JPH11279268A - ポリエステルブロック共重合体および製造方法 - Google Patents

ポリエステルブロック共重合体および製造方法

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JPH11279268A
JPH11279268A JP8097898A JP8097898A JPH11279268A JP H11279268 A JPH11279268 A JP H11279268A JP 8097898 A JP8097898 A JP 8097898A JP 8097898 A JP8097898 A JP 8097898A JP H11279268 A JPH11279268 A JP H11279268A
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JP
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polyester
block copolymer
aliphatic
polyester block
acid
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JP8097898A
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Tatsuya Oshita
竜也 尾下
Shuhei Ishino
修平 石野
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 成形後、美麗性、耐熱性に優れ、加熱滞留時
間の長い溶融成形や溶融紡糸等に適するポリエステルブ
ロック共重合体、成形品または繊維。 【解決手段】 芳香族ポリエステルセグメント、並びに
脂肪族ポリエステルセグメントを有し、250℃で20
分間溶融滞留させるに際し、シクロトリエチレンテレフ
タレートの濃度が、溶融混練前に0.6重量%以下、溶
融滞留後に0.7重量%であるポリエステルブロック共
重合体。及び触媒としてゲルマニウム化合物を用いて重
縮合して得られたPETと脂肪族ポリエステルをエステ
ル交換反応させる際に、PET及び/又はエステル交換
反応生成物を水又は水蒸気と接触させ、次いで乾燥させ
る工程を設ける該重合体の製造方法。及び該重合体を用
いた成形品、繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステルブロ
ック共重合体およびその製造方法、並びに該ポリエステ
ルブロック共重合体よりなる成形品および繊維に関する
ものである。本発明のポリエステルブロック共重合体
は、従来公知のポリエステルブロック共重合体が有する
耐熱性、弾性および耐加水分解性などの特長に加え、成
形品および繊維の表面に優れた美麗性を付与することが
できる。
【0002】
【従来の技術】結晶性の芳香族ポリエステルをハードセ
グメントとし、ガラス転移点の低いポリテトラメチレン
グリコールなどの脂肪族ポリエーテルやポリカプロラク
トンなどの脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとす
るポリエステルブロック共重合体は、ポリエステルエラ
ストマーとして知られている。ポリエステルエラストマ
ーは、耐熱性、耐油性などの特性に優れ、しかも弾性を
有しているため、それらの特性を活かして、自動車部
品、電気・電子部品、一般機器部品、繊維などの種々の
用途に広く使用されている。
【0003】ポリエステルエラストマーの中で、ポリブ
チレンテレフタレートをハードセグメントとするポリエ
ステルエラストマーは、結晶化速度が速く、射出成形性
に優れるため、前記した結晶性の芳香族ポリエステルセ
グメントとして、多くの場合ポリブチレンテレフタレー
トが使用されている。一方、ポリエチレンテレフタレー
トをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステルをソフ
トセグメントとするポリエステルエラストマーは、特開
昭51−111895号公報、特開昭52−29892
号公報等の中に記載されており、耐熱性などに優れ、さ
らに透明性を有するという特徴がある。しかしながら、
成形後放置しておくと、室温下でも成形品、繊維の表面
に微粉がブリードアウトし、表面の美麗性が著しく損な
われ、上記したような透明性が低下するという問題があ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
エチレンテレフタレートをハードセグメントとし、成形
後、表面の外観を損なわず、美麗性に優れた成形品や繊
維を与えるポリエステルブロック共重合体およびその製
造方法、並びに該ポリエステルブロック共重合体からな
る成形品および繊維を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らは鋭意研究を重ねてきた。その中で、成形後
にブリードアウトする微粉を分析すると、ポリエチレン
テレフタレートのオリゴマーであるシクロトリエチレン
テレフタレートであることがわかった。そこでポリエス
テルブロック共重合体に含まれるオリゴマーを低減する
種々の手段を検討した結果、触媒としてゲルマニウム化
合物を使用して重縮合反応させて得られたポリエチレン
テレフタレートと脂肪族ポリエステルをエステル交換反
応させるに際して、前記ポリエチレンテレフタレートを
水または水蒸気と接触させ、次いで乾燥させる工程およ
び/またはエステル交換反応生成物を水または水蒸気と
接触させ、次いで乾燥させる工程を設けることにより、
上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成し
た。
【0006】すなわち、本発明は、芳香族ポリエステル
セグメント(A)および脂肪族ポリエステルセグメント
(B)からなるポリエステルブロック共重合体であっ
て、 (i)(a)芳香族ポリエステルセグメント(A)が、
70モル%以上がテレフタル酸単位であるジカルボン酸
単位および70モル%以上がエチレングリコール単位で
あるジオール単位からなり; (b)脂肪族ポリエステルセグメント(B)が、60モ
ル%以上が飽和脂肪族ジカルボン酸単位であるジカルボ
ン酸単位および60モル%以上が脂肪族ジオール単位で
あるジオール単位からなる脂肪族ポリエステルセグメン
ト(B1)、並びに60モル%以上が飽和脂肪族ヒドロ
キシカルボン酸単位であるヒドロキシカルボン酸単位か
らなる脂肪族ポリエステルセグメント(B2)、の少な
くとも一方からなり; (ii)芳香族ポリエステルセグメント(A)/脂肪族ポ
リエステルセグメント(B)の重量比が95/5〜20
/80であり; (iii)250℃で20分間溶融滞留させるに際し、溶
融滞留前に含有されるシクロトリエチレンテレフタレー
トの濃度が0.6重量%以下であり、溶融滞留後に含有
されるシクロトリエチレンテレフタレートの濃度が0.
7重量%以下である;ことを特徴とするポリエステルブ
ロック共重合体である。
【0007】そして、本発明は、ポリエステルブロック
共重合体の製造方法であって、(a')70モル%以上
がテレフタル酸であるジカルボン酸、および70モル%
以上がエチレングリコールであるジオールを、ゲルマニ
ウム化合物の存在下で重縮合反応して得られ、且つシク
ロトリエチレンテレフタレートの濃度が0.6重量%以
下である芳香族ポリエステル(A');並びに(b')60
モル%以上が飽和脂肪族ジカルボン酸であるジカルボン
酸、および60モル%以上が飽和脂肪族ジオールである
ジオールを重縮合反応して得られる脂肪族ポリエステル
(B1')、並びに60モル%以上が飽和脂肪族ヒドロキ
シカルボン酸であるヒドロキシカルボン酸を重縮合反応
して得られる脂肪族ポリエステル(B2')、から選ばれ
る少なくとも1種の脂肪族ポリエステル(B')を、芳
香族ポリエステル(A')/脂肪族ポリエステル(B')の
重量比が95/5〜20/80の割合でエステル交換反
応させる工程;並びに上記のエステル交換反応に付する
芳香族ポリエステル(A')を予め50〜150℃の水ま
たは水蒸気に5分間〜50時間接触させ、次いで80〜
150℃の温度で1〜50時間乾燥させる工程および/
または上記のエステル交換反応により得られる生成物を
50〜150℃の水または水蒸気に5分間〜50時間接
触させ、次いで80〜150℃の温度で1〜50時間乾
燥させる工程からなることを特徴とするポリエステルブ
ロック共重合体の製造方法である。
【0008】また、本発明は上記したポリエステルブロ
ック共重合体からなる成形品である。
【0009】さらに、本発明は上記したポリエステルブ
ロック共重合体からなる繊維である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明のポリエステルブロック共重合体は、上記
したように、芳香族ポリエステルセグメント(A)およ
び脂肪族ポリエステルセグメント(B)からなってい
る。 そして、その芳香族ポリエステルセグメント(A)は、
ジカルボン酸単位およびジオール単位から主としてなっ
