JPH1144810A - 回折光学素子及びそれを用いた光学系 - Google Patents
回折光学素子及びそれを用いた光学系Info
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Abstract
が少なく使用波長全域で高い回折効率を維持することが
できる回折光学素子及びそれを用いた光学系を得るこ
と。 【解決手段】 少なくとも2種類の分散の異なる材質か
らなる層を複数、基盤上に積層し、各層で回折格子を形
成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の回折
効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、各層
はそれを形成する材質の温度変化による屈折率変化率と
各回折格子の格子厚を掛け合わせた値を全ての層につい
て加え合わせ、このときの値が、使用波長に対して小さ
くなるような材質と格子厚の組み合わせより構成してい
ること。
Description
特に複数の波長、あるいは所定の帯域の光が特定次数
(設計次数)に集中するような格子構造を有した回折光
学素子及びそれを用いた光学系に関するものである。
の1つとして、分散の異なる2つの材質の硝材(レン
ズ)を組み合わせる方法がある。
る方法に対して、レンズ面やあるいは光学系の1部に回
折作用を有する回折格子を設けた回折光学素子を用い
て、色収差を減じる方法がSPIE Vol.1354 Internat
ional Lens Design Conference(1990)等の文献や
特開平4−213421号公報、特開平6−32426
2号公報、そしてUSP第5044706号等により開
示されている。
は、ある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向
になるという物理現象を利用したものである。
回折格子の周期的構造の周期を変化させることで非球面
レンズ的な効果をも持たせることができ収差の低減に大
きな効果がある。
と、レンズ面では1本の光線は屈折後も1本の光線であ
るのに対し、回折面では1本の光線が回折されると、各
次数に光が複数に分かれてしまう。
いる場合には、使用波長領域の光束が特定次数(以後設
計次数とも言う)に集中するように格子構造を決定する
必要がある。特定の次数に光が集中している場合では、
それ以外の回折光の光線の強度は低いものとなり、強度
が0の場合にはその回折光は存在しないものとなる。
次数の光線の回折効率が十分高いことが必要になる。ま
た、設計次数以外の回折次数をもった光線が存在する場
合は、設計次数の光線とは別な所に結像するため、フレ
ア光となる。
いては、設計次数での回折効率の分光分布及び設計次数
以外の光線の振る舞いについても十分考慮する事が重要
である。
成る回折格子3を設けた回折光学素子1を光学系中のあ
る面に形成した場合の特定の回折次数に対する回折効率
の特性を図13に示す。この回折光学素子の光学材料と
しては、プラスチック材料であるPMMA(nd=1.4917
、νd=57.4)を用い、格子厚dを1.07μmと設定し
た。この図で、横軸は波長をあらわし、縦軸は回折効率
を表している。
(図中実線)において、使用波長領域(波長530nm
近傍)でもっとも回折効率が高くなるように設計されて
いる。即ち設計次数は1次となる。
1次の0次光と2次光)の回折効率も併せ並記してお
く。図に示されるように、設計次数では回折効率はある
波長で最も高くなり(以下「設計波長」と言う)それ以
外の波長では序々に低くなる。上記構成では設計波長は
λ=530nm に設定している。この設計次数での回折効率
の低下分は、他の次数の回折光となり、フレアとなる。
また、回折格子を複数枚使用した場合には特に、設計波
長以外の波長での回折効率の低下は透過率の低下にもつ
ながる。
開平9−127321号公報に提示されている。これは
異なる材質の分散と各格子厚を最適に選ぶことで、広波
長範囲で高い回折効率を有する構成となっている。
を積層し、互いに異なる光学材料の境界面の少なくとも
