JPH11223749A - 光ファイバテープ心線の製造方法及び製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 紫外線硬化型樹脂の硬化時の加工歪みの残留
をなくして、伝送特性に優れた光ファイバテープ心線の
製造方法及び製造装置を得る。 【解決手段】 整列状態で搬送される複数本の光ファイ
バ素線２は、樹脂被覆装置９による樹脂被覆処理が開始
される直前位置の第１引取装置１７から樹脂硬化装置１
０による樹脂硬化処理が終了する直後位置の第２引取装
置１８までの搬送区間に限って、荷重負荷手段２０によ
り、樹脂層の硬化時の収縮による加工歪みの残留を防止
するための張力負荷を行う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、平面状に整列させ
た複数本の光ファイバ素線を紫外線硬化型樹脂層で被覆
して形成される光ファイバテープ心線の製造方法及び製
造装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、情報通信における質、量の向上の
要求に伴い、光ファイバケーブルの多心化がますます求
められるようになってきている。図２は、多心型光ファ
イバケーブル用に開発された光ファイバテープ心線の横
断面を示したものである。この光ファイバテープ心線１
は、平面状に整列させた複数本（図では４本）の光ファ
イバ素線２の周囲を紫外線硬化型樹脂層３で被覆した構
成からなる。

【０００３】図３は、前述した光ファイバテープ心線１
を製造する製造装置の従来例を示したものである。ここ
に示した製造装置５は、先ず、複数個の送出ドラム７か
ら送出される複数本の光ファイバ素線２を集線治具８に
よって所定の間隔で配置して平面状に整列させる。次い
で、樹脂被覆装置９が、集線治具８によって整列された
光ファイバ素線２の周囲に紫外線硬化型樹脂を塗布して
紫外線硬化型樹脂層（図２の符号３参照）を形成する。
更にその後、樹脂硬化装置１０が紫外線を紫外線硬化型
樹脂層３に照射して未硬化状態の紫外線硬化型樹脂層３
を硬化させてテープ状をなす光ファイバテープ心線１を
生成する。そして、光ファイバテープ心線１は、巻き取
りドラム１２によって巻き取られる。なお、送出ドラム
７から巻き取りドラム１２に至るファイバ素線２の搬送
経路には、光ファイバ素線２の走行を案内するガイドロ
ーラ１３が適宜箇所に配備されている。

【０００４】ところで、上記した製造工程中、未硬化状
態の紫外線硬化型樹脂は硬化する際に収縮する。このた
め、光ファイバ素線２は整列状態（形状）に乱れを生じ
て、加工歪みが製造された光ファイバテープ心線内に残
留してしまう。そして、このような加工歪みの残留した
光ファイバテープ心線に引っ張り応力が作用すると、各
光ファイバ素線に加わる応力が不均一となるため、伝送
特性に悪影響を及ぼす。

【０００５】そこで、従来より、紫外線硬化型樹脂層の
収縮を防止することを目的として、各光ファイバ素線２
に対し張力を負荷することが提案されている。そして、
この張力負荷は、例えば巻き取りドラム１２の巻き取り
力を増大させるなどの手法により、製造ラインの全域に
わたって与えられた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、張力は、光
ファイバ素線２を単純に製造ライン上で樹脂被覆処理や
樹脂硬化処理に適した速度で走行させる目的で負荷する
場合と比較して、かなり大きな値となる。しかし、この
ような高張力が製造ラインの全域で作用すると、紫外線
硬化型樹脂層による加工歪みを防止することができて
も、光ファイバ素線２自体が常時作用する高張力のため
に物理的なダメージを受け、結果的に、品質の劣化等が
生じる虞があった。

【０００７】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
製造された光ファイバテープ心線に、紫外線硬化型樹脂
の硬化による加工歪みが残留するのを防止できる光ファ
イバテープ心線の製造方法及び製造装置を提供し、伝送
特性に優れた高品質の製品を製造することを目的とす
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係る光ファイバテープ心線の製造方法は、複
数本の光ファイバ素線を平面状に整列させる集線整列処
理と、整列された光ファイバ素線に紫外線硬化型樹脂を
塗布する樹脂被覆処理と、紫外線照射し塗布された樹脂
層を硬化する樹脂硬化処理と、を順次実施して製造する
光ファイバテープ心線の製造方法において、前記集線整
列処理を経て整列状態で搬送される光ファイバ素線に対
し、前記樹脂被覆処理が開始される直前から前記樹脂硬
化処理が終了するまでの搬送区間において所定の張力負
荷を付与して前記紫外線硬化型樹脂層の硬化処理時の収
縮現象による加工歪みを防止することを特徴とする。

