JPH11286090A - 金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルム - Google Patents

金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルム

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JPH11286090A
JPH11286090A JP8869698A JP8869698A JPH11286090A JP H11286090 A JPH11286090 A JP H11286090A JP 8869698 A JP8869698 A JP 8869698A JP 8869698 A JP8869698 A JP 8869698A JP H11286090 A JPH11286090 A JP H11286090A
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JP
Japan
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film
layer
copolymerized polyester
polyester
copolymerized
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JP8869698A
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English (en)
Inventor
Koji Kubo
耕司 久保
Hirobumi Murooka
博文 室岡
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 深絞りなどの成形加工性、耐熱性、耐レトル
ト性に優れ、しかも耐衝撃性、保味保香性が改善された
金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルムを提供す
る。 【解決手段】 共重合ポリエチレンテレフタレートから
なる層(A)と、共重合ポリエステルからなる層(B)
とを積層してなるフィルムであって、層(A)を構成す
るポリマーのガラス転移温度(TgA)とフィルムの損
失弾性率最高温ピーク温度(Te)が下記式(1)およ
び下記式(2)を満足し、更に層(A)のポリマー融点
が層(B)のポリマー融点よりも高く、その差が2℃以
上であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用ポリ
エステルフィルム。 TgA≧78 … (1) Te−TgA≦30 … (2) (ここで、TgAはDSC測定における共重合ポリエス
テル層(A)を構成するポリエステルのガラス転移温度
(℃)、Teはフィルムの損失弾性率の最高温ピーク温
度(℃)である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属板貼合せ成形加
工用ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは金属板
と貼合せて絞り加工などの製缶加工をする際優れた成形
加工性を示し、かつ耐熱性、耐レトルト性、保味保香
性、耐衝撃性などに優れた金属缶、例えば飲料缶、食品
缶などを製造し得る金属板貼合せ成形加工用ポリエステ
ルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】金属缶には内外面の腐蝕防止として一般
に塗装が施されているが、最近、工程簡素化、衛生性向
上、公害防止などの目的で、有機溶剤を使用せずに防錆
性を得る方法の開発が進められ、その一つとして熱可塑
性フィルムによる被覆が試みられている。
【0003】すなわち、ブリキ、ティンフリースチー
ル、アルミニウム等の金属板に熱可塑性樹脂フィルムを
ラミネートした後、絞り加工等により製缶する方法の検
討が進められている。
【0004】この熱可塑性樹脂フィルムとしては、成形
加工性、耐熱性、耐衝撃性、保味保香性などの点で、共
重合ポリエステルフィルムが適していることが次第に明
らかになりつつある。しかしながら、このポリエステル
フィルムは緑茶類など極めて微妙な味わいが重要な飲
料、さらには無味無臭が要求されるミネラルウォーター
を内容物とした場合、必ずしも十分な保味保香性を示さ
ず、臭気や味に対する変化が感知される。
【0005】これに対し、特開平6−116376号で
は、特定量のアルカリ金属元素とゲルマニウム元素を含
有する共重合ポリエステルからなる、フレーバー性を向
上せしめた金属板成形加工用ポリエステルフィルムが提
案されている。しかし、このフィルムを用いた場合、コ
ールドパックシステムのような内容物をつめた段階で熱
のかからない工程では優れた保味保香性を示すが、レト
ルト処理のような内容物をつめた段階で熱処理が行われ
る工程においては、必ずしも十分な保味保香性が得られ
ない。
