JPH11209641A - キナクリドン系化合物顔料の製造方法 - Google Patents

キナクリドン系化合物顔料の製造方法

Info

Publication number
JPH11209641A
JPH11209641A JP10019013A JP1901398A JPH11209641A JP H11209641 A JPH11209641 A JP H11209641A JP 10019013 A JP10019013 A JP 10019013A JP 1901398 A JP1901398 A JP 1901398A JP H11209641 A JPH11209641 A JP H11209641A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
compound
quinacridone
dihydroquinacridone
aprotic polar
polar organic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10019013A
Other languages
English (en)
Inventor
Seiji Funakura
省二 船倉
Kazuhiro Sugiyama
和弘 杉山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd filed Critical Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
Priority to JP10019013A priority Critical patent/JPH11209641A/ja
Publication of JPH11209641A publication Critical patent/JPH11209641A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 キナクリドン系化合物が高収率で得られ、か
つ、従来より鮮明度が高いキナクリドン系化合物の製造
方法を提供すること。 【解決手段】 キナクリドン系化合物顔料を製造する方
法において、6,13−ジヒドロキナクリドン系化合物
の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液と、2以
上〜10容量%以下の酸素ガスとを混合して酸化し、該
ジヒドロキナクリドン系化合物をキナクリドン系化合物
に転換した後、該キナクリドン系化合物の溶媒溶液と、
該キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物とを混合
することによりキナクリドン系化合物の結晶を析出さ
せ、析出した結晶を分離することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、6,13−ジヒド
ロキナクリドン系化合物からのキナクリドン系化合物顔
料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キナクリドン系化合物は赤色系顔料とし
て公知のものであり、その6,13−ジヒドロキナクリ
ドン系化合物からの製造方法は種々ある。
【0003】例えば、(1)特公昭36−13833号
公報に記載の6,13−ジヒドロキナクリドンをアルカ
リ性のアルコール性溶媒中でm−ニトロベンゼンスルホ
ン酸ナトリウム又は多硫化ナトリウムで酸化しキナクリ
ドンに転換後、濾別する方法、(2)特公昭44−28
389号公報に記載の6,13−ジヒドロキナクリドン
をアルカリ性のα−ピロリドン溶媒中で酸素雰囲気下で
酸化しキナクリドンに転換後、冷却してキナクリドン系
化合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離する方
法、(3)特開昭50−95325号公報に記載の6,
13−ジヒドロキナクリドン系化合物を窒素等のガス中
において600〜660℃の温度とすることにより脱水
素させキナクリドン系化合物に転換し、その後冷却し捕
集する方法、(4)特公昭56−45512号公報に記
載の6,13−ジヒドロキナクリドンをアルカリ性のジ
メチルスルホキシド溶媒中で空気で酸化しキナクリドン
に転換後、極性溶媒又は酸で希釈してキナクリドン系化
合物の結晶を析出させ、析出した結晶を分離する方法、
(5)特開平8−60009号公報に記載の6,13−
ジヒドロキナクリドン系化合物をプロトン系有機物質を
含む塩基性の水性反応溶媒中で、触媒としてアントラキ
ノン−2−スルホン酸を用いて酸素で酸化しキナクリド
ン系化合物に転換後、濾別する方法、(6)特開平9−
20690号公報に記載の6,13−ジヒドロキナクリ
ドン系化合物を塩基性のプロトン系有機溶媒中で、触媒
としてアントラキノン−2−スルホン酸を用いて、空気
を吹き込み反応器排出ガス中の酸素濃度が著しい増加を
