JPH1121626A - 材質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方法 - Google Patents

材質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方法

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JPH1121626A
JPH1121626A JP9193305A JP19330597A JPH1121626A JP H1121626 A JPH1121626 A JP H1121626A JP 9193305 A JP9193305 A JP 9193305A JP 19330597 A JP19330597 A JP 19330597A JP H1121626 A JPH1121626 A JP H1121626A
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ferrite
pearlite
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cooling
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JP9193305A
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Yuzo Takahashi
雄三 高橋
Osamu Kono
治 河野
Junichi Wakita
淳一 脇田
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱延鋼板の製造条件に基づいて、鋼板の組織
を予測し、所定の材質を得るための組織を得るために、
特に冷却パターンで変化するパーライト体積率の変化を
正確に予測し、これに基づいて冷却パターンの制御を行
うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法を提供する。 【解決手段】 初期粒径モデル、オーステナイト再結晶
モデル、フェライト変態モデル、フェライト粒径予測モ
デル、パーライト変態進行モデル、ベイナイト変態モデ
ル、マルテンサイト変態モデルを用いて、フェライト体
積率Vf、フェライト粒径df、パーライト体積率Vp
ベイナイト体積率Vb、マルテンサイト体積率Vmを求
め、これらの計算結果に基づいて冷却パターンを決定
し、この冷却パターンに基づいて、所定材質の熱延鋼板
を製造することを特徴とする材質予測に基づいた熱間圧
延鋼板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延により所
定組織及び所定材質の熱延鋼板を製造するための熱間圧
延条件及び冷却条件を予測式にて求め、該条件にて製造
することにより目標とする材質の鋼板を得る方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば、自動車への燃費低減の要
求に起因する自動車用鋼板への高強度及び高加工性化へ
の要求や、自動車の衝突事故の際の乗員の安全性への要
求に起因した高衝撃吸収性能化への要求等の例に見られ
るように、熱間圧延鋼材に要求される材質特性はより複
雑且つ高度化している。
【0003】そのような需要に対応するためには、熱間
圧延鋼材を製造するに際して、フェライト、パーライ
ト、ベイナイト、マルテンサイトからなる鋼組織の精緻
な制御を行い所定の材質を得る必要がある。
【0004】特に、前述したような比較的強度の高い熱
延鋼板の製造においてはそのパーライト体積率を制御す
ることが重要である。例えば、良加工性の自動車用高強
度鋼板として開発されたDP鋼板においてパーライトが
生成すると充分硬質な第二相が得られないため良好な延
性が得られず、また、同目的で開発された残留オーステ
ナイトを含む鋼板でパーライトが生成すると残留オース
テナイト量が減少しそれによって延性が劣化するため、
これらの鋼ではパーライトを抑制し、その体積率をでき
