JPH1122767A - ブレーキパッドおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ブレーキパッド成型用金型の内壁面がブレーキ
パッドの摩擦材と接触して摩耗することを防止する。 【解決手段】本発明のブレーキパッドの製造方法におい
ては、ブレーキパッド成形用金型１を用いてブレーキパ
ッドを成形する際に、ブレーキパッド成形用金型の内壁
面２と摩擦材４との間に予め固体潤滑剤の被膜３を介在
させる。これによりブレーキパッド成形用金型１の内壁
面２が摩耗することがない。また、本発明の製造方法に
よって製造されたブレーキパッドは、その側面が固体潤
滑剤の被膜によって覆われる。これにより、ディスクロ
ータの表面には固体潤滑剤の被膜部分が最初に食い付く
ので、摩擦材の端部にスティックスリップ現象が発生す
ることを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は例えば自動車のディ
スクブレーキに用いられるブレーキパッドの製造方法に
関し、より詳しくはブレーキパッドの成形に用いる成形
用金型の摩耗を減少させる技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、例えば自動車のディスクブレーキ
に用いられるブレーキパッドは、スチール繊維等の繊維
基材、炭酸カルシウム、ゴム粉末、カシューダスト、黒
鉛等の摩擦・摩耗調整材、およびこれらの成分を結合す
るフェノール樹脂等の結合剤から成形される。通常の製
造工程において、これらの各種成分を含む粉末原料は、
攪拌混合された後に予備成形用金型に投入され、突き固
められて所定の形状に予備成形される。次いで、予備成
形された原料はブレーキパッドの裏金とともに熱成形金
型に投入され、高温高圧力下で熱成形される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ブレー
キパッド成形用の原材料は、ディスクロータに対する摩
擦係数を向上させるために金属酸化物であるシリカ、ジ
ルコニア、アルミナ等の固い材料又は鋭利な材料を含有
するため、成形回数を重ねるとブレーキパッド成形用金
型の内面を摩耗させてしまう。これにより、例えば予備
成形されたブレーキパッドと熱成形用金型の内壁面との
間に隙間が生じ、熱成形後のブレーキパッドにバリが発
生する等、種々の問題点が発生している。

【０００４】そこで、本発明の目的は、上述した従来技
術が有する問題点を解消し、ブレーキパッド成形用金型
の内壁面の摩耗を防止し、金型の寿命を延ばすことがで
きるブレーキパッドの製造方法を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明のディスクブレーキ用ブレーキパッドの製造
方法においては、ブレーキパッド成形用金型を用いてブ
レーキパッドの摩擦材を形成する際に、ブレーキパッド
成形用金型の内壁面とブレーキパッドの摩擦材との間
に、固体潤滑剤を含む被膜を予め介在させる。前記被膜
は、ブレーキパッド成形用金型の内壁面に塗布される、
固体潤滑剤を含んだ離型剤とすることができる。また、
所定の形状に突き固める予備成形で摩擦材の原材料粉末
をブレーキパッド成形用金型に投入する前に、固体潤滑
剤の粉末を投入して突き固め、ブレーキパッド成形用金
型の内壁面に前記被膜を形成する構成とすることができ
る。

【０００６】すなわち、本発明のブレーキパッドの製造
方法によれば、ブレーキパッド成形用金型を用いてブレ
ーキパッドを成形する際に、ブレーキパッド成形用金型
の内壁面とブレーキパッドの摩擦材との間に固体潤滑剤
を含む被膜が介在するので、ブレーキパッド成形用金型
の内壁面と摩擦材とが直接接触することがない。これに
より、摩擦材に含まれる成分がブレーキパッド成形用金
型の内壁面を摩耗させることを防止できる。

【０００７】また、本発明のブレーキパッドの製造方法
によつて製造されるブレーキパッドは、その摩擦材の側
面に固体潤滑剤を含んだ被膜を有する。これにより、こ
のブレーキパッドの摩擦材がディスクロータ若しくはブ
レーキドラム等に押し付けられると、まず固体潤滑剤を
含んだ被膜で覆われた角部がディスクロータ若しくはブ
レーキドラムの表面と接触するので、摩擦材の角部がス
ムーズに接触し、スティックスリップ現象が生じること
がなく、ブレーキ制動時の鳴きの発生を防止することが
できる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明によるディスクブレ
ーキ用ブレーキパッドおよびその製造方法の各実施形態
を、図１乃至図９を参照して詳細に説明する。ここで、
図１はブレーキパッド用熱成形金型の内壁面に離型剤を
塗布する状態を示した断面図、図２は図１に示した熱成
形金型を用いてブレーキパッドを熱成形する状態を示し
た断面図、図３はブレーキパッド用予備成形用金型の内
部に固体潤滑剤の粉末を投入した状態を示す断面図、図
４は図３中に示した固体潤滑剤を圧縮して予備成形用金
型の内壁面に密着させた状態を示す断面図、図５は内壁
面に固体潤滑剤が密着した予備成形用金型内にブレーキ
パッドの原材料粉末を投入した状態を示す断面図、図６
は図５に示した原材料粉末を予備成形した状態を示す断
面図、図７は図６に示したブレーキパッドを熱成形した
状態を示す断面図、図８は図７に示したブレーキパッド
の平面図、図９は図８に示したブレーキパッドをディス
クロータに押し付けた状態を示す断面図である。

