JP2012122987A - 結合反応測定装置および結合反応測定方法 - Google Patents

結合反応測定装置および結合反応測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の反応を測定する場合に高精度な定量分析をすることができる結合反応測定装置を提供する。
【解決手段】結合反応測定装置1は、電気泳動槽10、走査部20、励起光源30、対物レンズ41、ダイクロイックミラー42、ミラー43、光フィルタ44、結像レンズ45、ピンホール板46、光検出器50および解析部60を備える。解析部60は、励起光源30から出力された励起光が照射される電気泳動槽10の微小空間の各位置について、光検出器50から出力された蛍光検出信号を入力して、蛍光相関分光法により解析する。
【選択図】図1

Description

本発明は、結合反応測定装置および結合反応測定方法に関するものである。
2つの物質の間の相互作用(すなわち結合反応)を用いた測定は、物質の分離や定量を行う上で広く用いられている。例えば、抗原抗体反応は、抗原とその抗体との間の特異的な結合反応である。ある種の抗原に対して産生された抗体は、特別な場合を除きその抗原とのみ結合する。このような免疫反応を利用した免疫測定法は、複雑な組成の混合物の中から抗原である測定対象物質を特異的に選別することができるので、物質の分離や定量を行う際には非常に有用である。
抗体を用いた生体の微量成分(抗原)の検出や定量には、該微量成分と抗体とにより複合体を形成させ、これを電気泳動により分析する方法が用いられる。電気泳動法として等電点電気泳動法を用いた場合は、非常に高い分離能での分析が可能である。ここで、等電点電気泳動法とは、試料の実効電荷がゼロとなるpH(等電点、pI)で試料が泳動しなくなる現象を利用した電気泳動法である。試料は、泳動用担体(両性担体)溶液に形成されたpH勾配において、その等電点と等しい位置に濃縮される。
また、内径50〜100μmで長さ30〜100cmの溶融シリカからなる毛細管(キャピラリー)の中で一次元的な電気泳動を行うキャピラリー電気泳動法が考案されている。また、毛細管(キャピラリー)に替えて、石英,ガラスおよびプラスチック等樹脂からなる基板に設けられた微小流路で一次元的な電気泳動を行うマイクロチップ電気泳動法も研究されている。以降では、これらキャピラリー電気泳動法およびマイクロチップ電気泳動法を含め一次元的な電気泳動を行う方法を一次元電気泳動法と呼ぶ。一次元電気泳動法では、極微量の試料でも分離が可能である。
電気泳動により分離された試料を検出する方法としては、紫外可視検出法および蛍光検出法が挙げられる。紫外可視検出法では、電気泳動槽内の試料に紫外光または可視光を照射して、その光が試料に吸収されることによる光量の変化から試料を検出する。蛍光検出法では、予め試料を蛍光物質で標識しておき、分離されてきた試料成分に光を照射して発せられる蛍光を検出することにより、試料濃度を定量化する。蛍光検出法は、検出感度が高い点で優れている。
上記の等電点電気泳動法,一次元電気泳動法および蛍光検出法を組み合わせた結合反応測定技術により、微量の試料であっても高精度の定量的分析を行うことが可能となる。近年、この結合反応測定技術により、生体内の微量成分を定量分析する場合が増加している。このような分析を行う場合は、生体内の微量成分と、該微量成分を抗原として認識する抗体とを結合させ、この結合により免疫複合体を形成させて、該免疫複合体を検出する。高精度の検出のためには免疫複合体が蛍光標識されていることが好ましい。このとき、抗原または抗体のいずれかが蛍光標識されている必要があるが、抗体が蛍光標識されている方が好ましい。この理由は、複数の物質群からなる生体成分において、分析の目的とする微量成分(抗原)を蛍光標識する場合、予め該微量成分のみを単離する必要があり、操作が極めて煩雑となるからである。
また、等電点電気泳動を行った結果、複数の等電点位置で蛍光を発することが判明した場合、抗原および抗体の双方または何れか一方の等電点の不均一性に起因するものであるが、抗体の等電点が均一であれば、試料である複合体の等電点の不均一性は、抗原の等電点の不均一性を反映したものとなる。測定対象となる生体成分である抗原については、修飾や分解等により等電点の不均一性を有している場合が殆どである。このことから、等電点電気泳動法,一次元電気泳動法および蛍光検出法を組み合わせた結合反応測定技術においては、蛍光標識された抗体の等電点が均一であることが必要である。このような結合反応測定技術は特許文献1に開示されている。
特表平8−506182号公報
等電点電気泳動法,一次元電気泳動法および蛍光検出法を組み合わせた結合反応測定技術は、測定対象である抗原,蛍光標識された抗体および複合体それぞれの等電点が互いに異なることに基づくものであり、このことから以下のように原理上の限界を有している。複合体の等電点は、抗原の等電点と抗体の等電点との間に位置する。抗原および抗体それぞれの等電点が互いに近い場合、抗体および複合体それぞれの等電点も互いに近い。したがって、抗原,抗体および複合体それぞれの高精度な定量分析が困難である。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の反応を測定する場合に高精度な定量分析をすることができる結合反応測定装置および結合反応測定方法を提供することを目的とする。
