JPH11309518A - 金属薄板の高速深絞り加工方法 - Google Patents

金属薄板の高速深絞り加工方法

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JPH11309518A
JPH11309518A JP10115485A JP11548598A JPH11309518A JP H11309518 A JPH11309518 A JP H11309518A JP 10115485 A JP10115485 A JP 10115485A JP 11548598 A JP11548598 A JP 11548598A JP H11309518 A JPH11309518 A JP H11309518A
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temperature
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JP10115485A
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English (en)
Inventor
Susumu Sato
佐藤  進
Kiyohiko Nohara
清彦 野原
Sadao Hasuno
貞夫 蓮野
Yasuomi Watabe
豈臣 渡部
Osamu Sakai
修 坂井
Eiichi Yamazaki
栄一 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Niigata Prefecture
JFE Techno Research Corp
Original Assignee
Niigata Prefecture
Kawasaki Steel Corp
Kawatetsu Techno Research Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1.0 超〜120m/分の高速下で、各種の金属薄
板を温間極深絞りプレス加工するための加工技術を提供
する。 【解決手段】 ダイスおよび/または板押さえの温度を
40〜 300℃、かつパンチの温度を−20〜20℃に保持し、
さらに、プレス機の金型と接する部分の断熱、ノックア
ウト部の冷却保持、プレス前の金属薄板の予熱または予
冷、のうちの少なくとも1つの操作を行い、ストローク
速度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄系金属板、非鉄
系金属板、クラッド板、潤滑鋼板などの各種金属薄板
を、従来実現し得なかった高速下で加工することを可能
ならしめる金属薄板の高速深絞り加工方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】金属薄板を用いた成形品の多くは、深絞
りプレス加工を施すことによって製造される。この深絞
りプレス加工は、通常、メカニカルプレス(例えば、ク
ランクプレス)あるいは油圧プレス又は液圧成形プレス
の設備を用いて行われている。ところで、プレス加工
は、従来、室温で行われるのが一般的であったが、より
高度なプレス成形が求められるようになるに伴い、温間
でのプレス加工が提案され、実用化されるようになって
きた。例えば、特公昭59−21687 号公報および特公昭59
−27261 号公報には、それぞれオーステナイトステンレ
ス鋼薄板およびフェライトステンレス鋼薄板について、
人為的にプレス加工温度を制御して、薄板の絞り性を向
上させる技術が示されている。また、特公平6−59507
号公報にはオーステナイトステンレス鋼と軟鋼からなる
ステンレスクラッド鋼板について、プレス加工温度を制
御して絞り性を向上させる技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなステンレス鋼薄板あるいはステンレスクラッド鋼板
を対象とした、従来の温間プレス加工の方法は、いずれ
も、絞り性そのものは改善されるものの、プレス加工速
度は改善されず低いままであった。すなわち、上記公報
に開示の従来方法におけるプレスストローク速度は、特
公昭59−21687 号公報で60cm/分以下、特公昭59−2726
1 号公報で100 cm/分以下、特公平6−59507 号公報
(実施例)でたかだか60cm/分であって、100 cm/分を
超える加工は不可能であった。
【0004】このように、従来の温間絞り加工は、加工
の対象材料がステンレス鋼を主とする材料のみであり、
しかも加工速度が1.0m/分以下という低速度であり、以
下のような難点があった。 (1) 生産能率が低く、後工程とのマッチングがうまくい
かない。 (2) ストローク速度が小さいため、工程の連続化、すな
わち高速油圧プレスやクランクプレス、液圧成形プレス
等による複数工程に亘る高速トランスファー工程や順送
工程の生産ができない。 (3) ステンレス鋼を除く各種金属薄板材料については、
高速温間絞り加工の適用の可否が検討されておらず、ま
して適正な加工条件は不明であった。このため、用途に
応じた高能率の温間深絞りは現実には不可能であった。 これらの状況から、ステンレス油圧プレス加工に限られ