【０００９】また、上記目的を達成するための本発明に
係る光ファイバテープ心線の製造装置は、上記した製造
方法を実現するもので、送出ドラムから送出する複数本
の光ファイバ素線を平面状に整列させる集線治具と、整
列された光ファイバ素線に紫外線硬化型樹脂を塗布する
樹脂被覆装置と、紫外線を照射し塗布された樹脂層を硬
化する樹脂硬化装置と、樹脂硬化処理し生成された光フ
ァイバテープ心線を巻き取る巻き取りドラムとを具備し
た光ファイバテープ心線の製造装置において、前記樹脂
被覆装置の直前に装備され整列状態の光ファイバ素線の
引き取りを制御する第１引取装置と、前記樹脂硬化装置
の出力側に装備され紫外線硬化型樹脂層を硬化処理した
光ファイバテープ心線の引き取り制御する第２引取装置
と、前記第１引取装置と前記第２引取装置との間であっ
て、かつ前記第２引取装置の直前の適宜位置に装備され
各光ファイバ素線に対し所定の張力負荷を付与して前記
紫外線硬化型樹脂層の硬化処理時の収縮現象による加工
歪みを防止する荷重負荷手段とを別途備えたことを特徴
とする。

【００１０】そして、上記構成によれば、紫外線硬化型
樹脂層の硬化時の収縮現象の影響による加工歪みの残留
を防止するために、整列させた複数本の各光ファイバ素
線には、前記紫外線硬化型樹脂層の収縮力を相殺する張
力を負荷する。その結果、紫外線硬化型樹脂の硬化時の
加工歪みが防止される。更に、紫外線硬化型樹脂の硬化
時の加工歪みを防止することを目的とした張力負荷は、
樹脂被覆処理が開始される直前の位置から樹脂硬化処理
が終了する直後の位置までの必要最小限の搬送区間に限
って実施するため、光ファイバ素線自体が高張力に晒さ
れる時間が短く、光ファイバ素線自体が高張力によって
ダメージを受けることを回避することができる。

【００１１】なお、前記荷重負荷手段は、好ましくは、
前記第１引取装置と前記第２引取装置との間に架設され
た光ファイバ素線上に載置の動滑車型重りによって構成
するとよい。このようにすると、光ファイバ素線に対す
る安定した張力負荷を、単純な装置で実現できる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る光ファイバテ
ープ心線の製造方法及び製造装置の好適な実施の形態を
添付図面に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明に
係る光ファイバテープ心線の製造方法を実現する製造装
置の一実施形態を示したものである。

【００１３】この一実施形態の製造装置１５は、図２に
示した光ファイバテープ心線１を製造するためのもの
で、複数個の送出ドラム７から送出する複数本の光ファ
イバ素線２を平面状に整列させる集線治具８と、整列さ
れた複数本の光ファイバ素線２の周囲に紫外線硬化型樹
脂を塗布する樹脂被覆装置９と、ＵＶランプにより紫外
線を照射して塗布された未硬化状態の紫外線硬化型樹脂
層（図２の符号３参照）を硬化させてテープ状の光ファ
イバテープ心線１を生成する樹脂硬化装置１０と、前記
樹脂硬化処理によって生成された光ファイバテープ心線
１を巻き取る巻き取りドラム１２とを備える点では、先
の図３に示した従来装置と共通である。また、送出ドラ
ム７から巻き取りドラム１２に至るファイバ素線２の搬
送経路には、光ファイバ素線２の走行を案内するガイド
ローラ１３が、適宜に配備される点も、従来装置と共通
している。

【００１４】但し、本実施形態の製造装置１５では、前
記樹脂被覆装置９の直前に装備され整列状態の光ファイ
バ素線２の引き取りを制御する第１引取装置１７と、前
記樹脂硬化装置１０の出力側に装備され紫外線硬化型樹
脂層３で硬化処理した光ファイバテープ心線１の引き取
りを制御する第２引取装置１８と、前記第１引取装置１
７と前記第２引取装置１８との間であって、かつ前記第
２引取装置１８の直前の適宜位置に装備され各光ファイ
バ素線２に対し所定張力を付加して前記紫外線硬化型樹
脂層３の硬化処理時の収縮現象による加工歪みを防止す
る荷重負荷手段２０とを別途備えている。

