JPH11300274A - 圧力波発生装置 - Google Patents

圧力波発生装置

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JPH11300274A
JPH11300274A JP11336998A JP11336998A JPH11300274A JP H11300274 A JPH11300274 A JP H11300274A JP 11336998 A JP11336998 A JP 11336998A JP 11336998 A JP11336998 A JP 11336998A JP H11300274 A JPH11300274 A JP H11300274A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外からの振動や外気圧の影響を受けにくく、
広い周波数範囲で安定に超音波などの圧力波を発生する
ことができ、かつ集積回路技術を適用しての製造が容易
な圧力波発生装置を提供することにある。 【解決手段】 本発明は、電気的に駆動される発熱体薄
膜を熱絶縁上に被者された圧力波発生手段を用いる。発
熱体薄膜を電気的にして表面の空気層に超音波周期の温
度変化を与え、圧力波を生じさせる。特に本発明では発
熱体を薄膜状に形成して表面積を大きくするとともに、
発熱体と基板との間に熱伝導率のきわめて小さい多孔質
層を大きくするとともに、熱絶縁層を設けて発熱体を基
板から熱的に絶縁することにより、発熱体表面の温度変
化が大きくなるようにして、超音波発生効率を向上させ
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気などの媒体を
加熱して圧力波を発生させる圧力波発生装置に関するも
のであり、特に超音波発生装置として有用なものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来の超音波発生装置のほとんどは、圧
電効果や磁歪効果により機械的振動を発生させるもので
ある。たとえば圧電効果を利用した超音波発生装置の場
合は、たとえば円板状にチタン酸バリウムを焼結して両
面に電極を焼付けた構造の振動発生素子を用い、素子の
電極間に超音波電気信号を印加することにより、機械的
振動を発生させる。発生した機械的振動は、空気などの
媒質に伝達される。
【0003】このような機械的振動を利用する従来の超
音波発生装置は、外部からの振動や外気圧の変動の影響
を受けやすく、また固有の共振周波数をもつために、発
生する超音波の周波数範囲を広くとることが困難であっ
た。また集積回路技術がなじまないため、振動発生素子
は単品でしか製造できず、回路のコンパクト化が困難で
あった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、外からの振
動や外気圧の変動の影響を受けにくく、広い周波数範囲
で安定に超音波などの圧力波を発生することができ、か
つ集積回路技術を適用しての製造が容易な圧力波発生装
置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、電気的に駆動
される発熱体薄膜を熱絶縁層上に被着された圧力波発生
手段を用いることで課題の解決を図るものである。熱的
に超音波を発生するには、電気的に駆動される発熱体を
用いて表面の空気層に超音波周期の温度変化を与え、圧
力波を生じさせればよい。しかし通常は、発熱体自体と
発熱体を取り付ける基板の熱容量、および基板の熱伝導
率のために発熱体表面の温度変化を大きくすることがで
きず、超音波発生効率はかなり低いものとなる。そのた
め本発明は、発熱体を薄膜状に形成して表面積を大きく
するとともに、発熱体と基板との間に熱伝導率のきわめ
て小さい多孔質層や高分子層などの熱絶縁層を設けて発
熱体を基板から熱的に絶縁することにより、発熱体表面
の温度変化が大きくなるようにして、超音波発生効率を
向上させている。
【0006】本発明の圧力波発生装置は、従来の機械振
動を用いる超音波発生装置に対して、次のような特長を
もっている。 a.広帶域で強力であること。
【0007】b.外気圧変動等に対して弱い構造を一切
もたないこと。 c.シリコン微細加工の技術によって比較的容易に精細
な超音波アレイが得られ、その他周辺回路との一体化な
ど、半導体集積回路の技術を適用して製造することがで
きること。
【0008】本発明の圧力波発生装置は、以下のような
構成を有する。 (1)基板と、基板上に設けられた多孔質層と、多孔質
層上に設けられて電気的に駆動される発熱体薄膜とから
なること。 (2)前項(1)において、発熱体薄膜は電気抵抗体薄
膜であること。 (3)前項(1)において、発熱体薄膜はペルチエ素子