ていた従来の温間絞り加工を、より高速化して、トラン
スファー化を可能とすること、適用材種をステンレス鋼
以外へも拡大することが強く望まれていた。
【0005】そこで、本発明の目的は、従来技術が抱え
ている上述したような現状に鑑み、1.0 超〜120m/分の
高速下で、各種の金属薄板を温間深絞りプレス加工する
ための加工技術を提供することにある。また、本発明の
他の目的は、1.0 超〜120m/分の高速の下で、LDR
(限界絞り比)2.2 以上の深絞り成形性を得るための、
金属薄板の温間深絞りプレス加工技術を提供することに
ある。ここに、金属薄板は、ステンレス鋼、軟鋼、高張
力鋼などの鉄系金属板、アルミニウム(合金を含む)、
チタン(合金を含む)、銅・ニッケル・亜鉛・スズ(各
合金を含む)などの非鉄系金属板、ステンレス鋼/軟
鋼、ステンレス鋼/アルミニウム(合金を含む)などの
クラッド板、およびめっき板, 樹脂系などの塗膜処理を
施した潤滑鋼板を意味するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記課題の
解決に向け、温間プレス加工技術について、鋭意実験、
研究を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本
発明の要旨構成は以下のとおりである。
【0007】(1) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
ダイスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 3
00℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持
し、さらにプレス機の金型と接する部分を断熱して、ス
トローク速度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工する
ことを特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0008】(2) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
ダイスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 3
00℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持
し、さらにノックアウト部を−10〜20℃に保持して、ス
トローク速度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工する
ことを特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0009】(3) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
ダイスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 3
00℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持
し、さらにプレス機の金型に接する部分を断熱するとと
もに、ノックアウト部を−10〜20℃に保持して、ストロ
ーク速度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工すること
を特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0010】(4) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
プレス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱また
はパンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/ま
たは板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチ
の温度(Tp )を−10〜20℃に保持して、ストローク速
度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工することを特徴
とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0011】(5) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
プレス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱また
はパンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/ま
たは板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチ
の温度(Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、プレ
ス機の金型と接する部分を断熱し、ストローク速度1.0
超〜120 m/min にて深絞り加工することを特徴とす