示すまで酸化しキナクリドン系化合物に転換後、酸を加
えてキナクリドン系化合物の結晶を析出させ、析出した
結晶を分離する方法等が上げられている。
【0004】しかしながら、これらは方法は、いずれも
欠点を有している。まず、(1)及び(3)は酸素を含
む気体を用いる酸化方法でないから、この酸化方法の長
所は享受出来ない。(1)はm−ニトロベンゼンスルホ
ン酸ナトリウム又は多硫化ナトリウムが6,13−ジヒ
ドロキナクリドンに対して200重量%以上必要であ
り、これは回収が困難で廃水中に流失するので、環境保
護的、経済的に不利であるという欠点を有する。
【0005】(3)は反応温度が600〜660℃と超
高温条件が必要であり、経済的に不利であるという欠点
を有する。(5)は、反応系が不均一系な上、水系であ
り、均一な連続相での反応が行える非プロトン系極性有
機溶媒溶液を用いた時の長所は享受出来ない。(5)、
(6)も触媒であるアントラキノン−2−スルホン酸を
6,13−ジヒドロキナクリドンに対して2〜2.5重
量%必要であり、これは回収が困難で廃水中に流出する
ので、環境保護的、経済的に不利であるという欠点を有
する。
【0006】さらに、これらのすべての方法では、近年
要求されている鮮明度の高いキナクリドン系化合物顔料
を得ることが不可能であった。
【0007】酸素を含む気体を用いて酸化を行う点にお
いて、本発明と最も類似する公知技術は、上記(2)及
び(4)であるが、(2)は酸化時の反応温度が180
〜200℃の高温が必要であり経済的に不利であり、ま
た近年要求されている鮮明度の高いキナクリドン系化合
物顔料を得ることが不可能であった。(4)は酸素濃度
が21容量%の空気を用いるとキナクリドンがさらに酸
化されたキナクリドンキノンが副生成し、近年要求され
ている鮮明度の高いキナクリドン系化合物顔料を得るこ
とが不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、6,13−ジヒドロキナクリドン系化合物
から酸素を含む気体を用いて酸化を行って、キナクリド
ン系化合物顔料を製造する方法において、高収率で、か
つ従来より鮮明度の高いキナクリドン系化合物顔料を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、酸化に当たり、従
来よりも低酸素濃度の酸素を含むガスと非プロトン系極
性有機溶媒とを用いることにより、高収率で、かつ従来
より鮮明度が高いキナクリドン系化合物顔料を得ること
ができることを見い出した。
【0010】しかも、この製法は触媒等の回収の困難な
副原料を用いる必要がなく、使用する非プロトン系極性
有機溶媒及び低級アルコールを用いた場合には、蒸留等
によりそれらの回収が可能であることから環境保護的、
経済的に有利であることをも見い出し、本発明を完成す
るに至った。
【0011】即ち、本発明は、次の発明を提供する。
【0012】(1) キナクリドン系化合物顔料を製造
する方法において、6,13−ジヒドロキナクリドン系
化合物の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液
と、2以上〜10容量%以下の酸素ガスとを混合して酸
化し、該ジヒドロキナクリドン系化合物をキナクリドン
系化合物に転換した後、該キナクリドン系化合物の溶媒
溶液と、該キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物
とを混合することによりキナクリドン系化合物の結晶を
析出させ、析出した結晶を分離することを特徴とするキ
ナクリドン系化合物顔料の製造方法。
【0013】(2) 6,13−ジヒドロキナクリドン
系化合物が、一般式(I)
【0014】
【化3】
【0015】(式中、X及びYは、各々独立的に、水
素、ハロゲン又は炭素原子数1〜4のアルキル基又はア
ルコキシ基を表わし、m及びnは、各々独立的に、0〜
2の整数を表わす。)で表わされる群から選ばれる1種
以上の化合物であり、キナクリドン系化合物顔料が、一
般式(II)
【0016】
【化4】
【0017】(式中、X及びYは、各々独立的に、水
素、ハロゲン又は炭素原子数1〜4のアルキル基又はア
ルコキシ基を表わし、m及びnは、各々独立的に、0〜
2の整数を表わす。)で表わされる群から選ばれる1種
以上の化合物である上記(1)記載の製造方法。
【0018】(3) 塩基性とした非プロトン系極性有
機溶媒溶液中の塩基が、アルカリ金属の水酸化物、アル
カリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物
及びアルカリ土類金属のアルコキシドからなる群から選
ばれる1種以上の塩基である上記(1)又は(2)記載
の製造方法。
【0019】(4) 6,13−ジヒドロキナクリドン
系化合物の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液
