JP3839732B2 - 共射出延伸ブロー成形容器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素、炭酸ガスなどのガスバリア性、防湿性、保香性、フレーバーバリア性、耐衝撃剥離性に優れ、外観が良好な容器を長時間安定して製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸ブロー成形法によって得られる熱可塑性ポリエステル(以下、PESと略記する)容器は、透明性、力学的特性、フレーバーバリア性などの種々の性質に優れ、しかも成形品とした際に残留モノマーや有害添加物の溶出のおそれが少なく、衛生性および安全性に優れていることから、幅広い分野で使用されている。とりわけ、PESとガスバリア性が良好なエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する)とを組み合わせた多層容器は、簡単な装置で外観が良好な容器が得られるうえに、PESとEVOHの両方の特性を兼備えているので、飲料、食品、化粧品などの容器としての用途の拡大が期待されており、多層容器において課題とされていた、耐衝撃剥離性や透明性を改善するための種々の提案もなされている。
【0003】
例えば、特開平11−348194号公報には、PESと部分けん化EVOHとからなり、共射出延伸ブロー成形によって得られる多層容器が、耐衝撃剥離性および透明性に優れていることが記載されている。該多層容器は、PESとEVOHとの間に接着性樹脂を使用していないにもかかわらず十分な耐衝撃剥離性を有しているという点で画期的なものであった。しかしながら、該多層容器においては、部分けん化EVOHを使用しているために、ガスバリア性および熱安定性に若干の不安がある。この問題点を解決するために、2種類の異なるEVOHからなり、かつ複数の融点を持つEVOH混合物を使用した多層容器が提案されている(特開2001−277341号公報)。該多層容器においては、耐衝撃剥離性および透明性が保持され、同時にガスバリア性および熱安定性が改善されている。
【0004】
しかしながら、前記多層容器においても部分ケン化EVOHは必須成分であるので、特に長時間の多層容器の製造においては、部分ケン化EVOHの熱安定性が無視し得ない問題となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ガスバリア性、耐衝撃剥離性などの特性を有する多層容器を、長時間安定して製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、PES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)を共射出成形し、続いて延伸ブロー成形する共射出延伸ブロー成形容器の製造方法であって、該樹脂組成物(B)の重量保持率が90%以上であり、かつ該PES(A)の射出速度IS(A)(mm/秒)および該EVOH樹脂組成物(B)の射出速度IS(B)(mm/秒)が下式(1)
0.2≦IS(A)/IS(B)≦5 (1)
を満足することを特徴とする、共射出延伸ブロー成形容器の製造方法を提供することにより達成される。
【0007】
好適な実施態様においては、前記製造方法では、PES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)のみを共射出成形し、続いて延伸ブロー成形する。
【0008】
好適な実施態様においては、共射出成形は同時共射出成形である。
【0009】
好適な実施態様においては、共射出成形において、前記PES(A)の射出温度を250〜330℃、かつ前記EVOH樹脂組成物(B)の射出温度を170〜250℃とする。
【0010】
好適な実施態様においては、延伸ブロー成形において、加熱温度を75〜150℃とする。
【0011】
前記PES(A)の固有粘度は0.70〜0.95dl/gであり、かつ環状三量体の含有率は前記PES(A)の全重量に対して0.40重量%以下である。
【0012】
前記EVOH樹脂組成物(B)は、エチレン含有量20〜60モル%、ケン化度90モル%以上のEVOH(b1)、酢酸(b2)、リン酸化合物(b3)およびホウ素化合物(b4)からなり、該EVOH樹脂組成物(B)において、該EVOH(b1)に対する、酢酸(b2)の含有割合が30〜250ppmであり、リン酸化合物(b3)の含有割合がリン酸根換算で5〜500ppmであり、ホウ素化合物(b4)の含有割合がホウ素元素換算で20〜2000ppmであり、かつ前記EVOH(b1)に対する、アルカリ金属塩(b5)の含有割合がアルカリ金属換算で300ppm以下であり、アルカリ土類金属塩(b6)の含有割合がアルカリ土類金属換算で10ppm以下である。
【0013】
好適な実施態様においては、前記EVOH樹脂組成物(B)において、EVOH(b1)に対するアルカリ土類金属塩(b6)の含有割合はアルカリ土類金属換算で5ppm以下である。
【0014】
前記EVOH樹脂組成物(B)のメルトインデックスは0.1〜10g/10分(190℃、2160g荷重)である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、PES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)を共射出成形して多層構造を有する容器前駆体(有底パリソン)を製造し、続いてこの有底パリソンを延伸ブロー成形する。このとき、上記のPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)以外の成分をさらに原料として使用しても構わない。例えば、原材料をリサイクルするための回収物、PES(A)層とEVOH樹脂組成物(B)層との耐衝撃剥離性を向上させるための接着性樹脂、さらなる特性を付加するための樹脂などを使用することができる。しかしながら、得られる容器の透明性および製造コスト、また製造装置の操作性を考慮すると、本発明の製造方法では、上記のPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)のみを原料として使用することが好ましい。この場合において、得られる容器の具体的な層構成としては、(内層)A/B/A(外層)、(内層)A/B/A/B/A(外層)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、耐衝撃剥離性の観点から(内層)A/B/A(外層)の2種3層構成とすることが好ましい。
【0016】
原料となるPES(A)の固有粘度は、0.70〜0.95dl/gである。固有粘度が0.70dl/g未満の場合、得られる容器の力学的強度が不足する。一方、PES(A)の固有粘度が0.95dl/gを超える場合、PESの溶融粘度が大きくなり、射出成形時にバルブ内での発熱が大きくなるため、環状三量体が多量に副生する結果、金型などの汚染が激しくなるおそれがある。また、延伸ブロー成形時にPESの延伸むらが発生し、外観を著しく損なうおそれがある。
【0017】
PES(A)の環状三量体の含有率は、PESの全重量に対して0.40%以下である。環状三量体の含有率が0.40重量%を超える場合、金型などの汚染が激しくなるおそれがある。また、得られる容器の耐衝撃剥離性が不十分となるおそれがある。
【0018】
また、PES(A)の末端カルボキシル基濃度は、PES1g当たり0.00004当量以下、すなわち40μeq/g以下であることが好ましく、30μeq/g以下がより好ましい。PES(A)の末端カルボキシル基濃度が40μeq/gを超える場合、PES(A)の溶融時の熱安定性が低下し、得られる容器に着色などの外観不良が発生したり、力学的強度が不足したりするおそれがある。
【0019】
PES(A)の低温結晶化温度は、120〜180℃であることが好ましく、130〜170℃がより好ましい。低温結晶化温度が120℃未満の場合、得られる容器の耐熱性が不足するおそれがある。一方、低温結晶化温度が180℃を超えるものは、融点が高すぎるために、射出成形時にPES(A)が熱劣化を受け易くなる。
【0020】
PES(A)の密度は、1.35〜1.39g/cm3であることが好ましく、1.353〜1.387g/cm3がより好ましく、1.355〜1.385g/cm3がさらにより好ましい。密度が1.35g/cm3未満の場合、得られる容器の力学的強度が不足するおそれがある。また、ホットフィル時や殺菌処理のための加熱時に大きく収縮するおそれがある。一方、密度が1.39g/cm3を超える場合、得られる容器の衝撃剥離の発生が増加するおそれがある。
【0021】