【００１５】そして、本実施形態の場合、前記荷重負荷
手段２０は、前記第１引取装置１７と前記第２引取装置
１８との間に架設された各光ファイバ素線２上に載置さ
れた動滑車型重り２１によって、各光ファイバ素線２の
所定の張力を負荷する構成となっている。

【００１６】前記荷重負荷手段２０によって光ファイバ
素線２に付与する張力負荷は、前記紫外線硬化型樹脂層
３の硬化時の収縮現象で光ファイバ素線２に加工歪みが
残らないように、硬化時の収縮率に相当する伸び歪みを
予め光ファイバ素線２に付与しておくものである。紫外
線硬化型樹脂層３の硬化収縮率は体積比で約３．３％
で、一軸方向にはその三乗根である約１．５％の収縮が
起こる。従って、前記荷重負荷手段２０によって各光フ
ァイバ素線２に負荷する張力は、前記光ファイバ素線２
に長さ方向に１．５％の伸び歪みを与える大きさとする
と良い。

【００１７】光ファイバ素線２の材料である石英ガラス
のヤング率をＥ、応力σの作用によって発生する歪みを
εとすると、次の（１）式が成立する。 σ＝Ｅ×ε ……（１） 上記（１）式で、石英ガラスのヤング率Ｅ＝７，３００
ｋｇ／ｍｍ² とすると、光ファイバ素線２に１．５％の
歪みを与えるために必要な引張応力σは、次の（２）式
のようになる。 σ＝７，３００×０．０１５＝１０９．５ｋｇ／ｍｍ² ……（２） 従って、例えば、前記光ファイバ素線２が横断面積Ｓが
０．０１１９ｍｍ² とすると、前記（２）式から、一本
当たりの光ファイバ素線２に対して約１．３ｋｇｆの引
っ張り荷重を作用させれば、紫外線硬化型樹脂の硬化収
縮を相殺することのできる伸び歪みを付与することがで
きる。前記荷重負荷手段２０は、このように、紫外線硬
化型樹脂層３の硬化収縮を相殺することのできる伸び歪
みを各光ファイバ素線２に付与するものである。

【００１８】以上の製造装置１５で光ファイバテープ心
線１を製造した場合、光ファイバ素線２の周囲を覆う紫
外線硬化型樹脂層３の硬化時の収縮現象の影響による加
工歪みの残留を防止するために、集線治具８によって整
列させた複数本の各光ファイバ素線２には、前記紫外線
硬化型樹脂層３の収縮力を相殺するように張力負荷を行
う。その結果、紫外線硬化型樹脂層３には加工歪みの残
留がなくなり、加工歪みの残留に起因した伝送損失の悪
化が解消される。更に、加工歪みの残留を防止すること
を目的とした張力負荷は、前記樹脂被覆装置９による樹
脂被覆処理が開始される直前位置に配備された第１引取
装置１７から前記樹脂硬化装置１０による樹脂硬化処理
が終了した直後位置に配備された第２引取装置１８まで
の必要最小限の搬送区間に限って実施するため、各光フ
ァイバ素線２自体が高張力に晒される期間が短く、光フ
ァイバ素線自体が高張力によってダメージを受けること
を回避することができる。従って、伝送損失の悪化等の
欠陥のない高品質の光ファイバテープ心線１を連続製造
することができる。

【００１９】また、前記荷重負荷手段２０は、前記第１
引取装置１７と前記第２引取装置１８との間に架設され
た各光ファイバ素線２上に載置した動滑車型重り２１に
よって、各光ファイバ素線２に所定の張力を負荷する構
成であるため、各光ファイバ素線に対する安定した張力
負荷を、単純な装置構成で可能にすることができ、製造
装置の単純化等による製造コストの低減を図ることがで
きる。

【００２０】なお、前記荷重負荷手段２０は、例えば、
ばねによる付勢力で各光ファイバ素線２に荷重をかける
構成としても良く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適
宜に設計変更可能であることは言うまでもない。また、
前述の光ファイバテープ心線１は、４本の光ファイバ素
線２を線硬化型樹脂層３で一括した構成であったが、光
ファイバ素線２の装備数は前述実施形態のものに限らな
い。