が、水及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコール
と、塩基と、非プロトン系極性有機溶媒とを含む、6,
13−ジヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした溶
媒溶液である上記(1)、(2)又は(3)記載の製造
方法。
【0020】(5) 酸素ガスで酸化する時の反応温度
が80℃〜150℃である上記(1)、(2)、(3)
又は(4)記載の製造方法。
【0021】(6) キナクリドン系化合物を結晶化し
うる化合物が、水、炭素原子数1〜4の低級アルコール
及び酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物である
上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)記載の
製造方法。
【0022】(7) 該キナクリドン系化合物の溶媒溶
液と、キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物との
混合を4分間以下の所要時間で行う上記(1)、
(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)記載の製造
方法。
【0023】(8) 6,13−ジヒドロキナクリドン
系化合物の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液
が、水及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコール
と、塩基と、非プロトン系極性有機溶媒とを含む、6,
13−ジヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした非
プロトン系極性有機溶媒溶液であり、かつ、キナクリド
ン系化合物を結晶化しうる化合物が、水、炭素原子数1
〜4の低級アルコール及び酸からなる群から選ばれる1
種以上の化合物である上記(1)、(2)、(3)、
(4)、(5)、(6)又は(7)記載の製造方法。
【0024】(9) 塩基性とした非プロトン系極性有
機溶媒溶液中の溶媒が、ジメチルスルホキシド、N−メ
チル−2−ピロリドン、又はジメチルホルムアミドから
なる群から選ばれる1種以上の非プロトン系極性有機溶
媒であり、非プロトン系極性有機溶媒の使用割合が6,
13−ジヒドロキナクリドン系化合物1重量部に対して
5〜20重量部である上記(1)、(2)、(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)記載の製造
方法。
【0025】(10) 該キナクリドン系化合物の溶媒
溶液と混合するキナクリドン系化合物を結晶化しうる化
合物が、硫酸、塩酸又は酢酸である上記(1)、
(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、
(8)又は(9)記載の製造方法。
【0026】(11) 6,13−ジヒドロキナクリド
ン系化合物を酸素ガスで酸化するに当たり、触媒の不存
在下で酸化を行う上記(1)、(2)、(3)、
(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)又は
(10)記載の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明は、キナクリドン系化合物
顔料を製造する方法において、6,13−ジヒドロキナ
クリドン系化合物の塩基性とした非プロトン系極性有機
溶媒溶液と、2以上〜10容量%以下の酸素ガスとを混
合して酸化し、該ジヒドロキナクリドン系化合物をキナ
クリドン系化合物に転換した後、該キナクリドン系化合
物の溶媒溶液と、該キナクリドン系化合物を結晶化しう
る化合物とを混合することによりキナクリドン系化合物
の結晶を析出させ、析出した結晶を分離することを特徴
とする。
【0028】本発明の製造法で使用する6,13−ジヒ
ドロキナクリドン系化合物としてはは公知慣用のものを
いずれも使用できるが、一般式(I)
【0029】
【化5】
【0030】(式中、X又はYは、各々独立的に、水
素、ハロゲン又は炭素原子数1〜4のアルキル基又はア
ルコキシ基を表わし、m及びnは、各々独立的に、0〜
2の整数を表わし、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基
を表す。)で表わされる1種以上の化合物が好ましい。
【0031】上記一般式(I)で表わされる6,13−
ジヒドロキナクリドン系化合物は、例えば、特開平5−
271154号公報に記載されているようにコハク酸ジ
メチル又はコハク酸ジエチルを縮合閉環してサクシニル
コハク酸ジメチル又はサクシニルコハク酸ジエチルを得
た後、これに、置換基を有していても良いアニリンを縮
合反応させて2,5−ジ(アリールアミノ)−3,6−
