JPH11348196A - エチレン―ビニルアルコ―ル共重合体層を有する共射出延伸ブロ―成形容器 - Google Patents

エチレン―ビニルアルコ―ル共重合体層を有する共射出延伸ブロ―成形容器

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JPH11348196A
JPH11348196A JP11102353A JP10235399A JPH11348196A JP H11348196 A JPH11348196 A JP H11348196A JP 11102353 A JP11102353 A JP 11102353A JP 10235399 A JP10235399 A JP 10235399A JP H11348196 A JPH11348196 A JP H11348196A
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伸二 田井
Hiroyuki Shimo
浩幸 下
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七歩才 林
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 衝撃剥離性が大幅に改善された熱可塑性ポリ
エステルおよびEVOHからなる共射出延伸ブロー多層
容器。 【解決手段】 熱可塑性ポリエステル層(a層)および
エチレン−ビニルアルコール共重合体層(b層)からな
り、a層がb層の両面に直接接触するように配置されて
なり、エチレン−ビニルアルコール共重合体が、2種類
のエチレン−ビニルアルコール共重合体(b1、b2)
の配合物からなり、その配合重量比(b1/b2)が1
0/90〜90/10である共射出延伸ブロー成形容
器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸素あるいは炭酸
ガスなどのガスバリアー性、防湿性、保香性、フレーバ
ーバリアー性および外観の良好な、飲料、食品、化粧品
などの容器に用いられる耐衝撃剥離性を大幅に改善した
共射出延伸ブロー多層容器に関する。
【0002】
【従来の技術】延伸ブロー成形法による熱可塑性ポリエ
ステル(以下、PESと略記することがある)容器は、
透明性、力学的特性、フレーバーバリヤー性などの種々
の性質に優れ、しかも成形品にした際に残留モノマーや
有害添加物の溶出の心配が少なく、衛生性および安全性
に優れていることから、幅広い分野で使用されている。
しかし、ガスバリアー性に関しては必ずしも十分でない
ために飲料、食品などの保存は比較的短期間に限られて
いた。
【0003】この欠点を改善するため、熱可塑性ポリエ
ステルにガスバリアー性が良好なエチレン−ビニルアル
コール共重合体(以下、EVOHと略記することがあ
る)を組み合わせ、多層構造にする方法が種々提案され
ている。延伸ブローするに先立ちまずパリソンを形成す
るが、かかるパリソンを製造する手法としては共射出成
形法、共押出し成形法、多段射出成形法等が採用され
る。これらの中で共射出成形法は装置が簡単であり、ト
リムなどのスクラップの発生も少なく、さらにEVOH
層がPES層などで完全に覆われる構造とできることよ
り、EVOH層とPES層などとの間に接着性樹脂(以
下、Adと略記することがある)層がなくても大気圧に
よる密着効果により外見上良好な多層容器になるなどの
特長がある。
【0004】しかしながら、容器に飲料、食品などを充
填し落下させるなどの衝撃を与えると、PES層とEV
OH層との間に剥離(デラミネーション;以下デラミと
略することがある)が生じやすく、外観上大きな問題点
であった。そこで、Ad層を有する、PES/Ad/E
VOH/Ad/PES(特開昭56−501040号)
の構成、あるいはPES/Ad/EVOH/Ad/PE
S/Ad/EVOH/Ad/PES(特開昭50−13
5169号、特開昭61−152411号、特開昭61
−152412号、特開昭61−259944号)など
の構成の共射出成形容器が検討されてはいるが、設備が
非常に複雑になり、かつ各層の厚みコントロールが困難
な場合が多く、製造コストおよび生産性の面でAd層を
有さない場合に比べ劣る状況にある。
【0005】また、EVOHに他の種類の樹脂をブレン
ドして、Ad層なしでも耐デラミ性を増す方法も検討さ
れている。例えば特開平1−176554号公報にはポ
リアミド−エステル系熱可塑性樹脂を、特開平1−18
2023号公報には金属含有ポリエステル系熱可塑性樹
脂を、特開平3−175032号公報には熱可塑性ポリ
ウレタンを配合する方法が、それぞれ記載されている。
しかしながら、EVOHに他の樹脂を配合したのでは、
透明性が悪化し容器の外観を著しく損なってしまう。ま
た配合することによるコストの上昇や、配合する樹脂に
よっては溶融安定性の悪化の問題も生じる。
【0006】EVOHにチタニウム塩、コバルト塩、マ
ンガン塩、アンチモン塩およびゲルマニウム塩から選ば
れる少なくとも一種の塩を配合することで、Ad層なし
でも耐デラミ性を増す方法が、特開平3−175033
号に記載されている。しかしながら、耐デラミ性の改善
効果は充分ではなく、かかる金属塩を配合することでE
VOHの溶融安定性も損なわれてしまう。
【0007】さらに、特開平1−204736号公報に
は、主成分となるEVOHに、少量成分としてよりエチ
レン含有量が大きく、けん化度が低く、融点が低く、か
つメルトインデックスの大きいEVOHを配合すること
で、Ad層なしでも耐デラミ性を増す方法が記載されて
いる。しかしながら、該公報の実施例に記載されている
ように、エチレン含有量が30モル%以上も異なる2種
のEVOHを配合したのでは透明性が悪化し、容器の外
観を著しく損なってしまう。また配合することによるコ
スト上昇や、溶融安定性の悪化の問題も生じる。このこ
とは、本願比較例19に示されている通りである。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポ
リエステル樹脂とEVOH樹脂とを共射出成形して得た
パリソンを延伸ブロー成形して製造される多層容器にお
いて、接着性樹脂層を有せずとも、衝撃による層間のデ
ラミを防止することができ、透明性、ガスバリアー性に
優れた多層容器を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエス
テル樹脂からなる層がEVOH層の両面に直接接触する
ように配置されてなる構成の多層パリソン(プリフォー
ム)を共射出成形により製造し、該多層パリソンを延伸
ブロー成形して容器に製造するに際し、衝撃によるEV
OH層とポリエステル樹脂層との層間デラミを防止する
ため、採用する樹脂の選択、あるいは成形加工条件等に
ついて鋭意検討をおこなった。
【0010】その結果、驚くべきことに、熱可塑性ポリ
エステル層(a層)およびエチレン−ビニルアルコール
共重合体層(b層)からなり、a層がb層の両面に直接
接触するように配置されてなり、エチレン−ビニルアル
コール共重合体の示差走査熱量計(DSC)での結晶融
解ピークが単一ピークであり、かつ下記式(1)および
(2)を満足する共射出延伸ブロー成形容器が優れた耐
衝撃層間デラミ性能を有することを見いだした。 25≦ETb≦48 (1) 92≦SDb≦99 (2) 但し、 ETb;エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレ
ン含有量(モル%) SDb;エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化
度(%)
【0011】また、熱可塑性ポリエステル層(a層)お
よびエチレン−ビニルアルコール共重合体層(b層)か
らなり、a層がb層の両面に直接接触するように配置さ
れてなり、かつ容器胴部のa層とb層の界面を剥離した
ときのb層表面のX線光電子分光測定(XPS)におい
て、下記式(3)を満足する共射出延伸ブロー成形容器
もまた、優れた耐衝撃層間デラミ性能を有することを見
いだした。 0.015≦PC/(PA+PB+PC)≦0.3 (3) 但し、 PA;C1s電子の結合エネルギーに対応するピークの
うち、最大強度のピーク(ピークA)の面積 PB;ピークAより1.1〜1.8eV高エネルギー側
に現れるピーク(ピークB)の面積 PC;ピークAより3.6〜4.3eV高エネルギー側
に現れるピーク(ピークC)の面積
【0012】このとき、熱可塑性ポリエステルの固有粘
度IVa(dl/g)が下記式(4)を満足し、かつエ
チレン−ビニルアルコール共重合体のメルトインデック
スMIb{g/10分(190℃、2160g荷重)}
が下記式(5)を満足することが好適である。 0.60≦IVa≦0.90 (4) 0.1≦MIb≦10 (5)
【0013】また、エチレン−ビニルアルコール共重合
体が、2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体
(b1、b2)の配合物からなり、その配合重量比(b
1/b2)が10/90〜90/10であり、かつ下記
式(6)〜(11)を満足することも好適である。 25≦ETb1≦48 (6) 99≦SDb1 (7) 25≦ETb2≦48 (8) 92≦SDb2≦99 (9) |ETb2−ETb1|≦8 (10) 1≦(SDb2−SDb1)≦8 (11) 但し、 ETb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のエチレン含有量(モル%) SDb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のケン化度(%) ETb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のエチレン含有量(モル%) SDb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のケン化度(%)
【0014】さらに、エチレン−ビニルアルコール共重
合体がビニルシラン化合物を0.0002〜0.2モル
%共重合してなること、あるいはホウ素化合物をホウ素
元素換算で20〜2000ppm含有することも好適で
ある。
【0015】容器胴部の熱可塑性ポリエステル層の密度
Da(g/cm3)が下記式(12)を満足し、容器胴
部のエチレン−ビニルアルコール共重合体層の密度Db
(g/cm3)が下記式(13)を満足することも好適
である。。 1.35≦Da≦1.37 (12) 1.11≦Db≦1.20 (13)
【0016】また、熱可塑性ポリエステルが、エチレン
テレフタレート成分を主成分とし、かつその融点TMa
(℃)が下記式(14)を満足することも好適である。 240≦TMa≦250 (14) さらに、熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレフタレ
ート成分を主成分とし、ナフタレンジカルボン酸成分
を、全ジカルボン酸成分に対して0.1〜15モル%含
有すること、ゲルマニウム化合物を触媒として重合され
てなることも好適である。
【0017】また、容器胴部のヘイズが5%以下である
共射出延伸ブロー成形容器が好適である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の多層容器は、熱可塑性ポリエステル層
(a層)およびエチレン−ビニルアルコール共重合体層
(b層)から構成される。
【0019】本発明の熱可塑性ポリエステル層(a層)
に使用されるポリエステル樹脂としては、芳香族ジカル
ボン酸またはそれらのアルキルエステルとジオールを主
成分とする縮合重合体が用いられるが、特に本発明の目
的を達成するには、エチレンテレフタレート成分を主成
分とするポリエステル樹脂が好ましい。本発明のa層に
使用されるポリエステル樹脂では、一般に、テレフタル
酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル
%)が、ポリエステルを構成する全構造単位の合計モル
数に対して、70モル%以上であるのが好ましく、90
モル%以上であるのがより好ましい。ポリエステルにお
けるテレフタル酸単位とエチレングリコール単位の合計
割合が70モル%未満であると共重合ポリエステルが非
晶性になるため、延伸容器に加熱充填(ホットフィル)
した場合の収縮が大きく耐熱性に劣る上、強度も低下し
てしまう。また、樹脂内に含有されるオリゴマーを低減
するために行われる固相重合時に、樹脂の軟化による膠
着が生じやすく、また生産も困難になる。
【0020】そして、本発明のa層に使用されるポリエ
ステル樹脂は、必要に応じてテレフタル酸単位およびエ
チレングリコール単位以外の2官能化合物単位を、加工
性、強度、耐熱性などを大幅に損なわない範囲で共重合
することができる。その割合(モル%)としては、ポリ
エステル(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対
して、30モル%以下であるのが好ましく、20モル%
以下であるのがより好ましく、10モル%以下であるの
がさらに好ましい。含有させることのできる好ましい2
官能化合物単位としてはジカルボン酸単位、ジオール単
位およびヒドロキシカルボン酸単位から選ばれる少なく
とも1種の2官能化合物単位が挙げられ、テレフタル酸
単位およびエチレングリコール単位以外の2官能化合物
単位であれば、脂肪族の2官能化合物単位、脂環式の2
官能化合物単位、芳香族の2官能化合物単位のうちのい
ずれでもよい。
【0021】その場合の、脂肪族の2官能化合物単位の
例としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼラ
イン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそれ
らのエステル形成性誘導体;10−ヒドロキシオクタデ
カン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2−ヒドロキシ
−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪
族ヒドロキシカルボン酸またはそれらのエステル形成性
誘導体;トリメチレングリコール、テトラメチレングリ
コール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリ
コール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコー
ルなどの脂肪族ジオールなどから誘導される2価の構造
単位を挙げることができる。脂肪族の2官能化合物単位
が、ネオペンチルグリコール単位である場合は、共重合
ポリエステルの製造が容易であり、しかも本発明の多層
容器の耐熱性が低下しないため好ましい。
【0022】また、脂環式の2官能化合物単位の例とし
ては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカ
ルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などの脂環式
ジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;ヒ
ドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシ
メチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリ
シクロデカンカルボン酸などの脂環式ヒドロキシカルボ
ン酸またはそれらのエステル形成性誘導体;シクロヘキ
サンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシ
クロデカンジメタノールなどの脂環式ジオールなどから
誘導される2価の構造単位を挙げることができる。脂環
式の2官能化合物単位が、シクロヘキサンジメタノール
単位またはシクロヘキサンジカルボン酸単位である場合
は、共重合ポリエステルの製造が容易であり、しかも本
発明の多層容器の落下強度を大きなものとすることがで
き、また透明性をより一層良好にすることができる。
【0023】ところで、上記におけるシクロヘキサンジ
メタノール単位とは、1,2−シクロヘキサンジメタノ
ール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位お
よび1,4−シクロヘキサンジメタノール単位から選ば
れる少なくとも1種の2価の単位をいう。また、上記に
おけるシクロヘキサンジカルボン酸単位とは、1,2−
シクロヘキサンジカルボン酸単位、1,3−シクロヘキ
サンジカルボン酸単位および1,4−シクロヘキサンジ
カルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種の2価の単
位をいう。上記脂環式の2官能化合物単位のうちでも、
入手の容易性、共重合ポリエステルおよびそれから得ら
れる成形品の落下強度が一層優れたものになるという点
から、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位または
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位がより好まし
い。
【0024】また、芳香族の2官能化合物単位として
は、芳香族ジカルボン酸単位、芳香族ヒドロキシカルボ
ン酸単位または芳香族ジオール単位のいずれであっても
よい。芳香族の2官能化合物単位の例としては、イソフ
タル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニ
ルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボ
ン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタ
ル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸、
1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレン
ジカルボン酸などのテレフタル酸以外の芳香族ジカルボ
ン酸およびそられらのエステル形成性誘導体;ヒドロキ
シ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフト
エ酸、3−(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒド
ロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−3−フェニルプ
ロピオン酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびそ
れらのエステル形成性誘導体;ビスフェノール系化合
物、ヒドロキノン系化合物などの芳香族ジオールなどか
ら誘導される2価の単位を挙げることができる。
【0025】2官能化合物単位が芳香族ジカルボン酸単
位である場合は、イソフタル酸単位、フタル酸単位、ナ
フタレンジカルボン酸単位および4,4’−ビフェニル
ジカルボン酸単位の少なくとも1種である場合は、共重
合ポリエステルの製造が容易であり、またモノマーコス
トが低く、好ましい。
【0026】特にイソフタル酸は、得られた共重合ポリ
エステルを用いた場合、良好な製品を得ることのできる
製造条件が広く成形性に優れるため、不良品率が低いと
いう利点を有する。また、結晶化速度の抑制による成形
品の白化を防止できる点からも好ましい。
【0027】また、ナフタレンジカルボン酸は、ガラス
転移温度が上昇し、得られた容器の耐熱性が向上する点
から好ましい。さらに、ナフタレンジカルボン酸を共重
合したポリエステルは紫外線を吸収することができるの
で、内容物が紫外線による劣化を生じやすいものである
場合に特に有用である。共射出延伸ブロー成形容器にお
いて、内容物を紫外線から保護することを目的とする場
合、熱可塑性ポリエステルが、ナフタレンジカルボン酸
成分を、全ジカルボン酸成分に対して0.1〜15モル
%の範囲内で含有することが好ましく、1.0〜10モ
ル%の範囲内で含有することが更に好ましい。ナフタレ
ンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸が、共重合ポリエステルの製造が容易であり、また
モノマーコストが低く、好ましい。
【0028】また、芳香族2官能化合物単位として、
2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニ
ル]プロパン、2−{4−[2−(2−ヒドロキシエト
キシ)エトキシ]フェニル}−2−[4−(2−ヒドロ
キシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4
−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニ
ル}プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)
フェニル]スルホン、{4−[2−ヒドロキシエトキ
シ)エトキシ]フェニル}−[4−(2−ヒドロキシエ
トキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2
−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1
−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)
エトキシ]フェニル}−1−[4−(2−ヒドロキシエ
トキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4
−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニ
ル}シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロ
キシエトキシ)−2,3,5,6−テトラブロモフェニ
ル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキ
シ)ベンゼン、1−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−
[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼ
ン、1,4−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エ
トキシ]ベンゼンなどから誘導されるジオール単位を挙
げることができる。上記ジオール単位のうちでも、2,
2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]
プロパン単位、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)
フェニル]スルホン単位、または1,4−ビス(2−ヒ
ドロキシエトキシ)ベンゼンからなるジオール単位を有
するポリエステル樹脂は、製造が容易であり、しかも溶
融安定性に優れ、成形品の色調および耐衝撃性が良好で
ある点から好ましい。
【0029】そして、本発明のa層に使用されるポリエ
ステル樹脂は、上記2官能化合物単位のうちの1種また
は2種以上を2官能化合物単位として有することができ
る。
【0030】ところで、本発明のa層に使用されるポリ
エステル樹脂の製造中にエチレングリコール成分の2量
化物であるジエチレングリコールが少量副生して生成す
るポリエステル樹脂中にジエチレングリコール単位が少
量含まれてくるが、ポリエステル樹脂中にジエチレング
リコール単位が多く含まれると、ポリエステル樹脂のガ
ラス転移温度が低下して、耐熱性の低下や着色などの問
題を生じ、該ポリエステル樹脂から得られるボトルなど
の成形品の耐熱性、強度、色調が不良になるので、ポリ
エステル樹脂中におけるジエチレングリコール単位の割
合を極力低減させておくのがよい。前記理由から、ポリ
エステル樹脂中におけるジエチレングリコール単位の割
合をポリエステル樹脂の全構造単位の合計モル数に基づ
いて3モル%未満にしておくのが好ましく、2モル%以
下にしておくのがより好ましい。
【0031】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂は必要に応じて、テレフタル酸単位およびエチレング
リコール単位以外の多官能化合物単位を共重合すること
ができる。好ましい多官能化合物単位はカルボキシル
基、ヒドロキシル基またはそれらのエステル形成性基を
3個以上有する多官能化合物の少なくとも1種から誘導
される多官能化合物単位であり、多官能化合物単位の割
合は、本発明のポリエステル樹脂におけるポリエステル
の全構造単位の合計モル数に基づいて0.5モル%以下
の範囲が好ましい。
【0032】多官能化合物単位としては、カルボキシル
基、ヒドロキシル基およびそれらのエステル形成性基か
ら選ばれる1種または2種以上の基を3個以上有する多
官能化合物から誘導される単位であれば特に制限され
ず、多官能化合物単位を誘導するための多官能化合物
は、カルボキシル基のみを3個以上有する多官能化合物
であっても、ヒドロキシル基のみを3個以上有する多官
能化合物であっても、またはカルボキシル基とヒドロキ
シル基を合計で3個以上有する多官能化合物であっても
よい。
【0033】多官能化合物単位の好ましい例としては、
トリメシン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼン
トリカルボン酸、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナ
フタレンテトラカルボン酸などの芳香族ポリカルボン
酸;1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸などの
脂肪族ポリカルボン酸;1,3,5−トリヒドロキシベ
ンゼンなどの芳香族ポリアルコール;トリメチロールプ
ロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、1,3,
5−シクロヘキサントリオールなどの脂肪族または脂環
式のポリアルコール;4−ヒドロキシイソフタル酸、3
−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ安息
香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒド
ロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、プロ
トカテク酸、没食子酸、2,4−ジヒドロキシフェニル
酢酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸;酒石酸、リン
ゴ酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;それらのエス
テル形成性誘導体から誘導される多官能化合物単位を挙
げることができる。本発明のa層に使用されるポリエス
テル樹脂は、多官能化合物単位として、上記多官能化合
物単位の1種のみを有していてもまたは2種以上を有し
ていてもよい。
【0034】上記うちでも、本発明のa層に使用される
ポリエステル樹脂は、多官能化合物単位としてトリメリ
ット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、トリメチロー
ルプロパンおよびペンタエリスリトールから誘導される
多官能化合物単位の1種または2種以上を有しているの
が、ポリエステルの製造の容易性および製造コストの点
から好ましい。
【0035】さらに、本発明のa層に使用されるポリエ
ステル樹脂においては、多官能化合物単位を含有する場
合、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらのエ
ステル形成性誘導体などの単官能化合物のうち少なくと
も1種から誘導される単官能化合物単位を任意単位とし
て必要に応じて有していることができる。
【0036】単官能化合物単位を含有させる場合は、ポ
リエステル樹脂の全構造単位の合計モル数に基づいて単
官能化合物単位を5モル%以下の割合(2種以上の単官
能化合物単位を有する場合はその合計割合)とすると、
ゲルの発生などを低減できる場合が多いので好ましく、
単官能化合物単位の割合を1モル%以下とするのがより
好ましい。単官能化合物単位の割合が5モル%を超える
とポリエステル樹脂を製造する際の溶融重合時および固
相重合時の重合速度が遅くなって、ポリエステル樹脂の
生産性が低下するので好ましくない。
【0037】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂では、単官能化合物単位は、封止化合物単位として機
能し、ポリエステル樹脂のおける分子鎖末端基または分
岐鎖末端基の封止を行い、ポリエステル樹脂における過
度の架橋およびゲルの発生を防止する。単官能化合物単
位は、モノカルボン酸、モノアルコールおよびそれらの
エステル形成性誘導体の少なくとも1種から誘導される
単位であるのが好ましく、特に制限されない。
【0038】単官能化合物単位の好ましい例としては、
安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香
酸、p−メトキシ安息香酸、o−メチル安息香酸、m−
メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、2,3−ジメチ
ル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメ
チル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジ
メチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,
6−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安
息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、1−ナフ
トエ酸、2−ナフトエ酸、2−ビフェニルカルボン酸、
1−ナフタレン酢酸、2−ナフタレン酢酸などの芳香族
モノカルボン酸;n−オクタン酸、n−ノナン酸、ミリ
スチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、オレイン