ていて、該ジカルボン酸単位の70モル%以上がテレフ
タル酸単位であり、且つ該ジオール単位の70モル%以
上がエチレングリコール単位であることが必要である
[前記の(i)の(a)の要件]。
【0011】芳香族ポリエステルセグメント(A)にお
いて、テレフタル酸単位の割合が、芳香族ポリエステル
セグメント(A)を構成する全ジカルボン酸単位に基づ
いて70モル%未満であると、ポリエステルブロック共
重合体の耐熱性が低下して物性の良好なポリエステルブ
ロック共重合体は得られない。ポリエステルブロック共
重合体の耐熱性などをより良好なものにする点から、テ
レフタル酸単位の割合はジカルボン酸単位の80モル%
以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがよ
り好ましい。
【0012】芳香族ポリエステルセグメント(A)は、
必要に応じて30モル%以下、好ましくは20モル%以
下、より好ましくは10モル%以下の他のジカルボン酸
単位、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジ
カルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエー
テルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、
ジフェニルケトンジカルボン酸、スルホイソフタル酸ナ
トリウムなどから誘導される芳香族ジカルボン酸単位;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などから誘導され
る脂環式ジカルボン酸単位;琥珀酸、グルタル酸、アジ
ピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などから誘導される
脂肪族ジカルボン酸単位;等を有していることができ、
これらの1種または2種以上を有していてもよい。
【0013】また、芳香族ポリエステルセグメント
(A)において、エチレングリコール単位の割合が、芳
香族ポリエステルセグメント(A)を構成する全ジオー
ル単位に基づいて70モル%未満であると、成形品表面
に美麗性などの良好な外観を与え、かつ耐熱性などの物
性が良好なポリエステルブロック共重合体は得られな
い。エチレングリコール単位の割合は芳香族ポリエステ
ルセグメント(A)を構成する全ジオール単位の80モ
ル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるの
がより好ましい。
【0014】また、芳香族ポリエステルセグメント
(A)は、必要に応じて、30モル%以下、好ましくは
20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の他の
ジオール単位、例えば、1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、
3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−
1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、
1,10−デカンジオールなどからなる脂肪族ジオール
単位;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどからな
る脂環式ジオール単位;1,4−ビス(2−ヒドロキシ
エトキシ)ベンゼン、p−キシレングリコールなどから
なる芳香族ジオール単位;などの1種または2種以上を
有していてもよい。
【0015】また、芳香族ポリエステルセグメント
(A)は、少量(好ましくは全ジオール単位の1モル%
以下)であれば、必要に応じて、トリメチロールエタ
ン、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6
−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの多
価アルコールからなる単位を含んでいてもよい。
【0016】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体では、その脂肪族ポリエステルセグメント(B)
が、60モル%以上が飽和脂肪族ジカルボン酸単位であ
るジカルボン酸単位および60モル%以上が脂肪族ジオ
ール単位であるジオール単位から主としてなる脂肪族ポ
リエステルセグメント(B1)、並びに60モル%以上
が飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位であるヒドロキ
シカルボン酸単位から主としてなる脂肪族ポリエステル
セグメント(B2)の少なくとも一方からなることが必
要である[前記の(i)の(b)の要件]。
【0017】脂肪族ポリエステルセグメント(B)とし
て脂肪族ポリエステルセグメント(B1)を用いる場合
は、飽和脂肪族ジカルボン酸単位の割合が、脂肪族ポリ
エステルセグメント(B1)を構成する全ジカルボン酸
単位に基づいて60モル%未満であると、弾性、弾性回
復性、耐寒性などの物性が良好なポリエステルブロック
共重合体は得られない。ポリエステルブロック共重合体
の弾性、弾性回復性、耐寒性などの物性をより良好なも
のにする点から、飽和脂肪族ジカルボン酸単位の割合は
70モル%以上であるのが好ましく、80モル%以上で
あるのがより好ましい。
【0018】また、脂肪族ポリエステルセグメント(B
1)における飽和脂肪族ジカルボン酸単位としては、グ
ルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二
酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、2−メチルコ
ハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン
酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二
酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデ
カン二酸などからなる単位を挙げることができ、脂肪族
ポリエステルセグメント(B1)はこれらの飽和脂肪族
ジカルボン酸単位の1種または2種以上を有しているこ
とができる。
【0019】また、脂肪族ポリエステルセグメント(B
1)は、必要に応じて40モル%以下、好ましくは30
モル%以下、より好ましくは20モル%以下の他のジカ
ルボン酸単位、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸な
どの飽和脂環式ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル
酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;マレイン
酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボ
ン酸;テトラブロモフタル酸などのハロゲン含有ジカル
ボン酸などからなる単位の1種または2種以上を有して
いることができる。また、脂肪族ポリエステルセグメン
ト(B1)は、上記したジカルボン酸単位と共に、少量
(好ましくは全ジカルボン酸単位の1モル%以下)であ
れば、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット
酸、トリカルバリル酸などの多価カルボン酸からなる単
位を含んでいてもよい。
【0020】さらに、脂肪族ポリエステルセグメント
(B1)において、飽和脂肪族ジオール単位の割合が、
脂肪族ポリエステルセグメント(B1)を構成する全ジ
オール単位に基づいて、60モル%未満であると、弾性
回復性、耐寒性などの物性が良好なポリエステルブロッ
ク共重合体は得られない。前記した物性がより良好なポ
リエステルブロック共重合体が得られる点から、上記の
飽和脂肪族ジオール単位の割合は80モル%以上である
のが好ましく、90モル%以上であるのがより好まし
い。
【0021】脂肪族ポリエステルセグメント(B1)に
おける飽和脂肪族ジオール単位としては、エチレングリ
コール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジ
オール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサン
ジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタ
ンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカ
ンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12
−ドデカンジオールなどからなる直鎖状の脂肪族ジオー
ル単位;1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリ
コール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオー
ル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオー
ル、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチ
ル−1,8−オクタンジオールなどからなる側鎖を有す
る脂肪族ジオール単位を挙げることができる。
【0022】また、脂肪族ポリエステルセグメント(B
1)は、必要に応じて、40モル%以下、好ましくは2
0モル%以下、より好ましくは10モル%以下の他のジ
オール単位の1種または2種以上を有していてもよく、
他のジオール単位としては、シクロヘキサンジオール、
シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール;
1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p
−キシレングリコールなどの芳香族ジオールなどからな
るジオール単位を挙げることができる。また、脂肪族ポ
リエステルセグメント(B1)は、少量(好ましくは全
ジオール単位の1モル%以下)であれば、必要に応じ
て、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、
グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタ
エリスリトールなどの多価アルコールからなる単位を含
んでいてもよい。
【0023】そして、脂肪族ポリエステルセグメント
(B)として脂肪族ポリエステルセグメント(B2)を
用いる場合は、飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位の
割合が、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)を構成
する全ヒドロキシカルボン酸単位に基づいて60モル%
未満であると、弾性、弾性回復性、耐寒性などの物性が
良好なポリエステルブロック共重合体は得られない。ポ
リエステルブロック共重合体の弾性、弾性回復性、耐寒
性などの物性をより良好なものにする点から、飽和脂肪
族ヒドロキシカルボン酸単位の割合が80モル%以上で
あるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ま
しい。
【0024】脂肪族ポリエステルセグメント(B2)に
おける飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位としては、
ε−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシエナント
酸、7−ヒドロキシカプリル酸などからなる単位を挙げ
ることができ、脂肪族ポリエステルセグメント(B2)
はこれらの飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位の1種
または2種以上を有していることができる。
【0025】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体は、脂肪族ポリエステルセグメント(B)とし
て、上記した脂肪族ポリエステルセグメント(B1)の
みを有していても、脂肪族ポリエステルセグメント(B
2)のみを有していても、または脂肪族ポリエステルセ
グメント(B1)と脂肪族ポリエステルセグメント(B
2)の両方を有していてもよい。中でも脂肪族ポリエス
テルセグメント(B1)を有しているのが、高温下で熱
分解しにくい点から好ましい。
【0026】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体では、上記した芳香族ポリエステルセグメント
(A)/脂肪族ポリエステルセグメント(B)の重量比が
95/5〜20/80であることが必要である[上記の
(ii)の要件]。芳香族ポリエステルセグメント(A)と
脂肪族ポリエステルセグメント(B)の合計重量に基づ
いて、芳香族ポリエステルセグメント(A)の割合が9
5重量%を超えると、ポリエステルブロック共重合体の
弾性回復性が劣ったものとなり、一方、芳香族ポリエス
テルセグメント(A)の割合が20重量%未満である
と、ポリエステルブロック共重合体の耐熱性などが劣っ
たものとなる。ポリエステルブロック共重合体の弾性回
復性、耐熱性などの点から、芳香族ポリエステルセグメ
ント(A)/脂肪族ポリエステルセグメント(B)が9
0/10〜30/70の重量比であるのが好ましく、8
0/20〜40/60の重量比であるのがより好まし
い。
【0027】また、本発明のポリエステルブロック共重
合体では、その強度や伸度などの力学的特性を良好なも
のとするために、ポリエステルブロック共重合体を構成
する芳香族ポリエステルセグメント(A)の数平均分子
量が約500〜10000であり、脂肪族ポリエステル
セグメント(B)の数平均分子量が約500〜1000
0であるのが好ましく、またポリエステルブロック共重
合体の固有粘度が、フェノール/テトラクロロエタン混
合溶媒(1/1重量比)中で30℃で測定したときに
0.7dl/g以上であるのが好ましく、0.8dl/
g以上であるのがより好ましく、1.0dl/g以上で
あるのがさらに好ましい。
【0028】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体は、250℃で20分間溶融滞留させるに際し、
溶融滞留前に含有されるシクロトリエチレンテレフタレ
ートの濃度が0.6重量%以下であることが必要である
[上記の(iii)の要件]。上記のシクロトリエチレンテ
レフタレートの濃度が0.6重量%を超える場合は、成
形品、繊維の表面へのシクロトリエチレンテレフタレー
トのブリードアウトが顕著になり、好ましくない。しか
も、室温で放置した場合においても、シクロトリエチレ
ンテレフタレートのブリードアウトがおこり、成形品、
繊維の品位が著しく低下して、好ましくない。シクロト
リエチレンテレフタレートの濃度は0.5重量%以下で
あるのが好ましく、0.4重量%以下であるのがより好
ましい。
【0029】また、本発明のポリエステルブロック共重
合体は、250℃で20分間溶融滞留させた後のシクロ
トリエチレンテレフタレートの濃度が、0.7重量%以
下であることが必要である[上記の(iii)の要件]。溶
融滞留前のポリエステルブロック共重合体のシクロトリ
エチレンテレフタレートの濃度が0.6重量%以下で
も、上記のシクロトリエチレンテレフタレートの濃度が
0.7重量%より大きくなれば、成形品、繊維の表面へ
のシクロトリエチレンテレフタレートのブリードアウト
が顕著になる。250℃で20分間溶融滞留した後のシ
クロトリエチレンテレフタレートの濃度が0.7重量%
以下であるポリエステルブロック共重合体は、成形後の
成形品、繊維の表面にシクロトリエチレンテレフタレー
トが、ブリードアウトしないか、または目視ではほとん
ど目立たない程度にしかブリーアウトしていない。25
0℃で20分間溶融滞留した後のポリエステルブロック
共重合体中のシクロトリエチレンテレフタレートの好ま
しい濃度は0.6重量%以下であり、より好ましくは
0.5重量%以下である。
【0030】なお、ポリエステルブロック共重合体中に
含まれるシクロトリエチレンテレフタレートの濃度は、
後述する方法により測定した値をいう。
【0031】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体では、その水酸基濃度が10μ当量/g以下であ
ることが好ましい。ポリエステルブロック共重合体の水
酸基濃度が10μ当量/gを超えると、成形温度が27
0℃を超える場合、または成形時の溶融滞留時間が20
分を超える場合には、ポリエステルブロック共重合体中
に含まれるシクロトリエチレンテレフタレートの濃度が
増大しやすくなり好ましくない。また、ポリエステルブ
ロック共重合体の、芳香族ポリエステルセグメント
(A)と脂肪族ポリエステルセグメント(B)との間の
エステル交換反応が生じて、そのブロック構造が失われ
てランダム構造化し、ポリエステルブロック共重合体が
本来有する弾性などの特性が失われる。高温かつ長時
間、溶融状態で滞留させた際のシクロトリエチレンテレ
フタレート濃度の増大の防止およびブロック構造の消失
の防止を一層効果的にするためには、ポリエステルブロ
ック共重合体の水酸基濃度が5μ当量/g以下であるの
が好ましく、3μ当量/g以下であるのがより好まし
い。なお、本発明でいう「水酸基濃度」の値は、後述の
方法によって測定した水酸基濃度をいう。
【0032】さらに、本発明のポリエステルブロック共
重合体は、そのカルボキシル基濃度が20μ当量/g以
下であることが好ましい。ポリエステルブロック共重合
体のカルボキシル基濃度が20μ当量/gを超えると、
ポリエステルブロック共重合体の耐加水分解性、耐熱老
化性などの耐久性が低下する傾向がある。ポリエステル
ブロック共重合体のカルボキシル基濃度は10μ当量/
g以下であるのが好ましく、5μ当量/g以下であるの
