JPH1143755A - 溶融めっき金属の排出が容易な溶融めっき用空中ポット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融めっき金属噴射用ノズルから溶融めっき
金属を自然流出させ、ノズル内面へのめっき金属の残留
・付着がない溶融めっき用空中ポットを提供する。 【解決手段】 底部に形成された開口部２を通過する鋼
帯１の表裏両面に溶融めっき金属を噴射させるノズル
６，６をポット内下部に傾斜して設けている。溶融めっ
き金属７は、サブポット２４に接続されたヘッダ５，５
からノズル６，６に送り込まれ、鋼帯１に吹き付けられ
た後、ノズル上方の溶融めっき金属収容部に収容され
る。過剰の溶融めっき金属７は、溢流堰８，８を乗り越
え、排出管１２，１２からサブポット２４に回収され
る。 【効果】 めっき停止時にプラグ１３，１３を引き上げ
ると、ノズル６，６内の溶融めっき金属７は、ヘッダ
５，５に自然流下し、排出管１４，１４を経てサブポッ
ト２４に回収される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、シンクロールのない溶
融めっき設備で使用され、溶融めっき金属の排出性を改
良した空中ポットに関する。

【０００２】

【従来の技術】通常の連続溶融めっき設備は、還元焼鈍
炉で表面活性化された鋼帯を溶融めっき浴に浸漬し、シ
ンクロールを周回させ、溶融めっき浴から垂直上方に鋼
帯を引き上げている。シンクロールは、溶融めっき浴に
浸漬された状態で回転駆動されるが、溶融めっき金属に
よる侵食が激しく、頻繁に補修・交換することが要求さ
れる。還元焼鈍炉からスナウトを経由して溶融めっき浴
に導入された鋼帯の走行方向を変更するため、鋼帯表面
と接触した状態でシンクロールが回転する。そのため、
シンクロールとの接触不良に起因した擦り疵が鋼帯表面
に発生することが避けられず、鋼帯表面に形成されるめ
っき層に悪影響を及ぼす。しかも、シンクロールによっ
て鋼帯に曲げが付与されるため、シンクロールを通過し
た後の鋼帯に板幅方向の反りが発生し易くなる。板幅方
向の反りは、溶融めっき浴から引き上げられた鋼帯をワ
イピングする際にワイピングノズルと鋼帯表面との距離
を変動させ、結果として不均一ワイピングによって板幅
方向に関するめっき付着量にバラツキが発生し易くな
る。更に、溶融めっき浴にシンクロールが浸漬されるこ
とから、大容量の溶融めっき槽が必要とされ、浴組成の
切換えが困難になる。

【０００３】このような悪影響を排除して高品質の溶融
めっき鋼帯を製造するため、シンクロールを使用しない
溶融めっき設備を用い、鋼帯を下から上に一方向に走行
させて空中ポットに収容した溶融めっき金属中を通過さ
せる方式が検討されており、特開平８−３３３６６３号
公報，特開平８−３３７８５８号公報等で紹介されてい
る。この方式では、図１，２に示すように鋼帯１が通過
する開口部２を底壁に形成した空中ポット３を使用す
る。空中ポット方式でも、加工性に有害な金属間化合物
がめっき層／鋼素地の界面に成長することを防止するた
め、シンクロール方式と同様に成長抑制元素を添加した
溶融めっき金属が使用される。たとえば、Ｚｎめっきで
は０．１〜０．３重量％のＡｌを、Ｚｎ−５５重量％Ａ
ｌめっきでは１〜３重量％のＳｉを添加した溶融めっき
金属が使用される。しかし、シンクロール方式に比較し
て空中ポット方式では溶融めっき金属浴の対流が発生し
難い。そこで、添加元素を含む溶融めっき金属が均等に
鋼帯と接触するように、ポット内に設けたノズルから溶
融めっき金属を鋼帯１の表裏両面に吹き付ける方法を、
本出願人の一部の者は先に特願平８−３４９６９８号で
提案した。