本発明の結合反応測定装置は、第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の結合反応を測定する装置であって、(1) 蛍光色素が結合された第1物質,第2物質および複合体を一次元的に等電点電気泳動させる微小空間を有する電気泳動槽と、(2) 蛍光色素を励起し得る波長の励起光を出力する励起光源と、(3) 励起光源から出力された励起光を電気泳動槽の微小空間の内部に集光照射する励起光学系と、(4) 励起光学系による励起光の集光照射の位置を電気泳動槽の微小空間に沿って走査する走査部と、(5) 励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置について、蛍光色素から発生する蛍光を検出し、その検出した蛍光の強度に応じた値の蛍光検出信号を出力する光検出器と、(6) 励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置で発生した蛍光を光検出器へ導く検出光学系と、(7) 励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置について、光検出器から出力された蛍光検出信号を入力して解析する解析部と、を備えことを特徴とする。
さらに、本発明の結合反応測定装置では、解析部は、(a) 第1物質および第2物質それぞれが既知量である場合に、電気泳動槽の微小空間に第1物質および第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された第1物質および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数を解析することで得られる第1物質,第2物質および複合体それぞれの量に基づいて検量線を作成し、(b) 第1物質および第2物質の何れかが未知量である場合に、電気泳動槽の微小空間に第1物質および第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された第1物質および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数および検量線に基づいて第1物質または第2物質を定量する、ことを特徴とする。
また、本発明の結合反応測定方法は、第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の結合反応を測定する方法であって、(1) 蛍光色素が結合された第1物質,第2物質および複合体を一次元的に等電点電気泳動させる微小空間を有する電気泳動槽と、(2) 蛍光色素を励起し得る波長の励起光を出力する励起光源と、(3) 励起光源から出力された励起光を電気泳動槽の微小空間の内部に集光照射する励起光学系と、(4) 励起光学系による励起光の集光照射の位置を電気泳動槽の微小空間に沿って走査する走査部と、(5) 励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置について、蛍光色素から発生する蛍光を検出し、その検出した蛍光の強度に応じた値の蛍光検出信号を出力する光検出器と、(6) 励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置で発生した蛍光を光検出器へ導く検出光学系と、を用いることを特徴とする。
さらに、本発明の結合反応測定方法は、(a) 第1物質および第2物質それぞれが既知量である場合に、電気泳動槽の微小空間に第1物質および第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された第1物質および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数を解析することで得られる第1物質,第2物質および複合体それぞれの量に基づいて検量線を作成し、(b) 第1物質および第2物質の何れかが未知量である場合に、電気泳動槽の微小空間に第1物質および第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された第1物質および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数および検量線に基づいて第1物質または第2物質を定量する、ことを特徴とする。
本発明の結合反応測定装置または結合反応測定方法では、第1物質が抗体であって第2物質が抗原であるのが好適である。
本発明によれば、第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の反応を測定する場合に高精度な定量分析をすることができる。
本実施形態の結合反応測定装置1の構成図である。 電気泳動槽10の微小空間における抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの分布および蛍光発生分布を示す図である。 電気泳動槽10の微小空間のうち抗原A,複合体Cおよび抗体Bそれぞれが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号の自己相関関数を示す図である。 電気泳動槽10の微小空間における抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの分布および蛍光発生分布を示す図である。 電気泳動槽10の微小空間のうち抗原A,複合体Cおよび抗体Bそれぞれが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号の自己相関関数を示す図である。 水浸の対物レンズ41および電気泳動槽10の配置関係を示す図である。 水浸の対物レンズ41および電気泳動槽10の配置関係を示す図である。 対物レンズ41から出力された励起光81の集光領域12の形状を示す図である。 対物レンズ41から出力された励起光81の集光の様子を示す図である。 等電点電気泳動による各プローブの収束状態の計測例(エレクトロフェログラム)を示す図である。 収束前および収束後それぞれにおいてプローブAで発生した蛍光を受光した光検出器から出力された蛍光検出信号I(t)を示すグラフである。 収束前および収束後それぞれの蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示すグラフである。 収束前および収束後それぞれの各プローブの分子数を纏めた図表である。 等電点電気泳動により収束した後のプローブAおよびプローブBそれぞれの縦軸を1に規格化した自己相関関数G(τ)を示すグラフである。 プローブBと抗原との混合物の等電点電気泳動による収束の前後の自己相関関数G(τ)を示すグラフである。 プローブA,プローブBおよびプローブCそれぞれの等電点電気泳動による収束後の縦軸を1に規格化した自己相関関数G(τ)を示すグラフである。 プローブA,プローブBおよびプローブCそれぞれの等電点電気泳動による収束後の並進拡散時間を纏めた図表である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の結合反応測定装置1の構成図である。結合反応測定装置1は、第1物質,第2物質および複合体の間の結合反応を測定する装置である。結合反応測定装置1は、電気泳動槽10、走査部20、励起光源30、対物レンズ41、ダイクロイックミラー42、ミラー43、光フィルタ44、結像レンズ45、ピンホール板46、光検出器50および解析部60を備える。
