JPH11326208A - 解析方法および解析装置 - Google Patents

解析方法および解析装置

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JPH11326208A
JPH11326208A JP10140135A JP14013598A JPH11326208A JP H11326208 A JPH11326208 A JP H11326208A JP 10140135 A JP10140135 A JP 10140135A JP 14013598 A JP14013598 A JP 14013598A JP H11326208 A JPH11326208 A JP H11326208A
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浩幸 松本
Shinji Osuga
慎二 大須賀
Akihiko Tsuji
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 FCS法を用いて容易に2成分系の蛍光物質
の並進拡散運動を解析することができる解析方法および
解析装置を提供する。 【解決手段】 同一の光学系を用いて、第1の物質から
の蛍光の自己相関を基準波形として取得し(S1)、第
1および第2の物質が混合された被測定試料からの蛍光
の自己相関を観測波形として取得する(S2)。基準波
形を時間軸方向に所定の倍率だけ拡大または縮小して相
似波形を作成する(S3)。基準波形および相似波形そ
れぞれの振幅およびオフセットならびに第1および第2
の物質の成分比率を仮定し、基準波形と相似波形とを加
重平均して平均波形を作成し、観測波形と平均波形との
間の残差二乗和が最小値となるような基準波形および相
似波形それぞれの振幅およびオフセットならびに成分比
率を探索する(S4)。倍率の各値それぞれについて残
差二乗和の最小値を求め、残差二乗和の最小値が最小に
なる条件に基づいて被測定試料を解析する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、測定領域中の蛍光
物質から発せられる蛍光の強度の時間的な揺らぎに基づ
いて、自己相関蛍光分光法を用いて蛍光物質の並進拡散
定数などを求める解析方法および解析装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】溶液中における極微小な粒子と粒子との
結合、分子と分子との結合、抗原抗体反応など、2つの
物質の間の相互作用すなわち解離会合反応の解析は、2
つの物質の間の動的理解を深める上で或いは静的結合学
を知る上で不可欠な課題である。例えば、抗原抗体反応
は抗原とその抗体との間で特異的であり、ある種の抗原
に対して産生された抗体は、特別な例外を除き、その抗
原とのみ結合する。このような免疫反応を利用したいわ
ゆる免疫測定法は、測定対象物を複雑な組成の混合物の
中から特異的に選別できるので、物質の分離や検出に広
く用いられており、測定系を最適化するためには、抗体
と抗原との反応様式を測定することが必要である。
【0003】従来より2つの物質の間の相互作用を測定
する方法が多数提案されている。例えば、平衡透析法、
連続平衡透析法、超遠心法、ゲル濾過法、限外濾過法、
硫安沈殿法、ポリエチレングリコール法、二次抗体法、
固相RIA法、吸収スペクトル法および蛍光法等が知ら
れている。
【0004】平衡透析法、連続平衡透析法、超遠心法、
ゲル濾過法および限外濾過法は熱力学に裏付けされたも
のであり、中でも特に平衡透析法は信頼性が高いとされ
ている。しかしながら、測定に際して比較的多くの試料
を必要とするので、少量の試料を解析することができな
い上、平衡状態に達するまで20時間〜48時間も要
し、解析に長時間必要であるという問題点がある。
【0005】超遠心法は、これらの欠点を補うように工
夫されたものであって、迅速な測定が可能であり、試料
を放射能標識する必要はないが、高価な装置が必要であ
るという問題点がある。
【0006】ゲル濾過法は、簡便であるが、精度が劣る
という問題点がある。また、これらは、相互作用の平衡
を乱すことなく測定できるものであるが、測定が簡便で
ないという問題点がある。
【0007】硫安沈殿法、ポリエチレングリコール沈殿
法、二次抗体法および固相RIA法は、免疫学の分野で
は広く用いられているが、理論的な裏付けがなく測定結
果に信頼性が低く、また、沈殿または洗浄という操作が
必要であり平衡が乱されるため、真の反応様式を測定す
ることができるか否かが疑問視されているものである。
【0008】吸収スペクトル法および蛍光法は、分光学
的な性質を利用するものであり、中でも良く用いられて
いる方法が蛍光法である。蛍光法は少量の試料で測定が
可能であり、従来よりの方法は2つの物質の間の相互作
用によって形成される複合体の形成量に比例するシグナ
ルの測定が、蛍光の消光や増強に基づくものである。
【0009】例えば、蛍光偏光解消法は、何れか一方を
蛍光物質で標識した2つの物質の間において、相互作用
に伴う分子量の変化が蛍光物質の蛍光偏光度の変化とし
て現れるため、この蛍光偏光度を定量することで2つの
物質の間の相互作用を測定するという方法である。
【0010】しかしながら、蛍光偏光解消法は、感度が
RIA法より劣るという欠点がある。また、蛍光物質の
蛍光偏光度は分子の回転ブラウン運動によって左右され
るので、温度の上昇に伴い蛍光偏光度は減少する。ま
た、蛍光の緩和時間は蛍光分子の電子状態で左右される
ので、測定pHの変動は緩和時間の変化を引き起こし、
結果として蛍光偏光度に影響を及ぼす。すなわち、蛍光
偏光解消法は、反応系のpH値および温度を一定にする
必要があるので、その用途に制限がある。
【0011】一方、この蛍光法の1つである自己相関蛍
光分光法( Fluorescence Correlation Spectroscopy、
以下ではFCS法と言う。)は、蛍光物質の並進拡散運
動を測定することができるものであり、この並進拡散運
動から蛍光物質の分子量や形状などに関する情報を得る
ことができる。つまり、蛍光を発する蛍光物質と他の物
質とが結合してなる複合体の並進拡散運動は、結合前の
フリー状態にある蛍光物質と比べて遅いので、並進拡散
運動を測定することにより、上記複合体の量や上記結合
の反応速度に関する情報を得ることができる。このこと
は蛍光偏光解消法で得られる情報と略同じであるが、感
度が高い上、反応系のpH値と温度に影響され難いとい
う特徴がある。
【0012】FCS法による通常の解析に際しては、測
定領域中に存在する蛍光物質の平均個数が数個程度とさ
れ、この測定領域中の蛍光物質から発生した蛍光の強度
が測定され、この蛍光強度の時間的な変動(揺らぎ)の
自己相関が求められ、この自己相関に基づいて蛍光物質
の並進拡散定数および濃度などが算出される。例えば、
特開昭61−83938号公報には、このFCS法を用
いて、蛍光強度の揺らぎの偏差を解析し、蛍光物質の濃
度に依存した評価値を算出する技術が開示されている。
また、特開平8−68694号公報には、光ファイバを
組み合わせることにより微小な測定領域を形成し、この
測定領域における蛍光物質の平均滞在時間をFCS法に
より求め、この平均滞在時間に基づいて物質を識別する
技術が開示されている。
【0013】また、近年においては、光学顕微鏡を用い
たレーザスポット励起法と共焦点光学系とを組み合わせ
た測定装置にFCS法が適用され、さらに各光学素子が
改良されたことから超高感度の蛍光検出が可能となり、
FCS法を適用した超高感度の試料解析が行われるよう
になった。例えば、金城他による論文(「拡散測定によ
るDNA構造解析」、日本バイオレオロジー学会誌(B
&R)、第9巻第2号、pp.17-26、1995)に記載された