【0006】また、共重合ポリエステルからなる金属板
成形加工用ポリエステルフィルムは、一般に耐衝撃性、
特に15℃以下の低温での耐衝撃性が不十分であり、こ
のフィルムを貼合せた金属缶を低温下で落下させたりし
て衝撃を与えると、フィルムにひび割れが生じ易く、ジ
ュース、清涼飲料水用の金属缶のように冷却した状態で
取り扱われるものでは大きな問題となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、か
かる従来技術の問題点を解消し、共重合ポリエステルフ
ィルムが持っている優れた成形加工性、耐熱性、耐レト
ルト性を保持しながら、保味保香性、特にレトルト処理
後の保味保香性を改善し、さらには、耐衝撃性を向上せ
しめ、特に低温下で衝撃によりひび割れが生じ難い金属
板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルムを提供するこ
とを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、共重合ポリエステ
ルのなかでも、エチレンテレフタレートを主たる繰り返
し単位とし、ある特定の融点およびガラス転移温度を有
する共重合ポリエステルを用いてフィルム層とするとと
もに、特定の融点を有する共重合ポリエステルを設けた
2層構造とし、しかも両者の共重合ポリエステルの融点
を異ならしめ、さらにはフィルムの損失弾性率の最高温
ピーク温度を特定の範囲とすることにより、保味保香
性、特にレトルト処理後の保味保香性が顕著に改善さ
れ、しかも、耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性が向上
することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、エチレンテレフタレ
ートを主たる繰り返し単位とし、融点が210〜245
℃である共重合ポリエステルからなる共重合ポリエステ
ル層(A)と、融点が180〜243℃の共重合ポリエ
ステルからなる共重合ポリエステル層(B)とを積層し
てなるポリエステルフィルムであって、該共重合ポリエ
ステル層(A)を構成する共重合ポリエステルのガラス
転移温度(TgA)とポリエステルフィルムの損失弾性
率最高温ピーク温度(Te)が下記式(1)および下記
式(2)を満足し、更に該共重合ポリエステル層(A)
の融点が該共重合ポリエステル層(B)の融点よりも高
く、その差が2℃以上であることを特徴とする金属板貼
合せ成形加工用ポリエステルフィルムである。
【0010】
【数2】 TgA≧78 … (1) Te−TgA≦30 … (2) (ここで、TgAはDSC測定における共重合ポリエス
テル層(A)を構成するポリエステルのガラス転移温度
(℃)、Teはフィルムの損失弾性率の最高温ピーク温
度(℃)である。)
【0011】また、該共重合ポリエステル層(A)の共
重合成分は、2,6−ナフタレンジカルボン酸であるこ
とが好ましく、該共重合ポリエステル層(B)を構成す
る共重合ポリエステルは、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸共重合ポリエチレンテレフタレートであることが好
ましい。また、該ポリエステルフィルムをイオン交換水
で121℃、2時間抽出処理したときの抽出量が0.5
mg/inch2以下であることが好ましい。
【0012】本発明において、共重合ポリエステル層
(A)に用いられる共重合ポリエステルとしては、種々
の共重合ポリエステルのなかでも、保味保香性、特にレ
トルト処理後の保味保香性を改善することができること
から、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位と
し、融点が210〜245℃、好ましくは215〜24
0℃である共重合ポリエステルを使用する。
【0013】この共重合ポリエステルの共重合成分とし
ては、ジカルボン酸成分でもジオール成分でもよい。
【0014】このジカルボン酸成分としてはイソフタル
酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の如
き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セ
バシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボ
ン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカル
ボン酸等が例示でき、またジオール成分としては1,4
−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチ
レングリコール等の如き脂肪族ジオール、1,4−シク
ロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ビスフ
ェノールAの如き芳香族ジオールが例示できる。これら
は単独または二種以上を使用することができる。
