JPH11263837A - デンドリマ―系ナノ構造スポンジと金属の複合体 - Google Patents

デンドリマ―系ナノ構造スポンジと金属の複合体

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JPH11263837A
JPH11263837A JP11006781A JP678199A JPH11263837A JP H11263837 A JPH11263837 A JP H11263837A JP 11006781 A JP11006781 A JP 11006781A JP 678199 A JP678199 A JP 678199A JP H11263837 A JPH11263837 A JP H11263837A
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Lajos Balogh
バロフ ラヨス
Agnes M Deleuze-Jallouli
エム.デルーズ ジャルリ アニュ
Petar R Dvornic
アール.ドボルニク ペタル
Michael J Owen
ジェイ.オーウェン マイケル
Susan Victoria Perz
ビクトリア ペルズ スーザン
Ralph Spindler
スピンドラー ラルフ
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 明確に規定された親水性と親油性(疎水性)
のドメインからなるデンドリマー系架橋物を、(i) 無機
及び有機カチオン、(ii)求電子的構成原子又は原子基を
持つ荷電又は分極化分子及び(iii)他の求電子的有機、
無機又は有機金属種などの求電子的ゲスト残基のナノ構
造スポンジ(吸収体)として機能させる。 【解決手段】親水性ドメインを形成する親水性デンドリ
マーと疎水性有機シリコーン化合物を反応させ、半径方
向層状に親水性内部層と疎水性有機シリコーン外部層を
持つデンドリマー系架橋物を製造し、これら共有結合マ
トリックスの不可欠部として有機シリコーンユニットを
含むデンドリマー系架橋物を無機カチオンなどのナノ構
造スポンジ(吸収体)として機能させ、新規なナノ構造
有機-無機複合体を生成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は共有結合的に架橋し
た、金属、金属イオン、金属酸化物、金属硫化物、金属
塩、又は水溶性有機及び有機金属分子と錯化し、それを
カプセル化する、ナノ構造の親水性ドメインを有するデ
ンドリマー系架橋物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】デンド
リマーが、より小さな残基、例えば有機分子及び無機イ
オン等の、しっかりとした、共有結合的に結合した表面
包み込み型ナノ構造化プセル化剤として機能するという
概念は、大いに注目されてきた。 ポリ(アミドアミン)
(PAMAM)デンドリマーの希釈溶液粘度測定法の結果か
ら、対称分岐セルを持つデンドリマーの分子内密度は、
コアからの半径方向距離に応じてある世代層で最小値に
なるまで減少し、それより上部層ではその傾向が逆転
し、デンドリマー外部層半径の増大と共に分子内密度が
増加しはじめると考えられてきた( D. A. Tomalia et
al.,Journal of the American chemical Society, Volu
me 109, Pages 1601-1603,(1987))。
【0003】引き続いての、種々のデンドリマーを用い
た実験から、この仮説が正確であり、また、デンドリマ
ーが、(i)より小さなゲスト分子のホストとなる比較的
柔軟な海綿状内部と、(ii)溶媒又は古典的有機及び/又
は無機試薬などの小分子は浸透できるが、高分子量重合
体、他のデンドリマー又はその一部を浸透できない濃厚
外部殻を持つ、球状ナノ構造体であることが明らかにな
った(P.R. Dvornic etal, Polymeric Materials Scienc
e & Engineering ,Volume 77, Pages 116-117,(199
7))。
【0004】例えば、PAMAMデンドリマーが、pHに依存
して、Cu2+カチオンと錯化し、Cu2+カチオンをその内部
にカプセル化することが示されている(M. F. Ottavian
i etal,Journal of the American chemical Society, V
olume 116,Pages 661-671,(1994))。また、デンドリマ
ー表面を疎水物質で改質した後では、さもないと不溶の
Cu2+カチオンが、トルエンなどの有機溶媒に可溶化した
(Y.Sayed-Sweet et al., Journal of Materials chemis
try,Volume 7(7), Pages 1199-1205, (1997)例が記述さ
れている。
【0005】また、(i)ポリ(プロピレンイミン )(PPI)
デンドリマーが、染料やラジカル類などの小分子用分子
ボックスとして機能し(J. F. G. A. Jansen et al., Sc
ience, Volume 266, pages1226-1229,(1994));(ii)い
わゆるアルボロール類が、その内部で、外部から配送さ
れてきたo-カルボランなどの他試薬と結合できる化学的
反応性を持つこと(G. R. Newkome et al,Angew.Chem.In
t. Ed. Engl.,Volume33, Pages 666-668,(1994),;及び
(iii) モノマー、又はモノマー及び開始剤がPAMAMデン
ドリマーの内部に配送され、その内部に包接される場
合、そのPAMAMデンドリマーが、重合反応用の不活性、
閉じこめ型ナノ構造反応装置として使用できること(V.
U.Wege et al,Polymer Preprints, Volume 36, Nurmber
2, Pages 239-240,(1995))が述べられている。.