る、金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0012】(6) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
プレス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱また
はパンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/ま
たは板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、パンチの温
度(Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、ノックア
ウト部を−10〜20℃に保持して、ストローク速度1.0 超
〜120 m/min にて深絞り加工することを特徴とする、
金属薄板の高速深絞り加工方法。
【0013】(7) 金属薄板を深絞り加工するに当たり、
プレス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱また
はパンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/ま
たは板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチ
の温度(Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、プレ
ス機の金型に接する部分を断熱し、しかもノックアウト
部を−10〜20℃に保持して、ストローク速度1.0 超〜12
0 m/min にて深絞り加工することを特徴とする、金属
薄板の高速深絞り加工方法。
【0014】(8) 40〜 300℃、好ましくは40〜Td にて
予熱する上記(4) 〜(7) のいずれか1つに記載の金属薄
板の高速深絞り加工方法。
【0015】(9) −10〜20℃、好ましくはTp 〜20℃に
て予冷する上記(4) 〜(7) のいずれか1つに記載の金属
薄板の高速深絞り加工方法。
【0016】上記各発明において、ダイスおよび/また
は板押さえの保持温度(Td )は、鉄系金属薄板の場合
に40〜 200℃、非鉄系金属薄板の場合に 100〜 300℃と
することが好ましく、パンチの保持温度(Tp )は、鉄
系金属薄板の場合に−10〜+10℃、非鉄系金属薄板の場
合に0〜+20℃とすることが好ましい。また同様に、ダ
イス接触部の予熱温度は、鉄系金属薄板の場合に40℃〜
d 、非鉄系金属薄板の場合に 100℃〜Td とすること
が好ましく、パンチ接触部の予冷温度は、鉄系金属薄板
の場合にTp 〜+10℃、非鉄系金属薄板の場合にTp
+20℃とすることが好ましい。さらに、ノックアウト部
の保持温度は、鉄系金属薄板の場合に−10〜+10℃、非
鉄系金属薄板の場合に10〜+20℃とすることが好まし
い。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について説明する。本発明において、鉄系及び非鉄系の
各種金属薄板を1.0 m /分超えの高速で深絞りするため
には、まず、ダイスおよび/または板押さえの温度(T
d )を40〜300℃、パンチの温度(Tp )を−10〜20℃
に保持することが必要である。この温度は金属の材種に
よって適正温度がやや異なり、ダイスおよび/または板
押さえの保持温度(Td )は、鉄系金属薄板の場合に40
〜 200℃、非鉄系金属薄板の場合に 100〜 300℃とする
ことが好ましく、パンチの保持温度(Tp )は、鉄系金
属薄板の場合に−10〜+10℃、非鉄系金属薄板の場合に
0〜+20℃とすることが好ましい。
【0018】上記温度範囲に限定した理由は、ダイスお
よび/または板押さえの温度が、この下限温度に満たな
いと、ダイス肩部の成形性が不十分となり、一方上限温
度を超えるとダイス肩部の加工硬化度があまりに小さく
なりすぎて強度不足をきたし、この部分で破断を生ずる
こととなるからである。また、パンチの温度が、上記下
限温度に満たないと、加工硬化が過度となって材料流れ
が不十分になるため、形状不良をきたすこととなり、一
方上限温度を超えるとパンチ肩部の十分な破断抵抗が得
られないからである。いずれにしても、ダイスおよび/
または板押さえの温度とパンチの温度がこれら範囲内に
あれば、ダイス肩部の成形力とパンチ肩部の破断力との
均衡が保たれ良好な深絞り加工が可能となるのである。
なお、金属の材種によって適正温度範囲が多少ずれるの
は、鉄系金属は体心立方組織であり、非鉄系金属は体心
立方組織ではないために、塑性の温度依存性が異なる
(オーステナイトステンレス鋼は体心立方組織ではない
が、加工誘起マルテンサイト変態が寄与)からである。
【0019】ダイス、板押さえ、パンチを上記の所定温
度に保持するためには、一般には、ダイスおよび/また
は板押さえの加熱、パンチの冷却が必要となる。図1
は、この加熱や冷却を行うためのプレス機の例を示した
ものである。すなわち、図1において、ダイス2および
/または板押さえ3の加熱を、ダイスおよび/または板
押さえ金型取り付け部に加熱媒体 (たとえば電熱ヒー
タ) 7を設置し、伝熱によって行う。媒体の加熱と温度
