JPH11253873A - 配向性化学吸着単分子膜の製造方法 - Google Patents

配向性化学吸着単分子膜の製造方法

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JPH11253873A
JPH11253873A JP6020298A JP6020298A JPH11253873A JP H11253873 A JPH11253873 A JP H11253873A JP 6020298 A JP6020298 A JP 6020298A JP 6020298 A JP6020298 A JP 6020298A JP H11253873 A JPH11253873 A JP H11253873A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 洗浄液の利用効率が高く、構成分子の配向性
に優れる配向性化学吸着単分子膜を製造することが可能
な製造方法を提供する。 【解決手段】 表面が親水性の基材1を準備し、この表
面に炭素鎖またはシロキサン結合鎖を含むシラン系界面
活性剤を接触させて前記両者を化学反応させることによ
り前記シラン系界面活性剤分子の一端を前記基材1表面
に結合させて単分子膜を形成し、前記基材を所定の方向
に向けた状態で有機溶媒4蒸気で蒸気洗浄し、この際に
前記基材1表面に結露した有機溶媒41の流れにより前
記単分子膜を構成する分子を配向させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膜を構成する分子
が配向しかつ基材等に化学吸着している配向性化学吸着
単分子膜の製造方法に関するものであり、詳しくは、フ
ッ素系防汚性単分子膜、液晶用配向膜、偏光膜、位相差
膜、分子素子用導電膜等のように、分子レベルで用いる
薄膜材料として使用できる配向性化学吸着単分子膜の製
造方法に関するものである
【0002】
【従来の技術】従来、化学吸着単分子膜は、化学吸着液
を溶剤に溶解して調製した化学吸着液に基材を浸漬し、
前記化学吸着液中で、前記基材表面と前記化学吸着物質
とを所定時間化学反応させ、その後不要の化学吸着物質
を有機溶媒を用いて洗浄除去することにより製造される
のが一般的である。
【0003】例えば、あらかじめ直鎖状炭化水素基及び
Siを含むシラン系界面活性剤(以下「化学吸着物質」
若しくは「化学吸着化合物」ともいう)を1重量%程度
の濃度で非水系の溶媒に溶かして化学吸着液を調製す
る、そして、前記化学吸着液に基材を浸漬し、前記化学
吸着液中で所定の時間化学吸着反応させた後、前記基材
を前記化学吸着液から取り出し、前記基材表面に付着し
た余分の化学吸着物質を非水系の洗浄用有機溶媒ですす
ぎ、洗浄除去することにより化学吸着単分子膜が得られ
る。また、化学吸着単分子膜を構成する分子を配向させ
るには、配向方向に応じ前記基材を所定の方向に向けて
洗浄液の液切りを行う。
【0004】しかしながら、従来の化学吸着単分子膜の
製造方法では、非水系の洗浄用有機溶媒中に基材を浸漬
し表面を洗浄していたため、前記洗浄液の劣化が激し
く、その利用効率が悪かった。また、洗浄液の液切り
は、洗浄後、洗浄液から基材を取り出す際の一回きりな
ので、配向処理はこの一回の液切りで行われることとな
り、単分子膜を構成する分子の配向性もそれほど良くは
なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、洗浄液の利用効率が高く、構成分子の配向性に優れ
る配向性化学吸着単分子膜を製造できる製造方法を提供
することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の配向性化学吸着単分子膜の製造方法は、表
面が親水性の基材を準備し、この表面に炭素鎖またはシ
ロキサン結合鎖を含むシラン系界面活性剤を接触させて
前記両者を化学反応させることにより前記シラン系界面
活性剤分子の一端を前記基材表面に結合させて化学吸着
