JPH11315091A - 硫酸化ガラクトース化合物及びその中間体並びに該硫酸化ガラクトース化合物の製造方法 - Google Patents

硫酸化ガラクトース化合物及びその中間体並びに該硫酸化ガラクトース化合物の製造方法

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JPH11315091A
JPH11315091A JP10631398A JP10631398A JPH11315091A JP H11315091 A JPH11315091 A JP H11315091A JP 10631398 A JP10631398 A JP 10631398A JP 10631398 A JP10631398 A JP 10631398A JP H11315091 A JPH11315091 A JP H11315091A
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浩隆 鵜沢
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Kazuhisa Hiratani
和久 平谷
Yoshihiro Nishida
芳弘 西田
Kazukiyo Kobayashi
一清 小林
Yasuo Suzuki
康夫 鈴木
Yasuichi Usui
泰市 碓氷
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒトインフルエンザウイルスやエイズウイル
ス(HIV)が認識すると期待され、前述の3糖単位に代わ
るウイルス捕捉材料となりうる硫酸化ガラクトース化合
物を提供する。 【解決手段】 下記式(II)、式(III) 又は式(IV)で
表わされる硫酸化ガラクトース化合物。 【化1】 (式中、R5 、R6 及びR7 は水素原子、アシル基又は
シリル基を表わす。R5〜R7 は、互いに同一でも異な
ってもよい。また、式(II)においてR6 とR7は互い
に結合してアセタール、ヘミアセタールを形成してもよ
い。Yは前記と同義である。Mは水素原子、アルカリ金
属原子などを表わす。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトインフルエン
ザウイルス等がその感染において認識すると考えられる
新規な硫酸化ガラクトース化合物及びその中間体並びに
その製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒトインフルエンザウイルスの感染は、
ヒトの細胞表層の特定の3糖単位、Neu5Acα2 →3Galβ
1 →4(3)GlcNAcβ1 →、Neu5Acα2 →6Galβ1 →4(3)Gl
cNAcβ1 →、Neu5Acα2 →3Galβ1 →3GalNAc β1 →、
又はNeu5Acα2 →6Galβ1 →3GalNAc β1 →(但し、Ne
u5AcはN−アセチルノイラミン酸を、Gal はガラクトー
スを、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンをそれぞれ示
す。)を認識することによってはじまることが知られて
いる。もしこれらの3糖単位を十分な量得ることがで
き、さらに高分子化できれば、ウイルスを捕捉可能な新
しい材料が提供できることが期待される。これらの3糖
単位を得る方法としては従来、(1)天然物から取り出
す、(2)有機合成化学的手段を用いて合成する、
(3)酵素などの生化学的手段を用いて合成する、
(4)(1)〜(3)の方法を適宜くみあわせる、等が
行われている。しかし、天然物より単離する場合は極微
量しか得られず、合成する場合も工程数が多いという問
題があり、この3糖単位を十分な量で入手するのは困難
であった。そこで、これらの3糖単位よりも入手が容易
で、ウイルスが認識性を有する新規化合物及びその製造
方法の開発が要望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒトインフ
ルエンザウイルスやエイズウイルス(HIV)が認識性を有
し、前述の3糖単位に代わるウイルス捕捉材料となりう
る硫酸化ガラクトース化合物及びその高分子化合物を提
供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分子の特定の箇所
に硫酸エステル基を持つ糖誘導体及びそれを含む高分子
化合物の合成に成功し、この知見に基づき本発明をなす
に至った。すなわち上記の目的は以下の発明により達成
された。 (1)下記式(I−1)、式(I−2)又は式(I−
3)で表わされるガラクトース化合物。
【0005】
【化8】
【0006】(式中、R1 は水素原子又はアセチル基と
同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基を
表わし、R2 は水素原子又はアセチル基より脱アシル化
しやすいアシル基を表わし、R3 は水素原子、アセチル
基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル
基又はシリル基を表わし、R4 は水素原子、アセチル基
より脱アシル化しやすいアシル基又はシリル基を表わ
す。式中の2つ又は3つのR1 は、互いに同一でも異な
ってもよい。また、3位と4位又は4位と6位の置換基
が互いに結合してアセタール又はヘミアセタールを形成
してもよい。ただし、2位、3位、4位及び6位の置換
基がすべて水素原子であることはない。Yは、ベンジル
オキシ基、アリルベンジルオキシ基、ニトロフェノキシ
基、アミノフェノキシ基、アクリルアミドフェノキシ
基、アリルフェノキシ基、アリルアルキルオキシ基、ア
ルキルオキシ基、アリルオキシ基、低級アルキルチオ
基、水酸基、ハロゲン原子又はイミデート基を表わ
す。) (2)下記式(II)、式(III) 又は式(IV)で表わされ
る硫酸化ガラクトース化合物。
【0007】
【化9】
【0008】(式中、R5 、R6 及びR7 は水素原子、
アシル基又はシリル基を表わす。R5〜R7 は、互いに
同一でも異なってもよい。また、式(II)においてR6
とR7は互いに結合してアセタール、ヘミアセタールを
形成してもよい。Yは前記と同義である。Mは水素原
子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミン
を表わす。) (3)下記式(VIII)で表わされる硫酸化ガラクトース
化合物。
【0009】
【化10】
【0010】(式中、R5 、R6 、Y及びMは前記と同
義である。) (4)下記式(V)、式(VI)、式(VII)又は式(IX)
で表わされる硫酸化ガラクトース高分子化合物。
【0011】
【化11】
【0012】(式中、R5 、R6 及びR7 は前記と同義
である。式(V)においてR6 とR7は互いに結合して
アセタール、ヘミアセタールを形成してもよい。Aは
【0013】
【化12】
【0014】(式中、*でピラノース環の1位と結合す
る。Lはアルキレン、アリーレン、−O−、−CO−、
−NH−より選ばれる1つ以上の組み合わせよりなる連
結基を表わす。)を表わし、Bはガラクトース残基を有
しない繰り返し単位からなる部分を表わす。pとqはモ
ル比(%)であり、0<p≦100、かつ、pとqの和
は100である。) (5)(1)項記載の式(I−1)、式(I−2)又は
式(I−3)で表わされるガラクトース化合物を硫酸化
試薬と反応させることを特徴とする下記式(II)、式(I
II) 又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラクトース化合
物の製造方法。
【0015】
【化13】
【0016】(式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前
記と同義である。) (6)(3)項記載の式(VIII)で表わされるガラクト
ース化合物の一方の硫酸エステル基のみをスルファター
ゼの存在下で加水分解することを特徴とする下記式(I
I)又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラクトース化合
物の製造方法。
【0017】
【化14】
【0018】(式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前
記と同義である。) なお、本発明において脱アシル化は、加水分解反応のほ
か、エステル交換等の反応も含むものである。
【0019】
【発明の実施の形態】式(I−1)、式(I−2)、式
(I−3)で表わされるガラクトース化合物はそれぞ
れ、式(II)、式(III) 、式(IV)で表わされる化合物
の合成中間体である。
【0020】式(I−1)〜(I−3)において、R1
は水素原子又はアシル基を表わす。このアシル基は、通
常のエステル交換(加水分解)反応条件(pH9〜12
程度の塩基性溶媒、例えばメタノール−ナトリウムメチ
ラートなど)で脱離可能で、アセチル基と同等もしくは
それ以上脱離しにくい基であり、例えばベンゾイル基
(置換されていてもよい。例えば、ベンゾイル基、4−
メトキシベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基な
ど)、ピバロイル基などが挙げられ、好ましくはベンゾ
イル基又はピバロイル基である。式中の2つ又は3つの
1 は、互いに同一でも異なってもよい。
【0021】R2 は水素原子又はアセチル基のような通
常の脂肪族より穏和な条件(R1 より中性に近い条件)
で脱離可能なアシル基を表わし、このようなアシル基と
しては、例えば、レヴリノイル基、モノクロロ酢酸エス
テル基などが挙げられ、好ましくは水素原子又はレヴリ
ノイル基である。
【0022】R3 は、水素原子、R1 で挙げたと同様の
アシル基、又はシリル基(置換されていてもよい。例え
ば、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニ
ルシリル基など)を表わし、R1 と同じ基であることが
好ましく、ベンゾイル基がさらに好ましい。R4 は水素
原子、R2 で挙げたと同様のアシル基、又はR3 で挙げ
たと同様のシリル基を表わし、好ましくはシリル基であ
る。ただし、R1〜R4は、2位、3位、4位及び6位
において、すべて水素原子であることはない。
【0023】Yは、ベンジルオキシ基(置換されていて
もよい。例えばベンジルオキシ基、4−メトキシベンジ
ルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基など)、アリ
ルベンジルオキシ基(例えばp−アリルベンジルオキ
シ)、ニトロフェノキシ基(例えばp−ニトロフェノキ
シ、o−ニトロフェノキシ、m−ニトロフェノキシ)、
アミノフェノキシ基(例えばp−アミノフェノキシ)、
アクリルアミドフェノキシ基(例えばp−アクリルアミ
ドフェノキシ)、アリルフェノキシ基(例えば2−アリ
ルフェノキシ)、アリルアルキルオキシ基(好ましくは
末端に二重結合を有する-O(CH2)nCH2CH=CH2 、nは好ま
しくは1〜5の整数)、アルキルオキシ基(好ましくは
炭素数1〜4、例えばメトキシ、エトキシなど)、アリ
ルオキシ基、低級アルキルチオ基(例えばメチルチオ、
エチルチオなど)、水酸基、ハロゲン原子(例えば臭素
原子、フッ素原子、塩素原子など)又はイミデート基
(例えばトリクロロアセトイミデートなど)を表わす。
Yは好ましくはニトロフェノキシ基である。
【0024】式(I−1)においては、3位と4位の置
換基が互いに結合してアセタール構造を形成してもよ
い。このアセタール構造としては、例えばイソプロピリ
デン基、シクロヘキシリデン基などが挙げられ、また、
有機スズによるスタニレンアセタール構造(例えばジブ
チルスタニレンアセタール)なども含まれる。式(I−
2)及び(I−3)においては、4位と6位の置換基が
互いに結合してアセタール又はヘミアセタール構造を形
成してもよい。このアセタール構造としては、例えばイ
ソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などが挙げら
れ、また、ヘミアセタール構造としてはベンジリデン
基、メトキシベンジリデン基などが挙げられる。
【0025】式(I−1)の化合物においては、3位が
水素原子又はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル
基であり、2位及び4位が水素原子又はアセチル基と同
等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基、6
位が2位及び4位と同様のアシル基又はシリル基であ
る。式(I−1)で表わされる化合物は、このような置
換基を有することにより、2位、4位及び6位は保護し
たまま、3位のみを選択的に脱保護し、硫酸化すること
が可能である。式(I−2)、(I−3)の化合物も同
様に、4位又は6位のみを選択的に脱保護、硫酸化でき
る組み合わせでの置換基を有する化合物である。
【0026】式(I−1)の化合物としては3位と4位
の置換基が結合してスタニレンアセタールを形成してお
り、2位と6位の置換基が水素原子又はベンゾイル基の
ものが好ましく、2位と6位が水素原子のものが特に好
ましい。式(I−2)の化合物としてはR1 とR3 がベ
ンゾイル基でR2が水素原子のもの、またはR1 がベン
ゾイル基、R2 が水素原子でR3 がシリル基のものが好
ましく、式(I−3)の化合物としてはR1 がベンゾイ
ル基でR4 がシリル基のものが好ましい。
【0027】式(II)、式(III) 及び式(IV)において
5 、R6 及びR7 は水素原子、又は保護基としてのア
シル基もしくはシリル基を表わし、アシル基としては互
いに同一でも異なっていてもよい。アシル基及びシリル
基の例としては、特に制限はないが、好ましくは前記R
1 〜R4 で挙げたものが挙げられる。式(II)において
6 とR7 は、前記式(I−1)〜(I−3)で挙げた
と同様のアセタール又はヘミアセタールを形成してもよ
い。Yは式(I−1)〜(I−3)のものと同義であ
る。Mは水素原子、アルカリ金属原子(例えばナトリウ
ム原子、カリウム原子、リチウム原子など)、有機アミ
ン(例えばトリメチルアミノ、トリエチルアミノなどの
置換もしくは無置換アミノ基など)、アンモニウム基を
表わし、好ましくはナトリウム原子である。式(II)の
化合物のうち、R5 及びR7 が水素原子又はベンゾイル
基でR6 が水素原子のものが好ましく、R5 〜R7 が水
素原子のものが特に好ましい。式(III) 及び式(IV)の
化合物のうち、R5 〜R7 が水素原子又はベンゾイル基
のものが好ましく、R5 〜R7 が水素原子のものが特に
好ましい。
【0028】式(I−1)の化合物より式(II)の化合
物を製造する合成ルートを次のスキーム1に示す。
【0029】
【化15】
【0030】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R12
はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル基を表わ
し、R13はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシ
ル化しにくいアシル基又はシリル基を表わす。式中の2
つのR11は、互いに同一でも異なってもよい。Y及びM
は前記式(I−1)及び式(II)で定義したものと同義
である。) この合成方法の一例について説明すると、まず市販の化
合物1(例えば、ニトロフェニルガラクトース)の3位
及び4位の2つの水酸基をアセタール化して化合物2を
得る。この反応はまず、アセトン(無水)、ジメトキシ
プロパンなどのアセタール供給源とともに、酸性触媒の
存在下反応させる。酸触媒としては、カンファースルホ
ン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)、
ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)、塩
化トリメチルシリル(TMSCl)、イオン交換樹脂
(H+ 型)などが用いられる。溶媒としては、無溶媒
(つまり、アセタール供給源としてのアセトン、ジメト
キシプロパン及び両混合溶媒のみ)、又はジメチルホル
ムアミドなどが用いられ、反応温度は通常0℃〜130
℃、反応時間は通常5分〜5日程度である。
【0031】こうして得た化合物2をアシル化して化合
物3を得る。この反応はまず、ジシクロヘキシルカルボ
ジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボ
ジイミド化合物の存在下、例えば安息香酸、酢酸などと
の反応で脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と
反応させることにより行うことができる。あるいは別法
として、溶媒として通常ピリジンの存在下、必要に応じ
てジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩
基の存在下で、前記カルボン酸の無水物または対応する
酸塩化物、酸臭化物と反応させることにより行うことが
できる。溶媒としては、前者の場合、通常ジメチルホル
ムアミド、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロ
ロエタン又はこれらの混液が用いられ、後者の場合に
は、通常ピリジンの他、塩化メチレン、ジクロロエタ
ン、クロロフォルムおよびこれらの混液などが用いら
れ、反応温度は、いずれの場合も通常0℃〜50℃、反
応時間は通常5分間〜5日間程度である。
【0032】R13がシリル基の場合は、例えば、ハロゲ
ン化シラン化合物又はトリフルオロメタンスルホン酸の
シラン化合物をピリジン、ルチジン、トリエチルアミ
ン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾールなどのアミ
ンとともに加え反応させる。溶媒としては、通常ピリジ
ン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、塩化メチ
レン、ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの
混液などが用いられ、反応温度は、いずれも通常−20
℃〜50℃、反応時間は通常5分間〜7日間程度であ
る。この化合物3を酸処理して化合物4を得る。この酸
処理には、カンファースルホン酸(CSA)、p−トル
エンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸
(PPTS)、酢酸、硫酸、塩酸、イオン交換樹脂(H
+ 型)、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸を用いる
ことができる。溶媒としては、通常メタノール、エタノ
ール、メタノール−塩化メチレン、水などが用いられ、
反応温度は−20℃〜80℃、反応時間は、通常5分〜
3日程度である。
【0033】この化合物4をエステル化して化合物5を
得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、
ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化
合物の存在下で、レブリン酸、モノクロロ酢酸などのカ
ルボン酸又はそれらの酸無水物と反応させて行うことが
できる。あるいは別法として、溶媒として通常ピリジン
の存在下、必要に応じてジメチルアミノピリジン、トリ
エチルアミンなどの塩基の存在下で、前記カルボン酸の
無水物または対応する酸塩化物、酸臭化物と反応させる
ことにより行うことができる。溶媒としては、前者の場
合、通常ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、
塩化メチレン、ジクロロエタン又はこれらの混液が用い
られ、後者の場合には、通常ピリジン、塩化メチレン、
ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの混液な
どが用いられ、反応温度は、いずれにおいても通常0℃
〜50℃、反応時間は通常5分間〜5日間程度である。
【0034】ついで化合物5をさらにエステル化して化
合物6を得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジ
イミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジ
イミド化合物の存在下、例えば安息香酸、酢酸などとの
反応で脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と反
応させることにより行うことができる。あるいは別法と
して、溶媒として通常ピリジンの存在下、必要に応じて
ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基
の存在下で、前記カルボン酸の無水物または対応する酸
塩化物、酸臭化物と反応させることにより行うことがで
きる。溶媒としては、前者の場合、通常ジメチルホルム
アミド、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロ
エタン又はこれらの混液が用いられ、後者の場合には、
通常ピリジン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロ
フォルムおよびこれらの混液などが用いられ、反応温度
は、前者後者ともに通常0〜50℃、反応時間は通常5
分間〜5日間程度である。
【0035】このようにして得られた化合物6の選択的
脱保護を行い、化合物7を得る。この反応は、ヒドラジ
ン酢酸、ヒドラジン−ピペリジン、水酸化リチウム−過
酸化水素などで処理することにより行うことができる。
溶媒としては、通常メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、トルエン、ピリジン、THFなどが用いら
れ、反応温度は、通常−78℃〜50℃、反応時間は通
常5分間〜3日間である。
【0036】ついで、化合物7を硫酸化し硫酸エステル
基を導入して化合物8を得る。この反応は、トリメチル
アミン三酸化硫黄錯体、トリエチルアミン三酸化硫黄錯
体、ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体、ピリジン三
酸化硫黄錯体、クロロスルホン酸などの硫酸化試薬と反
応させることにより行うことができる。溶媒としては、
通常、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ヘキサメチル
フォスフォアミド(HMPA、あるいはヘキサメチルフ
ォスフォラストリアミド(HMPT)ともいう)、ジメ
チルスルフォキシド(DMSO)などが用いられ、反応
温度は、0℃〜80℃、反応時間は通常5分〜1週間で
ある。必要に応じ、得られた化合物をイオン交換樹脂
(Na+ タイプなど)で処理することにより、Mをナト
リウム原子などに変換することができる。
【0037】ついで化合物8を、ナトリウムメトキシ
ド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化リチウムなどの塩基で処理して脱アシ
ル化すると、本発明の式(II)においてR5 、R6 及び
7 が全て水素原子である化合物9を得ることができ
る。溶媒としては、通常メタノール、エタノール、テト
ラヒドロフラン(THF)、メタノール−THF、エタ
ノール−THFなどが用いられ、反応温度は通常−30
℃〜80℃、反応時間は、通常5分間〜5日程度であ
る。R13(式(I−1)の化合物のR3 )がシリル基の
時には、このシリル基の除去は次のようにして行う。テ
トラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化カリウム、
フッ化水素酸、フッ化水素−ピリジン、トリフルオロ酢
酸、三フッ化ホウ素エーテル錯体などの存在下、必要に
応じて酢酸を添加して行う。溶媒としては、通常テトラ
ヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、塩化メ
チレン、クロロホルム、トルエン、アセトニトリル、エ
タノール、水及びこれらの混液などが用いられ、反応温
度は通常0℃〜100℃、反応時間は、通常5分間〜1
0日程度である。
【0038】化合物4から化合物8を得る別法として、
次のような方法もある。酸化ジブチルスズ、化合物4及
びベンゼンあるいはトルエン(必要に応じて、メタノー
ル、エタノール、テトラヒドロフラン及びジメチルホル
ムアミドなどの親水性溶媒の存在下)とともに加熱還流
を行いながら、反応で生成する水を除去する。その後、
溶媒を留去させた後、これを先に示した硫酸化試薬で処
理することにより化合物8を得る。硫酸化試薬を行うと
きの溶媒としては、通常、ジメチルホルムアミド、ピリ
ジン、ヘキサメチルフォスフォアミド(HMPA、ある
いは、ヘキサメチルフォスフォラストリアミド(HMP
T)ともいう)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)
などが用いられ、反応温度は、0℃〜80℃、反応時間
は通常5分〜1週間である。ガラクトースの水酸基は6
位>3位>4位の順で反応性が高いため、上記のように
して化合物4を硫酸化すると、3位に硫酸基が導入され
ることとなる。
【0039】化合物1から一段階で化合物9を得るに
は、化合物4の代わりに化合物1を用い、上述した酸化
ジブチルスズによる硫酸化法と同様の方法を用いてもよ
い。あるいはスキーム1の最下段に示すように、化合物
1の一級水酸基のみをアシル化又はシリル化した後(化
合物20)、上記と同様に有機スズを用いて硫酸化する
(化合物21)こともできる。化合物1の一級水酸基の
選択的アシル化及びシリル化は、化合物3の合成方法と
同じである。ついで、この化合物21の脱保護を行い硫
酸化糖誘導体9を得ることができる。この脱保護は、化
合物8→化合物9と同じ方法で行うことができる。
【0040】なお、Yとしてアリルオキシ基やベンジル
オキシ基などを持つ場合には、化合物2から9までのい
ずれのステップにおいても適宜自由にこれらを除去し、
さらにYをイミデート基やハロゲン原子などに変換した
後、p−ニトロフェノキシ基やアリルフェノキシ基など
へも変換できる。アリルオキシ基の除去は、(シクロオ
クタジエン)ビス(メチルジフェニルホスフィン)イリ
ジウムヘキサフルオロホスフェート、酢酸パラジウム、
塩化パラジウムなどの存在下テトラヒドロフラン中二重
結合を異性化するかあるいは別法として、t−ブトキシ
カリウムなどの強塩基性の試薬とともに加熱後、ヨウ素
及び必要に応じて炭酸水素ナトリウムの存在下、異性化
した二重結合の除去を行う。あるいは、異性化の後に塩
化水銀、酸化銀の存在下に同反応を行ってもよい。反応
時間は通常5分〜5日程度、反応温度は0℃〜120℃
である。Yとしてベンジル基(置換されているものを含
む)を有する場合には、パラジウム、パラジウム−炭
素、水酸化パラジウムなどとともに、水素の存在下で接
触還元して除去することができる。溶媒としては、通常
メタノール、エタノール、t−ブチルアルコール、水、
テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレ
ン、クロロホルム、トルエン、酢酸エステル、ジオキサ
ン、ジメチルホルムアミド、酢酸及びこれらの混液など
が用いられ、反応温度は通常0℃〜100℃、反応時間
は、通常5分間〜10日程度である。
【0041】このようにしてアリルオキシ基又はベンジ
ル基などを除去して得られるヘミアセタール糖誘導体
は、次のようにしてYがイミデート基の化合物やYがハ
ロゲン原子である臭素化糖やフッ素化糖などにさらに変
換できる。イミデート基への変換は、ヘミアセタール体
とトリクロロアセトニトリル及びジアザビシクロウンデ
センもしくはt−ブトキシカリウム又は水素化ナトリウ
ムの存在下行う。ハロゲン原子への変換は、前記のR11
の導入と同様の方法によりYの位置をアシル化した後、
臭化水素−酢酸溶液中で臭素化する。この臭素化体をア
セトニトリル中フッ化銀で処理してフッ素化糖へと導い
てもよい。あるいは、ヘミアセタール体とジエチルアミ
ノスルファートリフルオリドで直接フッ素化してもよ
い。反応溶媒及び温度は、ベンジル基の除去の場合と同
様である。
【0042】このようにして得られたイミデート糖誘導
体とハロゲン化糖は、次のようにしてYにニトロフェノ
キシ基を有する化合物へ変換できる。イミデート体を用
いる場合には、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯
体、トリメチルシリルトリフレート、t−ブチルジメチ
ルシリルトリフレート、トリエトキシシリルトリフレー
トなどの存在下、p−ニトロフェノール(又はo−ニト
ロフェノール、m−ニトロフェノール)などの試薬と反
応させて得ることができる。ハロゲン化糖のうち臭化物
を用いる場合には、炭酸銀、酸化銀などとともに反応さ
せればよい。あるいは、ニトロフェノールのアルカリ金
属塩とともにアセトンなどの溶媒中で加熱する方法もあ
る。フッ素化糖の場合には、過塩素酸銀、ビスシクロペ
ンタジエニル ハフノセン(又はジルコニウム)クロリ
ド、シルバートリフレート及びこれらの混合物とニトロ
フェノール及びとともに反応させることができる。この
ほかに、先に示したYの位置をアシル化した化合物に、
p−ニトロフェノキシ基などを直接導入することもでき
る。例えば、Yの位置にアセチル基を有する化合物に対
して、トリメチルシリルトリフレートなどの酸触媒の存
在下、直接p−ニトロフェノキシ基などを導入できる。
いずれの場合も、反応温度は、−78℃〜100℃、反
応時間は、5分〜1週間である。このようにして、反応
ステップがある程度進んだところで、Yの保護基を適宜
自由に変換できる。
【0043】スキーム1において、R11及びR13はベン
ゾイル基が好ましく、R12はレヴリノイル基が好まし
い。また、化合物2のアセタール構造がスタニレンアセ
タールであるのが特に好ましい。なお、スキーム1で示
した合成ルートで合成した化合物9の水酸基は、常法に
よりR5 〜R7 で表わされる基に置換、修飾することが
できる。アシル化、シリル化については、スキーム1に
ついての説明で挙げたと同様の方法で行うことができ
る。
【0044】次に式(I−3)の化合物より式(IV)の
化合物を製造する合成ルートを下記スキーム2に示す。
【0045】
【化16】
【0046】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R14
はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル基又はシリ
ル基を表わす。式中の複数のR11は、互いに同一でも異
なってもよい。Y及びMは前記式(I−3)及び式(I
V)で定義したものと同義である。) まず、スキーム1において用いたのと同じ化合物1につ
いて、4位と6位にアセタール基を導入して化合物10
へと導く。このアセタール化は、スキーム1の化合物1
→化合物2の変換と同様にして行うことができる。この
とき、4位と6位にヘミアセタール基を導入してもよ
く、ヘミアセタール化はベンズアルデヒド、ベンズアル
デヒドジメチルアセタールなどとともに酸触媒の存在下
行うことができる。酸触媒としては、アセタール化を行
う時の酸触媒に加えて塩化亜鉛なども通常用いられる。
溶媒としては、アセタール化を行うときに用いるものと
同様であるが、時として溶媒を添加しないこともある。
反応時間、温度ともにアセタール化の条件と同様であ
る。次に2位と3位にアシル基を導入して化合物11へ
と導くことができる。このアシル化は、スキーム1の化
合物2→化合物3でR11を導入した方法と同様にして行
うことができる。反応条件についても同様である。
【0047】次に化合物11の4位と6位のアセタール
(又はヘミアセタール)を酸性条件下で除去して化合物
12へと変換することができる。この反応は、スキーム
1の化合物3→化合物4の反応と同様にして行うことが
できる。ヘミアセタールの除去も、アセタールの場合と
同様である。化合物12の一級水酸基に選択的にレブリ
ノイル基やモノクロロ酢酸エステル基などのようなアセ
チル基より穏和な条件で脱離可能な置換基を導入する
か、又はt−ブチルジメチルシリル基やt−ブチルジフ
ェニルシリル基などのシリル基を導入して化合物13へ
と導くことができる。レブリノイル基やモノクロロ酢酸
エステル基などの導入は、スキーム1の化合物4→化合
物5のR12の導入と同様である。シリル基の導入は、ス
キーム1の化合物2→化合物3のR13にシリル基を導入
した場合と同じである。化合物13の4位にアシル基
(R11)を導入して化合物14に導くことができる。こ
のアシル化の反応は、スキーム2の化合物11の2位及
び3位へのアシル基の導入と同様である。
【0048】次に化合物14のR14(アセチル基より脱
アシル化しやすいアシル基又はシリル基)を除去して化
合物15に変換できる。R14の除去は、スキーム1の化
合物6→化合物7の反応、又は化合物8→化合物9(R
13にシリル基を用いた時に相当する)の反応と同様にし
