JP2009241143A - アルミニウム合金板のプレス成形方法 - Google Patents

アルミニウム合金板のプレス成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を、プレス成形するにあたり、成形するアルミニウム合金板の部位毎の温度管理を行うことに加え、プレス成形時の歪速度を規定することで、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、且つ、十分な強度のアルミニウム合金板をプレス成形で得ることができるアルミニウム合金板のプレス成形方法を提供する。
【解決手段】ブランクホルダー1の温度を、200℃以上、280℃未満、ポンチ3の温度を、100℃未満とし、プレス成形時の歪速度を、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下としてAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を深絞り成形することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車パネル、自動車用部品、その他鉄道車両等の輸送機用のパネル、その他電気機械部品等に用いられるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を、深絞り成形でプレス成形するアルミニウム合金板のプレス成形方法に関するものである。
近年の自動車は、安全性の向上や快適装備の充実といった背景から、モデルチェンジ毎に車体重量が増加する傾向にあり、燃費が劣化する原因となっている。また、自動車をはじめとする輸送機全体の車体分野では、排気ガス等による地球環境問題に対して、軽量化による燃費の向上も追求されている。そのため、従来から自動車などの輸送機の車体に用いられている鋼板に代えて、より軽量なアルミニウム合金板が、自動車などの輸送機の車体に用いられている圧延板や押出型材として採用されることが多くなってきている。
これらのうち、自動車のフード、フェンダー、ドア、ルーフ、トランクリッドなどの、アウタパネル(外板)やインナパネル(内板)等のパネルには、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の使用が検討されている。
Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、Si、Mgを主添加元素として含み、優れた時効硬化能を有しているため、プレス成形や曲げ加工時には低耐力化により成形性が確保できると共に、成形後のパネルの塗装焼付処理などの比較的低温の人工時効(硬化)処理時の加熱により時効硬化して耐力が向上し、必要な強度を確保できるベークハード性、人工時効硬化能、塗装焼付硬化性を兼ね備えている。
自動車では、その軽量化を図るため、ボンネット等容易に成形可能なパネル部位からアルミニウム合金板が採用され始めているが、前記したように、成形がより困難なドア、トランクリッド、バックドアといった部位にも鋼板からアルミニウム合金板への材料置換が求められるようになってきている。しかしながら、従来からのプレス成形装置を用いてアルミニウム合金板を成形しようとしても、難成形部位では、プレス成形時に割れが発生することがある。また、その割れの発生を回避するためにしわ押さえ力を低くすると、今度はしわが発生してしまう。
特に、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、室温時効して強度が増加するため、プレス成形時に割れやしわの発生が起こりやすくなるが、この現象に対する対応が難しいことも、プレス成形をより困難としていた。
即ち、鋼材と同等の強度を有するアルミニウム合金板、特にAl−Mg−Si系アルミニウム合金板は、鋼板と比較して延性が乏しく成形性に劣るという問題を有している。そこで、プレス成形を行う装置を改善し、鋼板より成形性に劣るアルミニウム合金板等を安定的に成形することができるプレス加工に関する技術が、特許文献1〜6として提案されている。
