JPH1136606A - 薬液注入器具の取付け栓 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 薬液注入箇所での残留空気が薬液と円滑に置
換されて排出できる空気排出空隙を備えるとともに、薬
液注入作業終了後に薬液注入箇所から取り除くことがで
きる薬液注入器具の取付け栓を提供する。 【解決手段】 基部３から先端４に向けて緩やかな先細
り勾配のテーパー管形の筒体２と、前記基部３の内周に
設けられる雌ねじ部５と、前記筒体２のテーパー部２ａ
の外周に所要のピッチで逆ねじ方向となるように突設さ
れている係止ひれ６とにより構成されている。前記雌ね
じ部５は、薬液注入箇所に補修用薬液を注入する薬液注
入器先端に螺合される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリート構造
物の壁面等を補修するために、薬液注入による接着剤補
強を行う際の薬液注入器具の取付け栓に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、コンクリート構造物の壁面等にク
ラックが発生したり、外装壁が浮きだしたりした場合、
その要所箇所に直接広い面積をもつ取付け座片を貼着
し、該取付け座片に予め形成された装着ねじ孔に対し、
シリンダ型のポンプ式薬液注入器出口管端を螺合して取
り付け、前記薬液注入器のシリンダ内ピストンに背後か
らばね推力を付加して、補修用薬液（以下、薬液とい
う）を自動的にクラック部や浮き出した外装壁背後空隙
に注入するようにしている。特に、壁面の外装壁が浮き
出したような部分で薬液注入補修作業時には、薬液注入
量が多くなるので、要部に小穴を穿つて取付け栓を挿入
し、この取付け栓に薬液注入器の先端部を螺合するよう
にして前記薬液注入器を取り付けるような方法が採用さ
れている。

【０００３】ところで、従来の取付け栓を用いて薬液注
入作業を行う際には、この取付け栓により薬液注入箇所
と外部とが遮断されて、前記薬液注入箇所の残留空気が
注入穴近傍に閉じ込められて圧縮し、注入される薬液と
の置換が円滑に行われないという問題点があった。

【０００４】このような問題点を解決する取付け栓が、
例えば実公平３−４６１１１号公報もしくは実公平４−
１２９３２号公報等に開示されている。この実公平３−
４６１１１号公報には、基部から緩い勾配で先細りのテ
ーパー管形で、基部内周にはポンプ式薬液注入器の注入
管装着用ねじ部を設け、外周には所要ピッチで多数の尖
った係止突起を突設してなる栓本体と、この栓本体に被
嵌装着できるようにした薄肉の鞘筒とからなり、この鞘
筒は軸線方向に１か所で切開部を有し、かつ栓本体外周
の突起と嵌まり合う小孔を有し、さらに内周面には軸線
方向に複数の細い突条を突設して栓本体と組み合わせ後
空隙が形成されるようにした取付け栓が開示されてい
る。

【０００５】また、実公平４−１２９３２号公報には、
基部から緩い勾配で先細りのテーパー管形で、この基部
内周には薬液注入器の注入管装着用ねじ部を設け、かつ
該基部外周に鞘筒係止用の係止突起を円周方向に断続し
て複数突設してなる合成樹脂製の栓本体と、この栓本体
に被嵌装着する薄肉の合成樹脂製の鞘筒とからなり、こ
の鞘筒は外周に多数の突起が突設され、かつ基部内周に
円周方向に係止溝が設けられ、この係止溝と前記栓本体
の係止突起との係合により、栓本体外部に鞘筒を被せて
一体的に組み合わせた状態で栓本体と鞘筒との間に間隙
が形成されるようにした取付け栓が開示されている。