て行うことができる。その後化合物15を硫酸化試薬を
用いて硫酸化を行い化合物16に導くことができる。硫
酸化の条件は、スキーム1の化合物7→化合物8の変換
と同様である。化合物16の脱保護を行い、化合物17
を得ることができる。この脱保護は、スキーム1の化合
物8→化合物9と同様にして行うことができる。
【0049】なお、化合物1から化合物18を経て化合
物14に導く方法もある。つまり、化合物1の一級水酸
基に選択的にシリル基を導入して化合物18へと変換す
る。このシリル化の条件は、スキーム1の化合物2→化
合物3のR13にシリル基を導入した場合と同じである。
次に、残りの3つの水酸基をアシル化して化合物14に
導く。このアシル化の条件は、化合物11の2位及び3
位へのアシル基の導入と同様である。
【0050】さらに、化合物12より化合物19を経て
化合物17に導く方法もある。化合物12の一級水酸基
を選択的に硫酸化して化合物19へまず導く。この選択
的な硫酸化は、スキーム1で示した硫酸化試薬と反応条
件により行うことができる。スキーム1の化合物4→化
合物8と同様、4位に比べ6位の水酸基の反応性が高い
ため、6位が選択的に硫酸化される。化合物19は、脱
保護して化合物17へと導くことができる。この脱保護
の条件は、化合物16→化合物17と同じである。
【0051】化合物1から化合物17を一段階で得る場
合には、スキーム1で用いた酸化ジブチルスズの代わり
にビスジブチルスズオキシドを用いる以外は、スキーム
1の化合物4→化合物8の反応と同様にして行う。Yの
変換については、スキーム1で述べたと同様にして適宜
行うことができる。また、スキーム1の化合物9と同
様、化合物17の水酸基もR5 〜R7 で表わされる基に
置換、修飾できる。スキーム2においてR11はベンゾイ
ル基が好ましく、R14はシリル基が好ましい。
【0052】次に式(I−2)の化合物より式(III) の
化合物を製造する合成ルートを下記スキーム3に示す。
【0053】
【化17】
【0054】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R13
はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しに
くいアシル基又はシリル基を表わす。式中の複数のR11
は、互いに同一でも異なってもよい。Y及びMは前記式
(I−2)及び式(III) で定義したものと同義であ
る。) まず、スキーム1で合成した化合物4の3位の水酸基を
選択的にアシル化して化合物28を得ることができる。
この選択的アシル化反応は、スキーム1及びスキーム2
において述べたアシル化反応と同様にして行うことがで
きるが、通常、使用されるカルボン酸、その酸無水物、
及び対応する酸ハロゲン化物(より好ましくは塩化物)
のモル比を、化合物4 1molに対して通常0.8〜
1.5molとする。反応時間は一般に短く、反応温度
も低いことが多いが、例外もある。通常、1分から5日
間程度、−10℃〜80℃である。なお、この化合物4
は、化合物22と23を経て、スキーム1の化合物20
からも合成可能である。化合物22と化合物23の合成
法は、スキーム1の化合物1→化合物2→化合物3と同
様である。化合物28は、先に示した硫酸化試薬を用い
て硫酸基を導入して化合物24に導くことができる。化
合物24はさらに脱保護を行い化合物25へと導くこと
ができる。この脱保護の方法もすでにスキーム1及びス
キーム2において述べたと同様である。
【0055】化合物25を得る別法としては、化合物1
2から化合物26と化合物27をへて合成する方法があ
る。すなわち、スキーム1の化合物2→化合物3と同様
にして、化合物12の一級水酸基に保護基R13を導入し
て化合物26へと変換することができる。その後、先に
示した硫酸化法により4位に硫酸基を導入して化合物2
7にした後、脱保護を行い化合物25を合成することが
できる。これらの合成法はいずれもすでに示した方法を
利用して行うことができる。Yの変換については、スキ
ーム1で述べたと同様にして適宜行うことができる。ま
た、スキーム1の化合物9と同様、化合物25の水酸基
もR5 〜R7 で表わされる基に置換、修飾できる。スキ
ーム3においてR11及びR13はベンゾイル基が好まし
い。
【0056】また、式(II)又は式(IV)で表わされる
化合物は、式(VIII)で表わされる3位と6位に2つ硫
酸エステル基を有するガラクトース化合物からも製造で
きる。まず式(VIII)で表わされる化合物について説明
する。式(VIII)においてR5 及びR6 は式(II)又は
式(IV)におけると同様の水素原子、アシル基又はシリ
ル基であり、R5 及びR6 が水素原子である化合物が好
ましい。R5 及びR6が水素原子である式(VIII)の化
合物は下記スキーム4に示す方法で合成できる。
【0057】
【化18】
【0058】(式中、Y及びMは前記式(II)及び式
(IV)で定義したものと同義である。) スキーム1及びスキーム2で用いたと同じ化合物1に
は、3位と6位の2カ所に同時に硫酸エステル基を導入
することができる。2カ所を硫酸化する場合には、まず
化合物1を乾燥ベンゼン−テトラヒドロフラン(TH
F)中、ビストリブチルスズオキシドとともに還流脱水
を行い、硫酸化試薬とともに反応させる。硫酸化試薬
は、スキーム1の説明において述べたと同様のものを用
いることができる(スキーム4では例としてトリメチル
アミン三酸化硫黄錯体を示した)。ビストリブチルスズ
オキシドの使用量は化合物1 1モルに対し1〜3モル
が好ましい。硫酸化試薬は化合物1 1モルに対し通常
2モル以上、好ましくは3〜4モル用いる。反応時間は
通常、30分〜5時間、反応温度は通常、0〜80℃で
ある。スキーム4ではMがトリメチルアミノ基の化合物
29が得られるが、必要に応じこの後、常法により処理
してMを変換することができる。例えばNa+ タイプの
イオン交換樹脂で処理すればMがアルカリ金属原子の化
合物を得ることができる。得られた化合物29の水酸基
は、スキーム1の化合物9について述べたと同様に、常
法によりR5 、R6 で表わされる基に置換、修飾するこ
とができる。
【0059】次に、式(VIII)の化合物より式(II)及
び式(IV)の化合物を合成する方法について説明する。
式(VIII)で表わされる硫酸エステル基を2つ有する化
合物は、酵素(スルファターゼ)を用いて選択的に一方
の硫酸エステル基のみを加水分解できる。通常、この酵
素反応はpH3〜8、好ましくは6〜7.5において、
酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩
衝液などの緩衝液中で、10〜50℃、好ましくは35
〜38℃で行うことができる。反応時間は通常、5分〜
1週間である。加水分解される硫酸基の選択性は、酵素
の起源(例えば、軟体動物由来なのか、微生物由来なの
かなど)や反応時間などによって異なる。酵素は式(VI
II)で表わされる化合物に対し好ましくは1〜30wt
%使用する。上記化合物29よりスキーム1の化合物9
とスキーム2の化合物17を得るルートを下記スキーム
5に示す。
【0060】
【化19】
【0061】(式中、Y及びMは前記式(II)及び式
(IV)で定義したものと同義である。) 化合物29を上記した緩衝液中、37℃近傍でスルファ
ターゼで処理すると、スルファターゼの種類や反応時間
などに応じ、化合物17もしくは化合物9が選択的に、
または混合物として得られる。
【0062】次に、式(V)、式(VI)、式(VII)又は
式(IX)で表わされる本発明のガラクトース高分子化合
物について説明する。式(V)、式(VI)、式(VII)又
は式(IX)で表わされる化合物は、式中、Aで表わされ
る主鎖がペンダント(修飾残基)として式(II)、式(I
II) 、式(IV)又は式(VIII)の化合物を有する高分子
化合物である。Aは
【0063】
【化20】
【0064】(式中、*ピラノース環の1位と結合す
る。Lはアルキレン、アリーレン、−O−、−CO−、
−NH−より選ばれる1つ以上の組み合わせよりなる連
結基を表わす。)で表わされるスペーサーである。前記
Lのアルキレンは好ましくは炭素数1〜20、アリーレ
ンは好ましくは炭素数6〜30で、それぞれ置換されて
いてもよい。前記の連結基の例としては
【0065】
【化21】
【0066】(式中、nは1〜5の整数を表わす。)な
どがある。Aは、特に好ましくは
【0067】
【化22】
【0068】から選ばれる1つ以上が単独重合又は共重
合したものである。Bは、ガラクトース残基を有しない
繰り返し単位であり、Aがペンダントとして有するガラ
クトース残基の、高分子化合物中の含有率を調整するな
どのための部分であり、必要により所定比率で設ける。
Bは例えばエチレン性不飽和モノマーから誘導される繰
り返し単位であり、例えばアクリルアミド類、メタクリ
ルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エス
テル類、オレフィン類などより誘導される繰り返し単位
やLと同様の基などがあげられ、好ましくはアクリルア
ミド又はメタクリルアミドより誘導される繰り返し単位
である。AとBの特に好ましい組み合わせは、次の通り
である。
【0069】
【化23】
【0070】(式中、nは1〜5の整数を表わす。) 式(V)、式(VI)及び式(VII)において、pとqはモ
ル比(%)であり、0<p≦100、かつ、pとqの和
は100であり、pは好ましくは5以上である。この高
分子化合物の分子量は特に制限するものではないが、好
ましくは10000以上であり、末端は水素原子、アル
キル基など、特に制限はない。
【0071】式(V)の化合物の合成方法について、ス
キーム1の化合物9を高分子化する場合を例に説明す
る。高分子化を行う場合、Yを重合性の基(例えばアク
リルアミドフェノキシ基、アリルフェノキシ基、ビニル
ベンジルオキシ基、アリルアルキルオキシ基など)に変
換し、これを単独重合又は他の化合物と共重合させる。
例えば化合物9においてYとしてp−ニトロフェノキシ
基を持つ場合には、このニトロ基を還元してp−アミノ
フェノキシ基へと変換する。この反応は、パラジウム、
パラジウム炭素、水酸化パラジウムなどとともに、水素
の存在下接触還元を行う。溶媒としては、通常メタノー
ル、エタノール、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエ
ーテル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、酢酸
エステル及びこれらの混液などが用いられ、反応温度は
通常0℃〜100℃、反応時間は、通常5分間〜10日
程度である。別法として、水素化リチウムアルミニウ
ム、水素化ホウ素ナトリウムの存在下、同反応を行うこ
ともできる。溶媒としては、メタノール、エタノール、
テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが通常用い
られる。反応温度は通常0℃〜100℃、反応時間は、
通常30分間〜10日程度である。
【0072】還元したp−アミノフェノキシ糖誘導体
は、さらにアクリル酸又はアクリル酸クロリドなどと反
応させてp−アクリルアミドフェノキシ誘導体へと変換
できる。この反応は、スキーム1においてR11を導入し
た方法と同様である。ついで、このp−アクリルアミド
フェノキシ誘導体の単量体を、単独重合又はアクリルア
ミド、メタクリルアミドもしくはアクリル酸エステルな
どとともに共重合させて高分子体を得る。この重合反応
は、単独重合の場合には単量体のみ、共重合の場合には
単量体を、アクリルアミドなどの存在下、過硫酸アンモ
ニウム、テトラエチレンジアミンなどと反応させて行う
ことができる。なお、以上の一連の操作、すなわち、還
元、アミド化及び高分子化反応は、保護基を有している
スキーム1の化合物8及び21においても、さらには脱
保護の完了した化合物9においても、行うことができ
る。化合物8又は21を用いて高分子化反応を行った
後、脱保護を行う場合は、単量体の時に行った方法と同
様にして行うことができる。また、p−アクリルアミド
フェノキシ誘導体を例に説明したが、Yに他の重合性の
基を有する単量体を用いる場合も、高分子化の操作は同
様である。また、異なるYを有する複数種の単量体を共
重合させることもできる。式(III) 又は式(IV)の化合
物より、式(VI)又は式(VII)の化合物を合成する場合
も、上記と同様の方法で行うことができる。スキーム2
においては保護基を有する化合物16及び19、あるい
は脱保護の完了した化合物17より高分子化を行うこと
ができ、スキーム3においては保護基を有する化合物2
4及び27、あるいは脱保護の完了した化合物25より
高分子化を行うことができる。式(VIII)の化合物より
式(IX)の化合物を合成する場合も上記と同様であり、
スキーム4の化合物29、あるいは化合物29の水酸基
を保護基に変換した化合物からも上記と同様の高分子化
を行うことができる。
【0073】
【実施例】本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明す
る。前記スキーム1において、R11及びR13がベンゾイ
ル基、Mがナトリウム原子、Yがp−ニトロフェノキシ
基の場合について合成を行った。各化合物の番号はスキ
ーム1に示したものと対応する。 実施例1(化合物1→化合物2) 化合物1(3.0g、9.96mmol)、を無水アセトン600m
lに溶かしDowex H+(商品名、ダウケミカル社製)120
mg を加え18時間室温下で攪拌した。トリエチルアミ
ン10mlを加えDowex をろ過して除きろ液を減圧濃縮し
た。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、
60F254、300ml 、塩化メチレン−メタノール=100:1 )
で精製して化合物2(2.21g 、65% )を得た。 [ α] D −58. 7 (C=1. 7、メタノール)
m.p 154-157 ℃
【0074】実施例2(化合物2→化合物3) 化合物2(104mg 、0.305mmol )、ジメチルアミノピリ
ジン(5mg )をピリジン(10ml)に溶かし、塩化ベンゾ
イル(0.11ml、0.95mmol)を加え、室温で攪拌した。1
7時間後、反応液に氷片、飽和炭酸水素ナトリウム水溶
液を加え、クロロホルム50mlで3回抽出した。抽出し
た有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗
浄後、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧留去した。残さ
をシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、60F
254 、30ml、トルエン−酢酸エチル 4:1)で精製
して化合物3(158mg 、94% )を得た。 [ α] D +4.6 (C=1.6、クロロホルム) m.p 1
77-178 ℃ 元素分析 calcd. for C29H27NO10 C:63.38 、H:4.95、N:2.55 found C:63.46 、H:4.94、N:2.49
【0075】実施例3(化合物3→化合物4) 化合物3(4.03g 、7.3mmol )、塩化メチレン30ml、メ
タノール60ml、カンファースルホン酸(CSA)(682m
g 、2.9mmol )を加え、室温で攪拌した。16.5時間後、
5mlのトリエチルアミンを加え減圧濃縮した。残さを直
ちにシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、60F
254 、400ml 、塩化メチレン−メタノール=10:1)で精
製して化合物4(3.35g 、90% )を得た。 [ α] D +14.2 (C=0. 68、メタノール)
m.p 192-194 ℃ 元素分析 calcd. for C26H23NO10 C:61.30 、 H:4.55 、N:2.75 found C:60.82 、 H:4.63 、N:2.64
【0076】実施例4(化合物4→化合物8) 化合物4(0.95g 、1.87mmol)をベンゼン(60ml)に
とかし、酸化ジブチルスズ(488mg 、1.96mmol)を加
え、ディーンスタークの装置を用いて3時間環流しなが
ら生成する水を経時的に除去した。残りのベンゼンを減
圧留去し、ジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)に
溶かし、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(331mg 、2.