【００２１】

【発明の効果】本発明の光ファイバテープ心線の製造方
法及び製造装置によれば、整列させた複数本の光ファイ
バ素線の周囲を覆う紫外線硬化型樹脂層の硬化時の収縮
現象の影響による加工歪みの残留を防止するために、各
光ファイバ素線には、前記紫外線硬化型樹脂層の収縮力
を相殺するような張力負荷を付与する。そのため、紫外
線硬化型樹脂の硬化時の加工歪みの残留がなく、加工歪
みの残留に起因した伝送損失の悪化が生じない。更に、
紫外線硬化型樹脂の硬化時の加工歪みの残留を防止する
ことを目的とした張力負荷は、前記樹脂被覆処理が開始
される直前の位置から前記樹脂硬化処理が終了した直後
の位置までの必要最小限の搬送区間に限って実施するた
め、光ファイバ素線自体が高張力に晒される時間が短
く、光ファイバ素線自体が高張力によってダメージを受
けることを回避することができる。従って、伝送損失の
悪化等の欠陥のない高品質の光ファイバテープ心線を連
続製造することができる。

【００２２】また、前記荷重負荷手段は、前記第１引取
装置と前記第２引取装置との間に架設された各光ファイ
バ素線上に載置された動滑車型重りによって、各光ファ
イバ素線に所定の張力を負荷する構成とした場合には、
各光ファイバ素線に対する安定した張力負荷を、単純な
装置構成で可能にすることができ、製造装置の単純化等
により製造コストの低減を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る光ファイバテープ心線の製造装置
の一実施形態の概略構成図である。

【図２】光ファイバテープ心線の構造を示す横断面図で
ある。

【図３】従来の光ファイバテープ心線の製造装置の概略
構成図である。

【符号の説明】

１ 光ファイバテープ心線 ２ 光ファイバ素線 ７ 送出ドラム ８ 集線治具 ９ 樹脂被覆装置 １０ 樹脂硬化装置 １２ 巻き取りドラム １３ ガイドローラ １５ 製造装置 １７ 第１引取装置 １８ 第２引取装置 ２０ 荷重負荷手段 ２１ 動滑車型重り

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数本の光ファイバ素線を平面状に整列
   させる集線整列処理と、整列された光ファイバ素線に紫
   外線硬化型樹脂を塗布する樹脂被覆処理と、紫外線照射
   し塗布された樹脂層を硬化する樹脂硬化処理と、を順次
   実施して製造する光ファイバテープ心線の製造方法にお
   いて、 前記集線整列処理を経て整列状態で搬送される光ファイ
   バ素線に対し、前記樹脂被覆処理が開始される直前から
   前記樹脂硬化処理が終了するまでの搬送区間において所
   定の張力負荷を付与して前記紫外線硬化型樹脂層の硬化
   処理時の収縮現象による加工歪みを防止することを特徴
   とする光ファイバテープ心線の製造方法。
2. 【請求項２】 送出ドラムから送出する複数本の光ファ
   イバ素線を平面状に整列させる集線治具と、整列された
   光ファイバ素線に紫外線硬化型樹脂を塗布する樹脂被覆
   装置と、紫外線を照射し塗布された樹脂層を硬化する樹
   脂硬化装置と、樹脂硬化処理し生成された光ファイバテ
   ープ心線を巻き取る巻き取りドラムとを具備した光ファ
   イバテープ心線の製造装置において、 前記樹脂被覆装置の直前に装備され整列状態の光ファイ
   バ素線の引き取りを制御する第１引取装置と、前記樹脂
   硬化装置の出力側に装備され紫外線硬化型樹脂層を硬化
   処理した光ファイバテープ心線の引き取り制御する第２
   引取装置と、前記第１引取装置と前記第２引取装置との
   間であって、かつ前記第２引取装置の直前の適宜位置に
   装備され各光ファイバ素線に対して所定の張力負荷を付
   与して前記紫外線硬化型樹脂層の硬化処理時の加工歪み
   を防止する荷重負荷手段とを別途備えたことを特徴とす
   る光ファイバテープ心線の製造装置。
3. 【請求項３】 前記荷重負荷手段は、前記第１引取装置
   と前記第２引取装置との間に架設された光ファイバ素線
   上に載置の動滑車型重りによって構成したことを特徴と
   する請求項２記載の光ファイバテープ心線の製造装置。