JPH11236495A - ポリエステル樹脂組成物及びフィルム状物 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物及びフィルム状物

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JPH11236495A
JPH11236495A JP7178098A JP7178098A JPH11236495A JP H11236495 A JPH11236495 A JP H11236495A JP 7178098 A JP7178098 A JP 7178098A JP 7178098 A JP7178098 A JP 7178098A JP H11236495 A JPH11236495 A JP H11236495A
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film
mol
polyester resin
polycarbonate
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JP7178098A
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Masaru Imai
賢 今井
Nobuhiro Sekine
信博 関根
Kazutaka Murata
一高 村田
Kazutoshi Haraguchi
和敏 原口
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Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明が解決しようとする課題は、優れた透
明性、耐熱性、表面硬度、機械的特性、及び耐摩耗性を
併せ持つポリエステル樹脂組成物、該ポリエステル樹脂
組成物から成るフィルム状物、及びその製造法を提供す
ることにある。 【解決手段】 20〜50モル%のイソフタル酸単位
と、0〜30モル%のテレフタル酸単位と、50モル%
の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフ
ェノール単位とを必須成分とする芳香族ポリエステル
(A)2〜98重量%と、ポリカーボネート(B)98
〜2重量%とから成るポリエステル樹脂組成物、及び該
芳香族ポリエステル(A)2〜98重量%と、ポリアリ
レート(C)、ポリスルホン(D)から選ばれる一種以
上のポリマー98〜2重量%とから成るポリエステル樹
脂組成物、及び該樹脂組成物からなるフィルム状物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学材料、記録材
料、建築、自動車、医療、食品などの広い分野で有用
な、耐熱性、力学特性、耐摩耗性に優れた透明なポリエ
ステル樹脂組成物、該ポリエステル樹脂組成物から成る
フィルム状物、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光学透明樹脂としては、ポリスチ
レン、ポリプロピレン、ポリ(メタ)クリレート、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩素
化ビニリデン、ポリフッ素化ビニリデン、ポリアリレー
ト、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が知られて
おり、成形体、繊維、フィルムの形態で電気・電子部
品、自動車部品、機械部品等の分野で用いられている。
【0003】このうち、光学的に透明なフィルム及び塗
膜は、情報・記録材料、光学材料、食品包装材料等の分
野で特に重要であり、更に、耐熱性、力学物性、表面硬
度、耐摩耗性等の特性が一般に要求される。
【0004】例えば、透明フィルムであるポリカーボネ
ートフィルム及び塗膜は、透明性、高耐衝撃性等の特徴
を生かして電気材料、情報材料、記録材料、医療材料、
自動車用材料等に用いられている。また、同様にポリア
リレートフィルム、ポリスルホンフィルム及び塗膜は、
透明性、耐熱性等の特徴を生かして電気材料、情報材
料、医療材料、食品包装材料等に用いられている。
【0005】しかしながら、例えばポリカーボネートの
場合、その耐熱性はガラス転移温度で150℃程度、そ
の機械特性は引張強度で8Kg/mm2程度であり、ま
た、その表面硬度は鉛筆硬度で3B程度であることか
ら、耐熱性や力学物性、表面硬度の更なる向上が求めら
れている。
【0006】また、フィルムやバインダー用樹脂などの
用途には、耐摩耗性を高めることが求められている。一
方、ポリアリレートやポリスルホンでは、その耐熱性は
ガラス転移温度で190〜200℃程度、また、その機
械特性は引張強度で7〜8Kg/mm2であり、やはり
耐熱性や力学物性の更なる向上が求められている。
【0007】これらの改良研究として、例えば、ポリカ
ーボネートの場合、特開平7−310003号公報に熱
変形温度、成形加工性向上のための特定の構造を有する
共重合ポリエステルとポリカーボネートを用いた熱可塑
性樹脂組成物が開示されており、該ポリカーボネート組
成物は既存のビスフェノールA型のポリカーボネートに
比べて高い熱変形温度を有することが報告されている。
【0008】しかし、その熱変形温度は170℃程度で
あり、十分ではなかった。また、耐摩耗性を改良する方
法としては、ガラス繊維や炭素繊維、シリカ粒子などの
無機添加物を含有させる方法や、フッ素系樹脂をブレン
ドする方法が検討されているが、これらの方法では透明
性が損なわれるという欠点があった。
【0009】また、ポリアリレートの場合は、例えば、
特開平4−1223号公報に熱変形温度、成形加工性向
上のための特定の官能基を有するポリアリレート、及び