【0006】しかしながら、これら参照例は、純粋なデ
ンドリマーのみを使用して得た結果を述べたものであ
る。本発明の、デンドリマー系架橋体、特にシリコーン
含有デンドリマー系材料のカプセル化能を利用すること
に関しては、先行技術では全く開示されていない。既知
の純粋なデンドリマーが高粘度液又は非晶質固体のいず
れかであることからして、本発明は予想できなかったこ
とであり、ユニークである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、親
水性及び疎水性ナノ構造ドメインを有するデンドリマー
系架橋物中に、吸着、吸収又はカプセル化された(i)金
属カチオン、(ii)金属塩、(iii)金属酸化物、(iv)元素
金属、(v)水溶性有機分子、又は(vi)水溶性有機金属分
子が含まれる組成物であって、そのデンドリマー系架橋
物が、親水性内部と末端に反応性末端基を持つ疎水性有
機シリコーン外部とを有する半径方向に層状になった共
重合デンドリマー架橋生成物であり、その共重合デンド
リマーが、溶媒存在下、-NH2表面基を持つ親水性デンド
リマーと有機シリコーン化合物とを反応させることで製
造されることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、先行技術とは対照的
に、半径方向に層状になった共重合(アミドアミン-有機
シリコーン) (PAMAMOS)デンドリマー、又は半径方向に
層状になった共重合(プロピレンイミン-有機シリコー
ン)(PPIOS)デンドリマーから合成され、(i) 様々の金属
カチオンや水溶性有機分子をそれらの水溶液から吸収
し、カプセル化できるナノ構造スポンジとして機能で
き、また、(ii)それらの弾性体又はプラストマー的架橋
体中にカプセル化されたゲストイオン及び分子の様々の
物理的及び化学的変換用のナノ構造反応器として機能で
きる、初めてのデンドリマー系弾性体又はプラストマー
に関する。いずれの場合も、得られた生成物は有機シリ
コーン単位をその共有結合的に結合された構造体の一体
部分として持つ、新規なナノ構造有機-無機複合体 であ
る。
【0009】本発明での、これらPAMAMOS及びPPIOS架橋
体に対してなされる修飾により、それらを用いて得られ
る製品は多くのユニークな用途を持ち、高分子弾性体、
プラストマー、塗料、センサー、スマート材料、膜、バ
リア、o-リング、ガスケット、シーラント、絶縁体、導
体、磁性材料、剥離表面、吸収剤、移植組織、センサ
ー、指示薬及び照射感光材料などの製造に用いられる。
さらに、PAMAMOS及びPPIOS架橋体の成形は、種々の配
置とデザインを持つ鋳型内で行われるので、これらシリ
コーン含有デンドリマー系架橋体コンポジットは、様々
な形とサイズの製品に都合良く加工される。これは、通
常粘性液又は非晶質固体で、エンジニアリング樹脂材料
で見いだされる有用な機械的性質を持たない純粋デンド
リマーと比較した時、本発明が持つ際だった利点であ
る。
【0010】この発明では、半径方向に層をなす共重合
(アミドアミン-有機シリコーン)デンドリマー(PAMAMOS)
又はPPIOSデンドリマーなどの他の関連デンドリマーか
ら製造される、親水性内部と有機シリコーン外部を有す
るシリコーン含有デンドリマー系架橋体が提供される。
本発明のシリコーン含有デンドリマー系架橋体は、(a)
金属カチオン又は元素金属と錯化し、及び/又はカプセ
ル化し;(b)錯化金属カチオンと無機、有機又は有機金
属試薬との反応で生成した無機又は有機金属生成物をカ
プセル化し;また、(c)外周囲から拡散で架橋体中に送
られてくるか又は架橋体内部での化学的又は物理化学的
変換で生成する水溶性有機金属分子をカプセル化する。
【0011】PAMAMOSデンドリマー及びPAMAMOS系デンド
リマー架橋体の合成法は、一般的に、我々の特許US-A
5,739,218及びEP-A 0,882,755又は我々の米国特許出願
08/897,943及びEP特許出願 98113972.7.に記述されて
いる。また、これらPAMAMOS又はPPIOSデンドリマー系架
橋体の特性は、それらの合成に用いる特殊なデンドリマ
ー前駆体の型と構造に依存する。この中には、(i)PAMAM
又はPPI内部の世代の型式とサイズ;(ii) 有機シリコー
ン(OS)外層数などの型式とサイズ;(iii)PAMAMOS又は
PPIOSデンドリマーにおける、PAMAM又はPPI内部と有機
シリコーン(OS)部の相対的割合;(iv) PAMAM又はPPIとO
S部分を結合する共有結合形式、及び(v)PAMAMOS又はPPI
OSデンドリマーを架橋体に接合する共有結合形式などが
含まれる。
【0012】PAMAMOS、並びにPPIOS架橋体の独特の構造
により、(i)種々の金属カチオンをそれらの塩の水溶液
から捕捉、カプセル化、又は錯化する方法;及び(ii)様
々な水溶性又は水不溶性の、元素金属、金属酸化物、金
属硫化物又はその他の金属塩などの無機生成物を生成
し、またそれら生成物を架橋体中にカプセル化させ残存
させる、これらカチオンとの反応遂行の種々の方法が提
供される。
【0013】本発明により、当業者は、デンドリマー架
橋体を、正確に制御されたナノ構造サイズドメインと所
定の分布を有し、フイルム、シート、被膜、膜又は他の
形態で入手可能な、金属又は無機生成物を分散させるマ
トリックスとして機能させ、種々のナノ構造有機-無機
複合材料を製造できる。また本発明により、当業者は、
弾性体デンドリマーの親水性架橋体ドメイン中に選択的
に水溶性有機又は有機金属分子をカプセル化でき、ま
た、水不溶性有機及び有機金属分子を弾性体デンドリマ
ーの疎水性架橋体ドメイン中に選択的にカプセル化でき
る。
【0014】このようにしてカプセル化される有機及び
有機金属分子の幾つかの代表例として、顔料;染料;指示
薬;光又は照射増感剤;触媒;電気伝導性材料;非線形光学
材料;液晶性材料;発光材料;蛍光性材料;燐光性材料;重
合性単量体;重合開始材料;バイオメディカル材料;医薬
製品;生物活性又は不活性材料;防腐剤;表面活性剤;並び
に反応性、非-反応性、官能性又は非-官能性化合物など
が挙げられる。
【0015】カプセル化されたゲスト原子又は分子を含
むPAMAMOS又はPPIOS架橋体は、化学;化学工学;生物化
学;生物学;医化学;材料科学及び工学;表面科学及び工
学;触媒;反応装置設計;物理;膜又はバリヤー科学及び工
学;照射と材料の相互作用;化粧品及びパーソナルケア
ー;農芸化学;電子、光-電子及び電気科学及び工学;高分
子科学及び工学; 冶金、セラミック科学及び工学;クロ
マトグラフ技術;浄水法;核廃棄物処理;化学、生物学又
はセンサー材料;及び希土類金属の採集に利用される。