技術では、顕微鏡視野下の極微小な測定領域中に存在す
る蛍光物質の平均個数が数個程度とされ、この極微小な
測定領域中の蛍光物質から発生した蛍光の強度が測定さ
れ、この蛍光強度の時間的な変動(揺らぎ)の自己相関
が求められ、この自己相関に基づいて蛍光物質の並進拡
散定数および濃度などが算出される。この技術の特徴的
なことは、測定対象が分子レベルにまで至っている点で
ある。
【0014】また、このような顕微鏡視野下の極微小な
測定領域に関して理想モデルが導入され、この理想モデ
ルの条件の下に数学的な解析により自己相関関数が求め
られ、この解析的に求められた自己相関関数に基づい
て、蛍光物質の並進拡散定数および濃度ならびに極微小
な測定領域の実効的な大きさが算出されるにまで至って
いる。前掲の金城他による論文には、理想モデル条件下
で解析的に求められた自己相関関数が、測定視野中に観
測される蛍光物質の平均個数、蛍光物質の並進拡散定数
ならびに測定視野の半径および軸長を変数とする関数と
して示されている。
【0015】例えば、2成分系の蛍光物質を解析する場
合、理想モデルの条件下で解析的に求められる自己相関
関数G(τ)は、
【数1】 なる式で表される。ここで、D1 およびD2 それぞれ
は、第1および第2の蛍光物質の並進拡散定数である。
Nは、測定領域中に存在する第1および第2の蛍光物質
それぞれの個数の和の平均値である。αは、測定領域中
における第1および第2の蛍光物質それぞれの個数の和
に対する第1の蛍光物質の個数の比率である。また、w
0 は測定領域の実効的な半径であり、z0 は測定領域の
実効的な軸長である。そして、測定により求められた自
己相関値に対して上記 (1)式を非線形最小二乗法により
フィテッィングすることにより、2成分系の場合の自己
相関関数は解析される。ただし、上記 (1)式は、第1お
よび第2の蛍光物質それぞれから発生する蛍光が互いに
同一種の蛍光分子から発生するものであること、およ
び、第1および第2の蛍光物質それぞれの並進拡散定数
D1 ,D2 が互いに異なる値であることを前提としてい
る。
【0016】このようなFCS法は、測定対象である試
料を固相化する必要がなく、自然状態に近い液相の状態
において微量の試料を簡便に測定することができ、しか
も様々な試料形態での2種の物質の間の解離反応および
会合反応を測定することができる。したがって、FCS
法は、抗原抗体反応を用いたイムノアッセイ法や抗原決
定基(エピドープ)の計測等に応用され、また、細胞の
動的計測に関連して細胞レセプタ数の計測や細胞表面の
特異抗原の測定等にも応用されようとしている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
FCS法により2成分の蛍光物質が存在する溶液を解析
しようとする場合、特に2種の物質の間の解離反応およ
び会合反応を測定しようとする場合、以下のような問題
点がある。
【0018】すなわち、特開昭61−83938号公報
や特開平8−68694号公報に開示された技術では、
解析法の開示が不充分であり、2成分系の蛍光物質の間
の成分比率を正確に求めることができない。
【0019】また、上記 (1)式で表されるような自己相
関関数G(τ)を用いて解析する場合であっても、測定
装置の視野にある測定領域が理想モデル条件下にあっ
て、その測定領域の実効的な形状および大きさを測定者
が熟慮していなければ、2成分系の蛍光物質の間の成分
比率を厳密には求めることができない。
【0020】また、理想モデル条件下にある測定領域の
実効的な形状および大きさが仮に求められたとしても、
測定装置の光学系のアライメントがずれた場合や、多光
子励起法による励起やスリット状の励起光による励起な
どの為に他の光学系を構築した場合には、測定領域の実
効的な形状および大きさが上記理想モデル条件から外れ
ることとなる。このような場合、新たな測定領域の実効
的な形状および大きさに対応した新たな自己相関関数が
必要となるが、理想モデル条件以外のモデル条件下にお
ける自己相関関数を解析的に求めるのは困難である。
【0021】さらに、測定領域中の蛍光物質が溶媒と共
に流れている場合や、蛍光物質が電気泳動により移動す
る場合においては、その流れや移動が蛍光物質の並進拡
散運動に与える影響を無視することができない。このよ
うな場合にも、新たなモデル条件に対応した新たな自己
相関関数が必要となるが、パラメータの個数が多くなる
等の理由により、自己相関関数を解析的に求めるのは困
難である。
【0022】本発明は、上記問題点を解消する為になさ
れたものであり、測定領域の実効的な形状や大きさ等に
基づく自己相関関数を解析的に求めることなく、FCS
法を用いて容易に2成分系の蛍光物質の並進拡散運動を
解析することができる解析方法および解析装置を提供す
ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明に係る解析方法
は、蛍光性の第1の物質と第2の物質とが混合された被
測定試料を自己相関蛍光分光法を用いて解析する解析方
法であって、(1) 第1の物質に励起光を照射して発生し
た蛍光の強度の経時変化の自己相関を基準波形として取
得する基準波形取得ステップと、(2) 基準波形取得ステ
ップにおける光学系と同一の光学系を用い、被測定試料
に励起光を照射して発生した蛍光の強度の経時変化の自
己相関を観測波形として取得する観測波形取得ステップ
と、(3) 基準波形を時間軸方向に所定の倍率だけ拡大ま
たは縮小して相似波形を作成する相似波形作成ステップ
と、(4) 基準波形および相似波形それぞれの振幅および
オフセットならびに第1の物質と第2の物質との成分比
率を仮定し、この仮定の下で基準波形と相似波形とを加
重平均して平均波形を作成し、観測波形と平均波形との
間の残差二乗和を求め、この残差二乗和が最小値となる
ような基準波形および相似波形それぞれの振幅およびオ
フセットならびに成分比率を探索する探索ステップと、
を備え、相似波形作成ステップにおける倍率の各値それ
ぞれについて相似波形作成ステップおよび探索ステップ
を行って残差二乗和の最小値を求め、倍率の各値に対し
て残差二乗和の最小値が最小になる条件を求め、この条
件に基づいて被測定試料を解析することを特徴とする。
【0024】この解析方法によれば、基準波形取得ステ
ップにおいて、第1の物質から発生した蛍光の強度の経
時変化の自己相関を基準波形として取得する。また、観
測波形取得ステップにおいて、第1の物質と第2の物質
とが混合された被測定試料から発生した蛍光の強度の経
時変化の自己相関を観測波形として取得する。基準波形
取得ステップにおける光学系と観測波形取得ステップに
おける光学系とは互いに同一である。相似波形作成ステ
ップにおいて、基準波形を時間軸方向に所定の倍率だけ
拡大または縮小して相似波形を作成する。また、探索ス
テップにおいて、基準波形および相似波形それぞれの振
幅およびオフセットならびに第1の物質と第2の物質と
の成分比率を仮定し、この仮定の下で基準波形と相似波
形とを加重平均して平均波形を作成し、観測波形と平均
波形との間の残差二乗和を求め、この残差二乗和が最小
値となるような基準波形および相似波形それぞれの振幅
およびオフセットならびに成分比率を探索する。そし
て、相似波形作成ステップにおける倍率の各値それぞれ
について相似波形作成ステップおよび探索ステップを行
って残差二乗和の最小値を求め、倍率の各値に対して残
差二乗和の最小値が最小になる条件を求め、この条件に
基づいて被測定試料を解析する。
【0025】本発明に係る解析装置は、蛍光性の第1の
物質と第2の物質とが混合された被測定試料を自己相関
蛍光分光法を用いて解析する解析装置であって、(1) 被
測定試料に励起光を照射する励起光照射手段と、(2) 被
測定試料から発生した蛍光を検出する蛍光検出手段と、
(3) 蛍光検出手段により検出された蛍光の強度の経時変
