JPH11336855A - 油圧式テンショナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プランジャに作用する荷重が高い周波数で変
動する場合にも、供給油圧を高めることなく十分なバッ
クストップ力を得ることができる油圧式テンショナを提
供する。 【解決手段】 油圧式テンショナの本体内に設けられて
いるボールチェックバルブのボールシート１の座面３を
開き角６０°〜１１０°の外拡がりのテーパ面で形成
し、且つ、チェックボール３の質量を０．１ｇ以下とし
ており、チェックボールの高い周波数の油圧変動に対す
る追従性に優れ、プランジャに作用する荷重の変動の周
波数が高い領域においても、供給油圧を高めることなく
十分なバックストップ力を維持することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属するの技術分野】本発明は、車両用エンジン
のタイミングベルト、または、タイミングチェーン等に
適正な張力を付与するために用いられる油圧式テンショ
ナに関する。

【０００２】

【従来の技術】エンジンのクランクシャフトとカムシャ
フトとの間で回転を伝達するタイミングベルトやタイミ
ングチェーンには、これらの走行時に生じる振動を抑止
し、且つ、適正な張力を維持するために、油圧式のテン
ショナが広く用いられている。

【０００３】図４は、このような従来の油圧式テンショ
ナが用いられているエンジンのチェーン伝動装置を示す
ものであって、油圧式テンショナＡ１は、エンジンのク
ランクシャフトＡ２で回転される駆動側スプロケットＡ
３と、カムシャフトＡ４に固定されている被駆動側スプ
ロケットＡ５の間に掛け渡されているチェーンＡ６の弛
み側でエンジン本体に取り付けられている。

【０００４】前記油圧式テンショナＡ１は、そのテンシ
ョナ本体Ａ７の前面からプランジャＡ８が出没自在に突
出しており、前記プランジャＡ８が支軸Ａ９でエンジン
本体側に揺動自在に支持されているテンショナレバーＡ
１０の揺動端近傍の背面を押圧することにより、前記テ
ンショナレバーＡ１０のシュー面Ａ１１がチェーンＡ６
の弛み側に摺動接触して張力を付加している。

【０００５】テンショナ本体Ａ７内には、図５に示すよ
うにプランジャＡ８が出没自在に嵌挿されるプランジャ
収容穴Ａ１２が形成され、その底部には、ボールチェッ
クバルブＡ１３が設けられている。

【０００６】また、プランジャＡ８内部は、ボールチェ
ックバルブＡ１３と対向する端面に開口する中空部Ａ１
４が形成されており、前記中空部Ａ１４とプランジャ収
容穴Ａ１２とに亘って配置されているプランジャばねＡ
１５が、プランジャＡ８をその先端部がテンショナ本体
Ａ７外部へ突出するように常時付勢している。

【０００７】プランジャ収容穴Ａ１２とプランジャＡ８
の中空部Ａ１４とによって画定される空間によって高圧
室Ｈが形成されており、前記高圧室Ｈ内部は常時図示し
ていない油供給源から油路Ａ１６及びボールチェックバ
ルブＡ１３を通過して供給される油で満たされている。

【０００８】前述したように構成されている油圧式テン
ショナＡ１は、図４に示すテンショナレバーＡ１０を介
してチェーンＡ６側からプランジャＡ８に衝撃力が作用
すると高圧室Ｈ内部の油圧が上昇し、ボールチェックバ
ルブＡ１３のチェックボールＡ１７がボールシートＡ１
８を貫通する油路Ａ１６の開口部を塞いで、油供給源側
への油の逆流を阻止する。

【０００９】その結果、高圧室Ｈ内の油圧はさらに高く
なり、プランジャＡ８の外周面とプランジャ収容穴Ａ１
２の内周面との間の僅かな隙間からテンショナ本体Ａ７
の外部へリークし、その際生じる油の流動抵抗によっ
て、プランジャＡ８に作用する衝撃力が緩衝される。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】前述した従来の油圧式
テンショナＡ１においては、ボールチェックバルブＡ１
３は、図６に示すように油路Ａ１６が開口するボールシ
ートの座面Ａ１９が開き角略９０°の外拡がりのテーパ
面に形成されており、油路Ａ１６の内径２．５ｍｍに対
して、チェックボールＡ１７は外径が３．９７ｍｍの構
成のものが標準的に用いられている。

【００１１】前記外径を有する鋼製のチェックボールＡ
１７は０．２６ｇ程度の質量があり、図５における高圧
室Ｈ側へ油路Ａ１６から供給される油の圧力が低い場合
に、プランジャＡ８にチェーン側から作用する荷重が略
１００Ｈｚを超えた周期で脈動すると、チェックボール
Ａ１７がその慣性のために荷重の変動に追従しきれなく
なって高圧室Ｈ側から油路Ａ１６へ油が漏出するため、
プランジャＡ８のバックストップ力が著しく低下して、
チェーンの振れが大きくなる問題があった。