がより好ましい。なお、本発明でいう「カルボキシル基
濃度」の値は、後述の方法によって測定したカルボキシ
ル基濃度をいう。
【0033】そして、本発明のポリエステルブロック共
重合体は、上記した(i)〜(iii)の要件を備えるこ
とによって、成形品または繊維に耐熱性等の物性、表面
美麗性、さらに透明性などの特長を付与することがで
き、且つその特長はシクロトリエチレンテレフタレート
のブリードアウトなどによって損なわれない。
【0034】本発明のポリエステルブロック共重合体を
製造するには、(a')70モル%以上がテレフタル酸
であるジカルボン酸、および70モル%以上がエチレン
グリコールであるジオールを、ゲルマニウム化合物の存
在下で重縮合反応して得られ、且つシクロトリエチレン
テレフタレートの濃度が0.6重量%以下である芳香族
ポリエステル(A');並びに(b')60モル%以上が飽
和脂肪族ジカルボン酸であるジカルボン酸、および60
モル%以上が飽和脂肪族ジオールであるジオールを重縮
合反応して得られる脂肪族ポリエステル(B1')、並び
に60モル%以上が飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸で
あるヒドロキシカルボン酸を重縮合反応して得られる脂
肪族ポリエステル(B2')、から選ばれる少なくとも1
種の脂肪族ポリエステル(B')を、芳香族ポリエステ
ル(A')/脂肪族ポリエステル(B')の重量比が95/
5〜20/80の割合でエステル交換反応させる工程;
並びに上記のエステル交換反応に付する芳香族ポリエス
テル(A')を予め50〜150℃の水または水蒸気に5
分間〜50時間接触させ、次いで80〜150℃の温度
で1〜50時間乾燥させる工程および/または上記のエ
ステル交換反応により得られる生成物を50〜150℃
の水または水蒸気に5分間〜50時間接触させ、次いで
80〜150℃の温度で1〜50時間乾燥させる工程か
らなる、本発明の方法によって製造することができる。
【0035】ここで、本発明の製造方法において、芳香
族ポリエステル(A')および脂肪族ポリエステル(B
1')におけるジカルボン酸およびジオールの内容、並び
に脂肪族ポリエステル(B2')におけるヒドロキシカル
ボン酸の内容 は、本発明のポリエステルブロック共重
合体について上記で詳細に説明したとおりである。
【0036】本発明のポリエステルブロック共重合体
は、250℃で20分間溶融滞留させる際に、溶融滞留
前に含有されるシクロトリエチレンテレフタレートの濃
度が0.6重量%以下、且つ溶融滞留後に含有されるシ
クロトリエチレンテレフタレートの濃度が0.7重量%
以下になるように調整されていることが重要である。か
かるポリエステルブロック共重合体は、以下に示す方法
により製造される。
【0037】本発明の製造方法に用いられる芳香族ポリ
エステル(A’)は、ジカルボン酸およびジオールをゲ
ルマニウム化合物の存在下で重縮合して得られたもので
ある必要がある。ゲルマニウム化合物を重縮合触媒とし
て用いることにより、250℃で20分間溶融滞留した
後のシクロトリエチレンテレフタレート濃度が低いポリ
エステルブロック共重合体の製造が可能となる。ゲルマ
ニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニ
ウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−ブトキ
シドなどを挙げることができ、その使用量は、得られる
芳香族ポリエステル(A’)の重量に基づいて1〜10
000ppmの範囲であるのが好ましく、10〜100
0ppmの範囲であるのがより好ましく、50〜500
ppmの範囲であるのが特に好ましい。
【0038】芳香族ポリエステル(A’)の製造に際し
ては、必要に応じて従来から芳香族ポリエステルの製造
時に添加し得ることが知られている着色防止剤、安定剤
などの添加剤を添加することができる。着色防止剤とし
ては、例えば、亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスフ
ァイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォ
スファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフ
ォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのリン
化合物;酢酸コバルトなどのコバルト化合物を用いるこ
とができ、これらの化合物は単独で使用しても2種類以
上を併用してもよい。着色防止剤の使用量は、得られる
芳香族ポリエステル(A’)の重量に基づいて1〜10
000ppmの範囲であるのが好ましく、10〜300
0ppmの範囲であるのがより好ましい。
【0039】また、芳香族ポリエステル(A’)の製造
に際しては、アセトアルデヒドの副生を低減させるため
の安定剤として、テトラエチルアンモニウムヒドロキシ
ドなどのアンモニウム化合物を添加することができ、そ
の使用量は、得られる芳香族ポリエステル(A’)の重
量に基づいて1〜10000ppmの範囲であるのが好
ましく、10〜3000ppmの範囲であるのがより好
ましい。
【0040】芳香族ポリエステル(A’)は、シクロト
リエチレンテレフタレート濃度が0.6重量%以下であ
ることが必要である。0.6重量%を超えると、得られ
るポリエステルブロック共重合体のシクロトリエチレン
テレフタレート濃度を0.6重量%以下とすることは難
しい。ポリエステルブロック共重合体のシクロトリエチ
レンテレフタレート濃度をより低くするため、芳香族ポ
リエステル(A’)に含まれるシクロトリエチレンテレ
フタレート濃度は、0.5重量%以下であることが好ま
しく、0.4重量%以下であることがより好ましい。シ
クロトリエチレンテレフタレート濃度が0.6重量%以
下の芳香族ポリエステル(A’)を製造するには、溶融
重縮合して得られた芳香族ポリエステルを融点以下の温
度で固相重合する方法、または芳香族ポリエステル
(A’)を構成するジカルボン酸単位の30モル%未満
でテレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位および/若
しくはジオール単位の30モル%未満でエチレングリコ
ール単位以外のジオール単位を共重合をする方法、さら
にこれらの方法を組み合わせた方法が採用される。
【0041】上記の製造方法により得られた芳香族ポリ
エステル(A’)は、ダイス状、円柱状などの任意の形
状のチップやペレットとすることができる。
【0042】本発明の製造方法に用いられる脂肪族ポリ
エステル(B’)は、溶融重縮合反応により製造するこ
とができる。溶融重縮合反応は重合触媒の存在下に行う
ことが好ましく、重合触媒としてはポリエステルの製造
に通常用いられるものを使用することができ、例えば、
テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ
n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、
テトラブトキシチタン、シュウ酸チタンカリウムなどの
チタン化合物;ジn−ブチル錫ジラウレート、ジn−ブ
チル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートなどの錫化合
物;酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;酸化ゲル
マニウムなどのゲルマニウム化合物などを挙げることが
でき、これらの中でもチタン化合物が好ましい。重合触
媒の使用量は、得られる脂肪族ポリエステル(B’)の
重量に基づいて1〜10000ppmの範囲とするのが
好ましく、10〜1000ppmの範囲とするのがより
好ましく、50〜700ppmの範囲とするのが特に好
ましい。
【0043】芳香族ポリエステル(A')および脂肪族ポ
リエステル(B')をエステル交換反応させる工程は、通
常、両方のポリエステルを溶融混練することにより実施
するのが好ましい。エステル交換反応は、触媒の存在下
または不存在下に行われ、触媒としては、テトライソプ
ロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウ
ムオキシアセチルチタネートなどのチタン化合物が好ま
しく用いられる。
【0044】上記のエステル交換反応の工程では、芳香
族ポリエステル(A’)および脂肪族ポリエステル
(B’)のブロック構造を適切に形成させる必要があ
る。その方法としては、反応原料である芳香族ポリエス
テル(A’)および脂肪族ポリエステル(B’)とし
て、それぞれ水酸基濃度が150μ当量/g以下であり
且つその固有粘度が0.4dl/g以上であるものを用
い、生成物の水酸基濃度が10μ当量/g以下となるよ
うにエステル交換反応させる方法、または芳香族ポリエ
ステル(A’)および脂肪族ポリエステル(B’)をエ
ステル交換反応させ、適切なブロック構造になった時点
で亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステ
ルなどのリン化合物を添加する方法などが採用される。
このうちでは、前者の方法が、適切なブロック構造のポ
リエステルブロック共重合体を極めて円滑に安定して製
造できること、さらに270℃以上の高温で20分以上
溶融状態に滞留させた際のシクロトリエチレンテレフタ
レート濃度の増大防止およびブロック構造のランダム化
防止を一層効果的にできることから好ましい。
【0045】かかる点から、ポリエステルブロック共重
合体の水酸基濃度が10μ当量/g以下となるようにエ
ステル交換反応させるには、芳香族ポリエステル(A')
および脂肪族ポリエステル(B')として、水酸基濃度が
それぞれ150μ当量/g以下であるものを用いること
が好ましい。芳香族ポリエステル(A')および脂肪族ポ
リエステル(B')の一方または両方の水酸基濃度が15
0μ当量/gよりも高いと、エステル交換反応中に水酸
基濃度を充分に減少させることが困難になり、水酸基濃
度が10μ当量/g以下であるポリエステルブロック共
重合体の製造が困難になる傾向がある。
【0046】さらに、水酸基濃度が10μ当量/g以下
となるようにエステル交換反応させるには、芳香族ポリ
エステル(A')および脂肪族ポリエステル(B')とし
て、固有粘度がそれぞれ0.4dl/g以上であるもの
を用いることが好ましく、両方のポリエステルの固有粘
度が0.5dl/g以上であることがより好ましく、
0.6dl/g以上であることがさらに好ましい。芳香
族ポリエステル(A')および脂肪族ポリエステル(B')
の一方または両方の固有粘度が0.4dl/g未満であ
ると、芳香族ポリエステル(A')と脂肪族ポリエステル
(B')の相溶性が増大して、その水酸基濃度の制御が困
難になり、水酸基濃度が10μ当量/g以下であるポリ
エステルブロック共重合体を得るのが困難になる傾向が
ある。
【0047】また、場合によっては、水酸基と反応し得
る基を有し、且つ沸点が200℃以上の化合物(以下
「水酸基反応性化合物」という)の1種または2種以上
を、適切な時期に適切な量で反応系に添加することによ
っても、反応系の水酸基濃度を減少させることができ、
最終的に得られるポリエステルブロック共重合体の水酸
基濃度を10μ当量/g以下とすることができる。
【0048】上記の水酸基反応性化合物としては、反応
系に存在する水酸基と反応し、反応後は再度水酸基を遊
離することのない化合物であって、且つ沸点が200℃
以上の化合物であればいずれでもよい。水酸基反応性化
合物の沸点が200℃よりも低いと、通常200℃以上
の温度で実施される芳香族ポリエステル(A')および脂
肪族ポリエステル(B')の溶融混練中に、水酸基反応性
化合物が系外に失われてその機能を充分に果たすことが
できない。
【0049】水酸基反応性化合物としては、例えばカプ
リン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、オレイン酸、安息香酸、トルイル酸、コハ
ク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸などのカルボキシル基を有する化合物;無水コハク
酸、無水フタル酸などの酸無水物;アセチルカプロラク
タム、アセチルラウロラクタム、ベンゾイルカプロラク
タム、ベンゾイルラウロラクタム、テレフタロイルビス
カプロラクタム、テレフタロイルビスラウロラクタムな
どのN−アシルラクタムを挙げることができる。
【0050】そして、芳香族ポリエステル(A')および
脂肪族ポリエステル(B')の溶融混練中に、エステル交
換反応による脱ジオール反応、カルボキシル基と水酸基
との間のエステル化反応、末端ジオール単位が環状エー
テルとして脱離する反応、水酸基反応性化合物と水酸基
との反応などによって、反応系の水酸基濃度が減少す
る。エステル交換反応の速度は、芳香族ポリエステル
(A')と脂肪族ポリエステル(B')との相溶性、エステ
ル交換反応時の反応条件などによって異なるので、反応
速度の大小などに応じて、芳香族ポリエステル(A')お
よび脂肪族ポリエステル(B')の水酸基濃度を適宜選択
したものを原料として使用し、反応系の水酸基濃度を制
限して、最終的に得られるポリエステルブロック共重合
体の水酸基濃度を上記した10μ当量/g以下に調整す
る。
【0051】また、上記した芳香族ポリエステル(A')
および脂肪族ポリエステル(B')をエステル交換反応さ
せる際の反応温度、圧力などは、使用する芳香族ポリエ
ステル(A')や脂肪族ポリエステル(B')などの内容に
応じて調整することができる。一般には、融点の高いポ
リエステル[通常芳香族ポリエステル(A')]の融点よ
りも約10〜30℃程度高い温度で両方のポリエステル
を溶融混練して、1mmHg以下の減圧下にエステル交
換反応させるとよい。エステル交換反応により所望のポ
リエステルブロック共重合体が生成しているか否かは、
エステル交換反応生成物の弾性回復性を逐次調べること
によって確認することができるが、通常、芳香族ポリエ
ステル(A')と脂肪族ポリエステル(B')を溶融混練し
た系が、溶融状態で透明か否かで判断することができ
る。すなわち、非相溶である系を溶融混練して、エステ
ル交換反応により系が均一化し透明になった時点で水酸
基濃度が10μ当量/g以下であれば、所望のポリエス
テルブロック共重合体が生成していると判断される。
【0052】芳香族ポリエステル(A')と脂肪族ポリエ
ステル(B')とのエステル交換反応が不充分であると、
未反応物がブレンドされた状態で存在するため、目的と
するポリエステルブロック共重合体は得られない。一
方、両方のポリエステルのエステル交換反応が進み過ぎ
ると、ポリエステルブロック共重合体を構成する芳香族
ポリエステルセグメント(A)および脂肪族ポリエステ
ルセグメント(B)のそれぞれの長さ(数平均分子量)
が小さくなり過ぎて、融点が下がり耐熱性が低くなる、
エラストマーとしての物性に劣るなど、ランダム共重合
体と近似した特性を示すようになる。
【0053】本発明の製造方法では、得られるポリエス
テルブロック共重合体のカルボキシル基濃度が、20μ
当量/g以下となるようにエステル交換反応させること
が好ましい。カルボキシル基濃度が20μ当量/gを超
えている場合には、例えば、2,2’−(1,3−フェ
ニレン)ビス(2−オキサゾリン)等のオキサゾリン基
を有する化合物、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピ
ルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド基を有す
る化合物などのカルボキシル基封止剤を反応させて、カ
ルボキシル基濃度を20μ当量/g以下とすることがで
きる。
【0054】本発明の製造方法では、シクロトリエチレ
ンテレフタレート濃度が0.6重量%以下の芳香族ポリ
エステル(A’)のチップ若しくはペレット、および/
または芳香族ポリエステル(A’)と脂肪族ポリエステ
ル(B’)とのエステル交換反応生成物のチップ若しく
はペレットを、50〜150℃の水または水蒸気に5分
間〜50時間接触させ、次いで80〜150℃の温度で
1〜50時間乾燥させる工程を設ける必要がある。かか
る条件で水または水蒸気に接触させ乾燥させることによ
り、本発明のポリエステルブロック共重合体を250℃
で20分間溶融混練した前後で、シクロトリエチレンテ
レフタレート濃度の増大を抑制することができる。水ま
たは水蒸気による処理としては、80〜150℃の水ま
たは水蒸気で1〜20時間の処理が好ましく、80〜1
50℃の水または水蒸気で1〜10時間の処理がより好
ましい。また、乾燥は、100〜150℃の温度で1〜
40時間行うのが好ましく、100〜150℃の温度で
1〜30時間行うのがより好ましい。上記の水または水
蒸気による処理および乾燥の工程を経て製造されたポリ
エステルブロック共重合体を、250℃で20分間溶融
滞留させる場合には、シクロトリエチレンテレフタレー
ト濃度の増大は0.1重量%以下の範囲に抑えることが
できる。
【0055】水または水蒸気による処理および乾燥処理
は、エステル交換反応させるに際して予め芳香族ポリエ
ステル(A’)に対して行うことが好ましいが、芳香族
ポリエステル(A’)と脂肪族ポリエステル(B’)と
のエステル交換反応生成物に対して行ってもよく、これ
らの両方に行ってもよい。なお、芳香族ポリエステル
(A’)に対して水または水蒸気による処理および乾燥
処理を施さない場合には、エステル交換反応時の加熱に
より、シクロトリエチレンテレフタレート濃度が著しく
増大することがあることから、必要により、得られたエ
ステル交換反応生成物を固相重合したうえで、水または
水蒸気による処理および乾燥処理を施すことが好まし
い。
【0056】本発明のポリエステルブロック共重合体
は、必要に応じて、その芳香族ポリエステルセグメント
(A)および/または脂肪族ポリエステルセグメント
(B)にスルホン酸塩の基を導入することにより、カチ
オン染色が可能なように変性されていてもよく、リン含
有基を導入することにより難燃性に変性されていてもよ
い。また、本発明のポリエステルブロック共重合体は、