43mmol)及びトリエチルアミン1ml を加え、40℃で攪
拌した。3時間後反応液にメタノールを加えしばらく攪
拌した後減圧留去し、残さをシリカゲルクロマトグラフ
ィー(メルク社、60F254 、200ml、塩化メチレン
−メタノール 10:1.5)で精製し、ナトリウム型
のイオン交換樹脂(DowexNa+ )で処理後、熱エタノー
ル−エーテル−ヘキサンより晶出させ化合物8(1.0
g 、90% )を得た。 [ α] D +22. 9 (C=0.8、メタノール)
m.p 169-172 ℃
【0077】実施例5(化合物8→化合物9) 化合物8(1.64g 、2.68mmol)をメタノール(40ml)に
溶かし、28%ナトリウムメチラート(0.35ml)を加
え、室温下で5時間攪拌した。Dowex H+ 型(商品名、
ダウケミカル社製)で中和しpH7 としたのちDowex を濾
過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残さをシリカゲル
60 RP−18(メルク社、水を溶離液とした)で精
製して化合物9(990mg 、92% )を得た。 [ α] D -41.8 (C=1. 3、メタノール)、m.p
194 ℃ FABMS m/z 426(M+Na) 元素分析 calcd. for C12H14NNaO11S C:35.74 、H:3.50、N:3.47 S:7.95 found C:35.19 、H:3.58、N:3.35 S:7.34
【0078】実施例6(化合物1→化合物9) 化合物1(60mg、0.20mmol)をテトラヒドロフラン(30
ml)及びベンゼン(30ml)にとかし、酸化ジブチルス
ズ(54.5mg、0.22mmol)を加え、ディーンスタークの装
置を用いて2時間環流しながら生成する水を経時的に除
去した。反応溶液を減圧留去し、ジメチルホルムアミド
(DMF)(5ml )に溶かし、三酸化硫黄トリメチルア
ミン錯体(30.5mg、0.22mmol)及びトリエチルアミン0.
5ml を加え、40℃で攪拌した。18時間後反応液にメ
タノールを加えしばらく攪拌後、反応溶液を減圧留去
し、残さをシリカゲル 60 RP−18(メルク社、
水を溶離液とした)で精製して化合物9(62.2mg、77.4
% )を得た。化合物9の物理恒数などのデータは、実施
例4と同じである。
【0079】次に、前記スキーム2において、R11がベ
ンゾイル基、R14がtert−ブチルジメチルシリル基、M
がナトリウム原子、Yがp−ニトロフェノキシ基の場合
について、合成を行った。各化合物の番号はスキーム2
に示したものと対応する。
【0080】実施例7(化合物1→化合物14) 化合物1(100mg 、0.33mmol)をピリジン5ml に溶か
し、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(120mg 、0.
80mmol)、ジメチルアミノピリジン(5mg )、トリエチ
ルアミン0.5ml を加え室温下18時間攪拌した。続いて
塩化ベンゾイル(0.173ml 、1.5mmol )を加え室温下で
更に18時間反応させた。反応液に氷片、飽和炭酸水素
ナトリウム水溶液を加え、クロロホルム50mlで3回抽
出した。抽出した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶
液、水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧
留去した。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(メル
ク社、60F254 、60ml、トルエン−酢酸エチル 1
0:1)で精製して化合物14(158mg 、94% )を得
た。 [ α] D +121.6 (C=2.0 、クロロホルム) 元素分析 calcd. for C39H41NO11Si C:64.36 、H:5.68、N:1.92 found C:64.23 、H:5.63、N:1.82
【0081】実施例8(化合物14→化合物15) 化合物14(50mg、0.069mmol )をテトラヒドロフラン
5mlに溶かし、これに酢酸0.04ml及び1.0Mテトラブチ
ルアンモニウムフルオリド0.275ml を加え、18時間攪
拌した。クロロホルム100mlで希釈し、飽和炭酸水
素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネ
シウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残さをシリカゲルク
ロマトグラフィー(10ml、トルエン−酢酸エチル3:
1)で精製して化合物15(38.5mg、91.3% )を得た。 [α] D +148.1 (C=3.9 、クロロホルム)
【0082】実施例9(化合物15→化合物16) 化合物15(1.94g 、3.16mmol)をジメチルホルムアミ
ド30mlにとかし、トリエチルアミン1ml 及び三酸化
硫黄トリメチルアミン錯体(3.8g、27.3mmol)を加え5
0℃で48時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグ
ラフィーで精製して化合物16(1.87g 、83% )を得
た。 [ α] D +106.2 (C=1.8 、メタノール) 元素分析 calcd. for C33H26NNaO14S ・H2O C:54.03 、H:3.85、S:4.37、N:1.91 found C:53.83 、H:3.79、S:4.15、N:1.83
【0083】実施例10(化合物16→化合物17) 化合物16(80mg、0.11mmol)をメタノール(2ml )に
溶かし、28%ナトリウムメチラート(0.048ml )を加
え、室温下で1時間攪拌した。Dowex H+ 型(商品名、
ダウケミカル社製)で中和しpH7 としたのちDowex を濾
過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残さをシリカゲル
60 RP−18(メルク社、水を溶離液とした)で精
製して化合物17(31.6mg、70.1% )を得た。 [ α] D -64.2 (C=3.1 、水) FABMS m/z 426(M+Na) 元素分析 calcd. for C12H14NNaO11S・2H2O C:32.81 、H:4.13、N:3.19 S:7.30 found C:32.42 、H:3.44、N:2.95 S:6.88
【0084】次に、前記スキーム4において、Mがトリ
メチルアミノ基、Yがp−ニトロフェノキシ基の場合に
ついて合成を行い、得られた化合物29を用いてスキー
ム5の方法で化合物17を合成した。各化合物の番号は
スキーム4、5に示したものと対応する。
【0085】実施例11(化合物1→化合物29) 化合物1 78.7mgを乾燥ベンゼン15ml、THF 15mlに
溶かし、ビストリブチルスズオキシド0.203ml 、三酸化
イオウ・トリメチルアミン錯体333mgを加え、60
℃で3日間撹拌した。シリカゲル 60 RP−18
(メルク社、水を溶離液とした)で精製して化合物29
(132mg 、quant.)を得た。1 H-NMR (D2O, 300MHz) アセトンを内部標準(2.07 ppm)
として用いた。 δ 8.1 and 7.1 ppm (aromatics), 5.18 (H1, d, 7.8 H
z), 4.36 (H3, dd, 3.3 and 9.9 Hz), 4.30 (H4, bd,
3.3 Hz), 4.20-4.08 (m, H5, H6 and H6'), 3.88 (H3,
dd, 7.8 and 9.6 Hz).
【0086】実施例12(化合物29→化合物17) 化合物29 80mgを2mlの酢酸−酢酸ナトリウム
(0.25M、pH6.8)に溶かし37℃で3日間、
カタツムリ由来(Helix pomatia)のスルファターゼ5w
t%の存在下放置した。反応終了後、ゲルろ過(LH−
20,溶離液は水)及びシリカゲル 60 RP−18
(メルク社、水を溶離液とした)で精製して化合物17
(60mg、94% )を得た。元素分析及びNMRの結果よ
り、得られた化合物が化合物17であることが確認でき
た。
【0087】実施例13 実施例6で得た化合物9 700mg(1.74mmo
l)をメタノール200mlに溶かし、パラジウム−炭
素30mgを加え、水素雰囲気下で還元を行い、ニトロ
基をアミノ基に変換した。3時間後、パラジウム−炭素
をセライトろ過して除き、ろ液を減圧濃縮してニンヒド
リン反応にポジティブなp−アミノフェニル−3−硫酸
化ガラクトシド648mgを得た。続いて、この化合物
をこれ以上精製することなく、アクリロイル化を行っ
た。すなわち、得られたp−アミノフェニル−3−硫酸
化ガラクトシドを20mlのメタノールに溶かし、トリ
エチルアミン1.6ml及びアクリル酸クロライド0.
267ml(10mlの塩化メチレン溶液)を加え、5
時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂で中和を行い、
pH7とした後、ろ過してイオン交換樹脂を除き、ろ液
を減圧濃縮した。残さをシリカゲル 60 RP−18
(メルク社製、水−メタノール=1:1を溶離液とし
た)で精製し、さらにダウエックス(Na+ 型)で処理
してp−アクリルアミドフェニル−3−硫酸化ガラクト
シド(化合物9のYをp−アクリルアミドフェノキシ基
に変換した化合物)431mg(58%)を得た。この
化合物の 1H−NMRスペクトルを図1に示した。
【0088】実施例14 実施例13で得られたp−アクリルアミドフェニル−3
−硫酸化ガラクトシド37mg(0.087mmol)
及びアクリルアミド62mgに、予め脱気した水1ml
を加え、その後十分に窒素置換を行った。テトラメチル
エチレンジアミン0.01ml及び過硫酸アンモニウム
0.01ml(100mg/ml H2Oの濃度の溶液
を用いた)を加え、30℃にて2時間振とうした。反応
液をメタノールに加え、沈殿物を遠心分離し、上澄み液
を除いた後、少量の水を加え、再度メタノールに対して
再沈殿を行った。凍結乾燥して、下記式で表わされる3
−硫酸化ガラクトースの高分子化合物32mgを得た。
この化合物の 1H−NMRスペクトルを図2に示した。
図2より、単量体のアクリル部分のシグナルの消失が認
められる。
【0089】
【化24】
【0090】試験例 シアリルパラグロポシド(2−6結合体)へのインフル
エンザウイルス(A/Memphis/1/71(H3
N2))の結合が、実施例14で得られた3−硫酸化ガ
ラクトースの高分子化合物によりどのくらい阻害される
かをELISA法により評価し、この高分子化合物のウ
イルスに対する認識能を試験した。実施例14で得られ
た高分子化合物のIC50(50%の阻害をするときの濃
度)をフェツイン(ポジティブコントロール)のそれと
比較したところ、約2倍弱であった。従って本発明の化
合物は、ウイルス捕捉が可能であることがわかる。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、ヒトインフルエンザウ
イルスやエイズウイルス等との認識性のある、特定の位
置が硫酸化されたガラクトース化合物を、市販の原料を
用い、従来の3糖単位合成に比べ少ない工程で合成で
き、十分な量を供給することができる。また、この硫酸
化ガラクトース化合物をペンダントとして有する高分子
化合物を合成することができ、ウイルス捕捉材料として
の利用が期待できる新規な化合物が提供できるという優
れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例13で得られた化合物の 1H−NMRス
ペクトルである。
【図2】実施例14で得られた化合物の 1H−NMRス
ペクトルである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年2月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 硫酸化ガラクトース化合物及びその中
間体並びに該硫酸化ガラクトース化合物の製造方法
【特許請求の範囲】
【化1】 01 (式中、R1 は水素原子又はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R2
は水素原子又はアセチル基より脱アシル化しやすいアシ
ル基を表わし、R3 は水素原子、アセチル基と同等もし
くはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基又はシリル
基を表わし、R4 は水素原子、アセチル基より脱アシル
化しやすいアシル基又はシリル基を表わす。式中の2つ
又は3つのR1 は、互いに同一でも異なってもよい。ま
た、3位と4位又は4位と6位の置換基が互いに結合し
てアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。た
だし、2位、3位、4位及び6位の置換基がすべて水素
原子であることはない。Yは、ニトロフェノキシ基、ア
ミノフェノキシ基、アクリルアミドフェノキシ基、アリ
ルフェノキシ基、アリルアルキルオキシ基、アルキルオ
キシ基、アリルオキシ基を表わす。
【化2】 02 (式中、R5 、R6 及びR7 は水素原子、アシル基又は
シリル基を表わす。R5〜R7 は、互いに同一でも異な
ってもよい。また、式(II)においてR6 とR7は互い
に結合してアセタール、ヘミアセタールを形成してもよ
い。Yは前記と同義である。Mは水素原子、アルカリ金
属原子、アンモニウム基又は有機アミンを表わす。)
【化3】 03 (式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前記と同義であ
る。)
【化4】 04 (式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前記と同義であ
る。)
【化5】 05 (式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前記と同義であ
る。)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトインフルエン
ザウイルス等がその感染において認識すると考えられる
新規な硫酸化ガラクトース化合物及びその中間体並びに
その製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒトインフルエンザウイルスの感染は、
ヒトの細胞表層の特定の3糖単位、Neu5Acα2 →3Galβ
1 →4(3)GlcNAcβ1 →、Neu5Acα2 →6Galβ1 →4(3)Gl
cNAcβ1 →、Neu5Acα2 →3Galβ1 →3GalNAc β1 →、
又はNeu5Acα2 →6Galβ1 →3GalNAc β1 →(但し、Ne
u5AcはN−アセチルノイラミン酸を、Gal はガラクトー
スを、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンをそれぞれ示
す。)を認識することによってはじまることが知られて