るだけ0%に近づけることが望ましい。
【0005】一方、これまでにも、熱間圧延工程におい
て、目標の材質、組織を得るために、鋼材成分、熱延条
件等から得られる組織体積率、粒径を予測し、それに基
づいて所定の材質を得る技術はあった。例えば、特開平
2−290916号公報に示される技術である。
【0006】これを詳述すると以下のようなものであ
る。
【0007】まず、鋼材成分と加熱炉での加熱条件を基
にしてオーステナイト粒径モデルを用いて加熱炉抽出後
のオーステナイト粒径を計算し、その値と鋼材成分や各
パスでの圧延条件を基にして動的再結晶モデル、静的再
結晶モデル、未再結晶モデルよりなるオーステナイト再
結晶モデルを用いて各パス毎の圧延後の平均オーステナ
イト粒径及び残留歪を計算し、それを繰り返して最終圧
延パス後の平均オーステナイト粒径及び残留歪を求め
る。そして、これらを基にフェライト変態モデル、パー
ライト変態モデル、ベイナイト変態モデル、マルテンサ
イト変態モデルから各組織占積率を計算し、その計算結
果に基づいた制御冷却を行うことにより所定の材質を得
るというものである。
【0008】しかし、この計算方法においてはパーライ
ト変態速度の支配要因が必ずしも充分に考慮されておら
ず、近年の材質要求に対応しうる程良好な精度でパーラ
イト体積率を予測することは困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記に鑑み、本発明
は、熱延鋼板の製造に際して、所定の材質を得るため
に、熱間圧延及び冷却中の鋼組織の変化、特にパーライ
トの体積率の変化を正確に予測し、これに基づいて製造
条件の制御を行うことにより目標材質の熱延鋼板を製造
する方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を達成
するためになされたものであり、その手段は以下の通り
である。
【0011】(1) 通常の炭素鋼成分からなる鋳片を
加熱後、熱間圧延し、その後、冷却する熱間圧延鋼板の
製造方法において、鋼材の化学成分及び加熱条件に基づ
いて予め定めた初期粒径モデルにより加熱炉抽出時の圧
延前平均オーステナイト粒径d0を求め、該d0、鋼材の
化学成分及び圧延条件に基づいて予め定めたオーステナ
イト再結晶モデルにより各圧延パス毎にオーステナイト
平均粒径及び残留歪を計算し、最終圧延パス後のオース
テナイト平均粒径da、残留歪Δεaを求め、該da、該
Δεa、鋼材の化学成分及び冷却条件に基づいてフェラ
イト変態モデル及びフェライト粒径予測モデルによりフ
ェライト体積率Vf、フェライト粒径df、フェライト変
態終了温度Tfを求め、該Vf、該Tf、鋼材の化学成分
及び冷却条件に基づいて下記(1)式に示すパーライト
変態進行モデルにより冷却中のパーライト体積率Vp
求め、次に最終圧延パス後のオーステナイト平均粒径d
a、残留歪Δεa、フェライト体積率Vf、パーライト体
積率Vp、鋼材の化学成分及び冷却条件に基づいて予め
定めたベイナイト変態モデル及びマルテンサイト変態モ
デルによりベイナイト体積率Vb、マルテンサイト体積
率Vmを求め、これらのVf、df、Vp、Vb、Vmの計算
結果に基づいて圧延後の冷却パターンを決定し、該冷却
パターンに基づいて圧延後の冷却制御を行うことによ
り、所定材質の熱延鋼板を製造することを特徴とする材
質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方法。
【0012】 Vp=[1−exp(−a・tn)](100−Vf)・・・(1) 但し、Vpはパーライト体積率(%)、Vfはフェライト
体積率(%)、tはパーライト変態温度での保持時間
(s)、aは鋼材成分、温度、フェライト変態終了時の
フェライト体積率及びフェライト粒径毎に決定されるパ
ラメータ、nは鋼材の成分毎に決定されるパラメータ。
【0013】(2) パーライト変態進行モデルにおけ
るパラメータaが下記(2)式であることを特徴とする
請求項1に記載の材質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製
