JPH11302884A - 酸洗槽のスリ疵防止装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続的にあるいは１本ずつのコイル状の鋼板
を酸洗する設備において、鋼板のカテナリーに伴うスリ
疵を確実に防止し、しかも、槽底部にスリ疵防止装置に
よる槽底部への段差を生じさせることなく、鋼板のスレ
ッディング性も問題なく、メンテナンスも容易となるよ
うなスリ疵防止装置を提供すること。 【解決手段】 酸洗槽１１の槽底に、複数個の好ましく
は径１００mm程度の鋼板支持用ボール１３を槽底部に敷
きつめる。材質は、耐熱耐食性に優れたゴム等が好まし
い。鋼板はカテナリーの生じた状態で鋼板支持ボール１
３に接触しながら酸洗槽内を進行するが、各鋼板支持ボ
ールは鋼板が接触することで鋼板と等速で回転するた
め、スリ疵の発生は防止できる。また、槽底部に傾斜を
つけておけば、出側に押されたボールは自動的に入側に
戻り、次材の先端スレッディング時もボールは入側方向
にあるため、スレッディング時の妨げになることはな
い。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、連続的に、あるい
は１本ずつのコイル状の鋼板を酸洗する設備におけるス
リ疵防止装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】熱間圧延後の鋼板を塩酸や硫酸等にて鋼
板表面の酸化スケール皮膜を除去する酸洗設備として
は、図３に示すような酸洗液への浸漬式が一般的であ
る。通常の浸漬式酸洗設備では、３槽程度の酸洗槽１が
連続して設置されており、鋼板２は、各酸洗槽を仕切っ
ている槽前後の堰３を乗り越えながら通板していく。こ
の酸洗槽１の槽深さは槽内の酸洗液を攪拌させることに
より酸洗処理時間を短縮する目的で２００mm程度と浅い
構造になっている。これらの槽深さが浅いものは所謂タ
ービュランス型と呼ばれ、鋼板は酸洗槽前後のリンガー
ロール４間で張力を付与しながら、酸洗液に完全浸漬の
状態で酸洗槽を通板する。

【０００３】タービュランス型酸洗設備では、酸洗槽１
が通常３槽程度つながっており、酸洗液循環タンク５内
の酸洗液がポンプ６により酸洗槽へ送りこまれ、酸洗槽
の下部、横部のノズル７から各酸洗槽内に噴射される。
各酸洗槽１内に供給された酸洗液はタンク５へ戻り、再
び酸洗槽１へ送られる。隣接する酸洗槽間には、鋼板２
に張力を付与し、且つ酸洗液が槽間を流出入するのを防
止する目的で、上下一対のリンガーロール４が設けられ
ている。また、各酸洗槽１の槽底には、鋼板２が直接槽
底部に接触するのを防止することを目的として、天然石
や磁器レンガ等の耐食、耐摩耗性に優れた材料からなる
複数のスキッド８が鋼板の通板方向に所定間隔で設置さ
れている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このような従来のター
ビュランス型酸洗設備においては、各酸洗槽１を通板さ
れる鋼板２に張力が付与されているが、鋼板２の自重に
より酸洗槽間のリンガーロール４で鋼板１にカテナリー
が生じる。このカテナリー量は、通常の操業状態で１０
０mm程度になるが、酸洗槽１の槽深さがタービュランス
型の場合、２００mm以下のため、前述のカテナリー量で
も鋼板２は槽底に達し、槽底に敷設したスキッドと接触
する可能性が非常に大きい。鋼板２がスキッド８に接触
すると、その接触により、鋼板２の下面にスリ疵が生じ
る。このような酸洗設備におけるスリ疵は、槽深さの浅
い酸洗槽に特有の問題である。このような問題に対し、
特開平５−２２２５６０号公報には、酸洗槽底部に図４
に示すロール９を設置し、たとえ鋼板のカテナリーによ
り鋼板が槽底部に接触しても鋼板とロールが同期して回
転し、スリ疵が生じないようにしている。

【０００５】しかし、本発明は連続酸洗が前提であり、
コイル先端のスレッディング時は槽底部のロールにより
槽底は凹凸が生じた状態になっているため、突っかかり
等の通板性に問題が生じる。特に、鋼板を１本ずつスレ
ッディングして通板する所謂プッシュ酸洗方式の場合
は、槽底部に設置したスキッドやロールは通板上の障害
となる。スレッディングの際の鋼板の突っ掛かりを皆無
にするためには、槽底の凹凸を減らすこと、即ちロール
間距離を極力縮めることが必要であるが、これはロール
本数、設置のための軸受け、ブラケットの増加に繋が
り、設備費が高くなる。また、槽内での鋼板の通板性は
槽底に設置したロールの据え付け精度が大きく影響し、
ロール芯のズレにより鋼板の直進性を悪くする。

