【発明の詳細な説明】
薬剤活性を有するフェノール誘導体
発明の背景
本発明は、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニストであ
る神経保護薬(3R,4S)−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒド
ロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4,7−ジオールのプロドラッグに
関する。本発明は、更に、本明細書中に記載のプロドラッグの使用方法およびそ
れらを含有する薬剤組成物に関する。プロドラッグは、受容者(例えば、ヒト)
の体内で別の生物学的に活性な化学種に変換されるまで、固有の生物学的活性が
ほとんどまたは全くない化合物である。いくつかの経路(経口、非経口または肛
門など)のいずれかによる受容者への供給で、プロドラッグは、所望の生物学的
活性を有する新規化合物(親薬物)に変換される。プロドラッグの親薬物への変
換は、体内の様々な場所(例えば、腸壁、肝、腎、血液等)でおよび多数の機序
(例えば、酵素加水分解、酸化的代謝等)のいずれかによって起こりうる。
プロドラッグは、親薬物の様々な制限を克服するのに有用でありうる。例えば
、親薬物は、他の望ましい投与経路で供給された場合、許容しうる生物学的利用
能がないことがありうる。親薬物は、有効な療法を阻害する過度に速い速度で体
内から薬物を有効に除去する広範な一次通過代謝を経ることがある。親薬物は、
不充分な溶解性または安定性などの望ましくない物理的性質を有することがある
し、または親薬物の製剤化を難しくする若しくは投与するのに費用がかかる他の
性質を有することがある。いくつかの場合、プロドラッグはより容易に合成する
ことができる。
適当な受容者に対していったん投与されたら、本発明のプロドラッグは、上記
の機序の一つまたはそれ以上によって(3R,4S)−3−[4−(4−フルオ
ロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4,7−ジ
オール(親クロマノール)に変換される。本発明のプロドラッグは、上記のよう
な親薬物に関係した制限の一つまたはそれ以上を含めた親クロマノールの制限を
克服する。特に、本発明のプロドラッグは、親クロマノールよりも溶液中で安定
であり、その結果として、静脈内投与に適している。
親クロマノールはNMDAアンタゴニストであり、そしてそれ自体が、頭部外
傷、発作、並びにアルツハイマー病、ハンティングトン病、パーキンソン病およ
びNMDA受容体を遮断することによって緩和される他の状態などのCNS変性
疾患の治療において有用である。
NMDAアンタゴニストは、受容体分子上のグルタミン酸結合部位または他の
部位と相互作用することによってNMDA受容体を遮断する化合物である。NM
DAグルタミン酸受容体に対して競合的に結合する具体的な化合物の能力は、放
射性リガンド結合検定を用いて評価することができる。マーフィー(Murphy)ら
,British J.Pharmacol.95,932-938(1988)を参照されたい。アンタゴニストは、
ラット皮質ウェッジ検定を用いてアゴニストと区別することができる。ハリソン
(Harrison)およびシモンズ(Simmonds),British J.Pharmacol.,84,381-391(
1984)を参照されたい。競合的NMDAアンタゴニストの例としては、D−2−
アミノ−5−ホスホノペンタン酸(D−AP5)およびD−2−アミノ−7−ホ
スホノヘプタン酸、シェープ(Schoepp)ら,J.Neur.Transm.,85,131-143(1991)
がある。
NMDA受容体での神経伝達のアンタゴニストは、神経学的疾患の治療に有用
な治療薬である。米国特許第4,902,695号は、てんかん、発作、不安、大脳虚血
、筋痙攣、並びにアルツハイマー病およびハンティングトン病などの神経変性疾
患を含めた神経学的疾患の治療に有用な一連の競合的NMDAアンタゴニストに
関する。米国特許第4,968,878号は、同様の神経学的疾患および神経変性疾患の
治療に有用な第二の一連の競合的NMDA受容体アンタゴニストに関する。米国
特許第5,192,751号は、競合的NMDAアンタゴニストの使用による尿失禁の治
療方法を提供する。
NMDAアンタゴニストはまた、抗痙攣、抗不安、筋弛緩および抗精神病活性
を有する有用な治療薬である。J.レーマン(Lehmann),The NMDA Receptor,D
rug of the Future,14(11),1059(1989)。NMDAアンタゴニストはまた、片頭
痛(Can.J.Neurol.Sci.,19(4),487(1992));薬物嗜癖(Science,251,85(1991)
)
;およびAIDSに関連した神経精神医学的疾患(PIPS,11,1,(1990))を治療す
るのに有効であると報告されてきた。
発明の概要
本発明は、式
(式中、Rは、C1−C6アルキル、C4−C8シクロアルキル、R1C(O)−ま
たはR1OC(O)−であり;そして
R1は、C1−C6アルキル、C4−C8シクロアルキル、ベンジル、C6−C10ア
リールまたはC3−C9ヘテロアリールであり、ここにおいて、該アリール、ヘテ
ロアリール、および該ベンジルのフェニル残基は、場合により、ヒドロキシ、ク
ロロ、ブロモ、フルオロおよび−NR2R3から成る群より選択される1〜3個の
置換基で置換され、ここにおいて、R2およびR3は、独立して、水素、C1−C6
アルキル、(C1−C6アルキル)C(O)−、(C1−C6アルキル)OC(O)
−、(C6−C10アリール)C(O)−、(ベンジル)OC(O)−および(C6
−C10アリール)OC(O)−から成る群より選択される)
を有する化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩に関する。
本発明によって用いられる式Iの化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩
に関して、不斉炭素原子のために光学異性体および幾何異性体などの立体異性体
が存在することおよびこのような異性体の使用もまた本発明の範囲内に包含され
ることは理解されるべきである。
本明細書で用いられる「アルキル」という用語には、特に断らない限り、直鎖
または分岐状部分を有する飽和一価炭化水素基が含まれる。
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語には、シクロブチル、シ
クロペンチルおよびシクロヘプチルを含めた飽和一価環状炭化水素基が含まれる
。
本明細書で用いられる「アリール」という用語には、特に断らない限り、フェ
ニルおよびナフチルを含めた、1個の水素の除去によって芳香族炭化水素から誘
導される有機基が含まれる。
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」という用語には、特に断らない限り
、ピリジル、フリル、ピリル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ベン
ズイミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ピリミジル、キノリル、イソキノ
リル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、インド
リル、イソインドリル、プリニル、カルバゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル
、オキサゾリル、ベンズチアゾリルまたはベンゾオキサゾリルなどの、1個の水
素の除去によって芳香族複素環式化合物から誘導される有機基が含まれる。C3
−C9ヘテロアリール残基の例としては、チアゾリル(C3ヘテロアリール)、フ
リル(C4ヘテロアリール)およびキノリル(C9ヘテロアリール)がある。
本明細書で用いられる「治療」という用語には、特に断らない限り、(i)ヒ
トなどの哺乳動物において能動的に生じる状態若しくは疾患を治癒するまたはこ
のような状態若しくは疾患に関係した症状を緩和する方法、(ii)哺乳動物にお
いて前記状態または疾患が生じることを予防する方法、および(iii)哺乳動物
における前記状態または疾患の発症を遅らせる方法が含まれる。
本明細書で用いられる「治療的有効量」という用語は、特に断らない限り、ヒ
トなどの哺乳動物においてNMDA部位を遮断するのに有効な量または該哺乳動
物が治療されている具体的な状態を治療するまたは予防するのに有効である量を
意味する。
式Iを有する好ましい化合物としては、RがR1C(O)−またはR1OC(O
)−であるものがある。
式Iを有する他の好ましい化合物としては、RがR1C(O)−であり且つR1
がベンジル、C6−C10アリールまたはC3−C9ヘテロアリールであるものがあ
る。
式Iを有する他の好ましい化合物としては、RがR1C(O)−であり且つR1
がC1−C6アルキルまたはC4−C8シクロアルキルであるもの、そして更に好ま
しくは、R1がC1−C6アルキルであるものがある。
式Iを有する他の好ましい化合物としては、RがR1OC(O)−であり且つ
R1がベンジル、C6−C10アリールまたはC3−C9ヘテロアリールであるものが
ある。
式Iを有する他の好ましい化合物としては、RがR1OC(O)−であり且つ
R1がC1−C6アルキルまたはC4−C8シクロアルキルであるもの、そして更に
好ましくは、R1がC1−C6アルキルであるもの、そしてまた更に好ましくは、
R1がエチルであるものがある。
式Iを有する具体的な化合物としては、
(3R,4S)−7−エトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒ
ドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−プロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−イソプロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−
4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−シクロペンチルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニ
ル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールおよび
前記化合物の薬学的に許容しうる塩から成る群より選択されるものがある。
式Iを有する他の具体的な化合物としては、
(3R,4S)−7−アセトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−ピバロキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−ベンゾイルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)
−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールおよび前記
化合物の薬学的に許容しうる塩から成る群より選択されるものがある。
式Iを有する他の具体的な化合物としては、
(3R,4S)−7−メトキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−エトキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−プロポキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロ
フェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
、
(3R,4S)−7−イソプロポキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フル
オロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オ
ールおよび
前記化合物の薬学的に許容しうる塩から成る群より選択されるものがある。
式Iを有する他の具体的な化合物としては、
(3R,4S)−7−ブチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオ
ロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オー
ル、
(3R,4S)−7−t−ブチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フ
ルオロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−
オール、
(3R,4S)−7−ペンチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フル
オロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オ
ール、
(3R,4S)−7−フェノキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロ
フェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
および
前記化合物の薬学的に許容しうる塩から成る群より選択されるものがある。
本発明は、更に、疾患または状態を治療するための薬剤組成物であって、該治
療が、ヒトなどの哺乳動物においてNMDA部位を遮断することによって促進さ
れうる、治療的有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩および薬
学的に許容しうる担体を含む上記薬剤組成物に関する。
本発明は、更に、ヒトなどの哺乳動物の、発作、アルツハイマー病、パーキン
ソン病およびハンティングトン病などの変性CNS疾患;てんかん、不安、筋痙
攣、多発脳梗塞性痴呆、頭部外傷、外傷性脳損傷、痛み、エイズ関連痴呆、低血
糖症、片頭痛、筋委縮性側索硬化症、薬物およびアルコール嗜癖、薬物およびア
ルコール禁断症状、精神病状態、耳鳴並びに尿失禁から選択される疾患または状
態を治療するための薬剤組成物であって、治療的有効量の式Iの化合物またはそ
の薬学的に許容しうる塩および薬学的に許容しうる担体を含む上記薬剤組成物に
関する。
本発明は、更に、ヒトなどの哺乳動物においてCNS手術、開心術または心臓
血管系の機能に影響する何等かの処置に起因する虚血現象を治療するための薬剤
組成物であって、治療的有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩
および薬学的に許容しうる担体を含む上記薬剤組成物に関する。
本発明は、更に、疾患または状態を治療する方法であって、該治療が、ヒトな
どの哺乳動物においてNMDA部位を遮断することによって促進されうる、該哺
乳動物に対して治療的有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を
投与することを含む上記方法に関する。
本発明は、更に、ヒトなどの哺乳動物の、発作、アルツハイマー病、パーキン
ソン病およびハンティングトン病などの変性CNS疾患;てんかん、不安、筋痙
攣、多発脳梗塞性痴呆、頭部外傷、外傷性脳損傷、痛み、エイズ関連痴呆、低血
糖症、片頭痛、筋委縮性側索硬化症、薬物およびアルコール嗜癖、薬物およびア
ルコール禁断症状、精神病状態、耳鳴並びに尿失禁から選択される疾患または状
態を治療する方法あって、該哺乳動物に対して治療的有効量の式Iの化合物また
はその薬学的に許容しうる塩を投与することを含む上記方法に関する。
本発明は、更に、ヒトなどの哺乳動物においてCNS手術、開心術または心臓
血管系の機能に影響する何等かの処置に起因する虚血現象を治療する方法であっ
て、該哺乳動物に対して治療的有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容し
うる塩を投与することを含む上記方法に関する。
式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩による治療に感受性の疾患また
は状態の例としては、発作、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンティ
ングトン病などの変性CNS疾患;てんかん、不安、筋痙攣、多発脳梗塞性痴呆
、頭部外傷、外傷性脳損傷、痛み、エイズ関連痴呆、低血糖症、片頭痛、筋委縮
性側索硬化症、薬物およびアルコール嗜癖、薬物およびアルコール禁断症状、精
神病状態、耳鳴並びに尿失禁がある。
式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩による治療に感受性の別の疾患
または状態は、心臓血管系の機能に影響するCNS手術、開心術または何等かの
処置に起因する虚血現象である。
発明の詳細な説明
式Iを有するプロドラッグは、(3R,4S)−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4,7−ジオー
ル(親クロマノール)を出発物質として用いて容易に製造される。このクロマノ
ールは、米国特許第5,356,905号(1994年10月18日発行)、米国特許出願第08/18
9,479号(1994年1月31日出願)、および「シス−ラセミ体7−ベンジルオキシ
−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル
]−クロマン−4−オールジベンゾイル−D−タートレートの分割法(Process
For The Resolution Of Cis-Racemic 7-Benzyloxy-3-[4-(4-Fluorophenyl)-4-Hy
droxy-Piperidin-1-yl]-Chroman-4-ol Dibenzoyl-D-Tartrate)」と称するM.
