JPH1153952A - 低臭気性自己融着性マグネットワイヤ - Google Patents

低臭気性自己融着性マグネットワイヤ

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JPH1153952A
JPH1153952A JP22569197A JP22569197A JPH1153952A JP H1153952 A JPH1153952 A JP H1153952A JP 22569197 A JP22569197 A JP 22569197A JP 22569197 A JP22569197 A JP 22569197A JP H1153952 A JPH1153952 A JP H1153952A
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(57)【要約】 【課題】 熱風または通電加熱による接着時に融着皮膜
中から発生する残留溶剤と臭気の低減を図り、またDY
コイル巻線後の変形がない低臭気性自己融着性マグネッ
トワイヤを提供する。 【解決手段】 塗膜形成機能を有する多成分共重合ポリ
アミド樹脂100重量部に対して、フェノール樹脂5〜
30重量部および滑剤を配合し、全溶剤量の5〜20%
がアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルア
ルコール、またはオクチルアルコールからなるアルコー
ル系溶剤で,これ以外はクレゾール,キシレン主成分の
芳香族有機溶剤からなる混合有機溶剤に溶解した融着塗
料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介して塗布,
焼付けて低臭気性自己融着性マグネットワイヤとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自己融着性マグネットワ
イヤに関する。更に詳しくは、偏向ヨーク(DY)コイ
ルを製造するのに好適で、コイル成型時あるいは製品実
装時に発生する臭気および残留溶剤量が少なく、更にD
Yコイル巻線後の変形がない低臭気性自己融着性マグネ
ットワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド樹脂を主成分とし、これにフ
ェノール樹脂等を配合し、その溶剤として、クレゾー
ル,キシレン主成分の芳香族有機溶剤を使用した融着塗
料を導体上に直接、または他の絶縁被覆を介して塗布,
焼付けた熱溶融型の自己融着性マグネットワイヤはDY
コイル等に広く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】DYコイルの製造に際
しては、自己融着性マグネットワイヤを熱風による加
熱、または通電による加熱により接着し、所定のDYコ
イル形状に成型している。しかしながら、この加熱処理
時にワイヤの皮膜,特に融着皮膜中の残留溶剤が大気中
に揮発、拡散するので環境に好ましくない。そのため、
残留溶剤の大気中への拡散量を減らして環境を改善する
必要が出てきた。また、DYコイル巻線後の変形も問題
となっていた。
【0004】本発明は上記従来技術が有する各種問題点
を解決するためになされたもので、熱風または通電加熱
による接着時に融着皮膜中から発生する残留溶剤と臭気
の低減を図り、またDYコイル巻線後の変形がない低臭
気性自己融着性マグネットワイヤを提供することを目的
とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1の観点として本発明
は、塗膜形成機能を有する多成分共重合ポリアミド樹脂
(以下、多成分共重合ポリアミド樹脂と略記する)10
0重量部に対して、フェノール樹脂5〜30重量部およ
び滑剤を配合し、全溶剤量の5〜20%がアルコール系
有機溶剤(以下、アルコール系溶剤と略記する)で,こ
れ以外はクレゾール,キシレン主成分の芳香族有機溶剤
(以下、クレゾール,キシレン溶剤と略記する)からな
る混合有機溶剤(以下、混合溶剤と略記する)に溶解し
た融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介し
