JP4102504B2 - 圧電トランスおよびその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電トランスおよびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電トランスは、機械振動のエネルギを変換媒体とするものであり、従来の電磁式トランスよりもエネルギ密度が高いので、同じ出力の電磁式トランスよりも小型化が期待でき、また、低背化しても電磁式トランスのように効率低下することなく高効率である。
【0003】
このため、圧電トランスは、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置、携帯型テレビ、あるいは車載型テレビ等、液晶ディスプレイを有し、小型であることが特徴の1つである電子機器の普及に伴い、液晶ディスプレイ用バックライトのインバータ回路等に電磁式トランスに代わって用いられつつある。さらに、圧電トランスは、やはり小型化が要望されているACアダプタやDC−DCコンバータ等の電源回路にも、電磁式トランスに代わって用いられつつある。
【0004】
液晶ディスプレイ用バックライトのインバータ回路用トランスとしては、一般に、負荷抵抗が高く(数10kΩから数100kΩ程度)、比較的小さい電流しか流れないため、図12(a)に示すローゼン型の圧電トランス310に代表される昇圧タイプの圧電トランスが用いられることが多い。
【0005】
一方、ACアダプタやDC−DCコンバータ等の電源回路用トランスとしては、一般に、負荷抵抗が低く(数10Ω程度)、比較的大きい電流が流れるため、出力部が複数積層された図12(b)に示す縦効果型の圧電トランス410、図12(c)に示す縦−縦効果型の圧電トランス510、または図12(d)に示す横−横効果型の圧電トランス610、あるいは図12(e)に示す径拡がり1次振動モードの圧電トランス用素子11を含む圧電トランス710が提案もしくは使用されている。
【0006】
尚、圧電トランス用素子11は、中心点からほぼ放射状に拡がる板面形(例えば、真円形または多角形)を持つ板状を呈する圧電セラミックスまたは圧電単結晶から成る圧電振動体に所定の電極を形成して構成されており、径拡がり1次振動モードで振動する素子の一例である。そして、本従来例では、圧電トランス用素子11単体で、圧電トランス710が構成されている。1次振動モードで振動する圧電トランス用素子の板面形状は、最も好ましくは真円形であるが、本例では圧電振動体が正方形、電極板が真円形である。尚、圧電振動体の板面が真円形以外の場合でも、振動に関する実効領域は、真円形である。
【0007】
一般に、圧電トランスの出力電力Poutは、以下の数1式((1)式)のよう に、質量m、振動速度vの二乗、電気機械結合係数kの二乗、および駆動周波数fの積にほぼ比例することが知られている。
【0008】
【数1】
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
(1)式によると、圧電トランスの小型化と高出力化とを両立するためには、keff 2、v2、および駆動周波数fのいずれかを大きくすればよいことになる。 ただし、電気機械結合係数keffおよび振動速度vは、材質によって概ね決定さ れ、さらに最適条件下で最大に設定されて用いられるものであるから、材料特性を現状のままとするならば、圧電トランスの小型化と高出力化とを両立するためには、駆動周波数fを大きくすること、即ち高周波化が必要である。
【0010】
一方、圧電トランスに限らず、圧電振動体の共振周波数は、寸法に概ね反比例するものである。例えば、矩形板の長さ振動を用いた圧電振動体では、断面形状を変えずに長さ寸法を半分にすることによって駆動周波数fを2倍にした場合は、(1)式によれば質量mが半減しても駆動周波数fが2倍になるから出力電力は維持されるはずである。ところが、実際には、図13に示すように、形状によって振動し易さが異なり、keffが低下してしまうことから、高い出力電力Poutを維持することが困難である。
【0011】
特に、図12(e)の径拡がり1次振動モードを用いた圧電トランス710の場合には、駆動周波数fが、円板形実効領域の直径に反比例することから、同様に2倍の高周波化を図るために直径を半分にする(ただし、厚みは変えず)と、体積が4分の1になってしまう。(1)式から、厚みを2倍にすれば単純に体積は満足できるが、実際には、圧電振動体の高さ寸法が大きく増加することから、長さ振動の場合よりもkeffが低下しやすい。これらのことは、大きさを変化さ せずに出力電力を増大する場合でも、同様である。
【0012】