酸、リノール酸、リノレイン酸などの脂肪族モノカルボ
ン酸;前記のモノカルボン酸のエステル形成性誘導体;
ベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコ
ール、2−フェネチルアルコール、フェノール、1−ナ
フトール、2−ナフトールなどの芳香族モノアルコー
ル;ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプ
ロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリテトラ
メチレングリコールモノアルキルエーテル、オレイルア
ルコール、シクロドデカノールなどの脂肪族または脂環
式のモノアルコールなどの単官能化合物から誘導される
単位を挙げることができる。本発明におけるポリエステ
ル樹脂は、単官能化合物単位として、上記単官能化合物
単位の1種のみを有していても、または2種以上を有し
ていてもよい。そのうちでも、単官能化合物単位とし
て、安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、2
−ナフトエ酸、ステアリン酸およびステアリルアルコー
ルから選ばれる単官能化合物の1種または2種以上から
誘導される単位を有する場合が、ポリエステルの製造の
容易性および製造コストの点から好ましい。
【0039】また成形性の観点からは、熱可塑性ポリエ
ステルが、エチレンテレフタレート成分を主成分とし、
かつその融点TMa(℃)が下記式(14)を満足する
ことが好ましい。 240≦TMa≦250 (14) 融点TMaが250℃を超える場合には、ポリエステル
樹脂の結晶化速度が速いため、射出成形時あるいはブロ
ー成形時に加熱による結晶化が進行しやすく、結果とし
て延伸配向性が低下して賦形性が悪化したり、得られた
ボトルに白化が生じたりしやすくなる。そのため良好な
製品を得ることのできる製造条件の範囲が狭くなり、不
良品率が上昇しやすくなる。融点TMaはより好適には
248℃以下である。一方、融点TMaが240℃未満
の場合には、多層容器の耐熱性が低下する。またポリエ
ステル樹脂の結晶性も必要以上に低下するため、延伸配
向性が低下して強度も低下する。さらに、融点が低下す
ることで固相重合温度も低くせざるを得ず、反応速度の
低下に由来する生産性の低下の問題も生じる。融点TM
aはより好適には242℃以上であり、最適には244
℃以上である。
【0040】かかる融点を有するポリエステル樹脂を得
るには、エチレンテレフタレート成分を主成分とするポ
リエステル樹脂に適当な量の共重合成分を共重合させれ
ばよい。具体的にはポリエステルを構成する全構成単位
の合計モル数に対して、1〜6モル%の共重合成分を含
んでいることが好ましい。より好適には1.5〜5モル
%であり、最適には2〜4モル%である。製造時に副生
するジエチレングリコールの共重合量を考慮した上で、
他の共重合単量体を加えて上記範囲の共重合量の樹脂を
得ることができる。他の共重合単量体としては、特に限
定されるものではなく、前述の各種の単量体を用いるこ
とができるが、中でもネオペンチルグリコール、シクロ
ヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジカルボン酸、
イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好適なものと
して挙げられる。
【0041】また、本発明のa層に使用されるポリエス
テル樹脂は、そのガラス転移温度TGaが60℃以上で
あるのが好ましく、得られる成形品の収縮を防止する点
からは、ガラス転移温度TGaが70℃以上であるのが
より好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移温度TG
aが60℃未満の場合は、成形品、特に延伸ブロー成形
品を金型から取り出した後に、成形品に残存応力の緩和
に伴う収縮が生じて成形品の外観を損なうことがある。
【0042】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂は下記の製法により製造することができる。
【0043】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂のうちでも好適なものとして挙げられるエチレンテレ
フタレート成分を主成分とするポリエステルは、テレフ
タル酸もしくはそのエステル形成性誘導体よりなるジカ
ルボン酸成分、エチレングリコールよりなるジオール成
分、および必要に応じて上記例示した2官能化合物成
分、多官能成分、単官能成分から主としてなる反応原料
を用いて製造される。
【0044】この際、(全ジオール成分):(全ジカル
ボン酸成分)のモル比が1.1:1〜2.5:1になる
ようにするのが好ましい。
【0045】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂は上記反応原料をエステル化反応またはエステル交換
反応させた後、それを溶融重縮合させて製造する。ま
た、必要に応じて、溶融重縮合により得られたポリエス
テルを用い、さらに固相重合を行ってもよい。
【0046】本発明のa層に使用されるポリエステル樹
脂を製造する際のエステル化反応またはエステル交換反
応は、絶対圧で約5kg/cm2以下の加圧下または常
圧下に、180〜300℃の温度で、生成する水または
アルコールを留去させながら行うとよい。
【0047】エステル化反応の場合には無触媒でよい
が、エステル交換反応を行なう際には、エステル交換触
媒として、カルシウム、マンガン、マグネシウム、亜
鉛、チタン、ナトリウム、およびリチウム化合物等の1
種以上を用いるのがよい。特に、透明性の観点からマン
ガン、マグネシウム、またはチタン化合物が好ましい。
【0048】続いて、必要に応じて重縮合触媒、着色防
止剤などの添加剤を添加した後、5mmHg以下の減圧
下に、200〜300℃の温度で、所望の粘度のポリエ
ステルが得られるまで溶融重縮合を行ってポリエステル
を形成させる。溶融重縮合に用いる反応器は槽型のバッ
チ式重縮合装置、2軸回転式の横型反応器からなる連続
式重縮合装置等を用いて行なうことができる。
【0049】溶融重縮合により得られるポリエステルの
極限粘度は、ポリエステルの取り扱い性などの点から、
0.40〜0.90dl/gの範囲内であることが好ま
しく、さらに0.45〜0.80dl/gの範囲内であ
るのが好ましい。溶融重縮合により得られるポリエステ
ルの極限粘度が0.40dl/g未満であると、ポリエ
ステルを反応器から取り出す際に、溶融粘度が低すぎ、
ストランド状もしくはシート状などの形状で押出し難く
なる上、ペレット状に均一に裁断することが困難とな
る。また、ポリエステル樹脂を固相重合により、高分子
量化する際に長時間を要し、生産性の低下に繋がる。一
方、極限粘度が0.90dl/gを超えると逆に溶融粘
度が高すぎるため、反応器からポリエステルを取り出す
ことが困難となる上、ポリエステルの熱劣化による着色
が生じる。
【0050】上記溶融重縮合反応において重縮合触媒を
使用する場合は、ポリエステルの製造に通常用いられて
いるものを使用することができ、例えば、三酸化アンチ
モンなどのアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲ
ルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−
ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;テトラメトキシ
チタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキ
シチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキ
シチタンなどのチタン化合物;ジ−n−ブチル錫ジラウ
レート、ジ−n−ブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジア
セテートなどの錫化合物などを挙げることができ、これ
らの触媒化合物は単独で使用しても2種以上を組み合わ
せて使用してもよい。これらの重合触媒のうち、得られ
るポリエステルの色調が良好となることからはゲルマニ
ウム化合物が好ましく、触媒コストの面からはアンチモ
ン化合物が好ましい。ゲルマニウム化合物としては二酸
化ゲルマニウムが特に好ましく、アンチモン化合物とし
ては三酸化アンチモンが得に好ましい。重縮合触媒を用
いる場合は、ジカルボン酸成分の重量に基づいて0.0
02〜0.8重量%の範囲内の量であるのが好ましい。
【0051】また、成形性の観点からはアンチモン化合
物よりもゲルマニウム化合物を採用することが好まし
い。すなわち、一般にアンチモン化合物を用いて重合し
たポリエステルの結晶化速度はゲルマニウム化合物を用
いて重合したポリエステルよりも速いため、射出成形時
あるいはブロー成形時に加熱による結晶化が進行しやす
く、結果として延伸配向性が低下して賦形性が悪化した
り、得られたボトルに白化が生じたりしやすくなる。そ
のため良好な製品を得ることのできる製造条件の範囲が
狭くなり、不良品率が上昇しやすくなる。したがって、
副生するジエチレングリコール以外の共重合成分を含ま
ないポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、他
の共重合成分で少量変性されたポリエチレンテレフタレ
ートを用いるときに比べて結晶化速度が速いため、特に
触媒の選択が重要であり、ゲルマニウム化合物を用いる
ことが好ましい。
【0052】また、着色防止剤を使用する場合は、例え
ば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、ト
リフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイ
ト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェ
ート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を
用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用し
てもまたは2種以上を併用してもよい。上記リン化合物
からなる着色防止剤を使用する場合は、ジカルボン酸成
分の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲内
であるのが好ましい。また、ポリエステルの熱分解によ
る黄変を抑制するために、ジカルボン酸成分の重量に基
づいて0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.
05〜0.3重量%のコバルト化合物、例えば酢酸コバ
ルトなどを添加してもよい。
【0053】さらに、ポリエステルの製造時にはジエチ
レングリコールが副生するが、ポリエステルにジエチレ
ングリコール単位が多く含まれるとポリエステルのガラ
ス転移温度が低下し、それに伴って耐熱性の低下や着色
などが起こり、それから得られる成形品の耐熱性、強
度、色調などが不良なものとなる場合がある。したがっ
て、上記エステル化反応、エステル交換反応および/ま
たは溶融重縮合反応を、ジカルボン酸成分の合計重量に
対して0.001〜0.5重量%のテトラエチルアンモ
ニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒ
ドロキシド;トリエタノールアミン、トリエチルアミン
等の有機アミンなどのジエチレングリコールの副生抑制
剤の存在下に行うと、ポリエステル樹脂中におけるジエ
チレングリコール単位の割合を低減させることができる
ので好ましい。
【0054】次いで、上記溶融重縮合反応により得られ
るポリエステルをストランド状、シート状などの形状で
押出し、冷却後、ストランドカッターやシートカッター
等により裁断し、円柱状、楕円柱状、球状、円盤状、ダ
イス状などの形状のペレットを製造する。ポリエステル
の取り出し時の冷却に際しては、水槽を用いた水冷法、
冷却ドラムを用いる方法、空冷による方法などが挙げら
れる。
【0055】こうして得られたポリエステルは、120
℃〜180℃の温度範囲で加熱乾燥し、結晶化をさせて
から、成形あるいは固相重合に供することが好ましい。
結晶化処理を施したポリエステル樹脂の結晶融解熱量は
10J/g以上であることが好ましく、20J/g以上
であることがより好ましい。結晶化処理を施して得られ
るポリエステル樹脂の結晶融解熱量は10J/g未満で
あると、固相重合時および成形前の樹脂乾燥時にペレッ
トの膠着が生じる場合がある。
【0056】さらに、必要に応じて、固相重合により重
合度を高めてからポリエステル樹脂として用いることも
できる。固相重合を施すことにより、樹脂内に含有され
るオリゴマーやアセトアルデヒドが低減し、金型汚れを
少なくすることができる上、内容物の味、風味などの性
質を損なうことを抑制できる。固相重合を行なう場合
は、真空下、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス中
で行うのが好ましい。また、ポリエステルペレット同士
が膠着しないように、転動法、気体流動床法などの適当
な方法でペレットを動かしながら固相重合を行うのが好
ましい。固相重合は180〜270℃の範囲内で行うの
が好ましく、190〜240℃の範囲内の温度で行うの
がより好ましい。さらに、固相重合の温度は、ペレット
間の膠着を防止する観点から、前記範囲内の温度であっ
て、しかも製造を目的としているポリエステル(最終的
に得られるポリエステル)の融点より15℃以上低い温
度、好ましくは20℃以上低い温度とするとよい。ま
た、固相重合の重合時間は通常約5〜40時間の範囲と
するのが生産性などの観点から好ましい。
【0057】一方、本発明のエチレン−ビニルアルコー
ル共重合体層(b層)に使用されるEVOHは、エチレ
ンとビニルエステルからなる共重合体をアルカリ触媒等
を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては
酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他
の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリ
ン酸ビニルなど)も使用できる。
【0058】本発明のEVOHのエチレン含有量ETb
は25〜48モル%である。エチレン含有量ETbが2
5モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し
溶融成形性も悪化する。ETbは好適には30モル%以
上であり、より好適には35モル%以上である。またエ
チレン含有量ETbが48モル%を越えると十分なガス
バリア性が得られない。 ETbは好適には45モル%
以下であり、より好適には40モル%以下である。
【0059】また、本発明のEVOHのビニルエステル
成分のケン化度SDbは92%以上であり、好適には9
4%以上であり、より好適には96%以上である。ケン
化度が92モル%未満では、高湿度時のガスバリア性が