て塗布,焼付けた低臭気性自己融着性マグネットワイヤ
にある。
【0006】前記多成分共重合ポリアミド樹脂は、本発
明の融着塗料(および融着皮膜)の主成分樹脂として用
いられ、溶融温度が160〜180℃,平均分子量が3
万〜10万の範囲で非晶性の分子構造を有し,ナイロン
12を主成分とした多成分共重合ポリアミド樹脂であ
る。その具体例としては、プラタボンドB409,MX
1178,H1186(日本リルサン社商品名)等が挙
げられる。これらの多成分共重合ポリアミド樹脂は各成
分の組合せにより任意に異なる溶融温度が得られ、接着
性も優れている。
【0007】前記フェノール樹脂は融着塗料の粘度及び
融着皮膜の流れ調製剤として不可欠であり、融着皮膜の
速乾性、耐久性、耐薬品性を向上させる。このフェノー
ル樹脂の具体例としては、KB5006(旭有機材工業
社商品名)、ヒタノール1133(日立化成社商品名)
等が挙げられる。また、滑剤は融着皮膜の滑り性の向上
のための添加するもので、例えばシーノックス(シプロ
化成社商品名)が挙げられる。
【0008】また、前記多成分共重合ポリアミド樹脂1
00重量部に対するフェノール樹脂の添加量を5〜30
重量部と限定した理由は、限定重量部未満では添加によ
る効果が認められず、また限定重量部を超えるとフェノ
ール樹脂から発生する臭気の増加と接着性への悪影響が
顕著になってくるためである。
【0009】また、前記混合溶剤に於いて、アルコール
系溶剤を全溶剤量の5〜20%と限定した理由は、5%
未満のときは添加の効果がないためであり、また20%
を超えるとワニスの安定性が悪くなるためである。
【0010】第2の観点として本発明は、多成分共重合
ポリアミド樹脂100重量部に対して、フェノール樹脂
5〜30重量部および滑剤を配合し、全溶剤量の10〜
30%がアルコール系溶剤と芳香族有機溶剤のトルエン
(以下、トルエンと略記する)との合計で,これ以外は
クレゾール,キシレン溶剤からなる混合有機溶剤に溶解
した融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介
して塗布,焼付けた低臭気性自己融着性マグネットワイ
ヤにある。
【0011】前記第2の観点の混合溶剤に於いて、アル
コール系溶剤とトルエンとの合計を全溶剤量の10〜3
0%と限定した理由は、10%未満のときは添加の効果
がないためであり、また30%を超えるとワニスの安定
性が悪くなるためである。
【0012】第3の観点として本発明は、前記アルコー
ル系溶剤がアミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘ
プチルアルコール、またはオクチルアルコールである低
臭気性自己融着性マグネットワイヤにある。
【0013】
【作用】本発明の自己融着性マグネットワイヤの製造に
用いられる第1または第2の観点の融着塗料は、全溶剤
量の5〜20%のアルコール系溶剤とクレゾール,キシ
レン溶剤とからなる混合溶剤、または全溶剤量の10〜
30%がアルコール系溶剤とトルエンとの合計で,これ
以外はクレゾール,キシレン溶剤からなる混合溶剤に溶
解した塗料であり、室温においても相溶性が優れてお
り、透明で安定した融着塗料となる。
【0014】また、前記第1または第2の観点の融着塗
料を塗布,焼付した本発明の第1または第2の観点の低
臭気性自己融着性マグネットワイヤは、従来の自己融着
性マグネットワイヤよりも融着皮膜中の残留溶剤量の低
下が図られ、臭気の低減が可能となる。また、本発明の
自己融着性マグネットワイヤは、融着皮膜中の残留溶剤
量が低下しているので、DYコイルに巻線後、熱処理及
び湿熱処理後のコイルの寸法変化が無く,DYコイルは
変形しなくなる。
【0015】また、前記第1または第2の観点の自己融
着性マグネットワイヤに用いる融着塗料のアルコール系
溶剤としては、アミルアルコール、ヘキシルアルコー
ル、ヘプチルアルコール、またはオクチルアルコールが
好ましく用いられる。
【0016】
【実施例】以下に本発明の内容を実施例を用いて詳細に
説明する。なお本発明は本実施例に限定されるものでは
ない。表1は実施例1〜7および比較例1,2の自己融
着性マグネットワイヤの製造に用いる融着塗料の配合組