【0015】共重合成分の割合は、その種類にもよる
が、結果としてポリマー融点が210〜245℃、好ま
しくは215〜240℃の範囲になる割合である。融点
が210℃未満では耐熱性が劣ることになる。一方、融
点が245℃を超えると、ポリマーの結晶性が大きすぎ
て成形加工性が損なわれる。
【0016】ここで、共重合ポリエステルの融点測定
は、Du Pont Instruments 910
DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求
める方法による。なおサンプル量は20mgとする。
【0017】また、本発明で共重合ポリエステル層
(A)に用いる共重合ポリエステルの固有粘度(オルト
クロロフェノール、35℃)は0.52〜1.50であ
ることが好ましく、さらに好ましくは0.57〜1.0
0、特に好ましくは0.60〜0.80である。この固
有粘度が0.52未満の場合には耐衝撃性が不足するこ
とがあり好ましくない。他方、固有粘度が1.50を超
える場合には、成形加工性が損なわれることがある。
【0018】また、本発明において、共重合ポリエステ
ル層(B)に用いられる共重合ポリエステルとしては、
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポ
リエステルが代表例として挙げられる。この共重合成分
は、ジカルボン酸成分でもジオール成分でもよい。該ジ
カルボン酸成分としてはイソフタル酸、フタル酸、2,
6−ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン
酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジ
カルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサ
ンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等が例示で
き、またジオール成分としては1,4−ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール
等の如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメ
タノールの如き脂環族ジオール、ビスフェノールAの如
き芳香族ジオールが例示できる。これらは単独または二
種以上を使用することができる。これらのなかでも、耐
衝撃性、保味保香性を向上させるためには、2,6−ナ
フタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。
【0019】共重合成分の割合は、ポリマー融点が18
0〜243℃、好ましくは200〜235℃の範囲にな
る割合である。ポリマーの融点が180℃未満では積層
フィルムの耐熱性が劣り好ましくなく、一方、ポリマー
の融点が243℃を超えると、ポリマーの結晶性が大き
すぎて成形加工性が損なわれる。
【0020】ここで、共重合ポリエステル層(B)に用
いる共重合ポリエステルの融点測定も、共重合ポリエス
テル層(A)に用いる共重合ポリエステルの融点測定と
同じ方法により行う。
【0021】また、この共重合ポリエステルの固有粘度
(オルトクロロフェノール、35℃)は0.52〜1.
00であることが好ましく、さらに好ましくは0.54
〜0.80、特に好ましくは0.56〜0.70であ
る。
【0022】さらに本発明においては、共重合ポリエス
テル層(A)を構成する共重合ポリエステルの融点が共
重合ポリエステル層(B)を構成する共重合ポリエステ
ルの融点より高く、その差が2℃以上であることが必要
であり、好ましくは3℃以上、更に好ましくは5℃以上
である。この要件を満足しない場合は、耐衝撃性、特に
低温下での耐衝撃性が向上しない。
【0023】本発明において、共重合ポリエステル層
(A)に用いられる共重合ポリエステルおよび共重合ポ
リエステル層(B)に用いられる共重合ポリエステル
は、その製法によって限定されることはない。例えば、
テレフタル酸、エチレングリコールおよび共重合成分を
エステル化反応させ、ついで得られた反応生成物を目的
とする重合度になるまで重縮合反応させて共重合ポリエ
ステルとする方法、あるいはテレフタル酸ジメチルエス
テル、エチレングリコールおよび共重合成分をエステル
交換反応させ、ついで得られた反応生成物を目的とする
重合度になるまで重縮合反応させて共重合ポリエステル
とする方法を好ましく挙げることができる。また、上記
の方法(溶融重合)により得られた共重合ポリエステル
は、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)に
より、さらに重合度の高いポリマーとすることができ
る。
【0024】ポリエステルの製造においては、必要に応
じて、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、可塑剤、色
