上含むことが好ましい。
【0027】上記ボロシリケートガラスには、酸化カル
シウム、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛からなる群よ
り選ばれた少なくとも一種の2価金属酸化物を加えるこ
とにより、焼成温度の低下、焼成体中の気泡の減少等を
図ることができる。該2価金属酸化物の含有量は、ガラ
スを構成する全成分を100重量%として、20重量%
以下であることが好ましい。含有量が20重量%を越え
ると熱膨張係数が高くなり、また酸溶解量が大きくなり
すぎる場合がある。
【0028】更に該ボロシリケートガラスには、上記物
性に悪影響のない範囲において、更に各種金属酸化物を
含有させることが可能である。これら金属酸化物を例示
すれば、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リ
ン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化
鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅等の遷移金属
酸化物、酸化ランタン等のランタノイド酸化物、酸化
錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウ
ム、酸化タンタル等を挙げることができる。これらの金
属酸化物の中でも、特に酸化チタンを含有させることに
より、ボロシリケートガラスに容易にオパール性を付与
することができる。酸化チタンの好適な含有量は0.1
〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%で
ある。この場合、酸化チタンは結晶析出のための核形成
剤として用いられるが、この酸化チタンに加え酸化ジル
コニウムを含有させることは、微結晶の制御をより容易
なものとするため、好ましい態様である。
【0029】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物に
用いる高温焼成ガラス粉末の好ましい組成を例示すれ
ば、SiO2が60〜75重量%、より好ましくは61
〜88重量%、Al23が5〜20重量%、より好まし
くは5〜15重量%、B23が10〜20重量%、より
好ましくは10〜17重量%、Li2OとNa2Oの合計
量が3〜12重量%、より好ましくは4〜10重量%で
あり、好ましくはLi2Oが2重量%以上である。更に
酸化チタン等の前記他の成分を、必要に応じて例えば1
〜5重量%加えることができる。
【0030】低温焼成ガラス粉末の好ましい組成を例示
すれば、SiO2が55〜65重量%、より好ましくは
61〜65重量%、Al23が2〜15重量%、より好
ましくは5〜12重量%、B23が12〜25重量%、
より好ましくは12〜20重量%、Li2OとNa2Oの
合計量が5〜15重量%、より好ましくは6〜12重量
%であり、好ましくはLi2Oが3重量%以上である。
更に酸化チタン等の前記他の成分を、必要に応じて例え
ば1〜5重量%加えることができる。
【0031】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物に
用いられる各種ガラス粉末の製造方法は特に限定され
ず、公知の方法を採用することが可能である。代表的な
製造方法を例示すれば、次のような方法を挙げることが
できる。
【0032】先ず上記ガラス粉末の各構成成分の供給源
となるガラス原料をV型混合機、ボールミル等を用いて
混合した後、るつぼに混合原料を充填し、電気炉を用い
て1300℃〜1600℃で加熱溶融する。ついで溶融状態のガ
ラスを、空気中で徐冷または水中で急冷してガラスを得
る。このガラスを再度溶融、冷却することも均一なガラ
スを得るために好ましい方法である。
【0033】得られたガラスをガラス粉末に粉砕する方
法は特に限定されず、公知の粉砕方法を採用することが
できる。一般的な粉砕装置を例示すれば、ジョークラッ
シャー、コーンクラッシャー等の圧縮粉砕機、振動ボー
ルミル、遊星ミル等のボールミル類、塔式粉砕機、攪拌
槽型粉砕機、アニュラー型粉砕機等の媒体攪拌型粉砕
機、ピンミル、ディスクミル等の高速回転式衝撃粉砕
機、その他ロールミル、ジェット粉砕機、自生粉砕機等
が挙げられる。また分級方法も特に限定される事はな
く、公知の分級方法が採用され得る。一般的な分級装置
を例示すれば、振動ふるい、シフター等のふるい分級
機、サイクロン等の遠心式分級機、沈降分級機等の湿式
分級機等が挙げられる。
【0034】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物に
用いられるガラス粉末の基となるガラスを製造するため