好適には、第1物質は抗体であり、第2物質は該抗体と特異的に結合する抗原である。複合体は、第1物質(抗体)と第2物質(抗原)とが互いに結合したものである。第1物質(抗体)は蛍光色素が結合される。また、第1物質(抗体)の等電点は均一である。
電気泳動槽10は、蛍光色素が結合された第1物質,第2物質および複合体を一次元的に等電点電気泳動させる微小空間を有する。この電気泳動槽10は、毛細管(キャピラリー)の内部の微小空間で一次元的な電気泳動を行わせるものであってもよいし、石英,ガラスおよびプラスチック等樹脂からなる基板に設けられた微小流路で一次元的な電気泳動を行わせるものであってもよい。何れの場合も、等電点電気泳動させる微小空間は、微小な断面を有し、所定方向に沿って延在している。後者のマイクロチップ電気泳動法は、基板に設けた微小流路では熱の放散が良好であるので、高電圧の印加が可能となり、結果として電気泳動の分離時間の短縮が可能であり、したがって、特に高電圧の印加が必要である等電点電気泳動において有効である。
励起光源30は、抗体に結合された蛍光色素を励起し得る波長の励起光を出力する。励起光源30は励起光を連続的に出力する。励起光源30はレーザ光源であるのが好適である。励起光源30から出力された励起光は、ダイクロイックミラー42により反射された後、対物レンズ41により電気泳動槽10の微小空間の内部に集光照射される。すなわち、対物レンズ41およびダイクロイックミラー42は、励起光源30から出力された励起光を電気泳動槽10の微小空間の内部に集光照射する励起光学系を構成している。対物レンズ41の光軸は、電気泳動槽10の微小空間が延在する方向に直交している。
走査部20は、励起光学系による励起光の集光照射の位置を電気泳動槽10の微小空間に沿って走査する。走査部20は、対物レンズ41の光軸に垂直な方向であって電気泳動槽10の微小空間が延在する方向に電気泳動槽10を移動させることで、励起光集光照射位置を電気泳動槽10の微小空間に沿って走査することができる。
電気泳動槽10の微小空間のうち蛍光標識抗体または複合体が存在している位置に励起光が集光照射されると、その蛍光標識抗体または複合体から蛍光が発生する。その蛍光は、対物レンズ41、ダイクロイックミラー42、ミラー43、光フィルタ44、結像レンズ45およびピンホール板46を経て、光検出器50により受光される。すなわち、対物レンズ41、ダイクロイックミラー42、ミラー43、光フィルタ44、結像レンズ45およびピンホール板46は、励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽10の微小空間の各位置で発生した蛍光を光検出器50へ導く検出光学系を構成している。
対物レンズ41は、励起光源30から出力されダイクロイックミラー42により反射された励起光を入力して電気泳動槽10の微小空間の内部に集光照射するとともに、その集光照射位置で発生した蛍光を入力してダイクロイックミラー42へ出力する。ダイクロイックミラー42は、励起光を反射させる一方、蛍光を透過させる。光フィルタ44は、対物レンズ41からダイクロイックミラー42およびミラー43を経て到達した光のうち、蛍光を選択的に透過させる一方で、励起光の散乱成分を含む他の波長の光を遮断する。結像レンズ45は、光フィルタ44を透過して到達した蛍光をピンホール板46の開口位置に集光する。ピンホール板46は、開口位置に到達した蛍光を光検出器50へ出力する。対物レンズ41による励起光集光照射位置とピンホール板46の開口位置との間の光学系は、共焦点光学系を構成している。
光検出器50は、励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽の微小空間の各位置について、蛍光色素から発生して検出光学系を経て到達した蛍光を検出し、その検出した蛍光の強度に応じた値の蛍光検出信号を出力する。この光検出器50は、光子検出が可能な光電子増倍管であるのが好適である。このような光検出器50は、蛍光を受光したときに該蛍光の光子を光電変換して光電子を発生し、その光電子を増倍して多数の二次光電子を発生して、光子検出事象に応じてパルス電流信号を蛍光検出信号として出力することができる。
解析部60は、励起光学系により励起光が照射される電気泳動槽10の微小空間の各位置について、光検出器50から出力された蛍光検出信号を入力して解析する。解析部60は、蛍光相関分光法(FCS: Fluorescence Correlation Spectroscopy)により、蛍光検出信号の自己相関関数を求めて、蛍光を発した分子の並進拡散時間や分子数を求めることができる。蛍光相関分光法は、極低濃度の蛍光分子が存在する溶液の被測定試料中の微小領域に励起光を照射するととともに、その微小な励起光照射領域で発生した蛍光の強度を検出して、その蛍光強度の経時変化の自己相関関数を求め、この自己相関関数を解析することで、被測定試料中の蛍光分子の並進拡散運動等を測定するものである。
蛍光検出信号をI(t)と表すと、自己相関関数G(τ)は下記(1)式で表される。tは時間変数であり、τは相関時間を表す変数である。<>は時間平均を求める演算を表す。この自己相関関数G(τ)に基づいて、励起光照射領域における蛍光標識抗体および複合体それぞれの並進拡散時間や分子数が求められる。