上記したPES(A)の種類としては特に制限はないが、例えば、芳香族ジカルボン酸単位などのジカルボン酸単位と、脂肪族ジオール単位などのジオール単位とから主としてなるポリエステルが挙げられる。中でも、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位とから主としてなる重合体、すなわち、エチレンテレフタレートを主成分とする重合体(ポリエチレンテレフタレート、以下PETと略記する)が、機械的特性、汎用性およびコストの観点から好ましい。具体的には、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との合計割合(モル%)が、PES(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。上記割合が70モル%未満の場合、PES(A)の結晶性が低下し、得られる容器の力学的強度が不足したり、熱収縮性が大きくなったりすることがある。
【0022】
上記の場合において、PES(A)には必要に応じて、テレフタル酸単位およびエチレングリコール単位以外の二官能化合物単位を、得られる容器の機械的特性、耐熱性などを大幅に損なわない範囲で含有していてもよい。その含有割合(モル%)としては、PES(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下がより好ましい。このような二官能化合物単位としては、脂肪族化合物単位、脂環式化合物単位、芳香族化合物単位などが挙げられる。これらは、ジカルボン酸単位、ジオール単位およびヒドロキシカルボン酸単位のいずれであってもよい。また、ただ1種の上記二官能化合物単位を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0023】
PES(A)に含有されていてもよい二官能化合物単位のうち、脂肪族化合物単位としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などに由来する脂肪族ジカルボン酸単位;10−ヒドロキシオクタデカン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などに由来する脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコールなどに由来する脂肪族ジオール単位;などが挙げられる。
【0024】
また、脂環式化合物単位としては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などに由来する脂環式ジカルボン酸単位;ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸、ヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸などに由来する脂環式ヒドロキシカルボン酸単位;シクロヘキサンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどに由来する脂環式ジオール単位;などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサンジメタノール単位およびシクロヘキサンジカルボン酸単位は、得られる容器の落下時の耐衝撃性が向上する点、透明性が良好となる点から好ましい。これらの単位には、それぞれ1,2−単位、1,3−単位および1,4−単位という異性体が存在する。とりわけ、前記の容器の落下時の耐衝撃性が向上する点から、1,4−単位がより好ましい。
【0025】
さらに、芳香族化合物単位としては、イソフタル酸、フタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などに由来する芳香族ジカルボン酸単位;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフトエ酸、3−(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸などに由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸単位;2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−2−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1−{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}シクロヘキサン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2,3,5,6−テトラブロモフェニル]プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,4−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼンなどに由来する芳香族ジオール単位;ビスフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物などに由来する芳香族ジオール単位;などが挙げられる。これらの中でも、得られる容器の耐衝撃性の観点からは2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン単位、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン単位および1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン単位が好ましい。また、得られる容器の耐熱性の観点からはネオペンチルグリコール単位およびナフタレンジカルボン酸単位が好ましく、紫外線吸収能を有するという観点からはナフタレンジカルボン酸単位が好ましい。紫外線吸収能を十分発揮させるためには、PES(A)中の全ジカルボン酸単位に対して、ナフタレンジカルボン酸単位が0.1〜15モル%含有されていることが好ましく、1.0〜10モル%含有されていることがより好ましい。
【0026】
PES(A)は、上記のような意図的に含有させる二官能化合物単位の他に、重合中に副生するジエチレングリコール単位を含有する場合が多い。その含有割合(モル%)としては、PES(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、3モル%以下であることが好ましく、2モル%以下がより好ましい。ジエチレングリコール単位の含有割合が3モル%を超える場合、PES(A)のガラス転移温度が低下し、その結果、得られる容器の耐熱性が低下する場合がある。
【0027】
PES(A)は、多官能化合物単位を含有していてもよい。その含有割合(モル%)としては、PES(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、0.5モル%以下であることが好ましい。多官能化合物単位は、カルボキシル基および水酸基を合計で3個以上有する多官能化合物に由来する単位であり、これにはカルボキシル基のみを3個以上有するポリカルボン酸に由来する単位および水酸基のみを3個以上含有するポリアルコール化合物に由来する単位も含まれる。PES(A)は、ただ1種の上記多官能化合物単位を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0028】
PES(A)に含有されていてもよい多官能化合物単位としては、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸などに由来する脂肪族ポリカルボン酸単位;トリメシン酸、トリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸などに由来する芳香族ポリカルボン酸単位;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどに由来する脂肪族ポリアルコール単位;1,3,5−シクロヘキサントリオールなどに由来する脂環式ポリアルコール単位;1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどに由来する芳香族ポリアルコール単位;酒石酸、リンゴ酸などに由来する脂肪族ヒドロキシカルボン酸;4−ヒドロキシイソフタル酸、3−ヒドロキシイソフタル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、プロトカテク酸、没食子酸、2,4−ジヒドロキシフェニル酢酸などに由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸単位;などが挙げられる。これらの中でも、製造の容易さおよび製造コストの観点からトリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールに由来する単位が好ましい。