制御は、これと接続した外部装置によって行う。また、
パンチの冷却をパンチに穿孔した貫通路に冷却媒体 (た
とえば冷却水) 6を環流させ、伝熱によって行う。媒体
の冷却と温度制御は、これと接続した外部装置によって
行う。
【0020】かかるダイスおよび/または板押さえ並び
にパンチを所定の温度に保持する操作は、絞り加工工程
が何段にもわたって行われる場合には、最初の絞り加工
で行うのがもっとも効果的である。これに次ぐ、第2回
目以降(2伸以降)の絞り加工においては、必ずしも上
記温度で保持する必要はないが、ダイスおよび/または
板押さえ、パンチのいずれか一方または両方を上記温度
で保持することは、成形歩留りの向上、焼鈍省略等が期
待できるので、経済性を勘案しながら適宜採用すること
が望ましい。
【0021】本発明において、高速深絞り加工を可能な
らしめるためには、上述した所定温度での保持に加え
て、 (1)プレス機におけるダイスおよび/または板押さ
えと接する部分 (取り付け部) の断熱、 (2)プレス機に
おけるノックアウト部の冷却、(3)深絞り加工前におけ
る、金属薄板素材の予熱または予冷のうちの少なくとも
一つの操作を行うことが必要である。
【0022】これら操作のうち、プレス機における上記
各金型と接する部分の断熱は、加熱保持温度をできるだ
け正確かつ高速に達成するために必要であり、図1に示
すように、プレス機における金型と接する部分にセラミ
ックス、アスベスト、ベークライト等の断熱材料8を貼
付したり、ダイス、しわ押えの薄肉化を行うことによ
り、工具の熱容量や伝熱を調整するものである。また、
図1に示すように、とくにトランスファ作業の場合に、
前述したパンチの冷却に加えてノックアウト部の冷却保
持を行うことは、パンチ冷却と同様な効果を得る上で効
果的である。ノックアウト部4の保持温度はパンチの保
持温度と同じでよく、その温度範囲は、−10〜20℃とす
ればよいが、鉄系金属薄板の場合に−10〜+10℃、非鉄
系金属薄板の場合に0〜+20℃とすることが好ましい。
なお、ノックアウト部の冷却保持は、パンチの冷却と同
じく、穿孔した貫通路に冷却媒体6を環流させるなどの
方法によって行うことができる。
【0023】また、温間絞りに先立って、深絞り前の金
属板素材(被プレス材)のダイス接触部を予熱するか、
パンチ接触部(パンチ肩部を含む素材中心部)を予冷す
れば、ダイス、板押さえ、パンチからの伝熱を利用した
金属板の加熱、冷却の効果に、予熱または予冷による同
様な効果が重畳し、高速、短時間で前記温間効果をひき
出すことが可能となり、高速深絞り加工が可能になる。
予熱、予冷の温度は、それぞれ前述したダイスおよび/
または板押さえ、パンチの保持温度と同じ考えで定めれ
ばよく、その温度範囲は、ダイス接触部の温度を40〜 3
00℃、好ましくは40〜Td 、パンチ接触部の温度を−10
〜20℃、好ましくはTp 〜20℃とする。この温度は、保
持温度と同様に、金属の材種によって適正温度がやや異
なり、ダイス接触部の予熱温度は、鉄系金属薄板の場合
に40℃〜Td 、非鉄系金属薄板の場合に 100℃〜Td
することが好ましく、パンチ接触部の予冷温度は、鉄系
金属薄板の場合にTp 〜+10℃、非鉄系金属薄板の場合
にTp 〜+20℃とすることが好ましい。
【0024】この予熱または予冷は、加熱媒体 (耐熱プ
レス油等) への浸漬に続く冷却媒体(冷風, 冷凍ガス,
冷水等) の瞬間吹付けなどの方法によって行えばよい。
なお、これらの方法を工業的に行う場合、一般には、時
間経過とともに素材全体の温度が均一化し、設定予熱温
度又は設定予冷温度になりやすく、金属板素材を上記範
囲のみに限定して局部加熱することは困難となる。この
ような状況の下で、予熱または予冷を行う場合には、予
熱や予冷の目標温度はプレスストローク速度を含む工程
速度、絞り比、製品形状寸法などを考慮してケースバイ
ケースで決めればよい。
【0025】以上述べた方法により、従来の技術では到
底なし得なかった、ストローク速度1.0 m/分を超えて
のプレス加工が可能になる。しかし、120 m/分を超え
るストローク速度では加熱や冷却が追随できなくなるの
で、深絞り加工のストローク速度を1.0 超〜120m/分の
範囲に限定する。なお、金属板の材種としては、従来の
ステンレス及びステンレス/軟鋼クラッドはもちろんの
こと、鉄系として軟鋼、高張力鋼(γ相残留型、マルエ
ージ鋼を含む)、非鉄系としてアルミニウム(合金)、
チタン(合金)、銅(合金)、さらにステンレス/アル
ミニウム(合金)などのクラッドも絞り加工できる。こ
のため金属板を利用した製品における多様なニーズに応
えることが可能になる。本発明法を適用するためには、
高速油圧式、クランク式、対向液圧プレスなどのプレス
機を用い、シングルもしくはトランスファー稼働とし、
この際、再絞り、逆再絞り、リストライク、焼鈍などの
工程を入れることにより、絞り性、形状性の改善を図る
ことが可能となる。このほか、パンチ、ダイスの面とり
を行うことも良好なプレス結果を得るためには有効であ
る。
【0026】
【実施例】以下、実施例について説明する。表1および
表2に示す各種の金属板(1.0 mm厚)を、加工条件を種
々の範囲で変化させ、1伸絞り→2伸絞り(リストライ
ク加工)の連続した工程(素材の焼鈍なし)で、60mmφ