Figure 2012122987
自己相関関数G(τ)は、理想分子運動モデルを想定した場合、下記(2)式によりフィッティング処理される。この式中で、Fは三重項状態の比率である。τtripは三重項状態の並進拡散時間である。Nは励起光照射領域(蛍光観測領域)内の分子の平均個数である。Mは分子種の数(M=1or2or3)である。yはM種のうちの第iの分子種の寄与率である。τDiは第iの分子種の並進拡散時間である。また、Sは、励起光照射領域(蛍光観測領域)の半径と軸長の半分の長さとの比である。
Figure 2012122987
上記フィッティング処理では、例えば最小二乗法が用いられ、実測による自己相関関数に基づいて、理想分子運動モデルを想定した場合の自己相関関数におけるパラメータが決定される。ここで決定されるべきパラメータは、抗体および複合体それぞれの並進拡散時間および分子数である。分子の並進拡散時間が求められれば、その分子の大きさも求められる。
解析部60は、抗体および抗原それぞれが既知量である場合に、電気泳動槽10の微小空間に抗体および抗原を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽10の微小空間において等電点電気泳動により分画された抗体および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器50により検出して得られた蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を求め、この自己相関関数G(τ)を解析することで得られる抗体,抗原および複合体それぞれの量に基づいて検量線を作成する。
解析部60は、抗体および抗原の何れかが未知量である場合に、電気泳動槽10の微小空間に抗体および抗原を導入して等電点電気泳動させたときに、電気泳動槽10の微小空間において等電点電気泳動により分画された抗体および複合体それぞれの領域から発生する蛍光を光検出器50により検出して得られた蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を求め、この自己相関関数G(τ)および上記検量線に基づいて抗体または抗原を定量する。
以下では、本実施形態の結合反応測定装置1の動作および本実施形態の結合反応測定方法について、電気泳動槽10の微小空間において等電点電気泳動により分画された抗体および複合体それぞれの領域が充分に離間している場合と、充分には離間されていない場合(一部が重なっている場合を含む。)と、の2つに分けて、検量線作成方法および定量方法について説明する。
図2(a)は、等電点電気泳動により分画された抗体および複合体それぞれの領域が充分に離間している場合の電気泳動槽10の微小空間における抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの分布の様子を模式的に示す図であり、同図(b)は、この場合の蛍光発生分布を示す図である。同図では、電気泳動槽10の微小空間の延在方向を横軸としている。図3(a)は、電気泳動槽10の微小空間のうち抗原Aが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。図3(b)は、電気泳動槽10の微小空間のうち複合体Cが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。また、図3(c)は、電気泳動槽10の微小空間のうち抗体Bが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。
図2(a)に示されるように、等電点電気泳動により抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの領域は充分に離間している。このとき、同図(b)に示されるように、電気泳動槽10の微小空間の延在方向の蛍光発生分布において、抗体Bで発生する蛍光と、複合体Cで発生する蛍光とは、充分に区別可能である。
抗原Aは蛍光標識されていないので、図3(a)に示されるように、抗原Aが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)は0であり、この蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は求められ得ない。
複合体Cが存在する領域で発生する蛍光には、複合体Cからの蛍光のみが含まれており、抗体Aからの蛍光は含まれていない。したがって、複合体Cが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は、図3(b)に示されるように、複合体Cのみの並進拡散時間および分子数が反映されたものである。この自己相関関数G(τ)から複合体Cの並進拡散時間および分子数が求められる。
抗体Bが存在する領域で発生する蛍光には、抗体Bからの蛍光のみが含まれており、複合体Cからの蛍光は含まれていない。したがって、抗体Bが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は、図3(c)に示されるように、抗体Bのみの並進拡散時間および分子数が反映されたものである。この自己相関関数G(τ)から抗体Bの並進拡散時間および分子数が求められる。
そこで、電気泳動槽10の微小空間の延在方向に励起光集光照射位置が走査され、その各位置で発生する蛍光の強度の分布が求められることで、電気泳動槽10の微小空間において等電点電気泳動により分画された抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの領域が求められる。この各領域を求める工程は、抗原Aおよび抗体Bの組に対して一度だけ行われればよい。