【０００６】各公報に記載されている取付け栓は、補修
目的箇所の壁面にドリル等で穿つた穴に嵌挿固定され
る。この固定された取付け栓に薬液注入器が螺着され
て、この薬液注入器から取付け栓を経て薬液注入箇所に
薬液が注入される。この薬液注入作業が終了した後、取
付け栓に螺着されている薬液注入器が取り外されるが、
この取付け栓は、外周に突設されている突起により前記
穴から抜き出せないため、そのまま残置されて目地材な
どで埋められる。また、薬液注入箇所の壁面から取付け
栓が露出してる場合は、その露出部が切除された後に目
地材などで埋められている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ように取付け栓を薬液注入箇所に埋め込むのでは、特に
タイルの目地等において、薬液注入作業終了後の面が不
格好になってしまい、美観が損なわれるという問題点が
ある。また、薬液注入作業終了後の取付け栓は、ほとん
どが壁面から露出しており、この露出部を切除して目地
材等で埋め込む作業は非常に手間がかかり、作業者の負
担を重くしてしまうという問題点がある。

【０００８】本発明は、このような問題点を解消するた
めになされたもので、薬液注入箇所での残留空気が薬液
と円滑に置換されて排出できる空気排出空隙を備えると
ともに、薬液注入作業終了後に薬液注入箇所から取り除
くことができる薬液注入器具の取付け栓を提供すること
を目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段および作用・効果】本発明
による薬液材注入器具の取付け栓は、前記目的を達成す
るために、薬液注入器具の先端に取り付けられて、補修
用薬液を壁面内部の補修箇所に注入する薬液注入用穴に
嵌設される薬液注入器具の取付け栓において、（ａ）基
部から緩い勾配で先細りのテーパー管形の筒体と、
（ｂ）前記筒体の基部内周に設けられる前記薬液注入器
具の注入管装着用ねじ部と、（ｃ）前記筒体の外周を前
記注入管装着用ねじ部のねじ方向と逆方向に取り巻くよ
うに突設されている薄肉の係止ひれとを設けることを特
徴とするものである。

【００１０】本発明においては、基部から緩やかな先細
りのテーパー管形の筒体の基部内周に設けられる注入管
装着用ねじ部に薬液注入器具の注入管先端が螺合された
後、予め穿設されている薬液注入用穴へこの筒体の先端
を当てがって、例えば木づち等を用いて薬液注入器具を
介して強く打ち込まれる。こうして、本発明の薬液注入
器具の取付け栓は、前記薬液注入用穴内に挿入される。
このように前記薬液注入用穴内に打ち込まれた際に前記
筒体の外周に設けられている係止ひれが前記薬液注入用
穴周面と係合することにより任意変形し、前記取付け栓
が確保できる摩擦抵抗を与える。こうして、前記取付け
栓は薬液注入用穴に固着されて、薬液注入器具全体がそ
のまま安定状態で壁面に取り付けられる。

【００１１】次いで、薬液注入器具内に予め充填されて
いる補修用薬液が前記取付け栓および薬液注入用穴を介
して薬液注入箇所に圧入される。このように壁面内部の
薬液注入箇所に薬液が注入される際に、前記薬液注入用
穴内に残留していた空気は前述の任意変形された係止ひ
れ間のわずかな隙間を抜けて外部に排出される。一方、
薬液は前記係止ひれにより逆流しないようにされてい
る。このため、取付け栓先端付近に空気溜まりが生じ
ず、前記残留空気と薬液とが置換されて円滑に薬液注入
作業を行うことができる。

【００１２】次いで、薬液注入作業終了後、前記係止ひ
れが筒体の外周を前記注入管装着用ねじ部と逆ねじ方向
に取り巻くように突設されているため、薬液注入器具を
前記注入管装着用ねじ部の締め方向に回転させて、薬液
注入器具を前記取付け栓とともに前記薬液注入用穴から
排出する。このように前記取付け栓を前記薬液注入用穴
から排出することにより、薬液注入が行われた壁面の美
観を損なうのを防止することができるという効果を奏す
る。また、前記壁面の外部に突出した取付け栓突出部を
切除する工程を省くことができるため作業者の負担を軽
減することができるという効果を奏する。

