JPH11280453A - ディーゼルエンジンの排気浄化装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの排気浄化装置

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JPH11280453A
JPH11280453A JP10084300A JP8430098A JPH11280453A JP H11280453 A JPH11280453 A JP H11280453A JP 10084300 A JP10084300 A JP 10084300A JP 8430098 A JP8430098 A JP 8430098A JP H11280453 A JPH11280453 A JP H11280453A
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Motohiro Niizawa
元啓 新沢
Yasuhisa Kitahara
靖久 北原
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温度に対する少なくとも2つの活性段階を有
する触媒に対して触媒浄化性能を最大限に発揮させる。 【解決手段】 各気筒に燃料を噴射供給する装置51を
備え、燃料の主噴射後の膨張行程または排気行程で燃料
供給装置51により後噴射を行い、この後噴射による未
燃HCを、排気通路52に設けたNOx触媒53への還
元剤として供給する。この場合に、NOx触媒53の温
度に対する少なくとも2つの活性段階を設定手段54が
予め設定しており、これら複数の活性段階のうちどの活
性段階に現在の活性段階が該当するのかを判定手段55
が判定し、この判定される現活性段階で触媒浄化効率が
最大となるように設定手段56が後噴射の量とタイミン
グを設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はディーゼルエンジ
ンの排気浄化装置、特に排気通路に設けたNOx触媒に
対して、排気中の未燃HCを還元剤として供給するよう
にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】NOx触媒として代表的なものは金属−
ゼオライト系触媒であるが、この金属−ゼオライト系触
媒は、一般的にNOxの還元性能温度範囲が狭く、かつ
イオン交換に用いるCu、Pd、Ptなどの金属によっ
てNOxの還元性能温度範囲が異なることから、NOx
還元性能温度範囲を広げるため、高温活性型と低温活性
型の2つの触媒を直列に配置して複合触媒とするものが
提案されている(特開平1−310742号公報、特開
平6−185342号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記2つの
触媒のうちそれぞれのNOx還元性能が温度に対して突
起的な特性(NOx還元効率がある狭い温度範囲でのみ
最大値を示し、それ以下の温度でもそれ以上の温度でも
NOx還元効率が低下する特性)を持つため、上記2つ
の触媒を直列に配置して構成した複合触媒のNOx還元
性能も、やはり2つの突起を持った特性になる。
【0004】NOx触媒はNOxの還元効率を高めるた
め還元剤としてのHCを必要とするが、一般的にディー
ゼルエンジンはNOxの排出量に対してHCの排出量が
比較的少ないので、コモンレール式の燃料噴射装置を用
いて、各気筒の膨張行程もしくは排気行程で小量の燃料
を後噴射し、この小量の燃料を未燃HCとしてNOx触
媒に導くようにするのが有効である(特開平6−117
225号公報参照)。
【0005】しかしながら、後噴射するタイミングが燃
料の主噴射のタイミングや主噴射された燃料の終了する
タイミングに近すぎたり、またはある程度間隔をとって
いても主噴射量が増加するなど、後噴射するときの気筒
内の温度が高いと、後噴射された燃料がほとんど燃焼し
てしまい、温度は上昇してもHC/NOx比を増加させ
ることができない。つまり、上記の低温活性型や高温活
性型の各触媒のNOx還元性能が最大になる温度条件
(NOx還元性能の最大活性段階)や、高温活性型触媒
のNOx還元性能が最大に達して下降する温度条件(N
Ox還元性能の下降段階)で、このような後噴射を実行
したのでは、却ってNOxの還元効率が低下してしま
う。
【0006】また、NOx還元性能がまだ最大に達して
おらず、温度上昇に伴いNOx還元性能が高くなってい
る温度条件(NOx還元性能の上昇段階)では、HC/
NOx比だけを増加させるようなタイミングで後噴射を
実行してもNOxの還元効率の増加は少ない。
【0007】そこで本発明は、触媒の温度に対する少な
くとも2つの活性段階(たとえばNOx還元性能の上昇
段階と最大活性段階)を予め設定しておき、これら複数
の活性段階のうちどの活性段階に現在の活性段階が該当
するのかを判定し、この判定される現活性段階で触媒浄
化効率が最大となるように後噴射の量とタイミングを制
御することにより、触媒浄化性能を最大限に発揮させる
ことを第1の目的とする。
【0008】本発明ではまた、NOx還元性能の上昇段
階の前段階に現在の活性段階が該当する場合に後噴射を
停止することにより、燃費を最小限に抑えてNOx還元
性能を効率よく発現させたり、NOx還元性能の下降段
階に現在の活性段階が該当する場合に後噴射を停止する
ことにより、NOx還元性能の低下と燃費の悪化を防止
したりすることを第2の目的とする。
【0009】本発明ではまた、複合触媒である場合にも
触媒浄化性能を最大限に発揮させることを第3の目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、図13に
示すように、各気筒に燃料を噴射供給する装置51を備
え、燃料の主噴射後の膨張行程または排気行程で前記燃
料供給装置51により後噴射を行い、この後噴射による
未燃HCを、排気通路52に設けたNOx触媒53への