の円筒にプレス加工し、トランスファーシミュレーショ
ンを行った(本実施例では円筒絞り例を示したが、本方
法による成形品形状は円筒、(多)角筒、異形形状等、
また大物、小物等いかなる形状寸法からなる成形品にも
適用できる)。なお、いずれのプレス加工も、油性混合
剤で潤滑して行った。また、比較例として本発明範囲を
逸脱したもの、従来例として低速シングルの温間絞りと
通常の室温絞りの条件も採用した。ただし、断熱は図1
の金型接触部を、また予熱温度は40〜300 ℃、予冷温度
は−10〜+20℃、ノックアウト冷却温度は−10〜+20℃
で行った。これらの条件でそれぞれプレス加工した際
の、絞り性(LDR)、形状凍結性、置き割れ、縁切れ
等を以下の方法で調査した。
【0027】・絞り性(LDR):絞り可能な最大素板
直径を円筒直径の60mmで除した値。 ・形状凍結性: 肉眼観察により、しわ、ひけ、べこ、
ひずみ等の形状不良の有無をチェックし、側面・底面の
真直度、真円度、平面度等を3次元計測により行い、不
良が認められず計測値が所要値以下の場合を○、いずれ
かの不良が認められたか、計測値が所要値を超えた場合
を×とした。 ・置き割れ: 絞り後、80度の温水中に1時間浸漬する
促進試験 (室温で3ヶ月以上に相当) により行い、カッ
プ辺縁部に亀裂が生じなかったものを○、亀裂が発生し
たものを×とした。 ・縁切れ: 拡大鏡を用いた肉眼観察により行い、亀裂
発生の認められないものを○、亀裂が発生したものを×
とした。その結果を表1および表2に併せて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表1、表2から、本発明法は高速のプレス
加工であるにもかかわらず、従来の低速温間絞りと比較
しても、絞り性(LDR)、形状凍結性、置割れ、縁切
れ等の製品特性がほぼ同等の加工性が得られた。このこ
とから、本発明法は、従来の低速温間絞りよりも、大量
生産、省時間、経済性等の点で、格段に優れた深絞り加
工法であるといえる。なお、温間絞りを行わない従来の
冷間(室温)でのプレス加工での絞り性(LDR)は、
低速であっても本発明に比較して遙かに劣っていること
が示された。特に、オーステナイトステンレス鋼の代表
鋼種であるSUS 304 (Fe−18%Cr−8%Ni) においてそ
の差異が顕著である。これは同鋼のプレス加工時のマル
テンサイト変態が関係していると考えられる。
【0031】また、表1、表2から、本発明の条件から
外れた比較例では、いずれも目的とした効果が得られな
かった。例えば、No.33 のように高速すぎると絞り性が
低下し、一方No.32 のように低速では量産性が失われ
る。また、No.34 〜37のように保持温度が発明範囲をは
ずれると絞り性が劣化する。さらに、No.22 のように断
熱、ノックアウト冷却、予熱/予冷のいずれの条件も満
たされないと絞り性が劣化する。
【0032】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明によれ
ば、ステンレス鋼をはじめとする鉄系及び非鉄系各種金
属板を、高速で深絞りすることが可能となる。したがっ
て、本発明によれば、クランクプレス機や高速油圧プレ
ス機といった高速プレス機を用いたトランスファー(連
続)化した深絞り加工が可能になる。そして、従来は不
可能であった電気・電子・電池部品、自動車部品等の各
種難加工器物を高効率で大量生産できるようになる。換
言すれば、現行のクランクプレス(高速だが易加工品)
や油圧プレス(比較的難加工品だが低速)に本発明を適
用することにより、大きな設備投資を伴うことなく、難
加工品を高速で大量生産することができるようになり、
経済的メリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するためのプレス機の詳細を示す
断面図である。
【符号の説明】
1 パンチ 2 ダイス 3 板押さえ 4 ノックアウト 5 被プレス材 6 冷却媒体 7 加熱媒体 8 断熱材料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 進 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 野原 清彦 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川鉄テ クノリサーチ株式会社内 (72)発明者 蓮野 貞夫 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 渡部 豈臣 新潟県新潟市鐙西1−11−1 新潟県工業 技術総合研究所内 (72)発明者 坂井 修 新潟県新潟市鐙西1−11−1 新潟県工業 技術総合研究所内 (72)発明者 山崎 栄一 新潟県新潟市鐙西1−11−1 新潟県工業 技術総合研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、ダ
    イスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 300
    ℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持し、
    さらにプレス機の金型に接する部分を断熱して、ストロ