化の自己相関を観測波形として取得し、励起光照射手段
により第1の物質に励起光を照射した際に蛍光検出手段
により検出された蛍光の強度の経時変化の自己相関を基
準波形として取得し、基準波形を時間軸方向に所定の倍
率だけ拡大または縮小して相似波形を作成し、基準波形
および相似波形それぞれの振幅およびオフセットならび
に第1の物質と第2の物質との成分比率を仮定し、この
仮定の下で基準波形と相似波形とを加重平均して平均波
形を作成し、観測波形と平均波形との間の残差二乗和を
求め、この残差二乗和が最小値となるような基準波形お
よび相似波形それぞれの振幅およびオフセットならびに
成分比率を探索し、倍率の各値それぞれについて残差二
乗和の最小値を求め、倍率の各値に対して残差二乗和の
最小値が最小になる条件を求め、この条件に基づいて被
測定試料を解析する解析手段と、を備えることを特徴と
する。
【0026】この解析装置によれば、励起光は励起光照
射手段により被測定試料に照射され、被測定試料から発
生した蛍光は蛍光検出手段により検出される。そして、
解析手段では、前述した解析方法に従って被測定試料の
解析が行われる。
【0027】なお、例えば、第1の物質は、フリー状態
にある蛍光プローブであり、第2の物質は、この蛍光プ
ローブと他の物質とが結合したものである。また、例え
ば、第1および第2の物質それぞれは、互いに異なる種
類の蛍光物質であってもよい。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態を詳細に説明する。尚、図面の説明におい
て同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省
略する。
【0029】図1は、本実施形態に係る解析装置の構成
図である。この解析装置は、励起光源部1、蛍光顕微鏡
2、光検出部3、レコーダ4および解析部5を備えて構
成されている。励起光源部1は、測定領域中の蛍光物質
を励起し得る波長の励起光を出力するものであり、レー
ザ光源が好適に用いられる。蛍光顕微鏡2は、励起光源
部1から出力された励起光を入力し、その励起光を測定
領域に照射して測定領域中の蛍光物質を励起するととも
に、その蛍光物質から発生した蛍光を外部に出力する。
蛍光顕微鏡2は、光学顕微鏡を用いたレーザスポット励
起法と共焦点光学系とを組み合わせた超高感度蛍光検出
技術を駆使したものであり、その詳細な構成例について
は後述する。光検出部3は、蛍光顕微鏡2から出力され
た蛍光の強度を検出し、レコーダ4は、光検出部3によ
り検出された蛍光の強度の経時変化を記憶する。そし
て、解析部5は、レコーダ4により記憶された蛍光の強
度の経時変化の自己相関を算出し、その自己相関に基づ
いて測定領域中の蛍光物質の並進拡散運動を解析する。
なお、自己相関関数を解析的に求める必要はない。
【0030】例えば、この解析装置を使用して抗原抗体
反応における結合効率を求めようとする場合、蛍光標識
された抗原を蛍光プローブとし、この蛍光プローブと抗
体とを混ぜ、測定領域中の蛍光プローブの並進拡散運動
を解析する。この場合、解析部5においては、蛍光プロ
ーブと抗体とが混ぜ合わされた試料から発生した蛍光の
自己相関値が算出されるが、この自己相関値は、抗体に
結合していないフリー状態にある蛍光プローブから発生
した蛍光の自己相関と、抗体に結合している蛍光プロー
ブから発生した蛍光の自己相関との和、すなわち、2成
分系の自己相関の和となる。そこで、このような2成分
系である試料を以下のようにして解析する。
【0031】図2は、本実施形態に係る解析方法を説明
するフローチャートである。初めにステップS1では、
フリー状態にある蛍光物質(例えば、蛍光標識された抗
原)から発生した蛍光の自己相関値を求め、これを基準
波形とする。すなわち、フリー状態にある蛍光物質のみ
を含む試料を蛍光顕微鏡2内の測定領域中に置き、励起
光源部1から出力された励起光を測定領域中の試料に照
射し、試料から発生した蛍光を光検出部3により検出
し、その蛍光の強度の経時変化をレコーダ4により記憶
する。そして、解析部5により、この蛍光の強度の経時
変化に基づいて、フリー状態にある蛍光物質から発生し
た蛍光の自己相関値を求め、これを基準波形とする。
【0032】ステップS2では、蛍光物質と他の物質
(例えば、蛍光標識された抗原と特異的に反応する抗
体)とが混ぜ合わされた2成分系の試料から発生した蛍
光の自己相関値を求め、これを観測波形とする。すなわ
ち、蛍光物質と他の物質とが混ぜ合わされた2成分系の
試料を蛍光顕微鏡2内の測定領域中に置き、励起光源部
1から出力された励起光を測定領域中の試料に照射し、
試料から発生した蛍光を光検出部3により検出し、その
蛍光の強度の経時変化をレコーダ4により記憶する。そ
して、解析部5により、この蛍光の強度の経時変化に基
づいて、2成分系である試料から発生した蛍光の自己相
関値を求め、これを観測波形とする。以下では、ステッ
プS1で取得された基準波形およびステップS2で取得
された観測波形に基づいて、蛍光物質と他の物質との反
応を解析する。
【0033】ステップS3では、ステップS1で取得さ
れた基準波形に基づいて相似波形を作成する。すなわ
ち、基準波形を横軸(時間軸)方向に所定の倍率だけ拡
大または縮小して、その自己相関値を観測波形のサンプ
リング時刻に対応するように補間し、これを相似波形と
する。このようにして作成された相似波形は、他の物質
に結合している蛍光物質から発生する蛍光の自己相関を
仮定したものである。したがって、測定領域中における
蛍光物質の平均滞在時間(自己相関値が1/2となる時
間)を考慮し、基準波形と比較し観測波形の方が大きい
場合、観測波形よりも等しいか大きくなるように相似波
形は拡大され、逆に基準波形と比較し観測波形の方が小
さい場合、観測波形よりも等しいか小さくなるように相
似波形は縮小され、基準波形を1とした相似波形が所定
の倍率により作成される。また相似波形と観測波形とが
互いに等しい場合は、基準波形の成分が観測波形に存在
していないことを意味する。
【0034】ステップS4では、ステップS1で取得さ
れた基準波形、ステップS2で取得された観測波形およ
びステップS3で作成された相似波形に基づいて、基準
波形の振幅およびオフセット、相似波形の振幅およびオ
フセット、ならびに、フリー状態にある蛍光物質と他の
物質に結合している蛍光物質との成分比率を探索する。
すなわち、基準波形および相似波形それぞれの振幅およ
びオフセットならびに成分比率を仮定し、この仮定の下
で基準波形と相似波形とを加重平均して、これを平均波
形とする。この平均波形は、蛍光物質と他の物質とが混
ぜ合わされて、フリー状態にある蛍光物質と他の物質に
結合している蛍光物質とが上記成分比率にある試料から
発生する蛍光の自己相関を仮定したものである。そし
て、観測波形と平均波形との間の残差二乗和を求め、こ
の残差二乗和が最小値となるような基準波形および相似
波形それぞれの振幅およびオフセットならびに成分比率
を探索する。ここで、残差二乗和が最小値となる解を探
索するに際して、シンプレックス法や非線形最小二乗法
であるガウスニュートン法を用いるのが好適である。
【0035】そして、ステップS3において基準波形か
ら相似波形を作成する際の倍率の各値それぞれについて
ステップS3およびステップS4を行い、倍率の各値に
おける残差二乗和の最小値を求め、倍率の値に対して残
差二乗和の最小値が最小になる条件を求める。残差二乗
和の最小値が最小となるときの相似波形は、他の物質に
結合している蛍光物質から発生する蛍光の自己相関を推
定するものであり、この相似波形に基づいて、他の物質
に結合している蛍光物質の並進拡散運動を解析すること
ができる。また、残差二乗和の最小値が最小となるとき
の成分比率は、試料中の測定領域におけるフリー状態に