単分子膜を形成する第1の工程と、前記基材を所定の方
向に向けた状態で有機溶媒蒸気で蒸気洗浄し、この際に
前記基材表面に結露した有機溶媒の流れにより前記単分
子膜を構成する基板表面に結合固定された分子を一次配
向させる第2の工程とを含む。
【0007】このように、本発明の製造方法では、蒸気
洗浄により基材を洗浄するため、基材と洗浄液とが直接
接触するこがなく、洗浄液の劣化を防止できる。また、
本発明の製造方法では、前記蒸気洗浄において、基材表
面に結露した洗浄液の流れにより繰り返し前記単分子膜
を構成する分子を配向させるため、配向性に優れた単分
子膜を得ることができる。
【0008】本発明の製造方法において、前記第1の工
程および第2の工程に加え、結合固定された分子が一次
配向した化学吸着単分子膜に偏光を照射して前記結合固
定された分子を前記偏光方向に二次配向させる第3の工
程を含むことが好ましい。これにより、さらに配向性に
優れた配向性化学吸着単分子膜を製造できる。
【0009】本発明の製造方法において、前記シラン系
界面活性剤として、感光性基と、直鎖状炭素鎖及びシロ
キサン結合鎖の少なくとも一つの分子鎖と、クロロシリ
ル基、アルコキシシラン基およびイソシアネートシラン
基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基と
を含むシラン系界面活性剤を用いることが好ましい。こ
のような界面活性剤の使用により、配向性化学吸着単分
子膜を効率良く製造できるからである。また、偏光の照
射により前記感光性基相互が重合または架橋してシラン
系界面活性剤分子相互が固定されるので、配向性化学吸
着単分子膜の構成分子の配向を安定化できる。
【0010】前記シラン系界面活性剤において、前記感
光性基が、シンナモイル基、カルコン基、メタクリロイ
ロ基およびジアセチレン基からなる群から選択された少
なくとも一つの官能基であることが好ましい。これらの
感光性基は、感光感度が高く、低エネルギーで前記シラ
ン系界面活性剤分子を重合できるからである。
【0011】本発明の製造方法において、前記シラン系
界面活性剤として、トリフルオロメチル基、メチル基、
ビニル基、アリル基、エチニル基、フェニル基、アリー
ル基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ
基、水酸基、カルボニル基、エステル基およびカルボキ
シル基からなる群から選択される少なくとも一つの官能
基を含むシラン系界面活性剤を用いることが好ましい。
このようなシラン系界面活性剤を使用すると、表面エネ
ルギーが異なる配向性化学吸着単分子膜を効率良く製造
できるからである。
【0012】本発明の製造方法において、シラン系界面
活性剤として、直鎖状炭素鎖及びシロキサン結合鎖のす
くなくとも一方の分子鎖と、クロロシリル基、アルコキ
シリル基およびイソシアネートシリル基からなる群から
選択される少なくとも一つの基とを含むシラン系の界面
活性剤を用い、蒸気洗浄用の有機溶媒として、水を含ま
ない非水系有機溶媒を用いることが好ましい。このよう
にすると、洗浄効率が高く、効率良く配向性化学吸着単
分子膜を製造できるからである。
【0013】本発明の製造方法において、非水系有機溶
媒として、アルキル基、フッ化炭素基、塩化炭素基およ
びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一
つの基を含む非水系有機溶媒を用いることが好ましい。
このような、非水系有機溶媒を用いると、きれいな配向
性化学吸着単分子膜を製造できるからである。
【0014】本発明の製造方法において、前記第1の工
程において、基材表面に多数のSiO基を含む被膜を形
成し、この被膜を介して単分子膜を形成することが好ま
しい。このようにすると、効率良く密度が高い配向性化
学吸着単分子膜を製造できるからである。
【0015】
【発明実施の形態】(実施形態1)表面に水酸基を多数
含むガラス基板を準備し、よく洗浄脱脂した。一方、末