必要に応じて従来からポリエステルブロック共重合体に
添加し得ることが知られている添加剤、例えば滑剤、着
色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐加水分解
安定剤、防黴剤、内部離型剤などの各種添加剤、ガラス
繊維、有機繊維などの各種繊維、タルク、シリカ、その
他の無機充填剤、各種カップリング剤などを、エステル
交換反応のための溶融混練前、溶融混練中または溶融混
練後に適宜添加してもよい。本発明のポリエステルブロ
ック共重合体を射出成形する場合、金型との離型性がよ
り良好になるため、滑剤として飽和または不飽和の高級
脂肪酸をエステル化またはアミド化した化合物(滑剤)
を添加することが好ましい。
【0057】本発明は、ポリエステルブロック共重合体
からなる成形品および繊維を包含している。本発明のポ
リエステルブロック共重合体からなる成形品は、従来の
ポリエステルエラストマーの特徴に加え、表面の美麗性
に優れる。さらに高温で長時間、例えば250℃で20
分以上滞留した後に成形しても表面の美麗性は損なわれ
ない。そのため、本発明のポリエステルブロック共重合
体を単独で用いて溶融成形や溶融紡糸などを行って、各
種の成形品や繊維などを円滑に製造することができる。
また、本発明のポリエステルブロック共重合体と、ポリ
エチレンテレフタレートなどの高融点重合体とを高温で
溶融混合してブレンド物を製造し、また高温で溶融成形
または溶融紡糸して、複合成形品、複合繊維などを製造
することができる。特に、本発明のポリエステルブロッ
ク共重合体とポリエチレンテレフタレート、ポリアミド
などの高融点重合体とを、高温で長時間溶融状態で滞留
させることが必要な押出成形などを行うことにより、上
記したブレンド物、複合成形品、複合繊維などを円滑に
製造することができる。
【0058】限定されるものではないが、本発明のポリ
エステルブロック共重合体は、単独で、または他の重合
体と併用して、シート、フィルム、ベルト、ロール、カ
ールコード、ホース、チューブなどの押出成形品、パッ
キング材、防振材、制振材、クッション材、靴底、スポ
ーツシューズ、機械部品、自動車部品、電気・電子部
品、スポーツ用品などの射出成形品等の各種成形品、弾
性繊維、接着剤の原料などの広範な用途に有効に使用す
ることができる。これらの中では、成形機内での加熱滞
留時間の長い押出成形品が、本発明のポリエステルブロ
ック共重合体を用いる効果が有効に発揮されることから
好ましい。そして、本発明のポリエステルブロック共重
合体から上記した成形品などを製造するに当たっては、
熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどに対して従来
から使用されている各種の溶融成形法、例えば押出成
形、射出成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、カレ
ンダー成形、プレス成形などの種々の成形法を採用する
ことができる。
【0059】
【実施例】以下に本発明を実施例などにより具体的に説
明するが、本発明はこれにより何ら限定されない。以下
の参考例、実施例および比較例において、各種ポリエス
テルの分析値、並びにポリエステルブロック共重合体か
らなるフィルムおよび弾性糸の製造並びに物性の測定お
よび評価は下記の方法により行った。
【0060】[固有粘度]芳香族ポリエステル(A')、
脂肪族ポリエステル(B')またはポリエステルブロック
共重合体を、フェノール/テトラクロロエタンの混合溶
媒(1/1重量比)に溶解し、ウベローデ型粘度計によ
り30℃で測定した。
【0061】[水酸基濃度]芳香族ポリエステル
(A')、脂肪族ポリエステル(B')またはポリエステル
ブロック共重合体の水酸基濃度は、プロトンNMR(日
本電子社製「JEOL GX−500」)の測定によ
り、水酸基隣接メチレンプロトンの強度比から求めた。
【0062】[カルボキシル基濃度]芳香族ポリエステ
ル(A')、脂肪族ポリエステル(B')またはポリエステ
ルブロック共重合体を乾燥し、ベンジルアルコールに2
15℃の温度で3〜5分間かけて溶解させ、溶解後にク
ロロホルムを投入した後、水酸化カリウムのメタノール
溶液を用いてフェノールレッドを指示薬として滴定を行
って中和点を求め、カルボキシル基濃度を算出した。
【0063】[溶融混練前のシクロトリエチレンテレフ
タレート濃度]芳香族ポリエステル(A’)または溶融
混練前のポリエステルブロック共重合体100mgの試
料を、2mlのヘキサフルオロイソプロパノールとクロ
ロホルムの1:1(体積比)混合溶媒に溶解した後、8
mlのクロロホルムを加え均一な溶液とし、その後90
mlのアセトニトリルで再析出して濾過し、芳香族ポリ
エステル(A’)またはポリエステルブロック共重合体
を除き、次いで得られた濾液を高速液体クロマトグラフ
ィー(装置:島津製作所製「LC−6AD」、溶離液:
75体積%アセトニトリル水溶液、カラム:ケムコ社製
「ケムコソルブ5−ODS−H−タイプ6A」、検出
器:紫外検出器)で分析し、シクロトリエチレンテレフ
タレート量を求め、この値を測定に用いた芳香族ポリス
テル(A’)またはポリエステルブロック共重合体の量
で割って、シクロトリエチレンテレフタレート濃度を求
めた。
【0064】[溶融混練後のシクロトリエチレンテレフ
タレート濃度]ポリエステルブロック共重合体を、ラボ
プラストミル(東洋精機製作所製「20R200」)を
用いて、250℃の温度で窒素を流しながら20分間溶
融混練し、溶融混練処理後のシクロトリエチレンテレフ
タレート濃度を、上記した溶融混練前と同様の方法で測
定した。
【0065】[溶融混練前の融点]ポリエステルブロッ
ク共重合体の溶融混練前の融点は、示差走査熱量計(メ
トラー社製「TA−3000」)を用いて、窒素気流下
で下記の表1に示す行程1〜行程3を順次行って、行程
3での融解ピーク温度として求めた。
【0066】
【表1】
【0067】[溶融混練後の融点]ポリエステルブロッ
ク共重合体を、ラボプラストミル(東洋精機製作所製
「20R200」)を用いて、250℃の温度で窒素を
流しながら20分間溶融混練し、溶融混練処理後の融点
を、上記した溶融混練前の融点の測定と同様の方法で測
定した。
【0068】[フィルムの作製]ポリエステルブロック
共重合体を270℃の温度で熱プレスすることにより、
厚さ100μmのフィルムを作製した。
【0069】[フィルムのシクロトリエチレンテレフタ
レート濃度]このフィルムのシクロトリエチレンテレフ
タレート濃度を、上記した溶融混練前のポリエステルブ
ロック共重合体と同様の方法で測定した。
【0070】[引張強度および引張伸度]上記で作製し
たフィルムから8cm×0.5cmの試験片を採取し、
その試験片を用いて、引張速度200mm/分、温度2
3℃、湿度65%の条件下に引張試験を行って、その引
張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0071】[耐加水分解性]上記で作製したフィルム
から2cm×10cmの試験片を採取し、その試験片を
100℃の熱水中に5日間浸漬し、試験片の浸漬前の固
有粘度に対する浸漬処理後の固有粘度の保持率(%)を
算出して、耐加水分解性の評価とした。
【0072】[フィルムの融点]上記で作製したフィル
ムの融点を、溶融混練前のポリエステルブロック共重合
体の融点の測定と同様の方法で測定した。
【0073】[ブリードアウト状態]上記で作製したフ
ィルムを40℃で3ヵ月間放置した後の、フィルム表面
のブリードアウト状態(表面美麗性)を、○(:全くブ
リードアウトが観察されない)、△(:透明性が低下し
ない程度にわずかにブリードアウトしている)、×(:
多量にブリードアウトして明らかに透明性が低下してい
る)の基準により評価した。
【0074】[ヘイズ]上記でブリードアウト状態を評
価したフィルムを用いて、ヘイズメーター(村上色彩技
術研究所製「反射透過率計HR100」)を使用して、
ヘイズを測定した。
【0075】[弾性糸の紡糸]ポリエステルブロック共
重合体を、単軸押出機付き紡糸機を用いて、紡糸温度2
70℃、紡糸速度1000m/分の条件下で溶融紡糸し
て、75デニール/8フィラメントの未延伸の弾性糸を
製造した。
【0076】[弾性糸のシクロトリエチレンテレフタレ
ート濃度]この弾性糸のシクロトリエチレンテレフタレ
ート濃度を、上記した溶融混練前のポリエステルブロッ
ク共重合体のシクロトリエチレンテレフタレート濃度の
測定と同様の方法で測定した。
【0077】[弾性糸の融点]上記で紡糸した弾性糸の
融点を、溶融混練前のポリエステルブロック共重合体の
融点の測定と同様の方法で測定した。
【0078】[弾性糸の引張強度および引張伸度]上記
で紡糸した弾性糸から長さ5cmの試験片を採取し、そ
の試験片を用いて引張速度200mm/分、温度23
℃、湿度65%の条件下に引張試験を行ってその破断時
の引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0079】また、下記の参考例、実施例および比較例