いる。もしこれらの3糖単位を十分な量得ることがで
き、さらに高分子化できれば、ウイルスを捕捉可能な新
しい材料が提供できることが期待される。これらの3糖
単位を得る方法としては従来、(1)天然物から取り出
す、(2)有機合成化学的手段を用いて合成する、
(3)酵素などの生化学的手段を用いて合成する、
(4)(1)〜(3)の方法を適宜くみあわせる、等が
行われている。しかし、天然物より単離する場合は極微
量しか得られず、合成する場合も工程数が多いという問
題があり、この3糖単位を十分な量で入手するのは困難
であった。そこで、これらの3糖単位よりも入手が容易
で、ウイルスが認識性を有する新規化合物及びその製造
方法の開発が要望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヒトインフ
ルエンザウイルスやエイズウイルス(HIV)が認識性を有
し、前述の3糖単位に代わるウイルス捕捉材料となりう
る硫酸化ガラクトース化合物及びその高分子化合物を提
供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、分子の特定の箇所
に硫酸エステル基を持つ糖誘導体及びそれを含む高分子
化合物の合成に成功し、この知見に基づき本発明をなす
に至った。すなわち上記の目的は以下の発明により達成
された。 (1)下記式(I−1)、式(I−2)又は式(I−
3)で表わされるガラクトース化合物。
【0005】
化606
【0006】(式中、R1 は水素原子又はアセチル基と
同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基を
表わし、R2 は水素原子又はアセチル基より脱アシル化
しやすいアシル基を表わし、R3 は水素原子、アセチル
基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル
基又はシリル基を表わし、R4 は水素原子、アセチル基
より脱アシル化しやすいアシル基又はシリル基を表わ
す。式中の2つ又は3つのR1 は、互いに同一でも異な
ってもよい。また、3位と4位又は4位と6位の置換基
が互いに結合してアセタール又はヘミアセタールを形成
してもよい。ただし、2位、3位、4位及び6位の置換
基がすべて水素原子であることはない。Yは、ニトロフ
ェノキシ基、アミノフェノキシ基、アクリルアミドフェ
ノキシ基、アリルフェノキシ基、アリルアルキルオキシ
基、アルキルオキシ基、アリルオキシ基を表わす。) (2)下記式(II)、式(III) 又は式(IV)で表わされ
る硫酸化ガラクトース化合物。
【0007】
化707
【0008】(式中、R5 、R6 及びR7 は水素原子、
アシル基又はシリル基を表わす。R5〜R7 は、互いに
同一でも異なってもよい。また、式(II)においてR6
とR7は互いに結合してアセタール、ヘミアセタールを
形成してもよい。Yは前記と同義である。Mは水素原
子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミン
を表わす。) (3)下記式(VIII)で表わされる硫酸化ガラクトース
化合物。
【0009】
化808
【0010】(式中、R5 、R6 、Y及びMは前記と同
義である。) (4)下記式(V)、式(VI)、式(VII)又は式(IX)
で表わされる硫酸化ガラクトース高分子化合物。
【0011】
化909
【0012】(式中、R5 、R6 及びR7 は前記と同義
である。式(V)においてR6 とR7は互いに結合して
アセタール、ヘミアセタールを形成してもよい。Aは
【0013】
化1010
【0014】(式中、*でピラノース環の1位と結合す
る。Lはアルキレン、アリーレン、−O−、−CO−、
−NH−より選ばれる1つ以上の組み合わせよりなる連
結基を表わす。)を表わし、Bはガラクトース残基を有
しない繰り返し単位からなる部分を表わす。pとqはモ
ル比(%)であり、0<p≦100、かつ、pとqの和
は100である。) (5)(1)項記載の式(I−1)、式(I−2)又は
式(I−3)で表わされるガラクトース化合物を硫酸化
試薬と反応させることを特徴とする下記式(II)、式(I
II) 又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラクトース化合
物の製造方法。
【0015】
化1111
【0016】(式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前
記と同義である。) (6)(3)項記載の式(VIII)で表わされるガラクト
ース化合物の一方の硫酸エステル基のみをスルファター
ゼの存在下で加水分解することを特徴とする下記式(I
I)又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラクトース化合
物の製造方法。
【0017】
化1212
【0018】(式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前
記と同義である。) なお、本発明において脱アシル化は、加水分解反応のほ
か、エステル交換等の反応も含むものである。
【0019】
【発明の実施の形態】式(I−1)、式(I−2)、式
(I−3)で表わされるガラクトース化合物はそれぞ
れ、式(II)、式(III) 、式(IV)で表わされる化合物
の合成中間体である。
【0020】式(I−1)〜(I−3)において、R1
は水素原子又はアシル基を表わす。このアシル基は、通
常のエステル交換(加水分解)反応条件(pH9〜12
程度の塩基性溶媒、例えばメタノール−ナトリウムメチ
ラートなど)で脱離可能で、アセチル基と同等もしくは
それ以上脱離しにくい基であり、例えばベンゾイル基
(置換されていてもよい。例えば、ベンゾイル基、4−
メトキシベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基な
ど)、ピバロイル基などが挙げられ、好ましくはベンゾ
イル基又はピバロイル基である。式中の2つ又は3つの
1 は、互いに同一でも異なってもよい。
【0021】R2 は水素原子又はアセチル基のような通
常の脂肪族より穏和な条件(R1 より中性に近い条件)
で脱離可能なアシル基を表わし、このようなアシル基と
しては、例えば、レヴリノイル基、モノクロロ酢酸エス
テル基などが挙げられ、好ましくは水素原子又はレヴリ
ノイル基である。
【0022】R3 は、水素原子、R1 で挙げたと同様の
アシル基、又はシリル基(置換されていてもよい。例え
ば、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニ
ルシリル基など)を表わし、R1 と同じ基であることが
好ましく、ベンゾイル基がさらに好ましい。R4 は水素
原子、R2 で挙げたと同様のアシル基、又はR3 で挙げ
たと同様のシリル基を表わし、好ましくはシリル基であ
る。ただし、R1〜R4は、2位、3位、4位及び6位
において、すべて水素原子であることはない。
【0023】Yは、ニトロフェノキシ基(例えばp−ニ
トロフェノキシ、o−ニトロフェノキシ、m−ニトロフ
ェノキシ)、アミノフェノキシ基(例えばp−アミノフ
ェノキシ)、アクリルアミドフェノキシ基(例えばp−
アクリルアミドフェノキシ)、アリルフェノキシ基(例
えば2−アリルフェノキシ)、アリルアルキルオキシ基
(好ましくは末端に二重結合を有する-O(CH2)nCH2CH=CH
2 、nは好ましくは1〜5の整数)、アルキルオキシ基
(好ましくは炭素数1〜4、例えばメトキシ、エトキシ
など)、アリルオキシ基を表わす。Yは好ましくはニト
ロフェノキシ基である。
【0024】式(I−1)においては、3位と4位の置
換基が互いに結合してアセタール構造を形成してもよ
い。このアセタール構造としては、例えばイソプロピリ
デン基、シクロヘキシリデン基などが挙げられ、また、
有機スズによるスタニレンアセタール構造(例えばジブ
チルスタニレンアセタール)なども含まれる。式(I−
2)及び(I−3)においては、4位と6位の置換基が
互いに結合してアセタール又はヘミアセタール構造を形
成してもよい。このアセタール構造としては、例えばイ
ソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などが挙げら
れ、また、ヘミアセタール構造としてはベンジリデン
基、メトキシベンジリデン基などが挙げられる。
【0025】式(I−1)の化合物においては、3位が
水素原子又はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル
基であり、2位及び4位が水素原子又はアセチル基と同
等もしくはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基、6
位が2位及び4位と同様のアシル基又はシリル基であ
る。式(I−1)で表わされる化合物は、このような置
換基を有することにより、2位、4位及び6位は保護し
たまま、3位のみを選択的に脱保護し、硫酸化すること
が可能である。式(I−2)、(I−3)の化合物も同
様に、4位又は6位のみを選択的に脱保護、硫酸化でき
る組み合わせでの置換基を有する化合物である。
【0026】式(I−1)の化合物としては3位と4位
の置換基が結合してスタニレンアセタールを形成してお
り、2位と6位の置換基が水素原子又はベンゾイル基の
ものが好ましく、2位と6位が水素原子のものが特に好
ましい。式(I−2)の化合物としてはR1 とR3 がベ
ンゾイル基でR2が水素原子のもの、またはR1 がベン
ゾイル基、R2 が水素原子でR3 がシリル基のものが好
ましく、式(I−3)の化合物としてはR1 がベンゾイ
ル基でR4 がシリル基のものが好ましい。
【0027】式(II)、式(III) 及び式(IV)において
5 、R6 及びR7 は水素原子、又は保護基としてのア
シル基もしくはシリル基を表わし、アシル基としては互
いに同一でも異なっていてもよい。アシル基及びシリル
基の例としては、特に制限はないが、好ましくは前記R
1 〜R4 で挙げたものが挙げられる。式(II)において
6 とR7 は、前記式(I−1)〜(I−3)で挙げた
と同様のアセタール又はヘミアセタールを形成してもよ
い。Yは式(I−1)〜(I−3)のものと同義であ
る。Mは水素原子、アルカリ金属原子(例えばナトリウ
ム原子、カリウム原子、リチウム原子など)、有機アミ
ン(例えばトリメチルアミノ、トリエチルアミノなどの
置換もしくは無置換アミノ基など)、アンモニウム基を
表わし、好ましくはナトリウム原子である。式(II)の
化合物のうち、R5 及びR7 が水素原子又はベンゾイル
基でR6 が水素原子のものが好ましく、R5 〜R7 が水
素原子のものが特に好ましい。式(III) 及び式(IV)の
化合物のうち、R5 〜R7 が水素原子又はベンゾイル基
のものが好ましく、R5 〜R7 が水素原子のものが特に
好ましい。
【0028】式(I−1)の化合物より式(II)の化合
物を製造する合成ルートを次のスキーム1に示す。
【0029】
化1313
【0030】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R12
はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル基を表わ
し、R13はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシ
ル化しにくいアシル基又はシリル基を表わす。式中の2
つのR11は、互いに同一でも異なってもよい。Y及びM
は前記式(I−1)及び式(II)で定義したものと同義
である。) この合成方法の一例について説明すると、まず市販の化
合物1(例えば、ニトロフェニルガラクトース)の3位
及び4位の2つの水酸基をアセタール化して化合物2を
得る。この反応はまず、アセトン(無水)、ジメトキシ
プロパンなどのアセタール供給源とともに、酸性触媒の
存在下反応させる。酸触媒としては、カンファースルホ
ン酸(CSA)、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)、
ピリジニウムp−トルエンスルホン酸(PPTS)、塩
化トリメチルシリル(TMSCl)、イオン交換樹脂
(H+ 型)などが用いられる。溶媒としては、無溶媒
(つまり、アセタール供給源としてのアセトン、ジメト
キシプロパン及び両混合溶媒のみ)、又はジメチルホル
ムアミドなどが用いられ、反応温度は通常0℃〜130
℃、反応時間は通常5分〜5日程度である。
【0031】こうして得た化合物2をアシル化して化合
物3を得る。この反応はまず、ジシクロヘキシルカルボ
ジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボ
ジイミド化合物の存在下、例えば安息香酸、酢酸などと
の反応で脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と
反応させることにより行うことができる。あるいは別法
として、溶媒として通常ピリジンの存在下、必要に応じ
てジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩
基の存在下で、前記カルボン酸の無水物または対応する
酸塩化物、酸臭化物と反応させることにより行うことが
できる。溶媒としては、前者の場合、通常ジメチルホル
ムアミド、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロ
ロエタン又はこれらの混液が用いられ、後者の場合に
は、通常ピリジンの他、塩化メチレン、ジクロロエタ
ン、クロロフォルムおよびこれらの混液などが用いら
れ、反応温度は、いずれの場合も通常0℃〜50℃、反
応時間は通常5分間〜5日間程度である。
【0032】R13がシリル基の場合は、例えば、ハロゲ
ン化シラン化合物又はトリフルオロメタンスルホン酸の
シラン化合物をピリジン、ルチジン、トリエチルアミ
ン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾールなどのアミ
ンとともに加え反応させる。溶媒としては、通常ピリジ
ン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、塩化メチ
レン、ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの
混液などが用いられ、反応温度は、いずれも通常−20
℃〜50℃、反応時間は通常5分間〜7日間程度であ
る。この化合物3を酸処理して化合物4を得る。この酸
処理には、カンファースルホン酸(CSA)、p−トル
エンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸
(PPTS)、酢酸、硫酸、塩酸、イオン交換樹脂(H
+ 型)、トリフルオロ酢酸(TFA)などの酸を用いる
ことができる。溶媒としては、通常メタノール、エタノ
ール、メタノール−塩化メチレン、水などが用いられ、
反応温度は−20℃〜80℃、反応時間は、通常5分〜
3日程度である。
【0033】この化合物4をエステル化して化合物5を