成,並びにワニスの安定性を示す表、表2は前記表1の
各融着塗料より製造された実施例1〜7および比較例
1,2の自己融着性マグネットワイヤの一般特性表、表
3は前記各実施例および比較例の自己融着性マグネット
ワイヤの残留溶剤量とDY巻線時の臭気の有無を示す
表、また表4はDYコイルの寸法変化の有無を示す表で
ある。
【0017】表1のワニスの安定性は、前記各実施例お
よび比較例の融着塗料を製造後、常温に1週間放置して
塗料のゲル化の有無を確認したものであり、ゲル化しな
い塗料を「良」,「可」とし、またゲル化する塗料を
「不可」としたものである。なお、「不可」の融着塗料
はゲル化をしていない状態で自己融着性マグネットワイ
ヤの製造に使用している。
【0018】実施例1〜4 攪拌機、温度計及び冷却管を取り付けた2000mlの
セパラブル丸底フラスコに、表1の配合組成表に従って
クレゾール,キシレン溶剤663.0 gとアルコール系溶剤
73.7gを入れ、プラタボンドMX1178(多成分共重
合ポリアミド樹脂)100.0 gを投入し、60〜80℃の
温度で3時間攪拌して樹脂を溶解した後、更にヒタノー
ル1133(フェノール樹脂)30.0gとシーノックス
(滑剤)3.9 gを投入して溶解し濃度15%の融着塗料
を調製した。
【0019】実施例5 前記実施例1と同様のセパラブル丸底フラスコに、表1
の配合組成表に従ってクレゾール,キシレン溶剤590.0
gとアルコール系溶剤のヘキシルアルコール73.5gとト
ルエン73.5gを入れ、プラタボンドMX1178 100.
0 gを投入し、60〜80℃の温度で3時間攪拌して樹
脂を溶解した後、更にヒタノール1133 30.0 gとシ
ーノックス3.9 gを投入して溶解し濃度15%の融着塗
料を調製した。
【0020】実施例6 前記実施例1と同様のセパラブル丸底フラスコに、表1
の配合組成表に従ってクレゾール,キシレン溶剤590.0
gとアルコール系溶剤のアミルアルコール147.0 gを入
れ、プラタボンドMX1178 100.0gを投入し、60
〜80℃の温度で3時間攪拌して樹脂を溶解した後、更
にヒタノール1133 30.0 gとシーノックス 3.9gを
投入して溶解し濃度15%の融着塗料を調製した。
【0021】実施例7 前記実施例1と同様のセパラブル丸底フラスコに、表1
の配合組成表に従ってクレゾール,キシレン溶剤590.0
gとアルコール系溶剤のヘキシルアルコール147.0 gを
入れ、プラタボンドMX1178 100.0gを投入し、6
0〜80℃の温度で3時間攪拌して樹脂を溶解した後、
更にヒタノール1133 30.0 gとシーノックス 3.9g
を投入して溶解し濃度15%の融着塗料を調製した。
【0022】比較例 比較例1 前記実施例1と同様のセパラブル丸底フラスコに、表1
の配合組成表に従ってクレゾール,キシレン溶剤870.0
gを入れ、プラタボンドMX1178 100.0gを投入
し、60〜80℃の温度で3時間攪拌して樹脂を溶解し
た後、更にヒタノール1133 30.0 gとシーノックス
3.9gを投入して溶解し濃度15%の融着塗料を調製し
た。
【0023】比較例2 前記実施例1と同様のセパラブル丸底フラスコに、表1
の配合組成表に従ってクレゾール,キシレン溶剤663.0
gとシクロヘキサノン73.7 gを入れ、プラタボンドMX
1178 100.0gを投入し、60〜80℃の温度で3時
間攪拌して樹脂を溶解した後、更にヒタノール1133
30.0 gとシーノックス 3.9gを投入して溶解し濃度1
5%の融着塗料を調製した。
【0024】
【表1】
【0025】自己融着性マグネットワイヤの製造 前記実施例1〜7および比較例1,2の融着塗料を、導
体径0.300 mm, 絶縁外径0.320 mmのポリアミドイミド絶
縁電線の外周にダイスを用いて5 回掛けで塗布,焼付
し、仕上外径0.337 mmの自己融着性マグネットワイヤを
製造した。このワイヤの焼付は炉温360℃,線速45
m/min で行った。
【0026】特性試験 前記により得られた実施例1〜7および比較例1,2の
自己融着性マグネットワイヤについて、JIS C 3003 エ
ナメル銅線及びエナメルアルミニウム線試験方法に基づ