端に被膜の表面エネルギーを制御する官能基(例えば、
メチル基)を一つ組み込んだ直鎖状炭化水素基及びSi
を含むシラン系界面活性剤を非水系溶媒(水を含まない
溶媒)に溶解し化学吸着液を調製した。前記シラン系界
面活性剤としては、例えば、一般式CH3(CH217
iCl3で表わされるオクタデシルトリクロロシランを
使用できる。これを1重量%の濃度で良く脱水したオク
タメチルシリコーン(bp.100℃)に溶解すれば化
学吸着液が調製できる。なお、非水系溶媒としては、前
記オクタメチルシリコーンの他に、沸点が250℃程度
までの非水系有機溶媒であれば、多少溶媒蒸発時間が長
くはなるものの、実用上、何ら問題なく使用可能であっ
た。そして、図1に示すように、乾燥雰囲気中(相対湿
度30%以下)で、前記化学吸着液2の中に前記基板1
を2時間程度浸漬した。なお、化学吸着液2を前記基板
1に塗布しても良い。その後、前記基板1を化学吸着液
2から引き上げて、前記と同様の乾燥雰囲気中で良く脱
水した非水系溶媒(クロロホルム)を用いてすすぎ洗浄
した。ついで、図2に示すように、前記基板1を蓋31
の中央部から吊り下げ具32を用いて吊り下げ、この状
態で蒸気洗浄槽3に入れた。そして、洗浄用の有機溶媒
4(エタノール)の蒸気でおよそ10分間蒸気洗浄し
た。また、この蒸気洗浄時の前記洗浄用有機溶媒の温度
は、約80〜85℃の範囲に設定した。なお、本発明に
おいて、蒸気洗浄用の有機溶媒の温度は、特に制限しな
いが、蒸気をより多く発生できるという理由から、用い
る有機溶媒の沸点以上に加温することが好ましい。この
蒸気洗浄において、同図に示すように、、前記基板1の
表面に有機洗浄液が結露し、これが矢印7方向に流れ
た。同図において、41は結露した洗浄用有機溶媒を表
わし、6は吊り下げ方向を表わす矢印である。この蒸気
洗浄後、前記基板1を蒸気洗浄槽より取り出し水分を含
む空気中に暴露した。
【0016】以上の処理により、前記基板1の水酸基含
有表面上に前記クロロシラン系界面活性剤が基板表面に
固定された分子からなる化学吸着単分子膜を形成した。
図3に、この化学吸着単分子膜を示す。図示のように、
前記シラン系界面活性剤分子の一端が、脱塩酸反応を伴
いシロキサン結合により基板1の表面に結合し、化学吸
着単分子膜5が形成されている。この化学吸着単分子膜
5を構成する分子は、前記吊り下げ方向6と反対の方向
に傾斜して配向している。この化学吸着単分子膜の臨界
表面エネルギーを、ジスマンプロットを用いて測定した
結果、約25mN/mであった。また、この化学吸着単
分子膜5の膜厚は約5nmであった。なお、本発明にお
いて、化学吸着単分子膜の膜厚は、通常、1〜3nmの
範囲である。
【0017】さらに、化学吸着単分子膜の構成分子の配
向方向確認のため、2枚の前記基板1を、それぞれの化
学吸着単分子膜5が向かい合うように組み合わせて20
μmギャップの液晶セルを組み立て、前記両基板の間隙
にネマチック液晶(ZLI4792;メルク社製)を注
入した。そして、偏光板を介して前記液晶分子の配向状
態を確認した結果、前記液晶分子は、前記基板表面に結
露した洗浄用有機溶媒(エタノール)の流れる方向に沿
ってきれいに均一に配向していた。また、化学吸着単分
子膜の構成分子の炭素鎖の傾きをフーリエ変換赤外線分
光法(FTIR)で分析した結果、前述と同様に洗浄用
有機溶媒の流れる方向にある程度傾斜して前記構成分子
が配向していることが明らかとなった。このことは、化
学吸着した前記シラン系界面活性剤分子が、蒸気洗浄の
際に基板表面に結露した洗浄用有機溶媒(エタノール)
の流れによって、配向したことを意味し、その配向方向
は前記結露した洗浄用有機溶媒の流れる方向である。
【0018】他方、同様の化学吸着液処理を行った基板
に対し、前記と同じ有機溶媒(エタノール)を用いて室
温でディップ洗浄を行い、前記有機溶媒(洗浄液)から
引き上げた。その結果、前記基板の化学吸着単分子膜の
構成分子は、前記引き上げ方向と反対方向、すなわち液
切り方向にある程度配向したが、多数のディスクリネー