このように、径拡がり1次振動モードを用いた圧電トランスにおいて、同一の出力を維持しつつ、かつ高周波化によって小型化を図る場合には、形状の悪化による振動体特性の低下という問題を生ずる。
【0013】
本発明の課題は、出力電力が高く、小型でスペース効率が良い径拡がり1次振動モードの圧電トランスを提供することである。
【0014】
本発明の他の課題は、出力電力を高め、スペース効率良く径拡がり1次振動モードの圧電トランスを使用する方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、板状の圧電振動体に、円板形の実効振動領域を持つように電極を板面に形成すると共に、端子としての対の入力部および対の出力部を側面に形成して構成され、径拡がり1次振動モード特性を有する圧電トランス用素子を複数有し、複数の前記圧電トランス用素子の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されており、前記複数の圧電トランス用素子は、絶縁材からなるホルダを介して厚さ方向に積層されていることを特徴とする圧電トランスが得られる。
【0016】
本発明において、前記複数の圧電トランス用素子は、前記実効振動領域の直径の1/2の直径の弾性材を介して積層されてもよい。また、本発明の圧電トランスは、最大出力が得られる駆動周波数以上の駆動周波数で駆動されてもよい。
【0017】
本発明によればまた、板状の圧電振動体に、円板形の実効振動領域を持つように電極を板面に形成すると共に、端子としての対の入力部および対の出力部を側面に形成して構成され、径拡がり1次振動モード特性を有する圧電トランス用素子を複数用意し、複数の前記圧電トランス用素子の各入力部同士および各出力部同士を、それぞれ並列接続し、前記複数の圧電トランス用素子を、絶縁材からなるホルダを介して厚さ方向に積層することを特徴とする圧電トランスの使用方法が得られる。
【0018】
本発明において、前記複数の圧電トランス用素子は、前記実効振動領域の直径の1/2の直径の弾性材を介して積層してもよい。また、本発明の圧電トランスの使用方法は、最大出力が得られる駆動周波数以上の駆動周波数で駆動してもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による圧電トランスおよびその使用方法を説明する。
【0020】
[実施の形態1]
図1を参照して、本発明の実施の形態1による圧電トランス110では、それぞれ径拡がり1次振動モードを用いた2つの圧電トランス用素子11の各入力部に単一の電源からの入力信号を印加すると共に、それぞれの出力部を単一の負荷に接続している。これにより、前述の(1)式における質量mの増大に加え、個々の圧電トランス用素子自体は前述のごとく良好な形状であるから、振動体特性の低下という問題を避けることができる。
【0021】
さらに、並列に駆動する場合の個々の圧電トランス用素子の共振周波数のばらつきを検討してみた。即ち、図2の回路図において圧電トランスを構成するそれぞれの回路素子に対してばらつきを考慮して解析を行ったものである。この結果、圧電トランスの直列共振即ち、L、Cのばらつきが出力特性に大きく影響することが判明した。
【0022】
図2においてL、Cにそれぞれ2%のばらつきを考慮して出力電力、効率を計算した結果を図6に示す。図6において、それぞれの圧電トランスの直列共振周波数近辺に、効率が大きく低下する領域が存在し、出力電力が極端に変動している。これは底列共振周波数の僅かなばらつきによって、負荷からみた個々の圧電トランス用素子の出カインピーダンスが異なるため、より低い側の出カインピーダンスの影響を受け、出力の極端な変動が生じるものと考えられる。
【0023】
実際の圧電トランスの駆動では、このような効率の低下は極端な温度上昇となることが予想されることから、この領域で駆動することは好ましくない。
【0024】
一方、出力電力のピークよりも高周波側においては、個々の圧電トランス用素子の出力インピーダンスは同様に異なっていると考えられるが、この領域ではインピーダンスが最大になる並列共振の近辺であることから高インピーダンス領域となるために、出力電力の大きな変動がみられなくなるものと考えられる。即ち、並列駆動の場合には、個々の圧電トランス用素子の共振周波数のばらつきを避けるため、圧電トランスの出カインピーダンスが高い領域、即ち、出力電力最大付近およびこれよりも高周波領域で駆動することが好ましい。
【0025】
圧電トランス110では、2つの圧電トランス用素子11が横に並べて配置されている。圧電トランス用素子11は、図12(e)に示した大きさ13.0×13.0×4.5mmの正方形板形状のものである。内部は厚み方向に複数の電極が積層された構造であり、140KHz近辺で正方形板の径拡がり1次振動モードが励振される。