相改良剤、滑剤、核剤、紫外線吸収剤などの添加剤を加
えることができる。
【0025】前記重縮合反応に使用する触媒としては、
アンチモン化合物(Sb化合物)、チタン化合物(Ti
化合物)、ゲルマニウム化合物(Ge化合物)などが好
ましく挙げられ、これらの中、チタン化合物、ゲルマニ
ウム化合物はフィルムの保味保香性の点でさらに好まし
い。チタン化合物としては、例えばチタンテトラブトキ
シド、酢酸チタンなどが好ましく挙げられる。また、ゲ
ルマニウム化合物としては、(イ)無定形酸化ゲルマニ
ウム、(ロ)微細な結晶性酸化ゲルマニウム、(ハ)酸
化ゲルマニウムをアルカリ金属またはアルカリ土類金属
もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解し
た溶液、(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解した溶液な
どが好ましく挙げられる。
【0026】本発明のポリエステルフィルムは、共重合
ポリエステル層(A)と共重合ポリエステル層(B)と
を積層した構造を有するものであり、かかる積層構造の
フィルムは、例えば、それぞれの層を構成する共重合ポ
リエステルを別々に溶融して共押し出しし、固化前に積
層融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法、それぞれ
の層を構成する共重合ポリエステルを別々に溶融、押し
出してフィルム化し、未延伸状態または延伸後、両者を
積層させる方法等により製造することができる。このと
き、ポリエステルフィルムの損失弾性率の最高温ピーク
温度(Te)と、共重合ポリエステル層(A)を構成す
る共重合ポリエステルのガラス転移温度(TgA)は下
記式(1)および下記式(2)を満足する必要がある。
【0027】
【数3】 TgA≧78 … (1) Te−TgA≦30 … (2) (ここで、TgAはDSC測定における共重合ポリエス
テル層(A)を構成するポリエステルのガラス転移温度
(℃)、Teはフィルムの損失弾性率の最高温ピーク温
度(℃)である。)
【0028】TgAが78℃未満であると、耐熱性が劣
るようになりレトルト後の保味保香性が悪化する。この
ため、共重合ポリエステル層(A)を構成する共重合ポ
リエステルの共重合成分としては、少なくとも1成分
に、共重合成分の割合を増加させたときにガラス転移温
度が変化しないか、もしくは上昇するような成分を用い
ることが好ましい。共重合成分の割合を増加させたとき
にガラス転移温度を上昇させるような成分としては、ジ
カルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸
が、ジオール成分としては1,4−シクロヘキサンジメ
タノールが好ましく例示できる。
【0029】ここで、共重合ポリエステルのTgは、D
u Pont Instruments 910 DS
Cを用い、昇温速度20℃/分でガラス転移点を求める
方法による。なお、サンプル量は20mgとする。
【0030】さらに、Te−TgAの値が30を超える
と、フィルムの分子配向性や結晶性が高くなりすぎるた
めに成形加工性が著しく低下する。Teの値は共重合ポ
リエステル層(A)および共重合ポリエステル層(B)
を構成するそれぞれの共重合ポリエステルの共重合成分
および共重合量にもよるが、製膜条件により、特に二軸
延伸の倍率、延伸温度、熱固定温度で調整する方法が好
ましく挙げられる。
【0031】ここで、Teは動的粘弾性測定装置を用い
て測定周波数10Hz、動的変位±25×10-4cmに
て求められる。
【0032】本発明のポリエステルフィルムにおいて
は、共重合ポリエステル層(A)の表面粗さ(Ra)を
15nm以下、特に4〜15nmとすることが、保味保
香性を向上させる上で好ましい。ここで表面粗さ(R
a)は、JIS−B0601に準じて求めた中心線平均
粗さである。
【0033】本発明のポリエステルフィルムは、好まし
くは厚みが6〜75μmである。更に10〜75μm、
特に15〜50μmであることが好ましい。厚みが6μ
m未満では加工時に破れなどが生じ易くなり、一方75
μmを超えるものは過剰品質であって不経済である。
【0034】共重合ポリエステル層(A)の厚みTA
共重合ポリエステル層(B)の厚みTBとの比(TA/T
B)は、0.02〜10が好ましく、更に好ましくは
0.04〜8、特に好ましくは0.1〜5である。具体
的には、例えば厚みが20μmのポリエステルフィルム
の場合、共重合ポリエステル層(A)の厚みを0.4μ
m〜18.1μm、好ましくは0.8〜17.7μm、
更に好ましくは1.9〜16.6μmとするのが好まし
い。
【0035】本発明のポリエステルフィルムは、特に食
品缶または飲料缶に用いられるものであるから、該フィ
ルムより溶出あるいは飛散する物質が少ないほど良い
が、それらの物質を全くなくすことは実質的に不可能で
ある。そこで、食品缶または飲料缶用途に使用するため
には、例えばイオン交換水で121℃、2時間抽出した
ときのフィルム1平方インチ当りの抽出量が0.5mg