【0016】本発明は、一般的には、シリコーン修飾PA
MAM及びPPIデンドリマーの製造、特性評価及び応用に関
するものである。我々は、特許出願US-A 5,739,218中
で、半径方向に層をなしたPAMAMOS類デンドリマーの合
成と表面特性を記述し、;EP出願明細書 98113072.7で、
親水性及び疎水性ナノ構造ドメインを含むPAMAMOS-及び
PPIOS系デンドリマー架橋体の製造法を記述した。この
明細書では、これらPAMAMOS又はPPIOS架橋体を、(i)様
々な金属カチオン、元素金属及び水溶性小有機分子の選
択的、非-選択的、可逆的、非可逆的吸収及び/又は捕獲
のための弾性的又は可塑的ナノ構造分子スポンジとし
て、また、(ii) 金属カチオンの元素金属への還元、金
属酸化物、金属硫化物又は他の塩の生成、化学反応によ
る捕獲有機分子の変換及び捕獲有機基質と金属カチオン
の反応による有機金属化合物の生成などが含まれる、カ
プセル化された分子種の物理化学的変換のための閉じこ
め型ナノ構造反応器として利用することについて記述す
る。
【0017】本発明のPAMAMOS又はPPIOS架橋体スポンジ
により、周期律表第1族元素を除いた全ての金属カチオ
ンが吸収されカプセル化される。これら吸収される金属
カチオンの代表的例として、Cu1+,Cu,2+ Fe2+, Fe3+,Au
3+, Ag+, Rh3+, Ni2+及びCd2 +が挙げられる。有機分子
もまたカプセル化でき、それらの代表例としてC37H27N 3
03・2NaSO3 (メチレンブルー)、C15H15N302 (メチルレッ
ド)及びPilot(商標)Razor Point IIペンにある緑色イ
ンクが例示される。他金属カチオン、有機分子及び有機
金属水溶性分子もまた、本発明の架橋体スポンジでカプ
セル化できる。
【0018】我々が知る限りでは、EP出願 98113972.7
のPAMAMOS及びPPIOS架橋体が、弾性係数、引っ張り強
度、伸張性、伸び率などの、具体的で、測定可能な材料
物性を持った最初のデンドリマー系製品であり、また比
較結果からは、他の既報デンドリマー及び/又はデンド
リマー系製品は、粘性液体か又は非晶質固体である。
【0019】この発明によれば、PAMAMOS又はPPIOS架橋
体は、(i)広範の金属カチオンをその水溶液から吸収
し、カプセル化する、ナノ構造分子スポンジとして使用
され;(ii)乾燥状態及び水又は有機溶媒に浸漬した状態
で、このようにして吸収された金属カチオンを長期間保
持するのに使用され; また(iii)適切な輸送原動力を与
えた時に、前述した捕獲金属カチオンを再度、周囲媒体
に可逆的に放出させたり、吸収させるのに使用される。
【0020】また、本発明は、有機染料、単量体、開始
剤、触媒及び医薬活性化合物などの様々の水溶性有機分
子を吸収し、カプセル化するPAMAMOS又はPPIOSデンドリ
マー系ナノ構造分子スポンジに関する。さらに、この明
細書中で、PAMAMOS又はPPIOSデンドリマー系架橋体が、
他の方法では最も溶解が困難な金属カチオンをも含む、
吸収、カプセル化した金属カチオンをそれらの元素金
属、他の金属塩、金属酸化物又は金属硫化物に変換する
レドックス反応を行うための規則的に分布したナノ構造
反応器の連続媒体を提供できることを開示した。
【0021】さらに、これらPAMAMOS又はPPIOSデンドリ
マー系架橋体では、その架橋体中に保持されるか、同様
に吸収、カプセル化された他の有機試薬、金属又は金属
カチオンとの反応に用いられる吸収、カプセル化された
水溶性有機分子に対して、様々な物理的又は化学的変換
を加えることができ、様々な有機又は有機金属化合物及
び混合物の生成手段が提供される。この発明の目的のた
めのPAMAMOS又はPPIOS架橋体は、それ全体に均一に分布
した親水性(PAMAM又はPPI)及び親油性(0)ナノ構造ドメ
インを持つ架橋PAMAMOS又はPPIOSデンドリマーを意味
し、包含する。親水性PAMAM又はPPIドメインサイズは、
PAMAMOS又はPPIOSデンドリマー前駆体の合成に使用した
PAMAM又はPPIデンドリマーの選択で前もって定義され
る。親油性有機シリコーン(OOS)ドメインの相対的質量
比とサイズは、PAMAMOS又はPPIOS架橋体前駆体合成時に
PAMAM又はPPIデンドリマー周りに構築される有機シリコ
ーン層の数と構造であらかじめ決定される。また、ネッ
トワーク形成反応に使用する架橋試薬の形式によっても
前もって決定される。隣接する親水性PAMAM又はPPIドメ
インを連結する形式と架橋結合長さは、架橋反応に用い
たPAMAMOS又はPPIOSデンドリマー上の有機シリコーン表
面基の形式であらかじめ決定され、また、架橋体生成反
応で使用する架橋剤(それを使用する場合)の形式によ
っても前もって決定される。
【0022】図1は、PAMAMOS又はPPIOSデンドリマー系
架橋体を式的に表示したものであり、図中、円は基礎デ
ンドリマーPAMAM又はPPI部分を示す。図2は、図1で示し
たPAMAMOSデンドリマー系架橋体の製造に使用するPAMAM
デンドリマー、特に、エチレンジアミン(EDA)コア、の
第一世代(G1)デンドリマーを示したものである。図3
は、図2で示したG1デンドリマー、EDAコアのPAMAM繰り
返し単位構造を示したものである。図2から分かるよう
に、親水性PAMAMドメインには、第三アミン分岐接合点
とアミド接合基があり、それらが求電子的配位子用の強
力配位サイトになっている。
【0023】その結果、このようなPAMAMドメインによ
り、PAMAMOSデンドリマー架橋体に高局在濃度配位サイ
トが付与され、求電子性ゲストに対して強い吸引力が発
現する。また、これにより求電子性ゲストが媒体外側か
ら架橋体のPAMAMドメインへの移動するための強い駆動
力が生じる。この現象は後述の実施例で説明される。ま
た、このことは、有機又は無機基質の性質に関係なく、
いずれの水溶性求電子性基質に対してもあてはまるこれ
ら材料の特性であった。それ故、この現象は、この明細
書の実施例で記述される水溶性求電子性基質だけでな
く、他の水溶性無機カチオン並びに荷電又は分極化有機
及び/又は有機金属分子にも関係する。
【0024】この明細書中で、本発明のPAMAMOSデンド
リマー及びそれらの架橋体に関係して記述した諸特徴
は、それらと密接に関係したPPIOSデンドリマー及び他
の親水性内部層と有機シリコーン外部層を半径方向に層
状に持つ共重合デンドリマーから製造した架橋体で発現
することも期待できる。
【0025】PAMAMOS前駆体は、その表面が官能性有機
シリコーン残基で部分的に又は完全に修飾されたPAMAM
デンドリマーから得られる。PPIデンドリマーからも、