1つにレリーフパターンを形成して成る回折光学素子を
開示している。
層した複数層の格子構造をもつ回折光学素子で、高い回
折効率を実現できる組み合わせの中には、通常の1層の
場合の屈折率差に比べ、各境界を形成する材質の屈折率
差を十分にとれず格子厚が厚くなる組み合わせが存在す
る。この格子厚が厚くなる組み合わせの場合、温度変化
による材質の屈折率変動で回折効率が低下してしまうと
いう問題点がある。
従来の1層の回折効率より悪化するものもある。
層を積層して回折光学素子を形成するとき、各層の材質
と格子厚を適切に構成することにより、高い回折効率を
有するとともに、温度変化による屈折率変動で回折効率
が劣化することがなく、常に使用波長域全域で高い回折
効率が維持できるような回折光学素子及びそれを用いた
光学系の提供を目的とする。
は、 (1)少なくとも2種類の分散の異なる材質からなる層
を複数、基盤上に積層し、各層で回折格子を形成し、使
用波長領域全域で特定次数(設計次数)の回折効率を高
くするようにした回折光学素子に於いて、各層はそれを
形成する材質の温度変化による屈折率変化率と各回折格
子の格子厚を掛け合わせた値を全ての層について加え合
わせ、このときの値が、使用波長に対して小さくなるよ
うな材質と格子厚の組み合わせより構成していることを
特徴としている。
第2層を基盤上に積層し、第1層と第2層の境界で第1
の回折格子面、第2層と空気の境界で第2の回折格子面
を形成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の
回折効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、
該第1層,第2層の材質の温度変化による屈折率変化率
を各々dn1/dt,dn2/dt、第1層に設けられた第1の回折
格子の格子厚をd1、第1の回折格子面と第2の回折格
子面をもつ、第2層に設けられた第2の回折格子の格子
厚をd2とし、温度変化による屈折率変化率に第1,第
2の回折格子の格子厚を掛け合わせた値φtを、 φt=( dn1/dt )d1 −(dn2/dt)d2 とし、温度変化量をΔt、設計次数をm、使用波長をλ
0としたとき |φt・Δt|<m・λ0/4 を満たすことを特徴としている。
質からなる層を複数、基盤上に積層し、各層で回折格子
を形成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の
回折効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、
第L層の材質の温度変化による屈折率変化をdnoL/dt と
し、第L層の回折格子の格子厚をdL、とし、温度変化
による屈折率変化率に各回折格子の格子厚を掛け合わせ
た値φtを、 φt =(dno1/dt )d1±(dno2/dt )d2±‥‥±
(dnoL/dt )dL とし、温度変化量をΔt、設計次数をm、使用波長をλ
0としたき |φt・Δt|<(m・λ0)/4 を満たすことを特徴としている。
において、 (3-1) 前記基盤上に形成した複数の回折格子の積層格子
構造は、1周期内での格子厚みが一方向で単調に減少し
ていく回折格子と、一方向で単調に増加する回折格子を
組み合わせて構成された構造を有し、少なくとも1 種類
は単調減少する格子と単調増加する格子が含まれた構成
とすることを特徴としている。
路長)が、1周期内で格子厚みが単調増加の場合は、単
調減少する層の材質の分散が、単調増加する層の材質の
分散より大きいこと。
形状(光学光路長)が、1周期内で格子厚みが単調減少
の場合は、単調増加する層の材質の分散が、単調減少す
る層の材質の分散より大きいこと。等を特徴としてい
る。
は、その材質がプラスチック光学材料または、紫外線硬
化樹脂であること。
こと。
のうち、基盤に接している層と基盤が同材質であるこ
と。
のm/ 8以下であること。等を特徴としている。
構成(1),又は(2)又は(3)の回折光学素子を一
部に用いていることを特徴としている。
学系に用いていることを特徴としている。