【0029】
PES(A)が上記のような多官能化合物単位を含有する場合、モノカルボン酸、モノアルコールなどに由来する単官能化合物単位を同時に含有していてもよい。その含有割合(モル%)としては、製造の容易さおよび製造コストの観点からPES(A)を構成する全構造単位の合計モル数に対して、5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下がより好ましい。PES(A)は、ただ1種の上記単官能化合物単位を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
【0030】
PES(A)に含有されていてもよい単官能化合物単位としては、n−オクタン酸、n−ノナン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などに由来する脂肪族モノカルボン酸単位;安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、o−メチル安息香酸、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、2,3−ジメチル安息香酸、2,4−ジメチル安息香酸、2,5−ジメチル安息香酸、2,6−ジメチル安息香酸、3,4−ジメチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸、2,4,6−トリメチル安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、2−ビフェニルカルボン酸、1−ナフタレン酢酸、2−ナフタレン酢酸などに由来する芳香族モノカルボン酸単位;ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリテトラメチレングリコールモノアルキルエーテル、オレイルアルコールなどに由来する脂肪族モノアルコール単位;シクロドデカノールなどに由来する脂環式モノアルコール単位;ベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−フェネチルアルコール、フェノール、1−ナフトール、2−ナフトールなどに由来する芳香族モノアルコール単位;などが挙げられる。これらの中でも、製造の容易さおよび製造コストの観点からステアリン酸、安息香酸、2,4,6−トリメトキシ安息香酸、2−ナフトエ酸およびステアリルアルコールに由来する単位が好ましい。
【0031】
上記のPES(A)は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、ジオール、および必要に応じて上記例示した二官能化合物、多官能化合物および単官能化合物などを原料として、一般に知られている縮合重合法を採用することにより製造される。例えば、上記の原料を混合してまずエステル化反応またはエステル交換反応させ、次に溶融重縮合させ、さらに必要に応じて固相重合させることにより、PES(A)が製造される。
【0032】
この場合、原料のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールとのモル比は、1/2.5〜1/1.1の範囲が好ましい。
【0033】
この場合のジカルボン酸およびジオールとしては、既に述べたようにテレフタル酸およびエチレングリコールが好ましい。それ以外に含有されていてもよい二官能化合物についても前記したとおりである。テレフタル酸およびエチレングリコール以外の二官能化合物の中でも、製造が容易であるという観点からは、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(特に、2,6−ナフタレンジカルボン酸)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンおよび1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましく、さらにこれらの中でも、コスト的な観点からイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(特に、2,6−ナフタレンジカルボン酸)および4,4’−ビフェニルジカルボン酸がより好ましい。一方、得られるPESの特性を考えると、成形性および成形時の結晶化の抑制の観点からはイソフタル酸が好ましく、熱安定性および溶融安定性の観点からは、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンおよび1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましい。
【0034】
エステル化反応またはエステル交換反応は、絶対圧で5kg/cm2以下の加圧下または常圧下に、180〜300℃の温度で、生成する水またはアルコールを留去させながら行うとよい。エステル化反応の場合には無触媒でよいが、エステル交換反応を行なう場合には、通常金属化合物からなるエステル交換触媒を共存させる。該金属化合物に含まれる金属としては、カルシウム、マンガン、マグネシウム、亜鉛、チタン、ナトリウム、リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、得られる容器の透明性の観点から、マンガン、マグネシウムおよびチタンが好ましい。
【0035】
溶融重縮合は、5mmHg以下の減圧下に、200〜300℃の温度で行うとよい。溶融重縮合に用いられる反応器としては、槽型のバッチ式重縮合装置、二軸回転式横型の連続式重縮合装置などが挙げられる。
【0036】
溶融重縮合の際に、必要に応じて重縮合触媒を使用することができる。重縮合触媒としては、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ(n−ブトキシド)などのゲルマニウム化合物;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ(n−プロポキシ)チタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのチタン化合物;ジ(n−ブチル)スズジラウレート、ジ(n−ブチル)スズオキサイド、ジブチルスズジアセテートなどのスズ化合物;などが挙げられる。これらの触媒は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒のうち、得られるポリエステルの色調の観点からはゲルマニウム化合物が好ましく、触媒コストの観点からはアンチモン化合物が好ましい。ゲルマニウム化合物としては二酸化ゲルマニウムが特に好ましく、アンチモン化合物としては三酸化アンチモンが特に好ましい。重縮合触媒の使用量としては、原料のジカルボン酸の重量に基づいて0.002〜0.8重量%の範囲が好ましい。
【0037】
また、成形性の観点からはアンチモン化合物よりもゲルマニウム化合物を採用することが好ましい。一般に、ゲルマニウム化合物を用いて重合したポリエステルは、アンチモン化合物を用いて重合したポリエステルよりも結晶化速度が小さいため、成形時の加熱による過度の結晶化に起因する延伸配向性の低下、賦形性の悪化、さらには得られる成形容器の白化などの問題が発生しにくく、良好な製品を得ることのできる製造条件の範囲が広い。とりわけ、PES(A)の原料としてテレフタル酸およびエチレングリコールを主として使用し、これら以外の二官能化合物を使用しない場合、重合の結果得られるPES(A)の結晶化速度が大きくなる傾向があるので、成形時の結晶化を抑制するために、ゲルマニウム化合物を用いて重合することが好ましい。
【0038】
溶融重縮合の際に、必要に応じて着色防止剤を使用することもできる。着色防止剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン化合物を用いることができ、これらのリン化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。上記リン化合物の使用量としては、原料のジカルボン酸の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲が好ましい。
【0039】
また、着色防止剤として、酢酸コバルトなどのコバルト化合物を用いることもできる。コバルト化合物の使用量としては、原料のジカルボン酸の重量に基づいて0.001〜0.5重量%の範囲が好ましく、0.05〜0.3重量%の範囲がより好ましい。
【0040】