ある蛍光物質と他の物質に結合している蛍光物質との成
分比率である。
【0036】図3は、本実施形態に係る解析方法を説明
するグラフである。このグラフでは、黒三角印は、図2
で説明したステップS1で取得された基準波形、すなわ
ち、フリー状態にある蛍光物質から発生した蛍光の自己
相関値を示している。実線は、ステップS2で取得され
た観測波形、すなわち、蛍光物質と他の物質とが混ぜ合
わされた2成分系の試料から発生した蛍光の自己相関値
を示している。基準波形および観測波形それぞれは縦軸
(相関軸)に関して規格化されている。黒四角印は、ス
テップS3で作成された相似波形、すなわち、基準波形
を横軸(時間軸)方向に所定の倍率だけ拡大または縮小
したものを示している。また、白四角印は、ステップS
4で計算された平均波形、すなわち、基準波形および相
似波形それぞれの振幅およびオフセットならびに成分比
率を仮定して、この仮定の下で基準波形と相似波形とを
加重平均したものを示している。
【0037】ステップS3における倍率を種々変更し
て、ステップS3およびステップS4を繰り返して行
い、ステップS4で求められた観測波形と平均波形との
間の残差二乗和の最小値が最小になるような相似波形を
求めた。このようにして最終的に得られた相似波形およ
び平均波形が図3に示されている。この図に示した例で
は、蛍光物質の47%が他の物質に結合し、フリー状態
にある蛍光物質と他の物質に結合している蛍光物質との
成分比率は53:47であると推定される。また、他の
物質に結合している蛍光物質の並進拡散定数は、フリー
状態にある蛍光物質の並進拡散定数の9.5倍大きいと
推定される。また、このようにして求められた他の物質
に結合している蛍光物質の並進拡散定数の変化は、成分
比率の精度の目安となり、他の方法による測定結果との
比較の基準となる。
【0038】なお、上記の実施形態の説明では蛍光物質
とこれに結合し得る他の物質との反応を解析する場合を
例にして説明したが、これに限られるものではない。本
実施形態に係る解析方法および解析装置は、単に2種類
の蛍光物質を比較して、基準となる蛍光物質に対し比較
される蛍光物質の並進拡散運動や濃度を解析することも
できる。この場合、何れか一方の蛍光物質から発生した
蛍光の自己相関波形を基準波形とし、被測定試料から発
生した蛍光の自己相関波形を観測波形として、その観測
波形に基づいて、被測定試料中の蛍光物質の並進拡散定
数の大小や濃淡などを解析することができ、互いに異な
る種類の蛍光物質それぞれを厳密に識別することができ
る。
【0039】また、上記実施形態の説明では蛍光顕微鏡
2の測定視野中に測定領域を形成したが、これに限られ
るものではない。蛍光強度の揺らぎが測定領域に出入り
する蛍光物質に由来したものであり、測定領域における
蛍光物質の平均滞在時間を充分評価することができる自
己相関を算出することができるものであれば、如何なる
光学系により測定領域を形成してもよい。例えば、光フ
ァイバを組み合わせることにより測定領域を形成し、そ
の測定領域において蛍光物質が他の物質に結合するか否
かを評価することができる。
【0040】以上のように、本実施形態に係る解析方法
および解析装置によれば、測定領域の実効的な形状や大
きさ等に基づく自己相関関数を解析的に求める必要がな
く、測定領域の形状や大きさを知る必要もない。測定領
域の形状や大きさは、任意に設定することができ、可変
とすることもでき、例えば、試料に照射される励起光の
形状をスリット状にして測定領域を一方向に長い形状の
ものとすることもできる。
【0041】また、光学系のアライメントの調整が不充
分である場合には測定領域の形状が理想状態とは異なる
ものとなるが、本実施形態では、フリー状態にある蛍光
物質から発生した蛍光の自己相関(基準波形)および蛍
光物質と他の物質とが混ぜ合わされている試料から発生
した蛍光の自己相関(観測波形)を互いに同一の光学系
を介して計測するので、光学系のアライメントの状態に
依存することなく、反応の解析を行うことができ、結合
効率や結合後の並進拡散定数を測定することができる。
これは、測定中において形成される測定領域は、そこを
通過または滞在する蛍光物質に対して常に固定されてい
るので、アライメントの変動により異なる光学系になっ
たとしても、測定領域における蛍光物質の平均滞在時間
の比較は並進拡散定数のみに依存するからである。
【0042】また、本実施形態に係る解析方法および解
析装置は、多光子励起法により測定領域中の蛍光物質を
励起した場合であっても好適に用いられる。多光子励起
法により蛍光物質を励起する場合には、試料に照射され
る励起光の強度分布はガウス分布にならず複雑な分布と
なるので、自己相関関数を解析的に求めることは極めて
困難であり、従来法により解析することはできない。し
かし、本実施形態では、測定中において形成される測定
領域は、そこを通過または滞在する蛍光物質に対して常
に固定されているので、測定領域における蛍光物質の平
均滞在時間の比較は並進拡散定数のみに依存する。した
がって、測定領域の形状および大きさが判らなくても、
FCS法により解析することができる。
【0043】さらに、本実施形態に係る解析方法および
解析装置は、測定領域中の蛍光物質が溶媒と共に流れて
いる場合や、蛍光物質が電気泳動により移動する場合で
あっても、相似波形の作成に際して、移動速度の影響を
考慮して自己相関値を補正することにより、並進拡散運
動を評価することができる。
【0044】以下では、本実施形態に係る解析装置のよ
り具体的な構成例とともに解析例について説明する。
【0045】(第1実施例)先ず、第1実施例について
説明する。図4は、第1実施例に係る解析装置の一部構
成図である。なお、この図ではレコーダ4および解析部
5は示されていない。
【0046】本実施例では、励起光源部1は、レーザダ
イオード(LD)励起Nd:YAGレーザ光源11、ス
タビライザ12、ミラー13およびコリメータ光学系1
4を備えて構成されている。LD励起Nd:YAGレー
ザ光源11は、波長532nmで強度50mWの励起光
を出力するものであり、コヒーレント社製DPSS53
2−50が用いられた。スタビライザ12は、LD励起
Nd:YAGレーザ光源11から出力された励起光を入
力し、その励起光のDC強度を安定化して出力するもの
であり、コンオプティクス社製LASS−2が用いられ
た。コリメータ光学系14は、スタビライザ12から出
力されミラー13により反射された励起光を入力し、そ
の励起光の光強度分布を整形し、また、その励起光の光
束径を適正化して、平行光束として出力する。このコリ
メータ光学系14から出力された励起光は蛍光顕微鏡2
に入力する。
【0047】蛍光顕微鏡2は、励起フィルタ21、ダイ
クロイックミラー22、レンズ23、対物レンズ24、
レンズ25、脱着式ミラー26および接眼レンズ27を
備えて構成される倒立顕微鏡であり、ニコン社製TMD
−300−EFが用いられた。励起フィルタ21は、励
起光の波長532nm成分を透過させ他の波長成分を遮
断する。ダイクロイックミラー22は、励起光を反射さ
せ蛍光を透過させるものであり、朝日分光社製のものが
用いられた。対物レンズ24は、ダイクロイックミラー
22により反射されレンズ23を経て入力した励起光を
試料6の測定領域に集光照射するとともに、その試料6
の測定領域中の蛍光物質から発生した蛍光を入力してレ
ンズ23へ向けて出力するものであり、ニコン社製の倍
率40倍で水浸型のものが用いられた。脱着式ミラー2
6は、着脱自在のものであり、装着されているときに
は、試料6の測定領域中の蛍光物質から発生して対物レ
ンズ24、レンズ23、ダイクロイックミラー22およ
びレンズ25を経て到達した蛍光を、蛍光顕微鏡2から
光検出器3へと導くものである。一方、脱着式ミラー2
6を外すことにより、試料6の状態または励起光の集光
