JP4673120B2 - 回折光学素子及びこれを有する光学系 - Google Patents

回折光学素子及びこれを有する光学系 Download PDF

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Description

本発明は回折光学素子及びこれを有する光学系に関するものである。
従来、硝材の組み合わせによりレンズ系の色収差を減じる方法に対して、レンズの表面やレンズ系の一部に回折作用を有する回折光学素子を設けることでレンズ系の色収差を減じる方法が知られている(非特許文献1、特許文献1〜3)。この回折光学素子を用いる方法は、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。
また、回折光学素子は、その周期的構造の周期を適宜変化させることで非球面レンズ的な効果を持たせることができるので、色収差以外の諸収差の低減にも効果がある。
回折光学素子を有するレンズ系において、使用波長領域の光束が特定の一つの次数(以下、「特定次数」又は「設計次数」とも言う)の回折光に集中している場合は、それ以外の次数の回折光の強度は低いものとなり、強度が0の場合はその回折光は存在しないものとなる。しかし、実際には設計次数以外の次数の不要回折光が存在し、ある程度の強度を有する場合は、設計次数の光線とは別な経路で光学系を進行するため、フレア光となる。
従って回折光学素子を利用して収差低減作用を利用するためには、使用波長領域全域において設計次数の回折光の回折効率が十分高いことが必要となってくる。この設計次数での回折効率の分光分布及び設計次数以外の不要回折光の振る舞いについても十分考慮する事が重要である。
そこで、回折効率を改善し、不要回折光を低減する構成の回折光学素子が、様々と提案されている(特許文献4〜6)。特許文献4〜6に開示された回折光学素子は、複数の回折格子を積層配置すると共に、各回折格子を構成する材料や各回折格子の高さを適切に設定することで(以下、このような回折光学素子を「積層DOE」という)、所望の次数の回折光に対し、広い波長帯域で高い回折効率(450nm〜650nmの波長域で98%程度)を実現している。なお、回折効率は全透過光束の光量に対する各次数の回折光の光量の割合で表される。
また、特許文献6では、温度変化によって回折格子を形成する材料の屈折率が変化し、回折効率が変化するという課題に着目し、それを低減させる構成が開示されている。具体的には、各回折格子を形成する2つの材料の温度変化による屈折率変化や、2つの回折格子の格子高さを最適に設定することで、30℃の温度変化の範囲内で、回折効率の変化を抑制している。このように、設計上の回折効率の改善だけでなく、使用環境における性能の安定化の観点から、回折格子を形成する材料や、回折格子の形状の最適化が行なわれている。
最近では、回折効率を更に高めた回折光学素子が提案されている(特許文献7)。特許文献7では、回折格子を構成する材料として、材料の部分分散比θgFを考慮して樹脂材料に無機の微粒子を混在させた微粒子分散樹脂を採用した回折光学素子を開示している。そして、図14中の曲線1が示すように、使用波長全域で99.8%以上の高い回折効率を得ている。
特許文献7に開示された回折光学素子では、不要回折次数である設計次数±1次の回折光(0次、+2次回折光)の回折効率も、各々図15、図16中の曲線1で示されるように、使用波長全域で0.05%以下と良好に抑制されている。結果的に特許文献7に開示された回折光学素子は、従来の材料を使用した回折光学素子に比べて不要回折光を約1/10まで低減している。
SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference (1990) 特開平4−213421号公報 特開平6−324262号公報 米国特許第5044706号 特開平9−127322号公報 特開2000−098118号公報 特許第03495884号 特開2004−78166号公報
特許文献7に開示された回折光学素子では、回折効率が大幅に改善されているが、使用環境による回折効率の変動を抑制することが更に好ましい。
特許文献6に開示されている回折光学素子は、例えば30℃の温度変化で設計次数の回折効率の変化が2%程度に抑制されている。設計次数の回折効率が2%変化すると言うことは、特許文献7の回折光学素子を用いて99.8%まで改善された回折効率が、温度変化で98%程度まで劣化することを意味する。特許文献7による改善前の回折光学素子の回折効率が、450nmから650nmの波長域で98%程度であることを考えると、これでは特許文献7による回折効率改善の効果が全くなくなってしまう。
図14〜図16の曲線2は、30℃の温度変化により材料の屈折率が変化した場合の回折効率である。図14〜図16から明らかなように、設計次数である+1次回折光の回折効率が0.5〜2.0%程度減少し、その分、不要回折光である0次、+2次回折光の回折効率が0.2〜0.7%程度増加している。
なお、ここでは温度変動による回折効率の変化を例に挙げて説明したが、吸湿によって回折格子を構成する材料の光学特性が変化することも考えられる。すなわち、湿度変動等も含めた環境変動に対する回折効率の変化を考慮することが重要である。
実際には、環境変動に対する回折効率の変化の度合いは、初期の回折効率や、格子形状の組み合わせで若干振る舞いが変わる。しかし、環境変動に対する回折効率の変化は、基本的には材料の特性に依存するので、材料の環境変化特性を改善することが重要になってくる。
図14の曲線2の変動を0.2%程度の変動に抑制できれば、環境変化があっても、回折効率は十分に高いといえる。そこから、材料の環境変化特性を逆に求めると、前述した屈折率変化の場合、一般的な樹脂の1/4から1/8に改善することとなる。これは、樹脂材料においては根本的な物性を変化させることに相当し、実現するのは難しい。
樹脂以外の材料、具体的にはガラスなどを用いれば、環境変化に対する屈折率変化を、樹脂の1/10程度と大幅に改善することが可能である。しかしこの場合は、積層型DOEを構成する全ての材料をガラスで構成する必要があり、特許文献7に開示されたような微粒子を分散させた材料を使うことができない。このため、初期性能を改善するための新規な材料が必要となる。
本発明は、環境変動に対する回折効率の変化耐性が高く、しかも使用波長域で高い回折効率を実現可能な回折光学素子を提供することを目的とする。
本発明の回折光学素子は、複数の回折格子を有し、該複数の回折格子を通過する光の最大光路長差が複数の波長でその波長の整数倍である回折光学素子において、樹脂に無機微粒子が分散された第1の材料で形成される第1の回折格子と、前記樹脂を用いた第2の材料で形成される第2の回折格子とを有し、前記第1の材料は、前記無機微粒子の体積比が5%以上25%未満であり、前記第1の材料と前記第2の材料は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満足することを特徴としている。
0.8≦dn1/dtdn2/dt≦1.25
0.8≦α1/α2≦1.25
0.8≦β1/β2≦1.25
ここで、dn1/dtは前記第1の材料の温度変動に対する屈折率変化、
dn2/dtは前記第2の材料の温度変動に対する屈折率変化、
α1は前記第1の材料の線膨張係数、
α2は前記第2の材料の線膨張係数、
β1は前記第1の材料の膨潤率、
β2は前記第2の材料の膨潤率、
である。
本発明によれば、環境変動に対する回折効率の変化耐性が高く、しかも使用波長域で高い回折効率を実現可能な回折光学素子を得ることができる。
