JPH11219862A - 電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
電解コンデンサおよびその製造方法Info
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- JPH11219862A JPH11219862A JP10308809A JP30880998A JPH11219862A JP H11219862 A JPH11219862 A JP H11219862A JP 10308809 A JP10308809 A JP 10308809A JP 30880998 A JP30880998 A JP 30880998A JP H11219862 A JPH11219862 A JP H11219862A
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Abstract
ンデンサの製造方法において、導電性高分子の収率を改
善する。また、多孔体中心部の導電性高分子の形成量を
増加させることにより、容量達成率および高周波特性を
改善する。 【解決手段】 予め酸化皮膜を形成した弁金属の多孔体
をモノマー溶液と酸化剤溶液とに個別に浸漬させ、酸化
皮膜上に導電性高分子層を形成する。モノマー溶液から
引き上げられた多孔体を酸化剤溶液に浸漬させる時間
を、多孔体に含まれるモノマーの30%が拡散により流
出する時間以下として、多孔体外部へのモノマーの流出
を抑制する。さらに、反応温度を低下させるために、酸
化剤溶液に浸漬する際の多孔体の温度を低温(例えば1
0℃以下)とする。
Description
ンタル等の弁金属の多孔体を陽極として用いた電解コン
デンサの製造方法に関し、特に、弁金属に対応する他方
の陰極として導電性高分子層を用いた電解コンデンサの
製造方法に関するものである。
を形成する方法としては、モノマー溶液と酸化剤溶液と
の混合液を、弁金属の多孔体の表面に形成した酸化皮膜
上に導入する一液法が知られている。しかし、一液法で
は、モノマーと酸化剤とを混合した直後に両者の反応
(酸化重合)が開始するため、混合液が多孔体の空孔の
深部に到達する前に混合液の活性が低下する。この傾向
は、タンタル焼結体のように入り組んだ空孔を有する多
孔体を用いる場合に顕著となる。このため、一液法は、
多孔体の空孔の深部に導電性高分子を形成する点では不
利である。
マーと酸化剤との混合液を、低温で多孔体の酸化皮膜上
に導入し、その後、多孔体または混合液の温度を上昇さ
せる一液法が記載されている。この方法によれば、従来
の一液法よりは、多孔体中心部と外部表面近傍における
導電性高分子の形成量が均質化される。しかし、一液法
では、モノマー溶液と酸化剤溶液との混合液を低温で導
入したとしても、反応を完全に停止させることができ
ず、原料の消費が多くなる。
溶液とを混合せずに個別に準備し、多孔体をモノマー溶
液と酸化剤溶液とに交互に浸漬することにより、多孔体
の空孔に導電性高分子を生成させる二液法が実施されて
いる。
浸漬した溶液が、多孔体を後に浸漬する溶液中へ拡散し
て反応する。このような多孔体の外部における反応によ
り、多孔体に付着する導電性高分子の収率が低いという
問題があった。
は、実施例として、多孔体を、酸化剤溶液とモノマー溶
液とに、この順に各5分間浸漬してから取り出し、その
後に空気中で30分間保持してモノマーの重合を進行さ
せる方法が開示されている。このような方法では、多孔
体に導入した酸化剤の多くがモノマー溶液中に流出して
モノマー溶液を汚染する。また、導電性高分子の収率も
高くならない。
は、実施例として、多孔体を、モノマー溶液(アニリン
溶液)に30秒間浸漬し、室温の空気中で10分間放置
し、次いで酸化剤溶液に30秒間浸漬し、さらに室温の
空気中で30分間保持してモノマーを重合させる方法が
開示されている。この方法によれば、先に導入したモノ
マー溶液中の溶媒を揮散させ、モノマー溶液を濃縮させ
た後に多孔体を酸化剤溶液に浸漬させることができる。
従って、モノマー溶液の流出は抑制される。しかし、上
記のような工程は、揮発しやすいモノマーに対しては適
用できない。
は、予め多孔体内の空孔内に濡れ性の高い物質を付着さ
せてから空孔の体積に見合った一定量の酸化剤溶液を滴
下し、その後、必要量のモノマー溶液を滴下する方法が