特許文献1〜6に記載された技術は、その何れもが深絞り成形を行う装置に何らかの改善を施している。特許文献1には、ブランクのフランジ部を挟着する板押さえとダイスを、夫々に設けた加熱ヒーターで加熱することで、成形時のブランクのフランジ部を加熱する技術が記載されている。特許文献2には、電気ヒーターが内部に設けられたしわ押さえと、電気ヒーターが内部に設けられたダイスで、板材を挟持すると共にこの挟持部分を加熱し、同時に加熱の影響を受けるパンチの端面が接触する板材の部分を、パンチの反対側に設けた冷却風供給装置からの冷却気体で冷却する技術が記載されている。特許文献3には、電気ヒーターが内部に設けられたしわ押さえと、電気ヒーターが内部に設けられたダイスで、板材を挟持すると共にこの挟持部分を加熱し、同時に加熱の影響を受けるパンチの端面が接触する板材の部分を、パンチの反対側に設けた非酸化性ガス供給装置から吹き出す非酸化性ガスで冷却する技術が記載されている。
また、特許文献4には、ダイスおよび/または板押さえの取り付け部に電熱ヒーター等の加熱媒体を設置すると共に、パンチに貫通路を穿孔して冷却水等の冷却媒体を還流させ、そのダイス、板押さえ、パンチを用いて金属薄板を深絞り加工する技術が記載されている。特許文献5には、5000系アルミニウム合金を対象とした温間プレス加工に関する技術として、ヒーターを埋め込んだダイス及びしわ押さえ金具と、冷媒を循環させる配管を埋め込んだポンチでアルミニウム合金板を温間成形する技術が記載されている。特許文献6には、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系アルミニウム合金)を対象とした温間成形に関する技術として、ヒーターを内蔵するパンチ、ダイス、及びしわ押さえを具備する成形装置を用いて、アルミニウム合金板を温間成形する技術が記載されている。
しかしながら、その何れもが深絞り成形を行う装置にヒーター等の温度制御装置を内蔵することで、成形するアルミニウム合金板等の部位毎の温度管理を行っただけで、それらの特許文献1〜6に記載された装置を用いることで、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を深絞り成形しても、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板は、特にプレス成形時の割れやしわの発生が起こりやすい材料で形成された部材であるため、プレス成形時の割れやしわの発生を確実に防止することはできない。
特開平4−351229号公報 特開平5−237558号公報 特開平5−309425号公報 特開平11−309518号公報 特開2007−125601号公報 特開2006−205244号公報
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板を、深絞り成形でプレス成形するにあたり、成形するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の部位毎の温度管理を行うことに加え、プレス成形時の歪速度を規定することで、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、且つ、十分な強度のアルミニウム合金板を、プレス成形で得ることができるアルミニウム合金板のプレス成形方法を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板のT4調質板材を、ポンチ、ダイス、ブランクホルダーで成るプレス成形用金型を用いて深絞り成形するアルミニウム合金板のプレス成形方法であって、前記ブランクホルダーの温度を、200℃以上、280℃未満、前記ポンチの温度を、100℃未満とし、且つ、プレス成形時の歪速度を、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下としてアルミニウム合金板を深絞り成形することを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形方法である。
請求項2記載の発明は、前記ブランクホルダーの温度に合わせ、ダイスの温度を、200℃以上、280℃未満としてアルミニウム合金板を深絞り成形する請求項1記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法である。
本発明によると、プレス成形用金型のブランクホルダーとポンチの温度を制御して、成形するAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の部位毎の温度管理を行うことに加え、プレス成形時の歪速度を規定することで、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、且つ、十分な強度のアルミニウム合金板をプレス成形で得ることができる。