造方法。
【0014】
【数1】
【0015】
【発明の実施の形態】本発明者らは、より精度の高いパ
ーライト変態モデルを構築するため、同変態速度の支配
因子の詳細な検討を行った。
【0016】その詳細内容を以下に説明する。
【0017】まず、種々の成分の鋼を500〜750℃
の一定温度に保持した際のパーライト変態率Xpの時間
に対する変化、即ちパーライト変態速度をフェライト体
積率、フェライト粒径を変えて調査した。
【0018】その結果、パーライト変態速度に対して
は、パーライトが生成する前に生成するフェライトの体
積率、粒径に大きく影響していることがわかった。ここ
でパーライト変態率Xpとは、フェライト変態が終了し
た後の未変態オーステナイトに対するパーライトの割合
(%)であり、パーライト体積率/(100−フェライ
ト体積率)として求まる量である。
【0019】そして、パーライト変態率と保持時間の関
係は以下の(3)式で表すことにより特に正確に表現で
きることが分かった。
【0020】 Xp=1−exp(−a・tn)・・・(3) 但し、Xpはパーライト変態率(%)、tはフェライト
変態温度での保持時間(t)、aは鋼材の成分、温度、
フェライト変態終了時のフェライト体積率、フェライト
粒径毎に決定されるパラメータ、nは鋼材の成分毎に決
定されるパラメータ。
【0021】さらに、aの値とフェライト体積率、フェ
ライト粒径、変態温度の関係を詳細に調査した結果、以
下の(2)式で特に精度よく表されることが分かった。
【0022】
【数1】 そして、このように恒温変態(一定温度での変態)を正
確に定式化すれば、任意の冷却パターンの場合も、それ
を極めて短時間でかつ異なる温度での恒温変態の組合わ
さったものと考え、その短い区間毎のパーライト体積率
の変化分を加え合わせていくことにより、正確にパーラ
イト体積率を計算することが可能であることも確認され
た。
【0023】本発明は、以上の知見を基になされたもの
であり、実際の計算方法を詳述すると以下のようにな
る。
【0024】まず、本発明の対象とする鋼は、C、S
i、Mnを主成分とする通常の炭素鋼である。具体的に
はC:0.01〜0.4%、Si:0.01〜3.0
%、Mn:0.01〜3.0%を含み、他の特殊添加元
素のない鋼を対象とする。
【0025】次に本技術における、熱間圧延及び冷却中
の各組織の体積率計算方法について説明する。
【0026】鋼の材質に影響する要因としてはまずフェ
ライト体積率とフェライト粒径がある。これを予測する
には、フェライト変態速度の他に、それに影響するフェ
ライト変態開始時のオーステナイト粒径やオーステナイ
ト中の残留歪も計算にて求める必要がある。
【0027】そこで、図1に示すように、まず鋼材の化
学成分、及び加熱条件、圧延条件、及び冷却条件等の製
造条件に基づいて、予め定めた初期粒径モデルを用いて
加熱炉抽出時の圧延前平均オーステナイト粒径d0を求
め、該d0、及び前記製造条件に基づいて、予め定めた
オーステナイト再結晶モデルを用いて、各圧延パス毎に
オーステナイト平均粒径及び残留歪を計算することによ
り最終圧延パス後のオーステナイト平均粒径da、残留
歪Δεaを求め、該da、Δεa及び前記熱延条件に基づ
いて、フェライト変態モデル、フェライト粒径予測モデ
ルを用いてフェライト体積率Vf、フェライト粒径df
求める。
【0028】この際には、パーライト体積率を次に計算
するためにフェライト変態終了温度を計算する必要があ
る。このフェライト体積率、フェライト粒径の計算は例
えば特開平2−290916号公報に示される従来モデ
ルにより行なっても充分な精度が得られる。
【0029】次にパーライト体積率の計算方法について
説明する。
【0030】鋼のパーライト変態速度は、パーライト変
態が開始する前の鋼材の諸条件に依存する。具体的に
は、パーライト体積率は、前述の実験の結果から分かる
ように、フェライト変態が終了しパーライト変態が開始
する温度、及びその温度でのフェライト体積率、フェラ
イト粒径に依存する。従ってこれらを計算により求めて
おく。
【0031】フェライト変態終了温度以下でのパーライ