複合体Cが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)が測定され、この蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)が求められ、この自己相関関数G(τ)から複合体Cの並進拡散時間および分子数が求められる。また、抗体Bが存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)が測定され、この蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)が求められ、この自己相関関数G(τ)から抗体Bの並進拡散時間および分子数が求められる。これを用いることで検量線の作成および定量が可能となる。
図4(a)は、等電点電気泳動により分画された抗体および複合体それぞれの領域が充分には離間していない場合(一部が重なっている場合を含む。)の電気泳動槽10の微小空間における抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの分布の様子を模式的に示す図であり、同図(b)は、この場合の蛍光発生分布を示す図である。同図では、電気泳動槽10の微小空間の延在方向を横軸としている。図5(a)は、電気泳動槽10の微小空間のうち抗原Aが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。図5(b)は、電気泳動槽10の微小空間のうち複合体Cが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。また、図5(c)は、電気泳動槽10の微小空間のうち抗体Bが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示す図である。
図4(a)に示されるように、等電点電気泳動により抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれの領域は、充分には離間しておらず、一部領域が重なっている。このとき、同図(b)に示されるように、電気泳動槽10の微小空間の延在方向の蛍光発生分布において、抗体Bで発生する蛍光と、複合体Cで発生する蛍光とは、区別できない場合がある。
抗原Aは蛍光標識されていないので、抗原Aから蛍光が発生することはない。しかし、抗原Aが主に存在する領域には複合体Cも幾らか存在するので、図5(a)に示されるように、この領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)は、複合体Cから発生する蛍光の弱い信号を含む。この蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は、解析不能なレベルである。
複合体Cが主に存在する領域には抗体Bも幾らか存在するので、この領域で発生する蛍光には、複合体Cからの蛍光が含まれている他、抗体Aからの蛍光も僅かに含まれている。したがって、複合体Cが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は、図5(b)に示されるように、複合体Cおよび抗体Bそれぞれの並進拡散時間および分子数が反映されたものである。この自己相関関数G(τ)から複合体Cおよび抗体Bそれぞれの並進拡散時間および分子数が求められる。
抗体Bが主に存在する領域には複合体Cも幾らか存在するので、この領域で発生する蛍光には、抗体Bからの蛍光が含まれている他、複合体Cからの蛍光も僅かに含まれている。したがって、抗体Bが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)は、図5(c)に示されるように、抗体Bおよび複合体Cそれぞれの並進拡散時間および分子数が反映されたものである。この自己相関関数G(τ)から抗体Bおよび複合体Cそれぞれの並進拡散時間および分子数が求められる。
そこで、電気泳動槽10の微小空間の延在方向に励起光集光照射位置が走査され、その各位置で発生する蛍光の強度の分布が求められることで、電気泳動槽10の微小空間において等電点電気泳動により分画された抗原A,抗体Bおよび複合体Cそれぞれが主に存在する領域が求められる。この各領域を求める工程は、抗原Aおよび抗体Bの組に対して一度だけ行われてもよいが、毎回行われるのが好ましい。
抗体Bが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)が測定され、蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)が求められる。また、複合体Cが主に存在する領域で発生する蛍光についての蛍光検出信号I(t)が測定され、蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)が求められる。なお、自己相関関数G(τ),G(τ)それぞれを求めるに際しては、各領域において陰極側(抗体Bが存在する側)から数点それぞれにおいて求めるのが好適である。
先ず、自己相関関数G(τ)が抗体Bおよび複合体Cについて解析されて、抗体Bの並進拡散時間および分子数が求められる。次に、ここで求められた抗体Bの並進拡散時間および分子数が用いられ、自己相関関数G(τ)が複合体Cおよび抗体Bについて解析されて、複合体Cの並進拡散時間および分子数が求められる。これを用いることで検量線の作成および定量が可能となる。
ところで、抗原,抗体および複合体それぞれは、等電点電気泳動により、電気泳動槽10の微小空間内において等電点の値に応じた位置に収束する。複合体の収束位置は、抗原の収束位置と抗体の収束位置との間となる。抗原および抗体それぞれの等電点は以下の(3)式から求めることができる。[H]は水素イオン濃度である。Kはプロトンを受け取って正電荷を持つ基(塩基)のpKa値であり、nは該塩基の個数である。Kはプロトンを受け取って正電荷を持つ基(塩基)のpKa値であり、nは該塩基の個数である。
Figure 2012122987