開示されている。しかし、この方法では、素子1個づつ
に各溶液を滴下するためのノズルが必要となり、非常に
複雑な製造装置が必要となる。
深部の酸化皮膜上にまで導電性高分子が形成されにくい
という問題は存在する。特に、ピロールのように反応が
速く進行するモノマーを用いると、一方の溶液に浸漬し
た多孔体を他方の溶液に浸漬する工程において急激に反
応が進行するために、空孔の深部の酸化皮膜上にまで導
電性高分子を形成することは難しくなる。多孔体内部に
まで導電性高分子層で被覆して本来の容量を完全に引き
出すには、多くの処理時間および/または処理回数が必
要となる。多孔体の外部表面近傍の空孔が導電性高分子
により塞がれて多孔体内部にまで導電性高分子を形成で
きない場合もある。
と比較して多孔体中心部における導電性高分子の量が少
ないと高周波帯域での容量達成率(多孔体の全表面積か
ら期待される容量に対する現容量の割合)が低下する。
また、多孔体中心部と多孔体表面近傍とにおいて導電性
高分子を均質に形成できたとしても、多孔体全体の導電
性高分子の形成量が少ないと全体の抵抗が大きくなって
損失が大きい電解コンデンサとなってしまう。
技術が有する課題に鑑み、量産工程に適用しやすい二液
法において、導電性高分子の収率が改善された電解コン
デンサの製造方法を提供することを目的とする。また、
本発明は、多孔体中心部の導電性高分子の形成量を増加
させることにより、高周波帯域での容量達成率を改善し
た電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とす
る。
に、本発明の電解コンデンサの第1の製造方法は、弁金
属の多孔体と、前記弁金属の表面に形成された酸化皮膜
と、前記酸化皮膜の表面に形成された導電性高分子層と
を含む電解コンデンサの製造方法であって、前記導電性
高分子層を形成する工程が、前記酸化皮膜が形成された
前記多孔体を、モノマーを含むモノマー溶液に浸漬させ
る工程と、前記多孔体を前記モノマー溶液から引き上
げ、酸化剤を含む酸化剤溶液に浸漬させる工程と、前記
多孔体を前記酸化剤溶液から引き上げて保持する工程と
を含み、前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させる工程
において、前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬する時間
を、前記多孔体の空孔に含まれる前記モノマーの30%
が拡散により前記酸化剤溶液へと流出する時間以下とす
ることを特徴とする。
造方法は、弁金属の多孔体と、前記多孔体の表面に形成
された酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成された導
電性高分子層とを含む電解コンデンサの製造方法であっ
て、前記導電性高分子層を形成する工程が、前記酸化皮
膜が形成された前記多孔体を、モノマーを含むモノマー
溶液に浸漬させる工程と、前記多孔体を前記モノマー溶
液から引き上げ、酸化剤を含む酸化剤溶液に浸漬させる
工程とを含み、前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させ
る工程において、前記酸化剤溶液の体積を前記多孔体の
体積の3倍以下とすることを特徴とする。
含浸させたモノマーが酸化剤溶液へと流出する量が低減
し、多孔体に形成される導電性高分子の収率を向上させ
ることができる。
ー溶液と酸化剤溶液との温度を低下させると、モノマー
と酸化剤との反応速度と、モノマーおよび酸化剤それぞ
れの拡散速度とが低下する。しかし、この場合、反応速
度の低下率が拡散速度の低下率よりも大きくなる。本発
明は、このような現象を利用し、少なくとも多孔体を後
に使用する溶液に浸漬させる際に、多孔体の温度を低温
(例えば10℃以下)とする側面も有している。このよ
うに多孔体の温度を調整すれば、多孔体の空孔の深部に
まで効率よく導電性高分子を形成することができる。
は、基本的に、陽極が弁金属(酸化皮膜形成金属)の多
孔体から、誘電体層が弁金属の表面に形成された弁金属
の酸化物層から、陰極が導電性高分子層からそれぞれ構
成されている。
多数の空孔ないし細孔が形成され、その結果、その表面
積が著しく拡大されている。弁金属としては、弁作用を
有する金属であれば特に限定されないが、アルミニウ
ム、タンタル、ニオブおよびチタンから選ばれる少なく