得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジイミド、
ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド化
合物の存在下で、レブリン酸、モノクロロ酢酸などのカ
ルボン酸又はそれらの酸無水物と反応させて行うことが
できる。あるいは別法として、溶媒として通常ピリジン
の存在下、必要に応じてジメチルアミノピリジン、トリ
エチルアミンなどの塩基の存在下で、前記カルボン酸の
無水物または対応する酸塩化物、酸臭化物と反応させる
ことにより行うことができる。溶媒としては、前者の場
合、通常ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、
塩化メチレン、ジクロロエタン又はこれらの混液が用い
られ、後者の場合には、通常ピリジン、塩化メチレン、
ジクロロエタン、クロロフォルムおよびこれらの混液な
どが用いられ、反応温度は、いずれにおいても通常0℃
〜50℃、反応時間は通常5分間〜5日間程度である。
【0034】ついで化合物5をさらにエステル化して化
合物6を得る。この反応は、ジシクロヘキシルカルボジ
イミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジ
イミド化合物の存在下、例えば安息香酸、酢酸などとの
反応で脱離可能なアシル基を導入し得るカルボン酸と反
応させることにより行うことができる。あるいは別法と
して、溶媒として通常ピリジンの存在下、必要に応じて
ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどの塩基
の存在下で、前記カルボン酸の無水物または対応する酸
塩化物、酸臭化物と反応させることにより行うことがで
きる。溶媒としては、前者の場合、通常ジメチルホルム
アミド、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロ
エタン又はこれらの混液が用いられ、後者の場合には、
通常ピリジン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロ
フォルムおよびこれらの混液などが用いられ、反応温度
は、前者後者ともに通常0〜50℃、反応時間は通常5
分間〜5日間程度である。
【0035】このようにして得られた化合物6の選択的
脱保護を行い、化合物7を得る。この反応は、ヒドラジ
ン酢酸、ヒドラジン−ピペリジン、水酸化リチウム−過
酸化水素などで処理することにより行うことができる。
溶媒としては、通常メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、トルエン、ピリジン、THFなどが用いら
れ、反応温度は、通常−78℃〜50℃、反応時間は通
常5分間〜3日間である。
【0036】ついで、化合物7を硫酸化し硫酸エステル
基を導入して化合物8を得る。この反応は、トリメチル
アミン三酸化硫黄錯体、トリエチルアミン三酸化硫黄錯
体、ジメチルホルムアミド三酸化硫黄錯体、ピリジン三
酸化硫黄錯体、クロロスルホン酸などの硫酸化試薬と反
応させることにより行うことができる。溶媒としては、
通常、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ヘキサメチル
フォスフォアミド(HMPA、あるいはヘキサメチルフ
ォスフォラストリアミド(HMPT)ともいう)、ジメ
チルスルフォキシド(DMSO)などが用いられ、反応
温度は、0℃〜80℃、反応時間は通常5分〜1週間で
ある。必要に応じ、得られた化合物をイオン交換樹脂
(Na+ タイプなど)で処理することにより、Mをナト
リウム原子などに変換することができる。
【0037】ついで化合物8を、ナトリウムメトキシ
ド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化リチウムなどの塩基で処理して脱アシ
ル化すると、本発明の式(II)においてR5 、R6 及び
7 が全て水素原子である化合物9を得ることができ
る。溶媒としては、通常メタノール、エタノール、テト
ラヒドロフラン(THF)、メタノール−THF、エタ
ノール−THFなどが用いられ、反応温度は通常−30
℃〜80℃、反応時間は、通常5分間〜5日程度であ
る。R13(式(I−1)の化合物のR3 )がシリル基の
時には、このシリル基の除去は次のようにして行う。テ
トラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化カリウム、
フッ化水素酸、フッ化水素−ピリジン、トリフルオロ酢
酸、三フッ化ホウ素エーテル錯体などの存在下、必要に
応じて酢酸を添加して行う。溶媒としては、通常テトラ
ヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、塩化メ
チレン、クロロホルム、トルエン、アセトニトリル、エ
タノール、水及びこれらの混液などが用いられ、反応温
度は通常0℃〜100℃、反応時間は、通常5分間〜1
0日程度である。
【0038】化合物4から化合物8を得る別法として、
次のような方法もある。酸化ジブチルスズ、化合物4及
びベンゼンあるいはトルエン(必要に応じて、メタノー
ル、エタノール、テトラヒドロフラン及びジメチルホル
ムアミドなどの親水性溶媒の存在下)とともに加熱還流
を行いながら、反応で生成する水を除去する。その後、
溶媒を留去させた後、これを先に示した硫酸化試薬で処
理することにより化合物8を得る。硫酸化試薬を行うと
きの溶媒としては、通常、ジメチルホルムアミド、ピリ
ジン、ヘキサメチルフォスフォアミド(HMPA、ある
いは、ヘキサメチルフォスフォラストリアミド(HMP
T)ともいう)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)
などが用いられ、反応温度は、0℃〜80℃、反応時間
は通常5分〜1週間である。ガラクトースの水酸基は6
位>3位>4位の順で反応性が高いため、上記のように
して化合物4を硫酸化すると、3位に硫酸基が導入され
ることとなる。
【0039】化合物1から一段階で化合物9を得るに
は、化合物4の代わりに化合物1を用い、上述した酸化
ジブチルスズによる硫酸化法と同様の方法を用いてもよ
い。あるいはスキーム1の最下段に示すように、化合物
1の一級水酸基のみをアシル化又はシリル化した後(化
合物20)、上記と同様に有機スズを用いて硫酸化する
(化合物21)こともできる。化合物1の一級水酸基の
選択的アシル化及びシリル化は、化合物3の合成方法と
同じである。ついで、この化合物21の脱保護を行い硫
酸化糖誘導体9を得ることができる。この脱保護は、化
合物8→化合物9と同じ方法で行うことができる。
【0040】なお、Yとしてアリルオキシ基やベンジル
オキシ基などを持つ場合には、化合物2から9までのい
ずれのステップにおいても適宜自由にこれらを除去し、
さらにYをイミデート基やハロゲン原子などに変換した
後、p−ニトロフェノキシ基やアリルフェノキシ基など
へも変換できる。アリルオキシ基の除去は、(シクロオ
クタジエン)ビス(メチルジフェニルホスフィン)イリ
ジウムヘキサフルオロホスフェート、酢酸パラジウム、
塩化パラジウムなどの存在下テトラヒドロフラン中二重
結合を異性化するかあるいは別法として、t−ブトキシ
カリウムなどの強塩基性の試薬とともに加熱後、ヨウ素
及び必要に応じて炭酸水素ナトリウムの存在下、異性化
した二重結合の除去を行う。あるいは、異性化の後に塩
化水銀、酸化銀の存在下に同反応を行ってもよい。反応
時間は通常5分〜5日程度、反応温度は0℃〜120℃
である。Yとしてベンジル基(置換されているものを含
む)を有する場合には、パラジウム、パラジウム−炭
素、水酸化パラジウムなどとともに、水素の存在下で接
触還元して除去することができる。溶媒としては、通常
メタノール、エタノール、t−ブチルアルコール、水、
テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、塩化メチレ
ン、クロロホルム、トルエン、酢酸エステル、ジオキサ
ン、ジメチルホルムアミド、酢酸及びこれらの混液など
が用いられ、反応温度は通常0℃〜100℃、反応時間
は、通常5分間〜10日程度である。
【0041】このようにしてアリルオキシ基又はベンジ
ル基などを除去して得られるヘミアセタール糖誘導体
は、次のようにしてYがイミデート基の化合物やYがハ
ロゲン原子である臭素化糖やフッ素化糖などにさらに変
換できる。イミデート基への変換は、ヘミアセタール体
とトリクロロアセトニトリル及びジアザビシクロウンデ
センもしくはt−ブトキシカリウム又は水素化ナトリウ
ムの存在下行う。ハロゲン原子への変換は、前記のR11
の導入と同様の方法によりYの位置をアシル化した後、
臭化水素−酢酸溶液中で臭素化する。この臭素化体をア
セトニトリル中フッ化銀で処理してフッ素化糖へと導い
てもよい。あるいは、ヘミアセタール体とジエチルアミ
ノスルファートリフルオリドで直接フッ素化してもよ
い。反応溶媒及び温度は、ベンジル基の除去の場合と同
様である。
【0042】このようにして得られたイミデート糖誘導
体とハロゲン化糖は、次のようにしてYにニトロフェノ
キシ基を有する化合物へ変換できる。イミデート体を用
いる場合には、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯
体、トリメチルシリルトリフレート、t−ブチルジメチ
ルシリルトリフレート、トリエトキシシリルトリフレー
トなどの存在下、p−ニトロフェノール(又はo−ニト
ロフェノール、m−ニトロフェノール)などの試薬と反
応させて得ることができる。ハロゲン化糖のうち臭化物
を用いる場合には、炭酸銀、酸化銀などとともに反応さ
せればよい。あるいは、ニトロフェノールのアルカリ金
属塩とともにアセトンなどの溶媒中で加熱する方法もあ
る。フッ素化糖の場合には、過塩素酸銀、ビスシクロペ
ンタジエニル ハフノセン(又はジルコニウム)クロリ
ド、シルバートリフレート及びこれらの混合物とニトロ
フェノール及びとともに反応させることができる。この
ほかに、先に示したYの位置をアシル化した化合物に、
p−ニトロフェノキシ基などを直接導入することもでき
る。例えば、Yの位置にアセチル基を有する化合物に対
して、トリメチルシリルトリフレートなどの酸触媒の存
在下、直接p−ニトロフェノキシ基などを導入できる。
いずれの場合も、反応温度は、−78℃〜100℃、反
応時間は、5分〜1週間である。このようにして、反応
ステップがある程度進んだところで、Yの保護基を適宜
自由に変換できる。
【0043】スキーム1において、R11及びR13はベン
ゾイル基が好ましく、R12はレヴリノイル基が好まし
い。また、化合物2のアセタール構造がスタニレンアセ
タールであるのが特に好ましい。なお、スキーム1で示
した合成ルートで合成した化合物9の水酸基は、常法に
よりR5 〜R7 で表わされる基に置換、修飾することが
できる。アシル化、シリル化については、スキーム1に
ついての説明で挙げたと同様の方法で行うことができ
る。
【0044】次に式(I−3)の化合物より式(IV)の
化合物を製造する合成ルートを下記スキーム2に示す。
【0045】
化1414
【0046】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R14
はアセチル基より脱アシル化しやすいアシル基又はシリ
ル基を表わす。式中の複数のR11は、互いに同一でも異
なってもよい。Y及びMは前記式(I−3)及び式(I
V)で定義したものと同義である。) まず、スキーム1において用いたのと同じ化合物1につ
いて、4位と6位にアセタール基を導入して化合物10
へと導く。このアセタール化は、スキーム1の化合物1
→化合物2の変換と同様にして行うことができる。この
とき、4位と6位にヘミアセタール基を導入してもよ
く、ヘミアセタール化はベンズアルデヒド、ベンズアル
デヒドジメチルアセタールなどとともに酸触媒の存在下
行うことができる。酸触媒としては、アセタール化を行
う時の酸触媒に加えて塩化亜鉛なども通常用いられる。
溶媒としては、アセタール化を行うときに用いるものと
同様であるが、時として溶媒を添加しないこともある。
反応時間、温度ともにアセタール化の条件と同様であ
る。次に2位と3位にアシル基を導入して化合物11へ
と導くことができる。このアシル化は、スキーム1の化
合物2→化合物3でR11を導入した方法と同様にして行
うことができる。反応条件についても同様である。
【0047】次に化合物11の4位と6位のアセタール
(又はヘミアセタール)を酸性条件下で除去して化合物
12へと変換することができる。この反応は、スキーム
1の化合物3→化合物4の反応と同様にして行うことが
できる。ヘミアセタールの除去も、アセタールの場合と
同様である。化合物12の一級水酸基に選択的にレブリ
ノイル基やモノクロロ酢酸エステル基などのようなアセ
チル基より穏和な条件で脱離可能な置換基を導入する
か、又はt−ブチルジメチルシリル基やt−ブチルジフ
ェニルシリル基などのシリル基を導入して化合物13へ
と導くことができる。レブリノイル基やモノクロロ酢酸
エステル基などの導入は、スキーム1の化合物4→化合
物5のR12の導入と同様である。シリル基の導入は、ス
キーム1の化合物2→化合物3のR13にシリル基を導入
した場合と同じである。化合物13の4位にアシル基
(R11)を導入して化合物14に導くことができる。こ
のアシル化の反応は、スキーム2の化合物11の2位及
び3位へのアシル基の導入と同様である。
【0048】次に化合物14のR14(アセチル基より脱
アシル化しやすいアシル基又はシリル基)を除去して化
合物15に変換できる。R14の除去は、スキーム1の化
合物6→化合物7の反応、又は化合物8→化合物9(R
13にシリル基を用いた時に相当する)の反応と同様にし
て行うことができる。その後化合物15を硫酸化試薬を
用いて硫酸化を行い化合物16に導くことができる。硫
酸化の条件は、スキーム1の化合物7→化合物8の変換
と同様である。化合物16の脱保護を行い、化合物17
を得ることができる。この脱保護は、スキーム1の化合
物8→化合物9と同様にして行うことができる。
【0049】なお、化合物1から化合物18を経て化合
物14に導く方法もある。つまり、化合物1の一級水酸
基に選択的にシリル基を導入して化合物18へと変換す
る。このシリル化の条件は、スキーム1の化合物2→化
合物3のR13にシリル基を導入した場合と同じである。
次に、残りの3つの水酸基をアシル化して化合物14に
導く。このアシル化の条件は、化合物11の2位及び3
位へのアシル基の導入と同様である。
【0050】さらに、化合物12より化合物19を経て
化合物17に導く方法もある。化合物12の一級水酸基
を選択的に硫酸化して化合物19へまず導く。この選択
的な硫酸化は、スキーム1で示した硫酸化試薬と反応条
件により行うことができる。スキーム1の化合物4→化
合物8と同様、4位に比べ6位の水酸基の反応性が高い
ため、6位が選択的に硫酸化される。化合物19は、脱
保護して化合物17へと導くことができる。この脱保護
の条件は、化合物16→化合物17と同じである。