施形態1の正面図である。同図において回折光学素子1
は基盤2の表面に複数の層より成る多層部3が作成され
た構成となっている。
A’断面で切断した断面形状の一部である。図2は格子
(回折格子)の深さ方向にかなりデフォルメされた図と
なっている。本実施形態の回折格子の形状は、基盤2上
に互いに分散の異なる材質より成る第1層3−1と第2
層3−2を積層し、第1層3−1と第2層3−2との境
界で第1の回折格子面3aを形成し、第2層3−2と空
気との境界で第2の回折格子面3bを形成している。そ
して、第1層と第1の回折格子面により、第1の回折格
子3−1が、第2層とそれに接する第1の回折格子面と
第2の回折格子面により第2の回折格子3−2が、形成
されている。
1の回折格子3−1上に作られた第2の回折格子3−2
からなる構造を有している。
−1,3−2の形状は格子厚d1,d2が1周期内で図
中左から右に単調減少する第1の回折格子3−1と、1
周期内で単調増加する第2の回折格子3−2を重ね合わ
せた構成になっている。
種類の分散の異なる材質からなる層を複数、基盤上に積
層し、各層で回折格子を形成した格子構造をもち、各回
折格子の格子厚に各層の材質の温度変化による屈折率変
化率をかけあわせた値の総和が使用波長に比べて十分小
さくなるようにした構成したことを特徴としている。
期内の格子厚の厚みが分散の異なる材質間で単調増加
と、単調減少の層が少なくとも1組以上ある格子構造と
なることを特徴としている。
(光学光路長)が、1周期内で格子厚みが単調増加の場
合は、単調減少する層の材質の分散が、単調増加する層
の材質の分散より大きいことを特徴としている。
学光路長)が、1周期内で格子厚みが単調減少の場合
は、単調増加する層の材質の分散が、単調減少する層の
材質の分散より大きいことを特徴としている。
なる第1,第2の回折格子3−1,3−2を形成する層
の材質の組み合わせについて記述する前に、2層構造の
回折格子の回折効率の振る舞い及び従来の材質の組み合
わせの場合による回折効率についてに説明する。図12
に示すような空気中で使用される透過型の回折光学素子
1で、設計波長λ0で回折効率が最大となる条件は、光
束が回折格子3に対して垂直入射した場合は、回折格子
の山と谷の光学光路長差d0が波長の整数倍になればよ
く d0=(n0−1 )d=mλ0 ‥‥‥(1) となる。ここでn0は波長λ0での材質の屈折率、dは
格子厚、mは回折次数である。
向きの違う2つの回折格子が、重なって1つの回折光学
素子を構成しているので、(1)式と同様の条件式は (n01−1 )d1−(n02−1 )d2=mλ0 ‥‥‥(2) となる。ここで各層の格子厚d1,d2は絶対値の値と
なっている。またn01は第1層の材質の波長λ0での
屈折率、n02は第2層の材質の波長λ0での屈折率で
ある。このとき回折効率ηは η=sinc2 〔{(n01−1 )d1−(n02−1 )d2}/ mλ0−1 〕 =sinc2 (φ0 /mλ0) ‥‥‥(3) ここでφ0は位相誤差であり、φ0=(n01−1)d
1−(n02−1)d2−mλ0である。又、sinc
(x)=sin(πx)/ πx なる関数で表される。
れれば、回折効率ηは(3)式において位相誤差φ0が
0となり、η=sinc2
最大となる。
造について実際の数値を基に格子形状について説明す
る。使用波長域は可視域で、この回折格子の設計次数を
+1次(m=1)とする。基盤2及び第1の回折格子3
−1を形成する第1層3−1は低吸湿アクリル(nd=1.4
970 、νd=56.0)なる材質を使用し、第2の回折格子3
−2を形成する第2層3−2はCargille Laboratories
Inc.製のImmersion Liquid I.L1
160(nd=1.4820 、νd=42.3)なる材質を使用した。
(波長0.546μm)、g線(波長0.436μ
m)、C線(波長0.656μm)において、それぞれ
1.49911、1.50810、1.49432であ
る。
1.48480、1.49692、1.47881とな
る。従って(2)式は上記3つの波長についてそれぞれ