同様な方法で関連する前駆体が製造される。このような
前駆体は、我々のUS-A 5,739,218の主題である。このよ
うな半径方向に不均一な分子組成物であるデンドリマー
の合成は、親水性層及び疎水性層の異なる組み合わせに
基づいている。これらデンドリマーで組み合わされた構
造ユニットは、(a)-[(CH2)2-CO-NH-(CH2)2-N]=のような
水溶性アミドアミン繰り返し構造又は-[(CH2)3N]=の様
な水溶性ポリ(プロピレンイミン)繰り返し構造、及び
(b)疎水性有機シリコーン構造である。
【0026】本組成物は疎水性有機シリコーン外部層を
有する親水性PAMAM又はPPI内部層として組織化される。
この有機シリコーン層の性質は、デンドリマー構造その
ものの構造パラメータと同様、コアー官能基、分岐の長
さと官能基、各異層の世代、すなわちそれらの相対的厚
みに応じて変更できる。このようなデンドリマーの一般
的構造及びそれらの生成は、以下の図式で簡単に示され
る。
【化1】
【0027】好ましい有機シリコーン修飾剤として、(3
-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-
アクリロキシプロピル)ビス(ビニルジメチルシロキシ)
メチルシラン、ヨードメチルジメチルビニルシラン、ク
ロロメチルジメチルビニルシラン、並びに他の(3-アク
リロキシプロピル)-官能性シラン又は他のハロアルキル
-官能性シランが例示される。
【0028】PAMAMOSデンドリマーは官能性、球状、ナ
ノ構造の、直径サイズが1〜15nmの高分子である。数平
均分子量は1,200〜1,000,000で、共有結合的に結合した
親油性(疎水性)有機シリコーン外殻でカプセル化され
た親水性PAMAM内部を持つ。そのため、PAMAMOSデンドリ
マーが反応性シリコーン-官能基をその外部表面に持つ
時、PAMAMOS含有デンドリマー様架橋体を制御又は非制
御合成するのに適したものとなる。
【0029】外部表面の反応性官能基には、(CH3)3-z-y
XzWySi-残基が含まれる。ここで、XとWは反応性基;zは
1、2又は3;及びyは0、1又は2を示す。本発明の目的のた
めには、-NH2、-NR2、メルカプト(-R'SH)、ビニル(-HC=
CH2)、アリル、水素、ハロゲン、アセトキシ-O(O)CC
H3、ウレイド及びアルコキシ又はアリールオキシ-ORな
どを含む、いかなる反応性シリコーン-官能基X又はWを
使用できる(ここで、Rは1〜6炭素原子のアルキル、又
はフェニルなどのアリール;及びR'は対応するアルキレ
ン又はアリーレン基を示す)が、アルコキシ基-ORが最も
好ましい。さらに、Wは反応性又は非反応性基であって
も良いが、その場合はWは、好ましくは、-CH3又は-Xと
異なる。
【0030】PAMAMOS又はPPIOSデンドリマーをデンドリ
マー系架橋体に架橋するのは、以下に例示する異なる反
応形式のいずれによっても、容易に達成できる。(1)≡S
iCH=CH2、≡Si-CH2-CH=CH2、≡Si-R-SH又は≡SiH表面官
能化デンドリマーに対するヒドロシリル化又はチオール
付加などの接触付加反応;(2)≡SiCl又は≡Si-OR表面官
能化デンドリマーに対する上記又は水による加水分解な
どの、自己触媒反応;(3)マイケル付加などの非接触付加
反応;(4)縮合反応。
【0031】架橋は一種以上の小分子又はオリゴマ状の
(i)二官能性試薬A2、(ii)三官能性試薬A3、(iii)多官能
性試薬Ax(ここでXは4以上)、又は(iv)単に大気から
の蒸気を使用するか意図的に水を添加するなどの、添加
反応基質の存在又は非存在下で遂行できる。代表的な
A2,A3及びAxは、有機ハロシラン、テトラハロシラン、
有機シラノール、ジアルコキシシラン又はトリアルコキ
シシランなどの有機(オルガノオキシシラン)、有機-H-
シラン;有機アミノシラン;アセトキシシラン類などの有
機アシルオキシシラン;有機シラセスキオキサン;ウレイ
ド-置換シラン;ビニル-置換シラン及びアリル-置換シラ
ンである。これらに対応する有機又は有機金属化合物も
また、都合良く使用可能である。
【0032】得られたエラストマーは清浄で、高度に透
明な物質であり、低ガラス転移温度(Tg)と高度の熱又は
熱-酸化安定性を有している。これらの物性パラメータ
の正確な値は、もちろん、PAMAM又はPPIデンドリマーと
使用した有機シリコーン試薬、得られたPAMAMOS又はPPI
OS共重合デンドリマーでのそれらの相対的含有量、構築
外部有機シリコーン層数、及び試薬A2,A3及びAxの相対
的量に依存する。これらのユニークな内部構造により、
図1で示したように、親油性かつ弾性の有機シリコーン
マトリックス中で共有結合で連結された、正確に制御さ
れたナノ構造サイズの均等分布親水性ドメインが得られ
る。
【0033】本発明の弾性体は、(i)機械的に安定であ
り;(ii)独特な分離と膨潤特性を示し;(iii)薄いフィル
ム、膜、又は非粘着表面を有する塗膜として得られ;(i
v)種々の他の形に成形でき;(v)充填剤、抗酸化剤及びシ
リコーン弾性体製造時に一般的に使用される他の材料等
の、様々の添加剤を配合することができる。
【0034】
【実施例】後述の実施例で、デンドリマー系ナノ構造ス
ポンジの利用法;及びデンドリマー系架橋体と無機、有
機又は有機金属試薬からの種々のナノ構造分子複合体の
調製法を説明する。これら実施例では、特に、(a)種々
の金属カチオンの吸収及びカプセル化 ;(b)種々の水溶
性有機分子の吸収及びカプセル化;(c)架橋体中にカプセ
ル化された金属カチオンからの還元による対応元素金属
の生成及びデンドリマー系架橋体にカプセル化された金
属カチオンから、対応する金属酸化物、金属硫化物の生
成などのカプセル化金属カチオンの変換について記述す
る。
【0035】種々の金属-PAMAMOS架橋体ナノ構造複合体
の調製法を記述する後記実施例において、PAMAMOS架橋
体フィルムの予備成形ディスクは小片(以後、試料と言
う)に切断され、実施例で述べるようにして使用され
る。試料は処理の最初の時点ではいつも疎水性で、使用
した塩水溶液の表面上に浮かぶ。全ての場合、金属塩溶
液による処理で、表面特性及び試料密度の両方が変化
し、これら試料は、通常、それぞれの操作の終了時まで
に、自動的に塩溶液表面下に浸漬する。
【0036】[実施例 1] (3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランを用
いた第三世代(G3)EDAコアPAMAMデンドリマーの修飾によ
るPAMAMOSデンドリマーの調製 この合成で用いた全てのガラス器具は、最初に加熱オー
ブンで一晩乾燥させた後、まだ熱いうちに組み立てた。