還元剤として供給するようにしたディーゼルエンジンの
排気浄化装置において、前記NOx触媒53の温度に対
する少なくとも2つの活性段階(NOx還元性能の上昇
段階と最大活性段階)を予め設定する手段54と、これ
ら複数の活性段階のうちどの活性段階に現在の活性段階
が該当するのかを判定する手段55と、この判定される
現活性段階で触媒浄化効率が最大となるように前記後噴
射の量とタイミングを設定する手段56とを設けた。
【0011】第2の発明では、第1の発明において前記
NOx触媒53をゼオライト系触媒の組み合わせ、貴金
属系触媒の組み合わせまたはゼオライト系触媒と貴金属
系触媒の組み合わせから構成する。
【0012】第3の発明では、第1または第2の発明に
おいて前記判定される現活性段階がNOx還元性能の上
昇段階である場合に、主噴射からの遅角間隔を小さくす
る側に後噴射のタイミングを設定する。
【0013】第4の発明では、第1または第2の発明に
おいて前記判定される現活性段階がNOx還元性能の最
大活性段階である場合に、主噴射からの遅角間隔を大き
くする側に後噴射のタイミングを設定する。
【0014】第5の発明では、第3の発明において後噴
射量または後噴射量比率を大きく設定する。
【0015】第6の発明では、第4の発明において後噴
射量または後噴射量比率を小さく設定する。
【0016】第7の発明では、第3から第6までのいず
れか一つの発明において前記後噴射のタイミングを、エ
ンジンの負荷または回転数が増大するほど主噴射からの
遅角間隔を大きくする側に補正する。
【0017】第8の発明では、第1から第7までのいず
れか一つの発明において現活性段階がNOx還元性能の
上昇段階の前段階である場合に、後噴射を停止する。
【0018】第9の発明では、第1から第8までのいず
れか一つの発明において現活性段階がNOx還元性能の
下降段階である場合に、後噴射を停止する。
【0019】第10の発明では、第1から第9までのい
ずれか一つの発明において前記複数の活性段階に対応し
てエンジンの負荷と回転数により定まる基準領域を設定
し、現在のエンジンの負荷と回転数からどの基準領域に
あるのかをみて現活性段階を判定する。
【0020】第11の発明では、第10の発明において
前記複数の活性段階を前記触媒の温度により定まる実領
域でも設定し、前記触媒の現在の温度からどの実領域に
あるかのをみて現活性段階を判定し、この判定結果と前
記基準領域に基づく判定結果が異なるときは、前記基準
領域に基づく判定結果の隣の活性段階にあると判定す
る。
【0021】第12の発明は、図14に示すように、各
気筒に燃料を噴射供給する装置51を備え、燃料の主噴
射後の膨張行程または排気行程で前記燃料供給装置51
により後噴射を行い、この後噴射による未燃HCを、排
気通路52に設けたNOx触媒53への還元剤として供
給するようにしたディーゼルエンジンの排気浄化装置に
おいて、前記NOx触媒53を、リーン雰囲気でのNO
x活性温度範囲が異なる複数の触媒53a,53bを直
列配置した複合触媒で構成する一方、触媒温度に対する
少なくとも2つの活性段階(NOx還元性能の上昇段階
と最大活性段階)を前記複数の各触媒毎に予め設定する
手段61と、これら複数の活性段階のうちどの活性段階
に現在の活性段階が該当するのかを前記複数の各触媒毎
に判定する手段62と、前記複数の各触媒毎にこの判定
される現活性段階で触媒浄化効率が最大となるように前
記後噴射の量とタイミングを設定する手段63とを設け
た。
【0022】第13の発明では、第12の発明において
前記複合触媒を、上流側より高温活性型触媒、低温活性
型触媒の順に配置して構成する。
【0023】第14の発明では、第12または第13の
発明において現活性段階が前記低温活性型触媒のNOx
還元性能の上昇段階の前段階である場合に、後噴射を停
止する。
【0024】第15の発明では、第12から第14まで
のいずれか一つの発明において現活性段階が前記高温活
性型触媒のNOx還元性能の下降段階である場合に、後
噴射を停止する。
【0025】
【発明の効果】NOx還元性能が温度に対して突起的な
特性を持つときは、NOx触媒の活性段階が温度に対し
て少なくとも2つに分かれることから、各活性段階によ
り後噴射に対する要求が大きく異なる。この場合に、第
1、第2の各発明では、触媒の特性の異なる活性段階を
判定しながら、各活性段階で触媒浄化効率が最大となる
ように後噴射の量とタイミングを制御するので、NOx
還元性能が温度に対して突起的な特性を有する触媒にお
ける浄化性能を最大限に発揮させることができる。
【0026】第3の発明によれば、主噴射からの遅角間
隔を小さくする側に後噴射のタイミングを設定すること
は、NOx還元性能の上昇段階での温度上昇とHC/N
Ox比の増加の両方を狙うものであり、これによりNO
x還元性能の上昇段階での触媒浄化性能を最大限に発揮
させることができる。
【0027】第4の発明によれば、主噴射からの遅角間
隔を大きくする側に後噴射のタイミングを設定すること
は、NOx還元性能の最大活性段階でHC/NOx比の
増加だけを主に狙うものであり、これによりNOx還元
性能の最大活性段階での触媒浄化性能を最大限に発揮さ
せることができる。
【0028】主噴射からの遅角間隔が大きいと、後噴射
された燃料が未燃HCとなって排出される割合が多くな
るので、このときには後噴射量(後噴射量比率)が少な
くてもHC/NOx比の増加効果が高く、これに対して
主噴射からの遅角間隔が小さいときには、後噴射された
燃料の燃焼する割合が多くなるため、温度は上昇するが
未燃HCとなって排出される割合が少なくなる(HC/
NOx比の増加が少ない)ことに対応し、主噴射からの
遅角間隔を小さくして温度上昇とHC/NOx比の増加
の両方を狙うときには、第5の発明により後噴射量(後
噴射量比率)を大きく設定することで、要求のHC/N
Ox比が得られ、これに対して主噴射からの遅角間隔を