とも1つの金属を用いることができるが、アルミニウム
および/またはタンタルが好ましい。多孔体の表面に
は、空孔の表面も含め、誘電体層として薄い酸化皮膜が
形成されている。さらに酸化皮膜上には、陰極として導
電性高分子層が形成される。この導電性高分子層は、多
孔体の内部の空孔の表面にも形成される。この導電性高
分子層は、モノマーと酸化剤とを接触させることによる
化学酸化重合により形成される。
電性を示すものから選択される。特に限定されないが、
モノマーとしては、複素環式5員環化合物が好ましく、
さらに具体的には、ピロール、チオフェン、3−アルキ
ルチオフェン、イソチアナフテン等が好適である。一
方、酸化剤としては、モノマー同様、特に限定されない
が、例えば過酸化水素、硫酸鉄(III)等に含まれる第
二鉄イオンが好ましい。
しては、上記のようなモノマーを含むモノマー溶液と、
上記のような重合用の酸化剤を含む酸化剤溶液とが準備
される。
率を向上させるために、いずれか一方または双方に、ド
ーパントを加えてもよい。ドーパントとしては、例えば
上記の導電性ポリマーに対しては、アルキルナフタレン
スルホン酸のようなアリールスルホン酸イオン、アリー
ル燐酸イオン等を利用することができる。具体的には、
これらのイオンのNa塩その他のアルカリ塩として上記
溶液に添加することが好ましい。
図1の工程図を参照しながら説明する。図1に示すよう
に、この方法では、多孔体をモノマー溶液に浸漬し含浸
させる工程と、多孔体をモノマー溶液から取り出す工程
と、多孔体を酸化剤溶液に所定時間浸漬して酸化物の付
着と拡散を行う工程と、多孔体を酸化剤溶液から引き上
げて所定時間保持する工程とが、この順に実施される。
なお、多孔体に含浸したモノマーに対して酸化剤が不足
する場合には、多孔体を酸化剤溶液から引き上げて保持
した後、再度、多孔体を酸化剤溶液に浸漬する工程を実
施することが好ましい。
液に浸漬した場合、多孔体の内部から表面へのモノマー
の拡散と、多孔体の表面から内部への酸化剤の拡散とが
生じ、モノマーと酸化剤とが接触した部分においてモノ
マーと酸化剤とが反応する。本発明の第1の製造方法で
は、多孔体を酸化剤溶液に浸漬する時間が制限される。
このため、多孔体の空孔内に含浸したモノマーが多孔体
外部へ流出することが抑制される。従って、空孔内にお
ける酸化重合によるポリマーの充足を効率良く行うこと
ができる。
に浸漬させる時間は、実験により確認されたところによ
ると、多孔体の空孔に含まれるモノマーの30%が拡散
により流出する時間以下とすることが好ましい。この場
合、導電性高分子の収率は70%程度以上にまで至り、
高価なモノマーの使用量を大幅に削減できる。なお、従
来の上記収率は20%程度であって、しかも残部80%
のモノマーは酸化剤溶液中で反応するため、この溶液の
使用回数(寿命)が制限されることとなっていた。しか
し、上記のように浸漬時間を制限すると、上記反応に伴
う酸化剤溶液の「にごり」も少なくなり、溶液の使用可
能回数を3倍以上にまで向上させることも可能になる。
溶液に浸漬する時間を短縮するほど、モノマーの流出は
抑制される。従って、上記浸漬時間を、モノマーの20
%が拡散により流出するまでの時間以下とすることがさ
らに好ましく、モノマーの10%が拡散により流出する
までの時間以下とすることが最も好ましい。
間保持する工程においては、多孔体の中心の酸化剤の濃
度が多孔体の外部表面の酸化剤の濃度の1/4以上とす
ることが好ましい。このように酸化剤濃度の相違を緩和
すれば、多孔体中心部と外部表面近傍における導電性高
分子の形成量の差を低減できる。従って、高周波帯域に
おける容量達成率も改善することができる。なお、本明
細書において、多孔体の外部表面とは、多孔体内部の空
孔により形成された表面を除く多孔体の外観上の表面で
あり、多孔体の中心とは、多孔体の内部において多孔体
の外部表面と空孔により導通しており外部表面からの距
離が最も遠い領域である。
液と酸化剤溶液とに各1回浸漬する場合に限られない。
例えばモノマーの反応速度を下げるために酸化剤濃度を
低くしたい場合には、多孔体を酸化剤溶液に浸漬させる
工程と、多孔体を酸化剤溶液から引き上げて保持する工
程との繰り返しを2回以上連続して行い、モノマー量に
対する酸化剤量の不足を補ってもよい。この場合は、少
なくとも当該繰り返しの最後に行う、多孔体の保持工程
において、多孔体の中心の酸化剤濃度が多孔体外部表面
