【発明の詳細な説明】
ビニル芳香族及び脂環族モノマー精製法
本発明はチグラー・ナッタ重合法に使用するのに適した高純度のビニル芳香族
及び脂環族モノマーを製造する改良法に関する。更に詳しくは本発明は不純なモ
ノマー流からインデン及び他の不純物を容易に除去する方法に関する。
アニオン重合法に使用する前にビニル芳香族モノマー特にスチレンを精製する
ことが有利であることは長く知られている。一般に、蒸留、脱気、乾燥剤との接
触、モレキュラーシーブとの接触、又はリチウムヒドロカルビル化合物溶液によ
る注意深い接触が、アニオン重合の前のモノマーの精製に満足に使用されてきた
。一般に、アニオン重合の前にモノマー流から除かねばならない夾雑物として、
酸素化物質種たとえばアルデヒド又は酸、及びアセチレン性物質種たとえばフェ
ニルアセチレンがあげられる。
チグラー・ナッタ型重合によって、すなわち遷移金属錯体からなる触媒の使用
によって有用なポリマーを作るスチレンモノマーの重合は当業技術において既に
知られている。US−A−4,680,353には、このような触媒を使用する
高シンジオタクチック形態をもつビニル芳香族ポリマーの製造が記載されている
。4族金属錯体を含むチグラー・ナッタ触媒を使用してスチレンが凝似ランダム
形態のエチレン・スチレンコポリマーを製造することはEP−A−416,81
5に開示されている。脂環式モノマーとくにビニルシクロヘキサン又はエチリデ
ンノルボルネンを含むコポリマーも上記刊行物に開示されている。これらの方法
の実施において、幾分かの触媒が通常、重合中に不純物との反応によって消費さ
れる。触媒は比較的高価であるために、商業的に実施可能な方法はポリマーの改
良された収率を必要とする。従って、改良された触媒効率と寿命をもつビニル芳
香族モノマー及び脂環式モノマーの重合法を提供するのが望ましい。
US−A−5,064,918には水素化によるフェニルアセチレンの除去法
が開示されている。いくつかの精製法がEP−A−410,361及びその他に
開示されており、これらには次の操作が含まれる。
1)吸収剤物質たとえばアルミナ、活性アルミナ、シリカゲル、活性水素、酸
化カルシウム、ケイ酸アルミニウム、又はケイソウ土による処理、
2)乾燥不活性ガスをその中に泡立てることによる減圧下での脱ガス、
3)有機アルミニウム化合物による処理、
4)蒸留、
5)アルカリ金属、リチウムヒドロカルビル又はグリニア試剤による処理、
6)水素化、及び
7)上記方法の組合せ。
これらの方法は多くの場合、モノマー流から酸素化物及びアセチレン性夾雑物
を除くのに有効である。然し、このようなモノマー流中にも多くの場合見出され
るインデンは、4族金属錯体を基材とするチグラー・ナッタ触媒を使用する重合
に悪影響をもつことが今や見出される。不利なことに、前記の方法はモノマーと
の望ましからざる反応を伴うことなしに、ビニル芳香族モノマー又は脂環式モノ
マー流から特にインデンを除去するのに効果がないことが見出された。その結果
として、ビニル芳香族又は脂環式モノマーを精製してチグラー・ナッタ重合法に
使用しうるようにするコスト的に有効な手段の開発が依然望まれている。
アイシュらのJ.Organoment.Chem.,296 C27−C3
1(1985)には、インデンを含むブロンステッド酸炭素の、n−ブチルs−
ブチルマグネシウムを包含するジアルキルマグネシウム化合物によるマグネシウ
ム化が記載されている。
インデンは、ビニル芳香族又は脂環式モノマー中に存在するときチグラー・ナ
ッタ共重合触媒に悪影響を及ぼして触媒の寿命及び効率を減少させる、というこ
とが今や見出された。更になお、本発明者は、インデン、ならびに他の夾雑物た
とえばフェニルアセチレンは、これを各アルキル基中に1〜10の炭素をもつジ
アルキルマグネシウム化合物と接触させ、その後に反応副生物を分離して精製モ
ノマーを回収することによって、上記のモノマーから除去しうることを発見した
。
本発明の方法は、チグラー・ナッタ重合条件下の重合前に、ビニル芳香族モノ
マー、ビニル脂環式モノマー、又はそれらの混合物を精製するための迅速で経済
的な方法を提供する。好ましくは、この方法はこのようなモノマー流のインデン
含量及びフェニルアセチレン含量を10ppm以下に更に好ましくは1ppm未
満に低下させる。
本発明の精製法を使用することのできる重合方法として、US−A−4,68
0,353に記載されているようなシンジオタクチックポリスチレンの製造につ
いての前記の周知方法があげられる。シンジオタクチックポリビニル芳香族モノ
マーのこのような製造法の他に、本発明により精製したモノマーを1以上のモノ
ビニル芳香族モノマー又はビニル脂環式モノマー及び1以上の非環式脂肪族オレ
フィンとくにエチレン又はプロピレンの混合物中で使用してそれらのインターポ
リマーを製造することもできる。このような方法はEP−A−416,815に
記載されている。このような方法に好適な触媒として、(N−t−ブチルアミド
)−(ジメチル)(η5−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル
)シランチタンと活性化用共触媒とくにトリスペンタフルオロフェニルボランと
の組合せがあげられる。
エチレン、プロピレン、及び1−オクテンのような脂肪族オレフィンの他に、
本発明により製造されるモノマー流の重合に付加的に使用しうるものとしてブタ