そのポリアリレートを用いた熱可塑性樹脂組成物が開示
されており、該ポリアリレート組成物は既存のビスフェ
ノールA型のポリアリレートに比べて高い熱変形温度を
有することが報告されている。
【0010】しかし、その熱変形温度は195℃程度と
ビスフェノールA型のポリアリレートに比べて、20℃
程度の向上であり、未だ十分とは言えず、また、耐衝撃
性付与剤を添加している為に透明性の点でも問題があっ
た。
【0011】一方、3,3’,5,5’−テトラメチル
−4,4’−ビフェノール単位を持つ透明な芳香族ポリ
エステルについては、特開昭55−116723号公
報、特開昭58−180525号公報、特開昭60−5
3530号公報、特開平9−1512462号公報に開
示されている。
【0012】しかし、いずれの発明も耐熱透明樹脂、或
いは耐摩耗性の透明樹脂に関するものに限られており、
これらの樹脂をポリカーボネート等と相溶的な樹脂組成
物を形成させて、樹脂組成物の耐熱性、力学特性、表面
硬度、耐摩耗性を大きく改良させることを報告したもの
は見られない。
【0013】
【本発明が解決しようとする課題】本発明が解決しよう
とする課題は、優れた、透明性、耐熱性、表面硬度、機
械的特性、及び耐摩耗性を併せ持つポリエステル樹脂組
成物、該ポリエステル樹脂組成物から成るフィルム状
物、及びその製造法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特定の構
造を有する芳香族ポリエステルが優れた耐熱性、機械特
性を有し、且つ、ポリカーボネート、及びポリアリレー
ト、ポリスルホンと相溶的に混じり合い、得られる樹脂
組成物が無色透明で、ポリカーボネート、及びポリアリ
レート、ポリスルホンの耐熱性、機械特性、表面硬度、
及び耐摩耗性を向上させることを見い出し本発明を完成
させるに至った。
【0015】即ち、本発明は、(1) 20〜50モル
%のイソフタル酸単位と、0〜30モル%のテレフタル
酸単位と、50モル%の3,3’,5,5’−テトラメ
チル−4,4’−ビフェノール単位とを必須成分とする
芳香族ポリエステル(A)2〜98重量%と、ポリカー
ボネート(B)98〜2重量%とから成るポリエステル
樹脂組成物、
【0016】(2) 20〜50モル%のイソフタル酸
単位と、0〜30モル%のテレフタル酸単位と、50モ
ル%の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−
ビフェノール単位とを必須成分とする芳香族ポリエステ
ル(A)2〜98重量%と、ポリアリレート(C)、ポ
リスルホン(D)から選ばれる一種以上のポリマー98
〜2重量%とから成るポリエステル樹脂組成物、
【0017】(3) (ポリエステル樹脂組成物の摩耗
量)/(ポリエステル樹脂組成物中の原料ポリカーボネ
ートの摩耗量)≦0.85であることを特徴とする
(1)に記載のポリエステル樹脂組成物、
【0018】(4) 上記の(1)〜(3)のいずれか
一つに記載のポリエステル樹脂組成物から成るフィルム
状物、及び、
【0019】(5) 上記の(1)〜(3)のいずれか
一つに記載のポリエステル樹脂組成物を溶解した溶液か
ら、溶媒を除去することを特徴とするポリエステル樹脂
組成物フィルム状物の製造方法を含むものである。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステル樹脂組成物
は、20〜50モル%のイソフタル酸単位と、0〜30
モル%のテレフタル酸単位と、50モル%の3,3’,
5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位
とを必須成分とする芳香族ポリエステル(A)2〜98
重量%と、ポリカーボネート(B)98〜2重量%とか
ら、
【0021】又は、20〜50モル%のイソフタル酸単
位と、0〜30モル%のテレフタル酸単位と、50モル
%の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビ
フェノール単位とを必須成分とする芳香族ポリエステル
(A)2〜98重量%と、ポリアリレート(C)、ポリ
スルホン(D)から選ばれる一種以上のポリマー98〜
2重量%とから成る。
【0022】本発明に用いる芳香族ポリエステル(A)
は、20〜50モル%のイソフタル酸単位と、0〜30
モル%のテレフタル酸単位と、50モル%の3,3’,
5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位
とを必須成分とする芳香族ポリエステルであるが、芳香
族ポリエステル(A)の構成単位がイソフタル酸単位
と、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビ
フェノール単位のみからなる場合は、何れの構成単位も
50モル%含まれることが好ましく、この割合以外の組
成では重合度の高いポリマーが得られない。
【0023】また、構成単位がイソフタル酸単位と、テ
レフタル酸単位と、3,3’,5,5’−テトラメチル
−4,4’−ビフェノール単位である場合には、含まれ
るイソフタル酸単位は20〜50モル%、好ましくは2
5〜50モル%、更に好ましくは30〜50モル%であ
る。イソフタル酸単位の割合が20モル%未満の場合に
はポリマーの溶媒溶解性が悪く、良好なキャストフィル
ムを得られず、また、50モル%を越えると重合度の高
いポリマーが得られないため好ましくない。
【0024】含まれるテレフタル酸単位は0〜30モル
%、好ましくは0〜25モル%、更に好ましくは0〜2
0モル%であり、テレフタル酸単位の割合が30モル%
を越えると、ポリマーの溶媒溶解性が悪く、良好なキャ
ストフィルムが得られない。また、3,3’,5,5’