以下の式が成立する。 (1.49911−1)d1−(1.48480−1)d2=0.54607 ‥‥‥(4) (1.50810−1)d1−(1.49692−1)d2=0.435835 ‥‥‥(5) (1.49432−1)d1−(1.47881−1)d2=0.65627 ‥‥‥(6) 式が3つに対し変数が2つなので全ての式を満足する材
質の厚みは求められない。
から格子厚d1,d2を求めるとd1=35.4μm、d2
=35.4μmとなる。この厚みを(6)式の左辺に代入す
ると、0.549 となる。これは、光学光路長差が0.549 μ
mであることを意味し、C線の波長0.65627 μmに対し
て光路長差が短くなり、若干回折効率を最大にする条件
から外れている。このため、回折効率は(3) 式よりη=
sinc2 (0.549/1*0.656 −1 )= 98%程度に低下す
る。このようにして、使用波長領域で各波長に対して回
折格子の光学光路長差と波長の関係から回折効率が求め
られる。
における回折効率を示す。図中曲線で示された実線が
上記関係を満たす初期状態の回折光学素子1の回折効率
である。この図でg線、e線の波長では、回折効率が最
大となる条件を満足しているので、回折効率は100%
を示している。一方、C線の波長では、回折効率は98
%程度に低下している。しかし、従来の1層より成る回
折格子の回折効率では、図13に示したように最大68
%程度に低下しているのと比較すると、可視域全域で十
分高い回折効率を維持していることがわかる。
の回折効率を示す。図中曲線で示された曲線が同様に
初期状態の設計次数近傍(0次、2次)の回折効率であ
る。この図から設計次数近傍の回折光も全域で2%以下
と大幅に抑制されていることがわかる。
の屈折率が変化した場合の回折効率の変動について説明
する。各材質の温度tに対する屈折率nの変化量(屈折
率変化率)をdn/dtとし、温度変化量をΔtとす
る。このとき温度変化により各材質の屈折率は、n01
t=n01+(dn01/dt)*Δt、n02t=n
02+(dn02/dt)*Δtに変化する。
式より、 ηt=sinc2〔{(n01t−1)d1−(n02t−1 )d2}/ mλ0−1〕 =sinc2〔{(n01−1 )d1−(n02−1 )d2}/ mλ0−1+{( dn01/dt)*d1−(dn02/dt)*d2)}Δt/ mλ0〕 =sinc2 (φ0/ mλ0+φtΔt/ mλ0) ‥‥‥(7) で表される。
)d1−(n02−1 )d2}−mλ0の項は初期の
形状決定で決まる値であり、温度変化に依存しない。
による変動を抑制するためには、(7)式中φt=
{(dn01/dt)*d1−(dn02/dt)*d
2}の項が小さくなることが必要である。
場合の回折効率の変化量を示す。前記第1,第2層の材
質の温度変化による屈折率変化率はdn01/dt=1.2
×10-4、dn02/dt=-3.85×10-4である。
依存は説明を簡単にするため無視できるものとする。g
線、e線については(4),(5)式が成立するように
各格子厚を設定したのでφ0=0である。
4)=0.0179 となる。従ってg線、e線における回折効率ηtは ηt=sinc2 (0.0179*5/1*0.435835)=0.869 ηt=sinc2 (0.0179*5/1*0.54607 )=0.915 と初期状態では全波長域でほぼ97%以上の高い回折効
率が得られていたのに、g線では約13%程度も低下して
いる。
折効率を示す。図中曲線で示した初期状態の回折効率
に対し、曲線の点線で示された温度変化後の回折効率
は、多層回折格子により高い回折効率を得るという主目
的が満足されていない。逆に回折効率の変動を2%以下
に抑えようとすると、許容される温度変動は1.7degとな
り、温度制御など特殊な装置が必須となる。従って一般
向けのカメラ、ビデオ、事務機等のレンズへの使用はか
なり困難である。
化で回折効率が低下するのを抑制するようにした各層の
材料について説明する。初期性能についての材料の選択
は(2)式の等号関係を出来るだけ満足するように決定
する。