【0051】化合物1から化合物17を一段階で得る場
合には、スキーム1で用いた酸化ジブチルスズの代わり
にビスジブチルスズオキシドを用いる以外は、スキーム
1の化合物4→化合物8の反応と同様にして行う。Yの
変換については、スキーム1で述べたと同様にして適宜
行うことができる。また、スキーム1の化合物9と同
様、化合物17の水酸基もR5 〜R7 で表わされる基に
置換、修飾できる。スキーム2においてR11はベンゾイ
ル基が好ましく、R14はシリル基が好ましい。
【0052】次に式(I−2)の化合物より式(III) の
化合物を製造する合成ルートを下記スキーム3に示す。
【0053】
化1515
【0054】(式中、R11はアセチル基と同等もしくは
それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R13
はアセチル基と同等もしくはそれ以上に脱アシル化しに
くいアシル基又はシリル基を表わす。式中の複数のR11
は、互いに同一でも異なってもよい。Y及びMは前記式
(I−2)及び式(III) で定義したものと同義であ
る。) まず、スキーム1で合成した化合物4の3位の水酸基を
選択的にアシル化して化合物28を得ることができる。
この選択的アシル化反応は、スキーム1及びスキーム2
において述べたアシル化反応と同様にして行うことがで
きるが、通常、使用されるカルボン酸、その酸無水物、
及び対応する酸ハロゲン化物(より好ましくは塩化物)
のモル比を、化合物4 1molに対して通常0.8〜
1.5molとする。反応時間は一般に短く、反応温度
も低いことが多いが、例外もある。通常、1分から5日
間程度、−10℃〜80℃である。なお、この化合物4
は、化合物22と23を経て、スキーム1の化合物20
からも合成可能である。化合物22と化合物23の合成
法は、スキーム1の化合物1→化合物2→化合物3と同
様である。化合物28は、先に示した硫酸化試薬を用い
て硫酸基を導入して化合物24に導くことができる。化
合物24はさらに脱保護を行い化合物25へと導くこと
ができる。この脱保護の方法もすでにスキーム1及びス
キーム2において述べたと同様である。
【0055】化合物25を得る別法としては、化合物1
2から化合物26と化合物27をへて合成する方法があ
る。すなわち、スキーム1の化合物2→化合物3と同様
にして、化合物12の一級水酸基に保護基R13を導入し
て化合物26へと変換することができる。その後、先に
示した硫酸化法により4位に硫酸基を導入して化合物2
7にした後、脱保護を行い化合物25を合成することが
できる。これらの合成法はいずれもすでに示した方法を
利用して行うことができる。Yの変換については、スキ
ーム1で述べたと同様にして適宜行うことができる。ま
た、スキーム1の化合物9と同様、化合物25の水酸基
もR5 〜R7 で表わされる基に置換、修飾できる。スキ
ーム3においてR11及びR13はベンゾイル基が好まし
い。
【0056】また、式(II)又は式(IV)で表わされる
化合物は、式(VIII)で表わされる3位と6位に2つ硫
酸エステル基を有するガラクトース化合物からも製造で
きる。まず式(VIII)で表わされる化合物について説明
する。式(VIII)においてR5 及びR6 は式(II)又は
式(IV)におけると同様の水素原子、アシル基又はシリ
ル基であり、R5 及びR6 が水素原子である化合物が好
ましい。R5 及びR6が水素原子である式(VIII)の化
合物は下記スキーム4に示す方法で合成できる。
【0057】
化1616
【0058】(式中、Y及びMは前記式(II)及び式
(IV)で定義したものと同義である。) スキーム1及びスキーム2で用いたと同じ化合物1に
は、3位と6位の2カ所に同時に硫酸エステル基を導入
することができる。2カ所を硫酸化する場合には、まず
化合物1を乾燥ベンゼン−テトラヒドロフラン(TH
F)中、ビストリブチルスズオキシドとともに還流脱水
を行い、硫酸化試薬とともに反応させる。硫酸化試薬
は、スキーム1の説明において述べたと同様のものを用
いることができる(スキーム4では例としてトリメチル
アミン三酸化硫黄錯体を示した)。ビストリブチルスズ
オキシドの使用量は化合物1 1モルに対し1〜3モル
が好ましい。硫酸化試薬は化合物1 1モルに対し通常
2モル以上、好ましくは3〜4モル用いる。反応時間は
通常、30分〜5時間、反応温度は通常、0〜80℃で
ある。スキーム4ではMがトリメチルアミノ基の化合物
29が得られるが、必要に応じこの後、常法により処理
してMを変換することができる。例えばNa+ タイプの
イオン交換樹脂で処理すればMがアルカリ金属原子の化
合物を得ることができる。得られた化合物29の水酸基
は、スキーム1の化合物9について述べたと同様に、常
法によりR5 、R6 で表わされる基に置換、修飾するこ
とができる。
【0059】次に、式(VIII)の化合物より式(II)及
び式(IV)の化合物を合成する方法について説明する。
式(VIII)で表わされる硫酸エステル基を2つ有する化
合物は、酵素(スルファターゼ)を用いて選択的に一方
の硫酸エステル基のみを加水分解できる。通常、この酵
素反応はpH3〜8、好ましくは6〜7.5において、
酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス緩
衝液などの緩衝液中で、10〜50℃、好ましくは35
〜38℃で行うことができる。反応時間は通常、5分〜
1週間である。加水分解される硫酸基の選択性は、酵素
の起源(例えば、軟体動物由来なのか、微生物由来なの
かなど)や反応時間などによって異なる。酵素は式(VI
II)で表わされる化合物に対し好ましくは1〜30wt
%使用する。上記化合物29よりスキーム1の化合物9
とスキーム2の化合物17を得るルートを下記スキーム
5に示す。
【0060】
化1717
【0061】(式中、Y及びMは前記式(II)及び式
(IV)で定義したものと同義である。) 化合物29を上記した緩衝液中、37℃近傍でスルファ
ターゼで処理すると、スルファターゼの種類や反応時間
などに応じ、化合物17もしくは化合物9が選択的に、
または混合物として得られる。
【0062】次に、式(V)、式(VI)、式(VII)又は
式(IX)で表わされる本発明のガラクトース高分子化合
物について説明する。式(V)、式(VI)、式(VII)又
は式(IX)で表わされる化合物は、式中、Aで表わされ
る主鎖がペンダント(修飾残基)として式(II)、式(I
II) 、式(IV)又は式(VIII)の化合物を有する高分子
化合物である。Aは
【0063】
化1818
【0064】(式中、*ピラノース環の1位と結合す
る。Lはアルキレン、アリーレン、−O−、−CO−、
−NH−より選ばれる1つ以上の組み合わせよりなる連
結基を表わす。)で表わされるスペーサーである。前記
Lのアルキレンは好ましくは炭素数1〜20、アリーレ
ンは好ましくは炭素数6〜30で、それぞれ置換されて
いてもよい。前記の連結基の例としては
【0065】
化1919
【0066】(式中、nは1〜5の整数を表わす。)な
どがある。Aは、特に好ましくは
【0067】
化2020
【0068】から選ばれる1つ以上が単独重合又は共重
合したものである。Bは、ガラクトース残基を有しない
繰り返し単位であり、Aがペンダントとして有するガラ
クトース残基の、高分子化合物中の含有率を調整するな
どのための部分であり、必要により所定比率で設ける。
Bは例えばエチレン性不飽和モノマーから誘導される繰
り返し単位であり、例えばアクリルアミド類、メタクリ
ルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エス
テル類、オレフィン類などより誘導される繰り返し単位
やLと同様の基などがあげられ、好ましくはアクリルア
ミド又はメタクリルアミドより誘導される繰り返し単位
である。AとBの特に好ましい組み合わせは、次の通り
である。
【0069】
化2121
【0070】(式中、nは1〜5の整数を表わす。) 式(V)、式(VI)及び式(VII)において、pとqはモ
ル比(%)であり、0<p≦100、かつ、pとqの和
は100であり、pは好ましくは5以上である。この高
分子化合物の分子量は特に制限するものではないが、好
ましくは10000以上であり、末端は水素原子、アル
キル基など、特に制限はない。
【0071】式(V)の化合物の合成方法について、ス
キーム1の化合物9を高分子化する場合を例に説明す
る。高分子化を行う場合、Yを重合性の基(例えばアク
リルアミドフェノキシ基、アリルフェノキシ基、ビニル
ベンジルオキシ基、アリルアルキルオキシ基など)に変
換し、これを単独重合又は他の化合物と共重合させる。
例えば化合物9においてYとしてp−ニトロフェノキシ
基を持つ場合には、このニトロ基を還元してp−アミノ
フェノキシ基へと変換する。この反応は、パラジウム、
パラジウム炭素、水酸化パラジウムなどとともに、水素
の存在下接触還元を行う。溶媒としては、通常メタノー
ル、エタノール、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエ
ーテル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、酢酸
エステル及びこれらの混液などが用いられ、反応温度は
通常0℃〜100℃、反応時間は、通常5分間〜10日
程度である。別法として、水素化リチウムアルミニウ
ム、水素化ホウ素ナトリウムの存在下、同反応を行うこ
ともできる。溶媒としては、メタノール、エタノール、
テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが通常用い
られる。反応温度は通常0℃〜100℃、反応時間は、
通常30分間〜10日程度である。
【0072】還元したp−アミノフェノキシ糖誘導体
は、さらにアクリル酸又はアクリル酸クロリドなどと反
応させてp−アクリルアミドフェノキシ誘導体へと変換
できる。この反応は、スキーム1においてR11を導入し
た方法と同様である。ついで、このp−アクリルアミド
フェノキシ誘導体の単量体を、単独重合又はアクリルア
ミド、メタクリルアミドもしくはアクリル酸エステルな
どとともに共重合させて高分子体を得る。この重合反応
は、単独重合の場合には単量体のみ、共重合の場合には
単量体を、アクリルアミドなどの存在下、過硫酸アンモ
ニウム、テトラエチレンジアミンなどと反応させて行う
ことができる。なお、以上の一連の操作、すなわち、還
元、アミド化及び高分子化反応は、保護基を有している
スキーム1の化合物8及び21においても、さらには脱
保護の完了した化合物9においても、行うことができ
る。化合物8又は21を用いて高分子化反応を行った
後、脱保護を行う場合は、単量体の時に行った方法と同
様にして行うことができる。また、p−アクリルアミド
フェノキシ誘導体を例に説明したが、Yに他の重合性の
基を有する単量体を用いる場合も、高分子化の操作は同
様である。また、異なるYを有する複数種の単量体を共
重合させることもできる。式(III) 又は式(IV)の化合
物より、式(VI)又は式(VII)の化合物を合成する場合
も、上記と同様の方法で行うことができる。スキーム2
においては保護基を有する化合物16及び19、あるい
は脱保護の完了した化合物17より高分子化を行うこと
ができ、スキーム3においては保護基を有する化合物2
4及び27、あるいは脱保護の完了した化合物25より
高分子化を行うことができる。式(VIII)の化合物より
式(IX)の化合物を合成する場合も上記と同様であり、
スキーム4の化合物29、あるいは化合物29の水酸基
を保護基に変換した化合物からも上記と同様の高分子化
を行うことができる。
【0073】
【実施例】本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明す
る。前記スキーム1において、R11及びR13がベンゾイ
ル基、Mがナトリウム原子、Yがp−ニトロフェノキシ
基の場合について合成を行った。各化合物の番号はスキ
ーム1に示したものと対応する。 実施例1(化合物1→化合物2) 化合物1(3.0g、9.96mmol)、を無水アセトン600m
lに溶かしDowex H+(商品名、ダウケミカル社製)120
mg を加え18時間室温下で攪拌した。トリエチルアミ
ン10mlを加えDowex をろ過して除きろ液を減圧濃縮し
た。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、
60F254、300ml 、塩化メチレン−メタノール=100:1 )
で精製して化合物2(2.21g 、65% )を得た。 [ α] D −58. 7 (C=1. 7、メタノール)
m.p 154-157 ℃
【0074】実施例2(化合物2→化合物3) 化合物2(104mg 、0.305mmol )、ジメチルアミノピリ
ジン(5mg )をピリジン(10ml)に溶かし、塩化ベンゾ
イル(0.11ml、0.95mmol)を加え、室温で攪拌した。1
7時間後、反応液に氷片、飽和炭酸水素ナトリウム水溶
液を加え、クロロホルム50mlで3回抽出した。抽出し
た有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗
浄後、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧留去した。残さ
をシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、60F
254 、30ml、トルエン−酢酸エチル 4:1)で精製
して化合物3(158mg 、94% )を得た。 [ α] D +4.6 (C=1.6、クロロホルム) m.p 1
77-178 ℃ 元素分析 calcd. for C29H27NO10 C:63.38 、H:4.95、N:2.55 found C:63.46 、H:4.94、N:2.49
【0075】実施例3(化合物3→化合物4) 化合物3(4.03g 、7.3mmol )、塩化メチレン30ml、メ
タノール60ml、カンファースルホン酸(CSA)(682m
g 、2.9mmol )を加え、室温で攪拌した。16.5時間後、
5mlのトリエチルアミンを加え減圧濃縮した。残さを直
ちにシリカゲルクロマトグラフィー(メルク社、60F
254 、400ml 、塩化メチレン−メタノール=10:1)で精
製して化合物4(3.35g 、90% )を得た。 [ α] D +14.2 (C=0. 68、メタノール)
m.p 192-194 ℃ 元素分析 calcd. for C26H23NO10 C:61.30 、 H:4.55 、N:2.75 found C:60.82 、 H:4.63 、N:2.64
【0076】実施例4(化合物4→化合物8) 化合物4(0.95g 、1.87mmol)をベンゼン(60ml)に
とかし、酸化ジブチルスズ(488mg 、1.96mmol)を加
え、ディーンスタークの装置を用いて3時間環流しなが
ら生成する水を経時的に除去した。残りのベンゼンを減
圧留去し、ジメチルホルムアミド(DMF)(20ml)に
溶かし、三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(331mg 、2.