ジヒドロテレフタル酸ジアルキルエステル系化合物得た
後、特公昭60−52176号公報に記載されているよ
うにこれを芳香族溶媒中で分子内脱アルコール反応させ
て行う既知の方法によって得られる。
【0032】本発明では、まず6,13−ジヒドロキナ
クリドン系化合物の塩基性とした、非プロトン系極性有
機溶媒溶液が準備される。この塩基性とした溶媒溶液を
調製するに当たっては、通常、6,13−ジヒドロキナ
クリドン系化合物と、塩基と、溶媒として非プロトン系
有機溶媒とが用いられる。
【0033】本発明の製造方法で使用する非プロトン系
極性有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、
スルホラン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホル
トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホ
ルムアミド、ピリジン、キノリン、安息香酸メチル、ア
セトニトリル、プロピオノニトリル、アセトン、ブタノ
ン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサ
ン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジアセタ
ート、エチルアセタート、プロピルアセタート、ブチル
アセタート、イソホロン、γ−ブチロラクトン、ブチル
ホスフェート、チオフェン、テトラヒドロチオフェン等
が挙げられ、これらは、2種以上を併用することができ
る。
【0034】非プロトン系極性有機溶媒としては、なか
でもジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリド
ン、又はジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる
少なくとも1種以上の非プロトン系極性有機溶媒が好ま
しい。
【0035】上記非プロトン系有機溶媒の使用割合は、
最低限溶解する量であり、なかでも6,13−ジヒドロ
キナクリドン系化合物1重量部に対して5〜20重量部
の範囲にあることが好ましい。この範囲の上限を越える
と、最終的に得られるキナクリドン系化合物の収量がよ
り小さくなり、未反応の原料が多くなる傾向があり好ま
しくない。しかも、この様な化合物からなる顔料で、例
えば焼き付け塗料を調製しても、得られた塗膜の鮮明度
が不充分であり、好ましくない。
【0036】本発明の製造方法で使用できる上記塩基と
しては特に限定はないが、例えばアルカリ金属の水酸化
物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の
水酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド等の強塩基
性無機化合物及び有機強塩基等が挙げられ、なかでもア
ルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、
アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のアル
コキシドが好ましい。
【0037】上記強塩基性無機化合物としては、例えば
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、
カリウム−t−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリ
ウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエ
トキシド等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が特に好まし
い。
【0038】上記有機強塩基としては、例えばテトラブ
チルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム
化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−
ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[4,3,0]−
7−ノネン、グアニジン等を挙げることができる。
【0039】本発明においては、これらの塩基は、2種
以上を併用することができる。上記塩基の使用量は、特
に制限されないが、上記6,13−ジヒドロキナクリド
ン系化合物100重量部に対して10〜1000重量部
が好ましく、なかでも10〜50重量部が特に好まし
い。塩基の添加量が10重量部未満であると、6,13
−ジヒドロキナクリドン系化合物の溶解性が不充分とな
ることがあり、また1000重量部を越えると、塩基が
溶媒に溶解しにくくなり、また塩基添加による効果の増
大を期待できないことがある。
【0040】6,13−ジヒドロキナクリドン系化合物