の酸化剤濃度の1/4以上となるように、繰り返し回数
および保持時間等の条件を決定することが好ましい。
孔体内の酸化剤濃度が上記のように調整されるように条
件を定めて上記方法を行えば、生産性が向上する。すな
わち、同じ濃度の酸化剤溶液を用いた場合、一度の保持
工程により多孔体内の酸化剤濃度を上記のように調整す
る場合と比較して、同等の特性の電解コンデンサを形成
する際のリードタイムを短縮することが可能となる。
た場合には、上記のように保持時間を短縮すると、多孔
体に導入したモノマーの揮発を抑制することができる。
モノマーの揮発を抑制すれば、導電性高分子の収率が向
上し、コンデンサーの特性を向上させることもできる。
図2を参照しながら説明する。第2の製造方法は、多孔
体に含浸させたモノマーが拡散できる範囲(多孔体を浸
漬する酸化剤溶液の体積)を制限することにより、モノ
マーが多孔体から酸化剤溶液へと流出する量を抑制す
る。酸化剤溶液の体積は、具体的には多孔体の体積の3
倍以下に制限することが好ましい。
て、予め酸化剤溶液が入れられた1つの反応槽(重合
槽)に、多数の多孔体が同時に浸漬されていた。しか
し、このような装置では、上記方法を実施することが困
難である。本発明の第2の方法において要求される酸化
剤溶液の体積の制限は、反応槽に浸漬する多孔体の個数
を制限することにより実現することができる。このよう
な方法としては、例えば図2に示すように、各多孔体3
に対して、酸化剤溶液を含む反応槽(重合槽)4一個を
準備する方法が挙げられる。図2に示した形態では、1
本の支持体(ステンレスリボン1)に、所定個数の多孔
体3が各々タンタルリード2を介して吊り下げられてい
る。各多孔体3には、反応槽4が1つずつ準備されてい
る。このようにすれば、生産効率を損なうことなく、上
記第2の方法を実施できる。
む仕切り板5を利用してもよい。この仕切り板5は、多
孔体の下方では適宜設けられた孔から液体が出入り自由
とされているが、多孔体の側面では液体の移動を阻むよ
うに密に構成されている。このような仕切り板5に囲ま
れ、ステンレスリボン1から吊り下げられた多孔体3
を、反応槽4に入れられた酸化剤溶液に浸漬させると、
各多孔体3に対応するように反応槽4が仕切り板5によ
って区切られることになる。また、仕切り板5を利用す
ると、仕切り板を引き上げた状態では酸化剤溶液は1槽
にまとめられる。酸化剤溶液が1槽にまとまると、溶液
の交換、製造工程中における管理等が容易となる。
と、酸化剤溶液の体積を多孔体の体積の3倍以下とし、
さらに多孔体を酸化剤溶液に浸漬する時間を多孔体の中
心の酸化剤濃度が多孔体の外部表面の濃度の1/4以上
になる時間とすると、導電性高分子の収率は60%程度
以上にまで向上する。このように、上記第2の方法によ
れば、第1の製造方法と同様にモノマーの使用量を大幅
に削減できる。
近傍とにおける導電性高分子量を均一化するためには、
多孔体を酸化剤溶液に浸漬させた時の酸化剤の多孔体空
孔への流入拡散速度を、多孔体空孔内における酸化剤の
反応消失速度よりも大きくすることが好ましい。多孔体
への流入拡散量が反応消失量よりも大きければ、酸化剤
が多孔体内部にも到達しやすくなり、多孔体内部におけ
る導電性高分子の形成に寄与しうるからである。
は、酸化剤の濃度を高くする方法が考えられる。しか
し、酸化剤の濃度を高くするとそれに伴って酸化剤の反
応消失速度も増加してしまう。酸化剤の反応消失速度を
低下させるためには、モノマーと酸化剤との反応速度が
低いことが好ましい。酸化剤の反応消失速度を低下させ
るためには、溶液の濃度を低下させる方法と溶液の温度
を低下させる方法とが考えられる。溶液の濃度を低下さ
せると、反応速度は低下するが導電性高分子の形成量も
低下する。
速度と拡散速度とはともにアレニウスの式に従うから、
温度が低下するにつれて反応速度も拡散速度も低下す
る。しかし、反応の活性化エネルギーは、拡散の活性化
エネルギーよりも大きいから、反応速度は拡散速度より
も温度に対する依存性が強くなる。従って、溶液の温度
を低下させると、拡散速度の低下率よりも反応速度の低
下率が大きくなる。多孔体の温度を10℃に保つと、室
温(20℃)と比較して反応速度は約50%に減少する
が、拡散速度は70%程度にしか減少しない。このよう
に、溶液温度を低下させることにより、酸化剤の流入拡
散量を酸化剤の反応消失量よりも充分に大きくすること