メルツ(Meltz)らの米国暫定特許出願(1995年7月20日出願)で記載のように
製造することができ、これら3件はいずれも本明細書中にそのまま援用される。
親クロマノールの合成に必要な出発物質および試薬は、商業的にか、文献で開示
された合成法にしたがってかまたは下記の説明で例示される合成によって容易に
入手可能である。
親クロマノールは、上で論及された米国特許出願第08/189,479号で記載のよう
に、ラセミ体のシス−7−ベンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル
)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールのL−プロ
リンエステルの部分環化によって製造することができる。好ましい方法では、上
で論及された「シス−ラセミ体7−ベンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロ
フェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールジ
ベンゾイル−D−タートレートの分割法」と称する米国暫定特許出願で記載され
た分割法を行う。この方法では、ラセミ体のシス−7−ベンジルオキシ−3−[
4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロ
マン−4−オールを等モル量のジベンゾイル−D−酒石酸と一緒に沸騰水性エタ
ノール中に溶解させることによって親クロマノールを製造する。ラセミ体のシス
−7−ベンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ
ピ
ペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールは、上で論及された米国特許出願
第08/189,479号で記載のように製造される。水性エタノールの濃度は臨界的では
なく、75%〜95%エタノール(ETOH)であってよい。9:1/ETOH
:H2Oの濃度が有効であることが判っているし且つ好ましい。ラセミ化合物を
溶解させるのに充分な量の水性エタノール溶媒が必要である。この量は、ラセミ
化合物のグラム当たり約17mlであることが判っている。
還流下で加熱しながら撹拌すると、ラセミ化合物は溶解して曇った溶液を形成
し、それを撹拌しながら冷却することで、(+)異性体(3R,4S)−7−ベ
ンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジ
ン−1−イル]−クロマン−4−オールジベンゾイル−D−タートレートが沈殿
し、そしてそれを濾過によって集め且つ水性エタノールで洗浄することができる
。この最初の生成物は約90%の光学純度を有する。更に高い純度が望まれる場
合、その生成物を水性エタノールと一緒に再度加熱し、冷却し、そして生成物を
集め且つ洗浄することができる。2回のこのような処理は、全収率74%で光学
純度99.4%の(+)異性体を生じることが判った。この手順は、水素化アル
ミニウムリチウムを用いる還元工程を避け、したがって、大量作業により適して
いるという点で、上で論及された米国特許出願第08/189,479号で記載の手順より
好ましい。この手順はまた、かなり高収率の所望の生成物を生じる。
上記の(+)異性体は、標準法によって親クロマノールに変換することができ
る。例えば、希塩基での処理は、ピペリジニル塩基を分離するのに用いることが
でき、そして引続きの水素化は、7−ベンジル基を除去して親クロマノールを生
成する。
概して、親クロマノールは、当業者に周知の且つ文献で記載された簡単なアル
キル化およびアシル化法を用いて式Iのプロドラッグに変換される。例えば、J
.マーチ(March),Advanced Organic Chemistry,第4版,J.ウィリー・ア
ンド・サンズ(Wiley and Sons),ニューヨーク,第10章(293-500頁)(1992
)を参照されたい。
RがC1−C6アルキルまたはC4−C8シクロアルキルである式Iの化合物を製
造するには、親クロマノールを1モル等量(好ましくは、僅かに過剰)のRX
(Xは、ハロゲン、トシレート、トリフレートまたはメシレートなどの適当な脱
離基である)と反応させる。反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチ
ルスルホキシド(DMSO)、アセトン、メチルエチルケトンまたはテトラヒド
ロフラン(THF)などの反応不活性溶媒中において約0℃〜溶媒の還流温度ま
での温度で行われる。反応を促進させるために、アルカリ金属炭酸塩(例えば、
炭酸カリウム)、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン)または水素
化ナトリウムなどの1〜2モル等量の塩基を包含することが好ましい。
もう一つの方法において、RがC1−C6アルキルまたはC4−C8シクロアルキ
ルである式Iの化合物は、親クロマノールを、トリフェニルホスフィンおよびア
ゾジカルボン酸ジアルキル(例えば、アゾジカルボン酸ジエチル)の存在下にお
いてC1−C6アルコール(例えば、エタノール)またはC4−C8環状アルコール
(例えば、シクロペンタノール)と反応させることによって製造される。これは
、文献(Synthesis,1,1981)で周知である、いわゆるミツノブ(Mitsunobu)反
応である。
RがR1C(O)−またはR1OC(O)−である式Iの化合物を製造するには
、親クロマノールを、酸無水物(例えば、無水酢酸)または酸ハライド(例えば
、塩化ベンゾイルまたはクロロギ酸エチル)などの適当なアシル化剤と、反応不
活性溶媒(例えば、THFまたは塩化メチレン)中において約0℃〜溶媒の還流