以下であることが好ましく、0.1mg以下であること
が更に好ましい。
【0036】上記抽出量を少なくするには、フィルムの
ガラス転移温度を高くすればよい。フィルムのガラス転
移温度は該フィルムを構成するポリマーのガラス転移温
度と配向度によって決まるが、配向度を上げると成形加
工性が悪化するので、ポリマー(共重合PET)のガラ
ス転移温度を高くするのが好ましい。
【0037】本発明のポリエステルフィルムが貼合せら
れる金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティ
ンフリースチール、アルミニウム等の板が適切である。
金属板へのポリエステルフィルムの貼合せは、例えば下
記、の方法で行うことができる。 金属板をフィルムの融点以上に加熱しておいてフィ
ルムを貼合せた後冷却し、金属板に接するフィルムの表
層部(薄層部)を非晶化して密着させる。 フィルムに予め接着剤層をプライマーコートしてお
き、この面と金属板を貼合せる。接着剤層としては公知
の樹脂接着剤、例えばエポキシ系接着剤、エポキシ−エ
ステル系接着剤、アルキッド系接着剤等を用いることが
できる。
【0038】なお、本発明のポリエステルフィルムを金
属板へ貼り合せる際には、共重合ポリエステル層(B)
の側を金属板に貼り合せるようにする。さらに、本発明
のポリエステルフィルムにおいては、必要に応じて、共
重合ポリエステル層(A)と共重合ポリエステル層
(B)との間または片側に、他の追加の層を積層させて
もよい。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明する。
なお、実施例中の特性は下記の方法で測定した。 (1)ポリエステルの固有粘度 オルトクロロフェノール中、35℃で測定する。
【0040】(2)ポリエステルの融点 Du Pont Instruments 910 D
SCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める
方法による。なおサンプル量は20mgとする。
【0041】(3)ポリエステルのガラス転移温度(T
g) Du Pont Instruments 910 D
SCを用い、昇温速度20℃/分でガラス転移点を求め
る方法による。なおサンプル量は20mgとする。
【0042】(4)フィルムの損失弾性率の最高温ピー
ク温度(Te) 動的粘弾性測定装置を用いて測定周波数10Hz、動的
変位±25×10-4cmにて損失弾性率を求め、このと
きの最高温ピーク温度をもって示す。
【0043】(5)表面粗さ(Ra) (株)小坂研究所製、触針式表面粗さ計(SURFCO
RDER SE−30C)を用いて、触針半径2μm、
測定圧0.03g、カットオフ値0.25mmの条件下
で測定した。
【0044】(6)深絞り加工性 共重合ポリエステル層(A)を構成する共重合ポリエス
テルの融点以上に加熱した板圧0.25mmのティンフ
リースチールの両面に、共重合ポリエステル層(B)が
ティンフリースチール側となるようフィルムを貼合せ、
水冷した後150mm径の円板状に切り取り、絞りダイ
スとポンチを用いて4段階で深絞り加工し、55mm径
の側面無継目容器(以下、缶と略す)を作成した。この
缶について以下の観察および試験を行い、各々下記の基
準で評価した。
【0045】深絞り加工性−1 ○:フィルムに異常なく、加工されたフィルムに白化や
破断が認められない。 △:缶上部のフィルムに白化が認められる。 ×:フィルムの一部に破断が認められる。 深絞り加工性−2 ○:異常なく加工され、缶内フィルム面の防錆性試験
(1%NaCl水溶液を缶内に入れ、電極を挿入し、缶
体を陽極にして6Vの電圧をかけた時の電流値を測定す
る。以下、ERV試験と略す)において0.2mA以下
を示す。 ×:フィルムに異常はないが、ERV試験では電流値が
0.2mAを超えており、通電箇所を拡大観察するとフ
ィルムの粗大滑剤を起点としたピンホール状の割れが認
められる。
【0046】(7)耐衝撃性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、0℃に冷
却した後、各テストにつき10個ずつを高さ50cmか
ら塩ビタイル床面に落とした後、缶内のERV試験を行
った結果、 ○:全10個について0.2mA以下であった。 △:1〜5個について0.2mAを超えていた。 ×:6個以上について0.2mAを超えているか、ある
いは落下後既にフィルムのひび割れが認められた。
【0047】(8)耐熱脆化性 深絞りが良好であった缶を200℃×5分間加熱保持し
た後、前述の耐衝撃性評価を行った結果、 ○:全10個について0.2mA以下であった。 △:1〜5個について0.2mAを超えていた。 ×:6個以上について0.2mAを超えているか、ある
いは200℃×5分間加熱後既にフィルムのひび割れが
認められた。
【0048】(9)耐レトルト性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、蒸気滅菌