窒素導入口、ストッパー、及び頂部ストッパー付きコン
デンサーを備えた三つ口丸底反応フラスコを用いた。こ
の装置を真空ポンプで真空にし、ヒートガンを用いて、
窒素-真空パージサイクルで乾燥した。装置を室温まで
冷却後、Drierite(商標)を通過させて予備乾燥した窒
素で満たし、乾燥窒素の強い向流下、ストップコックを
ゴム隔膜に交換した。ゴムバルーンをコンデンサー頂部
につけ、装置全体にわずかな過圧がかかるようにした。
注入器は同様にオーブン中で一晩乾燥し、使用するまで
デシケーター中に保存した。フラスコに入っているデン
ドリマーを、高真空下、一晩、凍結乾燥し、2.08g(0.30
mmol;-NH基19.32mmol)のデンドリマーを得た。そのフラ
スコを乾燥窒素でフラッシュし、ストップコックをゴム
隔膜に交換した後、デンドリマーに、19mLの無水メタノ
ールをゴム隔壁を通して注入器経由で加えた。デンドリ
マーが溶解し終わったところで、得られた溶液を他の注
入器で装置に移した。 この溶液に、5.5mL(23.18mmol;-
NHに対して1.2過剰)の(3-アクリロキシプロピル)メチル
ジメトキシシランH2C=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)2CH3を加
え、その混合物を窒素雰囲気下、室温で、全反応時間攪
拌した。デンドリマー表面修飾%は、1H 核磁気共鳴(NM
R)で測定した。この測定で、1mL量の反応混合液を用い
た。試料を注入器で除去し、ゴム隔壁と窒素導入口を持
つ他の二つ口丸底フラスコに移した。メタノールを真空
除去し、0.7mLの重水素化クロロホルム(CDCl3)で置換し
た。得られたPAMAMOSデンドリマーは無水環境下で保存
する限り安定であった。合成を完全なものにするため、
クロロホルム(5mLづつ)を反応混合液に、最初は24時間
毎、三日後からは一日おきに添加した。全反応時間の5
日後に、反応混合液の全溶媒を真空下、蒸発させ、溶媒
を9mLの純粋クロロホルムで置換した。溶媒組成の変化
を、-NHデンドリマー表面修飾の%と共に、表1にまとめ
た。
【0037】
【表1】第三世代EDAコアPAMAMデンドリマーからのPAMA
MOSデンドリマーの調製
【0038】87% NH置換のところで、CDCl3中で1H NMR
測定を行い、次の結果を得た。:
【数1】
【0039】CDCl3中での、13C NMR測定で次の結果を得
た。:
【数2】
【0040】未反応アクリル酸エステル試薬:
【数3】
【0041】[実施例 2] 親油性有機シリコーンと親水性ポリ(アミドアミン)ナノ
構造ドメインを有するPAMAMOSデンドリマー系架橋体の
製造 24時間の反応時間後、分子当たり84.5メトキシシリル末
端基を有する、実施例1の方法で得たPAMAMOSデンドリマ
ーを架橋体製造に用いた。 1 mLの反応混合物(1 mLのメ
タノール中、0.015 mmolのデンドリマーと0.5 mmolの(3
-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランを含
む)を反応装置から取り出し、開放アルミニウムパンに
注ぎ入れ、塵汚染を防ぐ意味で緩くアルミフォイルで覆
って、大気に曝した。大気水分との接触及び塩基性PAMA
Mデンドリマー内部の存在下、メトキシシリル-表面基の
加水分解が、メタノールの副生と溶媒のゆっくりとした
蒸発を伴って、ゆっくり進行した。この反応の進行を監
視するため、試料の入ったアルミニウムパン重量を、全
反応時間の5日後の、さらに重量変化が見いだされなく
なるまで、定期的に測定した。得られた架橋体試料の熱
的性質を、窒素雰囲気下、示差走査熱量測定(DSC)及び
熱重量分析(TGA)で行った。.DSC分析は、-20℃〜100℃
で、加熱速度10℃/分で行い、TGAは室温(20〜25℃)〜
1,000℃、加熱速度20℃/分で行った。製造後一ヶ月目の
ガラス転移温度(Tg)は-7℃であった。TGAでは200℃まで
重量減量は全く見いだされなかったが、それ以上の温度
の290℃と380℃で、サーモグラムに二個の極大が観察さ
れた。290℃での重量減量は原重量の17%であり、380℃
での重量減量は原重量の71%であった。
【0042】[実施例 3] PAMAMOSデンドリマー系架橋体のメチレンブルー水溶液
への透過性 実施例 2で製造したPAMAMOS架橋体試料の円盤状切り出
し物を、シリンジに取り付けられたフィルタホルダーに
置き、組立物全体を真空瓶に接続した。メチレンブルー
水溶液(濃度 = 2.71 x 10−3 mol/L)をシリンジに導入
し、真空瓶を部分真空した。最初は、メチレンブルー
は、ろ過装置を青色滴として通過することで示されるよ
うに、膜を浸透したが、しかる後、その膜は不浸透性に
なり、メチレンブルーは流下しなくなった。フィルタホ
ルダーを開放した際、元来無色の完全透明膜が、この実
験期間中に、わずかに青色に変化していることが観察さ
れた。この色は膜を水中で数回洗浄しても洗い落とすこ
とはできなかった。また、この青色フィルムの再使用を
試みたが、水は不浸透になっていた。このことは、親水
性メチレンブルーが、架橋体PAMAMドメイン内にカプセ
ル化され、水分子すらも、さらに浸透するのを妨げてい
ることを明確に指示していた。
【0043】[実施例 4] 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体におけるメチ
レンブルーのカプセル化 メチレンブルー水溶液を調製し、実施例 2で調製したPA
MAMOS架橋体試料をメチレンブルー水溶液に24時間浸漬
した。得られた試料は青色で、その色彩は、水洗浄、水
浸漬を数回行ったあとでも残留していた。
【0044】[実施例 5] 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体におけるメチ
ルレッドのカプセル化 メチルレッドのアセトン溶液を調製し、実施例 2で調製
したPAMAMOS架橋体試料をメチルレッドのアセトン溶液
に24時間浸漬した。得られた試料はオレンジ色で、その
色彩は、水又はアセトンによる数回にわたる繰り返し洗
浄、浸漬後でも残留していた。
【0045】[実施例 6] 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体におけるグリ
ーンインクのカプセル化 Pilot(商標) Razor Point IIペンから得たグリーンイン
クを水に溶解し、実施例 2で製造したPAMAMOS架橋体
を、その溶液に24時間浸漬した。得られた試料は明るい
緑色で、その色彩は水での数回にわたる洗浄、浸漬繰り
返し後でも残留していた。