また、ブランクホルダーの温度に合わせ、ダイスも温度も制御することで、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、且つ、十分な強度のアルミニウム合金板をプレス成形で得ることができるという作用効果をより確実に達成することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
本発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法に用いられるアルミニウム合金板は、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板である。このAl−Mg−Si系アルミニウム合金板としては、Mg:0.2〜1.2質量%、Si:0.4〜2.0質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板、或いは、Mg:0.2〜1.2質量%、Si:0.4〜2.0質量%、Cu:0.1〜1.0質量%を含有し、更に、Fe:0.03〜0.4質量%、Mn:0.01〜0.2質量%、Cr:0.01〜0.3質量%、Zr:0.01〜0.3質量%のうち少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板等を用いることができる。
Mgは、Siと共に強度および成形性に寄与する元素で、0.2質量%より少ないと強度が必ずしも十分ではなくなり、成形性も劣るものとなる。一方、1.2質量%より多くなると圧延が困難となり、成形性が低下する。よって、Mgの含有量は、0.2〜1.2質量%であることが好ましい。
Siは、Mgと共に強度および成形性に寄与する元素で、0.4質量%より少ないと強度が必ずしも十分ではなくなり、成形性も劣るものとなる。一方、2.0質量%より多くなると粗大なSi単体の晶出により、成形が困難となる。よって、Siの含有量は、0.4〜2.0質量%であることが好ましい。
本発明においては、MgとSiを主添加元素とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金板を用いることで、十分な作用効果を奏することができるが、更に、成形性を向上させるために、MgとSiに加えて、Cuを主添加元素とするAl−Mg−Si−Cu系アルミニウム合金板を用いることもできる。
このAl−Mg−Si−Cu系アルミニウム合金板において、Cu含有量が、0.1質量%より少ないと成形性が十分ではなくなる。一方、1.0質量%より多くなると耐食性、特に耐糸錆性を著しく低下させる。よって、Cuの含有量は、0.1〜1.0質量%であることが好ましい。
Cuに加えて、更に、Fe:0.03〜0.4質量%、Mn:0.01〜0.2質量%、Cr:0.01〜0.3質量%、Zr:0.01〜0.3質量%のうち少なくとも1種を含有させても良い。
Feは、その含有量が0.4質量%を超えて添加すると、Fe系の化合物を形成し、成形性を著しく低下させるため、0.03〜0.4質量%とするのが好ましい。
Mnは、金属間化合物MnAlを形成し、Al−Mg−Si系アルミニウム合金の再結晶においてピン止め効果を有し、結晶粒径を微細化する効果がある元素である。しかし、添加量が0.1質量%を超えると形成した化合物により成形性や曲げ性を低下させるため、その添加量は0.01質量%以上、0.2%質量未満とすることが好ましい。
Crは、Mnと同様に、結晶粒径を微細化する効果があるが、金属間化合物の形成により成形性や曲げ性の低下の原因となるので、その添加量は0.01〜0.3質量%とするのが好ましい。
Zrは、Mnと同様に、結晶粒径を微細化する効果があるが、金属間化合物の形成により成形性や曲げ性の低下の原因となるので、その添加量は0.01〜0.3質量%とするのが好ましい。
本発明は、常法によって製造したAl−Mg−Si系アルミニウム合金板のT4調質板材を、深絞り成形によるプレス成形でアルミニウム合金板を所望の形状に成形するアルミニウム合金板のプレス成形方法に関するものである。常法とは、溶解・鋳造→均質化処理→熱間圧延→冷間圧延の順の工程で、アルミニウム合金板を所定の板厚とした後、連続焼鈍炉或いは熱処理炉、ソルトバス等を用いて溶体化処理を行い、更に、水(ミストを含む)或いは空気にて焼入れ処理を行い、その後、室温に放置してT4調質板材とする方法である。尚、必要により熱間圧延と冷間圧延の間に中間焼鈍を含んでいても良い。