器で120℃、1時間レトルト処理を行い、しかる後、
50℃で30日間保存した。得られた缶を各テストにつ
き10個ずつ高さ50cmから塩ビタイル床面に落とし
た後、缶内のERV試験を行った。 ○:全10個について0.2mA以下であった。 △:1〜5個について0.2mAを超えていた。 ×:6個以上について0.2mAを超えているか、ある
いは落下後既にフィルムのひび割れが認められた。
【0049】(10)保味保香性−1 深絞り成形が良好な缶について、イオン交換水を充填
し、常温下(20℃)30日間保管する。その浸漬液を
用いて30人のパネラーにて試飲テストを行い、比較用
のイオン交換水と比較し、下記基準で評価した。 ◎:30人中3人以下が比較液と比べて味、香りの変化
を感じた。 〇:30人中4人〜6人が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。 △:30人中7人〜9人が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。 ×:30人中10人以上が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。
【0050】(11)保味保香性−2 深絞り成形が良好な缶について、イオン交換水を充填
し、蒸気滅菌器で120℃、1時間レトルト処理を行
い、しかる後、常温下(20℃)30日間保管する。そ
の浸漬液を用いて30人のパネラーにて試飲テストを行
い、比較用のイオン交換水と比較し、下記基準で評価し
た。 ◎:30人中3人以下が比較液と比べて味、香りの変化
を感じた。 〇:30人中4人〜6人が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。 △:30人中7人〜9人が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。 ×:30人中10人以上が比較液と比べて味、香りの変
化を感じた。
【0051】[実施例1〜8および比較例1〜5]表1
に示す共重合成分を共重合した共重合ポリエチレンテレ
フタレート(固有粘度0.64で、平均粒径0.3μ
m、粒径比1.1、真球状シリカを0.1重量%含有)
が共重合ポリエステル層(A)、同じく表1に示す共重
合成分を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート
(固有粘度0.64)がポリエステル層(B)となるよ
うに、それぞれ別々に、常法により乾燥し、互いに隣接
したダイから共押出して、積層、融着させ、急冷固化し
て未延伸積層フィルムを得た。次いで、この未延伸フィ
ルムを表1に示す温度および倍率で縦延伸した後、表1
に示す温度および倍率で横延伸し、更に170℃で熱固
定して二軸延伸フィルムを得た。
【0052】なお、比較例5では、比較のために、ポリ
エステル層(B)を設けず、共重合ポリエステル層
(A)のみからなる二軸延伸フィルム(厚み20μm)
を作成した。
【0053】得られたフィルムの厚みは20μmであ
り、共重合ポリエステル層(A)および共重合ポリエス
テル層(B)の厚みは、それぞれ4μmおよび16μ
m、共重合ポリエステル層(A)の表面粗さ(Ra)は
5nmであった。また、共重合ポリエステル層(A)を
構成する共重合ポリエステルのガラス転移温度(T
A)とポリエステルフィルムの損失弾性率の最高温ピ
ーク温度(Te)、およびイオン交換水抽出量を表2
に、評価結果を表3に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】表3の評価結果から明らかなように、共重
合ポリエステル層(A)の共重合ポリエステルの融点が
210〜245℃、共重合ポリエステル層(B)の共重
合ポリエステルの融点が180〜243℃であり、前者
が後者よりも高く、その差が2℃以上ある場合(実施例
1〜8)は良好な結果が得られたが、前者の融点が21
0℃未満の場合(比較例1)および後者の融点が180
℃未満の場合(比較例3)は耐熱性が劣り、レトルト後
の保味保香性が悪く、前者の融点が245℃を超える場
合(比較例2)および後者の融点が243℃を超える場
合(比較例4)は、成形加工性が不良であった。また、
共重合ポリエステル層(B)を設けず、共重合ポリエス
テル層(A)のみからなるフィルム(比較例5)は耐衝
撃性が劣っていた。
【0058】[実施例9〜10および比較例6〜7]実
施例2において、共重合ポリエステル層(A)の共重合
ポリエチレンテレフタレートの共重合成分を表4に示す
ように変更して、溶融共押出し、積層、融着、急冷固化
して得た未延伸積層フィルムを、それぞれ表4に示す条
件で延伸し、180℃で熱固定して、二軸延伸積層ポリ
エステルフィルムを得た。
【0059】得られた各フィルムの厚みは、それぞれ4
μmおよび16μmであった。また、共重合ポリエステ
ル層(A)を構成する共重合ポリエステルのガラス転移
温度(TgA)とポリエステルフィルムの損失弾性率の