【０００９】［第１実施形態］まず、第１実施形態のブ
レーキパッドの製造方法について図１および図２を参照
して説明する。本第１実施形態のブレーキパッドの製造
方法おいては、図１に示したように、ブレーキパッドを
熱成形する熱成形用金型１の内壁面２に向かって、固体
潤滑剤としての黒鉛、二硫化モリブデン、三硫化アンチ
モン等の微粉末を含有した離型剤をノズルＮを用いてス
プレー塗布することにより、固体潤滑剤の被膜３を形成
する。次いで、図２に示したように、予備成形された摩
擦材４および裏金５を前記熱成形用金型１の内部にセッ
トした状態で、所定の温度および圧力下でブレーキパッ
ド６を熱成形する。

【００１０】これにより、熱成形用金型１の内壁面２と
摩擦材４との間に黒鉛、二硫化モリブデン、三硫化アン
チモン等の固体潤滑剤の被膜３が介在するので、熱成形
用金型１の内壁面２と摩擦材４とが直接接触することが
ない。また、上型７によって予備成形された摩擦材４を
さらに圧縮する際には、固体潤滑剤の作用により、熱成
形用金型１の内壁面２と摩擦材４との間の摩擦、および
熱成形用金型１の内壁面２と上型７との間の摩擦が減少
する。したがって、摩擦材４に含まれるシリカ、ジルコ
ニア、アルミナ等の金属酸化物による熱成形用金型１の
内壁面２の摩耗、および熱成形用金型１の内壁面２と上
型７との摺動による摩耗の両方を確実に防止することが
できる。

【００１１】［第２実施形態］次に、第２実施形態のブ
レーキパッドの製造方法について図３乃至図７を参照し
て説明する。本第２実施形態においては、ブレーキパッ
ドの摩擦材を構成する粉末原料を所定の形状に突き固め
る予備成形を行う前に、図３に示したように、予備成形
用金型１１の内部に黒鉛、二硫化モリブデン、三硫化ア
ンチモン等の固体潤滑剤１２の粉末を投入する。次い
で、図４に示したように上型１３を用いて固体潤滑剤１
２を圧縮し、固体潤滑剤１２を予備成形用金型１１の内
壁面１４に密着させた被膜１５を形成する。

【００１２】その後、図５に示したように、ブレーキパ
ッドの摩擦材を構成する粉末原料１６およびブレーキパ
ッドの裏金に密着する２層材１７をそれぞれ予備成形用
金型１１内に順次投入する。次いで、図６に示したよう
に上型１８を用いて粉末原料１６，１７を圧縮し、所定
の形状に突き固めた摩擦材１９を得る。このとき、予備
成形用金型１１の内壁面１４は固体潤滑剤１２の被膜１
５により覆われ、粉末原料１６，１７と直接接触するこ
とがない。したがって、予備成形用金型１１の内壁面１
４が粉末原料１６，１７との接触によって摩耗すること
を確実に防止することができる。また、予備成形用金型
１１の内壁面１４と上型１８との摺動による摩耗も防止
することができる。

【００１３】また、上述のように予備成形された摩擦材
１９は、図７に示したように、その側面および上面が固
体潤滑剤１２の被膜１５により覆われている。これによ
り、この摩擦材１９を熱成形金型２１内に投入すると、
熱成形金型２１の内壁面２２及び上型２３の下面に対し
摩擦材１９が直接接触することがない。したがって、熱
成形金型２１を用いてブレーキパッド３０を熱成形する
際に、熱成形金型２１の内壁面２２が摩擦材１９との接
触によって摩耗することを確実に防止することができ
る。

【００１４】次に、上述のように製造されたブレーキパ
ッドの作用について、図８および図９を参照して説明す
る。図８に示したように、前述した第１実施形態、第２
実施形態の少なくとも一方でのブレーキパッドの製造方
法により製造されたブレーキパッド３０は、裏金３１と
摩擦材３２とを有している。前記摩擦材３２は、熱成形
が完了した状態ではその表面全体が固体潤滑剤の被膜３
３により完全に覆われているが、ディスクロータと接触
する部分は研削されてその表面状態が整えられる。これ
により、完成状態のブレーキパッド３０は、図８に示し
たようにその側面のみが固体潤滑剤の被膜３３により覆
われる。