原料のジオールとしてエチレングリコールを使用する場合、既に述べたように、重合中に副生するジエチレングリコールが主鎖に導入され、得られるPES(A)に着色が発生したり、耐熱性および機械的強度が低下したりする場合がある。これを防ぐために、上記エステル化反応、エステル交換反応および溶融重縮合において、ジエチレングリコールの副生抑制剤を、原料のジカルボン酸の重量に基づいて0.001〜0.5重量%使用することが好ましい。副生抑制剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの有機アミン;などが挙げられる。
【0041】
既に述べたように、PES(A)の製造において、原料として多官能化合物を使用する場合、同時に単官能化合物を使用することが好ましい。単官能化合物は分子鎖末端または分岐鎖末端を封止し、PES(A)の過度の架橋やゲルの発生を防止する。単官能化合物の使用量としては特に制限はないが、後で述べる固相重合時の重合速度を低下させない範囲内であることが好ましい。
【0042】
溶融重縮合の終了後、得られた重合生成物をストランド状、シート状などの形状で押出し、冷却し、、裁断してペレットとし、さらに乾燥する。冷却方法としては、水を用いる水冷法、空気を用いる空冷法、冷却ドラムを用いる方法などが挙げられる。裁断には、ストランドカッター、シートカッターなどを使用すればよい。このようにして、円柱状、楕円柱状、球状、円盤状、ダイス状などの任意の形状のペレットを得ることができる。また、ペレットの乾燥温度としては、ペレットの結晶化を促進する観点から、120〜180℃の範囲が好ましい。こうして得られた乾燥ペレットの結晶融解熱量は10J/g以上であることが好ましく、20J/g以上がより好ましい。結晶融解熱量が10J/g未満のとき、後で述べる固相重合時または成形前のペレット乾燥時に、ペレット同士の膠着が発生する場合がある。
【0043】
この乾燥ペレットの固有粘度は、0.40〜0.90dl/gであることが好ましく、0.45〜0.80dl/gがより好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満の場合、溶融重縮合によって得られた重合生成物の溶融時のハンドリング性が低下し、上記の押出および裁断においてトラブルが発生するおそれがある。また、PES(A)として所望の固有粘度を得るために、後で述べる固相重合に長時間を要し、生産性が低下するおそれがある。一方、固有粘度が0.90dl/gを超える場合、溶融重縮合によって得られた重合生成物の、反応容器からの取り出しが困難となるおそれがある。
【0044】
得られたペレットは、必要に応じて、固相重合によりさらに重合を進めることもできる。固相重合を施すことにより、ペレットに含まれる環状三量体やアセトアルデヒドが少なくなり、成形時の金型汚れが抑制される。また、容器として使用する際に、内容物の味、風味などを長期間保つことができる。
【0045】
固相重合は、真空下、減圧下または窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で行われることが好ましい。また、ペレット同士の膠着を防止するために、転動法、気体流動床法などの方法を採用し、ペレットを動かしながら行うことが好ましい。固相重合の温度としては、180〜270℃が好ましく、190〜240℃がより好ましい。また、ペレット同士の膠着を防止するために、前記範囲内の温度であって、かつ目的とするPESの融点より15℃以上低い温度、好ましくは20℃以上低い温度とするとよい。固相重合の時間としては、5〜40時間の範囲が生産性などの観点から好ましい。
【0046】
本発明の製造方法において、もうひとつの原料となるEVOH樹脂組成物(B)は、EVOH(b1)を主成分とする樹脂組成物である。EVOH樹脂組成物(B)の重量保持率は90%以上であることが必要であり、95%以上が好ましく、96%以上がより好ましい。重量保持率が90%未満の場合、EVOH樹脂組成物の熱安定性が不十分となる。ここで、EVOH樹脂組成物(B)の重量保持率とは、窒素雰囲気下、260℃で2時間保持したときの重量保持率をいう。
【0047】
EVOH(b1)のエチレン含有量は、20〜60モル%であり、25〜50モル%が好ましく、28〜45モル%がより好ましい。エチレン含有量が20モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が不十分となるおそれがある。またエチレン含有量が60モル%を超える場合、ガスバリア性が不十分となるおそれがある。
【0048】
また、EVOH(b1)のビニルエステル成分のケン化度は、90モル%以上であり、96モル%以上であることが好ましく、99モル%以上がより好ましい。ケン化度が90モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が不十分となるおそれがある。
【0049】
かかるEVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0050】
上記のEVOH(b1)には、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンおよびビニルアルコール以外の単量体を共重合成分として少量含有することもできる。このような単量体の例としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0051】
EVOH(b1)は、エチレンとビニルエステルとからなる共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化することにより得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。このとき、エチレン含有量およびケン化度を調節することにより、所望の融点を有するEVOH(b1)を得ることができる。
【0052】
共重合に際して、上述のように本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンおよびビニルエステル以外の単量体を共重合することもできる。中でも、共重合成分としてビニルシラン化合物を0.0002〜0.2モル%の範囲で含有するEVOHは、後述するPESとの共射出成形の際、溶融粘度のバランスがよく、均質な成形物の製造が可能である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。ビニルシラン化合物の含有量は、0.001〜0.15モル%がより好ましく、0.005〜0.1モル%がさらにより好ましい。
【0053】
EVOH樹脂組成物(B)は、上記のEVOH(b1)の他に、特定の微量成分を特定量含有していることが好ましい。EVOH樹脂組成物(B)は微量成分として、酢酸(b2)、リン酸化合物(b3)、ホウ素化合物(b4)を含む。
【0054】
EVOH樹脂組成物(B)において、酢酸(b2)は上記EVOH(b1)に対して、30〜250ppmの割合で含有される。酢酸(b2)の含有割合が30ppm未満の場合、EVOH樹脂組成物(B)の熱安定性および溶融成形性が不足するおそれがある。一方、酢酸(b2)の含有割合が250ppmを超える場合、酢酸が拡散して作業環境が悪化するおそれがある。
【0055】
EVOH樹脂組成物(B)において、リン酸化合物(b3)は上記EVOH(b1)に対して、リン酸根換算で5〜500ppmの割合で含有され、6〜450ppmがより好ましく、7〜400ppmがさらにより好ましい。リン酸化合物(b3)の含有割合が5ppm未満の場合、EVOH樹脂組成物(B)の熱安定性および溶融成形性が不足するおそれがある。一方、リン酸化合物(b3)の含有割合が500ppmを超える場合、得られる容器にリン酸化合物が過剰に残存し、衛生上問題となるおそれがある。
【0056】
ここで、リン酸化合物(b3)としては、リン酸、第1リン酸塩、第2リン酸塩および第3リン酸塩のいずれであってもよいが、リン酸、第1リン酸塩および第2リン酸塩が好ましい。リン酸化合物(b3)が塩である場合、カチオン種は特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属が好ましい。リン酸化合物(b3)の中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸水素二カリウムが好ましい。
【0057】
EVOH樹脂組成物(B)において、ホウ素化合物(b4)は上記EVOH(b1)に対して、ホウ素元素換算で20〜2000ppmの割合で含有され、50〜1000ppmがより好ましく、100〜500ppmがさらにより好ましい。ホウ素化合物(b4)の含有割合が50ppm未満の場合、EVOH樹脂組成物(B)の溶融時のトルク変動が大きくなるおそれがある。一方、ホウ素化合物(b4)の含有割合が2000ppmを超える場合、EVOH樹脂組成物(B)のメルトインデックスが低くなって溶融成形が困難となるおそれがある。
【0058】