以下に図面を用いて本発明の回折光学素子の実施形態について説明する。
図1は実施例1の回折光学素子の正面図及び側面図である。図2は図1の回折光学素子を図中A−A′断面で切断した断面形状の一部である。図2は、格子形状を分かりやすくするために、格子高さ(深さ)方向にかなりデフォルメされた図となっている。図1、図2において、回折光学素子1は、第1素子部2と第2の素子部3とを距離Dだけ離して近接配置した構成(積層構成)となっている。
第1の素子部2は、第1の基板4と、第1の基板4上に設けられた第1の回折格子6とで構成されている。第2の素子部3は、第2の基板5と、第2の基板5上に設けられた第2の回折格子7とで構成されている。第1の回折格子6の格子面8と第2の回折格子7の格子面9とは、空気層10を介して近接した構成となっている。
6bは第1の回折格子6を形成する各格子部、7bは第2の回折格子7を形成する格子部である。格子部6b,7bは所定の格子ピッチで配置されている。第1、第2の回折格子6,7は同心円状の格子形状からなり、格子部6b,7bの格子ピッチを中心(光軸)から周辺へ向かって徐々に小さくすることでレンズ作用(収斂作用又は発散作用)を得ている。
そして、第1の素子部2の回折格子6と第2の素子部3の回折格子7は、ほぼ等しい格子ピッチ分布を持っており、対向する各格子部の幅がほぼ等しくなっている。
各回折格子6,7は、全層を通して一つの回折光学素子として作用している。
尚、本実施例では、第1、第2の素子部2,3を各々1つの回折格子6,7で構成した場合を示しているが、後述の実施例2で説明するように、各素子部を2層以上の回折格子を積層した構成としても良い。この場合、本実施例では、第1の回折格子6の格子面8及び第2の回折格子の格子面9を空気層10との境界面に形成しているが、空気以外の2つの異なる材料(光学材料)の境界面に格子面が形成されることになる。
又、基板4,5を平板として示しているが、基板4,5の回折格子を設ける面は平面に限らず球面や非球面であっても良い。
本実施例では、第1の回折格子6を形成する格子形成材料(第1の材料)6aに、無機微粒子を分散させた樹脂材料(以下、微粒子分散樹脂という)を用いている。第2の回折格子7を形成する格子形成材料(第2の材料)7aは、通常使用される樹脂材料を用いている。
尚、回折光学素子1を3層以上の回折格子を積層して構成するときは、1以上の回折格子の材料に微粒子分散樹脂を用いても良い。
また、回折格子6,7は、格子部6b,7bの格子ピッチをP(μm)、各格子部6b,7bの格子高さ(格子厚)をd(μm)としたとき、いずれもd/P<1/6を満たしている。
この条件を満たしていると、素子自身又は素子製造用の型に対し格子形状を機械加工し易い。
また、本実施例の回折光学素子の使用波長領域は可視域である。このため、可視領域全体で+1次の回折光の回折効率が高くなるように、第1の回折格子6及び第2の回折格子7を構成する材料及び格子高さを選択している。すなわち、複数の回折格子(回折格子6,7)を通過する光の最大光路長差(回折部の山と谷の光学光路長差の最大値)が使用波長域内の複数の波長で、その波長の整数倍となるよう、各回折格子の材料及び格子高さが定められている。このように回折格子の材料、形状を適切に設定することによって、使用波長全域で高い回折効率が得られる。
更に、本実施例の回折光学素子は、環境変動に対する回折効率の変化が最小限となるよう、微粒子分散樹脂で形成された第1の回折格子6を構成する材料と、それ以外の樹脂で形成された第2の回折格子7を構成する材料とを選定している。具体的には、第1の回折格子6を構成する微粒子分散樹脂と第2の回折格子7を構成する樹脂材料を、温度変化に対する屈折率の変化が実質的に等しい材料、又は線膨張係数が実質的に等しい材料、又は膨潤率が実質的に等しい材料、又は吸水率が実質的に等しい材料の1以上の条件を満足する材料から選定する。
又、微粒子としては、TiO、Nb、Cr、BaTiO、ITO(Indium Tin Oxide)のうち1以上の材料が使用できる。微粒子は回折格子6の材料6aに体積比で5%以上25%未満で樹脂中に分散されており、微粒子が分散された回折格子6の材料6aのアッベ数は30以下である。
次に本実施例の回折光学素子1の回折効率について説明する。
2つ以上の回折格子を積層した積層型DOEにおいて、設計波長λ0である次数の回折光の回折効率が最大となる条件は、格子部の山と谷の光学光路長差(つまり山の頂点と谷底のそれぞれを通過する光線間の光路長の差)を全回折格子に亘って加え合わせたものが波長の整数倍になるように決定することである。
従って、図1、図2に示した本実施例の回折光学素子1において、設計波長λ0で、回折次数mの回折光の回折効率が最大となる条件式は
±(n01−1)d1±(n02−1)d2=mλ0 (1)
となる。(1)式で、n01は第1の回折格子6を形成する材料の波長λ0での屈折率、n02は第2の回折格子7を形成する材料の波長λ0での屈折率、d1、d2はそれぞれ第1の回折格子6と第2の回折格子7の格子高さ、mは回折次数である。
ここで、図2中の0次回折光から下向きに回折する光線を正の回折次数、図2中の0次回折光から上向きの方向に回折する光線を負の回折次数とする。(1)式での各層の格子高さの加減の符号は、図中下から上に格子高さが減少する格子形状の場合(図の第2の回折格子7)が正となり、逆に下から上に格子部の格子高さが増加する格子形状(図の第1の回折格子6)の場合が負となる。つまり図2の構成では、(1)式は、
−(n01−1)d1+(n02−1)d2=mλ0 (2)
と書き換えられる。
図2の構成において、設計波長λ0以外の波長λでの回折効率η(λ)は、
η(λ)=sinc2〔π{M−{−(n1(λ)−1)d1+(n2(λ)−1)d2}/λ}〕
=sinc2〔π{M−Φ(λ)/λ}〕 (3)
で表わすことができる。(3)式中のφ(λ)は、
φ(λ)=−{n1(λ)−1}d1+{n2(λ)−1}d2 (4)
であり、Mは評価すべき回折光の次数、n1(λ)は第1の回折格子6を形成する材料の波長λでの屈折率、n2(λ)は第2の回折格子7を形成する材料の波長λでの屈折率、d1,d2はそれぞれ格子部6b,7bの格子高さである。
次に、環境変動に対して回折光学素子を構成する材料の特性が変化した場合の回折効率の変動について説明する。回折効率η(λ)の式(3)で環境変化により特性が変化するのは材料の屈折率と格子高さである。つまり環境変動に対するφ(λ)の変化を考えれば良い。材料の屈折率及び格子高さの環境による変化量を、それぞれΔn1(λ),Δn2(λ),Δd1,Δd2とすると、(4)式は以下のようになる。
φ(λ,Δn,Δd)=−{n1(λ)+Δn1(λ)−1}(d1+Δd1)
+{n2(λ)+Δn2(λ)−1}(d2+Δd2)
(5)
(5)式を整理すると、
φ(λ,Δn,Δd)=−{n1(λ)−1}d1+{n2(λ)−1}d2
−Δn1(λ)d1+Δn2(λ)d2
−{n1(λ)−1}Δd1+{n2(λ)−1}Δd2
−Δn1(λ)Δd1+Δn2(λ)Δd2
=φ(λ)+φ(Δn)+φ(Δd)+φ(Δn,Δd)
(6)
ここで、
φ(Δn)=−Δn1(λ)d1+Δn2(λ)d2 (7)
φ(Δd)=−{n1(λ)−1}Δd1+{n2(λ)−1}Δd2 (8)
φ(Δn,Δd)=−Δn1(λ)Δd1+Δn2(λ)Δd2 (9)
である。
以下の実施例1の説明を簡単にするために、屈折率の変化Δn(λ)は、波長依存性が無視できるとし、また、変化量Δn (λ),Δdはn(λ)やdに比べて相対的に小さいので、変化量を掛けた値φ(Δn,Δd)は無視できるものとする。