−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位は50モ
ル%含まれる。3,3’,5,5’−テトラメチル−
4,4’−ビフェノール単位が50モル%以外の場合に
は重合度の高いポリマーが得られないため好ましくな
い。
【0025】該芳香族ポリエステルの固有粘度は、クロ
ロホルム中(濃度=0.1g/dL、温度=30℃)で
0.4dL/g以上、0.7dL/g以上が特に好まし
い。固有粘度が0.4dL/g未満では重合度が低過
ぎ、強靱な組成物が得られない。なお、クロロホルムに
不溶な場合は、1,1,2,2−テトラクロロエタン中
(濃度=0.1g/dL、温度=30℃)で測定され
る。
【0026】なお、本発明の芳香族ポリエステル樹脂組
成物、及びそれから成るフィルム、塗膜には、上記の構
成単位以外に、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、
3,3’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェ
ニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン
酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、1,
5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸、
【0027】1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の
ジカルボン酸、4,4’−ビフェノール、ヒドロキノ
ン、レゾルシン、メチルヒドロキノン、トリメチルヒド
ロキノン、クロロヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノ
ン、ジ−t−ブチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノ
ン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒド
ロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、
ビスフェノールA等の芳香族ジオール、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオー
ル、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサ
ンジオール、
【0028】1,4−シクロヘキサンジメタノール等の
脂肪族、又は脂環式ジオール、及びm−ヒドロキシ安息
香酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等
により導入される構成単位を、本発明の効果を損なわな
い範囲で、共重合成分として含んでいてもよい。
【0029】本発明の芳香族ポリエステルの製造方法と
しては、溶液重縮合法、界面重縮合法、溶融重縮合法等
があるが、好ましくは溶液重縮合法、又は界面重縮合法
が用いられる。中でも、重合度が向上しやすく、また、
製品の着色が少ないことから溶液重縮合が特に好まし
い。溶液重縮合に際し、ジカルボン酸成分としてはジカ
ルボン酸クロリド化合物を用いる。ジオール化合物とジ
カルボン酸クロリド化合物のモル比は1:0.9〜1:
1.10が用いられるが、より高い重合度を得るために
は1:1.00〜1:1.03が特に好ましい。
【0030】また、重合は溶媒中で行い、生成する酸を
中和するための塩基を共存させて行う。用いる塩基とし
てはピリジン、トリエチルアミン等の窒素系の塩基が好
ましい。重合溶媒としてはクロロホルム、1,1,2,
2−テトラクロロエタン、N−メチルピロリドン、テト
ラヒドロフラン等の溶解力の強い溶媒で、生成するポリ
マーを溶解させるものが好ましい。重合開始時点でのモ
ノマー濃度は0.2〜3モル/Lが良く、0.3〜1.
5モル/Lが特に好ましい。
【0031】モノマー濃度が0.2モル/L未満では重
合に時間がかかり、また、重合度の高いポリマーが得ら
れないため好ましくない。モノマー濃度が3モル/Lを
超える場合には重合時に系の粘度が高くなり過ぎて取り
扱いが困難となる。重合条件としては常圧、通常窒素等
の不活性ガス気流中溶媒の沸点以下、好ましくは−20
〜120℃の範囲で行われ、より好ましくは0〜40℃
の温度で行うのがよい。重合温度が120℃を越える場
合には副反応が起こり、重合度の高いポリマーが得られ
難くなるため好ましくない。
【0032】重合時間は特に限定されないが、通常24
時間以内が用いられ、好ましくは12時間以内が用いら
れる。溶液の粘度の上昇に合わせ、温度や濃度を上記範
囲以内で変化させることも用いられる。ポリマーの精製
はポリマー溶液をメタノールやアセトン等の貧溶媒中に
滴下して沈殿させること、及び、メタノール、アセト
ン、水や熱水などから選ばれる一つまたは複数の貧溶媒
で洗浄することにより行われる。
【0033】本発明に用いるポリカーボネート(B)
は、二価フェノール単位と炭酸単位から成る重合物であ
り、特に、ビスフェノールA単位と炭酸単位、ジヒドロ
キシ−ジフェニル−シクロヘキサン単位と炭酸単位から
成る重合物が好ましく用いられる。ポリカーボネートの
製造法は種々の方法が可能であり、例えば、ビスフェノ
ールAとホスゲンとを溶剤中で反応させる界面重縮合
法、ビスフェノールAと炭酸ジフェニルを高温溶融状態
で反応させる溶融重合法などを挙げることができる。該
ポリカーボネートの市販品としては三菱瓦斯化学製のユ
ーピロンなどがあり、これら一般的なポリカーボネート
を用いることができる。
【0034】本発明に用いるポリアリレート(C)は、
二価フェノールと芳香族ジカルボン酸との重合物であ