低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成
形物にゲル・ブツが発生しやすくなる。また、ケン化度
SDbは99%以下であり、98%以下であることが好
ましく、97.5%以下であることがより好ましい。S
Dbが99%を越える場合、デラミ発生の改善効果が低
くなる。
【0060】なおここで、EVOHがエチレン含有量あ
るいはケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物
からなる場合には、配合重量比から算出される平均値を
エチレン含有量あるいはケン化度とする。
【0061】デラミ発生を防止しながらも、良好なガス
バリアー性を維持するためには、EVOHとしてエチレ
ン含有量あるいはケン化度の異なる2種類のEVOH
(b1、b2)の配合物を用いることが好ましく、その
場合には、配合重量比が10/90〜90/10であ
り、かつ下記式(6)〜(11)を満足するのが好まし
い。 25≦ETb1≦48 (6) 99≦SDb1 (7) 25≦ETb2≦48 (8) 92≦SDb2≦99 (9) |ETb2−ETb1|≦8 (10) 1≦(SDb2−SDb1)≦8 (11) 但し、 ETb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のエチレン含有量(モル%) SDb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のケン化度(%) ETb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のエチレン含有量(モル%) SDb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のケン化度(%) を表す。
【0062】2種類のEVOH(b1、b2)の配合物
を用いる場合、b1とb2の配合重量比b1/b2が1
0/90〜90/10の範囲内であるのが好ましい。b
1とb2の配合重量比が10/90未満の場合、2種類
のEVOHを配合することによるガスバリアー性の改善
効果が乏しくなる。またb1とb2の配合重量比が90
/10を越える場合、デラミの発生が顕著となる。ガス
バリアー性の改善及びデラミ発生の改善の観点より、2
0/80〜80/20の範囲内であるのがより好まし
く、30/70〜70/30の範囲内であるのが更に好
ましい。
【0063】EVOH(b1)のエチレン含有量ETb
1は25〜48モル%であるのが好ましい。エチレン含
有量ETb1が25モル%未満では、高湿度下でのガス
バリア性が低下し溶融成形性も悪化する。ETb1は好
適には28モル%以上であり、より好適には30モル%
以上である。またエチレン含有量ETb1が48モル%
を越えると十分なガスバリア性が得られない。 ETb
1は好適には45モル%以下であり、より好適には40
モル%以下である。また、EVOH(b1)のビニルエ
ステル成分のケン化度SDb1は99%以上であり、好
適には99.3%以上であり、より好適には99.5%
以上である。ケン化度が99モル%未満では、ガスバリ
ア性の改善効果に乏しく、特に高湿度時のガスバリア性
が低下する。
【0064】EVOH(b2)のエチレン含有量ETb
2は25〜48モル%である。エチレン含有量ETb2
が25モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低
下し溶融成形性も悪化する。ETb2は好適には30モ
ル%以上であり、より好適には35モル%以上である。
またエチレン含有量ETb2が48モル%を越えると十
分なガスバリア性が得られない。 ETb2は好適には
45モル%以下であり、より好適には40モル%以下で
ある。また、EVOH(b2)のビニルエステル成分の
ケン化度SDb2は92%以上であり、好適には94%
以上であり、より好適には96%以上である。ケン化度
が92モル%未満では、高湿度時のガスバリア性が低下
するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物
にゲル・ブツが発生しやすくなる。また、ケン化度SD
b2は99%以下であり、98%以下であることが好ま
しく、97.5%以下であることがより好ましい。SD
b2が99%を越える場合、デラミ発生の改善効果が低
くなる。
【0065】ガスバリアー性を改善するために、上記し
た2種類のEVOH(b1,b2)を配合する場合、両
者のエチレン含有量の差が8モル%以下であることが好
ましい。エチレン含有量の差が8モル%を越える場合、
EVOH層の透明性が損なわれてしまううえ、デラミの
発生が顕著となる。透明性及びデラミ発生の抑制の観点
から、エチレン含有量の差が4モル%以下がより好まし
く、2モル%以下が更に好ましい。また、上記した2種
類のEVOH(b1,b2)を配合する場合、ケン化度
の差が1〜8%の範囲内であることが好ましい。ケン化
度の差が1%未満である場合、デラミの発生の改善効果
が低くなる。一方、ケン化度の差が8%を越える場合、
高湿度時のガスバリア性が低下するだけでなく、EVO
Hの熱安定性が悪化し、成形物にゲル・ブツが発生しや
すくなる。デラミ発生の抑制、ガスバリア性、熱安定性
の観点から、ケン化度の差が1.5%〜5%の範囲内で
あることがより好ましく、2%〜4%の範囲内であるこ
とが更に好ましい。
【0066】なおここで、ガスバリアー性を改善するた
めに、EVOHとしてエチレン含有量あるいはケン化度
の異なる2種類以上のEVOH(b1、b2)の配合物
を用いる場合には、配合重量比から算出されるエチレン
含有量の平均値は、25〜48モル%の範囲内であるの
が好ましい。エチレン含有量の平均値が25モル%未満
では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も
悪化する。エチレン含有量の平均値はより好適には30
モル%以上であり、更に好適には35モル%以上であ
る。またエチレン含有量の平均値が48モル%を越える
と十分なガスバリア性が得られない。 エチレン含有量
の平均値はより好適には45モル%以下であり、更に好
適には40モル%以下である。
【0067】また、配合重量比から算出されるケン化度
の平均値は、94%以上であり、好適には96%以上で
あり、より好適には97%以上である。ケン化度が94
モル%未満では、高湿度時のガスバリア性が低下するだ
けでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物にゲル
・ブツが発生しやすくなる。また、ケン化度の平均値は
99%以下であることが好ましく、98.5%以下であ
ることがより好ましい。ケン化度の平均値が99%を越
える場合、デラミ発生の改善効果が低くなる。
【0068】なお、EVOHが、3種類以上のEVOH
の配合物からなる場合には、配合されるEVOHから任
意に選択された2種類のEVOHの組み合わせにおい
て、それら2種類のEVOHの配合重量比が10/90
〜90/10であり、かつ前述の式(6)〜(11)
を、満足すれば良い。
【0069】かかるEVOHのエチレン含有量およびケ
ン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることが
できる。
【0070】またEVOHには、本発明の目的が阻害さ
れない範囲で他の単量体を少量共重合することもでき
る。共重合できる単量体の例としては、プロピレン、1
−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1
−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;イタ
コン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸な
どの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エ
ステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニ
ルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不
飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビ
ニルピロリドン類などが挙げられる。
【0071】なかでも、EVOHに共重合成分としてビ
ニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有す
る場合は共射出する際の基材樹脂との溶融粘性の整合性
が改善され、均質な共射出成形体の製造が可能である。
ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニ
ルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビ
ニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタ
クリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。
なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエト
キシシランが好適に用いられる。均質な共射出成形体の
製造の観点から、ビニルシラン化合物の共重合量は、
0.001〜0.15モル%の範囲が好適であり、0.
005〜0.1モル%の範囲が好適である。
【0072】さらに、EVOHがホウ素化合物を含有す
る場合にも、EVOHの溶融粘性が改善され、均質な共
射出成形体が得られる点で有効である。ここでホウ素化
合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、
水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類
としては、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ
酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリ
エチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩と
しては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ
土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物
うちでもホウ酸、オルトホウ酸、NaBH4が好まし
い。ホウ素化合物の含有量はホウ素元素換算で20〜2
000ppm、望ましくは50〜1000ppmであ
り、より望ましくは100〜500ppmである。この
範囲にあることで加熱溶融時のトルク変動が抑制された
EVOHを得ることができる。20ppm未満ではその
ような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化
しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0073】また、本発明のEVOHに対し、アルカリ
金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000ppm含
有させることも層間接着性や相溶性の改善のために効果
的であることから好ましい。アルカリ金属塩のより好適
な含有量はアルカリ金属元素換算で20〜1000pp
m、さらには30〜500ppmである。ここでアルカ
リ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなど
があげられ、アルカリ金属塩としては、一価金属の脂肪
族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、燐酸塩、金属錯
体等が挙げられる。例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリ
ウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチウム、ステアリン酸ナ
トリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四
酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。中でも酢酸ナトリ
ウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウムが好適である。
【0074】また、本発明のEVOHに対しリン化合物
を、リン元素換算で2〜200ppm、より好適には3
〜150ppm、最適には5〜100ppm含有させる
ことも好ましい。EVOH中のリン濃度が2ppmより
少ない場合や200ppmより多い場合には、溶融成形
性や熱安定性に問題を生じることがある。特に、長時間
にわたる溶融成形を行なう際のゲル状ブツの発生や着色
の問題が発生しやすくなる。EVOH中に配合するリン
化合物の種類は特に限定されるものではない。リン酸、
亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができ
る。リン酸塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第
3リン酸塩のいずれの形で含まれていても良く、そのカ
チオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金
属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中で
も、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、
リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形で
リン化合物を添加することが好ましい。
【0075】また本発明の目的を阻外しない範囲で熱安
定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、
他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)をEVO
H樹脂にブレンドすることもできる。
【0076】さらに、本発明においては、EVOHの示
差走査熱量計(DSC)での結晶融解ピークが単一ピー
クであることが重要である。結晶融解ピークが単一ピー
クであるとは、DSCで得られる結晶融解ピークのチャ
ートにおいて、最大値あるいは最小値のみを示し、最大
値あるいは最小値に付属した形で極大値あるいは極小値
が生じる場合は当てはまらない。但し、最大値あるいは
最小値に付属した形の極大値あるいは極小値を示さず、
変曲点を有する場合(いわゆるショルダーピークを示す
場合)は、結晶融解ピークが単一ピークであると見な
す。結晶融解ピークが単一ピークでない場合、EVOH
層の透明性が損なわれるる上、耐デラミ性が損なわれ
る。
【0077】本発明におけるEVOHの融点TMbは1
40℃〜190℃であることが重要である。融点TMb
が140℃未満である場合、十分なガスバリア性が得ら