照射状態を接眼レンズ27を介して観察することができ
る。
【0048】なお、対物レンズ24により試料6に集光
照射された励起光は、強度分布がガウス分布であって、
そのスポット径すなわち試料6における測定領域の径が
1μm以下とされた。励起光のスポット径は、対物レン
ズ24の開口数および対物レンズ24に入力する励起光
の光束径により決定されるので、コリメータ光学系14
により調整された励起光の光束径および強度分布により
決まる。
【0049】光検出部3は、ピンホール31、レンズ3
2、バリアフィルタ33および光電子増倍管34を備え
て構成される。ピンホール31は、試料6から発生した
蛍光が蛍光顕微鏡2により結像される位置に配されてお
り、対物レンズ24により試料6に集光照射された励起
光のスポット径に合わせてピンホール31の開口径は5
0μmとされ、試料6における測定領域から発生した蛍
光のみを光電子増倍管34へ導くようにした。試料6中
の測定領域からピンホール31に到るまでの光学系は共
焦点光学系を構成している。このように共焦点光学系を
採用することにより、対物レンズ24の焦点位置(すな
わち、試料6中の測定領域)以外から発生した蛍光や背
景光を効率的に除去することができる。
【0050】レンズ32は、ピンホール31を通過した
蛍光を入力して平行光束とする。バリアフィルタ33
は、レンズ32から出力された蛍光の波長成分を透過さ
せ、励起光の波長成分を遮断するものであり、ニコン社
製BP550−650が用いられた。光電子増倍管34
は、バリアフィルタ33を透過した蛍光を入力し、その
蛍光を光子計数法により検出して光電子パルスを出力す
るものであり、浜松ホトニクス社製のGaAs光電面を
有する光電子増倍管R943−02が用いられた。この
光電子増倍管34は、アバランシェフォトダイオードと
比べると量子効率が劣るものの、ダークノイズを低減す
ることが可能で、カウントレートおよびノイズ特性が優
れている。
【0051】レコーダ4は、光電子増倍管34から出力
された光電子パルスを入力して、蛍光強度の時間的変動
を記録する。このレコーダ4として、EG&G社製マル
チチャンネルスケーラ(multi-channel scaler)Tur
bo−MCSが用いられた。このマルチチャンネルスケ
ーラは、光電子増倍管34からランダムに出力される光
電子パルスを任意の時間幅(ビン幅)毎に計数し、その
ビン幅毎に計数された光電子パルス数を経時的に記録す
るものであり、極微弱な蛍光の強度の時間的変動を測定
するのに好適なものである。
【0052】解析部5として、パーソナルコンピュータ
が用いられた。解析部5は、レコーダ4により記録され
た蛍光強度の時間的変動に関するデータを入力し、
【数2】 なる式に従って蛍光強度の時間的変動の自己相関を算出
する。ここで、Fは、レコーダ4により記録された蛍光
強度の時間的変動を表す関数であり、δFは、平均蛍光
強度に対する蛍光強度の揺らぎであり、<>は、平均を
求める演算子を表す。なお、本実施例では、解析部5
は、レコーダ4であるマルチチャンネルスケーラにより
記録された蛍光強度の時間的変動に関するデータを直接
に演算し、ベースラインが1となる自己相関を算出し
た。
【0053】以上説明した本実施例に係る解析装置で
は、対物レンズ24の焦点位置に測定領域が形成され、
その測定領域に存在する蛍光物質の個数に応じた強度の
蛍光が測定される。測定領域の実効的な半径w0 は0.
4μmであり、測定領域の実効的な軸長z0 は1.9μ
mであると見積もられた。測定領域の容積はおよそ1.
3fl(1.3×10-15 l)程度となる。したがっ
て、蛍光物質のモル濃度が10-8Mである場合、測定領
域内に存在する蛍光物質の平均個数はおよそ8個と計算
され、この蛍光物質の平均個数に応じた蛍光強度の揺ら
ぎが観測される。
【0054】測定領域がガラス面から100μm程度離
れた位置となるよう対物レンズ24の焦点合わせを行
い、この焦点面における励起光照射強度は最大で60m
W/cm2 とした。この励起光照射強度は、対物レンズ
24から出射される励起光の強度500μWに相当す
る。フォトブリーチングの発生を抑制し、光電子増倍管
34が飽和状態になるのを回避するために、NDフィル
タを挿入して、試料6の濃度に応じて励起光強度を段階
的に減衰できるようにした。
【0055】レコーダ4であるマルチチャンネルスケー
ラによる光電子パルスの計数は、ビン幅を50μsと
し、1回の測定につき16384チャンネルとして、こ
の測定を100回繰り返し行った。全測定時間は82秒
であった。ビン幅の設定に際しては、測定領域に蛍光物
質が滞在する時間の平均値が目安となる。例えば、蛍光
物質が Rhodamine 6G である場合、並進拡散定数Dは3
×10-6cm2 /sであるので、測定領域における平均
滞在時間は130μs程度となり、したがって、正確な
自己相関を得るためにはビン幅を50μs以下とする必
要がある。なお、平均滞在時間は、自己相関値が1/2
となる時間であり、蛍光物質の並進拡散運動の目安とな
るパラメータである。
【0056】次に、本実施例に係る解析装置により蛍光
標識抗原と抗体との結合能力を評価した結果について説
明する。
【0057】蛍光標識抗原は以下のようにして調整され
た。抗原として、アンギオテンシンII(アスパラギン
酸−アルギニン−バリン−チロシン−イソロイシン−ヒ
スチジン−プロリン−フェニルアラニン、 Asp-Arg-Val
-Tyr-Ile-His-Pro-Phe、 Sigma社製)を用い、これを濃
度0.1Mの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
(2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid 、MES)の
NaOH緩衝液(pH6)に溶解し、濃度1mMとし
た。蛍光物質として、5−カルボキシテトラメチルロー
ダミン−スクシンイミジルエステル(Molecular Probes
社製)を用い、これをジメチルホルムアミドに溶解し、
濃度25mMとした。アンギオテンシンII溶液151
6μlに対して、5−カルボキシテトラメチルローダミ
ン−スクシンイミジルエステル溶液を379μlずつ加
え、温度27℃で一昼夜に亘って反応させた。この反応
溶液に濃度1MのTris−HCl緩衝液(pH8)を
3790μl加えて反応を停止させた。
【0058】蛍光標識されたアンギオテンシンIIは、
高速液体クロマトグラフィにより分離精製された。高速
液体クロマトグラフィに際しては、カラムはTSKge
lODS−80Ts(内径4.6mm、全長25cm、
東ソー社製)およびTSKguardgel ODS−
80Ts(内径3.2mm、全長1.5cm、東ソー社
製)であり、移動相は5%〜55%アセトニトリル勾配
−0.1%トリフルオロ酢酸であり、流速は1ml/分
であり、検出波長は280nmであった。
【0059】分離精製された蛍光標識アンギオテンシン
IIは、目的とするピークが分取された後、使用するま
で乾固した状態で温度−20℃で保存された。目的とす
るピークは、飛行時間型質量分析装置を用いた分子量測
定結果、および、ゲル等電点電気泳動による等電点測定
結果に基づいて、アンギオテンシンIIのN端末α−ア
ミノ基に5−カルボキシテトラメチルローダミン−スク
シンイミジルエステルが1分子だけ結合したものである
ことを確認した。
【0060】ゲル等電点電気泳動による等電点の測定の
際の条件は以下のとおりである。分離精製された蛍光標
識アンギオテンシンIIは、Ampholine PAG Plate (p
H3.5〜pH9.5、5%T、3%C、24.5mm
×110mm×厚1mm、ファルマシアバイオテク社
製)を用いて等電点電気泳動を行い、等電点電気泳動用
マーカ(pIカリブレーションキット3−10、ファル