の原料は特に限定されない。以下、各構成成分の供給源
となるガラス原料を具体的に例示する。
【0035】二酸化珪素の原料としては、珪砂(SiO2)が
一般に用いられる。
【0036】酸化アルミニウムの原料としては、アルミ
ナ(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、ソーダ長石
(Na2OAl2O36SiO2)、灰長石(CaOAl2O32SiO2)、カオリン
(Al2O32SiO22H2O)、ペタライト(Li2OAl2O38SiO2)、スポ
ジュメン(Li2OAl2O34SiO2)等が挙げられる。
【0037】酸化ホウ素の原料としては、無水ホウ酸(B
2O3)、無水ホウ砂(Na2B4O7)等が挙げられる。
【0038】酸化ナトリウムの原料としては、ソーダ灰
(Na2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH),硫酸ナトリウム(Na
2SO4)、硝酸ナトリウム(Na2NO3)等を用いることができ
る。
【0039】酸化リチウムの原料としては、炭酸リチウ
ム(Li2CO3)、水酸化リチウム(LiOH),硫酸リチウム(LiSO
4)、硝酸リチウム(LiNO3)等を用いることができる。
【0040】酸化チタンの原料としては、通常酸化チタ
ンが用いられるが、ルチル型、アナターゼ型いずれの結
晶形態を用いることも可能である。
【0041】酸化ジルコニウムの原料としては、バッデ
ライト(ZrO2)、酸化ジルコニウム等を用いることがで
きる。
【0042】尚、これらガラス原料の混合比は、最終的
に得られるガラス組成を勘案し、あらかじめ計算により
決定しうる。
【0043】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物に
各種無機顔料を混合し、その色調の調製並びに透明性の
制御を行うことは一般的である。これにより、デンチ
ン、エナメル、切端、歯頸部など歯牙の各部に相当する
色調並びに透明性を付与し、これらを複層に築盛するこ
とにより、自然観の良好な色調を再現することが可能と
なる。上記目的に使用される無機顔料として代表的なも
のを例示すれば、バナジウム黄、コバルト青、クロムピ
ンク、鉄クロム茶、チタン白等が挙げられる。
【0044】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物の
使用方法は特に限定されず、公知の方法を採用すること
ができる。一般的には、本陶材組成物を水で練和してス
ラリー状の練和泥を調製し、次いでコアとなるセラミッ
クス上に該練和泥を築盛し、その後陶材組成物の焼成温
度にて焼成することで、シェルを被覆した人工歯が形成
される。この時、水の替わりに陶材組成物に近似した屈
折率の練和液を用いることは、練和泥が半透明となり、
焼成後の色調予測が容易となる点で好ましい方法であ
る。
【0045】本発明の陶材組成物を焼成してなるシェル
の熱膨張係数は4.0×10-6〜7.5×10−6/℃
であることが好ましい。熱膨張係数がこの範囲を外れる
と、コアとなるセラミックスとの熱膨張係数の差が大き
くなりすぎ、シェルに亀裂が入る、或は経時的にコアと
シェルの間に熱応力が集中して剥離する等の不都合を生
じる可能性がある。尚、シェルの熱膨張係数はガラスの
組成に依存するが、その関係については前述の通りであ
る。更に、シェルの酸溶解量が1.0wt%以下である
ことが好ましい。1.0wt%を越えると、長期に亘っ
て使用した場合、色調変化や透明性低下が生じ審美性の
観点から好ましくない。
【0046】
【発明の効果】本発明のセラミックス歯冠用陶材組成物
は焼成温度が低く、この組成物を焼成して得られるセラ
ミックス歯冠用シェルは、強度および透明性が高く、且
つ低膨張であり化学的耐久性に優れる。このため天然歯
様の自然感に富み、且つ耐久性の高い人工歯の作製を可
能とする。
【0047】
【実施例】以下本発明を具体的に説明するため実施例を
挙げるが、本発明はこの実施例により何等制限されるも
のではない。尚、実施例中に示した焼成温度、熱膨張係
数、酸溶解量、強度および透明性の評価方法は以下の通
りである。
【0048】(1)焼成温度 ガラス粉末または陶材組成物を水と練和し、厚さ2m
m、直径10mmの孔を有するモールドにコンデンスを
行いながら充填し、成形体を作製した。この成形体をポ
ーセレンファーネスTDFシグマ120(トクヤマ社
製)を用い、600℃の炉下で5分間乾燥した後、ガラ
ス組成より適宜予測した焼成温度付近において、10℃
間隔にて真空焼成した。600℃からの昇温速度は50
℃/min、焼成温度での保持時間は2分間とした。焼
成体を観察し、全体が完全に焼結して半透明となり、且