ここで、ホウ素化合物(b4)としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類などが挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸(以下、ホウ酸と略記することがある)、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられ、水素化ホウ素類としては、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、オルトホウ酸および水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
【0059】
上記の成分の他、EVOH樹脂組成物(B)におけるアルカリ金属塩(b5)の含有割合は、上記EVOH(b1)に対して、アルカリ金属換算で300ppm以下であり、10〜280ppmの範囲がより好ましく、20〜250ppmがさらにより好ましい。アルカリ金属塩(b5)に含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ金属塩(b5)としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩;プロピオン酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウムなどのプロピオン酸塩;などが挙げられる。
【0060】
また、EVOH樹脂組成物(B)におけるアルカリ土類金属塩(b6)の含有割合は、上記EVOH(b1)に対して、アルカリ土類金属換算で10ppm以下であり、5ppm以下がより好ましい。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、バリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属塩(b6)としては、これらの金属の炭酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
【0061】
アルカリ金属塩(b5)およびアルカリ土類金属塩(b6)はEVOH(b1)の熱分解を促進するため、過剰に存在すると、成形時にアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アルドールなどの臭気成分が発生する。したがって、これらの成分はEVOH(b1)を洗浄するなどしてその含有割合を所定量以下にしておくことが、本発明の製造方法の長期運転安定性という観点から重要である。
【0062】
EVOHに、酢酸(b2)、リン酸化合物(b3)およびホウ素化合物(b4)を混合してEVOH樹脂組成物を得る方法としては特に制限はなく、例えば、EVOHと所定の量のこれらの成分を押出機などで溶融混練する方法、EVOHの溶液に所定の量のこれらの成分を直接または溶液の形で混合する方法、EVOHペレットを所定の濃度のこれらの成分の溶液に含浸させる方法などが挙げられる。
【0063】
こうして得られるEVOH樹脂組成物(B)のメルトインデックス(190℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は、0.1〜10g/10分であり、0.5〜8g/10分がより好ましい。メルトインデックスが0.1g/10分未満の場合、後述の成形時に装置に過大な負荷がかかり、高速連続運転が困難となるおそれがある。また、ゲル、フィッシュアイおよび容器表面の樹脂の流れ斑が発生して、容器の外観を著しく損なうおそれがある。一方、メルトインデックスが10g/10分を超える場合、得られる容器におけるEVOHの厚みが不均一となり、厚い部分が白化し、また薄い部分のガスバリア性が不十分となるおそれがある。また、得られる容器の機械的特性が不足するおそれがある。さらには、多数個取り成形において、各金型内へのEVOHの射出量が安定せず、均質な成形が困難となるおそれがある。
【0064】
EVOH樹脂組成物(B)の密度は、1.11〜1.20g/cm3であることが好ましい。密度が1.11g/cm3未満の場合、ガスバリア性が不足するおそれがある。密度は、1.12g/cm3以上がより好ましく、1.13g/cm3以上がさらにより好ましい。一方、密度が1.20g/cm3を超える場合、得られる容器の衝撃剥離の発生が増加するおそれがある。密度は、1.19g/cm3以下がより好ましく、1.18g/cm3以下がより好ましい。
【0065】
EVOH樹脂組成物(B)の融点は、140〜190℃であることが好ましい。融点が140℃未満の場合、ガスバリア性が不足するおそれがある。融点は、好適には145℃以上であり、より好適には150℃以上である。一方、融点が190℃を超える場合、得られる容器の衝撃剥離の発生が増加するおそれがある。融点は、好適には185℃以下である。
【0066】
また、EVOH樹脂組成物(B)は、本発明の目的を阻外しない範囲で、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、ポリオレフィンなど)を含んでいてもよい。
【0067】
上記のようなPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)を原料として、まず有底パリソンを製造する。有底パリソンは、通常2台の射出シリンダーを有する成形機を用い、単一の金型に1回の型締め操作を行い、溶融した上記PESおよび上記EVOH樹脂組成物を、それぞれの射出シリンダーよりタイミングをずらして交互に、もしくは同心円状のノズル内を同時に射出し、またはこれらの操作を連続して行うことにより得られる。例えば、(1)先に内外層用のPES(A)を射出し、次いで、中間層となるEVOH樹脂組成物(B)を射出して、A/B/Aの2種3層構成の有底パリソンを得る方法、(2)先に内外層用のPES(A)を射出し、次いでEVOH樹脂組成物(B)を射出して、それと同時にまたはその後中心層となるPES(A)を再度射出し、A/B/A/B/Aの2種5層構成の有底パリソンを得る方法など、内層がPES(A)層に完全に封入された有底パリソンの一般的な製造方法が採用される。
【0068】
上記のような、有底パリソンを製造する共射出成形法の中でも、同時共射出成形が望ましい。その理由として、EVOH樹脂組成物(B)の成形機内の滞留時間が、一般に逐次共射出成形よりも同時共射出成形の方が短くなるため、熱安定性の観点より有利であることが挙げられる。
【0069】
本発明の製造方法は、上記の有底パリソンの成形時の射出速度として、PES(A)の射出速度IS(A)(mm/秒)およびEVOH樹脂組成物(B)の射出速度IS(B)(mm/秒)が下式(1)
0.2≦IS(A)/IS(B)≦5 (1)
を満足することを最大の特徴とする。ここで上記のIS(a)およびIS(b)は、下記の式により定義される。
IS(A)=0.25・I(A)・{S(A)}2/{SP・T(A)}
(2)
IS(B)=0.25・I(B)・{S(B)}2/{SP・T(B)}
(3)
ただし、I(A)およびI(B)はそれぞれPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)を射出する成形機の設定射出速度(mm/秒)、S(A)およびS(B)はそれぞれPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)を射出する成形機のスクリュー内径(mm)、SPは有底パリソン胴部の断面積(mm2)、T(A)およびT(B)はそれぞれ有底パリソン胴部におけるPES(A)層およびEVOH樹脂組成物(B)層の全層厚みに対する厚み比である。上記IS(A)およびIS(B)は下式(1’)
0.2 ≦IS(A)/IS(B)≦1 (1’)
を満足することが好ましい。IS(A)およびIS(B)が上記式(1)の関係を満足しない場合、得られる容器の外観が悪化したり、耐衝撃剥離性が低下したりするおそれがある。
【0070】
本発明の目的の一つである、「長時間にわたる製造」に関しては、例えば特開平11−43573号公報に、EVOHとホウ素化合物などの特定の微量成分とからなるEVOH樹脂組成物が、溶融成形時のロングラン性に優れていることが記載されている。前記公報においては、押出成形時のロングラン性に関してのみ記載されているが、射出成形においてもロングラン性が要求されているのは言うまでもない。
【0071】
しかしながら、本発明者がこのEVOH樹脂組成物を使用してPESとの多層容器を製造したところ、期待されたロングラン性が発現しない、または、ロングラン性は改善されたが、耐衝撃剥離性が不十分である、などの問題が発生し、実用化に際してはさらなる検討が必要であることが判明した。本発明者は、鋭意検討を重ね、有底パリソンの製造において特定の条件を満足した場合にのみ、耐衝撃剥離性が保持された共射出延伸ブロー成形容器を長時間安定して製造できることを見出した。