いて特性試験を行った。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】上記表2より明らかなように、本発明実施
例1〜7の低臭気性自己融着性マグネットワイヤの一般
特性は良好なことが分かる。
【0029】残留溶剤量と臭気の有無試験 前記実施例1〜7及び比較例1,2の自己融着性マグネ
ットワイヤについて、各ワイヤより一定長の試料を採取
し、ガスクロマトグラフを使用して残留溶剤量を測定し
た。また、実施例及び比較例の各ワイヤをDYコイルに
巻線し、巻線時に発生する臭気の有無を調べた。それら
の結果を下記表3に示す。なお、臭気については、臭気
官能試験による5段階評価で行ない、感じる強さが違う
場合でも僅かに臭気があれば「臭気あり」、全く臭気が
ない場合を「臭気なし」とした。
【0030】
【表3】
【0031】上記表3より明らかなように、本発明実施
例1〜7の低臭気性自己融着性マグネットワイヤは残留
溶剤量が1700ppm 以下であり、比較例1,2のワイヤの
残留溶剤量と比較して大幅に減少していることが分か
る。また本発明実施例の各ワイヤは、DYコイルに巻線
時に発生する臭気が無いことが分かる。
【0032】DYコイルの寸法変化試験 前記実施例1〜7および比較例1,2のワイヤを使用し
てDYコイルとし、熱処理及び湿熱処理によるコイルの
寸法の変化を試験した。その試験結果を下記表4に示
す。
【0033】
【表4】
【0034】上記表4より明らかなように、本発明実施
例1〜7の低臭気性自己融着性マグネットワイヤを使用
したDYコイルは、熱処理及び湿熱処理後に於いてもコ
イル寸法の変化が無く、変形しないことが分かる。
【0035】
【発明の効果】本発明の低臭気性自己融着性マグネット
ワイヤは、表3に示す特性より明らかなように、従来の
自己融着性マグネットワイヤよりも皮膜中の残留溶剤量
が少ない。従って、コイル成型時又は製品実装時の悪臭
発生の防止に寄与するため、作業環境改善に優れた効果
を示すところ極めて大である。更に、DYコイル加工後
についても、表4より明らかなように、従来の自己融着
性マグネットワイヤを使用した時と較べてコイルの変形
を抑制する優れた効果を示す。従って、産業上に寄与す
る効果は極めて大である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塗膜形成機能を有する多成分共重合ポリ
    アミド樹脂100重量部に対して、フェノール樹脂5〜
    30重量部および滑剤を配合し、全溶剤量の5〜20%
    がアルコール系有機溶剤で,これ以外はクレゾール,キ
    シレン主成分の芳香族有機溶剤からなる混合有機溶剤に
    溶解した融着塗料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜
    を介して塗布,焼付けたことを特徴とする低臭気性自己
    融着性マグネットワイヤ。
  2. 【請求項2】 塗膜形成機能を有する多成分共重合ポリ
    アミド樹脂100重量部に対して、フェノール樹脂5〜
    30重量部および滑剤を配合し、全溶剤量の10〜30
    %がアルコール系有機溶剤と芳香族有機溶剤のトルエン
    との合計で,これ以外はクレゾール,キシレン主成分の
    芳香族有機溶剤からなる混合有機溶剤に溶解した融着塗
    料を導体上に直接、または他の絶縁皮膜を介して塗布,
    焼付けたことを特徴とする低臭気性自己融着性マグネッ
    トワイヤ。
  3. 【請求項3】 前記アルコール系有機溶剤がアミルアル
    コール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、ま
    たはオクチルアルコールであることを特徴とする請求項
    1または2記載の低臭気性自己融着性マグネットワイ
    ヤ。
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CN101818023A (zh) * 2010-04-23 2010-09-01 广东省石油化工研究院 耐高温热粘合漆包线漆及其制备方法

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