【0026】
1つの電源で2つの圧電トランス用素子を駆動するために入力信号は並列にそれぞれの圧電トランスに印加される。また負荷としては2個の圧電トランスの出力側の制動容量が負荷からみれば並列に接続されることから、最も効率よく出力を伝達するために、以下の数2式((2)式)に合わせた負荷抵抗を接続した。
【0027】
【数2】
【0028】
尚、(2)式中、ωは角周波数、Cd2は1個の圧電トランスの出力側制動容量である。図3に、圧電トランス用素子11単体での出力特性を示す。温度上昇約25℃での出力電力は20Wである。また、図4に圧電トランス110の出力特性を示す。出力40Wでの温度上昇量は約28℃であった。並列に接続した場合、約2倍の出力電力が得られていることが示されている。
【0029】
比較例として、図5には、図12(e)の圧電トランスと同一直径で(即ち同一の共振周波数)ありながら単体で2倍の出力電力を得ることを目的とし、単純に厚さを図12(e)の圧電トランスの2倍、外形形状が13.0×13.0×9.0mmである圧電トランスの出力特性を示す。形状の影響による振動体特性の劣化が無ければ、厚さを2倍にしたことで出力電力は2倍になるはずであるが、定格出力電力は28W程度に過ぎず、形状の影響が出力電力の増大に悪影響を与えていることが分かる。
【0030】
圧電トランス110は、具体的には、図7(a)に示すように、ACアダプタの回路基板等(図示せず)の上に、圧電トランス110aとして実装される。圧電トランス110aは、樹脂等の絶縁材からなる取付用ホルダ12にそれぞれ嵌めこまれた2つの圧電トランス用素子11を有し、回路基板等の上に並列に実装される。また、図示はしないが、2つの圧電トランス用素子11の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されている。
【0031】
[実施の形態2]
図7(b)を参照して、本発明の実施の形態2による圧電トランス110bは、ACアダプタの回路基板等(図示せず)の上に実装される。圧電トランス110bは、樹脂等の絶縁材からなる取付用ホルダ12にそれぞれ嵌めこまれた2つの圧電トランス用素子11を有し、回路基板等の上に積層して実装される。また、図示はしないが、2つの圧電トランス用素子11の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されている。即ち、電気回路的には、実施の形態1(図2)と同じである。
【0032】
尚、取付用ホルダ12と圧電トランス用素子11の接触面は大きすぎると振動を阻害し、Qmの低下を引き起こし、最終的に効率の低下をもたらすことから、可及的小さくしている。
【0033】
このように構成することで、圧電トランス110bは、実施の形態1による圧電トランス110aと同等の特性でありながら、圧電トランス110aよりも小さい占有面積である。
【0034】
尚、圧電トランス用素子11は比較的薄型(例えば、取付用ホルダ12を除いた厚さは、4.5mm)であるため、圧電トランス用素子11が積層された圧電トランス110bも、実際上、薄型であるといえる。
【0035】
圧電トランス110bの出力特性を図9に示す。図9において、40W出力時の温度上昇量は約40℃と大きいが、これは、下側のトランスの温度上昇分が上側のトランスの温度上昇量に重畳しているためであると考えられる。
【0036】
[実施の形態3]
図7(c)を参照して、本発明の実施の形態3による圧電トランス110cは、ACアダプタの回路基板等(図示せず)の上に実装される。圧電トランス110cは、2つの圧電トランス用素子11を図示しない弾性材としてのシリコンゴムシート(あるいは弾性を持つ両面テープ等であってもよい)を介して積層し、さらに当該積層体を取付ホルダ13内に収容して実装される。また、図示はしないが、2つの圧電トランス用素子11の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されている。即ち、電気回路的には、実施の形態1(図2)と同じである。
【0037】
このように構成することで、圧電トランス110cは、実施の形態1による圧電トランス110aと同等の特性でありながら、圧電トランス110aよりも小さい占有面積である。
【0038】
弾性材について、効率および温度上昇量と実装上の安定度の兼ね合いから、シリコンゴムの接着半径は、板面が正方形の圧電トランス用素子11の内接円(実効振動領域)半径の1/2以内の全域とすることが好ましい。それよりも小さい面積では、効率は同等以上でも実装上の安定度がやや劣る。一方、内接円半径の中心から1/2を超えて大面積であると、効率は大きく低下する。