の溶解の際には、上記非プロトン系極性有機溶媒のみを
用いることも可能であるが、水及び/又は炭素原子数1
〜4の低級アルコールが好適には併用される。6,13
−ジヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした溶媒溶
液としては、好適には、非プロトン系極性有機溶媒を主
体として、水及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコ
ールと、塩基とを含む、6,13−ジヒドロキナクリド
ン系化合物の塩基性とした溶媒溶液が用いられる。
【0041】水としては、蒸留水、イオン交換水、純
水、超純水等を用いることが出来る。炭素原子数1〜4
の低級アルコールとしては、例えばメチルアルコール、
エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−
プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−
ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ter
t−ブチルアルコール等を挙げることができる。
【0042】水及び/又は炭素原子数1〜4の低級アル
コールの使用量は、特に制限されないが、非プロトン系
極性有機溶媒100重量部に対して、通常1〜40重量
部、好ましくは5〜30重量部である。
【0043】6,13−ジヒドロキナクリドン系化合物
溶解時の温度は、通常0〜100℃で、好ましくは40
℃〜70℃である。また、塩基と水及び/又は炭素原子
数1〜4の低級アルコールの存在下で、非プロトン系極
性有機溶媒に、6,13−ジヒドロキナクリドン系化合
物を溶解させる際は、反応器内を窒素置換して溶解させ
ることが望ましい。なお、6,13−ジヒドロキナクリ
ドン系化合物を溶解させた後、必要ならばフィルターを
用いて微量に存在する不純物を除去することが望まし
い。
【0044】さらに、溶解時に陰イオン界面活性剤、陽
イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性
剤等の界面活性剤を添加することも可能である。
【0045】陰イオン界面活性剤の例としては、脂肪酸
塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホ
ン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリ
ン酸塩等を挙げることができる。陽イオン界面活性剤の
例としては、アルキルアンモニウムクロリド、トリメチ
ルアルキルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウ
ムクロリド等を挙げることができる。非イオン界面活性
剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポ
リオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等を挙げ
ることができる。両性界面活性剤の例としては、アルキ
ルアミノ酸、アルキルベタイン等を挙げることができ
る。
【0046】こうして得られた6,13−ジヒドロキナ
クリドン系化合物の塩基性とされた溶媒溶液は、酸素を
含むガスと混合され酸化される。本発明は、この時の酸
素を含むガスの酸素含有率が低酸素含有率である点に最
大の特徴を有する。即ち本発明では、2以上〜10容量
%以下の酸素含有率のガスを用いる。本発明では、便宜
上、これを「2以上〜10容量%以下の酸素ガス」と呼
ぶ。
【0047】即ち、本発明の酸化に用いるガスは、2以
上〜10容量%以下、より好ましくは2以上〜8容量%
以下、特に好ましくは4以上〜8容量%以下の酸素ガス
であり、残りの気体は反応条件下で不活性であり、例え
ば酸素/窒素あるいは酸素/アルゴン混合ガスを挙げる
ことができる。
【0048】2以上〜10容量%以下の酸素ガスは、例
えば酸素ガスと窒素ガスあるいはアルゴンガスとを混合
すること又は空気と窒素ガスとアルゴンガスを混合する
ことにより得ることができる。また、中空糸モジュール
(大日本インキ化学工業株式会社のSEPAREL)に
空気を導入することにより得ることができる。
【0049】酸化反応を速やかに進行させるため、例え
ば12容量%以上の酸素ガスを用いると触媒の使用有無
を問わず、キナクリドンからキナクリドンキノンへの酸
化が進行しキナクリドンキノンがより多く含有する様に
なるので、好ましくない。触媒の不存在下で、例えば1
容量%以下の酸素ガスを用いると、未反応原料がより多
く含有する様になるので、好ましくない。いずれにして
も、この様な顔料で、例えば焼き付け塗料を調製して
も、得られた塗膜の鮮明度が不充分であり、好ましくな
い。
【0050】上記溶媒溶液と酸素ガスとの混合を行うに
当たっては、例えば該ガスを、6,13−ジヒドロキナ