塩基およびpKa値の例としては、α-COOH(C末端アミノ酸)のpKa値は3.60であり、α-NH(N末端アミノ酸)のpKa値は7.60であり、Asp側鎖COOH基のpKa値は3.95であり、Glu側鎖COOH基のpKa値は4.45であり、Tyr側鎖OH基のpKa値は9.80であり、His側鎖イミダゾール基のpKa値は6.45であり、Lys側鎖ε-NH基のpKa値は10.20であり、Arg側鎖グアニジル基のpKa値は12.50であり、Cys側鎖SH基のpKa値は8.50である。
すなわち、抗原,抗体および複合体それぞれを構成する塩基について、上記のpKa値を用いて、x=0 となる水素イオン濃度[H] を求め、この水素イオン濃度[H] から等電点を計算することができる。これにより、電気泳動槽10の微小空間内における抗原,抗体および複合体それぞれの収束位置の見当を付けることができるので、等電点電気泳動によって電気泳動槽10の微小空間内に分画された蛍光標識抗体および複合体それぞれの領域から発せられた蛍光の強度の自己相関関数を取得することができる。
電気泳動槽10の微小空間内に分画された各領域については、上記の式を用いて蛍光標識抗体および複合体それぞれの等電点の値から収束する場所を特定して、その場所を固定して検出することができる。しかし、電気泳動槽10の微小空間全体に対して励起光照射を走査して蛍光を検出することで検出位置を特定することが好ましい。
また、電気泳動槽10の微小空間において抗原,抗体および複合体それぞれを等電点電気泳動によって分離する際、これとは別に設けた微小空間に予め等電点が決まっている物質(等電点マーカ)を充填して同時に分離を行って、その等電点マーカの収束位置から抗体および複合体それぞれの領域を特定することで検出の精度が向上する。予め等電点が決まっている物質(等電点マーカ)としては、特許第2828426号公報,特許第3246888号公報,特許第3520222号公報および米国特許5866683号明細書等に開示されている物質が好適に使用可能である。
蛍光相関分光法における蛍光の自己相関測定においては、測定領域は1fL(フェムトリットル)程度の極微小領域とされ、フォトンカウンティング領域での測定であるので、蛍光標識抗体の濃度は1nM〜10nM(10−9M〜10−8M)程度が最大濃度となる。この濃度において、測定領域内の平均分子数は0.6個(=6×1023×1×10-9×1×10-15)〜6個である。一方、標的分子である抗原の濃度は1pM程度である。したがって、抗原と抗体との結合による複合体の形成については、抗体全体の分子数の1/100〜1/1000程度しか関与していないことになる。それ故、形成された複合体を蛍光の蛍光相関分光法の測定領域で検出することは困難である。
一方、等電点電気泳動では等電点への分子の収束により100倍〜1,000倍程度に濃度が高められるので、形成された複合体について、その蛍光分子数としては0.6個〜6個程度となり、測定領域で検出することが可能となる。すなわち、蛍光相関分光法と等電点電気泳動法とを組み合わせることではじめて、抗原,蛍光標識抗体および複合体それぞれが精度良く検出・定量することが可能となる。
次に、電気泳動槽10の微小空間(微小流路)の好適な断面サイズについて説明する。図6および図7それぞれは、水浸の対物レンズ41および電気泳動槽10の配置関係を示す図である。対物レンズ41と電気泳動槽10との間には水70がある。図6は、対物レンズ41から出力された励起光81が電気泳動槽10の微小流路11の内壁下面に集光されている場合を示す。図7は、対物レンズ41から出力された励起光81が電気泳動槽10の微小流路11の内壁上面に集光されている場合を示す。微小流路11内の蛍光色素が結合された物質に励起光81が照射されると、その照射箇所から蛍光82が発生し、その蛍光は対物レンズ41に入射される。
図6および図7の何れの場合にも、電気泳動槽10を構成する材料(例えばガラスやプラスティック)と微小流路11内の試料溶液とは屈折率が互いに異なるので、励起光81の反射が大きい。この反射励起光は、対物レンズ41を経た後に光フィルタ44により遮断されるが、強度が大きい場合には、光フィルタ44により完全には遮断されず、光検出器50により受光されて計測ノイズとなる。したがって、対物レンズ41から出力された励起光81の集光領域は、対物レンズ41の光軸に沿った方向に関し微小流路11の中央付近であるのが好ましい。
図8は、対物レンズ41から出力された励起光81の集光領域12の形状を示す図である。蛍光相関分光法(FCS)では、微小流路11内の実効的な励起光集光領域(すなわち蛍光観測領域)12の形状およびサイズを考慮することが重要である。その際の指標としてSP(Structure Parameter)が定義される。励起光集光領域12は楕円体であり、その楕円体の長軸半径をzとし短軸半径をwとしたとき、SPはSP=z/w なる式で表される。
通常、このSPの計測値は5〜10である。短軸半径wは励起光の波長により決まる。FCSで使用される励起光の波長は400nm〜1000nmである。これらのことから、楕円体で表される励起光集光領域12の長軸半径zは5μm程度である。したがって、微小流路11の高さ(対物レンズ41の光軸に沿った方向の高さ)は10μm以上であることが必要である。
微小流路11の幅(対物レンズ41の光軸および微小流路11の延在方向の双方に垂直な方向の幅)の下限値は、微小流路11の高さの下限値および対物レンズ41のNAに基づいて得られる。図9は、対物レンズ41から出力された励起光81の集光の様子を示す図である。媒質の屈折率をnとし、集光位置Pから対物レンズ81を見込む角度を2θとすると、NA=n・sinθ なる式が成り立つ。対物レンズ41のNAを1.15とした場合、微小流路11の高さ10μmに対応する微小流路11の幅は34μmとなる。また、対物レンズ41のNAを1とした場合、微小流路11の高さ10μmに対応する微小流路11の幅は22.8μmとなる。したがって、微小流路11の幅は22.8μm以上であることが必要である。