温度の範囲の温度で反応させる。この反応は、水素化ナトリウムまたはトリアル
キルアミン(例えば、トリエチルアミン)などの塩基の添加によって促進されう
る。
RがR1C(O)−である式Iの化合物を製造するもう一つの方法は、親クロ
マノールと、付加される基に該当する酸(例えば、ピバル酸またはフェニル酢酸
)とを、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはカルボニルジイミダゾールなど
の試薬を用いて反応させてその酸を活性化させた後にクロマノールとカップリン
グさせることである。この反応の場合、アシル化剤は現場で製造される。この工
程は、上で論及されたJ.マーチ,Advanced Organic Chemistry,第4版,第10
章で記載され且つ当業者に周知である。この方法での反応に好ましい条件は、前
の段落で記載されたのと同様である。DMFは、必要ならば、試薬の溶解を促進
する補助溶剤として加えることができる。
本発明のプロドラッグは、選択的NMDAアンタゴニストである親クロマノー
ルへと in vivo で変換される。したがって、それらは、疾患または状態の治療
であって、哺乳動物におけるNMDAを遮断することによって促進されうる該治
療において有用である。このような疾患または状態の例としては、発作、アルツ
ハイマー病、パーキンソン病およびハンティングトン病などの変性CNS疾患;
てんかん、不安、筋痙攣、多発脳梗塞性痴呆、頭部外傷、外傷性脳損傷、痛み、
エイズ関連痴呆、低血糖症、片頭痛、筋委縮性側索硬化症、薬物およびアルコー
ル嗜癖、薬物およびアルコール禁断症状、精神病状態、耳鳴並びに尿失禁がある
。
本発明のプロドラッグは、式Iを有する化合物の薬学的に許容しうる塩として
投与することができる。このような塩としては、慣用的な酸付加塩および陽イオ
ン塩がある。式Iを有する化合物は、塩基性であるアミン基を有するので、この
ような塩を形成することができる。前記塩には、制限されるわけではないが、H
Cl、HBr、HNO3、H2SO4、H3PO4、CH3SO3H、P−CH3C6H4
SO3H、CH3CO2H、グルコン酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸およびコハク
酸とのものが含まれる。塩は、慣用法によって、例えば、式Iの化合物と少なく
とも1モル等量の酸とを適当な溶媒中で混合することによって製造することがで
きる。
式Iのプロドラッグは、哺乳動物の体内の代謝過程によって親クロマノールに
変換される。親クロマノールは、てんかんおよび発作などの神経学的疾患並びに
アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンティングトン病などの変性CNS
疾患の治療におけるその価値ある有用性に反映される選択的神経保護的抗虚血お
よび興奮性アミノ酸遮断活性を有する。治療的有効量の式Iの化合物を用いるこ
のような疾患の全身性治療において、投薬量は、投与経路にかかわらず、典型的
に、1回または分割量で約0.02〜20mg/kg/日(体重が約50kgの
典型的なヒトに対して0.001〜1g/日)である。当然ながら、正確な化合
物および個々の疾病の正確な性状に応じて、この範囲外の用量が担当医師によっ
て処方されうる。
本発明の化合物は、概して、少なくとも1種類の式Iの化合物を薬学的に許容
しうるビヒクルまたは希釈剤と一緒に含む薬剤組成物の形で投与される。このよ
うな組成物は、概して、所望の投与方式に適当な固体または液体のビヒクルまた
は希釈剤を用いて慣用法で製剤化される。経口投与用には、錠剤、ゼラチン硬ま
たは軟カプセル剤、懸濁剤、顆粒剤、散剤等の形;肛門用を含めた坐剤;非経口
投与(静脈内、皮下、筋肉内)用には、注射用液剤または懸濁剤等;および局所
投与用には、液剤、ローション剤、軟膏剤、膏薬(salves)等の形。
本発明のプロドラッグは、溶液中において親クロマノールよりも安定であるの
で、該プロドラッグは、静脈内投与用に親クロマノールよりも適している。静脈
内投与は、好ましい非経口投与法である。静脈内投与用液剤の製造は、当業者に
知られている。静脈内用溶液は、浸透圧が平衡し且つ中性pHを有するべきであ
る。適当な溶液には、5%デキストロース溶液、等張食塩水およびリン酸緩衝溶
液が含まれる。
次の製造例および実施例において、特に断らない限り、反応および他の手順は
周囲温度(20〜25℃)で行われ、そして非水性反応は全て、便宜上および概
して収量を最大にするように窒素下で行われた。溶媒/希釈剤は全て、標準的な
公表された手順にしたがって乾燥されたまたは予め乾燥された状態で購入された
。反応は全て、電磁的にかまたは機械的に撹拌された。NMRスペクトルは、2
50または300MHzで記録され且つppmで報告される。NMR溶媒は、特
に断らない限りCDCl3であった。IRスペクトルはcm-1で報告され、概し
て、強いシグナルだけを明記している。次の略号を用いる。ジメチルスルホキシ
ドに対してDMF、テトラヒドロフランに対してTHF、高分解能質量スペクト
ルに対してHRMS。
製造例 (3R,4S)−7−ベンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)− 4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールジベンゾイル− D−タートレート
A. ラセミ体のシス−7−ベンジルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェ
ニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール(2.
07g,4.6ミリモル)およびジベンゾイル−D−酒石酸(1.65g,4.