ト変態率の変化の計算方法は図1に示しているが、詳述
すると以下のようになる。
【0032】まず、フェライト変態が終了した温度、及
びその温度でのフェライト体積率、フェライト粒径を上
記方法で求めた後、それ以降の鋼板熱履歴に基づいて、
下式に示されるパーライト変態モデルによりパーライト
体積率を随時計算する。その際下式のパラメータa,n
は鋼材の成分、温度、フェライト体積率、フェライト粒
径毎に定まる量であり、予め実験にて求めておく。
【0033】下式は温度が一定の場合の変態速度式(恒
温変態速度式)であるが、これを連続して温度が変わる
実際の冷却パターンに適用する際は、その連続冷却パタ
ーンを極めて短時間でかつ異なる温度での恒温変態(一
定温度での変態)の組合せであると考え、その短い区間
毎の以下の(1)式で求めたパーライト体積率の変化分
を加え合わせパーライト体積率の変化を求める。
【0034】 Vp=[1−exp(−a・tn)](100−Vf )・・・(1) 但し、Vpはパーライト体積率(%)、Vfはフェライト
体積率(%)、tはパーライト変態温度での保持時間
(s)、aは鋼材成分、温度、フェライト変態終了時の
フェライト体積率及びフェライト粒径毎に決定されるパ
ラメータ、nは鋼材の成分毎に決定されるパラメータ。
【0035】特にaは下記の(2)式に基づいて定式化
すると精度よく変態速度を計算することができる。
【0036】
【数1】 上記(1)式は温度が一定の場合の変態速度式(恒温変
態速度式)であるが、この式を連続的に温度が変化する
実際の冷却パターンで適用する場合は、冷却パターンを
極めて短時間の区分に分割し、各区分内では、恒温変態
(温度一定での変態)すると仮定して、各時間区分毎に
(1)式を用いてパーライト体積率の変化量を求めて、
それらを加算することにより冷却パターンの冷却過程に
おけるパーライト体積率の変化を求める。
【0037】具体的には、図2に示すように連続冷却パ
ターンにおけるパーライト変態開始点(フェライト変態
終了点)からパーライト変態終了点までの時間を(1)
式(恒温変態速度式)が適用し得る充分短い時間間隔Δ
t毎に区分(この例ではm個に分割)し、連続冷却後に
おけるパーライト体積率Vpを(4)式に基づいて計算
する。
【0038】
【数2】 但し、ここでΔVpi、ΔXpiは、それぞれ図2のパーラ
イト変態開始点から数えてi番目の時間区分におけるパ
ーライト体積率の変化量及びパーライト変態率の変化量
である。
【0039】ここで、上記パーライト変態率の変化量Δ
piは、図3に示されるように保持温度T=Ti-1の恒
温変態曲線における保持時間をt=tiからt=ti+Δ
tに変化した場合のパーライト変態率の変化量であり、
下記の(5)式に基づいて求められる。
【0040】 ΔXpi=Xp(T=Ti,t=ti+Δt)−Xp(T=Ti,t=ti) ・・・(5) ここで(5)式中の保持時間t=tiは、図3における
保持温度T=Tiの恒温変態曲線上のパーライト変態率
がXpi-1(図2におけるパーライト変態開始点から数え
てi−1番目の時間区分における恒温変態が完了時のパ
ーライト変態率)と等しくなる保持時間であり、(3)
式より以下のようにもとめられる。
【0041】 ti={−ln(1−Xpi-1)/a(T=Ti)}1/n・・・(6) ここでaは保持温度、フェライト体積率等の関数として
予め求めたものである。
【0042】また、nも鋼材の成分毎に予め求めた定数
である。
【0043】以上のように図3から冷却パターンのi番
目の時間区分におけるパーライト変態率の変化量ΔXpi
は、保持温度T=Tiの変態曲線(実線)上で変態率が
pi-1となる時間tiを求めた後、その変態曲線上の保
持時間tiからti+Δtの間の変態率の変化量を計算に
より求めることができる。
【0044】さらにこのようにして連続的な冷却パター
ンの各時間区分における変態率の変化量を求め、順次加
算していくことにより最終的にパーライト変態開始から
終了までの冷却過程におけるパーライト変態率を求める
ことができる。
【0045】パーライト変態が終了する温度は、前述の