つ表面は完全に溶融することなく陶材粒子による凹凸が
わずかに観察された時の焼成温度を、ガラス粉末または
陶材組成物の焼成温度とした。
【0049】(2)熱膨張係数 陶材組成物を水と練和し、4mm×4mm×12mmの
穴を有するモールドにコンデンスを行いながら充填し、
成形体を作製した。この成形体を、ポーセレンファーネ
スTDFシグマ120(トクヤマ社製)を用い、600
℃の炉下で5分間乾燥した後、(1)で測定した焼成温
度付近にて2分間真空焼成した。600℃からの昇温速
度は50℃/minとした。焼成体を3mm×3mm×
10mmの直方体に研磨して測定試料とし、熱分析装置
TMA120(セイコー電子社製)にて室温から500
℃まで加熱し、熱膨張係数を測定した。 (3)酸溶解量 6gの陶材組成物を水と練和し、コンデンスを行いなが
ら厚さ約10mmの塊状に成形した。この成形体を、ポ
ーセレンファーネスTDFシグマ120(トクヤマ社
製)を用い、600℃の炉下で5分間乾燥した後、
(1)で測定した焼成温度付近にて5分間真空焼成し
た。600℃からの昇温速度は50℃/minとした。
焼成体をアルミナ乳鉢にて粗粉砕した後、メッシュのふ
るいを通過し、メッシュのふるいを通過しない成分を回
収した。この成分3gを採取し、0.01規定の硝酸水
溶液100mlに浸漬して1時間煮沸した。ガラスを濾
過により液から分離後、100℃にて15時間乾燥後秤
量した。酸溶解量は下記式(1)により算出した。
【0050】
【数1】
【0051】(4)強度 陶材組成物を水と練和し、4mm×4mm×28mmの
穴を有するモールドにコンデンスを行いながら充填し、
成形体を作製した。この成形体を、ポーセレンファーネ
スTDFシグマ120(トクヤマ社製)を用い、600
℃の炉下で5分間乾燥した後、(1)で測定した焼成温
度付近にて5分間真空焼成した。600℃からの昇温速
度は50℃/minとした。焼成体を3mm×3mm×
20mmの直方体に研磨して測定試料とし、万能試験機
オートグラフ(島津製作所社製)を用い、支点間距離2
0mm、クロスヘッドスピード1mmにて3点曲げ強度
を測定した。
【0052】(5)透明性 陶材組成物を水と練和し、厚さ2mm、直径10mmの
孔を有するモールドにコンデンスを行いながら充填し、
成形体を作製した。この成形体をポーセレンファーネス
TDFシグマ120(トクヤマ社製)を用い、600℃
の炉下で5分間乾燥した後、陶材組成物の焼成温度にて
真空焼成した。600℃からの昇温速度は50℃/mi
n、焼成温度での保持時間は2分間とした。焼成体の両
面を#120と#800の耐水研磨紙にて研磨し、厚さ
を1mmとした。色差計(TC−1500MC、東京電
色社製)により三刺激値のひとつであるY値を測定し
た。この時、試料の裏側に標準白色板(X=81.2、
Y=82.7、Z=93.8)を置いた場合のY値(以下
Ywとする)と、試料の裏側に標準黒色板(X=0.
1、Y=0.1、Z=0.2)を置いた場合のY値(以下
Ybとする)を測定し、コントラスト比を下記式(2)
により算出した。
【0053】
【数2】
【0054】透明性は、上式で得られたコントラスト比
を用い、下記式(3)により算出した。
【0055】
【数3】
【0056】透明性は0から1の範囲で変化し、その値
が大きい程透明性の高いことを示す。
【0057】(6)平均粒子径 ガラス粉末を水に懸濁し、粒度分布計(マスターサイザ
ー、Malvern社製)にて粒度分布を測定し、50%体積
粒径をこの粉末の平均粒子径とした。
【0058】製造例1 二酸化珪素(試薬特級、和光純薬社製)31.5g、水
酸化アルミニウム(試薬特級、関東化学社製)9.18
g、酸化ホウ素(試薬特級、和光純薬社製)8.50
g、炭酸リチウム(試薬特級、和光純薬社製)7.42
g、炭酸ナトリウム(試薬特級、和光純薬社製)2.5
6gを秤量後、乾式で混合した後、混合物を1500℃
にて15分間溶融後、ステンレス板上に流し出して冷却
した。得られた粗ガラスをアルミナ乳鉢にて粉砕後、1
500℃にて15分間再溶融し、ステンレス板上に流し
て冷却し、均一なガラスを得た。このガラスをアルミナ
製乳鉢で粉砕し、ガラス粉末1を得た。ガラス粉末1の
焼成温度は680℃、屈折率は1.526であった。ガ
ラス原料の仕込組成を、各々酸化物に換算して表1に示
した。
【0059】製造例2〜13 製造例1と同様の方法により、組成の異なるガラス粉末
2〜11を製造した。原料仕込組成(酸化物換算)、並
びに得られたガラス粉末の焼成温度および屈折率をまと
めて表1に示す。尚、製造例4以下の、ZrO2源として酸
化ジルコニウム(EP、第一希元素化学社製)を、TiO2
源として酸化チタン(タイペークA−100、石原産業
社製)を用いた以外は、製造例1と同じ原料を使用し