【０００４】溶融めっき金属を噴射する機能を備えた空
中ポット３は、溶融めっき金属供給管４を介して溶融め
っき金属供給源（図示せず）につながるヘッダ５，５を
両側に備えている。溶融めっき金属７は、ヘッダ５，５
からノズル６，６を経て鋼帯１の表面に吹き付けられた
後、空中ポット３内に送り込まれる。過剰の溶融めっき
金属７を溢流堰８，８から溢流させることにより、空中
ポット３の収容部１５に一定量の溶融めっき金属７が保
持される。ポット底壁に設けた開口部２を取り囲んで電
磁石９，９が配置されており、電磁石９，９の電磁力に
より溶融めっき金属７の重力落下が防止される。この状
態で鋼帯１を下から上に搬送して空中ポット３内の溶融
めっき金属７と接触させることにより、溶融めっきが施
される。めっき作業中、溢流堰８，８を乗り越えた溶融
めっき金属７は、排出口１０，１０から樋１１，１１に
流出し、排出管１２，１２を経てサブポット（図示せ
ず）に回収される。めっきを停止する場合、溢流堰８，
８を引き上げ、空中ポット３内の溶融めっき金属７を樋
１１，１１を経て排出管１２，１２に送り出す。また、
ヘッダ５，５に残留している溶融めっき金属７は、プラ
グ１３，１３を引き上げることにより開放した排出管１
４，１４から送り出す。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】プラグ１３，１３を引
き上げて排出管１４，１４を開放することにより、ヘッ
ダ５，５内にある溶融めっき金属７が排出される。しか
し、ヘッダ５，５から鋼帯１の表面方向に延びるノズル
６，６内にある溶融めっき金属７は、ヘッダ５，５に戻
されることなく、ノズル６，６内に残留する虞れがあ
る。ノズル６，６内に残留した溶融めっき金属７は、め
っき種の切替え等の際に次のめっきで使用される溶融め
っき金属を汚染する原因となる。また、残留しためっき
金属７が凝固してノズル６，６を閉塞すると、次工程で
溶融めっき金属７を供給できなくなる。その結果、めっ
き金属の凝着を除去するため空中ポットの解体が余儀な
くされ、面倒な保守作業が必要とされ、生産性，操業性
が低下する。本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、ヘッダから鋼帯表面に向けて溶融
めっき金属を送り出すノズルを傾斜配置することによ
り、めっき停止時にノズル内に溶融めっき金属の残留を
なくすように、溶融めっき金属をノズル内面に沿って自
然流下させ、めっき開始やめっき停止を容易にした空中
ポットを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の空中ポットは、
その目的を達成するため、底部に形成された鋼帯搬入用
の開口部と、開口部を通過する鋼帯の表裏両面に溶融め
っき金属を噴射させるノズルと、サブポットに接続さ
れ、ノズルに溶融めっき金属を送り込むヘッダと、ノズ
ルの上方に設けられた溶融めっき金属収容部と、溶融め
っき金属収容部の側部に設けられた溢流堰とを備え、開
口部側を高位とし、ヘッダ側を低位としてノズルを傾斜
させたことを特徴とする。ノズルの内面は、溶融めっき
金属に対する濡れ性の低いセラミックス材料でライニン
グすることが好ましい。

【０００７】

【実施の形態】本発明に従った空中ポットは、図３に示
すようにヘッダ５から鋼帯１の表面方向に溶融めっき金
属７を送り出すノズル６，６を傾斜させている。その他
は、図１，２に示した空中ポットと同様であるので、説
明を省略する。なお、空中ポット３内に溶融めっき金属
７を保持する手段としては、図示の電磁シールに替えて
静圧方式を使用することもできる。ノズル６，６を傾斜
させているので、プラグ１３，１３を引き上げて排出管
１４，１４を開放したとき、ノズル６，６内にある溶融
めっき金属７は、ノズル６，６の内壁面に沿ってヘッダ
５，５に流下する。そのため、ノズル６，６内に溶融め
っき金属７が残留しなくなる。また、溶融めっき金属７
に対する濡れ性が低く不活性なＢＮ，Ａｌ₂ Ｏ₃ ，Ｚｒ
Ｏ₂ ，ＷＣ等のセラミックスをノズル６，６の内面にラ
イニングしておくと、溶融めっき金属７の流下が促進さ
れ、短時間でノズル６，６内からヘッダ５，５に溶融め
っき金属７が排出される。