【０００６】酸洗槽底部は耐酸煉瓦やグラナイトででき
ているため、ロールの設置精度を出すのが難しく、その
ため、先端スレッディング時に蛇行の生じる場合が多
い。更に、長時間使用後にロールが摩耗し、ロールを交
換する場合は、酸洗槽の底に固定したロールの軸受、ブ
ラケットを取り外す作業に多大な時間と修繕費がかかっ
ている。タービュランス型酸洗設備でスリ疵防止対策を
考える場合には、上記の鋼板スレッディングの対策、及
びスリ疵防止用装置のメンテナンス性を考慮しておくこ
とが重要である。

【０００７】本発明の目的は、鋼板のカテナリーに伴う
スリ疵を確実に防止し、しかも、槽底部にスリ疵防止装
置による槽底部への段差を生じさせることなく、鋼板の
スレッディング性も問題なく、メンテナンスも容易とな
るような酸洗槽のスリ疵防止装置を提供することにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の通り
である。 （１）酸洗槽入出側にあるリンガーロール間で張力を付
与した状態で鋼板を水平方向に通板して槽内の酸洗液に
浸漬する酸洗槽のスリ疵防止装置において、槽底に複数
個のボールを敷きつめて、通板する鋼板を支持し得るよ
うにしたことを特徴とする酸洗槽のスリ疵防止装置。 （２）酸洗槽底部を槽出側よりも入側の高さレベルを低
く傾斜させ、自動的にボールが槽入側に戻るような槽底
部である酸洗槽を有するようにした（１）記載のスリ疵
防止装置。 （３）酸洗槽底部の鋼板支持ボールの占有面積を、槽底
部の総面積の５０％以上に配置した（１）又は（２）記
載のスリ疵防止装置。 （４）酸洗槽底部の鋼板支持ボールの径を１００mm程度
とした（１）〜（３）のいずれかに記載のスリ疵防止装
置。

【０００９】

【発明の実施の形態】このような本発明に係るスリ疵防
止装置においては、酸洗槽内の酸洗液中を鋼板にカテナ
リーが生じた状態で通板される鋼板は、酸洗槽底部に設
けた鋼板支持用のボールと接触する。鋼板と接触したボ
ールは、鋼板の移動に伴って回転するので、鋼板を損傷
させない。また、槽内にボールを敷きつめているので槽
底部に凹凸も生じないことから、鋼板の先端が突っ掛か
ることもなく、鋼板のスレッディングの障害にならな
い。

【００１０】

【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１は本発明を実施したタービュランス型酸洗設
備の一例を示す縦断面図である。ここに示されたタービ
ュランス型酸洗設備は、鋼板１０の通板方向に設置され
た３槽の酸洗槽１１を有する。各酸洗槽１１は、槽底と
側壁のグラナイトによって角筒状の管路を形成してい
る。各酸洗槽１１内の底部、及び側面には、酸洗液を槽
内に噴射するノズルが設置されている。また、最上流側
に位置する酸洗槽の入側部分、最下流側に位置する酸洗
槽の出側部分、及び隣接する酸洗槽間には、上下一対の
リンガーロール１２が設置されている。鋼板１０は、槽
の入出側のリンガーロール１２によって張力を付与され
酸洗槽内の酸洗液中を浸漬して通板する。

【００１１】各酸洗槽１１の槽底には、複数個の鋼板支
持用ボール１３が槽の底部に敷きつめられている。各鋼
板支持ボール１３の槽底部への固定は特にない。各鋼板
支持用ボール１３の上面レベルは、前後のリンガーロー
ル１２、槽の深さにより決定される理想的な鋼板通過面
より若干下方に設定されている。鋼板支持ボール１３の
占有面積は、槽底部の総面積の５０％以上が好ましく、
５０％未満では先端の通板性に問題があり、逆に面積比
が増加すると、ボール数が増えることで、設備費のコス
トアップにつながる。ボール径は、長寿命化の点では大
径が有効であるが、特に、プッシュ酸洗の場合、鋼板の
スレッディング時、槽底の凹凸は極力ないことが望まし
く、１００mm程度が好ましい。材質は、耐熱耐食性に優
れたゴム等が好ましい。ゴム等を使用することにより、
ボールが回転しない場合でも、スリ疵は生じない。