    ーク速度1.0超〜120 m/min にて深絞り加工すること
    を特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
  2. 【請求項2】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、ダ
    イスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 300
    ℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持し、
    さらにノックアウト部を−10〜20℃に保持して、ストロ
    ーク速度1.0超〜120 m/min にて深絞り加工すること
    を特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
  3. 【請求項3】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、ダ
    イスおよび/または板押さえの温度(Td )を40〜 300
    ℃、かつパンチの温度(Tp )を−10〜20℃に保持し、
    さらにプレス機の金型に接する部分を断熱するととも
    に、ノックアウト部を−10〜20℃に保持して、ストロー
    ク速度1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工することを
    特徴とする、金属薄板の高速深絞り加工方法。
  4. 【請求項4】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、プ
    レス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱または
    パンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/また
    は板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチの
    温度(Tp )を−10〜20℃に保持して、ストローク速度
    1.0 超〜120 m/min にて深絞り加工することを特徴と
    する、金属薄板の高速深絞り加工方法。
  5. 【請求項5】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、プ
    レス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱または
    パンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/また
    は板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチの
    温度(Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、プレス
    機の金型に接する部分を断熱し、ストローク速度1.0 超
    〜120 m/min にて深絞り加工することを特徴とする、
    金属薄板の高速深絞り加工方法。
  6. 【請求項6】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、プ
    レス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱または
    パンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/また
    は板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、パンチの温度
    (Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、ノックアウ
    ト部を−10〜20℃に保持して、ストローク速度1.0 超〜
    120 m/min にて深絞り加工することを特徴とする、金
    属薄板の高速深絞り加工方法。
  7. 【請求項7】 金属薄板を深絞り加工するに当たり、プ
    レス前の金属薄板における、ダイス接触部の予熱または
    パンチ接触部の予冷を行ったのち、ダイスおよび/また
    は板押さえの温度(Td )を40〜 300℃、かつパンチの
    温度(Tp )を−10〜20℃に保持するとともに、プレス
    機の金型に接する部分を断熱し、しかもノックアウト部
    を−10〜20℃に保持して、ストローク速度1.0 超〜120
    m/min にて深絞り加工することを特徴とする、金属薄
    板の高速深絞り加工方法。
  8. 【請求項8】 40〜 300℃にて予熱する請求項4〜7の
    いずれか1項に記載の金属薄板の高速深絞り加工方法。
  9. 【請求項9】 −10〜20℃にて予冷する請求項4〜7の
    いずれか1項に記載の金属薄板の高速深絞り加工方法。
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