り、特に、ビスフェノールAとテレフタル酸及び/又は
イソフタル酸との重合物が好ましく用いられる。ポリア
リレートの製造法は種々の方法が可能である。例えば、
ビスフェノールAのアルキルエステルとジカルボン酸を
高温溶融状態で反応させる溶融重合法、ビスフェノール
Aとジカルボン酸クロリドを互いに相溶しない2種の溶
媒に溶解させた後、アルカリ存在下で2液を攪拌混合し
てその界面で重縮合させる界面重合法などを挙げること
ができる。該ポリアリレートの市販品としてはユニチカ
株式会社製のUポリマーなどがあり、これらの市販品を
用いることもできる。
【0035】また、本発明に用いるポリスルホン(D)
は、ビスフェノールAと4,4’−ジクロロジフェニル
スルホンとの重合物である。ポリスルホンの製造方法と
しては、ビスフェノールAを水酸化ナトリウム等の塩基
であらかじめ中和して塩とし、4,4’−ジクロロジフ
ェニルスルホンを添加し、溶媒中で重合する溶液重縮合
法が一般的である。該ポリスルホンの市販品としてはア
モコ製のユーデルなどがあり、これらを用いることが可
能である。
【0036】本発明の樹脂組成物及びフィルム状物は、
溶融ブレンド法、溶液ブレンド法の何れの方法によって
も得ることが可能である。溶融ブレンド法はブレンドす
るポリマーを溶融状態で混練して混合する方法である。
成形温度は樹脂の種類によって異なるため一概には規定
できないが、通常、250〜350℃の範囲で行われ
る。溶融成形法では力学特性に優れた相溶的な樹脂組成
物が得られるが、着色し易いために、無色透明な組成物
を得るためには溶液ブレンド法が好ましく用いられる。
【0037】溶液ブレンド法では、例えば、ポリカーボ
ネート、ポリアリレート、又はポリスルホンと芳香族ポ
リエステルとが溶解する共通溶媒に2つの樹脂を溶解さ
せて、均質混合させた後、溶媒を除去する方法である。
ポリマーの混合溶液をバーコードコート、ディップコー
ト、スピンコートなどの方法で基板上にコーティングし
た後、溶媒キャスト(除去)を行うことで、フィルム状
物、即ち、フィルム、シート、塗膜等のフィルム形状の
成型物を得ることができる。
【0038】溶媒キャストは通常の湿潤空気雰囲気、窒
素雰囲気、乾湿空気雰囲気等の雰囲気下で行われる。キ
ャスト温度は使用する溶媒により異なるが、通常0〜2
00℃の範囲である。更に、最終工程としてフィルム状
物を250℃以下の温度で熱処理を行うことも可能であ
る。本発明のフィルム状物は膜厚が1μmから1mm、
好ましくは5μmから0.3mmの範囲のものである。
また、ポリマーの混合溶液からメタノールやアセトン等
の貧溶媒で沈殿させることによって粉末状の樹脂組成物
を得ることができる。
【0039】溶媒としては、クロロホルム、1,2−ジ
クロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンな
どのハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチル
アセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミ
ド系溶媒、テトラヒドロフラン、アニソール、シクロヘ
キサノン等、これらの混合溶媒の内、所定の割合のポリ
マーを溶解できるものが用いられる。ポリマー溶液の濃
度は通常1〜30重量%の範囲で行われる。
【0040】また、本発明のフィルム状物の特に塗膜は
上述したポリマー溶液を各種基材に塗布し乾燥させるこ
とにより得られる。必要に応じて250℃以下の温度で
熱処理を施すことも可能である。基材としては、アル
ミ、鉄、ステンレス、銅などの金属基材、ポリエチレン
テレフタレート、ポリ塩化ビニールなどのプラステック
板やフィルム、シート、或いはガラス板などが使用され
る。
【0041】本発明の特に注目に値する点は、本発明の
ポリエステル樹脂組成物が相溶的なポリマーブレンド物
である点である。即ち、上述した方法によって得られる
樹脂組成物のガラス転移温度はそれぞれ単独のガラス転
移温度の中間に発現し、ブレンドするそれぞれの単独樹
脂のガラス転移温度域にはガラス転移は発現しない。
【0042】例えば、ポリカーボネートとイソフタル酸
単位を40モル%含んだ芳香族ポリエステルのガラス転
移温度(1Hzのtanδピーク温度)を固体粘弾性測定
によって比べると、市販のポリカーボネート(ユーピロ
ンS2000の;三菱瓦斯化学製)のガラス転移温度は
約150℃であり、イソフタル酸単位を40モル%含ん
だ芳香族ポリエステルのガラス転移温度は約269℃で
ある。両樹脂1:1(重量比)の樹脂組成物のガラス転
移温度は約203℃に発現し、それぞれの樹脂単独のガ
ラス転移域には緩和は発現しない。図1にこの例を示
す。
【0043】同様な現象はポリアリレートとイソフタル
酸単位を40モル%含んだ芳香族ポリエステルとのブレ
ンド、及びポリスルホンとイソフタル酸単位を40モル
%含んだ芳香族ポリエステルとのブレンドについても確
認される。図2及び図3にこの例を示す。
【0044】本発明の樹脂組成物は、通常得られる非相
溶のポリマーブレンド系とは大きく異なり、分子レベル
で均質に混合しており、両樹脂単体の性質とは異なる新
しい性質を有する新規樹脂系を形成するものと考えられ
る。そのため、本発明の樹脂組成物は透明性に優れ、ポ
リカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホンの耐熱
性を向上させるだけでなく、ポリカーボネート、ポリア
リレートの強度、弾性率、ポリカーボネートの表面硬度
及び耐摩耗性等をも向上させる。
【0045】本発明のポリカーボネートと芳香族ポリエ
ステルから成るポリエステル樹脂組成物、及び該樹脂組
成物から成るフィルム状物は、下記の式で示される、本
発明のポリエステル樹脂組成物の摩耗量を、該樹脂組成