【0039】
[実施の形態4]
図10を参照して、本発明の実施の形態4による圧電トランス110dは、ACアダプタの回路基板等(図示せず)の上に実装される。圧電トランス110dは、2つの圧電トランス用素子11を各板面を実装面(回路基板等の板面)に対して直立姿勢で実装される。2つの圧電トランス用素子11の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されている。即ち、電気回路的には、実施の形態1(図2)と同じである。
【0040】
このように構成することで、圧電トランス110dは、実施の形態1による圧電トランス110aと同等の特性でありながら、圧電トランス110dよりも小さい占有面積である。
【0041】
図11に圧電トランス110dの出力特性を示す。出力40Wでの温度上昇量をみると、約20℃以下となっており、本発明の実施の形態1〜4中で最も温度上昇量が低くい。これは、正方形拡がり振動トランスにおいて最も専有面積の大きな対の板面が両面とも露出する(単純に横置きだけでは1面のみ)ことによって放熱が促進されたものと考えられる。
【0042】
【発明の効果】
本発明による圧電トランスは、円板形の実効振動領域を持つ板状の圧電振動体に所定の電極を形成して構成され径拡がり1次振動モード特性を有する圧電トランス用素子を複数有し、複数の圧電トランス用素子の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されているため、出力電力が高く、小型でスペース効率が良い。
【0043】
本発明による圧電トランスの使用方法によれば、圧電振動体の形状の影響を避け、同一の駆動周波数であればより大出力の獲得、高周波化で小型化を図る際には必要な出力電力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による圧電トランスを概念的に示す図である。
【図2】図1に示す圧電トランスの等価電気回路図である。
【図3】圧電トランス用素子単体での出力特性を示す図である。
【図4】図1に示す圧電トランスの出力特性を示す図である。
【図5】比較例として厚みを2倍にした圧電トランスの出力特性を示す図である。
【図6】出力電力、効率に対する共振周波数のばらつきの影響を示す図である。
【図7】(a)、(b)、および(c)はそれぞれ、本発明の実施の形態1、2、および3による圧電トランスの要部を示す斜視図である。
【図8】図7(c)に示す圧電トランスにて使用するシリコンゴムのサイズと効率との関係を示す図である。
【図9】図7(b)に示す圧電トランスの出力特性を示す図である
【図10】本発明の実施の形態4による圧電トランスを概念的に示す図である。
【図11】図10に示す圧電トランスの出力特性を示す図である
【図12】(a)〜(e)は、従来の各種圧電トランスを示す斜視図である。
【図13】周波数と圧電振動体の形状との関係(拡がり振動、長さ振動の各場合)を示す図である。
Claims (6)
- 板状の圧電振動体に、円板形の実効振動領域を持つように電極を板面に形成すると共に、端子としての対の入力部および対の出力部を側面に形成して構成され、径拡がり1次振動モード特性を有する圧電トランス用素子を複数有し、複数の前記圧電トランス用素子の各入力部同士および各出力部同士は、それぞれ並列接続されており、
前記複数の圧電トランス用素子は、絶縁材からなるホルダを介して厚さ方向に積層されていることを特徴とする圧電トランス。 - 前記複数の圧電トランス用素子は、前記実効振動領域の直径の1/2の直径の弾性材を介して積層されている請求項1に記載の圧電トランス。
- 最大出力が得られる駆動周波数以上の駆動周波数で駆動される請求項1または2に記載の圧電トランス。
- 板状の圧電振動体に、円板形の実効振動領域を持つように電極を板面に形成すると共に、端子としての対の入力部および対の出力部を側面に形成して構成され、径拡がり1次振動モード特性を有する圧電トランス用素子を複数用意し、複数の前記圧電トランス用素子の各入力部同士および各出力部同士を、それぞれ並列接続し、
前記複数の圧電トランス用素子を、絶縁材からなるホルダを介して厚さ方向に積層することを特徴とする圧電トランスの使用方法。 - 前記複数の圧電トランス用素子を、前記実効振動領域の直径の1/2の直径の弾性材を介して積層する請求項4に記載の圧電トランスの使用方法。
- 最大出力が得られる駆動周波数以上の駆動周波数で駆動する請求項4または5に記載の圧電トランスの使用方法。
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