図1(a)に、本発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法で深絞り成形を行う前の状態を、図1(b)に、本発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法で深絞り成形を行った後の状態を夫々示す。1はAl−Mg−Si系アルミニウム合金板、2はプレス成形用金型で、3はポンチ、4はダイス、5はブランクホルダーである。
本発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法は、前記した常法で得られたアルミニウム合金板のT4調質板材を、ポンチ3、ダイス4、ブランクホルダー5で成るプレス成形用金型2を用いた深絞り成形によるプレス成形で、アルミニウム合金板を所望の形状に成形する方法である。
一般に、深絞り成形ではアルミニウム合金板1等の金属板は、ポンチ3で押し込まれる底部を比較的低温に、ダイス4とブランクホルダー5で挟まれるフランジ部(折曲予定部)を比較的高温にしてプレス成形することで、プレス成形で、十分な強度のアルミニウム合金板の成形品を得ることができる。本発明では、プレス成形時に、アルミニウム合金板1のフランジ部と接触するブランクホルダー5の温度を、200℃以上、280℃未満の比較的高温に、アルミニウム合金板1の底部と接触するポンチ3の温度を、100℃未満の比較的低温にしてプレス成形を行う。
本実施形態では、ブランクホルダー5と共にアルミニウム合金板1のフランジ部を挟むダイス4の温度も、200℃以上、280℃未満の比較的高温にするが、ダイス4については必ずしも温度管理する必要はない。尚、ダイス4についても比較的高温に温度管理することで、ブランクホルダー5のみの温度管理をする場合より、アルミニウム合金板1のフランジ部の温度を確実に上昇させることができる。
プレス成形時の、アルミニウム合金板1の底部と接触するポンチ3の温度を、100℃未満の比較的低温にする理由は、ポンチ3がプレス成形時に接触するアルミニウム合金板1の底部は、プレス成形時にポンチ3で押し込まれる部位となり、ポンチ3による荷重負担部となるため、アルミニウム合金板1他の部位と比較して低温で破断強度が高い方が良いためである。
一方、アルミニウム合金板1のフランジ部と接触するブランクホルダー5の温度を、200℃以上、280℃未満の比較的高温にする理由は、ブランクホルダー5がプレス成形時に接触するアルミニウム合金板1のフランジ部は、プレス成形時にポンチ3の押し込みによって材料流入して変形する部位であり、その変形のために、変形抵抗を下げ、材料の流れ込み抵抗の最大値を下げるため、アルミニウム合金板1他の部位と比較して高温とした方が良いためである。
図2に示すように、プレス成形用金型2のうち、ブランクホルダー5とダイス4には、加熱ヒーター6が内蔵されており、その加熱温度は、200℃以上、280℃未満とする。加熱温度が200℃未満であれば、加熱による材料特性の変化が十分ではなく、成形性の向上効果は殆どなく、深絞り成形が不可能になってしまうからである。一方、280℃以上に加熱すると、プレス成形に用いるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板の強度が、焼鈍時の状態と略同じ程度の強度まで低下し、プレス成形用金型2についているビード等の影響で割れが発生したり、たとえそのビードを通過したとしてもしわが発生したりする可能性が非常に高くなるためである。
また、プレス成形用金型2のうち、ポンチ3には、水等の冷媒を循環させる冷却用配管7が内蔵されており、その冷却温度は、100℃未満とする。冷却温度が100℃以上であると、ブランクホルダー5の温度に近似する温度となり、十分な成形性を得ることができず、深絞り成形のような難成形部位製品の成形に用いるのには不都合な温度となるためである。また、冷媒を水とした場合、100℃以上になると大気圧では水の気化温度以上になってしまうためである。
Al−Mg系アルミニウム合金では、以上の温度条件で深絞り成形すれば、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、安定的にアルミニウム合金板をプレス成形することができ、更に、歪速度を遅くすることで、成形性向上効果を得ることができる(超塑性変形)のに対し、Al−Mg−Si系アルミニウム合金では、Al−Mg系アルミニウム合金の歪速度より速い歪速度でプレス成形しなければ、時効硬化による強度の増加と、伸びの低下が著しくなるために、成形性の低下が極めて顕著になる。また、高温で長時間の成形では、歪速度が遅いと、キャビティ(欠陥)の発生により著しく成形性が低下することとなる。