ができる。この場合、拡散速度も低下するため、1回あ
たりの処理時間を長くする必要があるが、導電性高分子
の形成量は基本的には低下しない。
反応速度を過度に低下させると、多孔体の空孔に含浸さ
せたモノマーは、未反応のまま酸化剤溶液中に流出す
る。しかし、本発明の上記両方法によれば、モノマーの
流出自体を抑制できる。上記両方法においては、むし
ろ、モノマーと酸化剤とが多孔体の空孔内で互いに所定
程度にまで混合するまでは反応が発生しないほうが好ま
しい。従って、溶液の温度は、低いほうが好ましく、具
体的には10℃以下が好ましい。溶液の温度は、溶液が
凝固せず、溶液中に溶解している物質が析出しない範囲
であれば、低いほうが好ましい。なお、モノマーと酸化
剤との反応速度を大きく低下させることができる場合に
は、モノマー溶液中のモノマー濃度と酸化剤溶液中の酸
化剤濃度とを高くすれば、重合1回あたりの導電性ポリ
マーの形成量を増大させることもできる。
剤の反応消失量よりも充分に大きくして、多孔体中心部
まで酸化剤を充分に拡散させることにより、多孔体内部
に形成される導電性高分子を均質化することができる。
このようにすれば、従来は7割程度であったコンデンサ
としての容量達成率を9割程度にまで向上させることも
できる。また、多孔体内部の電解質の低抵抗化が可能に
なるので、高周波帯域における容量を引き出すこともで
きる。
ながら、酸化剤を多孔体の空孔に導入した後には、モノ
マーと酸化剤との反応を促進することが好ましい。実験
により確認されたところによると、モノマーと酸化剤と
の反応速度は、溶液の温度を10℃上昇させると約2倍
になる。従って、上記両方法においては、モノマーと酸
化剤とを多孔体の空孔内に導入した後に、多孔体の温度
を10℃以上、さらには20℃以上上昇させることが好
ましい。
を引き上げ保持した状態で、多孔体の温度を10℃以上
上昇させてモノマーと酸化剤との反応を加速することに
より、モノマーの重合時間を1/2以下に短縮すること
ができる。また、第2の方法においては、多孔体を酸化
剤溶液に浸漬させた状態で多孔体の温度を上昇させても
よい。なお、第2の方法において、多孔体を溶液に浸漬
した状態で多孔体の温度を上昇させると、多孔体を溶液
から引き上げた後に多孔体の温度を上昇させた場合と比
較して導電性高分子の収率が約5%程度向上する。これ
は、多孔体の外部で形成された導電性高分子が多孔体に
付着するためである。一方、多孔体を溶液から引き上げ
た後に多孔体の温度を上昇させる方法は、製造設備を簡
略化できる利点を有している。
せてから酸化剤溶液に浸漬させる場合について説明した
が、言うまでもなく、浸漬の順序を逆にして(両溶液を
置換して)、上記両方法を実施してもよい。このよう
に、本発明は、多孔体を酸化剤溶液に浸漬させてからモ
ノマー溶液に浸漬する場合も包含する。この場合は、上
記説明において、モノマー溶液の成分(モノマー)と酸
化剤溶液の成分(酸化剤)との関係についても、両者を
置換して考えればよい。ただし、モノマーと酸化剤との
価格を比較すると、相対的に汚染されにくい第1の浸漬
溶液としてモノマー溶液を使用し、第2の浸漬溶液とし
て酸化剤溶液を使用することが好ましい。
発明は以下の実施例により限定されるものではない。
ールを10vol%含有する水溶液に、ピロールを1.0
M(mol・dm-3)となるように溶解させて、モノマー溶液を
調製した。
ルを10vol%含有する水溶液に、酸化剤として硫酸鉄
(III)を0.25M、ドーパントとしてアルキルナフタ
レンスルホン酸イオンをNa塩の形態で0.03Mとな
るように溶解させて、酸化剤溶液を調製した。
をリードとともに圧縮成形した後、焼成して1.4mm
×3.0mm×3.8mmの多孔体を形成した。さら
に、このタンタル多孔体の表面をリン酸水溶液中で化成
電圧20Vで化成することにより、多孔体の空孔表面お
よび外部表面に酸化皮膜層を形成した。このコンデンサ
用多孔体の静電容量を4Mの硫酸中で測定した。静電容
量は、120Hzで180μFであった。
誘電体層上に、以下の化学酸化重合法により導電性高分
子層を形成して陰極とした。多孔体の外部には、陰極の
集電体としてのリード板を設け電解コンデンサとした。
電解コンデンサの静電容量は、120Hzおよび100
kHzにおいて測定した。
と酸化剤溶液とを準備した。モノマー溶液に多孔体を浸
漬し、5分後に引き上げた。次に、多孔体を酸化剤溶液