層より成るの回折光学素子で説明する。温度変化により
材質の屈折率変化が生じたときの回折効率は上述の
(7)式で表される。初期性能が良好な場合は、φ0≒
0と見做してよく、回折効率の変動を減少させるには
(7)式中φtΔtが十分小さな値をとることが必要で
ある。そのためにはφtが小さな値をとることが必要と
なってくる。
み合わせで2層より成る回折光学素子を構成することを
特徴としている。
る。1例として回折効率の変動が使用全波長域で2%以
下としたときの許容値を求める。温度変化量をΔt=3
0degとすると、φt/ mλ0は2.6×10-3以下とす
る必要がある。このとき回折格子の設計次数を1次(m
=1)とし、使用波長域を可視光域0.4 〜0.7 μmとす
ると、φtの値としては短波長の0.4 μmで1.04×10
-3、長波長の0.7 μmで1.82×10-3以下となる材質と
格子厚の組み合わせが必要となる。
べる。可視光域で使用する光学材料の多くは、いわゆる
光学ガラスであるが、2種類の材質としてそれぞれ光学
ガラスを選んだ場合には、dn01/dt、dn02/
dt自体が10-6のオーダーの小さな変化量であるの
で、前述した35μm程度の格子深さを有しても、φt
は充分小さな値となる。
するには加工上容易なことではない。従って製造の容易
さから2層の内少なくとも一方をプラスチック光学材料
や、紫外線硬化樹脂材料などを選択することが望まし
い。まずどちらか一方が光学ガラスで他方がプラスチッ
ク光学材料や、紫外線硬化樹脂材料を用いた場合につい
て説明する。
般的に1.2 ×10-4程度の値をもつ。これに比べて光学
ガラスのdn/dtは十分小さいので、ガラスの材質の
屈折率変化の影響はこの組み合わせでは無視できる。1
層めが光学ガラス、2層めがプラスチック光学材料の組
み合わせを例にとる。この場合にはφt≒(−dn02
/dt)*d2が前述の所望の値以下になればよく、プ
ラスチック光学材料等で構成される回折格子側の格子厚
dを8.5 μm以下とすれば、回折効率の温度変化による
低下は2%以下に抑制できる。
や、紫外線硬化樹脂材料を用いる組み合わせの場合、2
種類の層の屈折率差を充分大きくとれないので、各格子
厚を薄くにするのは容易ではない。そこで各々の層で発
生する屈折率変化量をうまく相殺できるように、φtの
合成で所望の値以下になるような組み合わせを見つける
のが好ましい。
で同量の場合で且つ格子厚d1とd2の深さが等しい場
合は、温度による回折効率の低下は完全に0にすること
ができる。また、格子厚d1とd2の深さの差が8.5 μ
m以下であれば、1 種類だけをプラスチック光学材料
や、紫外線硬化樹脂材料を用いた場合と同様に回折効率
の温度変化による低下は2%以下にすることができる。
用いた場合の回折効率の説明図である。図3は設計次数
である+1次回折光の回折効率を、図4は設計次数近傍
の次数である0次と2次の回折効率を示すグラフであ
る。
してプラスチック光学材料PMMA(nd=1.4917 、νd=
57.4)を、第2層にはプラスチック光学材料PS(nd=
1.5918 、νd=31.1)をそれぞれ用い、図2に示すよう
に積層して構成している。
m、第2層が14.7μmの厚みである。この構成では第1
層と第2層の材料がともにプラスチック材料であり、温
度変化による屈折率変化率はほぼ等しく、dn/ dt=
1.2×10-4程度の値となる。
図15と同様に曲線が初期状態の回折効率、曲線が
温度変化後の回折効率を示している。ただし、本実施形
態における曲線の温度変化量ΔtはΔt=30deg で
ある。従来の材質の温度変化の影響を考慮しない組み合
わせの場合、図14での温度変化量はわずか5deg の温
度変化で回折効率はかなり悪化していたのに比べ、本実
施形態の組み合わせでは、温度変化量が大幅に増大した
にもかかわらず、回折効率の変化量は僅か2%未満と良
好に抑制されている。
を2%以下に抑制する場合の組み合わせについて説明を
した。ここで回折効率の温度変化による変動の要因であ
るφtΔtの値が取りうる範囲について述べる。
値が十分小さな値となることが前提となっている。比較