したがって、(6)式から環境変化に対するφ(λ)の変化φ(λ,Δn,Δd)は、初期の回折効率を規定するφ(λ)に、屈折率の変動に起因する変化φ(Δn)と、格子高さの変動に起因する変化φ(Δd)が付加された特性であることがわかる。
実施例1の回折光学素子は、φ(Δn),φ(Δd)をそれぞれ大幅に小さくできることが特徴となる。積層型DOEでは、前述したように、格子高さの増加方向が逆向きの回折格子が少なくとも1つずつ存在している。そのため、この格子高さの変化の方向が互いに異なる回折格子、式の上では加減の符号の異なる回折格子に、環境変化による屈折率の変動や、格子高さの変動が等しい特性の材料を採用する。これにより、各回折格子で発生する変動量を打ち消し合っている。そして結果として、積層型DOEとして合成された系で発生するφ(Δn),φ(Δd)を大幅に低減している。
そこで、まず本実施例の回折光学素子では、初期の回折効率(設計上の回折効率)を大幅に改善する構成として、格子形成材料に前述した無機微粒子を分散させた樹脂を用いている。(3)式で初期の回折効率特性を改善するため、微粒子分散樹脂で形成された回折格子の任意の格子部は、少なくとも1つ以上、微粒子分散樹脂で形成された回折格子の任意の格子部の格子高さの変化の向きが逆方向の回折格子と組み合わせて用いられる。
次に、環境変化による回折効率の変化を抑制するために、微粒子分散樹脂で形成された回折格子と、微粒子分散樹脂以外の樹脂で形成され、且つ格子高さの変化の方向が異なる回折格子とに、環境変動に対する特性の変化が実質的に等しい材料を採用している。
以上の説明において、環境変化により回折効率の特性を変化させる要因として、回折格子を構成する材料の屈折率と格子高さを対象とした。より具体的には、環境変化による屈折率の変化は、温度変化による屈折率の変化dn/dtを考える。格子高さの変化は、温度変化による膨張(線膨張係数)と、湿度変化による膨張(膨潤率)を考える。
これらを考慮すると、対応する(7)式、(8)式は、以下のようになる。
φ(Δn)=−(dn1/dt)Δtd1
+(dn2/dt) Δtd2 (10)
φ(Δd)=φ(Δdt)+φ(Δdh)
=−{n1(λ)−1}(1+α1Δt)d1
+{n2(λ)−1}(1+α2Δt)d2
−{n1(λ)−1}(1+β1)d1
+{n2(λ)−1}(1+β2)d2 (11)
ここで、
φ(Δdt)=−{n1(λ)−1}(1+α1Δt)d1
+{n2(λ)−1}(1+α2Δt)d2 (12)
φ(Δdh)=−{n1(λ)−1}(1+β1)d1
+{n2(λ)−1}(1+β2)d2 (13)
である。また、dn1/dt,dn2/dtは、それぞれ第1の回折格子6及び第2の回折格子7を形成する材料の温度変化による屈折率変化率、Δtは温度変化量、φ(Δdt)は温度変化による格子高さ変化成分、φ(Δdh)は湿度変化による格子高さ変化成分、α1,α2は、それぞれ第1の回折格子6及び第2の回折格子7を形成する材料の線膨張係数、β1,β2はそれぞれ第1の回折格子6及び第2の回折格子7を形成する材料6a,7aの膨潤率を表わしている。
続いて、実施例1の特徴を説明するため、実際の回折光学素子の構成を例に詳細に説明する。
第1の回折格子6の材料として、無機微粒子を体積比率で10%混在させた樹脂材料(nd=1.567、νd=20.8)を用い、格子高さd1は11.12μmとする。第2の回折格子7の材料として、大日本インキ化学工業(株)製の紫外線硬化樹脂C001(nd=1.524、νd=50.8)を用い、格子高さd2は13.15μmとする。
図3にこの回折光学素子の設計次数(+1次)での回折効率の特性を示す。
又、設計次数である+1次に対して±1次である0次と+2次の回折効率の特性を、それぞれ図4、図5に示す。設計次数の回折効率は可視全域で99.8%以上得られており、それに伴い不要次数のフレア光も可視全域で0.05%以下となっている。
ここで、不要次数光の回折効率については0次と+2次の回折光についてのみ対象にしているが、これは設計次数から離れた回折次数ほどフレアに寄与する割合が少ないためである。設計次数に近い0次と+2次のフレア光が低減されれば、それ以外の高次の回折光によるフレア光も同様に影響を低減できる。特定の設計次数に主に回折するように設計された回折光学素子は、設計次数から離れた次数にいくに従って、回折効率は低下している傾向にあることと、設計次数から離れた次数ほど、結像面でぼけが大きくフレアとしては目立たなくなってくることに起因している。
図6は、回折光学素子1を形成している回折格子6,7の材料の可視波長域での屈折率特性である。図6中において、材料1が、第2の回折格子7を形成している材料であり、材料2が第1の回折格子6を形成している微粒子分散樹脂材料を表わしている。図6から、いずれの材料も波長に対して屈折率が線形に変化していることが見て取れる。
図7は、材料の部分分散特性を表わす図である。横軸νd、縦軸θgFはそれぞれ、
νd=(nd−1)/(nF−nC) (14)
θgF=(ng−nF)/(nF−nC) (15)
で定義される値である。ここで、nd,ng,nF,nCはそれぞれ、d線、g線、F線、C線における屈折率である。
図7中において材料2が、第1の回折格子6に採用した微粒子分散樹脂材料を表わしている。図7から、一般の光学材料に比べ、部分分散の小さな特殊な特性を有していることがわかる。
次に、環境変化による回折効率の変化について説明する。図3〜図5の曲線2は、上述した材料構成において温度変化により屈折率変化が生じた場合の回折効率を表わす。設計次数である+1次の回折効率の変動は0.2%以内、不要回折光である0次、+2次回折光の回折効率の変動も0.05%以内と、非常に良好に抑制されていることがわかる。ここで温度変化Δtは30℃とした。
第2の回折格子7を構成する紫外線硬化樹脂C001の温度変化による屈折率変化dn/dtは、−1.45×10−4/℃であり、第1の回折格子6を構成する微粒子分散樹脂の温度変化による屈折率変化dn/dtは、−1.4×10−4/℃である。図14〜図16の曲線2に示した、従来の微粒子分散樹脂における温度変化による屈折率変化dn/dtは、−2.5×10−4/℃である。このように、実施例1で用いる微粒子分散樹脂は、第2の回折格子7を構成する樹脂と温度による屈折率変化の特性がほぼ同等であると見なすことができる。ここで、比較に用いた従来例の回折光学素子の構成は、環境変化による回折効率の変化を本発明の実施例1の回折光学素子と純粋に比較できるように、本発明の実施例1の構成と全く同じとし、温度変化による屈折率変化の値だけを従来の微粒子分散材料の特性としたものである。そのため、図3〜図5と図14〜図16とで初期の回折効率は完全に同じものとなっている。
上記のことから、環境変化による回折効率の変化を抑制するためには、第1の回折格子6を形成する材料と、第2の回折格子7を形成する材料の環境変化に対する変動特性を実質的に等しくすることが、効果的であることがわかる。
微粒子分散樹脂の環境変化に対する変動特性をそれ以外の材料の環境変化に対する変動特定と実質的に等しくするためには、微粒子と混在される樹脂双方の環境特性を考慮し、最適な材料を選定すれば良い。従来の微粒子分散樹脂を用いない積層型DOEで、初期の回折効率を改善し、且つ環境変化の影響が少なくなるように材料を選択することは、実質上不可能であった。しかし、微粒子分散樹脂においては、無機微粒子と、樹脂の2種類の材料を混在させるので、比較的初期特性の改善と環境特性の改善を両立させやすい。