試験の結果、540℃であることが確認されており、上
記の計算は鋼板温度が最低540℃以下となるまで繰り
返し行う必要がある。
【0046】鋼板の材質を求めるためには、上記以外に
もベイナイト体積率を求める必要がある。
【0047】これは、予め定めたベイナイト変態モデル
により求めるが、ベイナイト変態の計算にあたっても、
最終圧延パス後のオーステナイト平均粒径da、残留歪
Δεa、及びフェライト体積率Vf、パーライト体積率V
pを考慮する必要があり、これらと前記熱延条件に基づ
いて計算を行う。このベイナイト体積率の計算は、例え
ば特開平2−290916号公報に示される従来モデル
により行なっても充分な精度が得られる。
【0048】また、これに加え、マルテンサイト体積率
も求める必要があるが、これは、これまでに求めたフェ
ライト体積率、パーライト体積率、ベイナイト体積率に
基づいて、これまでに知られているような、例えば開平
2−290916号公報に示されるモデルで求めればよ
い。
【0049】これらの方法により任意の熱延条件で製造
した熱延鋼板のフェライト、パーライト、ベイナイト、
マルテンサイト体積率を正確に求めることができる。そ
して、その計算結果に基づいて、所定の材質をえるため
の熱延条件を正確に決定することができる。
【0050】
【実施例】図4には、表1の成分の鋼片を用いて、表2
に示す条件で熱間圧延を行った場合のパーライト体積率
と従来法による計算値と実績値との関係を示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】 ここで従来法とは、特開平2−290916号公報に示
されるモデルであり、図5にそのフローチャートを示し
ている。
【0053】図4を見て分かる通り、従来法によるパー
ライト体積率の計算値は、誤差がσ=3.1%であり、
実用に耐えるほど良好な精度は得られていない。
【0054】さらに、表3、図6及び図7には、図4と
同様な成分及び製造条件で熱間圧延した場合の各圧延材
のフェライト体積率及びフェライト粒径の各実績値と従
来法によるそれらの計算値の比較を示す。従来法では、
フェライト体積率、フェライト粒径は、誤差がそれぞれ
σ=1.84%及びσ=0.35%であり、極めて良好
な精度で予測されていることがわかる。
【0055】
【表3】 以上のように従来法では、フェライト体積率及びフェラ
イト粒径は精度良く予測できるが、パーライト体積率の
予測精度が悪いという問題があった。
【0056】次に、同じ圧延材の成分において、実験に
よりパーライト変態速度を調査し、上述の(3)式のよ
うな変態モデル式を作成した。
【0057】 Xp=1−exp(−a・tn)・・・(3) 但し、上式では、パーライト変態の速度を表すパラメー
タaには、フェライト体積率、粒径の影響は考慮せず、
成分によって決まる定数とした。
【0058】また、nも成分に依存する定数である。
【0059】具体的には、例えばn及びaは、実験によ
り鋼材成分毎に表4中のn及びa1(フェライト体積
率、粒径を考慮しない場合のa値)のように求められ
る。
【0060】本発明である上記(3)のモデル式(表4
中のn及びa1を適用)を特開平2−290916号公
報に示されるモデルに組み込み、熱延条件に基づいて計
算した結果と実績値の比較結果を図8に示す。
【0061】この結果、従来モデルによる推定精度(誤
差σ=3.1%)より、本発明モデルの推定精度(誤差
σ=0.54%)は向上しており、実用に耐え得るもの
となっている。
【0062】更に上記(3)式のモデル精度を向上する
ために、特にaに及ぼす影響が高いフェライト体積率、
粒径を考慮したモデルを検討した例を表4(n及びa2
(フェライト体積率、粒径を考慮した場合のa値))に
示す。
【0063】
【表4】 この本発明である表4中のn及びa2を適用した上記
(3)のモデル式を従来モデル(特開平2−29091
6号公報に示されるモデル)に組み込み、熱延条件に基
づいてパーライト体積率を計算した結果と実績値の比較
を図9に示す。
【0064】この図9の結果から、前述の(3)式のモ
デル中のaにa1(フェライト体積率、粒径を考慮しな