【００１５】一方、このように製造されたブレーキパッ
ド３０を図９に示したようにディスクロータＤに押し付
けると、摩擦材３２の側面を覆う固体潤滑剤の被膜３３
で覆われた角部が最初にディスクロータＤの表面に接触
する。これにより、摩擦材３２の端部のディスクロータ
Ｄの表面に対するスティックスリップ現象を防止できる
から、ブレーキ制動時に発生する鳴きを確実に防止する
ことができる。

【００１６】以上、本発明に係るブレーキパッドおよび
その製造方法の各実施形態ついて詳しく説明したが、本
発明は上述した実施形態によって限定されるものではな
く、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例
えば、上述した各実施形態においては、何れもディスク
ブレーキ用のブレーキパッドについて説明しているが、
ドラムブレーキ用のブレーキシューの製造にも応用する
ことができることは言うまでもない。

【００１７】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によるブレーキパッドの製造方法は、ブレーキパッド成
形用金型を用いてブレーキパッドを成形する際に、ブレ
ーキパッド成形用金型の内壁面とブレーキパッドの摩擦
材との間に固体潤滑剤の被膜を介在させるものであるか
ら、ブレーキパッド成形用金型の内壁面の摩耗を確実に
防止することができる。したがって、ブレーキパッド成
形用金型の内壁面と摩擦材を圧縮する上型との間に隙間
が生じて、成形した摩擦材にバリが発生する等の問題点
を解消することができるので、バリ取り等の余分な作業
を省くことができ、ブレーキパッドの製造原価を低減さ
せつつ品質を向上させることができる。さらに、本発明
のブレーキパッドの製造方法によって製造されたブレー
キパッドは、その側面が固体潤滑剤の被膜によって覆わ
れる。したがって、例えばディスクロータの表面には固
体潤滑剤の被膜部分が最初に食い付くので、摩擦材の端
部にスティックスリップ現象が発生することを防止でき
ることとなり、ブレーキ制動時の鳴きの発生を防止する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】ブレーキパッド用熱成形金型の内壁面に離型剤
を塗布する状態を示した断面図。

【図２】図１に示した熱成形金型を用いてブレーキパッ
ドを熱成形する状態を示した断面図。

【図３】ブレーキパッド用予備成形用金型の内部に固体
潤滑剤の粉末を投入した状態を示す断面図。

【図４】図３中に示した固体潤滑剤を圧縮して予備成形
用金型の内壁面に密着させた状態を示す断面図。

【図５】内壁面に固体潤滑剤が密着した予備成形用金型
内にブレーキパッドの原材料粉末を投入した状態を示す
断面図。

【図６】図５に示した原材料粉末を予備成形した状態を
示す断面図。

【図７】図６に示したブレーキパッドを熱成形した状態
を示す断面図。

【図８】図７に示したブレーキパッドの平面図。

【図９】図８に示したブレーキパッドをディスクロータ
に押し付けた状態を示す断面図。

【符号の説明】

１ 熱成形用金型 ２ 内壁面 ３ 固体潤滑剤の被膜 ４ 摩擦材 ５ 裏金 ６ ブレーキパッド ７ 上型 １１ 予備成形用金型 １２ 固体潤滑剤 １３ 上型 １４ 内壁面 １５ 固体潤滑剤の被膜 １６ 摩擦材の粉末原料 １７ 摩擦材の粉末原料（２層材） １８ 上型 １９ 摩擦材 ２１ 熱成形金型 ２２ 内壁面 ３０ ブレーキパッド ３１ 裏金 ３２ 摩擦材 ３３ 固体潤滑剤の被膜 Ｄ ディスクロータ Ｎ ノズル

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ブレーキパッド成形用金型の内壁面とブレ
   ーキパッドの摩擦材との間に、固体潤滑剤を含む被膜を
   介在させた状態で、前記ブレーキパッド成形用金型を用
   いて前記摩擦材を成形することを特徴とするブレーキパ
   ッドの製造方法。
2. 【請求項２】前記被膜を、前記ブレーキパッド成形用金
   型の内壁面に塗布される前記固体潤滑剤を含んだ離型剤
   によって形成することを特徴とする請求項１に記載のブ
   レーキパッドの製造方法。
3. 【請求項３】所定の形状に突き固める予備成形のために
   前記摩擦材の原材料粉末を前記ブレーキパッド成形用金
   型に投入する前に、前記固体潤滑剤の粉末を前記予備成
   形金型に投入して突き固めることでブレーキパッド成形
   用金型の内壁面に前記被膜を形成することを特徴とする
   請求項１に記載のブレーキパッドの製造方法。
4. 【請求項４】ブレーキパッド成形用金型の内壁面とブレ
   ーキパッドの摩擦材との間に固体潤滑剤を含む被膜を介
   在させた状態で成形され、該摩擦材側面に前記固体潤滑
   剤を含む被膜を備えることを特徴とするブレーキパッ
   ド。