として初期のφ0の値が小さくならない図12に示した
1 層の回折光学素子のφ0の値を調べてみる。この場
合、波長400nmと700nmの時の材質であるPM
MAの屈折率はそれぞれ1.50798 と1.48787 になる。従
ってφ0の値は φλ=0.4=(1.50798 −1 )1.07−1*0.4 =0.359 mλ
0 φλ=0.7=(1.48787 −1 )1.07−1*0.7 =-0.254mλ
0 となる。
にすれば、本発明の回折光学素子のφtΔtの絶対値を
mλ0/4以下にできれば、温度変化が生じた場合で
も、1層のみで構成された回折光学素子の初期状態より
回折効率が悪化することはなく、本発明の効果を奏する
ことができる。
下にできれば、温度変化が生じた場合の回折効率の変動
量を5%以下にすることが可能となり好ましい。
よる材質の屈折率変化率dn/ dtと格子厚dの積から
なる(dn/ dt)*dの和の値を小さくなるような組
み合わせの材料を用いることを特徴としている。
0degくらいある場合でも、回折効率の変動を良好に
抑制でき、一般向けのカメラ、ビデオ、事務機等のレン
ズへ特殊な温度制御機構を設けることなく使用すること
ができる。
ついて説明する。前記実施形態1では2層より成るとき
の材質の組み合わせについて述べたが、2層に限定する
ものではなく、格子形状としては図5のような複数の層
3−1,3−2,3−3からなる回折光学素子でもよ
い。そこで2層以上の多層を用いた回折光学素子の場合
について説明する。
層が空気中に分離されてL層より成る回折格子が配置さ
れている構成とする。各回折格子面3a,3b,3cが
密接に配され、全体で1つの回折格子として作用する場
合で、且つ格子境界面の反射を考慮しない場合は、図5
と図6の回折光学素子はその光学作用が同じとなる。こ
こで格子厚は、1 周期内の各回折格子の最大厚と最小厚
の差とする。
0Lとする。このように定義すると(2)式に対応する
式は (n01−1)d1±(n02−1)d2±‥‥±(n0L−1)dL=mλ0 ‥‥‥(8) で表現される。ここでφ0=(n01−1)d1±(n
02−1)d2±‥‥±(n0L−1)dL−mλ0と
すると、同様に全体の回折効率ηも η=sinc2 (φ0/mλ0) ‥‥‥(9) となる。
りに回折するのを正の回折次数とすると、(8)式の±
の符号は図中左から右に格子厚が減少する格子形状(第
1,第3層)が正となり、逆に左から右に格子厚が増加
する格子形状(第2層)が負となる。
動率をdn0L/dtとし、温度変化量をΔtとすると
各層の温度変化による屈折率変化は、n0Lt=n0L
+(dn0L/dt)*Δtに変化する。従って温度変
化により回折効率ηtは ηt=sinc2 〔{(n01t−1 )d1±(n02t−1)d2±‥‥ ±(n0Lt−1)dL−mλ0}/mλ0〕 =sinc2 〔{(n01−1)d1±(n02−1)d2±‥‥ ±(n0L−1)dL−mλ0}/mλ0+{(dn01/dt)*d1 ±(dn02/dt)*d2±‥‥ ±(dn0L/dt)*}Δt/mλ0〕 =sinc2 {(φ0/mλ0)+φtΔt/(mλ0)} ‥‥‥(10) となる。ここでφt={(dn01/dt)*d1±
(dn02/dt)*d2±‥‥±(dn0L/dt)
*dL}である。
増域に対応している。従って2層以上の多層回折格子に
おいても前述の2層の場合と同様にφtの値を所望の値
以下にするように材質のdn/dtと格子厚の組み合わ
せを決定する。
状に限定して説明を行った。しかし、回折格子の回折効
率については、回折格子のピッチは基本的には影響しな
いことが、公知である。つまり本実施形態は図1に示し
た1次元の回折格子の他に、例えば図7に示すような回
折光学レンズなどあらゆる格子ピッチ形状を有する回折
光学素子に応用することができる。
示すような階段形状のもの等も適用可能であり、特に限
定したものではなく、公知の格子形状を利用することが
できる。但し、図8に示す階段形状の場合は、実際の格
子の厚みd1’、d2’は前述のキノフォーム時の格子