い場合のa値)を適用した場合に比べて更に良好な精度
(誤差σ=0.24%)でパーライト体積率を推定でき
ることがわかる。
【0065】次に、加工性に優れた残留オーステナイト
を含む高強度鋼板を製造する際に、本発明モデルを用い
ることにより、加工性向上に有害なパーライトの生成を
回避する適正な冷却条件にて鋼材を製造することができ
加工性に優れた残留オーステナイトを含む高強度鋼板し
た結果を示す。
【0066】表1に示す成分の鋼片を用いて、表5及び
図10に示される条件で鋼板を製造した。また、これら
の製造条件で得られた鋼材の機械的性質、組織体積率を
表6に示す。
【0067】比較例として、従来モデルを用いて冷却条
件を決定し、鋼材を製造した場合の製造条件及び得られ
た鋼材の機械的性質、組織体積率を表5及び表6中のサ
ンプル9に示し、冷却パターンを図10中の点線(従来
例)に示す。
【0068】表6の材質結果から分かるように、従来モ
デルを用いた冷却条件にて製造した場合ではパーライト
が4.8%程度生成しており、このため、残留オーステ
ナイト量が3%程度と少なく、強度延性バランスもTS
×T.Elで21095Mpa%程度と充分ではなく、
また、残留オーステナイトを含む鋼板としては延性も2
8.7%と良好ではない。
【0069】これに対し、本発明モデルを用いて、延性
に悪影響を及ぼすパーライトの生成を回避するための適
正な冷却条件を決定し、この条件で製造を行った場合の
製造条件及び得られた鋼材の機械的性質、組織体積率を
それぞれ表5及び図8中のサンプル10に示し、冷却パ
ターンを図10中の実線(発明例)に示す。
【0070】ここで、本発明モデルを用いた冷却条件の
検討では、図10中のサンプル10に示すように、70
0℃からフェライト変態終了温度(パーライト変態開始
温度)である540℃の間の冷却速度を14℃/秒から
54℃/秒の間で変化させてモデル計算を行い、パーラ
イト体積率の計算値が0.1%以下となるような冷却速
度を求めた。
【0071】この際用いたパーライト変態速度式は、予
め実験により求めたもので表4中に示した鋼番Aに対し
て求めたモデル式(a2(フェライト体積率、フェライ
ト粒径の効果を考慮した場合のa値)を適用したもの)
と同じものである。
【0072】図11に、図10のサンプル10(本発明
例)に示した冷却条件を決定した際の冷却速度と本発明
モデルによるパーライト体積率の計算値の関係を示す
が、この図から700℃以下の冷却速度を40℃/秒以
上にすることにより、パーライト体積率を0.5%以下
とすることができることがわかる。
【0073】ここで、パーライト体積率の許容上限値で
ある0.5%という値は、表1(A鋼)の成分からなる
残留オーステナイトを含む鋼の加工性に悪影響を及ぼさ
ない上限量として求めた値である。
【0074】この本発明例で得られる機械的性質、組織
体積率を表6中のサンプル10に示しているが、TS×
T.Elで25000Mpa%程度と良好である。
【0075】また、実際のパーライト体積率も0%であ
り、本発明の技術により求めた冷却条件によりパーライ
トが回避されており、これによって材質が著しく向上し
ていることが分かる。このように、本技術を用いれば、
材質に大きな影響を与えるパーライトの体積率を精度よ
く求めることができ、それに基づいて効果的に所定材質
の鋼板を得るための最適冷却条件を求めることができ
る。また、それによって求めた制御冷却を実施すること
により、材質の優れた鋼板を安定して供給することがで
きる。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【発明の効果】以上に説明した発明により、熱間圧延に
より製造された鋼板のパーライト体積率を精度よく予測
することができ、それに基づいた冷却制御を行うことに
より材質の優れた鋼板を歩留りよく供給することができ
るので、自動車産業を初めとした、良質・安価な熱延鋼
板を必要とする産業に及ぼす影響は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱延鋼板のパーライト体積率計算