【００１２】このような構成の本発明の酸洗設備では、
鋼板が理想的な鋼板通過ラインよりも下方を通るような
カテナリーが生じた場合、鋼板１０はこのカテナリーの
生じた状態で鋼板支持ボール１３に接触しながら酸洗槽
１１内を進行する。各鋼板支持ボール１３は鋼板１０が
接触することで鋼板１０と等速で回転するため、鋼板１
０と鋼帯支持ボール１３間でのスリ疵が生じるのが防止
される。また、ボールは鋼板先端のスレッディングに伴
い、ライン出側方向に押されるが、槽底部につけられた
傾斜１４（入側レベルが出側よりも低くなるような傾
斜）により、自動的に入側に戻り、次材の先端スレッデ
ィング時もボールは入側方向にあるため、スレッディン
グ時の妨げになることはない。

【００１３】なお、図２に示す酸洗槽の中央部付近にの
みボールを設置する方法でも、通板時の酸洗槽底部と鋼
板の接触によるスリ疵を防止することは可能である。こ
の場合には、鋼板のカテナリーが最も大きくなる中間付
近の酸洗槽の底部にボールを収容設置するための凹部を
形成し、そこに複数個のボールを入れればよい。ボール
収容凹部には、図１と同様に入側が低位になるような傾
斜をつけておくことが望ましい。

【００１４】

【発明の効果】従来の如く槽底部にスキッドを設置して
いた場合は、３０％のスリ疵が発生していたが、本発明
のスリ疵防止装置を採用した結果、鋼板が槽底に敷きつ
めたボールに接触しても、ボールが回転するため、スリ
疵の発生は皆無となり、鋼板の表面品位の品質改善と歩
留向上に大きく寄与することができた。また、鋼板のス
レッディング時の先端の突っ掛かり回数を皆無にする目
的でロールを短ピッチで設置した場合に比べ、本発明で
は固定用の軸受け、ブラケット等が不要のため、従来方
式のスリ疵防止装置に比べ設備費を約５０％削減するこ
とができた。

【００１５】更に、軸受け、ロールのシャフトがないた
め、軸受け、ロールシャフトの寿命による交換が不要の
ため、メンテナンス頻度が減少し、整備費を削減するこ
とができた。また、軸受けがないため、槽底に蓄積する
スケールの除去作業が容易になり、メンテナンス時のス
ケール除去作業時間を短縮することができた。それと同
時に従来方式の場合は軸受けを交換する場合は鋼板の蛇
行を防止する目的でその軸受けの設置には長時間に渡る
芯合わせ作業が必要であったが、本発明は軸受けそのも
のがないため、整備時間を３０％短縮することができ
た。また更に、本発明は従来方式に比べ、槽底への設置
が容易である上、鋼板の直進通板性も同時に確保可能で
あるため、先端スレッディング時の蛇行もなくなり、作
業性を向上させることができた。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るスリ疵防止装置を適用した酸洗槽
の一例を示す縦断面図。

【図２】本発明の他のスリ疵防止装置を適用した酸洗槽
の縦断面図（槽の中央部にのみ配置した例）。

【図３】従来の酸洗槽縦断面図（槽底にスキッドを敷い
たタイプ）。

【図４】従来の酸洗槽縦断面図（槽底にロールを設置し
たタイプ）である。

【符号の説明】 １ 酸洗槽 ２ 鋼板 ３ 堰 ４ リンガーロール ５ 酸洗液循環タンク ６ ポンプ ７ ノズル ８ スキッド ９ 槽底ロール １０ 鋼板 １１ 酸洗槽 １２ リンガーロー
ル １３ ボール １４ 槽底の傾斜

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 酸洗槽入出側にあるリンガーロール間で
   張力を付与した状態で鋼板を水平方向に通板して槽内の
   酸洗液に浸漬する酸洗槽のスリ疵防止装置において、槽
   底に複数個のボールを敷きつめて、通板する鋼板を支持
   し得るようにしたことを特徴とする酸洗槽のスリ疵防止
   装置。
2. 【請求項２】 酸洗槽底部を槽出側よりも入側の高さレ
   ベルを低く傾斜させ、自動的にボールが槽入側に戻るよ
   うな槽底部したことを特徴とする請求項１記載のスリ疵
   防止装置。
3. 【請求項３】 酸洗槽底部の鋼板支持ボールの占有面積
   を、槽底部の総面積の５０％以上に配置したことを特徴
   とする請求項１又は２記載のスリ疵防止装置。
4. 【請求項４】 酸洗槽底部の鋼板支持ボールの径を１０
   ０mm程度としたことを特徴とする請求項１〜３のいずれ
   か１項記載のスリ疵防止装置。