本発明の目的の1つである環境特性の改善については、樹脂への微粒子の混入量を調整することで実現している。微粒子自体の環境変化による特性変化は、一般的な樹脂材料に比べて充分小さな値であるため、これが可能となる。一方で、樹脂と微粒子の体積比を調整することで、微粒子分散樹脂としての光学特性(屈折率やアッベ数等)を調整することが可能である。樹脂への微粒子の混入量を少なくすれば、光学特性は樹脂の特性に近づき、微粒子の混入量を多くすれば、光学特性は微粒子の特性に近づくことになる。
但し、環境変化の影響を抑制する観点から考えると、微粒子を混入する量を多くしすぎると、微粒子分散樹脂の環境変化に対する特性自体が改善されるため、第2の回折格子7と良好に特性を打ち消しあうことができなくなる。結果として、積層型DOE全体としては環境による特性変動の大きい構成となってしまう。そこで、微粒子の混入量を少なめにし、混ぜ合わされる樹脂の特性を第2の回折格子7を構成する樹脂と実質的に等しくすれば、微粒子分散樹脂としての特性も第2の回折格子7を構成する樹脂に近くすることができる。そして、図3に示したように、積層型DOE全体として環境による特性変動が大幅に改善されることになる。
実際の構成では、微粒子の量を体積比率で10%混入した微粒子分散樹脂を用いて良好な性能を得ていた。上記で用いた微粒子分散樹脂について、更に詳細に説明を行なう。微粒子を混ぜ合わされる樹脂として、第2の回折格子7を構成する樹脂と同じ樹脂(前述の紫外線硬化樹脂C001)を用いている。すなわち、無機微粒子分散樹脂と、第2の回折格子7を構成する樹脂とは、有機物の組成が同一の材料である。
これにより、混ぜ合わされる樹脂の特性を、第2の回折格子7を構成する樹脂と完全に一致させることができる。そのため、微粒子分散樹脂の特性は、結果として第2の回折格子7を構成する樹脂と近い特性とすることができている。実際には、完全に有機物の組成が同一の樹脂材料でなくても、離型剤などの添加物を混ぜる程度なら、有機物としての組成が大幅に変わらないため、材料の環境変化の特性は変化しない。
環境特性を改善する観点からは、微粒子の混入する比率を小さくすることが望ましいが、極端に少なくすると、初期の回折効率特性を得るための、所望の光学性能を得ることができなくなってしまう。そのため、無機微粒子を混入する比率としては、最低でも体積比率で5%以上、最大で25%以下であること(5%以上25%未満含まれていること)が望ましい。
また、少ない微粒子の混入量で、微粒子分散樹脂として必要な光学性能を得るために、微粒子としてはアッベ数νdが15以下(好ましくは5以上、15以下)の特性を有する微粒子材料を使用することが望ましい。具体的には、TiO、Nb、Cr、BaTiO、ITOなどの微粒子を用いればよい。
環境変化によって生じる回折効率変化は、(10)、(11)式を見てわかるように、もとになる回折格子の格子高さd1、d2に影響される。従って、格子部の格子高さd1、d2を薄くできれば、環境変化による特性変化を改善することができる。格子高さを薄くするためには、第1の回折格子6を形成する微粒子分散樹脂のアッベ数を30以下にすることが好ましい。また、同様に第2の回折格子7を形成する樹脂のアッベ数を40以上とすることが好ましい。
次に、環境変化によって格子高さの変化が生じた場合について説明する。図8は、本実施例で用いる材料構成に於いて、温度変化により格子高さに変化が生じた場合の設計次数(+1次)の回折効率を表わす。設計次数の回折効率の変動は0.2%以内と良好に抑制されていることがわかる。ここで、温度変化Δtは30℃とした。
第2の回折格子7を構成する樹脂(前述の紫外線硬化樹脂C001)の線膨張係数α1は、7.9×10−5/℃であり、第1の回折格子6を構成する微粒子分散樹脂の線膨張係数α2は、7.1×10−5/℃である。この場合も、実施例1の微粒子分散樹脂は、第2の回折格子7を構成する樹脂と線膨張係数の特性がほぼ同等であると見なすことができる。
図9は、本発明で用いる材料構成において、湿度変化により格子部の格子高さに変化が生じた場合の回折効率を表わす。設計次数である+1次の回折効率の変動は0.4%と、図3、図8に比べて変動はしているものの良好に抑制されているといえる。
第2の回折格子7を構成する樹脂(前述の紫外線硬化樹脂C001)の膨潤率β1は、0.7%であり、第1の回折格子6を構成する微粒子分散樹脂の膨潤率β2は、0.63%である。この場合も、実施例1の微粒子分散樹脂は、第2の回折格子7を構成する樹脂と膨潤率の特性がほぼ同等であると見なすことができる。
ここで用いている膨潤率の値は、一般的に材質が吸水したことによって生じる体積変化率を表わしたものである。しかし、本実施例の図2に示した構成では、第1の回折格子6及び第2の回折格子7は基板4、5の上に形成されている。基板4、5は、ガラスなどの環境変化の少ない材質が一般的に用いられるため、回折格子6、7の環境変化による膨張は、格子周期方向と、図2の紙面に垂直な方向には基板で束縛され変化が少ない。そこで、図9に示した実施例1の計算では、膨張は格子高さ方向のみに発生すると仮定して計算している。
以上のように、環境変化による回折効率の変化を抑制するために、微粒子分散樹脂で形成された回折格子6と、微粒子分散樹脂以外の樹脂で形成され、且つ格子厚の増加の向きが異なる回折格子7で発生する特性が良好に打ち消しあわされるように、2つの回折格子6,7の材料の特性を実質的に等しくすることが、有効であることがわかる。ここで、2つの材料が実質的に等しいと見なせるのは、前述の回折効率の変動から、各特性が9割以上一致している状態である。具体的に示すと、屈折率変化dn1/dt,dn2/dt、線膨張係数α1,α2、膨潤率β1,β2の関係が、
0.9≦dn1/dtdn2/dt≦1.1 (16)
0.9≦α1/α2≦1.1 (17)
0.9≦β1/β2≦1.1 (18)
を満足する状態である。
以上の説明では、環境変化により、それぞれの特性が独立に変化した場合を例にとり説明を行なった。実際には、温度変化があると、屈折率変化と格子高さ変化が同時に発生する。しかし、本発明の実施例1のように、それぞれの要因で発生する回折効率変化を抑制しておけば、複数の要因が発生した場合も、回折効率の変動は良好に抑制することができる。
また、以上述べた実施例1は、設計次数が+1次の所謂1次回折光を用いる回折光学素子を示したが、設計次数は+1次に限定するものではない。+2次や+3次等の回折光であっても、回折光学素子の合成光学光路長差を所望の設計次数で所望の設計波長となるように設定すれば、上記実施例1と同様の効果が得られる。
上記実施例1は、各素子部がそれぞれ1つの回折格子で構成される場合について説明をおこなった。しかしながら、本発明の実施形態はこれに限定するものではない。例えば、図10に示すような3層の回折格子より成る回折光学素子に適用しても良い。図の構成は、基板24上に設けられた第1の回折格子26を有する第1の素子部22と、基板25上に設けられた第2の回折格子27、第3の回折格子28を有する第2の素子部23が、空気層29を介して近接した構成となっている。第2の素子部23は、基板25の表面側に第2の材料で形成された第2の回折格子27と、その上に第3の材料で形成された第3の回折格子28とが格子面31で貼り合わされた構成である。第3の材料で形成された第3の回折格子28の格子面31と反対側の面32は格子が形成されていない平面である。この構成において第2の材料を、実施例1の第2の回折格子7を構成する樹脂、第3の材料を第1の回折格子6を構成する微粒子分散樹脂とすると、第2の素子部23は、環境変化による特性変化が殆ど発生しない構成とすることができる。そこで、第1の素子部22をガラスなどで形成すると、積層型DOE全体として、環境変化の影響を大幅に改善することができる。