であること。 (4)半導体基板と、半導体基板上に形成された多孔質
層と、多孔質層上に被着されたリボン状金属薄膜と、リ
ボン状金属薄膜の各端部に設けられた駆動信号端子とを
備え、リボン状金属薄膜を発熱体として超音波を発生す
ること。 (5)前項(4)において、リボン状金属薄膜は複数個
備えられ、各リボン状金属薄膜は一次元状あるいは二次
元状に一定間隔で配列されていること。 (6)前項(4)および(5)において、半導体基板の
表面に襞状に複数個の凹凸が形成されており、その上に
多孔質層とリボン状金属薄膜とが設けられていること。 (7)前項(4)ないし(6)において、半導体基板お
よび多孔質層はシリコンでつくられていること。
【0009】図1は、本発明による圧力波発生装置の基
本的な構造を例示的方法で示す図であり、図1の(a)
は装置の断面図、(b)は装置の上面図である。図1の
(a),(b)において、1はシリコン(Si)などの
基板、2は基板1上に形成されたポーラスシリコン(P
o−Si)や高分子材料膜などの熱絶縁層、3は熱絶縁
層2上に被着されたアルミニウム(Al)などの発熱体
薄膜、4,5は発熱体薄膜3の各端部に接続された信号
端子、6は駆動用の超音波周波数の信号を発生する信号
源である。
【0010】発熱体薄膜3は、ジュール熱を発生する電
気抵抗体あるいはペルチエ効果による発熱/吸熱を行う
ペルチエ素子で構成され、信号端子4,5を介して信号
源6により駆動される。なお、信号源6から発生される
信号は、正負いずれか一方の極性となるように、交流成
分と直流成分を合成したものである。
【0011】図1の(a)に示されるように、発熱体薄
膜3と基板1の間には熱伝導度の小さい熱絶縁層2が設
けられているので、熱絶縁層2が存在しない場合にくら
べて発熱体薄膜3から基板1への熱の流失は小さく抑え
られる。このため、発熱体薄膜3を駆動する信号のパワ
ーに対して発熱体薄膜3に生じる温度変化が大きくな
り、発熱体薄膜3の表面に接する空気層に伝達される圧
力波エネルギーも大きくなる。
【0012】次に、本発明による圧力波発生装置の動作
原理を説明する。固体表面の温度変化 図2の(a)に示すように、ある材料でできた固体の表
面に被着された発熱体薄膜が十分に薄くされているとき
の固体の表面温度の変化は、固体の熱伝導度をα、体積
あたりの熱容量をC、角周波数をωとして、単位面積あ
たりのエネルギーの出入りq(ω)[w/cm2 ]があっ
たとき、次式のT(ω)で与えられる。
【0013】
【数1】
【0014】したがって固体の材質としてはαCが小さ
い材料ほど同じエネルギーの授受に対する表面温度の変
化が大きくなる。ここで図2の(b)に示すように、熱
伝導度α、体積あたりの熱容量Cをもつ固体の厚さをx
=lとし、x>lの領域にα,Cよりも十分に大きな熱
伝導度と熱容量をもつ別の材料が存在する場合には、
【0015】
【数2】
【0016】程度にとると、発熱の交流成分はそのまま
にして、直流成分のみを効果的に逃がすことができる
(詳細は省略)。温度変化からの音の発生 固体表面に温度変化があったとき、それに追随して温度
変化する空気層の厚みは
【0017】
【数3】
【0018】程度である。空気に対してこの値を計算す
ると、100kHzにおいてd=7.6μmになり、周波
数の平方根に反比例するから極端に小さな値にはならな
い。また図3に示すように、厚さhの空気層の温度が強
制的にT(ω)のように変化させられたとすると、空気
中には
【0019】
【数4】
【0020】なる強度の進行音波が発生する。kは周波
数に対応する平面波の波数である。λを音波の波長とし
て、h=λ/(4√γ)に設定すればp(ω)=Po T
(ω)/To となり、例えば1Kの温度振幅は300P
a の音波を発生する(ただしγ=1.4とする)。
【0021】
【発明の実施の形態】熱伝導の基本方程式によると、一
般に構造のスケールが1/nになると現象はn2 倍高速
になり、所定の温度を得るためのエネルギーの総量は1
/nになることはよく知られている。したがって発生し
ようとする超音波の周波数が高くなるほど、超音波発生
装置のデバイスサイズは、小さいことが有利となる。し
かしそれにはμm−nmオーダーの微細加工その他の技
術が必要となるが、その多くは従来の半導体集積回路製
造技術を利用することによって容易に解決可能である。
【0022】たとえば発熱体薄膜と基板との間に設けら
れる熱絶縁層は、(1)式で述べたように、その熱伝導
度αと体積当たりの熱容量Cをきわめて小さくする必要
があるが、これはたとえばシリコン表面を、
【0023】
【数5】
【0024】以上の深さまでnmオーダーの多数の孔で
多孔質化することで実現できる。このような多孔質層は
ポーラスシリコンと呼ばれ、単結晶シリコンをフッ酸溶