れない。好適には145℃以上であり、より好適には1
50℃以上である。一方、融点TMbが190℃を越え
る場合、多層容器におけるデラミの発生が著しく増加す
る。好適には185℃以下であり、より好適には180
℃以下である。かかる融点を有するEVOHは、エチレ
ン含有量、ケン化度を特定の範囲に設定することにより
得ることができる。
【0078】本発明に用いるEVOHの好適なメルトイ
ンデックス(MIb)(190℃、2160g荷重下、
JIS K7210に基づく)は0.1〜10g/10
分である。MIbが0.1g/10分未満である場合、
溶融成形時の流動性に劣り、射出負荷の増大を来たし、
高速連続運転性に支障を来たし、またゲルやフィッシュ
アイを発生しやすく、さらに多層容器に樹脂の流れ斑が
生じ外観を著しく損なう。MIbはより好適には0.5
g/10分以上である。一方、MIbが10g/10分
を越える場合、多層容器におけるb層の落下衝撃強度が
低下し、落下後のガスバリアー性が低下するのみなら
ず、多数個取り成形機における、各金型内へのEVOH
射出量が安定せず均質な成形が困難となる。さらに悪い
ことには、多層射出したパリソンのEVOHの軸方向の
厚み分布も不均一となり、また、軸と直角な方向のEV
OHの厚み分布も、パリソンの口金部分に厚くなる傾向
を示し、胴部のEVOH層の厚みが薄くなる結果ガスバ
リアー性が悪化し、また外観上口部が白濁しやすく好ま
しくない。 MIbはより好適には8g/10分以下で
あり、さらに好適には6g/10分以下である。
【0079】以下、多層容器の製造方法について説明す
る。多層構造を有する容器前駆体(パリソン)は通常2
台の射出シリンダーを有する成形機を用い単一の金型に
1回の型締め操作を行い、溶融したPES樹脂およびE
VOH樹脂をそれぞれの射出シリンダーよりタイミング
をずらして交互あるいは/及び同心円状のノズル内を同
時に射出する事により得られる。例えば(1)先に内外
層用のPESを射出し、次いで、中間層となるEVOH
を射出して、PES/EVOH/PESの3層構成の容
器を作る方法、あるいは(2)先に内外層用のPESを
射出し、次いでEVOHを射出して、それと同時にある
いはその後中心層となるPESを再度射出し、PES/
EVOH/PES/EVOH/PESの5層構成の容器
を作る方法など、内層がPES層に完全に封入された有
底パリソンの一般的な方法で得られ、特に設備上限定を
受けるものではない。
【0080】有底パリソンの射出成形時の条件として、
PESは250℃〜330℃の温度範囲内で射出するの
が好ましく、270℃〜320℃の温度範囲内で射出す
るのがより好ましく、280℃〜310℃の温度範囲内
で射出するのがさらに好ましい。PESの射出温度が2
50℃未満である場合、PESペレットが十分に溶融し
きらないために成形品に未溶融物(フィッシュアイ)が
混入し外観不良を生じる。また、それにより成形品の強
度が低下する。さらに、極端な場合はスクリュートルク
が上昇し成形機の故障を引き起こす。一方、PESの射
出温度が330℃を越える場合、PESの分解が著しく
なり、分子量低下による成形品の強度低下を引き起こ
す。また、分解時に生じるアセトアルデヒドなどのガス
により成形品に充填する物質の性質を損なうだけでな
く、分解時に生じるオリゴマーにより金型の汚れが激し
くなり成形品の外観を損なう。
【0081】また、EVOHの場合は170℃〜250
℃の温度範囲内で射出するのが好ましく、180℃〜2
40℃の温度範囲内で射出するのがより好ましく、19
0℃〜230℃の温度範囲内で射出するのがさらに好ま
しい。EVOHの射出温度が170℃未満である場合、
EVOHペレットが十分に溶融しきらないために成形品
に未溶融物(フィッシュアイ)が混入し外観不良を生じ
る。さらに、極端な場合はスクリュートルクが上昇し成
形機の故障を引き起こす。一方、EVOHの射出温度が
250℃を越える場合EVOHの分解あるいはゲル化が
著しくなり、着色やゲル化物による成形品の外観不良、
あるいは分解ガスやゲル化物による流動の乱脈化により
EVOH層に欠落部分を生じバリアー低下を引き起こ
す。また、極端な場合、ゲル化物の発生により、射出成
形が不可能となる。
【0082】さらに、PESおよびEVOHが流入され
るホットランナー部分の温度は220℃〜300℃の範
囲内で射出するのが好ましく、240℃〜280℃の範
囲内で射出するのがより好ましく、250℃〜270℃
の範囲内で射出するのがさらに好ましい。ホットランナ
ー部分の温度が220℃未満である場合、PESの結晶
化が生じてしまい、ホットランナー部分で固化してしま
うため、成形が困難となる。一方、ホットランナー部分
の温度が300℃を越える場合EVOHの分解あるいは
ゲル化が著しくなり、着色やゲル化物による成形品の外
観不良、あるいは分解ガスやゲル化物による流動の乱脈
化によりEVOH層に欠落部分を生じバリアー低下を引
き起こす。また、極端な場合、ゲル化物の発生により、
射出成形が不可能となる。
【0083】上記有底パリソンを延伸ブローして得られ
る多層容器の良好な耐デラミ性を得るためには、上記の
射出成形時に、パリソンのPESおよびEVOHの結晶
化をできる限り抑制することが重要である。それによ
り、均一な延伸性が得られ、耐デラミ性、透明性および
形状に優れた成形品を得ることができる。パリソンのP
ESおよびEVOHの結晶化を抑制するためには、金型
温度を0℃〜70℃の範囲内にするのが好ましく、5℃
〜50℃の範囲内にするのがより好ましく、10〜30
℃の範囲内にするのがさらに好ましい。金型温度が0℃
未満であると、金型の結露によりパリソンの外観が損な
われ、良好な成形品が得られない。また、金型温度が7
0℃を越える場合、パリソンのPESおよびEVOHの
結晶化が促進されてしまい、均一な延伸性が得られず、
延伸ブロー成形して得られる成形品の耐デラミ性が低下
する上、意図した形に賦形された成形品を得ることが困
難となる。さらに、PESの結晶化により、透明性が損
なわれる。
【0084】パリソンの厚みに関しては、総厚みで2〜
5mm、EVOH層は合計で10〜500μmであるの
が好ましい。
【0085】こうして得られた多層パリソンは、高温の
状態で直接、あるいはブロックヒーター、赤外線ヒータ
ーなどの発熱体で75〜150℃に再加熱された後、延
伸ブロー工程に送られ、タテ方向に1〜5倍にストレッ
チされた後、圧空などで1〜4倍にブローされ、PES
樹脂層およびEVOH樹脂層が一軸あるいは二軸延伸さ
れた多層ポリエステル延伸ブロー容器が得られる。この
場合、多層パリソン加熱時の温度が高すぎると、ポリエ
ステルが結晶化し易くなるため、延伸ブロー容器が白化
し外観が損なわれる。また、延伸ブロー容器のデラミの
発生が増加するため、好ましくない。一方、多層パリソ
ン加熱時の温度が低すぎると、ポリエステルにクレーズ
が生じ、パール調になるため透明性が損なわれる。この
ため、加熱時の多層パリソンの温度は、85〜140℃
が好ましく、90℃〜130℃がより好ましく、95〜
120℃がさらに好ましい。
【0086】本発明における多層容器の容器胴部の総厚
みは一般的には100μm〜3mmであり、用途に応じ
て使い分けられる。またこのときのEVOH層の合計厚
みは2〜200μmの範囲内であるのが好ましく、5〜
100μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0087】また、本発明の多層容器のa層のポリエス
テル樹脂の極限粘度IVaは、成形品の機械的強度、外
観、成形品製造時の生産性などの点から、0.60〜
0.90dl/gであることが好ましい。極限粘度IV
aが0.60dl/g未満のときは、成形品の強度が低
下するのみならず、パリソン成形時あるいはブロー成形
時に加熱による結晶化が進行しやすく、結果として延伸
配向性が低下して延伸不良が発生したり、得られたボト
ルの透明性が悪化したりする。IVaはより好適には
0.65dl/g以上であり、さらに好適には0.70
dl/g以上である。一方、極限粘度IVaが0.90
dl/gよりも大きいときは、溶融粘度が高くなり過ぎ
て、射出成形によるパリソンの成形が出来なくなる。さ
らに延伸ブロー時に成形品に樹脂の延伸むらを生じ、外
観を著しく損なうなどの成形上の問題も生じ易くなる。
IVaはより好適には0.85dl/g以下である。な
お、上記極限粘度IVaは多層容器のa層を構成するポ
リエステルの極限粘度であるから、溶融成形する際に若
干の極限粘度の低下を伴うことを考慮すれば、原料ポリ
エステルチップとしては上記範囲より若干大きめの極限
粘度のものを用いることが好ましい。
【0088】本発明の多層容器のa層のポリエステル樹
脂の末端カルボキシル基濃度Caは40μ当量/g以下
であるのが、ポリエステル樹脂の溶融安定性、着色防
止、押出成形品における表面荒れの防止などの点から好
ましく、30μ当量/g以下であるのがより好ましい。
ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基濃度が40μ当
量/gを超える場合は、溶融時の熱安定性が低下してポ
リエステル樹脂の分子量低下が顕著になり、しかも成形
品における着色が著しくなり易い。なお、上記末端カル
ボキシル基濃度Caは多層容器のa層を構成するポリエ
ステルの極限粘度であるから、溶融成形する際に若干の
末端カルボキシル基濃度の上昇を伴うことを考慮すれ
ば、原料ポリエステルチップとしては上記範囲より若干
低めの末端カルボキシル基濃度のものを用いることが好
ましい。
【0089】本発明の多層容器のa層のポリエステル樹
脂のオリゴマー(エチレンテレフタレートのサイクリッ
クトリマー)含有率CTaは2重量%以下であることが
好ましい。これによりオリゴマーの付着による金型など
の汚れが少なくなり、成形品の外観を損ねることができ
る上、金型等の洗浄行程が省かれ成形品の生産性が向上
する。金型等の汚れ低減の観点から、オリゴマー含有率
CTaは1.5重量%以下であるのがより好ましく、
1.0重量%以下であるのがさらに好ましい。なお、上
記オリゴマー含有率CTaは多層容器のa層を構成する
ポリエステルのオリゴマー含有率であるから、溶融成形
する際に若干のオリゴマー含有率の上昇を伴うことを考
慮すれば、原料ポリエステルチップとしては上記範囲よ
り若干低めのオリゴマー含有率のものを用いることが好
ましい。
【0090】本発明における多層容器の容器胴部の熱可
塑性ポリエステル層の密度Da(g/cm3)は下記式
(12): 1.35≦Da≦1.37 (12) を満足するのが好ましい。熱可塑性ポリエステル層の密
度Daが1.35g/cm3未満である場合、延伸が不
十分であり、強度の低下に繋がる上、ホットフィル時や
殺菌処理のための加熱時に収縮が大きくなりやすい。D
aはより好適には1.353 g/cm3以上であり、さ
らに好適には1.355 g/cm3以上である。一方、
1.37g/cm3を超える場合、多層容器におけるデ
ラミの発生が増加する傾向にある。 Daはより好適に
は1.367 g/cm3以下であり、さらに好適には
1.365g/cm3以下である。
【0091】本発明の多層容器におけるb層のEVOH
の密度Dbは、1.11dl/g〜1.20dl/gで
あることが好ましい。密度Dbが1.11dl/g未満
である場合、十分なガスバリア性が得られない。好まし
くは1.12dl/g以上であり、より好ましくは1.
13dl/gである。一方、密度Dbが1.20dl/
gを超える場合、デラミの発生が増加する。好ましくは
1.19dl/g以下であり、より好ましくは1.18
dl/g以下である。
【0092】下記に記した方法で測定した本発明の多層
容器の容器胴部における内部ヘイズは、5%以下である
ことが好ましい。内部ヘイズが5%以上である場合、多
層容器の外観が損なわれる。内部ヘイズは、4%以下で
あることがより好ましく、3%以下であることが更に好
ましい。
【0093】また、本発明者らは、驚くべきことに、デ
ラミの発生がポリエステル層(a層)とEVOH層(b
層)との界面におけるEVOH層の表面の分子構造に大
きく関係することを見出した。すなわち、b層の界面に
エステル基が多く存在することにより、デラミの発生を
顕著に抑制することが出来るのである。
【0094】すなわち、本発明の多層容器においては、
容器胴部において直接接触した熱可塑性ポリエステル層
(a層)とエチレン−ビニルアルコール共重合体層(b
層)との界面を剥離し、b層表面のX線光電子分光測定
(XPS)を行った場合、下記式(3)を満足すること
が重要である。 0.015≦PC/(PA+PB+PC)≦0.3 (3) 但し、PAはC1s電子の結合エネルギーに対応するピ
ークのうち、最大強度のピーク(ピークA)の面積を表
し、またPBはピークAより1.1〜1.8eV高エネ
ルギー側に現れるピーク(ピークB)の面積を表し、更
にPCはピークAより3.6〜4.3eV高エネルギー
側に現れるピーク(ピークC)の面積を表す。
【0095】b層界面のXPS測定においては、C1s
電子の結合エネルギーに対応するピークのうち、最大強
度のピーク(ピークA)より1.1〜1.8eV高エネ
ルギー側に現れるピークBが主鎖の炭素原子のうち酸素
原子が隣接するもの、すなわち水酸基またはアセトキシ
基が結合している主鎖の炭素原子に帰属され、またピー
クAより3.6〜4.3eV高エネルギー側に現れるピ
ークCがエステル基の炭素原子に帰属され、そしてそれ
以外の炭素原子がピークAに帰属される。したがって、
それぞれのピークに対応するピーク面積(それぞれP
A、PBおよびPC)はおのおのの帰属される炭素原子
の相対量を表し、上記式(3)はb層の剥離界面におけ
る全炭素原子に対するエステル基に由来する炭素原子の
割合に相当する。それぞれのピークに対応するピーク面
積(それぞれPA、PBおよびPC)は実施例記載の方
法において計算される。
【0096】上記式(3)の値が0.015未満である
場合、デラミの発生が顕著となる。一方、上記式(3)
の値が0.3を越える場合、ガスバリアー性が低下す
る。ガスバリアー性の観点から、0.25以下が好まし
く、0.2以下がより好ましい。
【0097】例えば、比較例1で用いたEVOH樹脂は
エチレン含有量が44モル%であり、ケン化度が97%
である。したがって、全体が均質である場合には、全炭
素原子に対するエステル基由来の炭素原子の割合は、計
算によって0.008と求められる。しかしながら、比
較例1で得られた共射出延伸ブロー成形容器のEVOH
とポリエステルの界面を剥離したときのEVOH表面に
は0.023もの割合でエステル基が存在している。す
なわち、EVOH層の表面において、エステル基が約4
倍の濃度に濃縮されているのである。
【0098】このようにエステル基が表面に偏在する理
由は必ずしも明らかではないが、ポリエステルと溶融状
態で接触して射出成形される際に、ポリエステルと親和
性の高いエステル基が表面に濃縮されているものと推定
される。この結果、EVOH表面にポリエステルと親和
性の高い官能基が濃縮されて、デラミ発生率を抑制する
ことができているものと推定される。
【0099】以上のようにして得られたポリエステル樹
脂とEVOH樹脂からなる多層容器、特に共射出延伸ブ
ロー多層容器は、接着性樹脂層を有せずとも、衝撃によ
る層間のデラミを防止することができ、透明性、ガスバ
リアー性に優れたものである。かかる容器は各種内容物
を長期間にわたって保存するのに適しており、炭酸飲