ションが発生し配向レベルは前記蒸気洗浄のものに比べ
て悪かった。この理由は、蒸気洗浄では高温蒸気で処理
されるため、基板表面で結露した高温の有機溶媒が絶え
ず一定方向に基板表面に沿って流れるので、配向作用が
大きかったものと考えられる。
【0019】なお、この実施形態では、蒸気洗浄時間を
10分間としたが、洗浄時間が長いほど配向性が良くな
ることも確認した。しかしながら、実用性を考慮する
と、蒸気洗浄時間は5分〜6時間が適当であり、また蒸
気洗浄条件の違いにもよるが、より適当な洗浄時間は、
10〜30分である。
【0020】また、前記基板表面と前記シラン系界面活
性剤との反応は、はじめに下記の式(1)の結合が生成
し、ついで有機溶媒の蒸気洗浄後に水分を含む空気中に
暴露することにより、前記水分と反応して下記の式
(2)の結合が生成したと考えられた。なお、下記の式
(1)および(2)において、Xは基板を示し、後述す
る式(5)、式(6)、式(7)および式(8)も同様
である。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】前記シラン系界面活性剤分子の末端または
分子中に、トリフルオロメチル基、メチル基、ビニル
基、アリル基、エチニル基、フェニル基、アリール基、
ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、水酸
基、カルボニル基、エステル基及びカルボキシル基から
なる群から選択される少なくとも一つの官能基を組み込
んでおくと、得られる配向性化学吸着単分子膜の表面エ
ネルギーを8〜53mN/mの間で制御できた。
【0024】さらに、蒸気洗浄用の有機溶媒としては、
ハロゲン含有有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系
有機溶媒、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶
媒、シリコーン系有機溶媒等が利用可能であったが、沸
点50〜250℃程度のものが扱い易かった。特に、前
記範囲の沸点でかつ水を含まない非水系有機溶媒、例え
ば、クロロホルム、ヘキサン、トルエン、キシレン、ヘ
キサメチルジシロキサン等の低分子有機シリコーン等の
場合、クロロシリル基、アルコキシリル基、及びイソシ
アネートシリル基に対して不活性であり、蒸気洗浄効果
が高かった。
【0025】また、化学吸着液調製用の非水系有機溶媒
としては、アルキル基含有有機溶媒、フッ化炭素基含有
有機溶媒、塩化炭素基含有有機溶媒およびシロキサン基
含有有機溶媒等が利用可能であったが、やはり沸点が5
0〜250℃程度のものが扱い易かった。
【0026】(実施形態2)表面に水酸基を多数含むガ
ラス基板を準備し、よく洗浄脱脂した。一方、末端に単
分子膜の表面エネルギーを制御する官能基を一つ組み込
んだ直鎖状炭化水素基及びSiを含むシラン系界面活性
剤として、一般式CH3(CH213SiCl 3で表わさ
れるシラン系界面活性剤と下記の一般式(3)で表わさ
れるシラン系界面活性剤とを、モル比で1:1に混合し
て用いた。この混合物を、1重量%の濃度で良く脱水し
た非水系溶媒(ヘキサデカン)に溶かして化学吸着液を
調製した。
【0027】
【化3】
【0028】前記化学吸着液に、前記と同じ乾燥雰囲気
中で、前記基板を2時間程度浸漬した。その後、前記液
から引き上げ、ついで前記実施形態1と同様にして前記
基板をクロロホルムの蒸気洗浄槽にいれ、約25分間蒸
気洗浄した。その後、蒸気洗浄槽より前記基板を取り出
し水分を含む空気中に暴露した。そして、365nmの
UV光を200mJ/cm2の強度で前記基板表面上に
形成された化学吸着単分子膜に全面照射した。
【0029】以上の処理により、前記2種類のシラン系
界面活性剤がほぼ1:1で混合し反応してなる化学吸着
単分子膜が、ガラス基板表面の水酸基が含まれていた部
分に形成された。この化学吸着単分子膜の構成分子の一
端は、シロキサンの共有結合を介して基板表面に化学結