【００１３】また、本発明においては、他の使用態様と
して、まず前記薬液注入用穴に前記取付け栓を例えば木
づち等で打ち込んで固定した後に、薬液注入器具の注入
管先端を前記筒体の基部内部の雌ねじ部に螺合装着する
ようにしてもよい。このように前記取付け栓に固定され
た薬液注入器具は、前述と同様に薬液が注入された後、
薬液注入器具および取付け栓が共に前記薬液注入用穴か
ら取り出される。この場合の効果は、前述と同様であ
る。

【００１４】

【発明の実施の形態】次に、本発明による薬液注入器具
の取付け栓の具体的な実施の形態について、図面を参照
しつつ説明する。

【００１５】図１には本発明の一実施例に係る取付け栓
の平面図が示され、図２には本実施例の取付け栓の断面
図が示されている。

【００１６】第１実施例の取付け栓１は、全体が合成樹
脂、例えばポリエチレン，ポリプロピレン等の樹脂で成
形されており、基部３から先端４に向けて緩やかな先細
り勾配の比較的薄肉のテーパー管形の筒体２と、前記基
部３の内周に設けられる雌ねじ部５（注入管装着用ねじ
部）と、前記筒体２のテーパー部２ａの外周に所要のピ
ッチで逆ねじ方向となるように突設されている係止ひれ
６とにより構成されている。また、前記係止ひれ６は薄
肉で、かつ先端４に向けてその幅が狭くなるようにされ
ている。

【００１７】このように構成される取付け栓１は、図３
にこの取付け栓１の使用状態図が示されるように、ばね
推力により薬液を自動注入する薬液注入器７の注入管８
先端に設けられている雄ねじ部（図示省略）に前記基部
３の雌ねじ部５が螺合装着される。この薬液注入器７に
は、予め本体ケーシング９内に所要の薬液を充填し、ピ
ストン１０に作用する加圧ばね１１の推力をピストンロ
ッド１２に設けた係止部１３と蓋体１４との仮止めでロ
ックした状態にして準備する。

【００１８】このような準備を整えた後、前工程として
例えば浮きなどの薬液注入の必要なコンクリート建造物
の補修壁面Ｂにミストドリル等のドリルで薬液注入用穴
Ａが穿設され、この薬液注入用穴Ａに前記取付け栓１を
当てがって前記薬液注入器７を介して木づち等で強く打
ち込めば、前記薬液注入用穴Ａが受け入れる範囲で取付
け栓１が圧入される。この際に、筒体２の外周に突設さ
れている前記係止ひれ６はコンクリート壁の薬液注入用
穴Ａ周面と係合して任意変形し、係止力が確保できる摩
擦抵抗力が得られるようにされている。この結果、薬液
注入用穴Ａに固着された取付け栓１によって薬液注入器
７全体が、そのまま安定状態で壁面Ｂに取り付けられる
こととなる。次いで、ピストンロッド１２の係止部１３
と蓋体１４との仮止めを解いて加圧ばね１１の推力をピ
ストン１０に与えれば、ケーシング１２内の薬液が注入
管１０から取付け栓１内を通って壁面Ｂ内の空隙部Ｂ’
に注入されることになる。

【００１９】このように取付け栓１から薬液注入用穴Ａ
を通じて壁面Ｂ内の空隙部Ｂ’に薬液が圧入される際、
この薬液注入用穴Ａには取付け栓１が圧入されて閉鎖状
態になっているものの、前記係止ひれ６が取付け栓１の
外周に沿ってねじ状に突設されているため、係止ひれ６
のわずかな隙間６ａが外部に向けて形成されている。こ
のため、前記筒体２の先端部４から押し出された薬液が
壁面Ｂ内の空隙に圧入される際、前記薬液注入用穴Ａ内
に残留していた空気が前記隙間６ａを通って速やかに外
部に排出される。こうして取付け栓１端に空気溜まりが
生じず、加圧ばね１１による推力でもって無理なく空気
と薬液とが置換されて薬液を壁内空隙に圧入することが
でき、薬液注入を円滑に行うことができる。