大きくしてHC/NOx比の増加だけを主に狙うときに
は、第6の発明により後噴射量(後噴射量比率)を小さ
く設定することで、無駄な燃料消費を抑えることができ
る。
【0029】エンジンの負荷や回転数が高くなると燃焼
室内の温度が相対的に高くなり、後噴射された燃料の燃
焼する割合が多くなるため、後噴射のタイミングを固定
値として低負荷時や低回転時に設定していると、高負荷
時や高回転時に供給HC量が不足して要求のHC/NO
x比が得られなくなるのであるが、第7の発明によれ
ば、エンジンの負荷または回転数が変化しても要求のH
C/NOx比を得ることができる。
【0030】第8、14の各発明によれば、燃費を最小
限に抑えてNOx還元性能を効率よく発現させることが
できる。
【0031】NOx還元性能の下降段階や高温活性型触
媒のNOx還元性能の下降段階で後噴射しても、ほとん
どの燃料が燃焼し、これによって温度が上昇するだけで
HC/NOx比が増加することがないので、第9、第1
5の各発明によれば、この段階で後噴射を行うことによ
るNOx還元性能の低下と燃費悪化を防止できる。
【0032】第10の発明によれば、新たなセンサを設
けることなく、定常時において複数の活性段階のうちど
の活性段階に現在の活性段階が該当するのかを精度良く
判定できる。
【0033】実領域に基づく判定結果と基準領域に基づ
く判定結果が異なるときとは過渡時であり、この場合に
第11の発明では基準領域に基づく判定結果の隣の活性
段階にあると判定することで、過渡運転状態においても
活性段階の判定を誤らないようにして、NOxの浄化効
率の低下と無駄な後噴射とを回避できる。
【0034】第12の発明によれば、NOx還元性能が
温度に対して突起的な特性を有する触媒を複数配置した
複合触媒の場合にも、複数の各触媒の浄化性能を最大限
に発揮させることができる。
【0035】第13の各発明ではHC吸着効果が高く、
かつ酸化活性が低い高温活性型触媒を上流側に配置する
ことで、低排気温度(約200℃以下)で吸着したHCを
NOx還元剤として利用できるため、燃料の節約効果が
向上する。また低温活性型触媒のNOx還元性能が発現
するときに未燃HCが高温活性型触媒で酸化されて消費
されてしまうことがないため、低温活性型触媒のNOx
還元性能が損なわれることがない。
【0036】
【発明の実施の形態】図1において、1はディーゼルエ
ンジンの本体で、排気通路2にNOx触媒3を備える。
NOx触媒3のケーシング内には、上流側より高温活性
型触媒3aと低温活性型触媒3bとがこの順に直列配置
されている。
【0037】ここで、高温活性型触媒3aはCu−ゼオ
ライト系触媒(またはPd−ゼオライト系触媒)から、
低温活性型触媒3bはPt−ゼオライト系触媒から構成
される。このような金属−ゼオライト系触媒は、イオン
交換に用いる金属によってNOxの還元性能温度範囲が
異なることから、高温活性型であるCu−ゼオライト系
触媒(または中高温活性型であるPd−ゼオライト系)
と低温活性型であるPt−ゼオライト系とを、NOx還
元性能温度範囲を広げるため組み合わせたもの(複合触
媒)である。各触媒3a、3bのNOx還元性能が温度
に対して突起的な特性を持つため、複合触媒のNOx還
元性能も、図3右側に示したようにやはり2つの突起を
持った特性になる。なお、ゼオライトとしてはZSM−
5、β、USY、モルデナイト型が知られており、これ
らを用いることが望ましい。金属−ゼオライト系触媒に
限らず、金属(Pd、Ag、Pt等)を担持した活性ア
ルミナも利用でき、たとえば高温活性型触媒にはPdま
たはAgを担持した活性アルミナを、低温活性型触媒に
はPtを担持した活性アルミナを利用してもよい。
【0038】さて、NOx触媒3はNOxの還元効率を
高めるため還元剤としてのHCを必要とするが(HC/
NOx比を最低でも2以上とする必要がある)、一般的
にディーゼルエンジンはNOxの排出量に対してHCの
排出量が比較的少ないので、コモンレール式の燃料噴射
装置を用いて、各気筒の膨張行程もしくは排気行程で小
量の燃料を後噴射し、この小量の燃料を未燃HCとして
NOx触媒3に導くようにすることが有効である。
【0039】しかしながら、後噴射のタイミングが燃料
の主噴射のタイミングや主噴射された燃料の終了するタ
イミングに近すぎたり、またはある程度間隔をとってい
ても主噴射量が増加するなど、後噴射するときの気筒内
温度が高いと、後噴射された燃料がほとんど燃焼してし
まい、排気温度(触媒温度)は上昇してもHC/NOx
比を増加させることができない。つまり、各触媒3a,
3bの最大活性段階や高温活性型触媒3aのNOx還元
性能の下降段階でこのような後噴射を実行したのでは、
却ってNOxの還元効率が低下してしまう。
【0040】また、各触媒3a,3bのNOx還元性能
の上昇段階では、HC/NOx比だけを増加させるよう
なタイミングで後噴射を実行してもNOxの還元効率の
増加は少ない。
【0041】これに対処するため本発明の実施形態で
は、各触媒3a,3b毎にNOx還元性能の上昇段階、
最大活性段階、NOx還元性能の下降段階といった3つ
の活性段階があり、複合触媒はこれらの組み合わせであ
ることから、合計で6つの活性段階を予め設定してお
き、現活性段階がこれらのうちいずれの活性段階にある
のかを判定し、複合触媒が所定の活性温度以下になる活
性段階または所定の活性温度以上になる活性段階を判定
したときは後噴射を停止するとともに、それ以外の活性
段階であることを判定したとき、その判定された各活性
段階毎に触媒浄化効率が最大となるように後噴射の量と
タイミングを制御する。
【0042】これをさらに説明すると、図3右側に示し
た複合触媒のNOx還元性能に対して、5つの基準温度
a,b,c,d,e(ただしa<b<c<d<e)を定
め、次の6つの基準領域I〜VIに区分けする(図3左側
参照)。なお、図3右側では触媒3aを触媒Aで、触媒
3bを触媒Bで略記している。
【0043】領域 I:低温活性型触媒3bのNOx還元