合し、さらに前記構成分子中の下記の一般式(4)で表
わされる感光性基(カルコン基)相互が重合または架橋
して前記構成分子相互が固定していた。この化学吸着単
分子膜の膜厚は約1.9nmであった。この化学吸着単
分子膜の臨界表面エネルギーをジスマンプロットを用い
て測定した結果、約28mN/mであった。
【0030】
【化4】
【0031】前記化学吸着単分子膜の構成分子の配向方
向確認のため、前記基板2枚を、前記化学吸着単分子膜
が向かい合うように組み合わせて20μmのギャップの
液晶セルを組み立てた。そして、前記両基板の間隙に、
ネマチック液晶(ZLI4792;メルク社製)を注入
した。偏光板を介して前記液晶分子の配向状態を確認し
たところ、前記液晶分子は、前記基板表面に結露した洗
浄用有機溶媒(クロロホルム)の流れる方向に沿ってプ
レチルト角1.3゜で均一に配向していた。また、前記
化学吸着単分子膜の構成分子の炭素鎖の傾きをFTIR
で分析すると、前述と同様に前記洗浄用有機溶媒の流れ
る方向にある程度傾斜して配向していることが明らかと
なった。このことは、化学吸着した前記シラン系界面活
性剤分子が、蒸気洗浄の際に基板表面に結露した洗浄用
有機溶媒(クロロホルム)の流れによって、配向したこ
とを意味し、その配向方向は前記結露した洗浄用有機溶
媒の流れる方向である。
【0032】さらに、配向耐熱性を比較してみると、実
施形態1で得られた化学吸着単分子膜の配向耐熱性は約
180℃であったが、この実施形態で得られた化学吸着
単分子膜の配向耐熱性は約245℃であり、配向耐熱性
の向上が確認できた。
【0033】なお、この実施形態において、シラン系界
面活性剤分子と基板表面との反応は、下記の式(5)、
式(6)、式(7)および式(8)に示すようにして進
行するものと推察される。すなわち、最初に下記の式
(5)および(7)で示される結合がほぼ1:1のモル
比で生成し、ついで、有機溶媒による蒸気洗浄後、一般
空気中に暴露すると、空気中の水分と反応して下記の式
(6)および(8)の結合が生成すると考えられる。
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】この実施形態において、シラン系界面活性
剤として、感光性基と、直鎖状炭素鎖及びシロキサン結
合鎖の少なくとも一方の分子鎖と、クロロシリル基、ア
ルコキシリル基及びイソシアネートシリル基からなる群
から選択される少なくとも一つの官能基とを含むシラン
系界面活性剤を用いても、同様の化学吸着単分子膜が製
造できた。
【0039】また、シンナモイル基、カルコン基、メタ
クリロイロ基またはジアセチレン基を感光性基として含
むシラン系界面活性剤は、可視領域に光吸収が殆ど無く
透明性があり、250〜400nm領域に光吸収がある
ので、超高圧水銀灯のi線(365nmの紫外線)に感
度があり、実用性が高かった。
【0040】(実施形態3)実施形態2において、一般
式CH3(CH213SiCl3で表わされるシラン系界
面活性剤に代えて、一般式ClSi(CH32OSi
(CH32OSi(CH32OSi(CH32Clで表
わされるシラン系界面活性剤を用いた。なお、このシラ
ン系界面活性剤と前記式(3)で表わされるシラン系界
面活性剤との混合モル比は、1:0〜0:1の範囲で変
化させた。この結果、得られる化学吸着単分子膜の臨界
表面エネルギーを、前記混合比に応じて37mN/mか
ら23mN/mの範囲で制御できた。さらに、実施形態
1と同様にして液晶セルを組立て液晶を注入し、前記液
晶分子の配向性を確認した。その結果、前記液晶分子の
プレチルト角度は異なったが、配向方向については、実
施形態2とほぼ同様の結果を得た。
【0041】この実施形態において、シラン系界面活性
剤として、直鎖状炭素鎖及びシロキサン結合鎖の少なく
とも一方の分子鎖と、クロロシリル基、アルコキシリル
基及びイソシアネートシリル基からなる群から選択され
る少なくとも一つの官能基とを含むシラン系界面活性剤
を用いても、同様の化学吸着単分子膜を製造できた。