以上を纏めると、微小流路11の高さは10μm以上であることが必要であり、微小流路11の幅は22.8μm以上であることが必要である。なお、電気泳動槽10および対物レンズ41の配置の際の誤差や微小流路11の作製の際の誤差が最大で±10μm程度あるので、これを考慮した場合には、微小流路11の高さは30μm以上であることが望ましく、微小流路11の幅は42.8μm以上であることが望ましい。一方、微小流路11の高さ及び幅それぞれの上限値については、FCSの観点からは特に制限はないものの、等電点電気泳動の観点からは小さいことが望ましい。
次に実施例について説明する。本実施例では、蛍光標識ペプチド(プローブA)および蛍光標識タンパク質(プローブB)が測定用試料として用いられた。
プローブAは、N末端α-アミノ基に5-carboxytetramethylrhodaminaのスクシンイミド体を結合させた合成ペプチド(配列:DDEHHHKR)である。プローブAは、特許文献(特許2828426号公報)および非特許文献(Electrophoresis, 16, 1479 (1995))に準拠して調製された。蛍光標識後のプローブAの分子量は約1,500であり、等電点(pI)は6.23であった。プローブAのpI値については、特許文献(特許3520222号公報)および非特許文献(Anal. Chem., 74, 1046 (2002))に記載されている方法に従って測定した。
プローブBは、ヒトα1−アンチトリプシンに対する抗体遺伝子をクローニング後に大腸菌でFab’体として発現した組換えタンパク質である。プローブBのFd鎖C末端付近のCysがteteramethylrhodamine iodoacetoamideで標識された。プローブBの分子量は約50,000であり、pI値は5.59であった。なお、プローブBの詳細については、特許文献(特許3461804号公報)および非特許文献(Electrophoresis, 23, 909 (2002))に記載されている。
プローブAおよびプローブBそれぞれは、40倍に希釈された両性担体溶液(Pharmalyte3-10)、0.1% Tween20、0.3% N,N,N',N',-tetramethylethylenediamine(TEMED)、0.1% 酢酸、1mMりん酸ナトリウム緩衝液、0.1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む溶液に溶解されて、等電点電気泳動用の試料溶液とされた。等電点電気泳動の際の電極液(陰極液)として0.1%のHPMCを含む20mM水酸化ナトリウム溶液が用いられ、電極液(陽極液)として0.1%のHPMCを含む20mMりん酸溶液が用いられた。
図10は、等電点電気泳動による各プローブの収束状態の計測例(エレクトロフェログラム)を示す図である。縦軸は蛍光強度を示す。横軸は、全長30mmのチャネルの中心を0としての距離を表し、左側が陽極側、右側が陰極側となっている。等電点電気泳動において、電圧の印加を開始して5分から10分程度で、各プローブで発生した蛍光の強度が最大となり、各プローブの収束点が確認された。これにより、本装置を用いて等電点電気泳動による試料の収束が可能であることが確認された。
図11は、収束前および収束後それぞれにおいてプローブAで発生した蛍光を受光した光検出器から出力された蛍光検出信号I(t)を示すグラフである。また、図12は、収束前および収束後それぞれの蛍光検出信号I(t)の自己相関関数G(τ)を示すグラフである。蛍光検出信号I(t)から上記(1)式に基づいて自己相関関数G(τ)が計算された。図12に示されるように、等電点電気泳動により蛍光観測領域の分子数増加を示すG(τ)の減少が確認された。また、自己相関関数G(τ)が上記(2)式によりフィッティング処理されて、各プローブの並進拡散時間および分子数が求められた。
図13は、収束前および収束後それぞれの各プローブの分子数を纏めた図表である。この図から判るように、等電点電気泳動により収束前と比較して収束後においては、プローブAでは36倍の分子数の増加が確認され、また、プローブBでは23倍の分子数の増加が確認された。プローブAの場合、蛍光観測領域における分子数は、収束前に1.09個であったのに対して、等電点収束後には39.74であった。収束前のプローブAの濃度が5.0×10−9Mであったので、収束後では1.8×10−7M相当の濃度を計測したものと同等になる。これらから、微小流路における等電点電気泳動中の自己相関計測による分子数変化の計測が可能であることが明らかになった。
図14は、等電点電気泳動により収束した後のプローブAおよびプローブBそれぞれの自己相関関数G(τ)を示すグラフである。同図では、両者の対比を容易にするため、縦軸に関し各グラフが規格化されている。分子量約1,500のプローブAの自己相関曲線より分子量約50,000のプローブBの自己相関曲線が遅い方へシフトしていることが確認された。
また、プローブBとこれに特異的に結合する抗原(ヒトα1−アンチトリプシン)とをモル比1:2の割合で混合し、遮光下、室温にて約20分間に亘って反応させた。この溶液について、等電点電気泳動による収束の前後で、蛍光検出信号I(t)が測定され、自己相関関数G(τ)が計算された。図15は、プローブBと抗原との混合物の等電点電気泳動による収束の前後の自己相関関数G(τ)を示すグラフである。同図から、収束前と比較して収束後においては並進拡散時間の増加が確認された。これは抗原抗体反応によって形成された複合体が確認されたことになる。
ここで、プローブBと抗原(ヒトα1−アンチトリプシン)との混合溶液をプローブCと表す。図16は、プローブA,プローブBおよびプローブCそれぞれの等電点電気泳動による収束後の自己相関関数G(τ)を示すグラフである。同図でも、三者の対比を容易にするため、縦軸に関し各グラフが規格化されている。図17は、プローブA,プローブBおよびプローブCそれぞれの等電点電気泳動による収束後の並進拡散時間を纏めた図表である。