【００１２】一方、高圧室Ｈへの供給油圧を高めれば、
チェーンの走行中の振れを抑制することは可能となる
が、チェーンに作用する張力が大きくなるため、チェー
ン走行時に駆動側スプロケットや被駆動側スプロケット
との間で唸り音が発生し易くなり、エンジン側からの要
求性能を満たすことが困難であった。

【００１３】そこで、本発明は、前述したような従来技
術の問題点を解消し、プランジャに作用する荷重が高い
周波数で変動する場合にも、供給油圧を高めることなく
十分なバックストップ力を得ることができる油圧式テン
ショナを提供することを目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】前記目的のため、本発明
の油圧式テンショナは、テンショナ本体内に設けられた
プランジャ収容穴に一方の端部が外部に突出するように
ばね付勢された状態で摺動自在に嵌挿されたプランジャ
と、前記プランジャで画定されているプランジャ収容穴
内部の空間によって形成される高圧室内へ油を導入する
油路と前記高圧室との間に配置され、高圧室側への油の
流入のみを許容するチェックボールを用いたボールチェ
ックバルブとを有するものにおいて、前記ボールチェッ
クバルブのボールシートの座面を開き角６０°〜１１０
°の外拡がりのテーパ面で形成し、且つ、チェックボー
ルの質量を０．１ｇ以下としている。

【００１５】

【作用】テンショナ本体から突出するプランジャの先端
にチェーンの張力変動によって衝撃力が作用して、前記
プランジャがばね付勢力に抗して没入方向に急激に押さ
れると、高圧室内の油の圧力が上昇してボールチェック
バルブのチェックボールはバルブ座面に押し付けられ、
高圧室からの油路側への油の流出が阻止される。

【００１６】その結果、高圧室内の油はプランジャの外
周面とプランジャ収容穴内周面との僅かな隙間からリー
クして外部へ排出され、その際生じる油の粘性による流
動抵抗によって前記衝撃力が緩和される。また、前記衝
撃力によるプランジャの振動が速やかに減衰される。

【００１７】一方、エンジンの起動時等において、タイ
ミングベルトやチェーンのテンショナ側に瞬間的な弛み
が生じると、プランジャは、ばね付勢力によって瞬時に
テンショナ本体から突出変位してこれに追従し、チェー
ンの弛みを解消する。

【００１８】この際、高圧室内の油の圧力が低下するた
め、チェックバルブのチェックボールはバルブ座面を開
放し、油路から高圧室内に油が補給される。また、プラ
ンジャの先端に加わる力が周期的に変動した場合には、
高圧室内の油の圧力もこれに伴って周期的に変動する。

【００１９】この際、本発明の油圧テンショナにおいて
は、前記ボールチェックバルブのボールシートの座面が
開き角６０°〜１１０°の外拡がりのテーパ面で形成
し、且つ、チェックボールの質量を０．１ｇ以下に軽減
しているため、チェックボールは高圧室内の油圧変動に
敏感に追従し、優れたバックストップ力が得られる。

【００２０】

【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明
する。図１は本発明の油圧式テンショナにおけるチェッ
クバルブのボールシートの座面とチェックボールの当接
状態を示す図であって、ボールシート１は、中心部に軸
方向に貫通して形成された内径２．５ｍｍの油路２が形
成されている。

【００２１】前記ボールシート１の一方の端部には、外
側へ拡開された開き角６０°のテーパ状の座面３が形成
され、前記座面３に対向して、従来用いられている直径
３．９７ｍｍのものと比較して小径の直径３ｍｍの鋼製
のチェックボール４が用いられており、その質量は０．
１ｇに軽減されている。

【００２２】なお、本発明の油圧式テンショナを構成し
ている他の部分の構成については、前述した図５に示す
従来の油圧式テンショナと同一構造であるため説明は省
略する。

【００２３】次に図２は、前述した実施例に示した本発
明の油圧式テンショナ（Ａ）と図５及び図６に示す構造
の従来の油圧式テンショナ（Ｂ）における、それぞれの
プランジャに周期的に加えられた荷重に対するバックス
トップ力を比較試験した結果を示すグラフである。前記
比較試験は、各油圧式テンショナへの供給を油圧を１ｋ
ｇ／ｃｍ² として油温３０℃の下で実施した。