物中の原料ポリカーボネートの摩耗量で割った数値、即
ち、摩耗量比が0.85以下、好ましくは0.8以下で
ある。
【0046】(式) (本発明のポリエステル樹脂組成物の摩耗量)/(該樹
脂中の原料ポリカーボネートの摩耗量)≦0.85
【0047】尚、ここで言う摩耗量はテーバ摩耗試験
(摩耗輪:CS−10F、1Kg荷重負荷)で測定され
る磨耗量を言う。
【0048】本発明で特に興味深いことは、実施例でも
示されるように、該樹脂組成物の耐摩耗性がポリカーボ
ネート単独物及び芳香族ポリエステル単独物の摩耗性よ
り優れているものが含まれることである。
【0049】本発明の樹脂組成物における、一般にエン
ジニアリングプラスチックと言われるポリカーボネー
ト、ポリアリレート、ポリスルホン等の、エンジニアリ
ングプラスチックと、芳香族ポリエステルの配合割合
は、市販エンジニアリングプラスチック:芳香族ポリエ
ステルが98:2〜2:98(重量比)、好ましくは9
5:5〜5:95の範囲である。
【0050】芳香族ポリエステルが2重量部未満である
と市販エンジニアリングプラスチックの耐熱性、機械特
性を十分に向上させることができない。また、本発明の
ポリエステル樹脂組成物には本発明の特性を損なわない
範囲で、公知慣用の光安定剤、酸化防止剤などの種々の
添加剤を添加してもよい。
【0051】
【実施例】本発明を実施例によって具体的に説明する
が、本発明は実施例に限られるものではない。また、実
施例中の各種特性値は次の方法で測定した。
【0052】(1)ガラス転移温度 ガラス転移温度は、厚さ100μm、幅5mm、長さ2
0mmのフィルムを用いて、複素弾性率の温度変化を測
定し求めた。複素弾性率の温度変化はセイコー電子工業
株式会社製の固体粘弾性測定装置DMS−200で、2
℃/分で昇温し、1Hzでのtanδのピーク温度をガ
ラス転移温度とした。
【0053】(2)引張破壊試験 引張試験は島津製作所製のオートグラフ2000で行っ
た。サンプル長を10mmとして(厚み=約100μ
m、幅=5mm)、毎分5mmの速度で延伸し、弾性
率、引張強度(最大強度)を測定した。
【0054】(3)光透過率の測定 光透過率測定は日本電色工業株式会社製の光透過率測定
装置MMP−1001DPで行った。厚さ100±10
μmのフィルムを用いて、可視光の波長域の光透過率を
測定した。
【0055】(4)表面硬度の測定 表面硬度の測定は鉛筆硬度を測定することにより行っ
た。
【0056】(5)摩耗量の測定 摩耗量は東洋精機株式会社製のテーバ摩耗試験器を使用
して行った。摩耗輪はCS−10Fを用い、1Kgの荷
重負荷での摩耗量(重量)を測定した。
【0057】(合成例1)攪拌翼、窒素導入口、環流冷
却管を備えた重合装置にイソフタル酸クロリド324.
8g(1.6モル)、テレフタル酸クロリド81.2g
(0.4モル)、3,3’−5,5’−テトラメチル−
4,4’−ビフェノール492.4g(2.0モル)、
ピリジン632.8g(8.0モル)、1,1,2,2
−テトラクロロエタン、4リットルを仕込み、窒素を流
しながら60℃、4時間、更に100℃、2時間重合さ
せた。反応溶液は重合によるポリマー生成により十分に
粘度が上がったので重合操作を終了し、溶液をメタノー
ル20リットル中に徐々に加え沈殿させた。
【0058】得られた沈殿をろ過し、メタノール洗浄、
更に、アセトン洗浄して精製した。得られたポリマーを
十分に乾燥し40モル%のイソフタル酸単位、10モル
%のテレフタル酸単位、50モル%の3,3’,5,
5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位から
成る芳香族ポリエステル(i80TMBC)を得た。収
率は95%であった。i80TMBCはクロロホルム、
1,1,2,2−テトラクロロエタン、N−メチルピロ
リドン(NMP)に可溶であった。
【0059】また、1,1,2,2−テトラクロロエタ
ン中(濃度=0.1g/dL、温度=30℃)でのイン
ヘレント粘度は0.74dL/g、クロロホルム中(濃
度=0.1g/dL、温度=30℃)でのインヘレント
粘度は0.68dL/gであった。
【0060】(合成例2)攪拌翼、窒素導入口、環流冷
却管を備えた重合装置にイソフタル酸クロリド406.
0g(2.0モル)、3,3’−5,5’−テトラメチ
ル−4,4’−ビフェノール492.4g(2.0モ
ル)、ピリジン632.8g(8.0モル)、1,1,
2,2−テトラクロロエタン、4リットルを仕込み、窒
素を流しながら60℃、4時間、更に100℃、2時間
重合させた。反応溶液は重合によるポリマー生成により
十分に粘度が上がったので重合操作を終了し、溶液をメ
タノール20リットル中に徐々に加え沈殿させた。
【0061】得られた沈殿をろ過し、メタノール洗浄、
更に、アセトン洗浄して精製した。得られたポリマーを
十分に乾燥し50モル%のイソフタル酸単位、50モル
%の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビ
フェノール単位から成る芳香族ポリエステル(i100
TMBC)を得た。収率は96%であった。i100T
MBCはクロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロ
エタン、N−メチルピロリドン(NMP)に可溶であっ
た。
【0062】また、1,1,2,2−テトラクロロエタ
ン中(濃度=0.1g/dL、温度=30℃)でのイン
ヘレント粘度は0.72dL/g、クロロホルム中(濃
度=0.1g/dL、温度=30℃)でのインヘレント
粘度は0.60dL/gであった。
【0063】(合成例3)攪拌翼、窒素導入口、環流冷
却管を備えた重合装置にイソフタル酸クロリド165.
7g(0.816モル)、テレフタル酸クロリド41.