ジエン又はイソプレンのようなジオレフィンがあげられる。
本発明により使用するためのチグラー・ナッタ触媒は好ましくは次のものから
なる。
1)元素の周期律表の3、4族またはランタナイド金属の金属錯体である活性
触媒種、及び任意に
2)活性化用共触媒。
このような触媒は支持された又は支持されていない形体で使用することができ
る。好適な支持体としてMgCl2、シリカ、及びアルミナがあげられる。とく
に好ましい支持体はか焼した又はアルモキサンで予備処理したシリカ又はアルミ
ナである。
本発明により使用されるモノマー中のフェニルアセチレン及びインデンの存在
は、標準の分析技術によって提出することができる。1つの好適な技術はガスク
ロマトグラフ(GC)である。ここに使用するビニル芳香族及び脂環式モノマー
流は500ppm以上の高い水準のフェニルアセチレンと200ppm以上のイ
ン含量をもつ。本発明の技術によれば、高水準のフェニルアセチレン又はインデ
ンを含むこのようなモノマーを精製してこれをアニオン重合法に又はチグラー・
ナッタ重合に使用するのに好適なものとすることが可能である。
この方法は多段工程の一部として使用することができ、それによってモノマー
をまず処理(一次処理)して若干の又はすべての夾雑物たとえば水、酸素、酸素
化物及びアセチレン性化合物を除く。好適な一次処理として、脱気、モレキュラ
ーシーブとの接触、活性アルミナとの接触、水素化、又は上記技術の組合せがあ
げられる。
好ましいジアルキルマグネシウム化合物はジ−ブチルマグネシウム、ジ−n−
オクチルマグネシウム、又はエチルn−ブチルマグネシウムである。ジアルキル
マグネシウム化合物は、C1-8アルカンのような有機溶媒中の又は処理すべきモ
ノマー中の溶液の形体で使用することができる。好適な化合物はまたジアルキル
マグネシウム化合物と各アルキル基中に1〜6の炭素をもつアルミニウムトリア
ルキル化合物との付加物から成ることができる。然し、アルミニウムトリアルキ
ル化合物はそれ自体インデンと反応しえないことに注目すべきである。従って、
アルミニウムトリアルキルのジアルキルマグネシウム付加物をここに使用すると
き、本発明の利点はトリアルキルアルミニウム化合物以外のジアルキルマグネシ
ウム化合物の存在によるものと信ぜられる。2級アルキル置換マグネシウム化合
物とくに2級ブチルマグネシウムが若干のモノマーとくにスチレンと望ましから
ざる副生物を発生したと考えられると言うこともできる。このような副生物とく
に1−フェニル−3−メチルペンタンは全モノマー収率を減少させ、このような
モノマーとの使用は好ましくない。
接触の方法は臨界的ではない。ジアルキルマグネシウム化合物は固体の形体に
、たとえばモノマー流が通過する床中の無機支持体上に堆積または吸収させる形
体にあることができる。あるいは又、ジアルキルマグネシウム化合物は、モノマ
ー流と接触させる溶液の形体にあってもよい。好ましいジアルキルマグネシウム
溶液は0.001〜5.0M、好ましくは0.01〜2.0Mの濃度にある。最
も好ましくは、モノマー流と処理されるモノマー中のジアルキルマグネシウム化
合物の溶液は1秒〜10時間、好ましくは10秒〜1時間の時間接触させ混合す
る。
一般に、使用するジアルキルマグネシウム化合物の量は、除くべきインデン夾雑
物モル当り0.5〜10,000モルである。更に好ましくはインデン夾雑物モ
ル当り1〜100モルのジアルキルマグネシウム化合物が使用される。
ジアルキルマグネシウム化合物とモノマー流との接触の後に、モノマーを、と
くに固体ジアルキルマグネシウム化合物を使用するときに濾過又は蒸留によって
分離し、あるいは特にジアルキルマグネシウム化合物の溶液を使用するときモノ
マーとジアルキルマグネシウム化合物の溶液を吸収剤の床に通すことによって分
離する。好適な吸収剤として、アルミナ、活性アルミナ、シリカゲル、活性木炭
、酸化カルシウム、アルミノシリケート及びケイソウ土があげられる。好ましい
吸収剤は1〜10,000M2/gの、更に好ましくは100〜5,000M2/
gの表面積をもつ。最も好ましい吸収剤は活性アルミナである。蒸留又は他の手
段による更なる精製を使用することもできるが、一般には必要でない。
この方法に好適な温度は−20℃〜45℃であり、好ましくは20℃〜30℃
である。フェニルアセチレン及び/又はインデンの実質的な除去が起こった後に
、モノマー流は重合法に使用する用意ができる。本発明の技術を使用して、イン
デンを除く処理をしなかったスチレンモノマーの使用の場合と比較して、触媒重
量当りのポリマーの生産量で測定して50〜1000%の改良された触媒効率が
えられる。アニオン重合において、本発明の方法は非常に狭い分子量分布を生成
させる。
本発明の方法に使用するのに特に適した好ましいビニル芳香族モノマーとして
、スチレン、ビニルトルエン(すべての異性体、とくにp−ビニルトルエン)、
ジビニルベンゼン、ビニルベンゾシクロブテン、及びそれらの混合物があげられ
る。
本発明を記述してきたが、次に実施例を与えて本発明を更に具体的に説明する
。他に反対の記載のない限り、すべての部および%は重量基準である。実施例1
103ppmのフェニルアセチレンと113ppmのインデンを含むスチレン
400mlを窒素でスパージして不活性雰囲気グローブボックス中に入れた。こ
のスチレンを各々約200mlの2つの試料に分割した。1つをヘキサン中1.