実施例1では、微粒子の混入率を体積比率で10%とした微粒子分散材料を用いた。微粒子の混入率は10%に限定するものではない。一例として、実施例1と同じ構成で、第1の回折格子6を形成する微粒子分散樹脂の微粒子の混入率を20%にした場合を示す。このとき、微粒子分散樹脂の光学特性は(nd=1.611、νd=13.6、θgF=0.39)であり、屈折率の波長特性は図6に示した材料3、部分分散比は、図7に示した材料3で表されるものとなる。
この微粒子分散樹脂を用いた積層型DOEにおいて、第1の格子部6bの格子高さd1は5.34μm、第2の格子部7bの格子高さd2は7.35μmである。微粒子分散樹脂のアッベ数が大幅に小さくなっているため、格子高さは実施例1に対して半分近く薄くなっている。
図11の曲線1に、設計次数の回折効率を示す。可視波長全域で99.9%以上の良好な特性が得られていることがわかる。図11の曲線2は、30℃の温度変化で屈折率が変化した場合の回折効率の変化を表わしている。430nm以下の短波長で0.6%と変動は大きくなっているが、ほぼ可視波長全域で、変動を0.2%以内に抑制できている。このことから、樹脂に混入する微粒子の量は体積比率で25%未満であれば、環境変化による回折効率の変動が充分少ない積層型DOEの構成が得られることが分かる。
微粒子を20%混入した微粒子分散樹脂の温度変化による屈折率変化dn/dtは、−1.15×10−4/℃である。このことから、2つの材料が実質的に等しいと見なせるのは、各特性が8割以上一致している状態でも充分であることがわかる。
具体的には、屈折率変化dn1/dt,dn2/dt、線膨張係数α1,α2、膨潤率β1,β2は、
0.8≦dn1/dtdn2/dt≦1.25 (19)
0.8≦α1/α2≦1.25 (20)
0.8≦β1/β2≦1.25 (21)
であれば良い。
次に回折光学素子を構成する材料の吸湿が回折効率に与える影響を考慮した実施例について説明する。
発明者らは、積層DOEの各回折格子を構成する材料に、最も吸水率の大きい材料に対して70%〜100%以内の範囲となるような材料を選定することにより、封止なしに吸湿による回折効率の変動を抑えることが可能であることを見出した。
具体的には、ある材料と、その材料と体積比率で50%以上同一の材料に無機微粒子を混合した材料とを組み合わせることにより、光学特性は異なるが、吸収率は近い(最も給水率の大きい材料に対して70〜100%以内)の組み合わせとすることが可能である。混合する無機微粒子の粒径は透明性の面から50nm以下になることが好ましい。
本実施例の回折光学素子は、実施例1で説明した図2に示される回折光学素子1と同様に、第1の素子部2と第2の素子部3とが、空気層10を介して近接配置された回折光学素子である。
まず、第1の回折格子6を構成する材料について説明する。平均粒径10nmのITO微粒子を10wt%(重量パーセント)分散させたメチルエチルケトン溶液50gに、トリス(2―アクロキシエチル)イソシアヌレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:シクロヘキシルアクリレート:アロニックスM−6100(東亞合成社製):開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン=10:10:10:10:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A1を3.5g、それに分散剤としてDisperByk182(Byk-Chemie社製)を1.0g添加して混合した後、メチルエチルケトンを減圧して除去したものをUV硬化前駆体B1とした。
図17に示すように、金型M上にUV硬化前駆体B1(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm(100mW/cm 200秒)照射した後、その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成したUV硬化前駆体B1の硬化物の光学特性は(nd=1.566,νd=23.0,θgF=0.44)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、光学特性(nd=1.521,νd=50.4)の紫外線硬化樹脂A1を採用した。この紫外線硬化樹脂A1を、第1の素子部2と同様図17に示すように、金型Mに流しこみ、ガラス(BK7)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で3000mJ/cm照射した後、離型して回折素子形状(第2の素子部3)を作製した。
第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後に組み合わせ、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=10.26μm、第2の回折格子7の格子高さd2=12.23μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+d2+D)は24.0μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B1硬化物と紫外線硬化樹脂A1硬化物のフィルムを、25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。UV硬化前駆体B1硬化物の重量変動は1.025倍となり吸水率は2.5%であった。紫外線硬化樹脂A1硬化物の重量変動は1.03倍となり、吸水率は3.0%であった。吸水率の比は83%であった。
図18(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において99%以上になっており良好な値を示している。図18(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。400〜700nmの領域において98%以上になっており良好な値を示していることが分かる。
(比較例1)
実施例4と異なり、紫外線硬化樹脂A1の代わりにトリス(2―アクロキシエチル)イソシアヌレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:N−ビニルカルバゾール:アロニックスM−6100(東亞合成社製):開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン =15:10:20:5:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A2を用い、平均粒径10nmのITO微粒子を10wt%(重量パーセント)分散させたキシレン溶液50gに、その紫外線硬化樹脂A2を3.5g、それに分散剤としてDisperByk182(Byk-Chemie社製)を1.0g添加して混合した後、減圧してキシレンを除去したものをUV硬化前駆体B2とした。
実施例4と同様、金型M上にUV硬化前駆体B2(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm(100mW/cm 200秒)照射した。その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成したUV硬化前駆体B2の硬化物の光学特性は(nd=1.618,νd=16.8,θgF=0.48)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、光学特性(nd=1.521,νd=50.4)の紫外線硬化樹脂A1を採用した。第2の素子部3の作成方法は実施例1と同じであるので、説明を省略する。