【０００８】水平面に対するノズル６，６の傾斜角度
は、２〜１０度の範囲に設定される。傾斜角度が２度未
満では、溶融めっき金属７がノズル６，６から流出する
のに長時間を要し、また高粘度の溶融めっき金属７では
流出せずに付着残留する虞れがある。しかし、１０度を
超える傾斜角度では空中ポット３を深くする必要が生じ
る。それに伴って溶融めっき金属７の保持高さが大きく
なり、大出力の電磁石９，９が必要となるため、設備費
及び電力比が高くなる。この溶融めっき金属７の流出速
度及び空中ポット３内の保持高さを勘案して、２〜１０
度（好ましくは３〜６度）の範囲にノズル６，６の傾斜
角度が設定される。

【０００９】空中ポット３は、たとえば図４に示すよう
に溶融めっき設備の導入室２１の上方に配置される。導
入室２１と空中ポット３との間は、Ｎ₂ −Ｈ₂ 雰囲気に
維持された導入室２１内に大気が侵入しないように、シ
ールロール２２，２２でガス遮断される。溶融めっき金
属７を空中ポット３に送り込む供給管４を、メタルポン
プ２３を介してサブポット２４に接続する。サブポット
２４には、空中ポット３から溶融めっき金属７を返送す
る排出管１２が接続されている。ヘッダ５，５から排出
管１４，１４を経て流出する溶融めっき金属７は、途中
で排出管１２内を流れる溶融めっき金属７と合流し、サ
ブポット２４に回収される。めっき開始に当っては、サ
ブポット２４から空中ポット３に溶融めっき金属７を送
り込み、ポット底部にある鋼帯搬入用開口部２からの溶
融めっき金属７の流下を電磁石９，９の電磁力で抑制す
る。空中ポット３に所定量の溶融めっき金属７が保持さ
れた状態で、表面活性化処理された鋼帯１をデフレクタ
ロール２５で引き上げて垂直上方に搬送し、ポット底部
の開口部２から空中ポット３内に送り込む。

【００１０】鋼帯１は、空中ポット３内の溶融めっき金
属７と接触することにより溶融めっきされる。このと
き、ノズル６，６から噴射された溶融めっき金属７が鋼
帯１の表面に先ず接触するので、溶融めっき金属７に添
加されているＡｌ，Ｓｉ等の金属間化合物成長抑制元素
が均等に鋼帯１の表面に供給される。溶融めっき金属浴
から引き上げられた鋼帯１は、常法に従ってガスワイピ
ングノズル２６，２６で過剰の溶融めっき金属７が除去
され、付着量が制御された溶融めっき鋼帯となる。この
ようにして鋼帯１の表面に形成されるめっき層は、鋼素
地との界面に金属間化合物が成長することが抑制されて
いるので、密着性，加工性に優れたものとなる。めっき
停止時には、溶融めっき金属７の供給を停止すると共
に、溢流堰８，８及びプラグ１３，１３を引き上げ、空
中ポット３内から溶融めっき金属７を排出管１２，１２
に送り出し、ヘッダ５，５から溶融めっき金属７を排出
管１４，１４に送り出しサブポット２４に回収する。こ
のとき、ノズル６，６内にある溶融めっき金属７は、ノ
ズル６，６の傾斜内面に沿ってヘッダ５，５に流れ込
み、排出管１４，１４を経てサブポット２４に回収され
る。その結果、ノズル５，５内に残留する溶融めっき金
属７がなく、次回のめっき開始が円滑に行われる。

【００１１】

【実施例】底壁に間隙２５ｍｍで長さ１１００ｍｍの鋼
帯搬入用開口部２を形成した深さ２００ｍｍの空中ポッ
ト３を用い、ノズル６，６の傾斜如何が及ぼす影響を調
査した。本発明に従った空中ポットでは、ヘッダ５，５
から鋼帯１の表面方向に延びた長さ１０００ｍｍ，幅１
１００ｍｍ，高さ１０ｍｍのスリット状ノズル６，６を
水平方向に対する傾斜角度５度でポット下部に形成し
た。比較のため、同じサイズのノズル６，６を水平方向
に形成した空中ポット３（図１，２）を使用した。温度
４６０℃のＺｎ−０．２重量％Ａｌを溶融めっき金属７
として使用し、流量１０ｋｇ／秒でサブポット２４から
ヘッダ５，５に送り込んだ。溶融めっき金属７がノズル
６，６から噴射される流量は、片側当り４５５ｋｇ／ｍ
² ・秒と計算された。空中ポット３内の溶融めっき金属
７を電磁力で保持しながら、表面活性化処理された板幅
１０００ｍｍの鋼帯１を速度１００ｍ／分で走行させ、
開口部２から空中ポット３内に送り込み溶融めっきし
た。過剰の溶融めっき金属７をガスワイピングノズル２
６，２６で搾り取ることにより、めっき付着量を調整し
た溶融めっき鋼帯を製造した。得られた溶融めっき鋼帯
は、めっき層／鋼素地界面において金属間化合物の成長
が抑制されており、付着性，加工性に良好なめっき層が
形成されていた。