料、ビール、ワイン等の各種飲料、食品、化粧品等の容
器として有用である。
【0100】
【実施例】以下に本発明を実施例などの例によって具体
的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されな
い。以下の例において分析、評価は次のようにして行っ
た。
【0101】(1)ポリエステルにおける各構造単位の
含有率:ポリエステルにおける各構造単位の含有率は、
重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒としたポリエステルの
1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル(日本電子社製
「JNM−GX−500型」により測定)により測定し
た。
【0102】(2)ポリエステルの極限粘度(IV
a):多層容器胴部のポリエステル層からサンプルを切
り出し、フェノールとテトラクロルエタンの等重量混合
溶媒中、30℃で、ウベローデ型粘度計(林製作所製
「HRK−3型」)を用いて測定した。
【0103】(3)ポリエステルのガラス転移温度(T
Ga)および融点(TMa):多層容器胴部のポリエス
テル層からサンプルを切り出し、JIS K7121に
準じて、示差熱分析法(DSC)により、セイコー電子
工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/
SSC5200H型を用いて、280℃の温度に試料を
5分間保持した後、降温速度100℃/分の条件で30
℃の温度にし、さらに5分間保持した後、昇温速度10
℃/分の条件で測定した。但し、温度の校正にはインジ
ウムと鉛を用いた。また、本発明でいうガラス移転点
は、前記JISでいう中間点ガラス転移温度(Tmg)
をいい、さらに、本発明でいう融点は、前記JISでい
う融解ピーク温度(Tpm)をいう。
【0104】(4)ポリエステルの末端カルボキシル基
濃度(Ca):多層容器胴部のポリエステル層から切り
出した0.2gのポリエステルを215℃に加熱したベ
ンジルアルコール10mlに溶解し、溶解後にクロロホ
ルム10mlを加え、苛性ソーダのベンジルアルコール
溶液を用いて滴定した。
【0105】(5)ポリエステルのオリゴマー(サイク
リックトリマー)含有率(CTa):多層容器胴部のポ
リエステル層から切り出したポリエステル100mgを
クロロホルム/1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−
2−プロパノール(容積比1/1)2mlに溶解し、さ
らにクロロホルム8mlを加えて希釈した。これに溶液
の体積が100mlとなるように、アセトニトリルを加
えポリマー成分を再析出させて、濾過した後の濾液を得
た。この濾液について、75体積%アセトニトリル水溶
液を溶離液とする高速液体クロマトグラフィー(カラ
ム,ケムコ社製ODS−II)を用いて、紫外・可視吸光
度および屈折率による定量分析を行って、エチレンテレ
フタレートのサイクリックトリマーの含有率(重量%)
を求めた。
【0106】(6)EVOHにおけるエチレン含有量お
よびケン化度:EVOHにおけるエチレン含有量および
ケン化度は、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とし
たEVOHの1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル
(日本電子社製「JNM−GX−500型」により測
定)により測定した。
【0107】(7)EVOHの融点(TMb):多層容
器胴部のポリエステル層からサンプルを切り出し、JI
S K7121に準じて、示差熱分析法(DSC)によ
り、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DS
C)RDC220/SSC5200H型を用いて、24
0℃の温度に試料を5分間保持した後、降温速度100
℃/分の条件で30℃の温度にし、さらに5分間保持し
た後、昇温速度10℃/分の条件で測定した。但し、温
度の校正にはインジウムと鉛を用いた。また、本発明で
いう融点は、前記JISでいう融解ピーク温度(Tp
m)をいう。
【0108】(8)EVOHのメルトインデックス(M
Ib):メルトインデクサーL244(宝工業株式会社
製)を用いて測定した。具体的には、EVOHチップ
を、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに
充填し、190℃で溶融した後、溶融したEVOHに対
して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャ
ーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設け
た径2.1mmのオリフィスより押出されたEVOHの
流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトインデ
ックスとした。
【0109】(9)リン酸根含有量:リン酸根含量は、
以下に示す方法に従いリン酸イオン(PO4 3-)含量と
して得た。試料とする乾燥済みEVOH10gを0.0
1規定の塩酸水溶液に50mlに投入し、95℃で6時
間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィ
ーを用いて定量分析し、リン酸イオン含量を得た。カラ
ムは、(株)横川電機製のCIS−A23を使用し、溶
離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸
水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際し
てはリン酸水溶液で作製した検量線を用いた。
【0110】(10)Na、K、Mgイオンの含有量:
試料とする乾燥チップ10gを0.01規定の塩酸水溶
液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後
の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析
し、Naイオン、KイオンおよびMgイオンの量を定量
した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を
使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの
2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。な
お、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム、塩化カリ
ウムおよび塩化マグネシウム水溶液で作成した検量線を
用いた。こうして得られたNaイオン、Kイオンおよび
Mgイオンの量から、乾燥チップ中のアルカリ金属塩お
よびアルカリ土類金属塩の量を金属換算の量で得た。
【0111】(11)EVOHの密度(Db):多層容
器胴部のEVOH層を0.5cm×0.5cmの大きさ
で切り出し、25℃のn−ヘキサン/四塩化炭素密度勾
配管を用い、測定を行った。
【0112】(12)ポリエステルの密度(Da):多
層容器胴部のポリエステル層を0.5cm×0.5cm
の大きさで切り出し、25℃のn−ヘキサン/四塩化炭
素密度勾配管を用い、測定を行った。
【0113】(13)多層容器のデラミ発生率:成形で
得られたボトル100本を、各々1本ごとに内容物とし
て水を充填し、常圧下で密栓した後、50cmの高さか
らボトル胴部を水平にし、90°の角度を持った長さ2
0cm三角形の台の上に、台の角部がボトル胴部の中央
に当たるように一回のみ自然落下させた。デラミを生じ
たボトルの本数から、下記式: [(デラミを生じたボトルの本数)/100]×100 (%) からデラミ発生率を算出した。
【0114】(14)多層容器のヘイズ値(曇価):得
られたボトル胴部中央を円周上に4分割した4箇所につ
いて、ASTM D1003−61に準じて、ポイック
積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研
究所製「HR−100型」)を用いて各箇所における内
部ヘイズ値を測定し、その平均値を採ってボトルのヘイ
ズ値(曇価)とした。
【0115】(15)多層容器の酸素透過量:得られた
ボトルの形態のままで、20℃−65%RHに温湿度調
整した後、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社
製、OX−TRAN−10/50A)にて、容器1個当
たりの酸素透過量(ml/ container ・da
y・atm)を測定した。
【0116】(16)容器胴部におけるEVOH層表面
のXPS測定:容器胴部におけるポリエステル層(a
層)とEVOH層(b層)の界面を剥離したときののE
VOH層表面のX線光電子分光測定(XPS)は、島津
製作所製「AXIS−HSi」を用いて行った。測定は
試料を固定し、最初、Wide Scan(0〜110
0eV)測定により全元素の定性分析を行い、続いて、
計30分間各元素のピーク積算(Narrow Sca
n)を実施した。圧力1×10-7Paで、励起源として
MgのKαを用い、15kv−8mAの条件下で行っ
た。
【0117】C1s電子の結合エネルギーに相当するピ
ークのうち最大強度のピークであるピーク(ピークAと
する)が285eV付近に現れるので、そのピークトッ
プを基準として、ピークA、ピークAより1.1〜1.
8eV高エネルギー側に現れるピークB、およびピーク
Aより3.6〜4.3eV高エネルギー側に現れるピー
クCのそれぞれのピーク面積(それぞれPA、PBおよ
びPC)を求めた。面積を算出するに際し、波形分離に
おけるバックグラウンド補正にはリニアー法を用い、ま
た、曲線近似にはガウシャン曲線近似100%を用いて
行った。PC/(PA+PB+PC)の値は、得られた
それぞれのピーク面積の値PA、PBおよびPCから算
出した。
【0118】(17)ポリエステル樹脂の分光透過スペ
クトル ポリエステル樹脂を280℃で溶融プレス成形して、厚
さ300μmのシートを得た。このシートを用い、島津
製作所製、紫外・可視分光光度計「UV−2100」に
て分光透過スペクトルを測定した。
【0119】実施例1 熱可塑性ポリエステル樹脂は下記の要領にて、製造した
ものを使用した。 (1)テレフタル酸100.000重量部およびエチレ
ングリコール44.830重量部とからなるスラリーを
つくり、これに二酸化ゲルマニウム0.010重量部、
亜リン酸0.010重量部およびテトラエチルアンモニ
ウムヒドロキシド0.010重量部を加えた。このスラ
リーを加圧下(絶対圧2.5Kg/cm2)で250℃
の温度に加熱して 、エステル化率が95%になるまで
エステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、
得られた低重合体を、1mmHgの減圧下に、270℃
の温度で前記の低重合体を溶融重縮合させて、極限粘度
0.50dl/gのポリエステルを生成させた。得られ
たポリエステルをノズルからストランド状に押出し、水
冷した後、切断し、円柱状ペレット(直径約2.5m
m、長さ約2.5mm)にした。 次いで、得られたポ
リエステルのペレットを160℃で5時間予備乾燥を行
なって結晶化し、ポリエステルプレポリマーを得た。
【0120】(2)得られたポリエステルプレポリマー
の各構造単位の含有率をNMRで測定したところ、ポリ
エステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリコー
ル単位、および副生したジエチレングリコール単位の含
有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.
1モル%であった。また、末端カルボキシル基濃度およ
び融点を上記方法で測定したところ、それぞれ38μ当
量/gおよび253℃であった。次いで、得られたポリ
エステルプレポリマーを160℃で5時間予備乾燥を行
なって結晶化した。
【0121】(3)結晶化したポリエステルプレポリマ
ーを、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHg
の減圧下に、220℃で固相重合を10時間行って、高
分子量化されたポリエステル樹脂を得た。
【0122】(4)上記(3)で得られたポリエステル
樹脂の各構造単位の含有率をNMRで測定したところ、
ポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチレングリ
コール単位、およびジエチレングリコール単位の含有率
はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モ
ル%であった。また、極限粘度、融点、ガラス転移温度
TGa、末端カルボキシル基濃度およびサイクリックト
リマー含有率はそれぞれ0.83dl/g、252℃、
80℃、22μ当量/g、0.32重量%であった。得
られたポリエステル樹脂からなるシートの分光透過スペ
クトルを図7に示す。
【0123】また、 EVOH樹脂としては、エチレン
含有量(ETb1)44モル%、ケン化度(SDb1)
99.8%、メルトインデックス(MIb1;190℃
−2160g荷重)5.5g/10分、融点166℃の
EVOH100重量部、およびエチレン含有量(ETb
2)44モル%、ケン化度(SDb2)97.0%、メ
ルトインデックス(MIb2;190℃−2160g荷
重)5.3g/10分、融点154℃のEVOH100
重量部をドライブレンドし、20mmφ二軸押出機で2
00℃でペレット化した後、80℃16時間減圧下で乾
燥を行ったEVOH組成物を使用した。該EVOH組成
物のメルトインデックス(MIb;190℃−2160
g荷重)は5.2g/10分、融点は161℃であり、
リン酸根含有量及びNa、K、Mgイオン含有量を測定
したところ、それぞれ100ppm,80ppm、50
ppm、50ppmであった。EVOH組成物のDSC
チャートを図2に示すが、単一の融解ピークを有してい
る。
【0124】これらの樹脂を用いて日精ASB製共射出
延伸ブロー成形機(ASB−50HT型750ml2個
取り)を使用し、PES側射出機温度290℃、EVO
H側射出機温度220℃、PESとEVOHとが合流す
るホットランナーブロック部260℃、射出金型コア温
度15℃、射出金型キャビティー温度15℃で共射出成
形を行い、PES/EVOH/PESの2種3層のパリ
ソンを成形した。その後、パリソンの表面温度を105
℃に加熱し、延伸ブロー成形を行い、胴部における平均
厚みが内層PES203μm、中間層EVOH18μ
m、外層PES67μmである2種3層の多層共射出ブ
ロー成形ボトルを得た。
【0125】得られたボトルの胴部の外層および内層の
PESを取り出し、密度Da、極限粘度IVa、融点T
Ma、末端カルボキシル基濃度Caおよびサイクリック
トリマー含有量CTaを測定した結果を表1に示す。ま
た、得られたボトルの胴部のEVOHを取り出し、融点
TMbおよび密度Dbを測定した結果を表2に示す。E
VOH層表面のXPS測定チャートを図5に示す。各ピ
ークの面積比はPA:PB:PC=65.69:32.