6ミリモル)を、30mlの90%エタノール/水中に懸濁させた。得られた混
合物を撹拌し且つ還流するまで加熱し;90%エタノール/水を更に5ml加え
、そして曇った溶液を得た。得られた溶液を室温で一晩中撹拌した。形成された
固体を濾過によって集め且つ95%エタノール3mlで2回洗浄して、標題生成
物1.55g(83.4%)を生成したが、これは、HPLCによって純度87
%であることが示された。
B. 上の生成物(1.2g)を、21.4mlの90%EtOH;H2O中
に懸濁させ、撹拌し、そして還流下で1.5時間加熱した後、室温まで冷却した
。固体生成物を濾過によって集め、そして3mlずつの90%EtOH;H2O
で洗浄した。収量は、光学純度98.0%で1.1gであった。
C. 工程Bの手順を、工程Bの生成物を用いて繰返して97%の生成物を生
成し、これは、光学純度99.4%であった。
ラル・テクノロジーズ(Chiral Technologies),エクストン,PA)を用いる
HPLCによって、ヘキサン600ml、イソプロパノール400ml、トリフ
ルオロ酢酸1mlおよびジエチルアミン0.5mlを含む移動相を用いて測定さ
れた。流量は、試料0.1〜0.4mg/mlを含有する20μlの注入量を用
いて0.7ml/分であった。検出は220nmに設定された。
実施例1 (3R,4S)−7−アセトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4− ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
(3R,4S)−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ]−
ピペリジン−1−イル−クロマン−4,7−ジオール(0.50g,1.39ミ
リモル)、2−アセトキシ安息香酸(0.26g,1.44ミリモル)、1−(
3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.28g
,1.46ミリモル)および4−ジメチルアミノピリジン(0.17g,1.3
9ミリモル)の塩化メチレン(25mL)中混合物を周囲温度で一晩中撹拌した
。その反応を濃縮し、そして残留物をエーテル/酢酸エチル(2:1)と水とに
分配した。相を分離し、そして有機層をブラインで洗浄し、硫酸カルシウム上で
乾燥させ、そして濃縮して白色固体を与えた。その固体をエーテル/酢酸エチ
ル(2:1)で研和した後、メタノール/酢酸エチルから再結晶させて、(3R
,4S)−6−アセトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロ
キシ]ピペリジン−1−イル−クロマン−4−オール0.062g(12%)を
与え、これは、次の特性を有した。融点181.5〜182℃:[α]D=+8
6.13°(メタノール中でc=0.31)。
C22H24FNO5の元素分析計算値;C,65.82;H,6.03;N,3.
49。実測値;C,65.33;H,6.12;N,3.41。
実施例2 (3R,4S)−7−ピバロキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4− ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
(3R,4S)−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ]−
ピペリジン−1−イル−クロマン−4,7−ジオール(0.30g,0.83ミ
リモル)、ピバル酸(0.195mL,1.70ミリモル)、1−(3−ジメチ
ルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.33g,1.72
ミリモル)および4−ジメチルアミノピリジン(0.20g,1.64ミリモル
)の塩化メチレン(15mL)中混合物を周囲温度で一晩中撹拌した。その反応
を濃縮し、そして残留物をエーテルと水とに分配した。相を分離し、そして有機
層をブラインで洗浄し、硫酸カルシウム上で乾燥させ、そして濃縮して油状白色
固体を与えた。その固体を酢酸エチルで研和した後、シリカゲル(1x4インチ
、25%酢酸エチル/ヘキサンで充填された)上のフラッシュクロマトグラフィ
ーによって分離した。溶離は次のように進行した。25%酢酸エチル/ヘキサン
(200mL)、無;50%酢酸エチル/ヘキサン(200mL)、無;75%
酢酸エチル/ヘキサン(200mL)および酢酸エチル(200mL)、白色固
体生成物。この固体を、エーテル/ヘキサン(1:1)で更に研和し、そして自
然乾燥させて、(3R,4S)−7−ピバロキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール0.
10g(22%)を与え、これは、次の特性を有した。融点219〜220℃:
[α]D=+83.9°(メタノール中でc=0.31)。
C25H28FNO5の元素分析計算値;C,67.70;H,6.82;N,3.
16。実測値;C,67.61;H,6.88;N,3.24。
実施例3 (3R,4S)−7−プロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4− ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
乾燥三口フラスコ中において、水素化ナトリウム(油中60%分散液,0.0
43g,1.07ミリモル)をヘキサンで洗浄して油を除去した。DMF(3m
L)を加え、そしてその混合物を0℃まで冷却した。(3R,4S)−3−[4
−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマ
ン−4,7−ジオール(0.350g,0.974ミリモル)を加え、そしてそ
の混合物を30分間撹拌した。ヨウ化プロピル(0.104mL,1.07ミリ
モル)を加え、そしてその反応を周囲温度で1時間撹拌した。その混合物を酢酸
エチルで希釈し、そして1N水性塩化リチウムで抽出した。水性塩化リチウムを
酢酸エチルで(2回)逆抽出し、そして合わせた有機相を1N水性塩化リチウム
およびブラインで洗浄した。その有機層を硫酸カルシウム上で乾燥させ且つ濃縮
して白色固体とした。その固体をイソプロパノール/メタノールから再結晶させ
て、(3R,4S)−7−プロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−
4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール0.130g(
33%)を白色固体として与え、これは、次の特性を有した。融点148.5〜
149.5℃:[α]D=+83.33°(メタノール中でc=0.27)。
C25H28FNO4の元素分析計算値;C,68.81;H,7.03;N,3.
49。実測値;C,68.65;H,7.05;N,3.38。
実施例4 (3R,4S)−7−メトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒ ドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
乾燥三口フラスコ中において、水素化ナトリウム(油中60%分散液,0.0
275g,0.689ミリモル)をヘキサンで洗浄して油を除去した。DMF(
2mL)を加え、そしてその混合物を0℃まで冷却した。(3R,4S)−3−
[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−ク
ロマン−4,7−ジオール(0.225g,0.626ミリモル)を加え、そ
してその混合物を30分間撹拌した。ヨウ化メチル(0.043mL,0.68
9ミリモル)を加え、そしてその反応を周囲温度で1時間撹拌した。その混合物
を酢酸エチルで希釈し、そして1N水性塩化リチウムで抽出した。水性塩化リチ
ウムを酢酸エチルで(2回)逆抽出し、そして合わせた有機相を1N水性塩化リ
チウムおよびブラインで洗浄した。その有機層を硫酸カルシウム上で乾燥させ且
つ濃縮して白色固体とした。その固体をメタノールから再結晶させて、(3R,
4S)−7−メトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシ
ピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール0.105g(44%)を白色
固体として与え、これは、181〜182℃の融点を有した。
C21H24FNO5の元素分析計算値;C,67.55;H,6.48;N,3.