厚d1、d2に対して、 d1’=d1*(N−1)/ N d2’=d2*(N−1)/ N なる関係を有している。ここでNは階段格子の格子段数
である。階段形状の回折格子の場合は、光学光路長差を
決定する場合の格子厚dと実際の格子厚d’が異なる。
子を設けた回折光学素子であるが、回折格子をレンズ曲
面表面に設けても同様の効果が得られる。
盤上に製作しているが、モールド成形などで、基盤と第
1の回折格子を同じ材質の一体成形で製作しても良い。
場合を示したが、1次光に限定するものではなく、2次
光などの異なった回折次数光であっても、合成光学光路
長差を所望の回折次数で所望の設計波長となるように設
定すれば同様の効果が得られる。
ついて説明する。前述の実施形態1,2において、第2
の回折格子を形成する層の格子厚の一番薄い部分が厚み
が0となっていた。この構成だと第2の回折格子は格子
ピッチごとに分離された構成となっており、型による製
造では、型からうまく剥離し転写しにくい。
域に第2の回折格子3−2を形成する層と同じ材質より
成る平坦部4を一定の厚み(図中doff )で付加した構
造にしている。これによって第2の回折格子3−2は結
合され、型による成形では型から剥離しやすくなるよう
にしている。
の実施形態4を図10に示す。図10はカメラ等の撮影
光学系の断面を示したものであり、同図中、5は撮影レ
ンズで、内部に絞り6と本発明に係る平板状の回折光学
素子1を設けている。7は結像面であるフィルムであ
る。
画像の撮影に適した回折光学素子の構成について説明す
る。本実施形態の場合は、カラーフィルムの各感光層の
ヒ゜ーク波長について、前述の(4),(5),(6)式に
対応する関係を求め、同様に求めている。
折光学素子1を設けたが、これに限定するものではな
く、レンズ曲面表面に回折格子を設けても良いし、撮影
レンズ内に複数、回折光学素子を使用しても良い。
ズの場合を示したが、これに限定するものではなく、ビ
デオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナー
や、デジタル複写機のリーダーレンズなどに使用しても
同様の効果が得られる。
学系の実施形態5の要部概略図である。図11は、双眼
鏡等観察光学系の断面を示したものであり、同図中、8
は対物レンズ、9は像を成立させるための像反転プリズ
ム、10は接眼レンズ、11は評価面(瞳面)である。
図中1は回折光学素子である。回折光学素子1は対物レ
ンズ8の結像面7での色収差等を補正する目的で形成さ
れている。
学素子1を形成した場合を示したが、これに限定するも
のではなく、プリズム表面や接眼レンズ10内の位置で
あっても同様の効果が得られる。結像面7より物体側に
設けると対物レンズ8のみでの色収差低減効果があるた
め、肉眼の観察系の場合、少なくとも対物レンズ8側に
設けることが望ましい。
たが、これに限定するものではなく地上望遠鏡や天体観
測用望遠鏡などであってもよく、またレンズシャッター
カメラやビデオカメラなどの光学式のファインダーであ
っても同様の効果が得られる。
2層又はそれ以上の多層を積層して回折光学素子を形成
するとき、各層の材質と格子厚を適切に構成することに
より、高い回折効率を有するとともに、温度変化による
屈折率変動で回折効率が劣化することがなく、常に使用
波長域全域で高い回折効率が維持できるような回折光学
素子及びそれを用いた光学系を達成することができる。
使用すれば、特殊な温度制御機構をレンズ内に使用する
必要はなく、通常の屈折レンズと同等の使用条件下で所
望の特性が得られ、安価で高精度な撮影レンズを提供で
きる。
使用すれば、特殊な温度制御機構を光学系内に使用する
必要はなく、通常の屈折光学系と同等の使用条件下で所
望の特性が得られ、安価で高精度な観察光学系を提供で
きる。
図
図
の回折光率の説明図
の近傍の回折効率の説明図
図
図
の概略図
の概略図
説明図
率の説明図
Claims (13)
- 【請求項1】 少なくとも2種類の分散の異なる材質か
らなる層を複数、基盤上に積層し、各層で回折格子を形
成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の回折