本発明においては、Al−Mg−Si系アルミニウム合金板のプレス成形において、プレス成形時の歪速度を、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下とすることで、プレス加工時の割れの発生やしわの発生がなく、安定的にアルミニウム合金板をプレス成形することができる。
プレス成形時の歪速度を、1×10−3/sec以下とすれば、時効硬化による強度の増加と、伸びの低下が著しくなるために、成形性の低下が極めて顕著になる。一方、歪速度が1×10−1/secを超えると、成形時の材料流入における抵抗が増えたり、あるいは、潤滑油(潤滑剤)の効果を十分得ることができず、成形性の低下をもたらす。更には、プレス成形用金型の消耗を促進し、金型寿命を低下させる等の問題が発生する。従って、プレス成形時の歪速度は、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下とする。
尚、ここで述べた歪速度とは、最も歪がかかっていると予想される部位の歪速度のことをいう。例えば、円筒絞り試験では、縦壁部またはポンチコーナー部の歪速度を求めることとなる。尚、歪速度は、ポンチ速度から換算することが可能であり、プレス成形時のポンチ速度を、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下とすれば、プレス成形時の歪速度は、ポンチ速度と同様に1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下となり、局部伸びが増大することで、高い成形性を得ることができる。尚、伸びは、25%以上なければ成形性が低下し、局部伸びは8%以上なければ深絞り成形のような複雑形状の成形に適さない。
(引張試験)
Al−Mg−Si系アルミニウム合金板として、AA6022規格組成のアルミニウム合金板を用い、6ヶ月間をかけて室温時効させT4調質板材とし、板厚1.0mmの供試板とした。その供試板の0.2%耐力は、その圧延方向で145MPaである。この供試板から、その圧延方向を長手方向としてJIS5号試験片を採取し、インストロン型万能試験機を用いて引張試験を実施した。
前記試験片を、まず、予め所定の温度(100℃、200℃、300℃)に加熱した恒温槽中に挿入し、約5分保持して所定の温度とした後、引張試験を行った。歪速度は、引張試験のクロスヘッド速度から換算し適用した。
引張試験では、前記試験片をクロスヘッドに取り付け、このときのクロスヘッド間距離は約70mmとして試験を行い、応力歪曲線を作成した。歪み0.2%を耐力、最大応力を引張強さとした。更に、最大応力点から破断応力点までの永久伸びである局部伸びを応力歪曲線から求めた。その試験結果を表1に示す。
Figure 2009241143
No.1は、恒温槽での加温を行わなかった試験片、No.2〜4は恒温槽で100℃に加温した試験片、No.5〜7は恒温槽で200℃に加温した試験片、No.8〜10は恒温槽で250℃に加温した試験片、No.11〜13は恒温槽で300℃に加温した試験片である。No.2〜13の各試験片は、ブランクホルダーの接触で加熱されるアルミニウム合金板1のフランジ部を模擬しており、No.1は、常温のまま加熱されない場合のアルミニウム合金板1のフランジ部を模擬している。
試験結果が、全伸びが25%以上、局部伸びが8%以上のものを合格とする。表1の試験結果から、温度が200℃で、歪速度が0.16sec−1(1.6×10−1/sec)のNo.5、温度が200℃で、歪速度が0.016sec−1(1.6×10−2/sec)のNo.6、温度が250℃で、歪速度が0.16sec−1(1.6×10−1/sec)のNo.8、温度が250℃で、歪速度が0.016sec−1(1.6×10−2/sec)のNo.9のみが合格判定基準に達していることが確認できた。
合格判定基準に達した試験片のNo.5、No.6、No.8、No.9は、温度が、200℃以上、280℃未満の範囲であり、歪速度が、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下の範囲である。これらは何れもが本発明の要件であり、本発明の要件を満足するNo.5、No.6、No.8、No.9のみが合格基準に達したことが分かる。これに対し、他の試験片は、温度、歪速度のうち少なくとも一方が、本発明の要件を満足しておらず、その結果、合格判定基準に達することができなかった。
尚、試験片のNo.5とNo.6の、ベークハード後(熱処理後)の耐力を確認したところ、190MPa〜250MPaであり、パネル材として問題のない強度を備えていることを確認した。