マシアバイオテク社製)との間で移動度を比較した。電
気泳動開始時の電圧を300Vとし、開始後30分に電
圧を1500Vとし、さらにその後50分間電気泳動さ
せた。電気泳動終了後、蛍光標識アンギオテンシンII
については、オレンジ色のフィルタを介して紫外線を照
射することにより写真撮影を行って泳動位置を確認し
た。等電点電気泳動用マーカについては、ベージブルー
83染色液(CBB−R250、第一化学薬品社製)で
ゲルを染色した後、メタノールと酢酸との水溶液により
バックグラウンドを除去することにより、泳動位置を確
認した。蛍光標識アンギオテンシンIIの泳動位置と等
電点電気泳動用マーカの泳動位置とを比較して、蛍光標
識アンギオテンシンIIの等電点を測定した。
【0061】そして、この測定値と文献(Shimura,K.,
et al., Electrophoresis, Vol.16,pp.1479-1484 (199
5)、または、特開平9−171020号公報)に記載さ
れた値とを比較することにより、アンギオテンシンII
のN端末α−アミノ基に5−カルボキシテトラメチルロ
ーダミン−スクシンイミジルエステルが1分子だけ結合
したものであることを確認した。なお、濃度は波長54
6nm(ε=63,000)の吸光度から求めた。
【0062】この蛍光標識抗原(蛍光標識アンギオテン
シンII)と特異的に結合するモノクローナル抗体は、
以下のようにして調整された。まず、60μg/0.3
mlに調整したアンギオテンシンII抗原液にアジュバ
ントを1:1の比で加え、2本のガラス製注射器を用い
て十分に乳化した。この乳化した乳液を注射針27Gを
用いてBalb/cマウスの皮下・皮内に注射し、その
後、7日毎に1回ずつ計4回免疫を行った。4回免疫
後、尾静脈から少量採血し、抗体力価を測定した。抗体
力価の測定は、マイクロタイタープレートへアンギオテ
ンシンIIを50ng/well固相化した酵素免疫測
定法(EIA)により行った。
【0063】抗体力価が上昇したBalb/cマウスの
脾臓細胞を、常法に従って培養マウス骨髄細胞X−63
Age8と細胞融合し、スクリーニングを行った。そ
の後、1次クローニングを行い、更に2次クローニング
を行って、最終的に3種類のクローンを得た。得られた
クローンのうち1種類のクローン(54B1)を大量培
養し、培養上清よりプロテインAカラム(ファルマシア
バイオテク社製)を用いたアフィニティクロマトグラフ
ィによりIgG画分を精製した。精製したIgG画分
は、Immuno Pure IgG1 Fab and F(ab')2 Preparation K
it(PIERCE社製)を用い、反応時間を5時間としてプロ
トコールに従ってFabフラグメントの取得(Fab
化)を行った。
【0064】Fab化された抗体(Fab化抗体)は、
高速水系ゲル濾過カラム(TSKgel G3000S
WXL、東ソー社製)を用いたHPLCにより分子量分
画を行った後、非還元状態にてSDS−ポリアクリルア
ミド電気泳動により純度を検定するとともに、DC Pro
tein Assay( Bio-Rad社製)を用いてタンパク量の測定
を行った。Fab化抗体は、その分子量(50,00
0)およびタンパク量の測定結果より濃度を測定した。
【0065】蛍光標識抗原(蛍光標識アンギオテンシン
II)と抗体(Fab化抗アンギオテンシンIIモノク
ローナル抗体)との反応の測定は以下のように行われ
た。蛍光標識抗原と抗体とのモル比に起因した両者の衝
突の頻度と両者の結合能力との関係を調べるため、蛍光
標識抗原と抗体とのモル比を1:0、1:50、1:1
00および1:200それぞれとし、何れの場合も蛍光
標識抗原の終濃度を4.14×10-9Mとなるよう調整
した Dulbecco's PBS(-)溶液を作製した。この溶液を遮
光し温度37℃にて30分間インキュベートした後、そ
の一部を採取してカバーガラス上に滴下して、図4で説
明した解析装置により測定を行った。
【0066】図5は、蛍光標識抗原(蛍光標識アンギオ
テンシンII)と抗体(Fab化抗アンギオテンシンI
Iモノクローナル抗体)との結合状態を測定して得られ
た自己相関波形を示すグラフである。このグラフにおい
て、自己相関波形p1は、蛍光標識抗原と抗体とのモル
比を1:0とした場合、すなわち、蛍光標識抗原だけの
1成分の場合のものである。この自己相関波形p1は、
抗体に結合していないフリー状態にある蛍光標識抗原の
並進拡散定数を反映している。自己相関波形s1は、蛍
光標識抗原と抗体とのモル比を1:200とした場合の
ものである。自己相関波形s3は、蛍光標識抗原と抗体
とのモル比を1:100とした場合のものである。ま
た、自己相関波形s5は、蛍光標識抗原と抗体とのモル
比を1:50とした場合のものである。これら自己相関
波形s1,s3およびs5それぞれは、抗体に結合して
いないフリー状態にある蛍光標識抗原と抗体に結合して
いる蛍光標識抗原との間の成分比率およびそれぞれの並
進拡散定数を反映している。
【0067】図6は、本実施例に係る解析装置により解
析した結果を示すグラフである。このグラフの横軸は蛍
光標識抗原に対する抗体のモル比率であり、縦軸は蛍光
標識抗原が抗体に結合した比率である。また、このグラ
フでは、白四角印は、本実施例に係る解析装置により解
析した結果を示し、黒三角印は、 (1)式を用いた従来法
に従って解析した結果を示している。 このグラフから
判るように、蛍光標識抗原に対する抗体のモル比率が大
きいほど、蛍光標識抗原が抗体に結合する比率が大きく
なり、蛍光標識抗原に対する抗体のモル比率が200倍
であるときには、蛍光標識抗原が抗体に結合する比率は
略100%となっている。また、蛍光標識抗原に対する
抗体のモル比率が100倍および200倍それぞれの場
合には、本実施例に係る解析装置により解析した結果
は、 (1)式を用いた従来法に従って解析した結果と良く
一致している。しかし、蛍光標識抗原に対する抗体のモ
ル比率が50倍の場合には、測定誤差の影響により両者
の間の差が大きい。
【0068】また、従来法に従った解析によれば、抗体
に結合していないフリー状態にある蛍光標識抗原の測定
領域における平均滞在時間は0.26msであり、抗体
に結合している蛍光標識抗原の測定領域における平均滞
在時間は0.69msであり、蛍光標識抗原が抗体に結
合することにより平均滞在時間は2.63倍になった。
一方、本実施例に係る解析装置による解析によれば、蛍
光標識抗原が抗体に結合することにより平均滞在時間は
2.60倍になった。したがって、本実施例に係る解析
装置による解析は、自己相関の解析に関し、従来法に従
った解析と差異がない。
【0069】(第2実施例)次に、第2実施例について
説明する。本実施例に係る解析装置の構成は、図1およ
び図4で説明したものと同じである。本実施例では、R-
Phycoerythrin と抗R-Phycoerythrin 抗体との反応性を
評価した結果について説明する。
【0070】蛍光性の抗原であるR-Phycoerythrin (Mo
lecular Probes社製)は、Hi-TrapDesalting Column
(ファルマシアバイオテク社製)を用いて Dulbecco's
PBS(-)にて脱塩した後、最終的に Dulbecco's PBS(-)溶
液として使用した。濃度は、波長565nm(ε=1,
960,000)の吸光度より求めた。一方、抗R-Phyc
oerythrin ポリクローナル抗体(1mg/ml、 biome
da社製)は、 Dulbecco's PBS(-)で稀釈して用いた。
【0071】R-Phycoerythrin と抗R-Phycoerythrin 抗
体との反応の測定は以下のように行われた。R-Phycoery
thrin と抗R-Phycoerythrin 抗体(分子量15,00
0)とのモル比を1:0、1:1.6 、1:0.8 、1:0.