液中で電気化学エッチングすることによって得られる。
孔の密度、多孔質層の深さは、そのときの電圧と時間に
よって制御される。
【0025】典型的なポーラスシリコンの熱伝導率α、
体積当たりの熱容量Cは以下のようであり、αCは結晶
シリコンに比べ約1/400である。またこのときのL
は100kHzにおいて2μmである。
【0026】
【表1】
【0027】図4の(a)は、デバイスの1例と発生音
圧の測定構造を示す。図において1mm厚の平面状の単結
晶シリコン基板7の表面には、10〜50μm厚の多孔
質層(ポーラスシリコン)8が形成され、その上に超音
波周波数でジュール熱を発生する発熱体としてアルミニ
ウム薄膜9が30nm厚に蒸着されている。
【0028】このようにして作られたデバイスの表面
に、中央部にマイクロホン10をもつアクリルカバー1
1を取り付け、0.1mm厚の薄い密閉空気層を形成して音
圧測定を行った。図4の(b)は、多孔質層8の厚みが
10μm,25μm,50μmの各デバイスについて、
1.0×10-3[W/cm2 ]の入力電力を与えたときに観
測された周波数[kHz]に対する発生音圧の振幅[P
a ]を示している。発生音圧は、周波数の平方根に反比
例する傾向を示す。
【0029】図5は、発熱体面をひだ(襞)状に形成し
たデバイスの実施の形態を示す。図において、シリコン
基板12には等間隔に複数のひだ13が形成されてい
る。各ひだ13は多孔質層14で覆われ、それらの全表
面に発熱体となるアルミニウム薄膜15が蒸着されてい
る。
【0030】前述したように、固体表面の温度変化に追
随できる空気層の厚みは
【0031】
【数6】
【0032】で与えられ、100kHzではd=7.6μ
mとなる。このdの値は、周波数の平方根に反比例する
ので、図5のように発熱体をひだ(襞)構造にし、ひだ
間のギャップgを15μm程度の大きさにしておけば、
100kHz以下の周波数においてギャップ内の空気を
固体表面温度、つまりアルミニウム薄膜15のジュール
発熱温度と同じように変化させることができる。アルミ
ニウム薄膜15は各ひだ13に亘って電気的に連続して
おり、両端部のひだ13に接続される信号源16からの
信号により駆動されてジュール熱を発生する。このとき
のアルミニウム薄膜15の消費電力の大きさは、アルミ
ニウム薄膜15の抵抗値と信号源16の信号電圧に依存
している。アルミニウム薄膜15の抵抗値は、蒸着厚さ
を変えることにより、所望の値に設定することができ
る。
【0033】図5に示すひだ状構造をもつデバイスにお
ける消費電力と出力音圧の関係は(1)および(2)式
からそのまま計算される。シリコン表面を以下の実験を
用いたポーラスシリコンにした場合、1W/cm2 のジュ
ール発熱に対する温度振幅は100kHzにおいて1.5
×10-2[K]となり、音圧振幅に換算すると5Pa
(105dB)になる。なお、ひだの高さh=700μ
m、ひだの芯となるシリコン領域の厚みs=10μmと
すれば、そのときギャップ先端部分の温度は2K程度上
昇する。
【0034】また狭いギャップを音波が進行する際のギ
ャップ幅と減衰距離(振幅が1/eになる距離)との関
係は図6に示され、空気層の厚さを10μmとすると1
000kHZ 超音波の4分の1波長程度に設定する場
合、そのギャップを進行する際の粘性損失は大きくな
い。
【0035】発熱体として、図5のようにジュール熱を
利用する代わりに、ペルチエ素子による発熱/吸熱を利
用することも可能である。図7は、各ひだにペルチエ素
子を形成したひだ状構造をもつ実施の形態を示す。
【0036】図7において、各ひだ13の両側にそれぞ
れp型ポーラスシリコン層(Po Si (p))17とn
型ポーラスシリコン層(Po Si (n))18とを上下
並行に形成し、その上にアルミニウム薄膜19を蒸着す
る。
【0037】ペルチエ素子では、n型半導体と金属電極
との接点部分において、金属電極からn型半導体へ電子
が移動するとき金属電極から熱エネルギーがうばわれて
金属電極は冷却し、また逆に電子がn型半導体から金属
電極へ移動するときはn型半導体から金属電極へ熱エネ
ルギーが運ばれて金属電極で発熱が生じる。同様な現象
は、p型半導体と金属電極との間の正孔の移動でも生
じ、熱エネルギーは正孔の移動する方向に運ばれる。し
たがって、図7においてp型ポーラスシリコン層17と
n型ポーラスシリコン層18との間に、p型ポーラスシ
リコン層17側が高電位となる向きに電圧を印加する
と、p型ポーラスシリコン層17からアルミニウム薄膜
19を通り、n型ポーラスシリコン層18へ向かって電
流が流れる。その結果、アルミニウム薄膜19がp型ポ
ーラスシリコン層17およびn型ポーラスシリコン層1
8と夫々接触している領域で発熱が生じる。しかし、p
型ポーラスシリコン層17とn型ポーラスシリコン層1