【００２４】前記比較試験の結果、同図に示すように、
プランジャに作用する荷重の変動周波数が５０〜１５０
Ｈｚの範囲では、本発明の油圧式テンショナ（Ａ）で
は、１．５Ｎ程度のバックストップ力が得られたのに対
し、従来の油圧式テンショナ（Ｂ）では、１Ｎ程度であ
り、本発明の油圧式テンショナ（Ａ）が従来の油圧式テ
ンショナ（Ｂ）に比較して５０％程度バックストップ力
が向上することが確認された。

【００２５】また、プランジャに作用する荷重の変動周
波数が１５０Ｈｚを超えた付近から従来の油圧式テンシ
ョナ（Ｂ）のバックストップ力は急速に低下しているの
に対し、本発明の油圧式テンショナ（Ａ）のバックスト
ップ力の低下は少なく、荷重の変動周波数が３００Ｈｚ
を超えてもなお、１Ｎ以上のバックストップ力を維持し
ていた。

【００２６】バックストップ力の低下は主に、チェック
ボールの閉弁までに高圧室内の油が油路側へ逆流する油
量に支配されるものと考えられる。図３は、前記油圧式
テンショナ（Ａ）と油圧式テンショナ（Ｂ）における、
周波数１００Ｈｚでプランジャに周期的に加えられた荷
重下での閉弁時間とチェックボールの移動ストロークと
の関係を示すグラフであって、同図に示すように、本発
明の油圧式テンショナ（Ａ）は油圧式テンショナ（Ｂ）
に対して閉弁時間が半分以下であり、しかも、チェック
ボールのストロークが長くなるほど両者の差は大きくな
る傾向にある。

【００２７】前述した実施例では、ボールシート１の座
面３の開き角を６０°とし、標準的な内径２．５ｍｍの
油路２に対して、直径３ｍｍの鋼製のチェックボール４
を用いているが、チェックボールの材料には鋼以外の、
セラミックやチタン合金、あるいは、表面に硬質アルマ
イト処理を施したアルミ等の比重が小さく、且つ、耐摩
耗性に優れた材料を用いることもでき、また、ボールシ
ートの座面は開き角６０°〜１１０°の範囲にあり、且
つ、チェックボールの質量が０．１ｇ以下であれば、良
好なバックストップ力を得ることができる。

【００２８】なお、ボールシートの座面の開き角が１１
０°を超えると、座面とチェックボール表面との接触が
不完全となり、また、６０°より小さくなると、ボール
シートの座面にチェックボールの噛み込みが生じ易くな
るため、開き角は座面の開口する油路の内径やチェック
ボールの直径に応じて６０°〜１１０°の範囲内で選択
する必要がある。

【００２９】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、前記ボールチェックバルブのボールシートの座面を
開き角６０°〜１１０°の外拡がりのテーパ面で形成
し、且つ、チェックボールの質量を０．１ｇ以下として
いるため、従来の油圧式テンショナと比較して、チェッ
クボールの高い周波数の油圧変動に対する追従性が各段
に優れ、プランジャに作用する荷重の変動の周波数が高
い領域においても、供給油圧を高めることなく十分なバ
ックストップ力を維持することができる。

【００３０】その結果、特に自動車等のエンジンのタイ
ミングチェーンに適用した場合には、タイミングチェー
ンの高速走行時の振れや唸り音の発生が防止でき、エン
ジン側で要求される性能を十分満たすことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の油圧式テンショナのボールシートの
座面とチェックボールとの当接状態を示す図である。

【図２】 本発明の油圧式テンショナと従来の油圧式テ
ンショナにおける、プランジャに周期的に加えられた荷
重に対するバックストップ力を比較試験した結果を示す
グラフである。

【図３】 本発明の油圧式テンショナと従来の油圧式テ
ンショナにおける、周波数１００Ｈｚの変動荷重のもと
での閉弁時間を比較したグラフである。

【図４】 油圧式テンショナの使用例を示す図である。

【図５】 従来の油圧式テンショナの一例を示す断面図
である。

【図６】 従来の油圧式テンショナに用いられているボ
ールシートの座面とチェックボールとの当接状態を示す
図である。

【符号の説明】

１ ボールシート ２ 油路 ３ 座面 ４ チェックボール

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 テンショナ本体内に設けられたプランジ
   ャ収容穴に一方の端部が外部に突出するようにばね付勢
   された状態で摺動自在に嵌挿されたプランジャと、前記
   プランジャで画定されているプランジャ収容穴内部の空
   間によって形成される高圧室内へ油を導入する油路と前
   記高圧室との間に配置され、高圧室側への油の流入のみ
   を許容するチェックボールを用いたボールチェックバル
   ブとを有する油圧式テンショナにおいて、 前記ボールチェックバルブのボールシートの座面を開き
   角６０°〜１１０°の外拡がりのテーパ面で形成し、且
   つ、チェックボールの質量を０．１ｇ以下としたことを
   特徴とする油圧式テンショナ。