4 および1:0.2 それぞれとし、何れの場合も R-Phyco
erythrinの終濃度を2.1×10-7Mとなるよう調整し
た。この溶液を遮光し室温にて30分間インキュベート
した後、その一部を採取してカバーガラス上に滴下し
て、図4で説明した解析装置により測定を行った。
【0072】図7は、抗原(R-Phycoerythrin )と抗体
(抗R-Phycoerythrin 抗体)との結合状態を測定して得
られた自己相関波形を示すグラフである。このグラフに
おいて、自己相関波形b1は、抗原と抗体とのモル比を
1:0とした場合、すなわち、抗原だけの1成分の場合
のものである。この自己相関波形b1は、抗体に結合し
ていないフリー状態にある抗原の並進拡散定数を反映し
ている。自己相関波形s4は、抗原と抗体とのモル比を
1:1.6 とした場合のものである。自己相関波形s5
は、抗原と抗体とのモル比を1:0.8 とした場合のもの
である。自己相関波形s6は、抗原と抗体とのモル比を
1:0.4 とした場合のものである。また、自己相関波形
s7は、抗原と抗体とのモル比を1:0.2 とした場合の
ものである。これら自己相関波形s4,s5,s6およ
びs7それぞれは、抗体に結合していないフリー状態に
ある抗原と抗体に結合している抗原との間の成分比率お
よびそれぞれの並進拡散定数を反映している。
【0073】図8は、本実施例に係る解析装置により解
析した結果を示すグラフである。このグラフの横軸は抗
原に対する抗体のモル比率であり、縦軸は抗原が抗体に
結合した比率である。このグラフから判るように、抗原
に対する抗体のモル比率が大きいほど、抗原が抗体に結
合する比率が大きくなり、抗原に対する抗体のモル比率
が1.6倍であるときには、抗原が抗体に結合する比率
は略100%となっている。また、本実施例に係る解析
装置による解析によれば、抗原が抗体に結合することに
より平均滞在時間は5倍になった。
【0074】(第3実施例)次に、第3実施例について
説明する。図9は、第3実施例に係る解析装置の一部構
成図である。なお、この図ではレコーダ4および解析部
5は示されていない。本実施例に係る解析装置は、図4
で説明したものと比較すると略同様の構成であるが、励
起光源部1と蛍光顕微鏡2との間にシリンドリカルレン
ズ15およびレンズ16を設けた点、および、光検出部
3においてピンホール31に替えてスリット35を設け
た点で異なる。
【0075】本実施例では、励起光源部1から平行光束
として出力された励起光は、シリンドリカルレンズ15
およびレンズ16によりスリット状の光束とされた後、
蛍光顕微鏡2に入力し、励起フィルタ21、ダイクロイ
ックミラー22、レンズ23および対物レンズ24を経
て試料6に照射される。試料6に照射される励起光の形
状はスリット状であり、測定領域は一方向に長い形状の
ものとなる。試料6中の測定領域で発生した蛍光は、対
物レンズ24、レンズ23、ダイクロイックミラー2
2、レンズ25および脱着式ミラー26を経て、蛍光顕
微鏡2から出力され、光検出部3へ入力する。光検出部
3に入力した蛍光は、スリット35、レンズ32および
バリアフィルタ34を経て、光電子増倍管34により検
出される。ここで、スリット35の開口の長軸方向の長
さおよび幅それぞれは、測定領域の形状に応じて設定さ
れる。
【0076】このような構成とすることにより、試料6
中の測定領域を一方向に長い形状のものとすることがで
きる。したがって、本実施例に係る解析装置は、測定領
域中の蛍光物質が溶媒と共に流れている場合や、蛍光物
質が電気泳動により移動する場合のように、蛍光物質の
移動度が或る一方向に偏っているときに好適に用いられ
る。すなわち、測定領域を流れる蛍光物質が大量である
場合には、測定領域は微小であってもよいが、測定領域
を流れる蛍光物質が少量である場合には、測定領域を蛍
光物質の移動方向に長い形状とすることにより、蛍光物
質が検出される頻度を向上させることができる。
【0077】従来法においては、蛍光物質の移動度が或
る一方向に偏っているときの自己相関関数G(τ)は、
互いに直交する2方向それぞれの流速をvx およびvy
とすると、
【数3】 なる式で表される。これに対して、本実施例に係る解析
装置による解析では、測定領域の形状および大きさを知
ることなく、また、測定領域の形状および大きさに依存
した自己相関関数を解析的に求めることなく、2成分系
の自己相関を解析することができる。
【0078】これは、並進拡散運動の場合と同様に、流
速に対する自己相関関数G(τ)も、測定中の測定領域
に対し決まるものであり、この測定領域は常に固定され
ているために可能となる。しかし、図2で説明したステ
ップS3で基準波形から相似波形を作成する際に、並進
拡散運動に応じた自己相関の作成を行っているため、流
速に対する測定領域についての補正を必要とする。すな
わち、相似波形の作成の度に自己相関値を指数関数で補
正することにより解析される。
【0079】例えば電気泳動のような移動速度の影響が
小さい場合、そのピークが分離できない場合において
も、相似波形の形成の際に1次の指数関数で自己相関値
の補正を行い、本解析法における並進拡散運動を評価す
ることにより、1成分または2成分の識別が行える。ま
た、1方向の流速により2成分である物質が互いに等し
い速さで移動している場合のように流れの影響が大きい
場合、相似波形の作成の際に3次の指数関数で自己相関
値の補正を行う。移動している2成分の拡散運動の相対
的速さがわかっていると、相似波形の作成については自
己相関値の補正だけになるので、簡単に2成分の比率を
計算することができる。
【0080】以上のように、本実施例では、一方向に移
動するとともに並進拡散運動する蛍光物質をFCS法に
より解析することができる。また、測定領域中における
蛍光物質の平均滞在時間より大きな時間幅で蛍光強度を
測定することにより、溶媒の流れや電気泳動に起因する
蛍光強度の経時変化が得られる。
【0081】
【発明の効果】以上、詳細に説明したとおり、本発明に
よれば、同一の光学系を用いて、第1の物質から発生し
た蛍光の強度の経時変化の自己相関を基準波形として取
得し、第1の物質と第2の物質とが混合された被測定試
料から発生した蛍光の強度の経時変化の自己相関を観測
波形として取得する。この基準波形を時間軸方向に所定
の倍率だけ拡大または縮小して相似波形を作成する。ま
た、基準波形および相似波形それぞれの振幅およびオフ
セットならびに第1の物質と第2の物質との成分比率を
仮定し、この仮定の下で基準波形と相似波形とを加重平
均して平均波形を作成し、観測波形と平均波形との間の
残差二乗和を求め、この残差二乗和が最小値となるよう
な基準波形および相似波形それぞれの振幅およびオフセ
ットならびに成分比率を探索する。そして、上記倍率の
各値それぞれについて上記残差二乗和の最小値を求め、
倍率の各値に対して残差二乗和の最小値が最小になる条
件を求め、この条件に基づいて被測定試料を解析する。
【0082】このような構成としたことにより、極微小
な粒子と粒子との結合、分子と分子との結合、抗原抗体
反応などを解析するのに際して、蛍光の自己相関関数を
解析に求めることなく、すなわち、測定領域の形状およ
び大きさを知ることなく、測定領域中の蛍光物質の並進
拡散運動を評価し、蛍光物質が他の物質に結合している