(成形試験)
Al−Mg−Si系アルミニウム合金板として、前記引張試験と同様に、AA6022規格組成で、板厚1.0mmで、平面円形のアルミニウム合金板を用いて成形試験を実施した。
成形試験で用いたプレス成形用金型を図2に示す。このプレス成形用金型2のブランクホルダー5とダイス4には、加熱ヒーター6が内蔵されており、所定の温度に加熱できるようになっている。また、ポンチ3には、冷媒を循環させる冷却用配管7が内蔵されており、ブランクホルダー5とダイス4を加熱したときの熱がポンチ3まで伝熱しないような構成となっている。
成形試験は、深絞り成形試験(LDR−限界絞り比)で評価し、アルミ合金板の径を変化させ、ポンチ径(φ50mm)でその成形比を算出し、その値を成形性の指標とした。
まず、ブランクホルダーとダイスを所定の温度(室温、100℃、200℃、250℃、300℃)に加熱し、その後、アルミニウム合金板をブランクホルダー内に設置し、ダイスを降下させてしわ押さえ力:500kgfを付加し、アルミニウム合金板が所定の温度になるまで、約5分間保持した後、ポンチを可動させて成形した。尚、このときのポンチは、水冷により常に冷却し、その温度が室温から50℃の範囲内に収まるように調整した。また、成形速度は、成形試験機のポンチ速度で設定した。その試験結果を表2に示す。
Figure 2009241143
No.1〜3はブランクホルダーとダイスの温度を室温(25℃)とした試験、No.4〜6はブランクホルダーとダイスの温度が100℃とした試験、No.7〜9はブランクホルダーとダイスの温度が200℃とした試験、No.10〜12はブランクホルダーとダイスの温度が250℃とした試験、No.13〜15はブランクホルダーとダイスの温度が300℃とした試験である。夫々の温度で歪速度を、10−1/sec、10−2/sec、10−3/secと夫々変えて、得られたLDR−限界絞り比で評価した。この試験では、LDRが2.3以上のものを合格とする。
合格判定基準に達した試験片のNo.7、No.8、No.10、No.11は、ブランクホルダーとダイスの温度が、200℃以上、280℃未満の範囲であり、歪速度が、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下の範囲である。これらは何れもが本発明の要件であり、本発明の要件を満足するNo.7、No.8、No.10、No.11のみが合格基準に達したことが分かる。これに対し、他の試験片は、ブランクホルダーとダイスの温度、歪速度のうち少なくとも一方が、本発明の要件を満足しておらず、その結果、合格判定基準に達することができなかった。
また、プレス成形時のポンチの冷却効果を調べるため、ブランクホルダーとダイスの温度を250℃、歪速度を10−2/secに固定し、ポンチを水冷したときと、水冷しないときの成形性を評価した。その試験結果を表2のNo.16とNo.17で示す。
ポンチを水冷し、その温度を、本発明の要件である100℃未満の50℃としたNo.16では、LDRは2.3と合格判定基準に達したのに対し、ポンチを水冷せず、ポンチの温度が本発明の要件の100℃を超える230℃であるNo.17では、LDRは2.3と合格判定基準に達しなかった。
本発明のアルミニウム合金板のプレス成形方法で、プレス成形を行う状態を示す縦断面図であり、(a)はプレス成形前を、(b)はプレス成形後を夫々示す。 実施例の成形試験で用いたプレス成形用金型を説明図である。
符号の説明
1…アルミニウム合金板
2…プレス成形用金型
3…ポンチ
4…ダイス
5…ブランクホルダー
6…加熱ヒーター
7…冷却用配管

Claims (2)

  1. Al−Mg−Si系アルミニウム合金板のT4調質板材を、ポンチ、ダイス、ブランクホルダーで成るプレス成形用金型を用いて深絞り成形するアルミニウム合金板のプレス成形方法であって、
    前記ブランクホルダーの温度を、200℃以上、280℃未満、前記ポンチの温度を、100℃未満とし、
    且つ、プレス成形時の歪速度を、1×10−3/sec超、1×10−1/sec以下としてアルミニウム合金板を深絞り成形することを特徴とするアルミニウム合金板のプレス成形方法。
  2. 前記ブランクホルダーの温度に合わせ、ダイスの温度を、200℃以上、280℃未満としてアルミニウム合金板を深絞り成形する請求項1記載のアルミニウム合金板のプレス成形方法。
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