75。実測値;C,67.41;H,6.47;N,3.60。
実施例5 (3R,4S)−7−エトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒ ドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
乾燥三口フラスコ中において、水素化ナトリウム(油中60%分散液,0.0
37g,0.918ミリモル)をヘキサンで洗浄して油を除去した。DMF(3
mL)を加え、そしてその混合物を0℃まで冷却した。(3R,4S)−3−[
4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロ
マン−4,7−ジオール(0.300g,0.835ミリモル)を加え、そして
その混合物を30分間撹拌した。ヨウ化エチル(0.073mL,0.918ミ
リモル)を加え、そしてその反応を周囲温度で1時間撹拌した。その混合物を酢
酸エチルで希釈し、そして1N水性塩化リチウムで抽出した。水性塩化リチウム
を酢酸エチルで(2回)逆抽出し、そして合わせた有機相を1N水性塩化リチウ
ムおよびブラインで洗浄した。その有機層を硫酸カルシウム上で乾燥させ且つ濃
縮して白色固体とした。その固体をメタノールから再結晶させて、(3R,4S
)−7−エトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペ
リジン−1−イル]−クロマン−4−オール0.175g(54%)を白色固体
として与え、これは、次の特性を有した。融点191〜192℃:[α]D=+
87.47°(メタノール中でc=0.375)。
C22H26FNO4の元素分析計算値;C,68.20;H,6.76;N,3.
62。実測値;C,68.02;H,6.76;N,3.40。
実施例6 (3R,4S)−7−エトキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ ェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
(3R,4S)−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペ
リジン−1−イル]−クロマン−4,7−ジオール(0.378g,1.05ミ
リモル)、炭酸カリウム(0.345g,2.5ミリモル)および1−クロロエ
チルエチルカーボネート(0.155mL,1.15ミリモル)のアセトン(1
0mL)中混合物を一晩中穏やかに還流させた。その反応混合物を酢酸エチルで
希釈し、濾過し、そして濃縮した。残留固体を、シリカゲル(1x3インチ)上
のフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、溶離は次のように進行した。
25%酢酸エチル/ヘキサン(500mL)、無;50%酢酸エチル/ヘキサン
(50mL)、秤量されない識別されない不純物;50%酢酸エチル/ヘキサン
(600mL)、(3R,4S)−7−エトキシカルボニルオキシ−3−[4−
(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン
−4−オール0.355g(78%)。これは、次の特性を有した。融点153
〜154℃:[α]D=+83.0°(メタノール中でc=0.49)。
C23H26FNO6の元素分析計算値;C,64.03;H,6.07;N,3.
25。実測値;C,63.75;H,6.10;N,2.95。
実施例7 (3R,4S)−7−イソプロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)− 4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
乾燥三口フラスコ中において、水素化ナトリウム(油中60%分散液,0.0
37g,0.918ミリモル)をヘキサンで洗浄して油を除去した。DMF(3
mL)を加え、そしてその混合物を0℃まで冷却した。(3R,4S)−3−[
4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロ
マン−4,7−ジオール(0.300g,0.835ミリモル)を加え、そして
その混合物を30分間撹拌した。臭化イソプロピル(0.086mL,0.9
18ミリモル)を加え、そしてその反応を周囲温度で一晩中撹拌した。追加の水
素化ナトリウム(0.01g)および臭化イソプロピル(0.016mL)を加
え、そしてその反応を60℃まで一晩中加熱した。その混合物を酢酸エチルで希
釈し、そして1N水性塩化リチウムで抽出した。水性塩化リチウムを酢酸エチル
で(2回)逆抽出し、そして合わせた有機相を1N水性塩化リチウムおよびブラ
インで洗浄した。その有機層を硫酸カルシウム上で乾燥させ且つ濃縮して白色固
体とした。その固体を、シリカゲル(1x43インチ、塩化メチレン中で充填さ
れた)上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、溶離は次のように進
行した。3%メタノール/塩化メチレン(250mL)、白色固体生成物0.1
91g。この生成物をイソプロパノールから再結晶させて、(3R,4S)−7
−イソプロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペ
リジン−1−イル]−クロマン−4−オール0.154g(46%)を白色固体
として与え、これは、次の特性を有した。融点151〜152℃:[α]D=+
88.15°(メタノール中でc=0.27)。
C23H28FNO4の元素分析計算値;C,68.81;H,7.03;N,3.