8に電圧を印加するポイントでは、吸熱が発生するの
で、この電圧印加ポイントはひだ構造から離れた位置に
設ける必要がある。
【0038】図5あるいは図7に示すようなひだ構造を
もつデバイスを一次元状あるいは二次元状に配置して,
超音波アレイを構成することができる。図8は,超音波
アレイの構成例を示す。
【0039】図8において、基板20上は、3×3のデ
バイス21−1〜21−9が等間隔で配置されている各
デバイス21−1〜21−9はそれぞれ、信号線22に
接続されており、各デバイスへの駆動タンミングを適切
に設定することにより、任意の方向に対して鋭い指向性
をもつ超音波ビームを発生することができ、あるいは図
3(a)のように波長よりも狭い密閉空間に対して各デ
バイスを同一タンミングで駆動することにより、強力な
音場を生成することができる。
【0040】なお、以上述べた実施の形態では、発熱体
の下層に設ける熱絶縁層としてポーラスシリコンなどの
多孔質層が用いられているが、他の熱伝導度の低い材
料、たとえば高分子材料を用いることも可能である。
【0041】
【発明の効果】本発明の圧力波発生装置は、従来の超音
波発生装置のような機械的な振動発生手段を用いずに音
波を発生させるため、外部からの振動や外気圧の変動の
影響を受けにくく、また超音波の発生周波数の範囲を広
くとることが可能である。
【0042】さらに本発明装置では集積回路技術の利用
が容易であり、たとえばシリコン基板上に音波発生デバ
イスの周辺回路も形成することができるので、同一基板
上にこの音波発生デバイスの周辺回路も形成することが
可能であり、システム全体をコンパクトで且つ安価につ
くることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による圧力波発生装置の基本的構造を示
す説明図である。
【図2】固体の熱伝導率および熱容量と表面温度変化の
説明図である。
【図3】熱による音波の発生の説明図である。
【図4】デバイスの1例と発生音圧の測定例を示す説明
図である。
【図5】発熱体面をひだ状に形成した実施の形態を示す
説明図である。
【図6】ギャップ幅とそこを進行する音波の関係を示す
グラフである。
【図7】ペルチエ素子を用いたデバイスの実施の形態を
示す説明図である。
【図8】超音波アレイの構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
1:基板 2:熱絶縁層 3:発熱体薄膜 4、5:信号端子 6:信号源

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板と、基板上に設けられた熱絶縁層
    と、熱絶縁層上に設けられて電気的に駆動される発熱体
    薄膜とからなることを特徴とする圧力波発生装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、熱絶縁層は多孔質層
    であることを特徴とする圧力波発生装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、熱絶縁層は高分子材
    料層であることを特徴とする圧力波発生装置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3において、発熱
    体薄膜は電気抵抗体薄膜であることを特徴とする圧力波
    発生装置。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項3において、発熱
    体薄膜はペルチエ素子であることを特徴とする圧力波発
    生装置。
  6. 【請求項6】 半導体基板と、半導体基板上に形成され
    た多孔質層と、多孔質層上に被着されたリボン状金属薄
    膜と、リボン状金属薄膜の各端部に設けられた駆動信号
    端子とを備え、リボン状金属薄膜を発熱体として圧力波
    を発生することを特徴とする圧力波発生装置。
  7. 【請求項7】 請求項6において、リボン状金属薄膜は
    複数個備えられ、各リボン状金属薄膜は一次元状あるい
    は二次元状に一定間隔で配列されていることを特徴とす
    る圧力波発生装置。
  8. 【請求項8】 請求項6および請求項7において、半導
    体基板の表面に襞状に複数個の凹凸が形成されており、
    その上に多孔質層とリボン状金属薄膜とが設けられてい
    ることを特徴とする圧力波発生装置。
  9. 【請求項9】 請求項6ないし請求項8において、半導
    体基板および多孔質層はシリコンでつくられていること
    を特徴とする圧力波発生装置。
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