性能が発現する温度範囲(NOx還元性能の上昇段階の
前段階)(約200℃まで)。
【0044】領域 II:低温活性型触媒3bのNOx還元
性能が上昇する温度範囲(NOx還元性能の上昇段階)
(約200〜230℃まで) 領域III:低温活性型触媒3bのNOx還元性能のピーク
温度範囲(最大活性段階)(約230〜280℃) 領域 IV:低温活性型触媒3bのNOx還元性能が下降
し、代わって高温活性型触媒3aのNOx還元性能が上
昇する温度範囲(NOx還元性能の上昇段階)(約280
〜370℃まで) 領域 V:高温活性型触媒3aのNOx還元性能のピーク
温度範囲(最大活性段階)(約370〜450℃) 領域 VI:高温活性型触媒3aのNOx還元性能が下降す
る温度範囲(NOx還元性能の下降段階)(約450℃以
上) そして、上記の各領域に対し次のように後噴射を停止し
たり実行したりする。
【0045】(1)領域Iに対して後噴射を停止する。
これは次の理由からである。領域IではもともとHC/
NOx比が高く、後噴射しなくてもNOx還元性能が発
現する。また、領域Iのようにエンジンの負荷、回転数
が低い場合に後噴射を行っても、主噴射量に対する後噴
射量の比率を大きくしなければ温度上昇効果が少ない。
そこで、領域Iでは燃費を最小限に抑えてNOx還元性
能を効率よく発現させるという観点から後噴射を停止す
る。
【0046】(2)領域II〜Vに対しては次の通り後噴
射を行う。領域IIでは低温活性型触媒3bの温度上昇と
HC/NOx比の増加の両方を狙って、また領域IVでは
高温活性型触媒3aの温度上昇とHC/NOxの増加の
両方を狙って後噴射の開始時期を主噴射に近づけるとと
もに後噴射量を大きくする。これに対して、領域IIIとV
ではHC/NOx比の増加だけを主に狙って、後噴射の
開始時期を主噴射から離すとともに後噴射量を小さくす
る。
【0047】ここで、領域II、IVと領域III、Vとで後噴
射時期の設定を変えた理由を説明する。後噴射するタイ
ミングは圧縮上死点からのクランク角度間隔が大きいほ
ど主噴射された燃料の燃焼の影響を受けにくく、したが
って後噴射された燃料が未燃HCとなって排出される割
合が多くなる。この逆に、後噴射するタイミングが圧縮
上死点からのクランク角度間隔が小さくなるほど主噴射
された燃料の燃焼の影響を受けやすく、したがって後噴
射された燃料のうち燃焼する割合が多くなるため、排気
温度は上昇するが未燃HCとなって排出される割合が少
なくなる(HC/NOx比の増加が少ない)。
【0048】そこで、低温活性型触媒3bのNOx還元
性能が上昇する活性段階である領域IIでは低温活性型触
媒3bの温度上昇とHC/NOxの増加の両方を狙っ
て、また高温活性型触媒3aのNOx還元性能が上昇す
る活性段階である領域IVについても高温活性型触媒3a
の温度上昇とHC/NOxの増加の両方を狙って主噴射
からの遅角間隔を小さく設定し、これに対して低温活性
型触媒3bのNOx還元性能のピークがくる活性段階で
ある領域IIIと高温活性型触媒3aのNOx還元性能の
ピークがくる活性段階である領域VではHC/NOx比
の増加だけを主に狙って主噴射からの遅角間隔を大きく
設定するのである。このため実施形態では主噴射からの
遅角間隔を大きくしたマップと小さくしたマップの2つ
を用意している。
【0049】また、後噴射時期を定めるこれら2つのマ
ップでは、エンジンの負荷、回転数が増大するほど、主
噴射からの遅角間隔を増大するように設定している(図
5、図6参照)。これは、負荷や回転数が高くなると燃
焼室内の温度が相対的に増加するため、後噴射のタイミ
ングを遅らせる必要があるからである。
【0050】この結果、後噴射の開始時期は、図5、図
6において矢印で示したように、領域毎に大きく切換わ
り、同じ領域内では負荷Loadや回転数が増大するほど
遅角していくことになる。なお、図5は図4においてX
軸に沿う特性、図6は図4においてY軸に沿う特性であ
る。
【0051】次に、領域II、IVと領域III、Vとで後噴射
量の設定を変えた理由を説明する。上述したように主噴
射からの遅角間隔が大きいと、後噴射された燃料が未燃
HCとなって排出される割合が多くなるので、このとき
には後噴射量が少なくてもHC/NOx比の増加効果が
高い。これに対して主噴射からの遅角間隔が小さいとき
には、後噴射された燃料の燃焼する割合が多くなるた
め、温度は上昇するが未燃HCとなって排出される割合
が少なくなる(HC/NOx比の増加が少ない)。
【0052】そこで、主噴射からの遅角間隔を小さくし
て温度上昇とHC/NOx比の増加の両方を狙うときに
は、後噴射量を大きく設定し、これに対して主噴射から
の遅角間隔を大きくしてHC/NOx比の増加だけを主
に狙うときには、後噴射量を小さく設定するのである。
このため実施形態では、図7に示したように、後噴射量
比率K aftを領域毎に切換えるテーブルを用意してい
る。なお、主噴射量Q mainにこの後噴射量比率K aftを
乗じることで、後噴射量Q aftを求めることができる。
【0053】(3)領域VIに対しては後噴射を停止す
る。これは次の理由からである。領域VIでの負荷と回転
数では燃焼室内の温度が高く、後噴射時期を遅角して排
気行程の最後の方で後噴射を実行してもほとんどの燃料
が燃焼し、これによって温度が上昇するだけでHC/N
Ox比が増加することがない。つまり、この温度上昇に
よりNOx還元性能が却って下降することになるので、
燃費悪化を防止するためにも後噴射を停止するのであ
る。
【0054】さて、排気温度(触媒温度)はエンジンの
状態(負荷、回転数)から定まるので、上記の領域判定
には、エンジントルクと回転数をパラメータとする図4
に示したマップを用いることができる。つまり、領域を
区分けする境界値を、エンジンの暖機後の定常条件でマ
ッチングしておけばよいわけである。
【0055】しかしながら、触媒の実際の活性段階は、
過渡運転状態になると、定常状態と異なり刻々と変化す