か否かを容易に判定し、蛍光物質と他の物質との結合効
率を容易に算出することができる。また、光学系のアラ
イメントの調整が不充分であっても、あるいは、光学系
のアライメントの再現性が悪くても、常にFCS法によ
る解析を行うことができる。
【0083】したがって、溶液中における極微小な粒子
と粒子との結合、分子と分子との結合、抗原抗体反応な
ど、2つの物質の間の相互作用すなわち解離会合反応の
解析が、光学的な専門知識な無くとも簡便かつ迅速に行
える。例えば、抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ
は臨床検査の場では多検体の試料を簡便かつ迅速に行え
る方法および装置が切に望まれており、本発明が好適に
利用可能である。また、抗体作製の場においては、抗原
を免疫された動物より得られた抗血清を用いて或いはハ
イブリドーマの培養上清を用いて抗体価を調べるスクリ
ーニング作業は膨大な労力を要するが、本発明により簡
便かつ迅速に行うことができる。また、抗原抗体複合体
形成の経時的速度あるいは Scatchardプロットの解析を
行えば、結合の強弱を知ることができる。さらに、形成
された抗原抗体複合体の分子量から抗原決定基(エピド
ープ)の計測が行える。このような抗体に関する一連の
性状試験を、同時に簡便かつ迅速に行える方法および装
置として、本発明が好適に利用可能である。
【0084】また、試料中の測定領域の実効的な形状お
よび大きさを変更することができるので、溶媒に流れが
ある場合や電気泳動の場合であっても、蛍光物質の流れ
または移動の方向に長い形状の測定領域を設定すること
により、微量の蛍光物質を検出することができ、FCS
法により蛍光物質の並進拡散運動を解析することができ
る。また、背景光の影響が強いために多光子励起法によ
ってしか測定が行えない場合であっても、試料中の測定
領域の実効的な形状および大きさは任意であるので、F
CS法により蛍光物質の並進拡散運動を解析することが
できる。
【0085】したがって、キャピラリ電気泳動法やフロ
ーサイトメトリ法を組み合わせることも可能となる。例
えば、イムノプローブ(アフィニティプローブ)キャピ
ラリ電気泳動による2つの物質の間の相互作用の解析
が、より簡便かつ迅速に行える。また、背景光の影響が
強い細胞を用いた受容体(レセプタ)アッセイや特異抗
原の測定が簡便かつ迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る解析装置の構成図である。
【図2】本実施形態に係る解析方法を説明するフローチ
ャートである。
【図3】本実施形態に係る解析方法を説明するグラフで
ある。
【図4】第1実施例に係る解析装置の一部構成図であ
る。
【図5】第1実施例において蛍光標識抗原と抗体との結
合状態を測定して得られた自己相関波形を示すグラフで
ある。
【図6】第1実施例に係る解析装置により解析した結果
を示すグラフである。
【図7】第2実施例において抗原と抗体との結合状態を
測定して得られた自己相関波形を示すグラフである。
【図8】第2実施例に係る解析装置により解析した結果
を示すグラフである。
【図9】第3実施例に係る解析装置の一部構成図であ
る。
【符号の説明】
1…励起光源部、2…蛍光顕微鏡、3…光検出部、4…
レコーダ、5…解析部、6…試料、11…LD励起N
d:YAGレーザ光源、12…スタビライザ、13…ミ
ラー、14…コリメータ光学系、15…シリンドリカル
レンズ、16…レンズ、21…励起フィルタ、22…ダ
イクロイックミラー、23…レンズ、24…対物レン
ズ、25…レンズ、26…脱着式ミラー、27…接眼レ
ンズ、31…ピンホール、32…レンズ、33…バリア
フィルタ、34…光電子増倍管、35…スリット。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻 明彦 静岡県浜北市平口5000番地 株式会社分子 バイオホトニクス研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛍光性の第1の物質と第2の物質とが混
    合された被測定試料を自己相関蛍光分光法を用いて解析
    する解析方法であって、 前記第1の物質に励起光を照射して発生した蛍光の強度
    の経時変化の自己相関を基準波形として取得する基準波
    形取得ステップと、 前記基準波形取得ステップにおける光学系と同一の光学
    系を用い、前記被測定試料に励起光を照射して発生した
    蛍光の強度の経時変化の自己相関を観測波形として取得
    する観測波形取得ステップと、 前記基準波形を時間軸方向に所定の倍率だけ拡大または
    縮小して相似波形を作成する相似波形作成ステップと、 前記基準波形および前記相似波形それぞれの振幅および
    オフセットならびに前記第1の物質と前記第2の物質と
    の成分比率を仮定し、この仮定の下で前記基準波形と前
    記相似波形とを加重平均して平均波形を作成し、前記観
    測波形と前記平均波形との間の残差二乗和を求め、この
    残差二乗和が最小値となるような前記基準波形および前
    記相似波形それぞれの振幅およびオフセットならびに成
    分比率を探索する探索ステップと、 を備え、 前記相似波形作成ステップにおける倍率の各値それぞれ
    について前記相似波形作成ステップおよび前記探索ステ
    ップを行って前記残差二乗和の最小値を求め、倍率の各
    値に対して前記残差二乗和の最小値が最小になる条件を
    求め、この条件に基づいて前記被測定試料を解析するこ
    とを特徴とする解析方法。
  2. 【請求項2】 蛍光性の第1の物質と第2の物質とが混
    合された被測定試料を自己相関蛍光分光法を用いて解析
    する解析装置であって、 前記被測定試料に励起光を照射する励起光照射手段と、 前記被測定試料から発生した蛍光を検出する蛍光検出手
    段と、 前記蛍光検出手段により検出された蛍光の強度の経時変
    化の自己相関を観測波形として取得し、前記励起光照射
    手段により前記第1の物質に励起光を照射した際に前記
    蛍光検出手段により検出された蛍光の強度の経時変化の
    自己相関を基準波形として取得し、前記基準波形を時間
    軸方向に所定の倍率だけ拡大または縮小して相似波形を
    作成し、前記基準波形および前記相似波形それぞれの振
    幅およびオフセットならびに前記第1の物質と前記第2
    の物質との成分比率を仮定し、この仮定の下で前記基準
    波形と前記相似波形とを加重平均して平均波形を作成
    し、前記観測波形と前記平均波形との間の残差二乗和を
    求め、この残差二乗和が最小値となるような前記基準波
    形および前記相似波形それぞれの振幅およびオフセット
    ならびに成分比率を探索し、前記倍率の各値それぞれに
    ついて前記残差二乗和の最小値を求め、前記倍率の各値
    に対して前記残差二乗和の最小値が最小になる条件を求
    め、この条件に基づいて前記被測定試料を解析する解析
    手段と、 を備えることを特徴とする解析装置。
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