に浸漬し、10秒後に引き上げ、さらに5℃の冷蔵庫内
で5分間保持する操作を4回繰り返した。その後、多孔
体を45℃の乾燥器内に10分間静置して、モノマーと
酸化剤との反応を終了させ、さらに洗浄と乾燥とを実施
した。以上の操作を8回繰り返し、導電性高分子層を形
成した。
と酸化剤溶液とを準備した。モノマー溶液に多孔体を浸
漬し、5分後に引き上げた。次に、多孔体を酸化剤溶液
に浸漬し、10秒後に引き上げ、さらに5℃の冷蔵庫内
で2分間保持する操作を4回繰り返した。その後、多孔
体を45℃の乾燥器内に10分間静置して、モノマーと
酸化剤との反応を終了させ、さらに洗浄と乾燥とを実施
した。以上の操作を8回繰り返し、導電性高分子層を形
成した。
0秒から2分に変更した点を除いては、サンプル2と同
様にして導電性高分子層を形成した。
0秒から5分に変更した点を除いては、サンプル2と同
様にして導電性高分子層を形成した。
間を2分から1分に変更した点を除いては、サンプル2
と同様にして導電性高分子層を形成した。
なお、容量達成率は、上記硫酸中の測定値を基準とし
て、120Hzの測定容量により算出した数値である。
するように、酸化剤溶液が入れられた槽を準備し、酸化
剤溶液の量を多孔体の体積の3倍とした。モノマー溶液
と酸化剤溶液とは、上記と同様、5℃に保持した。モノ
マー溶液に多孔体を浸漬し、5分後に引き上げた。次
に、多孔体を酸化剤溶液に浸漬させて15分間保持し
た。その後、多孔体を酸化剤溶液から引き上げ、45℃
の乾燥器内に10分間静置して、モノマーと酸化剤との
反応を終了させてから洗浄と乾燥とを実施した。以上の
操作を8回繰り返し、導電性高分子層を形成した。
倍から2倍へと変更した点を除いては、サンプル6と同
様にして導電性高分子層を形成した。
倍から10倍へと変更した点を除いては、サンプル6と
同様にして導電性高分子層を形成した。
容量達成率は、上記と同様にして算出した数値である。
液と酸化剤溶液とを準備した。酸化剤溶液の体積は、多
孔体の体積の3倍を大きく超えるものとした。モノマー
溶液に多孔体を浸漬し、5分後に引き上げた。この時点
で反応はほぼ終了していた。次に、多孔体を酸化剤溶液
に浸漬させて15分間保持した。その後、多孔体を酸化
剤溶液から引き上げ、洗浄と乾燥とを実施した。以上の
操作を15回繰り返し、導電性高分子層を形成した。
解コンデンサの多孔体を破断して、その破断面で導電性
高分子の形成状態を走査型電子顕微鏡で観察した。その
結果を図4〜図7として示す。これらの図を比較する
と、サンプル1では、サンプル9よりも重合回数が少な
いにも拘わらず、多孔体中心部まで導電性高分子により
被覆されていることが確認できる。
測定したところ、サンプル1、2および5では、10
%、サンプル3では30%、サンプル4では50%、サ
ンプル9では70%であった。
浸漬させた多孔体を、酸化剤溶液に代えて100mlの
純水中に浸漬させ、この純水中に含まれるモノマーの濃
度をガスクロマトグラフィーにより測定して定めた。こ
こで、モノマー流出量は、多孔体の空孔に含まれていた
モノマーに対する、流出したモノマーの割合により表示
する。
り返し工程において、酸化剤溶液から引き上げて5分間
保持した後の多孔体の中心の酸化剤濃度は、多孔体の外
部表面の濃度の1/3であった。また、サンプル2、3
および4では、4回中4回目の繰り返し工程において、
酸化剤溶液から引き上げて2分間保持した後の多孔体の
中心の酸化剤濃度は、多孔体の表面の濃度の1/4であ
った。また、サンプル5では、4回中4回目の繰り返し
工程において、酸化剤溶液から引き上げて1分間保持し
た後の多孔体の中心の酸化剤濃度は、多孔体の外部表面
の酸化剤濃度の1/6であった。
酸化剤溶液から引き上げて所定時間保持した多孔体を液
体窒素により凍結させた後に、多孔体の中心部を多孔体
の形状の相似形であって体積が1/8となるように切り
出し、その素子切り出し片に含まれている酸化剤濃度を
化学定量することにより行った。また、多孔体表面の酸
化剤濃度の測定は、多孔体素子外側に付着している酸化
剤溶液の酸化剤濃度を化学定量することにより行った。
討する。サンプル2では、サンプル1と比べて酸化剤溶
液から引き上げて保持する時間を短縮したために、モノ
マーの揮散が抑制されている。従って、サンプル1より
も容量達成率および高周波特性ともに改善されている。