【0046】[実施例 7] 銅(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体の
製造 実施例 2で製造したPAMAMOS架橋体試料(21.84 mg)を、
硫酸銅水溶液[濃度(c)= 0.44 mol/L]に16時間浸漬し
た。試料はこの処理中に鮮やかな青色に変化し、その色
彩は、純水による数日間に渡る数回の洗浄、浸漬繰り返
し後でも、残留していた。試料を真空下、一晩、乾燥し
た後、その重量を測定したところ、24.00mgであった。
得られた試料の熱特性を、窒素雰囲気下、DSC及びTGAで
測定した。DSC は、-100℃〜100℃の範囲で、加熱速度1
0℃/分で行い、TGAは室温〜1,000℃の範囲で、加熱速度
20℃/分で行った。試料のTgは44.6℃であり、また、重
量減量極大が、それぞれ、275℃(この段階の重量減量
は原重量の15%)と360℃(重量減量は原重量の59%)
の二段階分解過程をとっていた。75℃で始まり146℃で
最大になる、原重量の2.6%に当たる重量減量が起きた
が、これは架橋体の安定性には関係しておらず、試料の
親水性ドメインにトラップされた水が放出されることを
示していた。
【0047】[実施例 8] 実施例 7の銅(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構
造複合体からの銅(II)の放出 実施例 7の銅(II)含有PAMAMOS架橋体を、0.1N 塩酸水溶
液に20時間浸漬した後、その酸溶液から取り出した。水
洗を数回行った後、さらに数時間、水に浸漬した。この
処理により、試料の完全な変色が起き、この実験操作終
了時には、実施例 2で得た原試料と全く同じ外観をして
いた。この変色試料を、部分真空下、一晩中乾燥した
後、-60℃〜80℃の範囲、加熱速度10℃/分でDSC測定を
行い、Tg28℃の結果を得た。
【0048】[実施例 9] 銅(I)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体の
製造 実施例 2のPAMAMOS架橋体試料を、24時間、塩化銅(I)緑
色飽和水溶液に浸漬した。試料を取り出したとき、試料
は青緑色に着色しており、その色彩は、数回の純水によ
る水洗、浸漬の繰り返し後も、残留していた。
【0049】[実施例 10] 鉄(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体の
製造 実施例 2のPAMAMOS架橋体を、24時間、硫酸鉄(II)飽和
水溶液に浸漬した。試料を取り出した時、その試料は黄
色に着色しており、もはや透明ではなかった。その色彩
は、数回の純水による水洗、浸漬の繰り返し後も、残留
していた。着色試料を部分真空下、一晩乾燥し、-50℃
〜100℃の範囲、加熱速度10℃/分でDSC測定を行った。T
gは66℃であった。
【0050】[実施例 11a〜11d] 白金(0)-PAMAMOSナノ構造複合体の製造 [実施例 11a] ビニルシリル-表面基を有するPAMAMOSデンドリマーの製
造 一晩、凍結乾燥した3.66 g(0.53 mmol, -NH基33.90 mmo
l)の第三世代EDAコアPAMAMデンドリマー を、ストッパ
ー、TEFLON(登録商標)被覆マグネット攪拌子及び窒素
導入口をその頂部に持つ垂直コンデンサーを備えた丸底
三つ口反応フラスコに入れ、34.5 mL のN,N-ジメチルホ
ルムアミド(DMF)に溶解した。ビニール(クロロメチル)
ジメチルシランH2C=CH(CICH2)Si(CH3)2 (6.1 mL;40.45
mmol)と炭酸水素ナトリウム(4.03 g)を加え、その混合
物を、窒素雰囲気下、6日間、加熱攪拌した。得られた
生成物のアリコートを重水素化メタノール(CD30D)に溶
解し、遠心分離後、1H NMRで測定した。 この分析で、
元々存在した-NH表面基の85%が修飾され、得られたデン
ドリマーは、平均して、分子当たり54.4 ビニル基を持
つことが分かった。反応混合物から塩をろ過し、ろ液を
最初は50/50メタノール/水混合物、しかる後、純粋メタ
ノール中で透析した。この操作の終了時点で、メタノー
ルを蒸発させ、得られたデンドリマーを、部分真空下、
乾燥した。
【0051】[実施例 11b] 実施例 11aのPAMAMOSデンドリマーのヒドロシリル化の
試み 通常法で実施例 11aのデンドリマーを、そのトリエチル
シリル同族体に変換するのに、ヒドロシリル化反応を試
みた。この反応では、実施例 11aのPAMAMOSデンドリマ
ー0.79 g(0.064 mmol,ビニル基3.5 mmol)を、ストッパ
ー、TEFLON(登録商標)被覆マグネット攪拌子及び窒素
導入口をその頂部に持つ垂直コンデンサを備えた二つ口
丸底フラスコに仕込んだ。0.03 mLの白金(Pt)触媒 (白
金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体をp-キシレン
に0.3%重量%溶解した溶液)を加え、引き続いて、新た
に蒸留したトリエチルシラン(C2H5)3SiH (0.67 mL;0.49
g;4.2 mmol)と10 mLのテトラヒドロフラン(THF)を加え
た。反応混合物を、窒素雰囲気下、40℃に加熱し、7日
間攪拌し、さらに、60℃で3日間反応を継続した。フー
リエ変赤外分光分析(FTIR)と1H NMR分析結果から、こ
の処理後でも反応は全く開始されていなかった。全反応
時間9日後、さらに、0.16 mL(1 mmol)のトリエチルシラ
ンと0.03 mlのPt触媒を加えた。反応混合物を、アセト
ン中で透析精製し、溶媒蒸発除去後、真空下一晩乾燥し
た。得られた試料をCDCl3で希釈し、29Si NMRで分析し
た。二本のピークが観察され、-8.69 ppmは未反応-CH2 S
i(Me)2(CH=CH2)基、-21.94 ppmは装置組立に使用したシ
リコーングリースに帰属された。ビニルシリル-出発物
質の修飾に基づくシグナルは見いだされなかった。この
ことは期待したヒドロシリル化反応が起こらなかったこ
とを意味していた。これはPAMAMOSデンドリマーのPAMAM
内部層によるPt(0)の錯化により、反応混合液から白金
触媒が除去されることに起因していた。
【0052】[実施例 11c] ビニルシリル-表面基を持つPAMAMOSデンドリマーの製造 窒素雰囲気下、機械撹拌機及びその頂部に窒素導入口を
持つ垂直コンデンサを備えた丸底反応フラスコに、ビニ
ル(クロロメチル)ジメチルシラン(7.2 mL;6.54g;48.54
mmol),ヨウ化ナトリウム(8.02 g;53.4 mmol;[NaI]/[Cl
R] =1.1)、15-クラウン-5-エーテル(0.48 mL;0.53 g;2.