4g(0.204モル)、3,3’−5,5’−テトラ
メチル−4,4’−ビフェノール242.3g(1.0
モル)、ピリジン316.4g、クロロホルム4リット
ルを仕込み、20℃窒素雰囲気下で、5時間攪拌し重合
させた。次いで、反応溶液を35Lのメタノール中にゆ
っくりと添加して沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾別
し、アセトン洗浄、更に、メタノール洗浄して精製し
た。
【0064】得られたポリマーを120℃真空下で12
時間乾燥させた。40モル%のイソフタル酸単位、10
モル%のテレフタル酸単位、50モル%の3,3’,
5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位
から成る芳香族ポリエステル(i80TMBC−2)を
得た。収率は94%であった。i80TMBC−2はク
ロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、N
−メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン、
アニソール、ジメチルアセトアミドに可溶であった。ま
た、クロロホルム中(濃度=0.1g/dL、温度=3
0℃)でのインヘレント粘度は1.3dL/gであっ
た。
【0065】(実施例1)合成例1で得られたi80T
MBCの5%クロロホルム溶液とポリカーボネート(三
菱瓦斯化学製、ユーピロン S2000)の10%クロ
ロホルム溶液を調製した。i80TMBC:ポリカーボ
ネートが5:5(重量比)になるように溶液を調製し、
均質に混合した後、ガラス板上に塗布した。塗膜をシャ
ーレ内に入れ、1日かけて溶媒キャストを行い無色透明
なキャストフィルムを得た。フィルムは80℃で2時
間、更に150℃で3間熱処理を行った。
【0066】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は90%であり、無色透明のフィルムであった。また、
組成物の固体粘弾性測定におけるtanδデータを、重
合物1及びポリカーボネートの結果と共に図1に示す。
図1中の(a)はポリカーボネート、(b)は本発明の
ポリエステル樹脂組成物、(c)はi80TMBCのt
anδと温度との関係を示す。
【0067】ポリカーボネートのガラス転移温度は15
0℃、i80TMBCのガラス転移温度は268℃、本
発明の実施例1のポリエステル樹脂組成物のガラス転移
温度は203℃であり、i80TMBC及びポリカーボ
ネートのガラス転移域に緩和は現れなかった。また、本
発明の実施例1のポリエステル樹脂組成物の引張強度、
弾性率、鉛筆硬度はいずれもポリカーボネートフィルム
に比して優れていた。尚、i80TMBCの引張強度は
11kg/mm2、引張弾性率は200kg/mm2、鉛
筆硬度はH、光透過率は90%であった。
【0068】(実施例2)合成例1で得られたi80T
MBCの5%クロロホルム溶液とポリアリレート(ユニ
チカ株式会社製、Uポリマー U−100)の10%ク
ロロホルム溶液を調製した。i80TMBC:ポリアリ
レートが5:5(重量比)になるように溶液を調製し、
均質に混合した後、ガラス板上に塗布した。塗膜をシャ
ーレ内に入れ、1日かけて溶媒キャストを行い無色透明
なキャストフィルムを得た。フィルムは80℃で2時
間、更に150℃で3時間熱処理を行った。
【0069】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は90%であり、無色透明のフィルムであった。また、
組成物の固体粘弾性測定におけるtanδデータを、i
80TMBC及びポリアリレートの結果と共に図2に示
す。
【0070】図2中の(a)はポリアリレート、(b)
は本発明のポリエステル樹脂組成物、(c)は芳香族ポ
リエステル(i80TMBC)のtanδと温度との関
係を示す。ポリアリレートのガラス転移温度は203
℃、i80TMBCのガラス転移温度は268℃、本発
明の実施例2のポリエステル樹脂組成物のガラス転移温
度は231℃であり、i80TMBC及びポリアリレー
トのガラス転移域に緩和は現れなかった。また、本発明
の実施例2のポリエステル樹脂組成物のフィルムの引張
強度、引張弾性率はいずれもポリアリレートフィルムに
比して優れていた。これらを表1に示す。
【0071】(実施例3)合成例1で得られたi80T
MBCの5%クロロホルム溶液とポリスルホン(アコモ
製、ユーデル)の10%クロロホルム溶液を調製した。
i80TMBC:ポリサルホンが5:5(重量比)にな
るように溶液を調製し、均質に混合した後、ガラス板上
に塗布した。塗膜をシャーレ内に入れ、1日かけて溶媒
キャストを行い無色透明なキャストフィルムを得た。フ
ィルムは80℃で2時間、更に150℃で3時間熱処理
を行った。
【0072】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は90%であり、無色透明のフィルムであった。また、
本発明のポリエステル樹脂組成物の固体粘弾性測定にお
けるtanδデータをi80TMBC及びポリスルホン
の結果と共に図3に示す。
【0073】図3中の(a)はポリスルホン、(b)は
本発明のポリエステル樹脂組成物、(c)はi80TM
BCのtanδと温度との関係を示す。ポリスルホンの
ガラス転移温度は193℃、i80TMBCのガラス転
移温度は268℃、本発明の実施例3のポリエステル樹
脂組成物のガラス転移温度は223℃であり、i80T
MBC及びポリスルホンのガラス転移域に緩和は現れな
かった。また、本発明の実施例3のポリエステル樹脂組
成物のフィルムの引張強度、引張弾性率はいずれもポリ
スルホンフィルムに比して優れていた。これらを表1に
示す。
【0074】(実施例4)合成例2で得られたi100
TMBCの5%クロロホルム溶液とポリカーボネート
(三菱瓦斯化学製、ユーピロン S2000)の10%
クロロホルム溶液を調製した。i100TMBC:ポリ