【0072】
有底パリソンの射出成形の条件としては、PES(A)の射出温度は250〜330℃であることが好ましく、270〜320℃がより好ましく、280〜310℃がさらにより好ましい。PES(A)の射出温度が250℃未満の場合、得られる有底パリソンに未溶融物が混入し、フィッシュアイとなって外観を損なう、得られる容器の力学的強度が不足するなどの問題が発生するおそれがある。さらに、極端な場合はスクリュートルクが上昇し成形機の故障を引き起こす。一方、PES(A)の射出温度が330℃を超える場合、PES(A)の分解が著しくなり、容器の力学的強度が不足する、アセトアルデヒドなどの分解ガスにより内容物の性質が損なわれるなどの問題が発生するおそれがある。また、同時に発生する環状三量体により金型の汚れが激しくなり、得られる容器の外観が損なわれるおそれがある。
【0073】
また、EVOH樹脂組成物(B)の射出温度は170〜250℃であることが好ましく、180〜240℃がより好ましく、190〜230℃がさらにより好ましい。EVOH樹脂組成物(B)の射出温度が170℃未満の場合、得られる有底パリソンに未溶融物が混入し、フィッシュアイとなって外観を損なうおそれがある。さらに、極端な場合はスクリュートルクが上昇し成形機の故障を引き起こす。一方、EVOH樹脂組成物(B)の射出温度が250℃を超える場合、EVOH樹脂組成物(B)の分解またはゲル化が著しくなり、得られる容器の外観不良やガスバリア性の低下などの問題が発生するおそれがある。さらに、極端な場合はゲル化物の発生により射出成形が不可能となる。
【0074】
さらに、PES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)が流入するホットランナー部分の温度は、220〜300℃の範囲内であることが好ましく、240〜280℃がより好ましく、250〜270℃がさらにより好ましい。ホットランナー部分の温度が220℃未満の場合、PES(A)がホットランナー部分で固化して成形が困難となるおそれがある。一方、ホットランナー部分の温度が300℃を超える場合、EVOH樹脂組成物(B)の分解またはゲル化が著しくなり、得られる容器の外観不良やガスバリア性の低下などの問題が発生するおそれがある。さらに、極端な場合はゲル化物の発生により射出成形が不可能となる。
【0075】
金型温度は、0〜70℃の範囲内にすることが好ましく、5〜50℃がより好ましく、10〜30℃がさらにより好ましい。金型温度が0℃未満の場合、得られる有底パリソンの外観が金型の結露により損なわれるおそれがある。一方、金型温度が70℃を超える場合、得られる有底パリソンにおいてPES(A)およびEVOH樹脂組成物(B)の結晶化が進み、透明性が損なわれる、引き続き行われる延伸ブロー成形において均一な延伸が困難となる、賦形性が低下する、および得られる容器の耐衝撃剥離性が低下するなどの問題が発生するおそれがある。
【0076】
このようにして、共射出延伸ブロー成形容器の前駆体である有底パリソンが得られる。図1および図2は、いずれも有底パリソンの一部を表す概略図である。有底パリソンの大部分はPES(A)層およびEVOH(B)層からなる多層部分(図中の2および12)であるが、容器口部(図中の1および11)の先端にPES(A)単層部分(図中の3および13)が存在する。有底パリソンの外観に関しては、着色、ゲル、スジなどの発生状況に加え、容器口部のEVOH樹脂組成物(B)層端部(以後、リーディングエッジと称する。図中の4および14)の状態が重要になる。リーディングエッジの好ましい状態は、有底パリソンの底の部分を下にしたときに、図1に示すようにリーディングエッジのラインがほぼ水平になっている状態である。このような有底パリソンを延伸ブロー成形することにより、外観が良好で、ガスバリア性に優れた容器を低コストで製造することができる。これに対して、図2に示すようにリーディングエッジのラインが波打っている状態では、得られる容器の外観不良およびガスバリア性の不足が問題となることがある。
【0077】
有底パリソンの胴部厚みは、全層厚みで2〜5mm、EVOH樹脂組成物層は合計で20〜500μmであることが好ましい。EVOH樹脂組成物層の厚みを必要以上に厚くすると、後の延伸ブロー成形において延伸性が悪化するおそれがある。
【0078】
こうして得られた有底パリソンを延伸ブロー成形する。有底パリソンは、高温の状態で直接、またはブロックヒーター、赤外線ヒーターなどの発熱体で好ましくは75〜150℃に再加熱された後、延伸ブロー工程に送られ、縦方向に1〜5倍に延伸された後、圧縮空気などで1〜4倍に延伸ブロー成形される。加熱時の有底パリソンの温度は、より好ましくは85〜140℃、さらにより好ましくは90〜130℃、一層好ましくは95〜120℃である。加熱時の有底パリソンの温度が150℃を超える場合、PES(A)の結晶化が進み、得られる容器の透明性が損なわれたり、容器の耐衝撃剥離性が低下したりするおそれがある。一方、75℃未満の場合、PES(A)にクレーズが生じ、パール調になって透明性が損なわれるおそれがある。
【0079】
こうして得られる共射出延伸ブロー成形容器の胴部の総厚みは、一般的には100μm〜3mmであり、用途に応じて使い分けられる。このとき、PES(A)層とEVOH樹脂組成物(B)層との容器胴部における厚み比{(A)層/(B)層}は、90/10〜99/1の範囲であることが好ましい。厚み比が90/10よりも小さい場合、より高価なEVOH樹脂組成物(B)の使用量が必要以上に多くなって、経済的に不利となるおそれがある。一方、厚み比が99/1よりも大きい場合、容器のガスバリア性が不十分となるおそれがある。
【0080】
本発明の製造方法によって得られた容器は、ガスバリア性、耐衝撃剥離性に優れており、透明性も良好であるので、各種内容物を長期間にわたって保存するのに適しており、炭酸飲料、ビール、ワイン等の各種飲料、食品、化粧品等の容器として有用である。
【0081】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。なお、実施例において、分析および評価は以下のようにして行った。
【0082】
(PESの分析)
(1)各構造単位の含有率:
重水素化トリフルオロ酢酸を溶媒として1H−NMR測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)を行い、得られたスペクトルから各構造単位の含有率を算出した。
【0083】
(2)末端カルボキシル基濃度:
試料0.2gを215℃に加熱したベンジルアルコール10mlに溶解し、溶解後にクロロホルム10mlを加え、苛性ソーダのベンジルアルコール溶液を用いて滴定して、末端カルボキシル基濃度とした。
【0084】
(3)環状三量体の含有率:
試料100mgをクロロホルム/1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(容積比1/1)2mlに溶解し、さらにクロロホルム8mlを加えて希釈した。さらに、溶液の体積が100mlとなるようにアセトニトリルを加えてポリマー成分を析出させ、濾過してポリマー成分を除去した。得られた濾液について、75体積%アセトニトリル水溶液を溶離液とする高速液体クロマトグラフィー(カラム:ケムコ社製ODS−II、検出器:紫外・可視検出器および屈折率検出器)を行い、検量線から環状三量体の含有率(重量%)を求めた。
【0085】
(4)固有粘度:
フェノールとテトラクロルエタンとの等重量混合溶媒を溶媒として、ウベローデ型粘度計(林製作所製「HRK−3型」)を用いて、30℃で測定した。
【0086】
(5)低温結晶化温度:
装置としてセイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を、温度校正試料としてインジウムと鉛を用いた。試料を300℃で5分間溶融保持した後、液体窒素に数秒間浸漬して急冷し、さらに室温で保持した。次に、試料を20℃/分の速度で昇温し、得られたDSCチャートから低温結晶化温度を求めた。
【0087】
(6)密度:
25℃に保持したn−ヘキサン/四塩化炭素混合液を充填した密度勾配管を使用し、0.5cm×0.5cmのフィルム状の試料の密度を測定した。
【0088】
(7)ガラス転移温度および融点:
上記と同じ装置および温度候性試料を使用し、JIS K7121に準じて測定した。試料を280℃で5分間保持した後、降温速度100℃/分で30℃まで冷却し、さらに5分間保持した。次に、試料を10℃/分の速度で昇温し、得られたDSCチャートからガラス転移温度および融点を求めた。ここで、ガラス移転温度は前記JISでいう中間点ガラス転移温度(Tmg)をいい、融点は前記JISでいう融解ピーク温度(Tpm)をいう。
【0089】
(EVOH樹脂組成物の分析)