01:2.30であり、PC/(PA+PB+PC)の
値は0.0230であった。さらに、得られたボトルを
用いて、ボトルのデラミ発生率、ボトルの胴部のヘイズ
およびボトルの酸素透過量を測定した結果を表4に示
す。
【0126】実施例2 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb1)38モル%、ケン化度(SDb
1)99.8%、メルトインデックス(MIb1;19
0℃−2160g荷重)1.6g/10分、融点177
℃のEVOH100重量部、およびエチレン含有量(E
Tb2)38モル%、ケン化度(SDb2)96.5
%、メルトインデックス(MIb2;190℃−216
0g荷重)1.6g/10分、融点162℃のEVOH
100重量部をドライブレンドし、20mmφ二軸押出
機で200℃でペレット化した後、80℃16時間減圧
下で乾燥を行ったEVOH組成物を使用した。該EVO
H組成物のメルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)は1.4g/10分、融点は166℃
(単一融解ピーク)であり、リン酸根含有量及びNa、
K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ95
ppm,75ppm、50ppm、55ppmであっ
た。
【0127】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES201μm、中間層EVOH20
μm、外層PES69μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0128】実施例3 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb1)32モル%、ケン化度(SDb
1)99.8%、メルトインデックス(MIb1;19
0℃−2160g荷重)1.2g/10分、融点183
℃のEVOH100重量部、およびエチレン含有量(E
Tb2)32モル%、ケン化度(SDb2)97.0
%、メルトインデックス(MIb2;190℃−216
0g荷重)1.2g/10分、融点172℃のEVOH
100重量部をドライブレンドし、20mmφ二軸押出
機で200℃でペレット化した後、80℃16時間減圧
下で乾燥を行ったEVOH組成物を使用した。該EVO
H組成物のメルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)は1.1g/10分、融点は177℃
(単一融解ピーク)であり、リン酸根含有量及びNa、
K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ90
ppm,75ppm、45ppm、45ppmであっ
た。
【0129】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES200μm、中間層EVOH20
μm、外層PES70μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0130】実施例4 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb1)44モル%、ケン化度(SDb
1)99.7%、ビニルトリメトキシシラン0.05モ
ル%、メルトインデックス(MIb1;190℃−21
60g荷重)1.8g/10分、融点165℃のEVO
H100重量部、およびエチレン含有量(ETb2)4
4モル%、ケン化度(SDb2)97.0%、ビニルト
リメトキシシラン0.05モル%、メルトインデックス
(MIb2;190℃−2160g荷重)1.7g/1
0分、融点153℃のEVOH100重量部をドライブ
レンドし、20mmφ二軸押出機で200℃でペレット
化した後、80℃16時間減圧下で乾燥を行ったEVO
H組成物を使用した。該EVOH組成物のメルトインデ
ックス(MIb;190℃−2160g荷重)は1.6
g/10分、融点は157℃(単一融解ピーク)であ
り、リン酸根含有量及びNa、K、Mgイオン含有量を
測定したところ、それぞれ90ppm,90ppm、6
0ppm、50ppmであった。
【0131】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES203μm、中間層EVOH19
μm、外層PES69μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0132】実施例5 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb1)38モル%、ケン化度(SDb
1)99.8%、ホウ酸230ppm(ホウ素元素換
算)、メルトインデックス(MIb;190℃−216
0g荷重)1.6g/10分、融点176℃のEVOH
100重量部、およびエチレン含有量(ETb2)38
モル%、ケン化度(SDb2)96.5%、ホウ酸23
0ppm(ホウ素元素換算)、メルトインデックス(M
Ib2;190℃−2160g荷重)1.8g/10
分、融点161℃のEVOH100重量部をドライブレ
ンドし、20mmφ二軸押出機で200℃でペレット化
した後、80℃16時間減圧下で乾燥を行ったEVOH
組成物を使用した。該EVOH組成物のメルトインデッ
クス(MIb;190℃−2160g荷重)は1.6g
/10分、融点は165℃(単一融解ピーク)であり、
リン酸根含有量及びNa、K、Mgイオン含有量を測定
したところ、それぞれ95ppm,90ppm、55p
pm、50ppmであった。
【0133】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES201μm、中間層EVOH20
μm、外層PES69μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0134】比較例1 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)44モル%、ケン化度(SDb)9
7.0%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)5.3g/10分、融点154℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
80ppm,75ppm、31ppm、20ppmであ
った。EVOH樹脂のDSCチャートを図1に示すが、
単一の融解ピークを有している。
【0135】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES200μm、中間層EVOH20
μm、外層PES70μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。EVOH
層表面のXPS測定チャートを図4に示す。各ピークの
面積比はPA:PB:PC=65.69:32.01:
2.30であり、PC/(PA+PB+PC)の値は
0.0230であった。
【0136】また、EVOHの熱安定性を確認するため
に、上記した樹脂を用い、上記した共射出延伸ブロー成
形機を使用し、PES側射出機温度290℃、EVOH
側射出機温度220℃、PESとEVOHとが合流する
ホットランナーブロック部260℃で、30分間、PE
SとEVOHとを滞留保持した後、射出金型コア温度1
5℃、射出金型キャビティー温度15℃で共射出成形を
行い、PES/EVOH/PESの2種3層のパリソン
を成形した。得られたパリソンは微かに黄味を帯びてい
たもののゲル物はなく、良好な外観を有していた。
【0137】比較例2 熱可塑性ポリエステル樹脂を製造する際の重合触媒とし
て、二酸化ゲルマニウムに代えて三酸化アンチモン0.
035重量部を使用した以外は上記実施例1と同様に重
合を行い、熱可塑性ポリエステルを製造した。こうして
得られたポリエステルにおけるテレフタル酸単位、エチ
レングリコール単位、およびジエチレングリコール単位
の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.7モル%、
1.3モル%であり、極限粘度、融点、ガラス転移温度
TGa、末端カルボキシル基濃度およびサイクリックト
リマー含有率はそれぞれ0.82dl/g、253℃、
80℃、24μ当量/g、0.35重量%であった。
【0138】こうして得られた熱可塑性ポリエステル樹
脂と、比較例1と同じEVOH樹脂を用い、実施例1と
同様の方法で、成形を行い、胴部における平均厚みが内
層PES201μm、中間層EVOH18μm、外層P
ES69μmである2種3層の多層共射出ブロー成形ボ
トルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分析、
評価した結果を表1〜4に示す。
【0139】比較例3 熱可塑性ポリエステル樹脂を製造する際に、テレフタル
酸100.000重量部に代えてテレフタル酸96.0
00重量部およびイソフタル酸4.000重量部を原料
とし、また二酸化ゲルマニウムに代えて三酸化アンチモ
ン0.035重量部を使用した以外は上記実施例1と同
様に重合を行い製造した。ポリエステルにおけるテレフ
タル酸単位、イソフタル酸単位、エチレングリコール単
位、およびジエチレングリコール単位の含有率はそれぞ
れ48.0モル%、2.0モル%、48.8モル%、
1.2モル%であり、極限粘度、融点、ガラス転移温度
TGa、末端カルボキシル基濃度およびサイクリックト
リマー含有率はそれぞれ0.85dl/g、248℃、
79℃、23μ当量/g、0.30重量%であった。
【0140】こうして得られた熱可塑性ポリエステル樹
脂と、比較例1と同じEVOH樹脂を用い、実施例1と
同様の方法で、成形を行い、胴部における平均厚みが内
層PES205μm、中間層EVOH19μm、外層P
ES70μmである2種3層の多層共射出ブロー成形ボ
トルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分析、
評価した結果を表1〜4に示す。
【0141】比較例4 熱可塑性ポリエステル樹脂を製造する際に、1,4−シ
クロヘキサンジメタノール3.700重量部を原料に加
え、また、二酸化ゲルマニウムに代えて三酸化アンチモ
ン0.035重量部使用した以外は上記実施例1と同様
に重合を行い製造した。ポリエステルにおけるテレフタ
ル酸単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチ
レングリコール単位、およびジエチレングリコール単位
の含有率はそれぞれ48.1モル%、1.9モル%、4
8.7モル%、1.3モル%であり、極限粘度、融点、
ガラス転移温度TGa、末端カルボキシル基濃度および
サイクリックトリマー含有率はそれぞれ0.85dl/
g、244℃、81℃、26μ当量/g、0.29重量
%であった。
【0142】こうして得られた熱可塑性ポリエステル樹
脂と、比較例1と同じEVOH樹脂を用い、実施例1と
同様の方法で、成形を行い、胴部における平均厚みが内
層PES201μm、中間層EVOH19μm、外層P
ES69μmである2種3層の多層共射出ブロー成形ボ
トルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分析、
評価した結果を表1〜4に示す。
【0143】比較例5 熱可塑性ポリエステル樹脂を製造する際に、テレフタル
酸100.000重量部に代えて、テレフタル酸97.
000重量部および2,6−ナフタレンジカルボン酸
4.200重量部を原料とし、また、二酸化ゲルマニウ
ムに代えて三酸化アンチモン0.035重量部使用した
以外は上記実施例1と同様に重合を行い製造した。ポリ
エステルにおけるテレフタル酸単位、2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸単位、エチレングリコール単位、および
ジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ48.4
モル%、1.6モル%、48.8モル%、1.2モル%
であり、極限粘度、融点、ガラス転移温度TGa、末端
カルボキシル基濃度およびサイクリックトリマー含有率
はそれぞれ0.82dl/g、247℃、83℃、21
μ当量/g、0.29重量%であった。得られたポリエ
ステル樹脂からなるシートの分光透過スペクトルを図8
に示す。ナフタレンジカルボン酸を共重合していない実
施例1のポリエステル樹脂の分光透過スペクトルと比較
して、紫外線(200〜400nm)領域の透過率が低
下しており、良好な紫外線遮断性能を有していることが
分かる。
【0144】こうして得られた熱可塑性ポリエステル樹
脂と、比較例1と同じEVOH樹脂を用い、実施例1と
同様の方法で、成形を行い、胴部における平均厚みが内
層PES206μm、中間層EVOH22μm、外層P
ES67μmである2種3層の多層共射出ブロー成形ボ
トルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分析、
評価した結果を表1〜4に示す。
【0145】比較例6 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)38モル%、ケン化度(SDb)9
6.5%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)1.6g/10分、融点162℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
100ppm,50ppm、50ppm、30ppmで
あった。
【0146】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES202μm、中間層EVOH19μm、外
層PES68μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0147】また、EVOHの熱安定性を確認するため
に、比較例1と同様に、上記熱可塑性樹脂とEVOHを
用い、上記した共射出延伸ブロー成形機を使用し、PE
S側射出機温度290℃、EVOH側射出機温度220
℃、PESとEVOHとが合流するホットランナーブロ
ック部260℃で、30分間、PESとEVOHとを滞
留保持した後、射出金型コア温度15℃、射出金型キャ
ビティー温度15℃で共射出成形を行い、PES/EV
OH/PESの2種3層のパリソンを成形した。得られ
たパリソンは僅かに黄味を帯びていたもののゲル物はな
く、良好な外観を有していた。
【0148】比較例7 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)32モル%、ケン化度(SDb)9
7.0%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)1.2g/10分、融点172℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
90ppm,70ppm、50ppm、55ppmであ
った。
【0149】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES202μm、中間層EVOH21μm、外
層PES69μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0150】また、EVOHの熱安定性を確認するため
に、比較例1と同様に、上記熱可塑性樹脂とEVOHを
用い、上記した共射出延伸ブロー成形機を使用し、PE
S側射出機温度290℃、EVOH側射出機温度220
℃、PESとEVOHとが合流するホットランナーブロ
ック部260℃で、30分間、PESとEVOHとを滞
留保持した後、射出金型コア温度15℃、射出金型キャ
ビティー温度15℃で共射出成形を行い、PES/EV
OH/PESの2種3層のパリソンを成形した。得られ
たパリソンはやや黄味を帯びており、僅かながらゲル物
が観測された。
【0151】比較例8 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)44モル%、ケン化度(SDb)9
7.0%、ビニルトリメトキシシラン0.05モル%、
メルトインデックス(MIb;190℃−2160g荷
重)1.7g/10分、融点153℃のEVOHを使用
した。該EVOHのリン酸根含有量及びNa、K、Mg
イオン含有量を測定したところ、それぞれ80ppm,
80ppm、40ppm、60ppmであった。
【0152】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES200μm、中間層EVOH20μm、外
層PES69μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0153】比較例9 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)38モル%、ケン化度(SDb)9
7.0%、ビニルトリメトキシシラン0.02モル%、
メルトインデックス(MIb;190℃−2160g荷
重)5.0g/10分、融点163℃のEVOHを使用
した。該EVOHのリン酸根含有量及びNa、K、Mg
イオン含有量を測定したところ、それぞれ100pp
m,75ppm、45ppm、55ppmであった。
【0154】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES204μm、中間層EVOH18μm、外
層PES67μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0155】比較例10 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)38モル%、ケン化度(SDb)9
6.5%、ホウ酸230ppm(ホウ素元素換算)、メ
ルトインデックス(MIb;190℃−2160g荷
重)1.8g/10分、融点161℃のEVOHを使用
した。該EVOHのリン酸根含有量及びNa、K、Mg
イオン含有量を測定したところ、それぞれ90ppm,
70ppm、45ppm、50ppmであった。
【0156】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES201μm、中間層EVOH20μm、外