43 mmol,5%/[-Cl])
【化2】 及びDMF(10 mL)を導入した。この反応混合物を一晩、60
℃に加熱し、攪拌した。別フラスコで、32-NH2表面基
を持つ第三世代EDAコアPAMAMデンドリマー をメタノー
ルから凍結乾燥させ、減圧下、そのデンドリマーを一晩
保存した後、得られた固体4.37g(0.63 mmol; -NH基40.4
5mmol)を30 mLのDMFに溶解し、反応混合物に加え、引き
続いて、6.14 gの炭酸水素ナトリウムを加えた。反応混
合物を80℃に加熱し、時々、サンプリングして、1H NMR
分析で反応の進行を監視した。-NH基の完全修飾が達成
された13時間後に攪拌と加熱を停止した。得られた混合
物をろ過し、ろ液を、最初は水/メタノール中で、次い
で純粋メタノール中で、透析した(Spectra/Por 7,MWCO3
500)。単離したPAMAMOSデンドリマー生成物を真空下、
一晩、乾燥した。分析結果から出発PAMAMデンドリマー
は93%修飾されていた。精製後、4.87 gのPAMAMOSデンド
リマーを得た(収率60.5%)。
【0053】実施例 11d 実施例 11cのPAMAMOSデンドリマーのヒドロシリル化に
よるトリエチルシリル-表面基を有するPAMAMOSデンドリ
マーの製造 一つ口フラスコ中で、一晩、実施例 11cのPAMAMOSデン
ドリマー0.76g(0.059 mmol,ビニルシリル基 3.54 mmol)
をメタノールから凍結乾燥した。凍結乾燥したデンドリ
マーを、水素化カルシウム上で乾燥した3 mLのエチレン
グリコールジエチルエーテル、トリエチルシラン(0.68
mL;0.49 g;4.25 mmol)及び過剰の白金触媒( p-キシレン
中、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体溶液
として0.3重量%白金;0.1 mL;実施例 11bで使用した触
媒と同一)に溶解した。この触媒量は、PAMAMOSデンドリ
マーのPAMAM内部の可能性のある錯化サイトを、6PAMAM
窒素で1Pt(0)を錯化するとした場合、全て飽和するに十
分な量である。反応混合物を窒素雰囲気下、100℃で41
時間攪拌した。その後、混合物試料を取り出し、CDCl3
に溶解して、1H NMRで分析した。ほんの少量の未反応ビ
ニール基が観察されただけで、反応は首尾良く進行した
ことが確認された。得られたデンドリマーはもはやメタ
ノールには溶解しなかったが、THF又はクロロホルムに
は容易に溶解した。生成物をTHFから透析で精製した。
【0054】[実施例 12] ロジウム(III)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造
複合体の製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体試料を100mMの
塩化ロジウム(RhCl3)濃紅色水溶液に16時間浸漬した。
試料はRh(OH)3のカプセル化により、暗黄色に変化し、
その色は希薄ヒドラジン(H2NNH2)溶液に浸漬後も変化し
なかった。例えば、塩化ロジウム(III)は、水に溶解し
た時には、[Rh(H20)6]3+Cl3とRhCl3間の混合アクア錯体
の形で存在することが知られている。Rh(OH)3の溶解度
定数(Ksp)はわずか 1×10-23であるので、これら錯体は
酸性媒体中でのみ溶解する。そのため希薄水溶液から[R
hN4Cl4]-の形で錯化する際、これら錯体はPAMAM内部で
加水分解して、PAMAM内部の第三窒素に対してHClを失
い、 Rh(OH)3としてトラップされる。
【0055】[実施例 13] 硫化銅(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合
体の製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体試料を、10 mM
酢酸銅(II)溶液に16時間浸漬した。試料は青色に変化
し、PAMAMOSデンドリマー親水性内部の窒素配位サイト
により、銅(II)イオンが錯化したことを示していた。試
料を水洗し、紙タオルでふき取り、シンチレーションバ
イアル中に入れた。そのバイアルを窒素でフラッシング
してから、硫化水素ガスで満たし、栓をしてからパラフ
ィンで密封した。8時間後、試料はライトブラウン色に
変化し、デンドリマー系架橋体内での硫化銅の生成が認
められた。
【0056】[実施例 14] 硫化ニッケル(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構
造複合体の製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体の試料を、10
mM 酢酸ニッケル(II)溶液に16時間浸した。この処理の
終了後、試料を水洗し、紙タオルでふき取り、乾燥させ
た。シンチレーションバイアル中に試料を入れ、バイア
ルを窒素フラッシングし、H2Sガスで満たし、栓をし、
パラフィンで密封した。8時間後、試料はダークグレー
色に変化した。この色変化からデンドリマー系架橋体内
での硫化ニッケルの生成が認められた。
【0057】[実施例 15] 硫化カドミウム(II)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ
構造複合体の製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体の試料を、10
mM 酢酸カドミウム(II)溶液に16時間浸した。この処理
の終了後、試料を水洗し、紙タオルでふき取り、乾燥さ
せた。シンチレーションバイアル中に試料を入れ、バイ
アルを窒素フラッシングし、H2Sガスで満たし、パラフ
ィンで密封した。この処理の16時間後、試料は透明のま
まであったが、黄色に変化した。この色変化からデンド
リマー系架橋体内での硫化カドミウムナノ粒子の生成が
認められた。試料の紫外スペクトル(UV-可視)から520〜
530nmにカットオフが認められた。硫化カドミウムの粒
子サイズはスペクトル上のカットオフに比例するので、
生成した硫化カドミウムの粒子サイズは5〜10nm(50〜10
0Å)と見積もった。
【0058】[実施例 16] 銅(0)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体の
製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体の試料を、10
mM 酢酸銅(II)溶液に16時間浸した。試料はこの試料処
理の間に、青色に変化し、銅(II)イオンのPAMAMOSデン
ドリマー親水性内部層の窒素配位サイトによる錯化が起
きたことを示していた。処理終了後、試料を水洗し、紙
タオルでふき取り、乾燥した。引き続いての100mMのヒ
ドラジン水溶液への浸漬で、試料は金属銅特有の色に変
化し、金属銅-デンドリマー系架橋体複合体の生成が認
められた。
【0059】[実施例 17] 金(0)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体の
製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体の試料を、10m
Lの水に三塩化金酸[H(AuCl4・XH2O]を40mg含む黄色の溶
液に30分間浸した。この試料処理の間に、試料は暗いワ
インレッド色に変化し、金(III)水酸化物[Au(OH)3]のカ
プセル化が認められた。これは塩基性条件又は光照射に
より自然分解する。引き続いての、100mMヒドラジン水
溶液への浸漬で、試料は直ちに暗赤色に変化した。塩化
Au(III)がHCl水溶液中で、H(AuCl4)錯体として存在する
が、錯化によりこの様な溶液からデンドリマー内部へ抽
出を行う際、H(AuCl4)錯体は加水分解し、第三窒素に対
してHClを失い、Au(OH)3としてトラップされ、引き続い
て分解する。試料のUV-可視スペクトルで700nm以上でカ
ットオフが認められた。金のナノ粒子の対応するカット
オフは550nmであるので、架橋体試料の塊は相互連結し
たチャンネル構造を持っていたことが認められた。
【0060】[実施例 18] 銀(0)-PAMAMOSデンドリマー系架橋体ナノ構造複合体(弾