しかも、サンプル2によれば、サンプル1と比較して、
保持時間は60%短縮されている。
量と電解コンデンサの容量との関係を図8に示す。これ
より、多孔体を酸化剤溶液に浸漬する時間は、多孔体の
空孔に含まれるモノマーの30%が流出するまでの時間
以下とすることが好ましいことが確認できる。
酸化剤濃度と電解コンデンサの容量との相関を図9に示
す。これより、酸化剤溶液から引き上げて保持する工程
において、多孔体中心の酸化剤濃度が、多孔体表面の酸
化剤濃度の1/4以上とすることが好ましいことが確認
できる。
剤溶液の体積と電解コンデンサの容量との関係を図10
に示す。これより、酸化剤溶液の体積を小さくしてモノ
マーの拡散を抑制するためには、酸化剤溶液の体積を多
孔体の体積の3倍以下とすることが好ましいことが確認
できる。
よれば、モノマー溶液と酸化剤溶液とに交互に浸漬して
酸化重合により導電性高分子層を形成する際に、後に浸
漬する溶液(酸化剤溶液)中への先に含浸した溶液の成
分(モノマー)の流出を抑制することにより、導電性高
分子の収率を向上させることができる。従って、従来よ
りも少ない重合回数で多孔体の空孔の内部に導電性高分
子層を形成することができる。さらに、本発明によれ
ば、反応速度を低下させることにより、多孔体中心部の
空孔における導電性高分子の被覆率を向上させることが
できる。このように、本発明によれば、容量達成率が改
善され、低抵抗で高周波特性にも優れた電解コンデンサ
を提供することができる。
方法を示す工程図である。
方法を実施するための装置の例を示す断面図である。
方法を実施するための装置の別の例を示す断面図であ
る。
の中心部近傍の破断面の走査型電子顕微鏡による写真で
ある。
の外部表面近傍の破断面の走査型電子顕微鏡による写真
である。
の中心部近傍の破断面の走査型電子顕微鏡による写真で
ある。
の外部表面近傍の破断面の走査型電子顕微鏡による写真
である。
溶液中へのモノマーの流出量と得られた電解コンデンサ
の容量との関係を示す図である。
外部表面における酸化剤濃度に対する多孔体中心の酸化
剤濃度の割合と、得られた電解コンデンサの容量との関
係を示す図である。
体を浸漬させる酸化剤溶液と得られた電解コンデンサの
容量との関係を示す図である。
Claims (16)
- 【請求項1】 弁金属の多孔体と、前記弁金属の表面に
形成された酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成され
た導電性高分子層とを含む電解コンデンサの製造方法で
あって、 前記導電性高分子層を形成する工程が、 前記酸化皮膜が形成された前記多孔体を、モノマーを含
むモノマー溶液に浸漬させる工程と、 前記多孔体を前記モノマー溶液から引き上げ、酸化剤を
含む酸化剤溶液に浸漬させる工程と、 前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き上げて保持する工
程とを含み、 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させる工程におい
て、前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬する時間を、前
記多孔体の空孔に含まれる前記モノマーの30%が拡散
により前記酸化剤溶液へと流出する時間以下とすること
を特徴とする電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項2】 前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き上
げて保持する工程において、前記多孔体の中心における
前記酸化剤の濃度を、前記多孔体の外部表面における前
記酸化剤の濃度の1/4以上とする請求項1に記載の電
解コンデンサの製造方法。 - 【請求項3】 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させ
る工程と、前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き上げて
保持する工程との繰り返しを2回以上実施し、少なくと
も、前記繰り返しにおいて最後に実施する、前記多孔体
を前記酸化剤溶液から引き上げて保持する工程におい
て、 前記多孔体の中心における前記酸化剤の濃度を、前記多
孔体の外部表面における前記酸化剤の濃度の1/4以上