層PES70μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0157】比較例11 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)44モル%、ケン化度(SDb)9
9.8%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)5.5g/10分、融点166℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
75ppm,75ppm、30ppm、20ppmであ
った。
【0158】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES201μm、中間層E
VOH20μm、外層PES70μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを
実施例1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示
す。EVOH層表面のXPS測定チャートを図6に示
す。各ピークの面積比はPA:PB:PC=65.2
2:33.54:1.24であり、PC/(PA+PB
+PC)の値は0.0124であった。
【0159】比較例12 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)52モル%、ケン化度(SDb)9
4.8%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)6.8g/10分、融点141℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
80ppm,75ppm、35ppm、25ppmであ
った。
【0160】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES197μm、中間層E
VOH16μm、外層PES73μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを
実施例1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示
す。
【0161】比較例13 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)48モル%、ケン化度(SDb)9
9.7%、ビニルトリメトキシシラン0.02モル%、
メルトインデックス(MIb;190℃−2160g荷
重)6.4g/10分、融点159℃のEVOHを使用
した。該EVOHのリン酸根含有量及びNa、K、Mg
イオン含有量を測定したところ、それぞれ100pp
m,80ppm、45ppm、60ppmであった。
【0162】上記熱可塑性樹脂とEVOHを用い、実施
例1と同様の方法で成形を行い、胴部における平均厚み
が内層PES204μm、中間層EVOH17μm、外
層PES67μmである2種3層の多層共射出ブロー成
形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と同様に分
析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0163】比較例14 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)48モル%、ケン化度(SDb)9
9.4%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)14.4g/10分、融点155℃のE
VOHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
100ppm,50ppm、25ppm、20ppmで
あった。
【0164】上記した実施例1と同様の方法で、成形を
行い、胴部における平均厚みが内層PES205μm、
中間層EVOH6μm、外層PES75μmである2種
3層の多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボ
トルを実施例1と同様に分析、評価した結果を表1〜4
に示す。
【0165】比較例15 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)38モル%、ケン化度(SDb)9
9.8%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)1.6g/10分、融点177℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
80ppm,60ppm、45ppm、50ppmであ
った。
【0166】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES202μm、中間層E
VOH19μm、外層PES69μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを
実施例1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示
す。
【0167】比較例16 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)32モル%、ケン化度(SDb)9
9.8%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)1.2g/10分、融点183℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
70ppm,55ppm、50ppm、55ppmであ
った。
【0168】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES200μm、中間層E
VOH20μm、外層PES70μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを
実施例1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示
す。
【0169】比較例17 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)20モル%、ケン化度(SDb)9
6.5%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)1.1g/10分、融点188℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
80ppm,70ppm、60ppm、55ppmであ
った。
【0170】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES203μm、中間層E
VOH17μm、外層PES68μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルに
はゲル物が多く発生していた。得られたボトルを実施例
1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0171】比較例18 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb)44モル%、ケン化度(SDb)9
0.0%、メルトインデックス(MIb;190℃−2
160g荷重)5.3g/10分、融点136℃のEV
OHを使用した。該EVOHのリン酸根含有量及びN
a、K、Mgイオン含有量を測定したところ、それぞれ
90ppm,50ppm、55ppm、40ppmであ
った。
【0172】実施例1と同様の方法で、成形を行い、胴
部における平均厚みが内層PES204μm、中間層E
VOH17μm、外層PES67μmである2種3層の
多層共射出ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルに
はゲル物が多く発生していた。得られたボトルを実施例
1と同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0173】比較例19 熱可塑性ポリエステル樹脂は上記実施例1において使用
した樹脂を用い、また、EVOH樹脂としては、エチレ
ン含有量(ETb1)32モル%、ケン化度(SDb
1)99.8%、メルトインデックス(MIb1;19
0℃−2160g荷重)1.6g/10分、融点183
℃のEVOH100重量部、およびエチレン含有量(E
Tb2)80モル%、ケン化度(SDb2)90.0
%、メルトインデックス(MIb2;190℃−216
0g荷重)38g/10分、融点、109℃のEVOH
20重量部をドライブレンドし、20mmφ二軸押出機
で200℃でペレット化した後、80℃16時間減圧下
で乾燥を行ったEVOH組成物を使用した。該EVOH
組成物のメルトインデックス(MIb;190℃−21
60g荷重)は2.6g/10分、融点は183℃およ
び108℃の二つのピークが観測され、リン酸根含有量
及びNa、K、Mgイオン含有量を測定したところ、そ
れぞれ45ppm,40ppm、35ppm、30pp
mであった。EVOH組成物のDSCチャートを図3に
示すが、二つの融解ピークを有している。
【0174】上記熱可塑性樹脂とEVOH組成物を用
い、実施例1と同様の方法で成形を行い、胴部における
平均厚みが内層PES204μm、中間層EVOH19
μm、外層PES69μmである2種3層の多層共射出
ブロー成形ボトルを得た。得られたボトルを実施例1と
同様に分析、評価した結果を表1〜4に示す。
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
【表4】
【0179】上記結果から、熱可塑性ポリエステル層
(a層)およびエチレン−ビニルアルコール共重合体層
(b層)からなり、a層がb層の両面に直接接触するよ
うに配置されてなり、エチレン−ビニルアルコール共重
合体が、2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体
(b1、b2)の配合物からなり、その配合重量比(b
1/b2)が10/90〜90/10であり、かつ下記
式(6)〜(11) 25≦ETb1≦48 (6) 99≦SDb1 (7) 25≦ETb2≦48 (8) 92≦SDb2≦99 (9) |ETb2−ETb1|≦8 (10) 1≦(SDb2−SDb1)≦8 (11) 但し、 ETb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のエチレン含有量(モル%) SDb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
1)のケン化度(%) ETb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のエチレン含有量(モル%) SDb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
2)のケン化度(%)を満足する実施例1〜5のブロー
成形容器では、ボトルのデラミ発生率が10%以下であ
り耐デラミ性に優れると共に、ヘイズ値が5以下であり
透明性に優れる。さらに酸素透過量が最大でも0.10
1であり、ガスバリアー性にも優れることが分かる。
【0180】また、EVOHのケン化度SDbが99%
を超えた場合(比較例11,13,14,15,16)
では、そのエチレン含有量の高低に関わらずデラミ発生
率が10%を超えてしまう。一方、SDbが92%未満
の場合(比較例18)、ガスバリア性が大きく低下する
と共に、溶融安定性が悪化し、成形物にゲル物が発生し
てしまう。また、エチレン含有量ETbが高すぎる場合
には(比較例12)ガスバリア性が大きく低下するし、
ETbが低すぎる場合(比較例17)には、デラミ発生
率が大きく増大すると共に、溶融安定性も悪化し、その
ためかガスバリア性も低下する。
【0181】また、比較例19に示すように、平均エチ
レン含有量、平均ケン化度は上記要件を満たしながら
も、それらの値が大きく相違する2種のEVOHを配合
した場合には、DSCでの結晶融解ピークが2つ現れ
る。かかる場合にはデラミ発生率を低減するという本願
発明の目的を達成することができず、同時に透明性も悪
化してしまう。これに対し、実施例1〜5のようにエチ
レン含量、ケン化度の差が一定値以下のEVOHを配合
した場合には、DSCでの結晶融解ピークは単一のピー
クとなり、本願の効果を奏することができる。複数の結
晶融解ピークを有する場合には、2種のEVOHが互い
に相分離しており、その結果透明性が悪化すると共に、
デラミ発生にも悪影響を与えているものと推定される。
【0182】実施例1,2,3をそれぞれ比較例1,
6,7と比較すれば分かるように、ケン化度の差が1〜
8%である2種類のEVOHを配合した場合には、意外
にも、デラミ発生率はほとんど増加せず、ガスバリア性
の改善が達成され、特に有用である。
【0183】
【発明の効果】本発明の熱可塑性ポリエステルおよびE
VOHからなる共射出延伸ブロー多層容器は、耐衝撃剥
離性が大幅に改善され、しかも酸素あるいは炭酸ガスな
どのガスバリアー性、防湿性、保香性、フレーバーバリ
アー性および外観に優れているので、飲料、食品、化粧
品などの容器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1で用いたEVOH樹脂のDSCチャー
トである。
【図2】実施例1で用いたEVOH組成物のDSCチャ
ートである。
【図3】比較例19で用いたEVOH組成物のDSCチ
ャートである。
【図4】比較例1で得られたボトルのEVOH層表面の
XPS測定チャートである。
【図5】実施例1で得られたボトルのEVOH層表面の
XPS測定チャートである。
【図6】比較例11で得られたボトルのEVOH層表面
のXPS測定チャートである。
【図7】実施例1で用いたポリエステル樹脂からなるシ
ートの分光透過スペクトルである。
【図8】比較例5で用いたポリエステル樹脂からなるシ
ートの分光透過スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 千神 政子 岡山県倉敷市酒津2045番地の1 株式会社 クラレ内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル層(a層)および
    エチレン−ビニルアルコール共重合体層(b層)からな
    り、a層がb層の両面に直接接触するように配置されて
    なり、エチレン−ビニルアルコール共重合体が、2種類
    のエチレン−ビニルアルコール共重合体(b1、b2)
    の配合物からなり、その配合重量比(b1/b2)が1
    0/90〜90/10であり、かつ下記式(6)〜(1
    1)を満足する共射出延伸ブロー成形容器。 25≦ETb1≦48 (6) 99≦SDb1 (7) 25≦ETb2≦48 (8) 92≦SDb2≦99 (9) |ETb2−ETb1|≦8 (10) 1≦(SDb2−SDb1)≦8 (11) 但し、 ETb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
    1)のエチレン含有量(モル%) SDb1;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
    1)のケン化度(%) ETb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
    2)のエチレン含有量(モル%) SDb2;エチレン−ビニルアルコール共重合体(b
    2)のケン化度(%)
  2. 【請求項2】 エチレン−ビニルアルコール共重合体の
    示差走査熱量計(DSC)での結晶融解ピークが単一ピ
    ークである請求項1に記載の共射出延伸ブロー成形容
    器。
  3. 【請求項3】 熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレ
    フタレート成分を主成分とし、かつその融点TMa
    (℃)が下記式(14)を満足する請求項1または2に
    記載の共射出延伸ブロー成形容器。 240≦TMa≦250 (14)
  4. 【請求項4】 熱可塑性ポリエステルが、ゲルマニウム
    化合物を触媒として重合されてなる請求項1〜3のいず
    れかに記載の共射出延伸ブロー成形容器。
  5. 【請求項5】 熱可塑性ポリエステルが、エチレンテレ
    フタレート成分を主成分とし、ナフタレンジカルボン酸
    成分を、全ジカルボン酸成分に対して0.1〜15モル
    %含有する請求項1〜4のいずれかに記載の共射出延伸
    ブロー成形容器。
  6. 【請求項6】 熱可塑性ポリエステルの固有粘度IVa
    (dl/g)が下記式(4)を満足し、かつエチレン−
    ビニルアルコール共重合体のメルトインデックスMIb
    {g/10分(190℃、2160g荷重)}が下記式
    (5)を満足する請求項1〜5のいずれかに記載の共射
    出延伸ブロー成形容器。 0.60≦IVa≦0.90 (4) 0.1≦MIb≦10 (5)
  7. 【請求項7】 エチレン−ビニルアルコール共重合体が
    ビニルシラン化合物を0.0002〜0.2モル%共重
    合してなる請求項1〜6のいずれかに記載の共射出延伸
    ブロー成形容器。
  8. 【請求項8】 エチレン−ビニルアルコール共重合体が
    ホウ素化合物をホウ素元素換算で20〜2000ppm
    含有する請求項1〜7のいずれかに記載の共射出延伸ブ
    ロー成形容器。
  9. 【請求項9】 容器胴部の熱可塑性ポリエステル層の密
    度Da(g/cm3)が下記式(12)を満足し、容器
    胴部のエチレン−ビニルアルコール共重合体層の密度D
    b(g/cm3)が下記式(13)を満足する請求項1
    〜8に記載の共射出延伸ブロー成形容器。 1.35≦Da≦1.37 (12) 1.11≦Db≦1.20 (13)
  10. 【請求項10】 容器胴部のヘイズが5%以下である請
    求項1〜9のいずれかに記載の共射出延伸ブロー成形容
    器。
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