【００１２】めっき停止に際し、溶融めっき金属７の供
給を停止すると共に、溢流堰８，８及びプラグ１３，１
３を引き上げ、空中ポット３内及びヘッダ５，５から溶
融めっき金属７をサブポット２４に回収した。溶融めっ
き金属７を回収した後のノズル６，６内部をファイバス
コープで観察したところ、ノズル６，６の内壁面は、残
留・付着する溶融めっき金属７又はその凝固物が検出さ
れず、当初の平滑面を維持していた。そのため、次回の
めっき作業も支障なく開始された。これに対し、ノズル
６，６を水平方向に設けた空中ポットでは、めっき停止
後のノズル６，６内に溶融めっき金属７の凝固物が残存
していた。そのため、次回のめっき作業を開始するに当
り、ノズル６，６の内壁面を清掃することが必要であっ
た。

【００１３】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明の空中ポ
ットは、鋼帯表面に溶融めっき金属を噴射させるノズル
を傾斜させてポット下部に設けている。そのため、溶融
めっきを停止するとき、ノズル内にある溶融めっき金属
がノズルの傾斜面に沿ってヘッダに自然流下し、ノズル
内が清浄な状態に維持される。したがって、めっき種の
切替え時におけるめっき金属の汚染や凝固によるノズル
の閉塞が防止され、次回のめっき作業を容易に開始でき
る。このようにして、本発明の空中ポットは保守作業が
軽減されるため、高い操業性，生産性で溶融めっき鋼帯
を製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 溶融めっき金属を鋼帯に噴射するノズルを備
えた従来の空中ポットの概略断面図

【図２】 同空中ポットの平面図

【図３】 本発明に従ってノズルを傾斜させた空中ポッ
トの概略断面図

【図４】 同空中ポットを組み込んだ溶融めっき設備の
概略図

【符号の説明】

１：鋼帯 ２：鋼帯搬入用の開口部 ３：空中ポッ
ト ４：溶融めっき金属強遊嵌 ５：ヘッダ
６：ノズル ７：溶融めっき金属 ８：溢流堰 ９：電磁石 １０：排出口 １１：樋 １２，１
４：排出管 １３：プラグ １４：排出管 １
５：溶融めっき金属収容部 ２１：導入室 ２２：シールロール ２３：メタル
ポンプ ２４：サブポット ２５：デフレクタロー
ル ２６：ガスワイピングノズル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 細見 和昭 大阪府堺市石津西町５番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 守田 芳和 大阪府堺市石津西町５番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 安藤 敦司 大阪府堺市石津西町５番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 川口 靖隆 愛媛県東予市北条962番14号 日新製鋼株 式会社東予製造所内 (72)発明者 橋田 拓弥 愛媛県東予市北条962番14号 日新製鋼株 式会社東予製造所内 (72)発明者 林 義男 東京都千代田区丸の内３丁目４番１号 日 新製鋼株式会社内 (72)発明者 松川 敏胤 千葉県千葉市中央区川崎町１番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 虎尾 彰 千葉県千葉市中央区川崎町１番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 永井 孝典 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社広島製作所内 (72)発明者 川水 努 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 底部に形成された鋼帯搬入用の開口部
   と、開口部を通過する鋼帯の表裏両面に溶融めっき金属
   を噴射させるノズルと、サブポットに接続され、ノズル
   に溶融めっき金属を送り込むヘッダと、ノズルの上方に
   設けられた溶融めっき金属収容部と、溶融めっき金属収
   容部の側部に設けられた溢流堰とを備え、開口部側を高
   位とし、ヘッダ側を低位としてノズルを傾斜させた溶融
   めっき用空中ポット。
2. 【請求項２】 溶融めっき金属に対する濡れ性の低いセ
   ラミックス材料で請求項１記載のノズル内面がライニン
   グされている溶融めっき用空中ポット。