カーボネートが5:5(重量比)になるように溶液を調
製し、均質に混合した後、ガラス板上に塗布した。塗膜
をシャーレ内に入れ、1日かけて溶媒キャストを行い無
色透明なキャストフィルムを得た。フィルムは80℃で
2時間、更に150℃で3時間熱処理を行った。
【0075】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は90%であり、無色透明のフィルムであった。また、
組成物の固体粘弾性測定におけるtanδデータによる
ガラス転移温度は205℃であり、i100TMBC及
びポリカーボネートのガラス転移域に緩和は現れなかっ
た。尚、i100TMBCのガラス転移温度は267℃
であった。
【0076】また、本発明の実施例4のポリエステル樹
脂組成物の引張強度、弾性率、鉛筆硬度は、いずれもポ
リカーボネートフィルムに比して優れていた。尚、i1
00TMBCの引張強度は10kg/mm2、引張弾性
率は191kg/mm2、鉛筆硬度はH、光透過率は9
0%であった。
【0077】(実施例5)合成例2で得られたi100
TMBCの5%クロロホルム溶液とポリアリレート(ユ
ニチカ株式会社製、Uポリマー U−100)の10%
クロロホルム溶液を調製した。i100TMBC:ポリ
アリレートが5:5(重量比)になるように溶液を調製
し、均質に混合した後、ガラス板上に塗布した。塗膜を
シャーレ内に入れ、1日かけて溶媒キャストを行い無色
透明なキャストフィルムを得た。フィルムは80℃で2
時間、更に150℃で3時間熱処理を行った。
【0078】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は89%であり、無色透明のフィルムであった。また、
組成物の固体粘弾性測定におけるtanδデータによる
ガラス転移温度は232℃であり、i100TMBC及
びポリアリレートのガラス転移域に緩和は現れなかっ
た。
【0079】また、本発明の実施例5のポリエステル樹
脂組成物のフィルムの引張強度、引張弾性率はいずれも
ポリアリレートフィルムに比して優れていた。これらを
表1に示す。尚、i100TMBCの引張強度は10K
g/mm2、引張弾性率は191Kg/mm2、光透過率
90%であった。
【0080】(実施例6)合成例2で得られたi100
TMBCの5%クロロホルム溶液とポリスルホン(アコ
モ製、ユーデル)の10%クロロホルム溶液を調製し
た。i100TMBC:ポリサルホンが5:5(重量
比)になるように溶液を調製し、均質に混合した後、ガ
ラス板上に塗布した。塗膜をシャーレ内に入れ、1日か
けて溶媒キャストを行い無色透明なキャストフィルムを
得た。フィルムは80℃で2時間、更に150℃で3時
間熱処理を行った。
【0081】キャストフィルムの可視光域での光透過率
は89%であり、無色透明のフィルムであった。また、
組成物の固体粘弾性測定におけるtanδデータによる
ガラス転移温度は225℃であり、i100TMBC及
びポリスルホンのガラス転移域に緩和は現れなかった。
【0082】また、本発明の実施例6のポリエステル樹
脂組成物のフィルムの引張強度、引張弾性率はいずれも
ポリスルホンフィルムに比して優れていた。これらを表
1に示す。
【0083】(比較例1)比較としてポリカーボネート
フィルムの特性を測定した。フィルムはクロロホルムの
代わりに1,1,2,2−テトラクロロエタンとクロロ
ホルムとの混合溶媒(混合重量比=1:1)を用い、ま
た、得られたフィルムを150℃で100時間真空乾燥
した以外は実施例1と同様な方法で調整した。キャスト
フィルムの可視光域での光透過率は90%で、無色透明
であったが、ガラス転移温度は150℃、引張強度は
7.4Kg/mm2、弾性率は125Kg/mm2であ
り、実施例1及び4の組成物フィルムに比べ何れも劣っ
ている。
【0084】(比較例2)比較としてポリアリレートフ
ィルムの特性を測定した。フィルムは実施例2と同様な
方法で調整した。キャストフィルムの可視光域での光透
過率は91%で、無色透明であったが、ガラス転移温度
は203℃、引張強度は7Kg/mm2、弾性率は15
5Kg/mm2であり、実施例2及び5の組成物フィル
ムに比べ何れも劣っている。
【0085】(比較例3)比較としてポリスルホンフィ
ルムの特性を測定した。フィルムは実施例3と同様な方
法で調整した。キャストフィルムの可視光域での光透過
率は89%で、無色透明であったが、ガラス転移温度は
193℃、引張強度は8Kg/mm2であり、実施例3
及び6の組成物フィルムに比べ劣っている。表1に実施
例と比較例の平行透過率、tanδ、引張強度、及び引
張弾性率を示す。
【0086】
【表1】
【0087】(実施例7〜10、及び参考例1)合成例
3で得たi80TMBC−2とポリカーボネートとを表
2に示す割合でクロロホルムと1,1,2,2−テトラ
クロロエタン(混合重量比=1:1)の混合溶媒に溶解
(濃度=8重量%)させ、ガラス板上に塗布しシャレー
内で12時間かけてキャストしてフィルムを得た。フィ
ルムは150℃で十分に乾燥させた。フィルムの光透過
率、tanδ、及び表面硬度を表2に、引張強度、弾性
率、摩耗量比(=組成物の摩耗量/ポリカーボネートの
摩耗量)を表3に示す。
【0088】ガラス転移温度(tanδピーク温度)と
引張強度はi80TMBC−2の添加量に比例して向上
するのが判る。また、摩耗量は実施例7が18mg/k
m、実施例8が15mg/km、実施例9が17mg/
kmであり、いずれもポリカーボネートの28mg/k
mとi80TMBC−2の20mg/kmより優れてい
る。なお、参考例1として、i80TMBC−2のフィ
ルム特性を表2と表3に示す。i80TMBC−2のフ
ィルムは実施例7と同様な方法で作成した。
【0089】また、実施例10として、実施例8と同様
な組成、同様な方法でポリイミドフィルム上に塗布し塗
膜(膜厚100μm)を得た。塗膜は無色透明で、表面
硬度はH、比摩耗量は0.53であり、実施例8のフィ