で用いた化合物とその略号との関係は次の表2に示すと
おりである。
【0080】
【表2】
【0081】《参考例1および2》[芳香族ポリエステ
ル(1)および(2)の製造] 窒素気流下に、テレフタル酸69重量部およびエチレン
グリコール31重量部からなるスラリーをつくり、これ
に0.0080重量部の二酸化ゲルマニウム、0.00
60重量部の亜リン酸および0.0060重量部のテト
ラエチルアンモニウムヒドロキシドを加えた。このスラ
リーを加圧下(絶対圧2.5kg/cm2)で260度
の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエ
ステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1
mmHgの減圧下に、285℃の温度で前記の低重合体
を溶融重合させて、固有粘度0.50dl/gのポリエ
チレンテレフタレートを合成し、これをノズルからスト
ランド状に押出して切断し、円柱状チップとした。次い
で、このポリエチレンテレフタレートチップを150℃
で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置を用
い、0.1mmHgの減圧下に、210℃で固相重合
し、固有粘度0.82のポリエチレンテレフタレートを
得た[芳香族ポリエステル(1)]。さらに、得られた
ポリエチレンテフタレートを95℃の熱水に2時間浸漬
し、2時間後140℃の熱風乾燥機で24時間乾燥した
[芳香族ポリエステル(2))。
【0082】《参考例3》[芳香族ポリエステル(3)
の製造] 窒素気流下に、テレフタル酸69重量部およびエチレン
グリコール31重量部からなるスラリーをつくり、これ
に0.0080重量部の二酸化ゲルマニウム、0.00
60重量部の亜リン酸および0.0060重量部のテト
ラエチルアンモニウムヒドロキシドを加えた。このスラ
リーを加圧下(絶対圧2.5kg/cm2)で260度
の温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエ
ステル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1
mmHgの減圧下に、285℃の温度で前記の低重合体
を溶融重合させて、固有粘度0.33dl/gのポリエ
チレンテレフタレートを合成し、これをノズルからスト
ランド状に押出して切断し、円柱状チップとした。[芳
香族ポリエステル(3)]。
【0083】《参考例4》[芳香族ポリエステル(4)
の製造] 窒素気流下に、テレフタル酸69重量部およびエチレン
グリコール31重量部からなるスラリーをつくり、これ
に0.0080重量部の三酸化アンチモン、0.006
0重量部の亜リン酸および0.0060重量部のテトラ
エチルアンモニウムヒドロキシドを加えた。このスラリ
ーを加圧下(絶対圧2.5kg/cm2)で260度の
温度に加熱して、エステル化率が95%になるまでエス
テル化反応を行って低重合体を製造した。続いて、1m
mHgの減圧下に、285℃の温度で前記の低重合体を
溶融重合させて、固有粘度0.60dl/gのポリエチ
レンテレフタレートを合成し、これをノズルからストラ
ンド状に押出して切断し、円柱状チップとした。次い
で、上記で得られたポリエチレンテレフタレートを15
0℃で5時間予備乾燥した後、転動式真空固相重合装置
を用い、0.1mmHgの減圧下に、210℃で固相重
合し、固有粘度0.82のポリエチレンテレフタレート
を得た。さらに、得られたポリエチレンテフタレートを
95℃の熱水に2時間浸漬し、2時間後140℃の熱風
乾燥機で24時間乾燥した[芳香族ポリエステル
(4)]。
【0084】《参考例5》[脂肪族ポリエステル(1)
の製造] 窒素気流下に、セバシン酸(SbA)の59重量部およ
び3−メチル−1,5−ペンタンジオール(MPD)の
41重量部(ジカルボン酸:ジオール=1:1.2(モ
ル比))を反応器に仕込み、常圧下に200℃の温度
で、生成する水を系外に留去しながらエステル化反応を
行った。反応物の酸価が10以下になった時点で、テト
ライソプロピルチタネート触媒0.025重量部(ジカ
ルボン酸に対するモル比3×10―4倍)を加えて、2
50℃の温度で、200mmHgから100mmHgに
まで徐々に減圧しながら反応を続けた。反応物の酸価が
1.0になった時点で真空ポンプで徐々に真空度を上げ
て反応を完結させた。その結果、固有粘度が0.95d
l/g、水酸基濃度が78μ当量/gおよびカルボキシ
ル基濃度が7μ当量/gのポリエステルが得られた[脂
肪族ポリエステル(1)]。
【0085】《参考例6〜9》[脂肪族ポリエステル
(2)〜(5)の製造] 下記の表3に示す酸成分およびジオール成分を参考例5
と同じモル比で、またはヒドロキシカルボン酸としてヒ
ドロキシカプロン酸100重量部およびテトライソプロ
ピルチタネート触媒0.025重量部を用いた以外は参
考例5と同様にして、表3に示す固有粘度、水酸基濃度
およびカルボキシル基濃度を有する脂肪族ポリエステル
をそれぞれ製造した[脂肪族ポリエステル(2)〜脂肪
族ポリエステル(5)]。
【0086】《実施例1》[ポリエステルブロック共重
合体の製造] 下記の表4に示すように、参考例2で得られた芳香族ポ
リエステル(2)60重量部と、参考例5で得られた脂
肪族ポリエステル(1)40重量部を、270℃の温度
で0.3mmHgの減圧下に220分間反応させた。そ
の後、テレフタロイルビスカプロラクタム(TCL)
0.5重量部を添加して減圧下で30分間反応させた。
その結果、下記の表5に示すように、固有粘度が1.4
8dl/g、水酸基濃度が3μ当量/gのポリエステル
ブロック共重合体が得られた。このポリエステルブロッ
ク共重合体の溶融混練前のシクロトリエチレンテレフタ
レート濃度および融点、250℃で20分間溶融混練し
た後のシクロトリエチレンテレフタレート濃度および融
点を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示す
とおりであった。さらに、フィルムの引張強度、引張伸
度などを上記した方法で測定または評価したところ、下
記の表5に示すとおりであった。
【0087】《実施例2〜7》[ポリエステルブロック
共重合体の製造] 下記の表4に示す芳香族ポリエステル(A')、脂肪族
ポリエステル(B')および添加剤を下記の表4に示す
割合で用いて、下記の表4に示す反応時間で反応させた
以外は実施例1と同様にして、下記の表5に示す固有粘
度、水酸基濃度、カルボキシル基濃度のポリエステルブ
ロック共重合体を製造した。このポリエステルブロック
共重合体の溶融混練前の融点および250℃で溶融混練
した後の融点を上記した方法で測定したところ、下記の
表5に示すとおりであった。さらに、フィルムの引張強
度、引張伸度、耐加水分解性および融点などを上記した
方法で測定または評価したところ、下記の表5に示すと
おりであった。
【0088】《比較例1〜3》[ポリエステルブロック
共重合体の製造] 下記の表4に示す芳香族ポリエステル(A')および脂
肪族ポリエステル(B')を下記の表4に示す割合で用
い、下記の表4に示す反応時間で反応させた以外は実施
例1と同様にして、下記の表5に示す固有粘度、水酸基
濃度、カルボキシル基濃度のポリエステルブロック共重
合体を製造した。このポリエステルブロック共重合体の
溶融混練前の融点および250℃で溶融混練した後の融
点を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示す
とおりであった。さらに、このポリエステルブロック共
重合体のフィルムを製造し、このフィルムの引張強度、
引張伸度、耐加水分解性および融点などを上記した方法
で測定または評価したところ、下記の表5に示すとおり
であった。
【0089】《実施例8》比較例1で得られたポリエス
テルブロック共重合体を、150℃で5時間予備乾燥し
た後、転動式真空固相重合装置を用い、0.1mmHg
の減圧下に190℃で固相重合し、固有粘度1.61の
ポリエステルブロック共重合体を得た。さらに、これを
95℃の熱水に2時間浸漬し、2時間後140℃の熱風
乾燥機で24時間乾燥した。このポリエステルブロック
共重合体の溶融混練前の融点および250℃で溶融混練
した後の融点を上記した方法で測定したところ、下記の
表5に示すとおりであった。さらに、フィルムの引張強
度、引張伸度、耐加水分解性および融点を上記した方法
で測定または評価したところ、下記の表5に示すとおり
であった。
【0090】《実施例9〜15》[弾性糸の製造] 下記の表6に示すように、実施例1〜7で得られたポリ
エステルブロック共重合体を用いて弾性糸を製造した。
この弾性糸のシクロトリエチレンテレフタレート濃度、
融点、引張強度、引張伸度を上記した方法で測定したと
ころ、下記の表6に示すとおりであった。
【0091】《比較例4〜6》[弾性糸の製造] 下記の表6に示すように、比較例1〜3で得られたポリ
エステルブロック共重合体を用いて弾性糸を製造した。
この弾性糸のシクロトリエチレンテレフタレート濃度、
融点、引張強度、引張伸度を上記した方法で測定したと
ころ、下記の表6に示すとおりであった。