以上のとおり、本実施形態の測定装置および測定方法によって、第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と第1物質と第2物質との間の反応を高精度に定量分析し得ることが可能となった。
1…結合反応測定装置、10…電気泳動槽、11…微小流路(微小空間)、12…励起光集光領域(蛍光観測領域)、20…走査部、30…励起光源、41…対物レンズ、42…ダイクロイックミラー、43…ミラー、44…光フィルタ、45…結像レンズ、46…ピンホール板、50…光検出器、60…解析部、70…水、81…励起光、82…蛍光。

Claims (4)

  1. 第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と前記第1物質と前記第2物質との間の結合反応を測定する装置であって、
    蛍光色素が結合された前記第1物質,前記第2物質および前記複合体を一次元的に等電点電気泳動させる微小空間を有する電気泳動槽と、
    前記蛍光色素を励起し得る波長の励起光を出力する励起光源と、
    前記励起光源から出力された励起光を前記電気泳動槽の微小空間の内部に集光照射する励起光学系と、
    前記励起光学系による励起光の集光照射の位置を前記電気泳動槽の微小空間に沿って走査する走査部と、
    前記励起光学系により励起光が照射される前記電気泳動槽の微小空間の各位置について、前記蛍光色素から発生する蛍光を検出し、その検出した蛍光の強度に応じた値の蛍光検出信号を出力する光検出器と、
    前記励起光学系により励起光が照射される前記電気泳動槽の微小空間の各位置で発生した蛍光を前記光検出器へ導く検出光学系と、
    前記励起光学系により励起光が照射される前記電気泳動槽の微小空間の各位置について、前記光検出器から出力された蛍光検出信号を入力して解析する解析部と、
    を備え、
    前記解析部が、
    前記第1物質および前記第2物質それぞれが既知量である場合に、前記電気泳動槽の微小空間に前記第1物質および前記第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、前記電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された前記第1物質および前記複合体それぞれの領域から発生する蛍光を前記光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数を解析することで得られる前記第1物質,前記第2物質および前記複合体それぞれの量に基づいて検量線を作成し、
    前記第1物質および前記第2物質の何れかが未知量である場合に、前記電気泳動槽の微小空間に前記第1物質および前記第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、前記電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された前記第1物質および前記複合体それぞれの領域から発生する蛍光を前記光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数および前記検量線に基づいて前記第1物質または前記第2物質を定量する、
    ことを特徴とする結合反応測定装置。
  2. 前記第1物質が抗体であって前記第2物質が抗原であることを特徴とする請求項1に記載の結合反応測定装置。
  3. 第1物質および第2物質が互いに結合してなる複合体と前記第1物質と前記第2物質との間の結合反応を測定する方法であって、
    蛍光色素が結合された前記第1物質,前記第2物質および前記複合体を一次元的に等電点電気泳動させる微小空間を有する電気泳動槽と、
    前記蛍光色素を励起し得る波長の励起光を出力する励起光源と、
    前記励起光源から出力された励起光を前記電気泳動槽の微小空間の内部に集光照射する励起光学系と、
    前記励起光学系による励起光の集光照射の位置を前記電気泳動槽の微小空間に沿って走査する走査部と、
    前記励起光学系により励起光が照射される前記電気泳動槽の微小空間の各位置について、前記蛍光色素から発生する蛍光を検出し、その検出した蛍光の強度に応じた値の蛍光検出信号を出力する光検出器と、
    前記励起光学系により励起光が照射される前記電気泳動槽の微小空間の各位置で発生した蛍光を前記光検出器へ導く検出光学系と、
    を用い、
    前記第1物質および前記第2物質それぞれが既知量である場合に、前記電気泳動槽の微小空間に前記第1物質および前記第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、前記電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された前記第1物質および前記複合体それぞれの領域から発生する蛍光を前記光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数を解析することで得られる前記第1物質,前記第2物質および前記複合体それぞれの量に基づいて検量線を作成し、
    前記第1物質および前記第2物質の何れかが未知量である場合に、前記電気泳動槽の微小空間に前記第1物質および前記第2物質を導入して等電点電気泳動させたときに、前記電気泳動槽の微小空間において等電点電気泳動により分画された前記第1物質および前記複合体それぞれの領域から発生する蛍光を前記光検出器により検出して得られた蛍光検出信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数および前記検量線に基づいて前記第1物質または前記第2物質を定量する、
    ことを特徴とする結合反応測定方法。
  4. 前記第1物質が抗体であって前記第2物質が抗原であることを特徴とする請求項3に記載の結合反応測定方法。
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