このようにして作成した第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後、組み合わせて、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=6.2μm、第2の回折格子7の格子高さd2=8.7μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+d2+D)は16.4μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B2硬化物と紫外線硬化樹脂A1硬化物のフィルムを25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。UV硬化前駆体B2硬化物の重量変動は1.012倍となり吸水率は1.2%であった。紫外線硬化樹脂A1硬化物の重量変動は1.03倍となり、吸水率は3.0%であった。吸水率の比は40%であった。
図19(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において99%以上になっており良好な値を示している。図19(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。このように吸水率の差が大きい材料で積層DOEの各回折格子を構成すると、400〜700nmの領域において92%程の回折効率となっており、吸湿による回折効率の落ち込みが観察される。
本実施例も材料の吸湿が回折効率に与える影響を考慮した実施例である。本実施の回折光学素子も、第1の素子部2と第2の素子部3とが、空気層10を介して近接配置された図2に示す回折光学素子である。
平均粒径10nmのTiO 微粒子を10wt%分散させたメチルエチルケトン溶液45gに、トリス(2―アクロキシエチル)イソシアヌレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:シクロヘキシルアクリレート:アロニックスM−6100(東亞合成社製):開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン=10:10:10:10:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A1を3.5g、それに分散剤としてDisperByk182(Byk-Chemie社製)を1.0g添加した後、メチルエチルケトンを減圧して、除去したものをUV硬化前駆体B3とした。
図17に示すように、金型M上にUV硬化前駆体B3(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm2(100mW/cm2 200秒)を照射した。その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成したUV硬化前駆体B3の硬化物の光学特性は(nd=1.694,νd=19.9,θgF=0.63)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、光学特性(nd=1.521, νd=50.4)の紫外線硬化樹脂A1を採用した。第2の素子部3の作成方法は実施例1と同じであるので、説明を省略する。
このようにして作成した第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後、組み合わせて、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=5.5μm、第2の回折格子7の格子高さd2=8.6μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+d2+D)は15.6μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B3硬化物と紫外線硬化樹脂A1硬化物のフィルムを、25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。UV硬化前駆体B3硬化物の重量変動は1.026倍となり、吸水率は2.6%であった。紫外線硬化樹脂A1硬化物の重量変動は1.03倍となり、吸水率は3.0%であった。吸水率の比は87%であった。
図20(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において96.8%以上になっており良好な値を示している。図20(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。400〜700nmの領域において96%以上になっており良好な値を示していることが分かる。
(比較例2)
実施例5とは異なり、UV硬化前駆体B3の代わりに、N−ビニルカルバゾール:ポリビニルカルバゾール:アジピン酸ジビニル: 開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン=90:10:15:2の割合で混合した紫外線硬化樹脂A3を採用した。
図17に示すように、金型M上にその紫外線硬化樹脂A3(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm(100mW/cm 200秒)照射した。その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成した紫外線硬化樹脂A3の硬化物の光学特性は(nd=1.677,νd=18.2,θgF=0.66)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、紫外線硬化樹脂A1光学特性(nd=1.521,νd=50.4)を採用した。第2の素子部3の作成方法は実施例1と同じであるので、説明を省略する。
このようにして作成した第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後、組み合わせて、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=4.6μm、第2の回折格子7の格子高さd2=7.2μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+2+D)は13.3μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B3硬化物と紫外線硬化樹脂A1硬化物のフィルムを、25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。紫外線硬化樹脂A3の重量変動は1.005倍となり吸水率は0.7%であった。紫外線硬化樹脂A1硬化物の重量変動は1.03倍となり、吸水率は3.0%であった。吸水率の比は23%であった。
図21(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において96%以上になっており良好な値を示している。図21(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。このように吸水率の差が大きい材料で積層DOEの各回折格子を構成すると、400〜700nmの領域において90%程の回折効率となっており、吸湿による回折効率の変化が大きい。
本実施例も材料の吸湿が回折効率に与える影響を考慮した実施例である。本実施の回折光学素子も、第1の素子部2と第2の素子部3とが、空気層10を介して近接配置された図2に示す回折光学素子である。