43mmol)及びトリエチルアミン1ml を加え、40℃で攪
拌した。3時間後反応液にメタノールを加えしばらく攪
拌した後減圧留去し、残さをシリカゲルクロマトグラフ
ィー(メルク社、60F254 、200ml、塩化メチレン
−メタノール 10:1.5)で精製し、ナトリウム型
のイオン交換樹脂(DowexNa+ )で処理後、熱エタノー
ル−エーテル−ヘキサンより晶出させ化合物8(1.0
g 、90% )を得た。 [ α] D +22. 9 (C=0.8、メタノール)
m.p 169-172 ℃
【0077】実施例5(化合物8→化合物9) 化合物8(1.64g 、2.68mmol)をメタノール(40ml)に
溶かし、28%ナトリウムメチラート(0.35ml)を加
え、室温下で5時間攪拌した。Dowex H+ 型(商品名、
ダウケミカル社製)で中和しpH7 としたのちDowex を濾
過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残さをシリカゲル
60 RP−18(メルク社、水を溶離液とした)で精
製して化合物9(990mg 、92% )を得た。 [ α] D -41.8 (C=1. 3、メタノール)、m.p
194 ℃ FABMS m/z 426(M+Na) 元素分析 calcd. for C12H14NNaO11S C:35.74 、H:3.50、N:3.47 S:7.95 found C:35.19 、H:3.58、N:3.35 S:7.34
【0078】実施例6(化合物1→化合物9) 化合物1(60mg、0.20mmol)をテトラヒドロフラン(30
ml)及びベンゼン(30ml)にとかし、酸化ジブチルス
ズ(54.5mg、0.22mmol)を加え、ディーンスタークの装
置を用いて2時間環流しながら生成する水を経時的に除
去した。反応溶液を減圧留去し、ジメチルホルムアミド
(DMF)(5ml )に溶かし、三酸化硫黄トリメチルア
ミン錯体(30.5mg、0.22mmol)及びトリエチルアミン0.
5ml を加え、40℃で攪拌した。18時間後反応液にメ
タノールを加えしばらく攪拌後、反応溶液を減圧留去
し、残さをシリカゲル 60 RP−18(メルク社、
水を溶離液とした)で精製して化合物9(62.2mg、77.4
% )を得た。化合物9の物理恒数などのデータは、実施
例4と同じである。
【0079】次に、前記スキーム2において、R11がベ
ンゾイル基、R14がtert−ブチルジメチルシリル基、M
がナトリウム原子、Yがp−ニトロフェノキシ基の場合
について、合成を行った。各化合物の番号はスキーム2
に示したものと対応する。
【0080】実施例7(化合物1→化合物14) 化合物1(100mg 、0.33mmol)をピリジン5ml に溶か
し、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(120mg 、0.
80mmol)、ジメチルアミノピリジン(5mg )、トリエチ
ルアミン0.5ml を加え室温下18時間攪拌した。続いて
塩化ベンゾイル(0.173ml 、1.5mmol )を加え室温下で
更に18時間反応させた。反応液に氷片、飽和炭酸水素
ナトリウム水溶液を加え、クロロホルム50mlで3回抽
出した。抽出した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶
液、水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧
留去した。残さをシリカゲルクロマトグラフィー(メル
ク社、60F254 、60ml、トルエン−酢酸エチル 1
0:1)で精製して化合物14(158mg 、94% )を得
た。 [ α] D +121.6 (C=2.0 、クロロホルム) 元素分析 calcd. for C39H41NO11Si C:64.36 、H:5.68、N:1.92 found C:64.23 、H:5.63、N:1.82
【0081】実施例8(化合物14→化合物15) 化合物14(50mg、0.069mmol )をテトラヒドロフラン
5mlに溶かし、これに酢酸0.04ml及び1.0Mテトラブチ
ルアンモニウムフルオリド0.275ml を加え、18時間攪
拌した。クロロホルム100mlで希釈し、飽和炭酸水
素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネ
シウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残さをシリカゲルク
ロマトグラフィー(10ml、トルエン−酢酸エチル3:
1)で精製して化合物15(38.5mg、91.3% )を得た。 [α] D +148.1 (C=3.9 、クロロホルム)
【0082】実施例9(化合物15→化合物16) 化合物15(1.94g 、3.16mmol)をジメチルホルムアミ
ド30mlにとかし、トリエチルアミン1ml 及び三酸化
硫黄トリメチルアミン錯体(3.8g、27.3mmol)を加え5
0℃で48時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグ
ラフィーで精製して化合物16(1.87g 、83% )を得
た。 [ α] D +106.2 (C=1.8 、メタノール) 元素分析 calcd. for C33H26NNaO14S ・H2O C:54.03 、H:3.85、S:4.37、N:1.91 found C:53.83 、H:3.79、S:4.15、N:1.83
【0083】実施例10(化合物16→化合物17) 化合物16(80mg、0.11mmol)をメタノール(2ml )に
溶かし、28%ナトリウムメチラート(0.048ml )を加
え、室温下で1時間攪拌した。Dowex H+ 型(商品名、
ダウケミカル社製)で中和しpH7 としたのちDowex を濾
過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残さをシリカゲル
60 RP−18(メルク社、水を溶離液とした)で精
製して化合物17(31.6mg、70.1% )を得た。 [ α] D -64.2 (C=3.1 、水) FABMS m/z 426(M+Na) 元素分析 calcd. for C12H14NNaO11S・2H2O C:32.81 、H:4.13、N:3.19 S:7.30 found C:32.42 、H:3.44、N:2.95 S:6.88
【0084】次に、前記スキーム4において、Mがトリ
メチルアミノ基、Yがp−ニトロフェノキシ基の場合に
ついて合成を行い、得られた化合物29を用いてスキー
ム5の方法で化合物17を合成した。各化合物の番号は
スキーム4、5に示したものと対応する。
【0085】参考例1(化合物1→化合物29) 化合物1 78.7mgを乾燥ベンゼン15ml、THF 15mlに
溶かし、ビストリブチルスズオキシド0.203ml 、三酸化
イオウ・トリメチルアミン錯体333mgを加え、60
℃で3日間撹拌した。シリカゲル 60 RP−18
(メルク社、水を溶離液とした)で精製して化合物29
(132mg 、quant.)を得た。1 H-NMR (D2O, 300MHz) アセトンを内部標準(2.07 ppm)
として用いた。 δ 8.1 and 7.1 ppm (aromatics), 5.18 (H1, d, 7.8 H
z), 4.36 (H3, dd, 3.3 and 9.9 Hz), 4.30 (H4, bd,
3.3 Hz), 4.20-4.08 (m, H5, H6 and H6'), 3.88 (H3,
dd, 7.8 and 9.6 Hz).
【0086】参考例2(化合物29→化合物17) 化合物29 80mgを2mlの酢酸−酢酸ナトリウム
(0.25M、pH6.8)に溶かし37℃で3日間、
カタツムリ由来(Helix pomatia)のスルファターゼ5w
t%の存在下放置した。反応終了後、ゲルろ過(LH−
20,溶離液は水)及びシリカゲル 60 RP−18
(メルク社、水を溶離液とした)で精製して化合物17
(60mg、94% )を得た。元素分析及びNMRの結果よ
り、得られた化合物が化合物17であることが確認でき
た。
【0087】実施例11 実施例6で得た化合物9 700mg(1.74mmo
l)をメタノール200mlに溶かし、パラジウム−炭
素30mgを加え、水素雰囲気下で還元を行い、ニトロ
基をアミノ基に変換した。3時間後、パラジウム−炭素
をセライトろ過して除き、ろ液を減圧濃縮してニンヒド
リン反応にポジティブなp−アミノフェニル−3−硫酸
化ガラクトシド648mgを得た。続いて、この化合物
をこれ以上精製することなく、アクリロイル化を行っ
た。すなわち、得られたp−アミノフェニル−3−硫酸
化ガラクトシドを20mlのメタノールに溶かし、トリ
エチルアミン1.6ml及びアクリル酸クロライド0.
267ml(10mlの塩化メチレン溶液)を加え、5
時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂で中和を行い、
pH7とした後、ろ過してイオン交換樹脂を除き、ろ液
を減圧濃縮した。残さをシリカゲル 60 RP−18
(メルク社製、水−メタノール=1:1を溶離液とし
た)で精製し、さらにダウエックス(Na+ 型)で処理
してp−アクリルアミドフェニル−3−硫酸化ガラクト
シド(化合物9のYをp−アクリルアミドフェノキシ基
に変換した化合物)431mg(58%)を得た。この
化合物の 1H−NMRスペクトルを図1に示した。
【0088】参考例3 実施例11で得られたp−アクリルアミドフェニル−3
−硫酸化ガラクトシド37mg(0.087mmol)
及びアクリルアミド62mgに、予め脱気した水1ml
を加え、その後十分に窒素置換を行った。テトラメチル
エチレンジアミン0.01ml及び過硫酸アンモニウム
0.01ml(100mg/ml H2Oの濃度の溶液
を用いた)を加え、30℃にて2時間振とうした。反応
液をメタノールに加え、沈殿物を遠心分離し、上澄み液
を除いた後、少量の水を加え、再度メタノールに対して
再沈殿を行った。凍結乾燥して、下記式で表わされる3
−硫酸化ガラクトースの高分子化合物32mgを得た。
この化合物の 1H−NMRスペクトルを図2に示した。
図2より、単量体のアクリル部分のシグナルの消失が認
められる。
【0089】
化2222
【0090】試験例 シアリルパラグロポシド(2−6結合体)へのインフル
エンザウイルス(A/Memphis/1/71(H3
N2))の結合が、参考例3で得られた3−硫酸化ガラ
クトースの高分子化合物によりどのくらい阻害されるか
をELISA法により評価し、この高分子化合物のウイ
ルスに対する認識能を試験した。参考例3で得られた高
分子化合物のIC50(50%の阻害をするときの濃度)
をフェツイン(ポジティブコントロール)のそれと比較
したところ、約2倍弱であった。従って本発明の化合物
は、ウイルス捕捉が可能であることがわかる。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、ヒトインフルエンザウ
イルスやエイズウイルス等との認識性のある、特定の位
置が硫酸化されたガラクトース化合物を、市販の原料を
用い、従来の3糖単位合成に比べ少ない工程で合成で
き、十分な量を供給することができる。また、この硫酸
化ガラクトース化合物をペンダントとして有する高分子
化合物を合成することができ、ウイルス捕捉材料として
の利用が期待できる新規な化合物が提供できるという優
れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例11で得られた化合物の 1H−NMRス
ペクトルである。
【図2】参考例3で得られた化合物の 1H−NMRスペ
クトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 一清 愛知県愛知郡東郷町和合ケ丘3−13−10 (72)発明者 鈴木 康夫 静岡県静岡市谷田52−1 静岡県立大学薬 学部内 (72)発明者 碓氷 泰市 静岡県静岡市小鹿1739−7

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I−1)、式(I−2)又は式
    (I−3)で表わされるガラクトース化合物。 【化1】 (式中、R1 は水素原子又はアセチル基と同等もしくは
    それ以上に脱アシル化しにくいアシル基を表わし、R2
    は水素原子又はアセチル基より脱アシル化しやすいアシ
    ル基を表わし、R3 は水素原子、アセチル基と同等もし
    くはそれ以上に脱アシル化しにくいアシル基又はシリル
    基を表わし、R4 は水素原子、アセチル基より脱アシル
    化しやすいアシル基又はシリル基を表わす。式中の2つ
    又は3つのR1 は、互いに同一でも異なってもよい。ま
    た、3位と4位又は4位と6位の置換基が互いに結合し
    てアセタール又はヘミアセタールを形成してもよい。た
    だし、2位、3位、4位及び6位の置換基がすべて水素
    原子であることはない。Yは、ベンジルオキシ基、アリ
    ルベンジルオキシ基、ニトロフェノキシ基、アミノフェ
    ノキシ基、アクリルアミドフェノキシ基、アリルフェノ
    キシ基、アリルアルキルオキシ基、アルキルオキシ基、
    アリルオキシ基、低級アルキルチオ基、水酸基、ハロゲ
    ン原子又はイミデート基を表わす。)
  2. 【請求項2】 下記式(II)、式(III) 又は式(IV)で
    表わされる硫酸化ガラクトース化合物。 【化2】 (式中、R5 、R6 及びR7 は水素原子、アシル基又は
    シリル基を表わす。R5〜R7 は、互いに同一でも異な
    ってもよい。また、式(II)においてR6 とR7は互い
    に結合してアセタール、ヘミアセタールを形成してもよ
    い。Yは前記と同義である。Mは水素原子、アルカリ金
    属原子、アンモニウム基又は有機アミンを表わす。)
  3. 【請求項3】 下記式(VIII)で表わされる硫酸化ガラ
    クトース化合物。 【化3】 (式中、R5 、R6 、Y及びMは前記と同義である。)
  4. 【請求項4】 下記式(V)、式(VI)、式(VII)又は
    式(IX)で表わされる硫酸化ガラクトース高分子化合
    物。 【化4】 (式中、R5 、R6 及びR7 は前記と同義である。式
    (V)においてR6 とR7は互いに結合してアセター
    ル、ヘミアセタールを形成してもよい。Aは 【化5】 (式中、*でピラノース環の1位と結合する。Lはアル
    キレン、アリーレン、−O−、−CO−、−NH−より
    選ばれる1つ以上の組み合わせよりなる連結基を表わ
    す。)を表わし、Bはガラクトース残基を有しない繰り
    返し単位からなる部分を表わす。pとqはモル比(%)
    であり、0<p≦100、かつ、pとqの和は100で
    ある。)
  5. 【請求項5】 請求項1記載の式(I−1)、式(I−
    2)又は式(I−3)で表わされるガラクトース化合物
    を硫酸化試薬と反応させることを特徴とする下記式(I
    I)、式(III) 又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラク
    トース化合物の製造方法。 【化6】 (式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前記と同義であ
    る。)
  6. 【請求項6】 請求項3記載の式(VIII)で表わされる
    ガラクトース化合物の一方の硫酸エステル基のみをスル
    ファターゼの存在下で加水分解することを特徴とする下
    記式(II)又は式(IV)で表わされる硫酸化ガラクトー
    ス化合物の製造方法。 【化7】 (式中、R5 、R6 、R7 、Y及びMは前記と同義であ
    る。)
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