るので、エンジンの負荷と回転数だけで領域判定を行っ
たのでは、領域判定を誤り、NOxの浄化効率が向上し
ないばかりか却って悪化する事態が生じることがある。
このときには無駄な後噴射を行うことになり、燃費ばか
りが悪化する。
【0056】そこで、触媒の温度を検出するセンサを設
けておき、エンジンの負荷と回転数だけでなく、触媒温
度に基づいても領域判定を行う。
【0057】これで後噴射の制御についての概説を終了
する。
【0058】次に、後噴射に用いるコモンレール式の燃
料噴射装置を図2により概説すると(詳細は特開昭9−
112251号公報参照)、この燃料噴射装置10は、
主に燃料タンク11、燃料供給通路12、サプライポン
プ14、コモンレール(蓄圧室)16、気筒毎に設けら
れる燃料噴射弁17からなり、サプライポンプ14によ
り加圧された燃料は燃料供給通路15を介してコモンレ
ール16にいったん蓄えられたあと、コモンレール16
の高圧燃料が気筒数分の燃料噴射弁17に分配される。
【0059】燃料噴射弁17は、針弁18、ノズル室1
9、ノズル室19への燃料供給通路20、リテーナ2
1、油圧ピストン22、針弁18を閉弁方向(図で下
方)に付勢するリターンスプリング23、油圧ピストン
22への燃料供給通路24、この通路24に介装される
三方弁(電磁弁)25などからなり、バルブボディ内の
通路20と24が連通して油圧ピストン22上部とノズ
ル室19にともに高圧燃料が導かれる三方弁25のOF
F時(ポートAとBが連通、ポートBとCが遮断)に
は、油圧ピストン22の受圧面積が針弁18の受圧面積
より大きいことから、針弁18が着座状態にあるが、三
方弁25がON状態(ポートAとBが遮断、ポートBと
Cが連通)になると、油圧ピストン22上部の燃料が戻
し通路28を介して燃料タンク11に戻され、油圧ピス
トン22に作用する燃料圧力が低下する。これによって
針弁18が上昇して噴射弁先端の噴孔より燃料が噴射さ
れる。三方弁25をふたたびOFF状態に戻せば、油圧
ピストン22に蓄圧室16の高圧燃料が導びかれて燃料
噴射が終了する。つまり、三方弁25のON時間により
燃料噴射量が調整され、蓄圧室16の圧力が同じであれ
ば、ON時間が長くなるほど燃料噴射量が多くなる。2
6は逆止弁、27はオリフィスである。
【0060】この燃料噴射装置10にはさらに、コモン
レール圧力を制御するため、サプライポンプ14から吐
出された燃料を戻す通路13に圧力制御弁31を備え
る。この圧力制御弁31はコントロールユニット41か
らのデューティ信号に応じて通路13の流路面積を変え
るためのもので、コモンレール16への燃料吐出量を調
整することによりコモンレール圧力を制御する。コモン
レール16の燃料圧力によっても燃料噴射量は変化し、
三方弁25のON時間が同じであれば、コモンレール1
6の燃料圧力が高くなるほど燃料噴射量が多くなる。
【0061】コモンレール圧力PCR1を検出するセン
サ32、NOx触媒3の温度T1を検出するセンサ37
からの信号が、アクセル開度センサ33(アクセルペダ
ルの踏み込み量に比例した出力Lを発生)33、クラン
ク角センサ34(エンジン回転数とクランク角度を検
出)、クランク角センサ35(気筒判別を行う)、水温
センサ36とともに入力される電子制御ユニット41で
は、エンジン回転数とアクセル開度に応じて主噴射の目
標燃料噴射量とコモンレール16の目標圧力を演算し、
圧力センサ32により検出されるコモンレール圧力がこ
の目標圧力と一致するように圧力制御弁31を介してコ
モンレール16の燃料圧力をフィードバック制御する。
また、演算した主噴射の目標燃料噴射量に対応して三方
弁25のON時間を制御するほか、主噴射とは別に各気
筒の膨張行程もしくは排気行程で前述した後噴射を行っ
て未燃HCをNOx触媒3に供給する。
【0062】電子制御ユニット41で行われるこの制御
を図8〜図10、図12のフローチャートに基づいて説
明すると、図8は燃料噴射制御のメインルーチン、図
9、図10、図12はメインルーチンの一部の詳細を示
すサブルーチンである。
【0063】まずメインルーチンを示す図8において、
ステップ100ではコモンレール圧力PCR1、エンジン回転
数Ne、気筒判別信号Cyl、エンジン負荷LおよびNO
x触媒3の温度T1を読み込み、ステップ200、300、40
0においてコモンレール圧力制御、エンジンの出力制御
のための主噴射制御、NOx触媒3に対して還元剤とし
てのHCを供給するための後噴射制御をそれぞれ実行す
る。
【0064】図9のサブルーチンはコモンレール圧力制
御を行うためのものである。
【0065】ステップ201、202では、エンジン回転数N
eとエンジン負荷Lから所定のマップを検索してコモン
レール16の目標基準圧力PCR0とこのコモンレール基準
圧力PCR0を得るための圧力制御弁31用基準デューティ
比Duty0とを求める。これらのマップはエンジン回転数
Neとエンジン負荷Lをパラメータとして電子制御ユニ
ット41のROMに予め記憶しているものである。後述
するマップやテーブルについてもすべて電子制御ユニッ
ト41のROMに予め記憶しているものであり、この点
についての説明は省略する。
【0066】ステップ203では、目標基準圧力PCR0と実
際のコモンレール圧力PCR1との差の絶対値を求め、これ
を目標基準圧力PCR0に対して予め設定された許容圧力差
ΔPCR0と比較する。|PCR0−PCR1|が許容範囲内であれ
ばステップ206に進んで基準デューティ比Duty0を開弁デ
ューティ比Dutyとすることによって同じデューティ比を
維持し、ステップ207においてこのデューティ比Dutyか
らデューティ信号を作って圧力制御弁31を駆動する。
【0067】一方、|PCR0−PCR1|が許容範囲内にない
場合は、ステップ203よりステップ204に進み、PCR0−PC
R1(=ΔP)に対応して予め設定されているROMのテ
ーブルを検索してデューティ比の補正係数K Dutyを求め