効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、各層
はそれを形成する材質の温度変化による屈折率変化率と
各回折格子の格子厚を掛け合わせた値を全ての層につい
て加え合わせ、このときの値が、使用波長に対して小さ
くなるような材質と格子厚の組み合わせより構成してい
ることを特徴とする回折光学素子。 - 【請求項2】 分散の異なる材質からなる第1層と第2
層を基盤上に積層し、第1層と第2層の境界で第1の回
折格子面、第2層と空気の境界で第2の回折格子面を形
成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の回折
効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、該第
1層,第2層の材質の温度変化による屈折率変化率を各
々dn1/dt,dn2/dt、第1層に設けられた第1の回折格子
の格子厚をd1、第1の回折格子面と第2の回折格子面
をもつ、第2層に設けられた第2の回折格子の格子厚を
d2とし、温度変化による屈折率変化率に第1,第2の
回折格子の格子厚を掛け合わせた値φtを、 φt=( dn1/dt )d1 −(dn2/dt)d2 とし、温度変化量をΔt、設計次数をm、使用波長をλ
0としたとき |φt・Δt|<m・λ0/4 を満たすことを特徴とする回折光学素子。 - 【請求項3】 少なくとも2種類の分散の異なる材質か
らなる層を複数、基盤上に積層し、各層で回折格子を形
成し、使用波長領域全域で特定次数(設計次数)の回折
効率を高くするようにした回折光学素子に於いて、第L
層の材質の温度変化による屈折率変化をdnoL/dt とし、
第L層の回折格子の格子厚をdL、とし、温度変化によ
る屈折率変化率に各回折格子の格子厚を掛け合わせた値
φtを、 φt =(dno1/dt )d1±(dno2/dt )d2±‥‥±
(dnoL/dt )dL とし、温度変化量をΔt、設計次数をm、使用波長をλ
0としたき |φt・Δt|<(m・λ0)/4 を満たすことを特徴とする回折光学素子。 - 【請求項4】 前記基盤上に形成した複数の回折格子の
積層格子構造は、1周期内での格子厚みが一方向で単調
に減少していく回折格子と、一方向で単調に増加する回
折格子を組み合わせて構成された構造を有し、少なくと
も1 種類は単調減少する格子と単調増加する格子が含ま
れた構成とすることを特徴とする請求項1、2、3記載
の回折光学素子。 - 【請求項5】 前記複数の層のうち、その光学的形状
(光学光路長)が、1周期内で格子厚みが単調増加の場
合は、単調減少する層の材質の分散が、単調増加する層
の材質の分散より大きいことを特徴とする請求項4の回
折光学素子。 - 【請求項6】 前記複数の層のうち、その光学的形状
(光学光路長)が、1周期内で格子厚みが単調減少の場
合は、単調増加する層の材質の分散が、単調減少する層
の材質の分散より大きいことを特徴とする請求項4の回
折光学素子。 - 【請求項7】 前記複数の層のうち少なくとも1つは、
その材質がプラスチック光学材料または、紫外線硬化樹
脂であることを特徴とする請求項1,2又は3の回折光
学素子。 - 【請求項8】 前記使用波長域が、可視光域であること
を特徴とする請求項1,2又は3の回折光学素子。 - 【請求項9】 前記基盤の上に積層された複数の層のう
ち、基盤に接している層と基盤が同材質であることを特
徴とする請求項1,2又は3の回折光学素子。 - 【請求項10】 前記|φt・Δt|の値が使用波長の
m/ 8以下であることを特徴とする請求項2又は3の回
折光学素子。 - 【請求項11】 請求項1〜10のいずれか1項記載の
回折光学素子を用いたことを特徴とする光学系。 - 【請求項12】 前記光学系は、結像光学系であること
を特徴とする請求項11の光学系。 - 【請求項13】 前記光学系は、観察光学系であること
を特徴とする請求項11の光学系。
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