【0042】(実施形態4)実施形態1において、化学
吸着単分子膜の形成に先立ち、乾燥雰囲気中(相対湿度
30%以下)でクロロシリル基を含む無機化合物を溶解
した溶液を基板表面に塗布し乾燥した。すると、溶液中
から溶媒が蒸発しクロロシリル基を含む無機化合物が濃
縮され、ついにはクロロシリル基を含む化合物の被膜が
基板表面上に形成された。この被膜形成の際に、基板表
面に含まれる水酸基と被膜中のクロロシリル基が急速に
脱塩酸反応した。その後、水分をほとんど含まない非水
系の有機溶媒で洗浄し、空気中に暴露すると、基板表面
の前記被膜中のクロロシリル基が空気中の水分と反応し
て、水酸基を多数含む無機シロキサンから成る単分子膜
状被膜が形成された。
【0043】例えば、クロロシリル基を含む化合物とし
て一般式SiCl4で表わされる化合物を脱水したトル
エンに溶解して吸着液(濃度:1重量%)を調製した。
この吸着液に、前記乾燥雰囲気中で基板を1分程度浸漬
し、さらに引き上げて前記乾燥雰囲気中で5分間程度か
けて乾燥しトルエンを蒸発させ、その後さらに5分間反
応させた。その後、よく脱水したクロロホルムで洗浄す
ると、基材表面の水酸基と前記化合物の塩素とが脱塩酸
反応を起こし、図4に示すように、単分子膜状被膜13
がシロキサン(−SiO−)結合を介して基板1表面に
形成された。その後、さらに空気中に暴露して空気中の
水分と反応させると、表面に水酸基を多数含む単分子膜
状のシロキサン被膜がシロキサン(−SiO−)結合を
介して基板1表面に形成された。
【0044】なお、このとき生成したシロキサン被膜
は、シロキサン(−SiO−)化学結合を介して基板に
結合されているので剥がれることが無かった。また、得
られた前記被膜は、その表面にSi−OHの結合を多数
有し、特に水酸基は、基板表面の当初の水酸基数の約2
〜3倍程度の数が生成した。したがって、基材表面の親
水性は、極めて高くなった。
【0045】この基板表面上に、前記シロキサン被膜を
介し、前記実施形態1と同様にして化学吸着液による処
理を行うと、前述と同様に配向性に優れた化学吸着単分
子膜が前記シロキサン被膜上に生成した。この化学吸着
単分子膜は、シロキサンの共有結合で前記シロキサン被
膜と化学結合していた。また、前記化学吸着単分子膜の
膜厚は、約1.6nmであった。この実施形態で得られ
た化学吸着単分子膜の膜厚が実施形態1での膜厚に比べ
てやや厚いのは、前記シロキサン被膜により基板表面の
親水性が向上したため、実施形態1で得られた化学吸着
単分子膜に比べて構成分子の密度が高いことによると推
察される。
【0046】なお、クロロシリル基を含む化合物として
は、一般式SiCl4で表わされる化合物の他に、一般
式Cl−(SiCl2O)n−SiCl3 で表わされる化
合物が利用できた。なお、前記式において、nは正の整
数であるが、nが1〜3の化合物が、扱いよかった。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明の製造方法によれ
ば、蒸気洗浄により基材を洗浄するため、基材と洗浄液
とが直接接触することがなく、洗浄液の劣化を防止でき
る。また、蒸気洗浄では、基板に接触する有機溶媒を常
時高純度に保つことができるため、本発明の製造方法に
よれば、洗浄液をほとんど交換することなく連続で配向
性化学吸着単分子膜を製造できる。また、本発明の製造
方法では、前記蒸気洗浄において、基材表面に結露した
洗浄用有機溶媒の流れにより単分子膜の構成分子を配向
させるため、配向性に優れた化学吸着単分子膜を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例において、化学吸着液に基
板を浸漬している状態を示す断面図である。
【図2】 前記実施例において、蒸気洗浄工程を説明す
るための断面図である。
【図3】 前記実施例において、化学吸着単分子膜の構
成分子の配向状態を示す模式図である。
【図4】 本発明のその他の実施例において、基板表面