る。たとえば、ΔPがマイナス(PCR0よりもPCR1が大き
い)の場合はK Dutyが1よりも小さい値に、この逆にΔ
Pがプラスの(PCR0よりもPCR1が小さい)場合はK Duty
が1よりも大きい値になる。具体的には圧力制御弁31
の特性に合わせてデューティ比補正係数K Dutyのテーブ
ルデータを設定する。
【0068】ステップ205では基準デューティ比Duty0を
この補正係数K Dutyにより補正した値を開弁デューティ
比Dutyとした後、ステップ207の操作を実行する。
【0069】図10のサブルーチンは主噴射制御を行う
ためのものである。
【0070】ステップ301ではエンジン回転数Neとエ
ンジン負荷Lから所定のマップを検索して主噴射量Q ma
inを求め、この主噴射量Q mainとコモンレール圧力PCR1
とからステップ302において所定のマップを検索して主
噴射期間M periodを求める。
【0071】ここで、主噴射期間M periodはmsecの単位
で設定され、図11に示したように主噴射量Q mainが同
じならコモンレール圧力PCR1が高いほど主噴射期間M pe
riodが短くなり、コモンレール圧力PCR1が同じなら主噴
射量Q mainが多いほど主噴射期間M periodが長くなる。
【0072】ステップ303ではエンジン回転数Neとエ
ンジン負荷Lから所定のマップを検索して主噴射開始時
期M startを求める。ステップ304では主噴射量Q mainが
供給されるように噴射開始時期M startよりM periodの
期間、主噴射すべき気筒の燃料噴射弁17を、2つのク
ランク角センサ34、35の信号に基づいて開弁駆動す
る。
【0073】図12のサブルーチンは後噴射制御を実行
するためのものである。
【0074】まずステップ401では、そのときのエンジ
ントルク(あるいはエンジン負荷L)とエンジン回転数
から定まる運転点が図4に示したいずれの基準領域I〜V
Iにあるかを判定する。この判定の結果、領域を表すI〜
VIのローマ数字がRAMに記憶される。この領域判定結
果により定まる領域を基準領域とする。なお、図4にお
いて領域の境界を定める値は、エンジンの暖機完了後に
定常状態でエンジンを安定して運転させたときにマッチ
ングにより求めたものである。
【0075】ステップ402では、RAMに記憶されてい
る基準領域(を示すローマ数字)とIを比較する。基準
領域がIであるときは、ステップ418進み、後噴射を停止
する。この後噴射の停止によって、領域Iでは燃費を最
小限に抑えてNOx還元性能を効率よく発現させること
ができる。
【0076】基準領域がIでないときはステップ403に進
み、触媒温度T1と図3に示した基準温度a,b,c,
d,eとの比較からいずれの領域I〜VIにあるかを判定
する。この判定結果、領域を表すI〜VIのローマ数字が
RAMに記憶される。この領域判定結果により定まる領
域を、上記の基準領域と区別するため実領域とする。
【0077】ステップ404〜411は図4に示したIIからVI
までの各領域を判定する部分で、次のように判定して、
ステップ412以降、ステップ414以降、ステップ418のい
ずれかに進む。つまり、 〈1〉基準領域=IIかつ実領域≦IIのときはステップ40
4,405よりステップ414以降に進む。
【0078】〈2〉基準領域=IIかつ実領域>IIのとき
はステップ404,405よりステップ412以降に進む。
【0079】〈3〉基準領域=IIIかつ実領域=IIIのと
きはステップ406,407よりステップ412以降に進む。
【0080】〈4〉基準領域=IIIかつ実領域≠IIIのと
きはステップ406,407よりステップ414以降に進む。
【0081】〈5〉基準領域=IVかつ実領域=IVのとき
はステップ408,409よりステップ414以降に進む。
【0082】〈6〉基準領域=IVかつ実領域≠IVのとき
はステップ408,409よりステップ412以降に進む。
【0083】〈7〉基準領域=Vかつ実領域≧Vのときは
ステップ410,411よりステップ412以降に進む。
【0084】〈8〉基準領域=Vかつ実領域<Vのときは
ステップ410,411よりステップ414以降に進む。
【0085】〈9〉基準領域≠Vのときはステップ410よ
りステップ418に進む。
【0086】ここで、上記の〈1〉、〈3〉、〈5〉、
〈7〉は基準領域と実領域が一致する場合(定常時)で
あり、〈1〉、〈5〉の場合は、ステップ414に進み、
負荷と回転数から、主噴射からの遅角間隔を小さくした
後噴射開始時期マップ(図示しない)を検索して後噴射
開始時期A startを求める。この後噴射開始時期A start
は、図5、図6において領域II、IVに示したように、膨
張行程に位置している。
【0087】ステップ415では、負荷から後噴射量比率
テーブルを検索して後噴射量比率K aftを求め、これを
図10で求めた主噴射量Q mainに乗じることで後噴射量
Q aft(=K aft×Q main)を算出する。後噴射量比率テ
ーブルでは、図7において領域II、IVに示したように、
領域III、Vの場合よりK aftの値が大きくなっている。
【0088】同様にして、〈3〉、〈7〉の場合は、ス
テップ412に進み、負荷と回転数から、主噴射からの遅
角間隔を大きくした後噴射開始時期マップ(図示しな
い)を検索して後噴射開始時期A startを求める。この
後噴射開始時期A startは、図5、図6において領域II
I、Vに示すように今度は排気行程に位置している。
【0089】ステップ413では、負荷から図7に示す後
噴射量比率をテーブルを検索して後噴射量比率K aftを
小さな値で求め(図7において領域III、V参照)、これ
を図10で求めた主噴射量Q mainに乗じて後噴射量Q af
tを算出する。
【0090】このようにして算出した後噴射量Q aftと
コモンレール圧力PCR1からステップ416で所定のマップ