た。
【0060】
【表1】
【0061】実施例1 製造例5で得られた「ガラス粉末5」を200メッシュ
のふるいにかけ、通過した成分を回収した。この粉末を
水に投入して懸濁液とし、攪拌後2分間静置して沈降分
を回収した粉末を高温焼成ガラスとした。このガラスの
平均粒子径は55.9μmであった。一方、製造例2で
得られた「ガラス粉末2」を200メッシュのふるいに
かけ、通過した成分を回収し、低温焼成ガラスとした。
このガラスの平均粒径は42.9μmであった。この高
温焼成ガラスと低温焼成ガラスを重量比4:6の割合で
混合し、セラミックス歯冠用陶材組成物を得た。この陶
材組成物の焼成温度は710℃、透明性は0.69、熱
膨張係数は5.2×10-6、酸溶解量は0.24wt%で
あった。結果を表2に示す。
【0062】またディオプサイド結晶化ガラスを用いて
前歯部クラウンのコアを作製し、その上にこの陶材組成
物と水とを練和して調製した練和泥を築盛し710℃に
て焼成した所、シェル表面でのひび、シェルとコアとの
剥離等は観察されず、良好な焼き付きを示した。この焼
成体を石膏模型に戻して適合性を調べた所適合性は良好
であり、陶材の焼付けによる変形は観察されなかった。
【0063】実施例2〜11、比較例1〜5 実施例1と同様の方法に従い、表2に示す単独または複
数のガラス粉末を用いてセラミックス歯冠用陶材組成物
を調製し、試験を行った。結果を表2に示す。
【0064】尚、実施例6および7の高温焼成ガラス
は、まず280メッシュのふるい通過成分を回収し、そ
の後実施例1と同様の処理をして調製した。実施例6お
よび7の高温焼成ガラスの平均粒子径は、各々42.5
μm、43.8μmであった。
【0065】
【表2】
【0066】実施例1〜3は焼成温度の高いガラスと低
いガラスの配合比を変化させた場合であるが、いずれに
おいても、良好な透明性、熱膨張係数並びに酸溶解量が
得られた。
【0067】実施例4〜6は焼成温度の差を変化させた
場合であるが、いずれにおいても良好な透明性、熱膨張
係数並びに酸溶解量が得られた。
【0068】また、比較例5の陶材組成物をディオプサ
イドコア上に820℃にて焼き付け、その焼成体を石膏
模型に戻して適合性を調べた所、適合性は不良であっ
た。この原因は、陶材の焼付け時に生じたコアの熱変形
によるものと思われた。実施例1〜11についても、同
様にして適合性を調べた所、いずれも良好であり変形は
認められなかった。
【0069】実施例7、8は低い焼成温度の陶材組成物
を、実施例9は高い焼成温度の陶材組成物を試作したも
のであるが、いずれにおいても良好な透明性、熱膨張係
数並びに酸溶解量が得られた。
【0070】実施例10、11は焼成温度の異なる三種
類のガラスを用いた場合であるが、いずれにおいても良
好な透明性、熱膨張係数並びに酸溶解量が得られた。
【0071】比較例1は一種類のガラスを用いた場合で
あり、透明性が不良であった。
【0072】比較例2は焼成温度の差が大きい二種のガ
ラスを用いた場合であり、透明性が不良であった。
【0073】比較例3は焼成温度の近い二種類のガラス
を用いた場合であり、透明性が不良であった。
【0074】比較例4は焼成温度の低い陶材組成物を試
作した場合であり、酸溶解量が不良であった。
【0075】比較例5は焼成温度の高い陶材組成物を試
作した場合であり、陶材焼成時のコアの熱変形によると
思われる適合性の不良が観察された。
【0076】比較例6は焼成温度の低い陶材組成物を試
作した場合であり、熱膨張係数、酸溶解量が不良であっ
た。この陶材をディオプサイドコア上に630℃にて焼
き付けたところ、陶材表面に無数の亀裂が発生した。こ
の原因は、コアとシェルの熱膨張係数の差によるもの推
測される。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼成温度の異なる少なくとも二種のガラ
    ス粉末を含んでなるセラミックス歯冠用陶材組成物であ
    って、組成物中最も高い焼成温度を有するガラス粉末と
    最も低い焼成温度を有するガラス粉末との焼成温度差が
    20〜100℃であり、且つ当該陶材組成物の焼成温度
    が650〜800℃である前記セラミックス歯冠用陶材
    組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のセラミックス歯冠用陶材
    組成物を焼成してなるセラミックス歯冠用シェル。
  3. 【請求項3】 熱膨張係数が4.0×10-6〜7.5×1
    -6/℃、酸溶解量が1.0wt%以下である請求項2
    記載のセラミックス歯冠用シェル。
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