最高温ピーク温度(Te)、およびイオン交換水抽出量
は表5に示す通りであった。
【0060】実施例2と同様にして、缶を作成して評価
した結果は、表6に示す通りであり、TgAが78℃以
上、Te−TgAが30℃以下の本発明の場合(実施例
9、10)は良好な結果が得られたが、TgAが78℃
未満の場合(比較例6)はレトルト後の保味保香性が悪
く、Te−TgAが30℃を超える場合(比較例7)
は、成形加工性が低下した。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】[実施例11〜13および比較例8]実施
例2において、共重合ポリエステル層(B)の共重合ポ
リエチレンテレフタレートの共重合成分を表7に示すよ
うに変更して、共重合ポリエステル層(A)と共重合ポ
リエステル層(B)の融点差が異なる二軸延伸積層フィ
ルムを得た。
【0065】得られたフィルムの厚みは実施例2と同じ
であり、共重合ポリエステル層(A)のガラス転移温度
(TgA)、損失弾性率の最高温ピーク温度(Te)お
よびフィルムのイオン交換水による抽出量も実施例2と
同じであった。
【0066】実施例2と同様にして缶を作成して評価し
た結果は、表8に示す通りであり、共重合ポリエステル
層(A)と共重合ポリエステル層(B)の融点差が2℃
以上である本発明の場合(実施例11〜13)は、良好
な耐衝撃性を示したが、融点差が2℃未満である場合
(比較例8)は、耐衝撃性が向上しなかった。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【発明の効果】本発明の金属板貼合せ成形加工用ポリエ
ステルフィルムは、金属板と貼合わせた後、製缶加工、
例えば深絞り加工して金属缶を成形するにあたり、共重
合ポリエステルが持っている優れた成形加工性、耐熱
性、耐レトルト性を保持しながら、保味保香性、特にレ
トルト後の保味保香性が改善され、しかも耐衝撃性、特
に低温下での耐衝撃性が改善されたものであり、金属容
器用のフィルムとして極めて有用である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンテレフタレートを主たる繰り返
    し単位とし、融点が210〜245℃である共重合ポリ
    エステルからなる共重合ポリエステル層(A)と、融点
    が180〜243℃の共重合ポリエステルからなる共重
    合ポリエステル層(B)とを積層してなるポリエステル
    フィルムであって、該共重合ポリエステル層(A)を構
    成する共重合ポリエステルのガラス転移温度(TgA
    とポリエステルフィルムの損失弾性率最高温ピーク温度
    (Te)が下記式(1)および下記式(2)を満足し、
    更に該共重合ポリエステル層(A)の融点が該共重合ポ
    リエステル層(B)の融点よりも高く、その差が2℃以
    上であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用ポリ
    エステルフィルム。 【数1】 TgA≧78 … (1) Te−TgA≦30 … (2) (ここで、TgAはDSC測定における共重合ポリエス
    テル層(A)を構成するポリエステルのガラス転移温度
    (℃)、Teはフィルムの損失弾性率の最高温ピーク温
    度(℃)である。)
  2. 【請求項2】 共重合ポリエステル層(A)を構成する
    共重合ポリエステルの共重合成分が2,6−ナフタレン
    ジカルボン酸である請求項1記載の金属板貼合せ成形加
    工用ポリエステルフィルム。
  3. 【請求項3】 共重合ポリエステル層(B)を構成する
    共重合ポリエステルが、2,6−ナフタレンジカルボン
    酸共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項1ま
    たは2記載の金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィ
    ルム。
  4. 【請求項4】 フィルムをイオン交換水で121℃、2
    時間抽出処理したときの抽出量が0.5mg/inch
    2以下である請求項1〜3のいずれかに記載の金属板貼
    合せ成形加工用ポリエステルフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008162221A (ja) * 2006-12-31 2008-07-17 Mitsubishi Plastics Ind Ltd 成型同時転写用ポリエステルフィルム

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JP2008162221A (ja) * 2006-12-31 2008-07-17 Mitsubishi Plastics Ind Ltd 成型同時転写用ポリエステルフィルム

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