(8)EVOH(b1)のエチレン含有量およびケン化度:
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒として1H−NMR測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)を行い、得られたスペクトルからエチレン含有量およびケン化度を算出した。
【0090】
(9)酢酸(b2)の含有割合:
試料20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液を、フェノールフタレインを指示薬として0.02規定の水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、酢酸(b2)のEVOH(b1)に対する含有割合を決定した。
【0091】
(10)リン酸化合物(b3)の含有割合:
試料10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオンの量を得た。カラムは、(株)横川電機製のCIS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸水溶液を使用して作成した検量線を用いた。こうして得られたリン酸イオンの量から、リン酸化合物(b3)のEVOH(b1)に対する含有割合をリン酸根換算の値で得た。
【0092】
(11)ホウ素化合物(b4)の含有割合:
試料50mgを酸素フラスコ燃焼法により完全燃焼させ、燃焼灰分を1規定の硝酸水溶液10mlに溶解させた。この溶液を、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分析装置IRIS AP)により定量し、ホウ素化合物(b4)のEVOH(b1)に対する含有割合をホウ素元素換算の値で得た。
【0093】
(12)ナトリウム塩(b5)およびマグネシウム塩(b6)の含有割合:
試料10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、ナトリウムイオンおよびマグネシウムイオンの量を得た。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれの金属の塩化物の水溶液を使用して作成した検量線を用いた。こうして得られた各金属イオンの量から、ナトリウム塩(b5)およびマグネシウム塩(b6)のEVOH(b1)に対する含有割合を、それぞれの金属換算の値で得た。
【0094】
(13)メルトインデックス:
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を使用して測定した。試料を内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出されたEVOH樹脂組成物(B)の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトインデックスとした。
【0095】
(14)密度:
25℃に保持したn−ヘキサン/四塩化炭素混合液を充填した密度勾配管を使用し、0.5cm×0.5cmのフィルム状の試料の密度を測定した。
【0096】
(15)融点:
上記のポリエステル樹脂の測定に用いたものと同じ装置および温度候性試料を使用し、JIS K7121に準じて測定した。試料を240℃で5分間保持した後、降温速度100℃/分で30℃まで冷却し、さらに5分間保持した。次に、試料を10℃/分の速度で昇温し、得られたDSCチャートから融点を求めた。ここで、融点は前記JISでいう融解ピーク温度(Tpm)をいう。
【0097】
(16)重量保持率:
セイコー電子工業(株)製示差熱重量同時測定装置(TG−DTA)TG/DTA220型およびSSC5200H型を使用して行った。試料を測定パンに入れ、窒素雰囲気下で室温から260℃に10℃/分の速度で昇温した後、260℃で2時間保持した。保持前後の試料の重量から、下記式により重量保持率を求めた。
重量保持率(%)=(保持前重量−保持後重量)/保持前重量×100
【0098】
(容器の評価)
(17)衝撃剥離発生率:
容器に水を充填し、常圧下で密栓した後、50cmの高さから、90°の角度を持った長さ20cm三角形の台の上に、台の角部が容器胴部の中央に当たるように、容器胴部を水平にして一回のみ自然落下させた。100本の容器について試験を行い、デラミを生じた容器の本数(Nd)から下記式を用いてデラミ発生率(Rd)を算出した。
Rd(%) = (Nd/100)×100
【0099】
(18)ヘイズ値(曇価):
容器胴部中央を円周上に4分割した4箇所について、ポイック積分球式光線透過率・全光線反射率計(村上色彩技術研究所製「HR−100型」)を使用し、ASTM D1003−61に準じて内部ヘイズ値を測定し、その平均値を容器のヘイズ値(曇価)とした。
【0100】
(19)酸素透過速度:
容器の形態のままで、容器外側を20℃−65%RH、容器内側を20℃−100%RHに温湿度調節した後、酸素透過速度測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−10/50A)を使用して、容器1個当たりの酸素透過速度(ml/container・day・atm)を測定した。
【0101】
PES(A)としては、下記の要領にて製造したものを使用した。
【0102】
(ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET1)の製造)
テレフタル酸100.000重量部とエチレングリコール44.830重量部とを混合してスラリーとした。これに二酸化ゲルマニウム0.010重量部、亜リン酸0.010重量部およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシド0.010重量部を加え、絶対圧2.5Kg/cm2の加圧下、250℃に加熱して、エステル化率が95%になるまでエステル化反応を行って低重合体を製造した。次に、得られた低重合体を、1mmHgの減圧下、270℃で溶融重縮合させて、固有粘度0.50dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)プレポリマーを得た。このPETプレポリマーをノズルからストランド状に押出し、水冷した後、切断し、直径約2.5mm、長さ約2.5mmの円柱状ペレットとし、さらに160℃で5時間予備乾燥して結晶化させた。このPETプレポリマーにおいて、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位、および副生したジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%、1.1モル%であった。また、末端カルボキシル基濃度は38μeq/g、融点は253℃であった。
【0103】
このPETプレポリマーを、転動式真空固相重合装置を使用して、0.1mmHgの減圧下、220℃で固相重合を10時間行って、PET樹脂(PET1)を得た。このPET1において、テレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびジエチレングリコール単位の含有率はそれぞれ50.0モル%、48.9モル%および1.1モル%であった。また、末端カルボキシル基濃度は22μeq/g、環状三量体の含有率は0.32重量%、固有粘度は0.83dl/g、低温結晶化温度、ガラス転移温度および融点はそれぞれ155℃、80℃および252℃、密度は1.369g/cm3であった。
【0104】
また、EVOH樹脂組成物(B)としては、表1および表2に示す構成、物性を示すものを使用した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
実施例1
PET1およびEVOH1を用いて、KORTEC/HUSKY製共射出成形機(SL160型4個取り)により同時共射出成形を行い、PET1/EVOH1/PET1の2種3層の有底パリソンを成形した。このとき、PET側射出機温度は280℃、EVOH側射出機温度は210℃、PET1とEVOH1とが合流するホットランナーブロック部は270℃、射出金型コア温度は10℃、射出金型キャビティー温度は10℃とした。また、PET1およびEVOH1の射出速度IS(A)およびIS(B)は、それぞれ134.3mm/秒および486.0mm/秒であった。このパリソンを目視で観察したところ、着色はなく、ストリークは認められず、有底パリソン口部におけるEVOH1のリーディングエッジは良好な状態であった。有底パリソンの構成、射出成形条件および評価結果を表3に示す。
【0108】