【００２０】こうして薬液注入作業が終了した後、取付
け栓１の雌ねじ部５に螺合装着されている薬液注入器７
を締め方向に回転させることにより、取付け栓１の外周
に逆ねじ方向に突設されている係止ひれ６の作用により
取付け栓１が前記薬液注入用穴Ａから取り外すことがで
きる。次いで、薬液注入器７を緩め方向に回転させて取
付け栓１から取り外し、この薬液注入器７を次の作業に
再利用することができる。前記取付け栓１が取り出され
た薬液注入用穴Ａには目地材等が注入されて、この薬液
注入用穴Ａを塞ぐようにされている。

【００２１】このように、薬液注入用穴Ａの残留空気を
薬液と円滑に置換させることができるとともに、薬液注
入作業の終了後に取付け栓１をコンクリート壁面Ｂに穿
設された薬液注入用穴Ａから取り出すことができるた
め、薬液注入後の壁面の美観を損なうことなく補修作業
を行うことができるという効果を奏する。また、従来の
壁面上に露出している取付け栓の露出部を切除する工程
を省くことができ、作業者の負担を軽減させることがで
きるという効果を奏する。

【００２２】本実施例において、取付け栓１は薬液注入
器７に取り付けた後に薬液注入用穴Ａに打ち込まれてい
るが、これに限らず、薬液注入用穴Ａに取付け栓１を打
ち込んで固定した後に前記注入管８先端を取付け栓１の
雌ねじ部５に螺合装着して、薬液注入器７を固定しても
よい。

【００２３】本実施例においては、ケーシング９内に直
接充填された薬液をピストン１０により直接押し出すよ
うにする薬液注入器７が用いられているが、薬液注入器
の形態はこれに限られず、例えばケーシング９の内部に
ジャバラにより形成される薬液カプセルを備え、この薬
液カプセルに充填された薬液を前記薬液カプセルを介し
てピストンにより押し出すようにする薬液注入器を用い
てもよい。この薬液カプセルを用いることにより、薬液
注入器の再利用が非常に容易となる。

【００２４】本発明においては、前記係止ひれ６が逆ね
じ方向となるように前記筒体２の外周に取り巻かれてい
るが、順ねじ方向に取り巻かれていてもよく、この場合
は前記基部３内周に設けられている雌ねじ部５および前
記注入管８の先端に設けられている雄ねじ（図示省略）
が逆ねじ方向であればよい。

【００２５】本実施例においては、取付け栓１を前記薬
液注入用穴Ａに打ち込みやすくするように前記係止ひれ
の幅が先端４に向かうにつれて狭くなるようにされてい
るが、前記係止ひれの幅は全て同幅でもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の一実施例に係る取付け栓の平
面図である。

【図２】図２は、本実施例の取付け栓１の縦断面図であ
る。

【図３】図３は、本実施例の取付け栓１の使用状態を示
す説明図である。

【符号の説明】

１ 取付け栓 ２ 筒体 ３ 基部 ４ 先端部 ５ 雌ねじ ６ 係止ひれ ７ 薬液注入器 ８ 注入部 ９ ケーシング １０ ピストン １１ 加圧ばね １２ ピストンロッド １３ 係止部 １４ 蓋体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 薬液注入器具の先端に取り付けられて、
   補修用薬液を壁面内部の補修箇所に注入する薬液注入用
   穴に嵌設される薬液注入器具の取付け栓において、
   （ａ）基部から緩い勾配で先細りのテーパー管形の筒体
   と、（ｂ）前記筒体の基部内周に設けられる前記薬液注
   入器具の注入管装着用ねじ部と、（ｃ）前記筒体の外周
   を前記注入管装着用ねじ部のねじ方向と逆方向に取り巻
   くように突設されている薄肉の係止ひれとを設けること
   を特徴とする薬液注入器具の取付け栓。