性銀鏡)の製造 実施例 2のPAMAMOSデンドリマー系架橋体試料を、100mM
のトリフルオロメタンスルホン酸銀(CF3SO3Ag)溶液に、
暗所で16時間、浸漬した。この処理の終了時、試料を水
洗し、紙タオルでふき取り、乾燥した。しかる後、試料
の片端を一滴の100mMヒドラジン水溶液を還元剤として
処理し、他端を同時に一滴の0.1 M Na2S 203 溶液で処
理した。期待した通り、チオ硫酸ナトリウム溶液により
カプセル化された銀カチオンが除去され、試料の一端が
透明になり、還元剤で処理した他端は試料本来の柔軟性
を保った銀鏡になった。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】追加
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】PAMAMOS又はPPIOSデンドリマー系架橋体を式的
に表示した図である。
【図2】図1で示したPAMAMOSデンドリマー系架橋体の
製造に使用するPAMAMデンドリマー(エチレンジアミン
コア)の第一世代デンドリマーの化学構造を示す図であ
る。
【図3】図2で示した第一世代デンドリマーPAMAM繰り
返し単位構造を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ペタル アール.ドボルニク アメリカ合衆国 ミシガン州ミドランド, エリザベス ストリート 917 (72)発明者 マイケル ジェイ.オーウェン アメリカ合衆国 ミシガン州ミドランド, ダブリュ.セント アンドリュース 1505 (72)発明者 スーザン ビクトリア ペルズ アメリカ合衆国 ミシガン州エセックスビ ル,オールド オーチャド ナンバー3 409 (72)発明者 ラルフ スピンドラー アメリカ合衆国 ミシガン州ミドランド, ゲティスバーグ 3813

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性及び疎水性ナノ構造ドメインを有
    するデンドリマー系架橋物中に、吸着、吸収又はカプセ
    ル化された(i)金属カチオン、(ii)金属塩、(iii)金属酸
    化物、(iv)元素金属、(v)水溶性有機分子、又は(vi)水
    溶性有機金属分子が含まれる組成物であって、かつ、そ
    のデンドリマー系架橋物が、親水性内部と末端に反応性
    末端基を持つ疎水性有機シリコーン外部とを有する半径
    方向に層状になった共重合デンドリマー架橋生成物であ
    り、その共重合デンドリマーが、溶媒存在下、-NH2表面
    基を持つ親水性デンドリマーと有機シリコーン化合物と
    を反応させることで製造されることを特徴とする組成
    物。
  2. 【請求項2】 共重合デンドリマーの反応性末端基が加
    水分解性基であり、かつ、共重合デンドリマーが架橋し
    て、親水性及び疎水性のナノ構造ドメインを有するデン
    ドリマー系架橋物を形成する請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 共重合デンドリマーが低分子量又はオリ
    ゴマー様の(i)二官能性試薬、(ii)三官能性試薬及び(ii
    i)多官能性試薬からなる群から選択される架橋剤と接触
    させることで架橋されることを特徴とする、請求項1記
    載の組成物。
  4. 【請求項4】 架橋剤が有機ハロシラン類、テトラハロ
    シラン類、有機シラノール類、有機(有機オキシシラン
    類)、有機-H-シラン類、有機アミノシラン類、有機アシ
    ルオキシシラン類、有機シルセスキオキサン類、ウレイ
    ド-置換シラン類、ビニール-置換シラン及びアリル-置
    換シランからなる群から選択され; 共重合デンドリマー
    の親水性内部がポリアミドアミン及びポリプロピレンイ
    ミンからなる群から選択される、請求項3記載の組成
    物。
  5. 【請求項5】 共重合デンドリマーの疎水性有機シリコ
    ーン外部層の反応性末端基が、式(CH3)3-z-yXzWySi-
    (式中、Xは反応性末端基; Wは-CH3又は-Xとは異なる
    反応性又は非反応性基;yは0、1、又は2;zは1、2又は3
    であり、z+yは1、2、又は3を示す。)で表される残基で
    ある、請求項1記載の組成物。
  6. 【請求項6】 反応性末端基Xが、-NH2、-NR2、-R'SH、
    -HC=CH2、-CH2-CH=CH2、水素、ハロゲン、-0(0)CCH3、-
    NH(0)CNH2、アルコキシ及びアリロキシ(式中、Rは1-6
    個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基、R'は
    1-6個の炭素原子を有するアルキレン基又はアリーレン
    基を示す。)から選択され、共重合デンドリマーの親水
    性内部が、ポリアミドアミン及びポリプロピレンイミン
    からなる群から選択される、請求項5記載の組成物。
  7. 【請求項7】 有機シリコーン化合物が、(3-アシルオキ
    シプロピル)-官能性シラン又はハロアルキル-官能性シ
    ランである、請求項1記載の組成物。
  8. 【請求項8】 有機シリコーン化合物が、(3-アシルオキ
    シプロピル)メチル-ジメトキシシラン、(3-アシルオキ
    シプロピル)ビス(ビニルジメチルシロキシ)-メチルシラ
    ン、ヨードメチルジメチルビニルシラン又はクロロメチ
    ルジメチルビニルシランである、請求項7記載の組成
    物。
  9. 【請求項9】 金属カチオンが、Cu1+、Cu2+、Fe2+、Fe
    3+、Au3+、Ag+、Rh3+、Ni2+及びCd2+から成る群から選
    択される、請求項1記載の組成物。
  10. 【請求項10】 元素金属がPt(0)である、請求項1記載の
    組成物。
  11. 【請求項11】 水溶性有機分子及び水溶性有機金属分子
    が、顔料、染料、指示薬、光増感剤、照射増感剤、触
    媒、電気伝導性材料、非線形光学材料、液晶材料、発光
    材料、蛍光性材料、燐光性材料、重合性単量体、重合開
    始材料、生医学材料、医薬製品、生物活性材料、生物非
    活性材料、防腐剤、及び表面活性剤から成る群から選択
    される、請求項1記載の組成物。
  12. 【請求項12】 水溶性有機分子が、C37H27N303・2NaSO3
    (メチレンブルー)、C15H15N302 (メチルレッド) 及び
    グリーンインクからなる群から選択される、請求項11記
    載の化合物。
  13. 【請求項13】 請求項1で定義した組成物中で、有機試
    薬、無機試薬又は有機金属試薬を金属カチオンと反応さ
    せることを含む有機化合物、無機化合物及び有機金属化
    合物の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1に記載の組成物中で、金属カチ
    オンを還元することを含む、元素金属類、金属酸化物
    類、金属硫化物類及び他の金属塩の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項1に記載の組成物中で、金属カチ
    オンを酸化することを含む、金属酸化物の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項1に記載の組成物中で、有機試薬
    を水溶性有機分子又は水溶性有機金属分子と反応させる
    ことを含む、有機化合物、有機金属化合物及びそれらの
    混合物の製造方法。
  17. 【請求項17】 溶媒存在下、-NH2表面基を持つ親水性デ
    ンドリマーと有機シリコーン化合物とを反応させて得ら
    れる、親水性内部と末端に反応性末端基を持つ疎水性有
    機シリコーン外部とを有する半径方向に層状になった共
    重合デンドリマーの架橋生成物からなる、親水性及び疎
    水性ナノ構造ドメインを有するデンドリマー系架橋物
    を、水と接触させることを含む、水からの金属カチオン
    又は金属カチオン混合物の回収方法。
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