平均粒径10nmのTiO微粒子を10w%分散させたメチルエチルケトン溶液45gに、トリス(2―アクロキシエチル)イソシアヌレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:ポリエステルアクリレート〔アロニックスM−6200(東亞合成社製)〕:開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニルブタノン−1)=10:10:10:10:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A4を3.5g、それに分散剤としてDisperByk182(Byk-Chemie社製)を1.0g添加した後、メチルエチルケトンを減圧して、除去したものをUV硬化前駆体B4とした。
図17に示すように金型M上にUV硬化前駆体B4(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm(100mW/cm 200秒)照射した。その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成したUV硬化前駆体B4の硬化物の光学特性は(nd=1.702,νd=20.2,θgF=0.63)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、光学特性 (nd=1.523,νd=52.4)の紫外線硬化樹脂A4を採用した。この紫外線硬化樹脂A4を、図17に示すように、金型Mに流しこみ、ガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で3000mJ/cm照射した後、離型して第2の素子部3を作製した。
このようにして作成した第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後、組み合わせて、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=5.5μm、第2の回折格子7の格子高さd2=8.4μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+d2+D)は15.4μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B4硬化物と紫外線硬化樹脂A4硬化物のフィルムを、25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。UV硬化前駆体B4硬化物の重量変動は1.025倍となり、吸水率は2.5%であった。紫外線硬化樹脂A4硬化物の重量変動は1.029倍となり、吸水率は2.9%であった。吸水率の比は86%であった。
図22(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において96.8%以上になっており良好な値を示している。図22(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。400〜700nmの領域において96%以上になっており良好な値を示している。
本実施例も材料の吸湿が回折効率に与える影響を考慮した実施例である。本実施の回折光学素子も、第1の素子部2と第2の素子部3とが、空気層10を介して近接配置された図2に示す回折光学素子である。
平均粒径10nmのTiO微粒子を10w%分散させたメチルエチルケトン溶液45gに、トリス(2―アクロキシエチル)イソシアヌレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:シクロヘキシルアクリレート:アロニックスM−6100(東亞合成社製): 開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン =10:10:15:5:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A5を3.5g、それに分散剤としてDisperByk182(Byk-Chemie社製)を1.0g添加した後、メチルエチルケトンを減圧して、除去したものをUV硬化前駆体B5とした。
図17に示すように、金型M上にUV硬化前駆体B5(R)をのせ、そこにガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で20000mJ/cm(100mW/cm 200秒)照射した。その後、離型して第1の素子部2を作製した。
同一のUV照射条件で作成したUV硬化前駆体B5の硬化物の光学特性は(nd=1.701,νd=20.1,θgF=0.63)であった。
そして、第2の回折格子7を構成する物質として、ペンタエリスリトールテトラアクリレート:ペンタエリエリスリトールトリアクリレート:トリシクロデカンジメタノールアクリレート:シクロヘキシルアクリレート:アロニックスM−6100(東亞合成): 開始剤2−メチル−1〔4−メチルチオ〕フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン =10:10:5:10:5:1の割合で混合した紫外線硬化樹脂A6を採用した。この紫外線硬化樹脂A6(R)を、図17に示すように、金型Mに流しこみ、ガラス(BK7)の平板(基板S)で押さえ込み、UV露光機(EX250:HOYA-SCHOTT社製)で3000mJ/cmで照射した後、離型して第2の素子部3を作製した。
同一のUV照射条件で作成した紫外線硬化樹脂A6の光学特性は、(nd=1.522,νd=50.5)であった。
このようにして作成した第1の素子部2と第2の素子部3に反射防止膜を成膜した後、組み合わせて、図2に示すような積層DOEを作製した。第1の回折格子2の格子高さd1=5.5μm、第2の回折格子3の格子高さd2=8.5μm、空気層の厚さD=1.5μmであり、回折部の総厚(d1+D+d2)は15.5μmである。格子ピッチは80μmの等ピッチとした。
このような照射条件にて硬化させたUV硬化前駆体B5硬化物と紫外線硬化樹脂A6硬化物のフィルムを、25℃の水に24時間放置し、重量の変動を測定した。UV硬化前駆体B5硬化物の重量変動は1.025倍となり吸水率は2.5%であった。紫外線硬化樹脂A6硬化物の重量変動は1.029倍となり、吸水率は2.9%であった。吸水率の比は86%であった。
図23(a)に入射角度0°での設計次数(+1次)の回折光の回折効率を示す。400〜700nmの領域において96.8%以上になっており良好な値を示している。図23(b)は、湿度30℃、湿度85%の環境下に24時間放置した後の回折効率である。400〜700nmの領域において96%以上になっており良好な値を示している。
本発明の回折光学素子を用いた光学系の実施例を図12に示す。図12はデジタルカメラやビデオカメラ等に用いられる撮影光学系の断面を示したものであり、図12中、101は主に屈折レンズ(屈折光学素子)によって構成された撮影レンズで、内部に絞り102と前述の本発明の回折光学素子1を持つ。103は結像面であるフィルムまたはCCDが配置されている。回折光学素子1は、レンズ機能を有する素子であり、撮影レンズ101の色収差を補正している。
図12の撮影レンズは、回折光学素子1の回折効率特性が、初期と環境変化時に於いて大幅に改善されている。そのため、様々な使用環境下でフレア光が少なく低周波数での解像力も高く、高い光学性能を有する。回折光学素子1は、図2に示した空気層を有する回折光学素子のように各回折格子を製造した後、周辺部で貼り合わせるような簡単な製法でも作成できるので、撮影レンズとしては量産性に優れた安価なレンズを提供できる。