方法の一例を示す図である。
【図2】連続冷却パターンに本発明のパーライト恒温変
態モデルを適用する際の近似計算方法の一例を示す概念
図である。
【図3】連続冷却パターンに本発明のパーライト恒温変
態モデルを適用する際のパーライト変態率と保持時間の
関係を示す図である。
【図4】熱延鋼板のパーライト体積率の実績値と従来法
による計算値の関係を示す図である。
【図5】従来法による熱延鋼板のパーライト体積率の計
算方法を示す図である。
【図6】熱延鋼板のフェライト体積率の実測値と従来モ
デルによる計算値の関係を示す図である。
【図7】熱延鋼板のフェライト粒径の実測値と従来モデ
ルによる予測値の関係を示す図である。
【図8】熱延鋼板のパーライト体積率の実測値と本発明
モデル(aパラメータにフェライト体積率及び粒径を考
慮しない場合)による計算値の関係を示す図である。
【図9】熱延鋼板のパーライト体積率の実測値と本発明
モデル(aパラメータにフェライト体積率及び粒径を考
慮した場合)による予測値の関係を示す図である。
【図10】従来モデル及び本発明モデルで求められた冷
却パターンを示す図である。
【図11】700℃以下の冷却速度と本発明モデルによ
るパーライト体積率の関係を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通常の炭素鋼成分からなる鋳片を加熱
    後、熱間圧延し、その後、冷却する熱間圧延鋼板の製造
    方法において、鋼材の化学成分及び加熱条件に基づいて
    予め定めた初期粒径モデルにより加熱炉抽出時の圧延前
    平均オーステナイト粒径d0を求め、該d0、鋼材の化学
    成分及び圧延条件に基づいて予め定めたオーステナイト
    再結晶モデルにより各圧延パス毎にオーステナイト平均
    粒径及び残留歪を計算し、最終圧延パス後のオーステナ
    イト平均粒径da、残留歪Δεaを求め、該da、該Δ
    εa、鋼材の化学成分及び冷却条件に基づいてフェライ
    ト変態モデル及びフェライト粒径予測モデルによりフェ
    ライト体積率Vf、フェライト粒径df、フェライト変態
    終了温度Tfを求め、該Vf、該Tf、鋼材の化学成分及
    び冷却条件に基づいて下記(1)式に示すパーライト変
    態進行モデルにより冷却中のパーライト体積率Vpを求
    め、次に最終圧延パス後のオーステナイト平均粒径
    a、残留歪Δεa、フェライト体積率Vf、パーライト
    体積率Vp、鋼材の化学成分及び冷却条件に基づいて予
    め定めたベイナイト変態モデル及びマルテンサイト変態
    モデルによりベイナイト体積率Vb、マルテンサイト体
    積率Vmを求め、これらのVf、df、Vp、Vb、Vmの計
    算結果に基づいて圧延後の冷却パターンを決定し、該冷
    却パターンに基づいて圧延後の冷却制御を行うことによ
    り、所定材質の熱延鋼板を製造することを特徴とする材
    質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方法。 Vp=[1−exp(−a・tn)](100−Vf)・・・(1) 但し、Vpはパーライト体積率(%)、 Vfはフェライト体積率(%)、 tはパーライト変態温度での保持時間(s)、 aは鋼材成分、温度、フェライト変態終了時のフェライ
    ト体積率及びフェライト粒径毎に決定されるパラメー
    タ、 nは鋼材の成分毎に決定されるパラメータ。
  2. 【請求項2】 パーライト変態進行モデルにおけるパラ
    メータaが下記 (2)式であることを特徴とする請求
    項1に記載の材質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方
    法。 【数1】
JP9193305A 1997-07-04 1997-07-04 材質予測に基づいた熱間圧延鋼板の製造方法 Withdrawn JPH1121626A (ja)

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