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】上記の表3〜表6の結果から、前記した要
件を満たす芳香族ポリエステル(A’)および脂肪族ポ
リエステル(B’)から製造されたポリエステルブロッ
ク共重合体は、シクロトリエチレンテレフタレート濃度
が低く、高温で長時間溶融下で滞留してもシクロトリエ
チレンテレフタレート濃度がほとんど増大しない。また
得られたフィルムを40℃で3カ月以上放置した後も表
面の美麗性を損なうオリゴマーのブリードアウトは全く
観察されなかった。そして、前記した要件を満たす製造
方法によれば、ブロック構造を安定に製造でき、かつ高
温で長時間滞留しても融点が低下していないことから、
ランダム化反応はほとんど生じず、ポリエステルブロッ
ク共重合体が本来有する性能を充分示しているものが得
られる。これらの結果より、高温で溶融滞留させること
が必要なポリエチレンテレフタレートやその他の高融点
重合体との併用下での溶融成形や溶融紡糸などをも円滑
に行うことができることが裏付けられる。
【0097】また、上記の表3〜表6の結果から、熱水
浸漬をしていない芳香族ポリエステル(1)を用いた比
較例1のポリエステルブロック共重合体、およびゲルマ
ニウム化合物以外の触媒で重縮合した芳香族ポリエステ
ル(4)を用いた比較例3のポリエステルブロック共重
合体では、エステル交換反応時の加熱により、シクロト
リエチレンテレフタレート濃度が高く、ブリードアウト
がおきることから美麗性に劣り、溶融下で滞留するとシ
クロトリエチレンテレフタレート濃度がさらに増大して
いる。そして、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステ
ルのエステル交換反応が速いため、安定してブロック共
重合体構造を形成させることが難しく、得られるポリエ
ステルブロック共重合体は、ランダム化反応により融点
が低くなっている。一方、比較例2のポリエステルブロ
ック共重合体は、シクロトリエチレンテレフタレート濃
度が0.6重量%を超え、水酸基濃度が150μ当量/
gを超えている芳香族ポリエステル(3)を用いてエス
テル交換反応させているため、シクロトリエチレンテレ
フタレート濃度が高く、さらに250℃で20分間の混
練後にもランダム化による融点の低下が著しい。
【0098】
【発明の効果】上記の要件を備える本発明のポリエステ
ルブロック共重合体は、表面の美麗性に優れ、かつシク
ロトリエチレンテレフタレート濃度が低いため、シクロ
トリエチレンテレフタレートのブリードアウトにより表
面の美麗性を損なわない。また、高温で長時間溶融滞留
してもシクロトリエチレンテレフタレート濃度は増大し
ないか増大しても僅かである。さらに、高温で長時間溶
融滞留してもランダム化反応が生じないため、高温での
溶融滞留が必要なポリエチレンテレフタレートやその他
の高融点重合体と一緒に高温下に溶融成形したり溶融紡
糸などを行って物性に優れた複合化製品を円滑に製造す
ることができる。そして、本発明のポリエステルブロッ
ク共重合体は、上記要件を備える芳香族ポリエステル
(A’)および脂肪族ポリエステル(B')を用いて、両
方のポリエステルをエステル交換反応させる本発明の製
造方法によって、円滑に製造することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D01F 6/84 303 D01F 6/84 303A

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族ポリエステルセグメント(A)お
    よび脂肪族ポリエステルセグメント(B)からなるポリ
    エステルブロック共重合体であって、 (i)(a)芳香族ポリエステルセグメント(A)が、
    70モル%以上がテレフタル酸単位であるジカルボン酸
    単位および70モル%以上がエチレングリコール単位で
    あるジオール単位からなり; (b)脂肪族ポリエステルセグメント(B)が、60モ
    ル%以上が飽和脂肪族ジカルボン酸単位であるジカルボ
    ン酸単位および60モル%以上が脂肪族ジオール単位で
    あるジオール単位からなる脂肪族ポリエステルセグメン
    ト(B1)、並びに60モル%以上が飽和脂肪族ヒドロ
    キシカルボン酸単位であるヒドロキシカルボン酸単位か
    らなる脂肪族ポリエステルセグメント(B2)、の少な
    くとも一方からなり; (ii)芳香族ポリエステルセグメント(A)/脂肪族ポ
    リエステルセグメント(B)の重量比が95/5〜20
    /80であり; (iii)250℃で20分間溶融滞留させるに際し、溶
    融滞留前に含有されるシクロトリエチレンテレフタレー
    トの濃度が0.6重量%以下であり、溶融滞留後に含有
    されるシクロトリエチレンテレフタレートの濃度が0.
    7重量%以下である;ことを特徴とするポリエステルブ
    ロック共重合体。
  2. 【請求項2】 水酸基濃度が10μ当量/g以下である
    請求項1に記載のポリエステルブロック共重合体。
  3. 【請求項3】 カルボキシル基濃度が20μ当量/g以
    下である請求項1または2に記載のポリエステルブロッ
    ク共重合体。
  4. 【請求項4】 ポリエステルブロック共重合体の製造方
    法であって、(a')70モル%以上がテレフタル酸で
    あるジカルボン酸、および70モル%以上がエチレング
    リコールであるジオールを、ゲルマニウム化合物の存在
    下で重縮合反応して得られ、且つシクロトリエチレンテ
    レフタレートの濃度が0.6重量%以下である芳香族ポ
    リエステル(A');並びに(b')60モル%以上が飽和
    脂肪族ジカルボン酸であるジカルボン酸、および60モ
    ル%以上が飽和脂肪族ジオールであるジオールを重縮合
    反応して得られる脂肪族ポリエステル(B1')、並びに
    60モル%以上が飽和脂肪族ヒドロキシカルボン酸であ
    るヒドロキシカルボン酸を重縮合反応して得られる脂肪
    族ポリエステル(B2')、から選ばれる少なくとも1種
    の脂肪族ポリエステル(B')を、芳香族ポリエステル
    (A')/脂肪族ポリエステル(B')の重量比が95/5
    〜20/80の割合でエステル交換反応させる工程;並
    びに上記のエステル交換反応に付する芳香族ポリエステ
    ル(A')を予め50〜150℃の水または水蒸気に5分
    間〜50時間接触させ、次いで80〜150℃の温度で
    1〜50時間乾燥させる工程および/または上記のエス
    テル交換反応により得られる生成物を50〜150℃の
    水または水蒸気に5分間〜50時間接触させ、次いで8
    0〜150℃の温度で1〜50時間乾燥させる工程から
    なることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルブ
    ロック共重合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 芳香族ポリエステル(A’)および脂肪
    族ポリエステル(B’)として、それぞれ水酸基濃度が
    150μ当量/g以下であり、且つその固有粘度が0.
    4dl/g以上であるものを用い、生成物の水酸基濃度
    が10μ当量/g以下となるようにエステル交換反応さ
    せることを特徴とする請求項4に記載のポリエステルブ
    ロック共重合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 エステル交換反応時に、さらに水酸基と
    反応し得る官能基を有する沸点が200℃以上の化合物
    を添加することを特徴とする請求項4または5に記載の
    ポリエステルブロック共重合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポ
    リエステルブロック共重合体からなる成形品。
  8. 【請求項8】 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポ
    リエステルブロック共重合体からなる繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002338673A (ja) * 2001-05-16 2002-11-27 Teijin Ltd 生分解性ブロック共重合体の製造法
JP2005126490A (ja) * 2003-10-21 2005-05-19 Asahi Kasei Chemicals Corp 脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸粒状結晶化物及びその製造方法
JP2007217536A (ja) * 2006-02-16 2007-08-30 Tosoh Corp 熱可塑性樹脂

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