(図11参照)を検索して後噴射期間A periodを求め、
ステップ417では図10のステップ303,304と同様にして
後噴射を実行する(後噴射量Qaftが供給されるように、
後噴射開始時期A startより後噴射期間A periodのあい
だ、後噴射すべき気筒の燃料噴射弁を、2つのクランク
角センサ34、35の信号に基づいて開弁駆動する)。
【0091】これに対して上記の〈2〉、〈4〉、
〈6〉、〈8〉は基準領域と実領域が一致しない場合
(過渡時)で、このときは基準領域の隣の領域に対する
後噴射の制御を行う。つまり、〈2〉のときは領域IIの
隣の領域であるIIIの領域と、〈4〉のときは領域IIIの
隣の領域であるIIまたはIVの領域と、〈6〉のときは領
域IVの隣の領域であるIIIまたはVの領域と、〈8〉のと
きは領域Vの隣の領域であるIVの領域と同じ後噴射の制
御とするわけである。
【0092】さらに述べると、たとえばアクセルペダル
を急激に踏み込んだとき、エンジントルクと回転数は応
答良く上昇するのに対して、触媒温度T1のほうは遅れ
て立ち上がるため、エンジントルクと回転数から判定し
た基準領域はVであるのに、実領域は隣の領域IVにある
ことがある。この場合には、マップから判定される基準
領域に対する後噴射の制御を選択するのではなく、触媒
温度から推定される実領域に対する後噴射の制御を選択
させることで、過渡運転状態においても領域判定を誤ら
ないようにして、NOxの浄化効率の低下と無駄な後噴
射とを回避することができる。
【0093】上記の〈9〉の場合には、無駄な後噴射を
行わないので、NOxの浄化性能の悪化と燃費悪化を防
止できる。
【0094】このように、本実施形態では、複合触媒を
構成する低温活性と高温活性の各触媒について活性段階
がNOx還元性能の上昇段階、最大活性段階、NOx還
元性能の下降段階の3つあることから、複合触媒として
は、 低温活性触媒のNOx還元性能の上昇段階の前段階、 低温活性触媒のNOx還元性能の上昇段階、 低温活性触媒の最大活性段階、 高温活性触媒のNOx還元性能の上昇段階(低温活性
触媒のNOx還元性能の下降段階でもある)、 高温活性触媒の最大活性段階、 高温活性触媒のNOx還元性能の下降段階 の6つに区分けしておき、現在の活性段階がこのうちの
いずれの活性段階にあるのかを判定し、上記〜まで
の各活性段階では触媒浄化効率が最大となるように後噴
射の量とタイミングを制御し、また上記との各活性
段階(複合触媒が所定の活性温度以下になる活性段階と
所定の活性温度以上になる活性段階)では後噴射を停止
するようにしたので、燃費の悪化を最小にしつつNOx
触媒の浄化性能を最大限に発揮させることができる。
【0095】また、上記6つの活性段階に対応してエン
ジンの負荷と回転数により定まる基準領域I〜VIを設定
し、現在のエンジンの負荷と回転数からどの基準領域に
あるのかをみて現活性段階を判定するほか、上記6つの
活性段階を複合触媒の温度により定まる実領域でも設定
し、複合触媒の現在の温度からどの実領域にあるかのを
みて現活性段階を判定し、この判定結果と基準領域に基
づく判定結果が異なるときは、基準領域に基づく判定結
果の隣の活性段階にあると判定するようにしたので、新
たなセンサを設けることなく、上記6つの活性段階のう
ちどの活性段階に現在の活性段階が該当するのかを精度
良く判定できるとともに、過渡運転状態においても活性
段階の判定を誤らないようにして、NOxの浄化効率の
低下と無駄な後噴射とを回避できる。
【0096】図3左側に示したように、本実施形態によ
ればII〜Vの各領域で破線で示したようにHC/NOx
比を一定に保ちつつ前述した後噴射の量とタイミングの
制御を行うことで、後噴射を実行しない場合と比べてN
Ox転換率であるηNOx(%)が大きく向上すること
になっている(一点鎖線参照)。なお、図3左側におい
て、後噴射(アフターインジェクション)付きをw/A.I
で、後噴射なしをw/oA.Iで略記している。
【0097】実施形態では、リーン雰囲気でのNOx活
性温度範囲が異なる2つの触媒を直列配置した複合触媒
で説明したが、2つに限定されるものでなく、3以上の
触媒を直列配置した複合触媒に対しても本発明を適用可
能であり、さらに1つだけの触媒であっても、NOx還
元性能が温度に対して突起的な特性を有する触媒である
ときは本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の制御システム図。
【図2】コモンレール式燃料噴射装置のシステム図。
【図3】複合触媒のNOx還元性能および本実施形態の
効果を示す特性図。
【図4】エンジントルクと回転数に対する領域図。
【図5】図4のX軸に沿った後噴射時期の特性図。
【図6】図4のY軸に沿った後噴射時期の特性図。
【図7】後噴射量比率K aftのテーブル特性図。
【図8】燃料噴射のメインルーチンを説明するためのフ
ローチャート。
【図9】コモンレール圧力の制御ルーチンを説明するた
めのフローチャート。
【図10】主噴射制御ルーチンを説明するためのフロー
チャート。
【図11】主噴射と後噴射の燃料噴射期間の特性図。
【図12】後噴射制御ルーチンを説明するためのフロー
チャート。
【図13】第1の発明のクレーム対応図。
【図14】第12の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
1 エンジン本体 3 NOx触媒 3a 高温活性型触媒 3b 低温活性型触媒 10 コモンレール式燃料噴射装置 17 燃料噴射弁 37 温度センサ 41 電子制御ユニット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F02D 41/04 355 F02D 41/04 355 41/38 ZAB 41/38 ZABB 41/40 ZAB 41/40 ZABC

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】各気筒に燃料を噴射供給する装置を備え、