49。実測値;C,68.80;H,7.07;N,3.38。
実施例8 (3R,4S)−7−シクロペンチルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニ ル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
乾燥三口フラスコ中において、水素化ナトリウム(油中60%分散液,0.0
37g,0.918ミリモル)をヘキサンで洗浄して油を除去した。DMF(3
mL)を加え、そしてその混合物を0℃まで冷却した。(3R,4S)−3−[
4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロ
マン−4,7−ジオール(0.300g,0.835ミリモル)を加え、そして
その混合物を30分間撹拌した。臭化シクロペンチル(0.098mL,0.9
18ミリモル)を加え、そしてその反応を周囲温度で一晩中撹拌した。追加の水
素化ナトリウム(0.014g)および臭化シクロペンチル(0.027mL)
を加え、そしてその反応を60℃まで一晩中加熱した。その混合物を酢酸エチル
で希釈し、そして1N水性塩化リチウムで抽出した。水性塩化リチウムを酢酸エ
チルで(2回)逆抽出し、そして合わせた有機相を1N水性塩化リチウムおよび
ブラインで洗浄した。その有機層を硫酸カルシウム上で乾燥させ且つ濃縮して白
色固体とした。その固体を、シリカゲル(1x43インチ、塩化メチレン中で充
填された)上のフラッシュクロマトグラフィーによって分離し、溶離は次のよう
に進行した。3%メタノール/塩化メチレン(200mL)、白色固体生成物0
.220g。その生成物の試料をイソプロパノール/酢酸エチルから再結晶させ
て、(3R,4S)−7−シクロペンチルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オールの白
色結晶を与え、これは、次の特性を有した。融点180〜181℃:[α]D=
+80.73°(メタノール中でc=0.275)。
C25H30FNO4の元素分析計算値;C,70.24;H,7.07;N,3.
28。実測値;C,69.98;H,7.07;N,3.13。
【手続補正書】
【提出日】1998年4月28日
【補正内容】
特許請求の範囲を以下のように補正する。
『1. 式
(式中、Rは、C1−C6アルキル、C4−C8シクロアルキル、R1C(O)−ま
たはR1OC(O)−であり;そして F
R1は、C1−C6アルキル、C4−C8シクロアルキル、ベンジル、C6−C10ア
リールまたはC3−C9ヘテロアリールであり、ここにおいて、該アリール、ヘテ
ロアリール、および該ベンジルのフェニル残基は、場合により、ヒドロキシ、ク
ロロ、ブロモ、フルオロおよび−NR2R3から成る群より選択される1〜3個の
置換基で置換され、ここにおいて、R2およびR3は、独立して、水素、C1−C6
アルキル、(C1−C6アルキル)C(O)−、(C1−C6アルキル)OC(O)
−、(C6−C10アリール)C(O)−、(ベンジル)OC(O)−および(C6
−C10アリール)OC(O)−から成る群より選択される)
を有する化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
2. RがR1C(O)−またはR1OC(O)−である請求項1に記載の化合
物。
3. RがR1C(O)−であり且つR1がベンジル、C6−C10アリールまた
はC3−C9ヘテロアリールである請求項2に記載の化合物。
4. RがR1C(O)−であり且つR1がC1−C6アルキルまたはC4−C8シ
クロアルキルである請求項2に記載の化合物。
5. R1がC1−C6アルキルである請求項4に記載の化合物。
6. RがR1OC(O)−であり且つR1がベンジル、C6−C10アリールま
たはC3−C9ヘテロアリールである請求項2に記載の化合物。
7. RがR1OC(O)−であり且つR1がC1−C6アルキルまたはC4−C8
シクロアルキルである請求項2に記載の化合物。
8. R1がC1−C6アルキルである請求項7に記載の化合物。
9. R1がC1−C3アルキルである請求項8に記載の化合物。
10.R1がエチル基である請求項9に記載の化合物。
11.前記化合物が、
(3R,4S)−7−エトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒ
ドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−プロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−イソプロポキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−
4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−アセトキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−ピバロキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)−4−
ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−ベンゾイルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニル)
−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−メトキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−エトキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロフ
ェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール、
(3R,4S)−7−プロポキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロ
フェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
、
(3R,4S)−7−イソプロポキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フル
オロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オ
ール、
(3R,4S)−7−シクロペンチルオキシ−3−[4−(4−フルオロフェニ
ル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
および前記化合物の薬学的に許容しうる塩
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物。
12.前記化合物が、
(3R,4S)−7−ブチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオ
ロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オー
ル、
(3R,4S)−7−t−ブチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フ
ルオロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−
オール、
(3R,4S)−7−ペンチルオキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フル
オロフェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オ
ール、
(3R,4S)−7−フェノキシカルボニルオキシ−3−[4−(4−フルオロ
フェニル)−4−ヒドロキシルピペリジン−1−イル]−クロマン−4−オール
および前記化合物の薬学的に許容しうる塩
から成る群より選択される請求項1に記載の化合物。』