0Mのジブチルマグネシウム800μlで処理した。他方をヘキサン中1.0M
のジブチルマグネシウム3200μlで処理した。1時間後に、2つの25ml
の量をそれぞれの試料から取り出して、10gの活性アルミナ(375℃の流通
窒素下で加熱することによって活性化)を含むガラスフラスコに入れた。アルミ
ナとの1時間及び4時間の接触の後に濾過によって分析用試料を集めた。同様に
、マグネシウム試剤の添加後4時間に、各スチレン試料(4つの合計量)の2以
上の量を除き、アルミナでそれぞれ1時間及び4時間処理した。0.8ミリモル
のジ−n−ブチルマグネシウムで処理したバッチからの4つの試料の分析はほぼ
同水準のフェニルアセチレン(〜5ppm)及びインデン(85ppm)を示し
た。3.2ミリモルのジアルキルマグネシウムで処理したスチレンの4つの試料
はすべて提出しえない水準(<2ppm)のフェニルアセチレン及びインデンを
もっていた。実施例2
67ppmのフェニルアセチレンと60ppmのインデンを含むスチレンの2
50ml部分を、窒素スパージャーを備える等圧添加ロートに入れ、15分間ス
パージした。1つのロートにヘキサン中1Mジブチルマグネシウム2mlを加え
た。この混合物を遅い窒素スパージングで1時間攪拌した。次いで両方の液体を
活性アルミナの充填カラムに滴下した(〜3×40cm)。アルミナでのみ処理
した試料の分析は、それが47ppmのフェニルアセチレンと59ppmのイン
デンを含んでいることを示した。ジブチルマグネシウムとアルミナで処理した試
料は4ppmのフェニルアセチレンと10ppmのインデンを含んでいた。重合
2つの異なる処理をしたスチレン試料を次いで、1当量のペンタメチルシクロ
ペンタジエニルトリメトキシチタン、25当量のメチルアルモキサン、及び75
当量のトリイソブチルアルミニウムからなる触媒系による重合にかけた。重合は
50℃で30分間行った。スチレンモノマー:チタンが200,000:1のモ
ル比を使用して、アルミナ処理スチレンはシンジオタクチックポリスチレンへの
転化率<1%を与えた。ジアルキルマグネシウム処理スチレンは43.5%の転
化率を与えた。スチレン:チタンが350,000:1のモル比において、アル
ミナ処理スチレンは<1%の転化率を与えた。ジアルキルマグネシウムとアルミ
ナで処理したモノマーは平均23.5%の転化率を与えた。実施例3
スチレンとp−メチルスチレン(4重量%)の混合物の試料約130mlずつ
の3試料を、水素の存在下に活性アルミナに、次いでアルミナ上のパラジウムに
通した。生成モノマー混合物は0ppmのフェニルアセチレンと5ppmのイン
デンを含んでいた。追加量のインデン(5μl)をこれらの試料の2つに加えた
。これらの試料を次いで活性アルミナに通すことによって、又は混合ヘキサン中
1Mのジブチルマグネシウム1mlを加え、1時間攪拌後に活性アルミナに通す
ことによって処理した。インデン水準はアルミナとの接触のみで処理した試料中
に実質的一定に保たれた(処理前58ppm、処理後61ppm)。まずジブチ
ルマグネシウムで処理し次いでアルミナと接触させて処理した試料中のインデン
水準は著しく低下していた(処理前56ppm、処理後4ppm)。重合
スチレンとチタンの200,000:1及び350,000:1のモル比で、
1気圧の水素下に、実施例2と同じ触媒混合物を使用して、インデンの添加を欠
く試料はスチレン/p−メチルスチレンシンジオタクチックコポリマーへの転化
率がそれぞれ63.7%及び56.6%である平均転化率を与えた。アルミナと
の接触のみで処理したモノマー混合物はそれぞれ49.5%及び38.5%の平
均転化率を与えた。ジブチルマグネシウムとアルミナで処理した試料はそれぞれ
59.6%及び46.7%の転化率を与えた。