ルムと同じ特性であった。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】(実施例11、参考例2)合成例3と同様
な方法でテレフタル酸単位を含まない、50モル%のイ
ソフタル酸単位、50モル%の3,3’,5,5’−テ
トラメチル−4,4’−ビフェノール単位から成る芳香
族ポリエステル重合物(i100TMBC−2)を得
た。 クロロホルム中(濃度=0.1g/dL、温度=
30℃)でのインヘレント粘度は1.2dL/gであっ
た。
【0093】実施例8と同じ組成と同じ方法でi100
TMBC−2とポリカーボネートとのブレンドフィルム
(重量比=1:1)を作製した。ブレンドフィルムの光
透過率は90%、tanδピーク温度は203℃、引張
強度は8.2(kg/mm2)、弾性率は162(kg
/mm2)、鉛筆硬度がH、比摩耗量が0.71(摩耗
量=20mg/km)であった。
【0094】参考例2として、実施例10と同様にi1
00TMBC−2のフィルムを作製し特性を測定した。
光透過率は90%、tanδピーク温度は278℃、引
張強度は9.7(kg/mm2)、弾性率は173(k
g/mm2)、鉛筆硬度が2H、摩耗量が22mg/k
mであった。実施例10の摩耗量はポリカーボネートの
28mg/kmとi100TMBC−2の22mg/k
mより優れている。
【0095】(実施例12、参考例3)合成例と同様な
方法で35モル%のイソフタル酸単位、15モル%のテ
レフタル酸単位、50モル%の3,3’,5,5’−テ
トラメチル−4,4’−ビフェノール単位から成る芳香
族ポリエステル(i70TMBC)を得た。収率は93
%であった。i70TMBCはクロロホルム、1,1,
2,2−テトラクロロエタンに可溶であった。また、ク
ロロホルム中(濃度=0.1g/dL、温度=30℃)
でのインヘレント粘度は0.95dL/gであった。
【0096】実施例11と同じ組成と同じ方法でi70
TMBCとポリカーボネートとのブレンドフィルム(重
量比=1:1)を作製した。ブレンドフィルムの光透過
率は90%、tanδピーク温度は204℃、引張強度
は9.2(kg/mm2)、弾性率は163(kg/m
2)、鉛筆硬度がHであった。何れもポリカーボネー
トに比して優れていた。
【0097】参考例3として、実施例12と同様な方法
でi70TMBCのフィルムを作製し特性を測定した。
光透過率は90%、tanδピーク温度は276℃、引
張強度は10.5(kg/mm2)、弾性率は183
(kg/mm2)、鉛筆硬度が2Hであった。
【0098】
【発明の効果】本発明のポリエステル樹脂は分子レベル
で相溶的に混合し、該ポリエステル樹脂組成物から得ら
れるフィルム状物は、無色透明で、且つ、耐熱性、表面
硬度、機械特性に優れており、光学材料、記録材料、建
築、自動車、医療、食品などの広い分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 芳香族ポリエステル(i80TMBC)、ポ
リカーボネート、及び本発明の実施例1のポリエステル
樹脂組成物のtanδと温度の関係を示す図である。縦
軸はtanδを横軸は温度(℃)を表す。
【図2】 芳香族ポリエステル(i80TMBC)、ポ
リアリレート、及び本発明の実施例1のポリエステル樹
脂組成物のtanδと温度の関係を示す図である。縦軸
はtanδを横軸は温度(℃)を表す。
【図3】 芳香族ポリエステル(i80TMBC)、ポ
リスルホン、及び本発明の実施例1のポリエステル樹脂
組成物のtanδと温度の関係を示す図である。縦軸は
tanδを横軸は温度(℃)を表す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 20〜50モル%のイソフタル酸単位
    と、0〜30モル%のテレフタル酸単位と、50モル%
    の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフ
    ェノール単位とを必須成分とする芳香族ポリエステル
    (A)2〜98重量%と、ポリカーボネート(B)98
    〜2重量%とから成るポリエステル樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 20〜50モル%のイソフタル酸単位
    と、0〜30モル%のテレフタル酸単位と、50モル%
    の3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフ
    ェノール単位とを必須成分とする芳香族ポリエステル
    (A)2〜98重量%と、ポリアリレート(C)、ポリ
    スルホン(D)から選ばれる一種以上のポリマー98〜
    2重量%とから成るポリエステル樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 (ポリエステル樹脂組成物の摩耗量)/
    (ポリエステル樹脂組成物中の原料ポリカーボネートの
    摩耗量)≦0.85であることを特徴とする請求項1に
    記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一つに記載のポ
    リエステル樹脂組成物から成るフィルム状物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか一つに記載のポ
    リエステル樹脂組成物を溶解した溶液から、溶媒を除去
    することを特徴とするポリエステル樹脂組成物フィルム
    状物の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002348454A (ja) * 2001-05-25 2002-12-04 Tsutsunaka Plast Ind Co Ltd ポリカーボネート樹脂組成物
JP2019112612A (ja) * 2017-12-22 2019-07-11 中興化成工業株式会社 樹脂成形体

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