上にシロキサン被膜を形成した状態を示す模式図であ
る。
【符号の説明】
1 ガラス基板 3 蒸気洗浄槽 4 洗浄用有機溶媒 6 吊り下げ方向 7 結露した洗浄用有機溶媒が流れる方向 31 蓋 32 吊り下げ具 41 結露した洗浄用有機溶媒

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面が親水性の基材を準備し、この表面
    に炭素鎖またはシロキサン結合鎖を含むシラン系界面活
    性剤を接触させて前記両者を化学反応させることにより
    前記シラン系界面活性剤分子の一端を前記基材表面に結
    合固定させて化学吸着単分子膜を形成する第1の工程
    と、前記基材を所定の方向に向けた状態で有機溶媒蒸気
    で蒸気洗浄し、この際に前記基材表面に結露した有機溶
    媒の流れにより前記単分子膜を構成する前記基材表面に
    結合固定された分子を一次配向させる第2の工程とを含
    む配向性化学吸着単分子膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 第1の工程および第2の工程に加え、結
    合固定された分子が一次配向した化学吸着単分子膜に偏
    光を照射して前記結合固定された分子を前記偏光方向に
    二次配向させる第3の工程を含む請求項1記載の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 シラン系界面活性剤として、感光性基
    と、直鎖状炭素鎖及びシロキサン結合鎖の少なくとも一
    つの分子鎖と、クロロシリル基、アルコキシシラン基お
    よびイソシアネートシラン基からなる群から選択される
    少なくとも一つの官能基とを含むシラン系界面活性剤を
    用いる請求項2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 感光性基が、シンナモイル基、カルコン
    基、メタクリロイロ基およびジアセチレン基からなる群
    から選択された少なくとも一つの官能基である請求項3
    記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 シラン系界面活性剤として、トリフルオ
    ロメチル基、メチル基、ビニル基、アリル基、エチニル
    基、フェニル基、アリール基、ハロゲン基、アルコキシ
    基、シアノ基、アミノ基、水酸基、カルボニル基、エス
    テル基およびカルボキシル基からなる群から選択される
    少なくとも一つの官能基を含むシラン系界面活性剤を用
    いる請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 シラン系界面活性剤として、直鎖状炭素
    鎖及びシロキサン結合鎖の少なくとも一方の分子鎖と、
    クロロシリル基、アルコキシリル基およびイソシアネー
    トシリル基からなる群から選択される少なくとも一つの
    官能基とを含むシラン系の界面活性剤を用い、蒸気洗浄
    用の有機溶媒として、水を含まない非水系有機溶媒を用
    いる請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 非水系有機溶媒として、アルキル基、フ
    ッ化炭素基、塩化炭素基およびシロキサン基からなる群
    から選択される少なくとも一つの官能基を含む非水系有
    機溶媒を用いる請求項6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 第1の工程において、基材表面に多数の
    SiO基を含む被膜を形成し、この被膜を介して単分子
    膜を形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造
    方法。
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