その後、CRUPP CORPOPLAST MASCHINENBAU製延伸ブロー成形機(LB01型530mL1個取り)を使用して、有底パリソンの表面温度を105℃に加熱し、延伸ブロー成形を行い、2種3層の共射出延伸ブロー成形容器を得た。得られた容器を胴部で切断し、PET1およびEVOH1各層の全層に対する厚み比を計測した。結果を表4に示す。
【0109】
また、この容器の衝撃剥離発生率、ヘイズおよび酸素透過速度を測定した。さらに、この容器を目視で観察したところ、ストリーク、ゲル、気泡は認められず、良好な外観を有していた。これらの評価結果を表5に示す。
【0110】
長期運転性を確認するために、1000サイクル連続で共射出延伸ブロー成形を行った後の金型汚染の程度を目視で観察した。観察の結果、金型の汚染は認められなかった。
【0111】
また、EVOH1の熱安定性を確認するために、ホットランナーブロック部で10分間PET1とEVOH1とを滞留保持した以外は、上記と同様にして2種3層のパリソンを成形した。得られたパリソンは微かに黄味を帯びていたもののストリークはなく、良好な外観を有しており、有底パリソン口部におけるEVOH樹脂組成物層のリーディングエッジは良好な外観を呈していた。また該有底パリソンを延伸ブロー成形して得られた容器について外観を観察したところ、ストリーク、ゲル、気泡は認められず、良好な外観を有していた。これらの評価結果を表6に示す。
【0112】
実施例2
射出速度IS(A)およびIS(B)が、それぞれ128.6mm/秒および502.3mm/秒となるように射出成形機を調節した以外は、実施例1と同様にしてPET1/EVOH1/PET1の2種3層の有底パリソンを成形した。有底パリソンの構成、射出成形条件および評価結果を表3に示す。その後、実施例1と同様にして延伸ブロー成形を行い、2種3層の共射出延伸ブロー成形容器を得た。この容器を実施例1と同様にして評価した。結果を表4〜6に示す。
【0113】
比較例1
射出速度IS(A)およびIS(B)が、それぞれ100.0mm/秒および520.0mm/秒となるように射出成形機を調節した以外は、実施例1と同様にしてPET1/EVOH1/PET1の2種3層の有底パリソンを成形した。有底パリソンの構成および射出成形条件を表3に示す。この有底パリソンの断面を観察したところ、有底パリソン底部付近にはEVOH1からなる層が存在しておらず、良好な2種3層の層構成を有していなかったので、延伸ブロー成形を取り止めた。
【0114】
比較例2
射出速度IS(A)およびIS(B)が、それぞれ520.0mm/秒および100.0mm/秒となるように射出成形機を調節した以外は、実施例1と同様にしてPET1/EVOH1/PET1の2種3層の有底パリソンを成形した。有底パリソンの構成および射出成形条件を表3に示す。この有底パリソンの断面を観察したところ、EVOH1からなる層の厚みが不均一であり、良好な2種3層の層構成を有していなかったので、延伸ブロー成形を取り止めた。
【0115】
比較例3
EVOH1の代わりにEVOH2を使用した以外は、実施例1と同様にして2種3層の有底パリソンを成形した。この有底パリソンのリーディングエッジは図2に示すように大きな乱れを生じていた。この有底パリソンの構成、射出成形条件および評価結果を表3に示す。その後、実施例1と同様にして延伸ブロー成形を行い、2種3層の共射出延伸ブロー成形容器を得た。この容器を実施例1と同様にして評価した。結果を表4〜6に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、ガスバリア性、耐衝撃剥離性などの特性を有する多層容器を、長時間安定して製造することができる。得られる多層容器は、酸素、炭酸ガスなどのガスバリア性、防湿性、保香性、フレーバーバリア性、耐衝撃剥離性に優れ、外観が良好であるので、飲料、食品、化粧品などの容器として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 良好なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図である。
【図2】 比較例3における、不良なリーディングエッジを有する有底パリソンの一部を表す概略図である。
【符号の説明】
1,11 容器口部
2,12 PES/EVOH多層部分
3,13 PES単層部分
4,14 リーディングエッジ
Claims (7)
- 熱可塑性ポリエステル(A)およびエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)を共射出成形し、続いて延伸ブロー成形する共射出延伸ブロー成形容器の製造方法であって、該熱可塑性ポリエステル(A)の固有粘度が0.70〜0.95dl/gであり、かつ環状三量体の含有率が該熱可塑性ポリエステル(A)の全重量に対して0.40重量%以下であり、該樹脂組成物(B)を窒素雰囲気下、260℃で2時間保持したときの重量保持率が90%以上であり、該エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)のメルトインデックスが0.1〜10g/10分(190℃、2160g荷重)であり、該エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)が、エチレン含有量20〜60モル%、ケン化度90モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)、酢酸(b2)、リン酸化合物(b3)およびホウ素化合物(b4)からなり、該エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)において、該エチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)に対する、酢酸(b2)の含有割合が30〜250ppmであり、リン酸化合物(b3)の含有割合がリン酸根換算で5〜500ppmであり、ホウ素化合物(b4)の含有割合がホウ素元素換算で20〜2000ppmであり、かつ前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)に対する、アルカリ金属塩(b5)の含有割合がアルカリ金属換算で300ppm以下であり、アルカリ土類金属塩(b6)の含有割合がアルカリ土類金属換算で10ppm以下であって、かつ該熱可塑性ポリエステル(A)の射出速度IS(A)(mm/秒)および該エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)の射出速度IS(B)(mm/秒)が下式(1)
0.2≦IS(A)/IS(B)≦5 (1)
を満足することを特徴とする、共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。 - 前記熱可塑性ポリエステル(A)の射出速度IS(A)(mm/秒)および前記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)の射出速度IS(B)(mm/秒)が下式(1´)
0.2≦IS(A)/IS(B)≦1 (1´)
を満足する、請求項1に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。 - 前記熱可塑性ポリエステル(A)および前記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)のみを共射出成形し、続いて延伸ブロー成形する、請求項1または2に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。
- 共射出成形が同時共射出成形である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。
- 前記共射出成形において、前記熱可塑性ポリエステル(A)の射出温度を250〜330℃、かつ前記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)の射出温度を170〜250℃とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。
- 延伸ブロー成形において、加熱温度を75〜150℃とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。
- 前記エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物(B)において、エチレン−ビニルアルコール共重合体(b1)に対するアルカリ土類金属塩(b6)の含有割合がアルカリ土類金属換算で5ppm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の共射出延伸ブロー成形容器の製造方法。
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