とする請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項4】 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させ
る工程において、前記多孔体の温度を10℃以下に保持
する請求項1〜3のいずれかに記載の電解コンデンサの
製造方法。 - 【請求項5】 前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き上
げて保持する工程において、前記多孔体の温度を10℃
以下とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解コンデ
ンサの製造方法。 - 【請求項6】 前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き上
げて保持する工程の後に、前記多孔体の温度を10℃以
上上昇させる工程をさらに実施する請求項1〜5のいず
れかに記載の電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項7】 前記導電性高分子層を形成する工程を2
回以上繰り返して実施する請求項1〜6のいずれかに記
載の電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項8】 弁金属の多孔体と、前記多孔体の表面に
形成された酸化皮膜と、前記酸化皮膜の表面に形成され
た導電性高分子層とを含む電解コンデンサの製造方法で
あって、 前記導電性高分子層を形成する工程が、 前記酸化皮膜が形成された前記多孔体を、モノマーを含
むモノマー溶液に浸漬させる工程と、 前記多孔体を前記モノマー溶液から引き上げ、酸化剤を
含む酸化剤溶液に浸漬させる工程とを含み、 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させる工程におい
て、前記酸化剤溶液の体積を前記多孔体の体積の3倍以
下とすることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項9】 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬させ
る工程において、前記多孔体の中心における前記酸化剤
の濃度を、前記多孔体の外部表面における前記酸化剤の
濃度の1/4以上とする請求項8に記載の電解コンデン
サの製造方法。 - 【請求項10】 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬さ
せる工程において、前記多孔体の温度を10℃以下に保
持する請求項8または9に記載の電解コンデンサの製造
方法。 - 【請求項11】 前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬さ
せる工程の後に、前記多孔体を前記酸化剤溶液に浸漬さ
せた状態、または前記多孔体を前記酸化剤溶液から引き
上げた状態で、前記多孔体の温度を10℃以上上昇させ
る工程をさらに実施する請求項8〜10のいずれかに記
載の電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項12】 前記導電性高分子層を形成する工程を
2回以上繰り返す請求項8〜11のいずれかに記載の電
解コンデンサの製造方法。 - 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載の電
解コンデンサの製造方法を、前記モノマー溶液を前記酸
化剤溶液に置換し、前記酸化剤溶液を前記モノマー溶液
に置換して実施することを特徴とする電解コンデンサの
製造方法。 - 【請求項14】 前記モノマーが複素環式五員環化合物
またはその誘導体である請求項1〜13のいずれかに記
載の電解コンデンサの製造方法。 - 【請求項15】 前記弁金属が、アルミニウム、タンタ
ル、ニオブおよびチタンから選ばれる少なくとも1つを
含む請求項1〜14のいずれかに記載の電解コンデンサ
の製造方法。 - 【請求項16】 請求項1〜15のいずれかに記載の製
造方法により製造したことを特徴とする電解コンデン
サ。
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