図12では絞り102近傍に、平板ガラス面を基板とした回折光学素子1を設けたが、これに限定するものではなく、以前説明したように、回折光学素子1は基板をレンズとし、その凹面又は凸面上に回折格子を設けて構成しても良い。更に、撮影レンズ内に本発明の回折光学素子を複数個使用しても良い。
また、本実施例では、カメラの撮影レンズの場合を示したが、これに限定するものではなく、ビデオカメラの撮影レンズ、事務機のイメージスキャナーや、デジタル複写機のリーダーレンズなど広い波長域で使用される結像光学系に本発明の回折光学素子を使用しても、同様の効果が得られる。
本発明の回折光学素子を用いた光学系の実施例9を図13に示す。図13は、望遠端や双眼鏡等の観察光学系の断面を示したものであり、図13中、104は対物レンズ、105は像を成立させるための像反転プリズム、106は接眼レンズ、107は評価面(瞳面)である。1は前述の本発明の回折光学素子である。回折光学素子1は対物レンズ104の結像面103での色収差等を補正する目的で設けてある。
図13の観察光学系は、回折光学素子1の回折効率特性が、初期と環境変化時において大幅に改善されている。そのため、様々な使用環境下でフレア光が少なく低周波数での解像力も高く、高い光学性能を有する。回折光学素子1は、図2に示した空気層を有する光学素子のように各回折格子を製造した後、周辺部で貼り合わせるような簡単な製法でも作成できるので、観察光学系(の対物レンズ部)として量産性に優れた安価な光学系を提供できる。
図13では平板ガラスを基板とした回折光学素子1を設けたが、これに限定するものではなく、以前説明したように、回折光学素子1は基板をレンズとし、その凹面又は凸面上に回折格子を設けても良い。更に、本発明の回折光学素子を複数個使用しても良い。
また図13の観察光学系では対物レンズ104に本発明の回折光学素子1を設けた場合を示したが、これに限定するものではなく、プリズム105の表面や接眼レンズ106内の位置にも設けることができ、この場合も同様の効果が得られる。回折光学素子1を結像面103より物体側に設けることで対物レンズ部のみでの色収差低減効果があるため、肉眼の観察系の場合、少なくとも対物レンズ104に設けることが望ましい。
また本実施例は双眼鏡の場合を示したが、これに限定するものではなく、本発明の回折光学素子は地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡等の観察光学系にも適用して同様の効果が得られるし、レンズシャッターカメラやビデオカメラなどの光学式のファインダーにも適用して同様の効果が得られる。
実施例1の回折光学素子と側面図である 実施例1の回折光学素子の説明図である。 実施例1の回折光学素子の設計次数の回折光の回折効率の説明図である。 実施例1の回折光学素子の0次回折光の回折効率の説明図である。 実施例1の回折光学素子の+2次回折光の回折効率の説明図である。 実施例1の回折光学素子を構成する材料の屈折率特性の説明図である。 実施例1の回折光学素子を構成する材料の部分分散特性の説明図である。 実施例1の回折光学素子において温度変化により格子高さが変化した場合の回折効率の変化を説明する図である。 実施例1の回折光学素子において湿度変化により格子高さが変化した場合の回折効率の変化を説明する図である。 実施例2の回折光学素子の断面図の説明図である。 実施例3の回折光学素子の設計次数の回折光の回折効率の説明図である。 実施例4の撮影光学系の概略図である。 実施例5の観察光学系の概略図である。 従来の回折光学素子の設計次数の回折光の回折効率の説明図である。 従来の回折光学素子の0次回折光の回折効率の説明図である。 従来の回折光学素子の+2次回折光の回折効率の説明図である。 回折光学素子をUV硬化成形をする際の説明図である。 実施例4の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。 比較例1の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。 実施例5の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。 比較例2の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。 実施例6の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。 実施例7の回折光学素子の吸湿前後の回折効率の変化を示す図である。
符号の説明
1、21、回折光学素子 2、22、第1の素子部
3、23、第2の素子部 4、24、第1の基板 5、25、第2の基板
6、第1の格子形成材料(微粒子分散樹脂材料)
26、第1の格子形成材料 7、27、第2の格子形成材料
28、第3の格子形成材料(微粒子分散樹脂材料)
8、30、第1の回折格子面 9、31、第2の回折格子面
10、29、空気層、11、第3の回折格子部 32、平坦面
12、第1の格子形成材料(従来の格子材料)
101、撮影レンズ
102、絞り 103、結像面
104、対物レンズ 105、プリズム
106、接眼レンズ 107、評価面(瞳面)

Claims (7)

  1. 複数の回折格子を有し、該複数の回折格子を通過する光の最大光路長差が複数の波長でその波長の整数倍である回折光学素子において、樹脂に無機微粒子が分散された第1の材料で形成される第1の回折格子と、前記樹脂を用いた第2の材料で形成される第2の回折格子とを有し、前記第1の材料は、前記無機微粒子の体積比が5%以上25%未満であり、前記第1の材料と前記第2の材料は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満足することを特徴とする回折光学素子。
    0.8≦dn1/dtdn2/dt≦1.25
    0.8≦α1/α2≦1.25
    0.8≦β1/β2≦1.25
    ここで、dn1/dtは前記第1の材料の温度変動に対する屈折率変化、
    dn2/dtは前記第2の材料の温度変動に対する屈折率変化、
    α1は前記第1の材料の線膨張係数、
    α2は前記第2の材料の線膨張係数、
    β1は前記第1の材料の膨潤率、
    β2は前記第2の材料の膨潤率、
    である。
  2. 前記第1の回折格子の任意の格子部と、それに対応する前記第2の回折格子の格子部とは、格子高さの変化する方向が互いに逆であることを特徴とする請求項の回折光学素子。
  3. 前記無機微粒子の材料のアッベ数は15以下であることを特徴とする請求項1または2の回折光学素子。
  4. 前記第1の材料のアッベ数は30以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項の回折光学素子。
  5. 前記第2の材料のアッベ数は40以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の回折光学素子。
  6. 前記第1の材料と前記第2の材料は、一方の吸水率が他方の吸水率の70%〜100%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項の回折光学素子。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項の回折光学素子と、屈折光学素子とを有することを特徴とする光学系。
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