    燃料の主噴射後の膨張行程または排気行程で前記燃料供
    給装置により後噴射を行い、この後噴射による未燃HC
    を、排気通路に設けたNOx触媒への還元剤として供給
    するようにしたディーゼルエンジンの排気浄化装置にお
    いて、 前記NOx触媒の温度に対する少なくとも2つの活性段
    階を予め設定する手段と、 これら複数の活性段階のうちどの活性段階に現在の活性
    段階が該当するのかを判定する手段と、 この判定される現活性段階で触媒浄化効率が最大となる
    ように前記後噴射の量とタイミングを設定する手段とを
    設けたことを特徴とするディーゼルエンジンの排気浄化
    装置。
  2. 【請求項2】前記NOx触媒をゼオライト系触媒の組み
    合わせ、貴金属系触媒の組み合わせまたはゼオライト系
    触媒と貴金属系触媒の組み合わせから構成することを特
    徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気浄
    化装置。
  3. 【請求項3】前記判定される現活性段階がNOx還元性
    能の上昇段階である場合に、主噴射からの遅角間隔を小
    さくする側に後噴射のタイミングを設定することを特徴
    とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの
    排気浄化装置。
  4. 【請求項4】前記判定される現活性段階がNOx還元性
    能の最大活性段階である場合に、主噴射からの遅角間隔
    を大きくする側に後噴射のタイミングを設定することを
    特徴とする請求項1または2に記載のディーゼルエンジ
    ンの排気浄化装置。
  5. 【請求項5】後噴射量または後噴射量比率を大きく設定
    することを特徴とする請求項3に記載のディーゼルエン
    ジンの排気浄化装置。
  6. 【請求項6】後噴射量または後噴射量比率を小さく設定
    することを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエン
    ジンの排気浄化装置。
  7. 【請求項7】前記後噴射のタイミングを、エンジンの負
    荷または回転数が増大するほど主噴射からの遅角間隔を
    大きくする側に補正することを特徴とする請求項3から
    6までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの排
    気浄化装置。
  8. 【請求項8】現活性段階がNOx還元性能の上昇段階の
    前段階である場合に、後噴射を停止することを特徴とす
    る請求項1から7までのいずれか一つに記載のディーゼ
    ルエンジンの排気浄化装置。
  9. 【請求項9】現活性段階がNOx還元性能の下降段階で
    ある場合に、後噴射を停止することを特徴とする請求項
    1から8までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジ
    ンの排気浄化装置。
  10. 【請求項10】前記複数の活性段階に対応してエンジン
    の負荷と回転数により定まる基準領域を設定し、現在の
    エンジンの負荷と回転数からどの基準領域にあるのかを
    みて現活性段階を判定することを特徴とする請求項1か
    ら9までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジンの
    排気浄化装置。
  11. 【請求項11】前記複数の活性段階を前記触媒の温度に
    より定まる実領域でも設定し、前記触媒の現在の温度か
    らどの実領域にあるかのをみて現活性段階を判定し、こ
    の判定結果と前記基準領域に基づく判定結果が異なると
    きは、前記基準領域に基づく判定結果の隣の活性段階に
    あると判定することを特徴とする請求項10に記載のデ
    ィーゼルエンジンの排気浄化装置。
  12. 【請求項12】各気筒に燃料を噴射供給する装置を備
    え、燃料の主噴射後の膨張行程または排気行程で前記燃
    料供給装置により後噴射を行い、この後噴射による未燃
    HCを、排気通路に設けたNOx触媒への還元剤として
    供給するようにしたディーゼルエンジンの排気浄化装置
    において、 前記NOx触媒を、リーン雰囲気でのNOx活性温度範
    囲が異なる複数の触媒を直列配置した複合触媒で構成す
    る一方、 触媒温度に対する少なくとも2つの活性段階を前記複数
    の各触媒毎に予め設定する手段と、 これら複数の活性段階のうちどの活性段階に現在の活性
    段階が該当するのかを前記複数の各触媒毎に判定する手
    段と、 前記複数の各触媒毎にこの判定される現活性段階で触媒
    浄化効率が最大となるように前記後噴射の量とタイミン
    グを設定する手段とを設けたことを特徴とするディーゼ
    ルエンジンの排気浄化装置。
  13. 【請求項13】前記複合触媒を、上流側より高温活性型
    触媒、低温活性型触媒の順に配置して構成することを特
    徴とする請求項12に記載のディーゼルエンジンの排気
    浄化装置。
  14. 【請求項14】現活性段階が前記低温活性型触媒のNO
    x還元性能の上昇段階の前段階である場合に、後噴射を
    停止することを特徴とする請求項12または13に記載
    のディーゼルエンジンの排気浄化装置。
  15. 【請求項15】現活性段階が前記高温活性型触媒のNO
    x還元性能の下降段階である場合に、後噴射を停止する
    ことを特徴とする請求項12から14までのいずれか一
    つに記載のディーゼルエンジンの排気浄化装置。
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