クリドン系化合物溶液中に吹き込むか、表面上に吹き付
けるか又は気包塔に代表される気液混合装置を用いる方
法を挙げることができる。
【0051】該ガスで酸化する時の反応温度は80℃〜
150℃、好ましくは90〜130℃であり、圧力下又
は大気圧下で実施する。この際の反応温度が80℃より
も低いと、目的とするキナクリドン系化合物の収率が低
下し、未反応原料が多量に残留するばかりでなく、不必
要な、対応するキナクリドンキノン系化合物も大量に生
成するので好ましくない。一方、この際の反応温度が1
50℃よりも高いと、目的とするキナクリドン系化合物
の収率が低下し、未反応原料が多量に残留するので好ま
しくない。いずれにしても、この様な顔料で、例えば焼
き付け塗料を調製しても、得られた塗膜の鮮明度が不充
分であり、好ましくない。
【0052】本発明では、触媒の不存在下で反応を行う
のが好ましい。例えば、触媒としてのキノンであるアン
トラキノン、フェナントレンキノン、ナフトキノン及び
クロラニル並びにそれらのスルホン酸、カルボン酸、ス
ルホン酸塩、カルボン酸塩、例えばアントラキノン−2
−スルホン酸は必要ではない。何故ならば、6,13
−ジヒドロキナクリドンは完全に溶解しているため、こ
れらの触媒を用いなくともキナクリドンへの酸化反応が
速やかに進行するからである。しかも、触媒の不存在下
で反応を行うと、それを回収するための特別な処理工程
を必要としないので工程数を減らす上でも有利である。
【0053】仮に、触媒併用下で12容量%以上の酸素
ガスを用いてキナクリドン系化合物を含む顔料を得る操
作を行い、低キナクリドンキノン含有率のキナクリドン
系化合物顔料が得られても、それで例えば焼き付け塗料
を調製した場合には、得られた塗膜の鮮明度が不充分と
なるため好ましくない。
【0054】なお、酸化により得られたキナクリドン系
化合物溶液は、必要ならばフィルターを用いて微量に存
在する不純物を除去することが望ましい。
【0055】本発明では、キナクリドン系化合物の溶媒
溶液と、「キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合
物」とを混合することにより、結晶化が行われる。
【0056】「キナクリドン系化合物を結晶化しうる化
合物」としては、例えば前記溶液中のキナクリドン系化
合物の液媒体への溶解度等を低下させたり、不溶化させ
る様な作用を有する、公知慣用の化合物が使用できる。
【0057】キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合
物としては、例えば上記した様な、水、炭素原子数1〜
4の低級アルコールが挙げられる。尚、酸としては、公
知慣用な無機酸、有機酸が挙げられるが、なかでも硫
酸、塩酸、酢酸が好ましい。
【0058】この様なキナクリドン系化合物を結晶化し
うる化合物としては、酸化することで得られた溶液が、
水及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコールと、塩
基と、非プロトン系極性有機溶媒とを含む6,13−ジ
ヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした溶媒溶液を
酸化して得られた、キナクリドン系化合物の溶媒溶液で
ある場合には、キナクリドン系化合物を結晶化しうる化
合物が、水、炭素原子数1〜4の低級アルコール及び酸
からなる群から選ばれる1種以上の化合物を用いるのが
良い。
【0059】勿論、キナクリドン系化合物を結晶化しう
る化合物としては、異なる2種以上の化合物を併用する
ことができる。通常これらは、併用されるが、水と酸の
みから構成される場合の方が、溶媒回収等の手間が少な
いので、より好ましい。
【0060】キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合
物、特に、水、炭素原子数1〜4の低級アルコール及び
酸からなる群から選ばれる1種以上の化合物(以下、
「水、低級アルコール及び/又は酸」と略記する場合が
ある)と、キナクリドン系化合物の溶媒溶液とを混合す
る際の、これらの温度は、0〜100℃、好ましくは1
0〜60℃である。
【0061】この際、酸の使用量は塩基に対して0.7
0〜1.1当量、好ましくは0.80〜1.05当量で
あり、水及び/または炭素原子数1〜4の低級アルコー
ルの使用量は、非プロトン系極性有機溶剤100重量部
に対して、通常60〜400重量部、好ましくは100
〜240重量部である。
【0062】また、酸化後のキナクリドン系化合物溶液
と、水、低級アルコール及び/又は酸に代表される「キ
ナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物」との混合
は、所要時間4分間以下の短時間で行うことが好まし
い。何故なら、混合の所要時間が4分間より長い場合に
は、鮮明度の高い顔料が得られにくいからである。
【0063】これらを短時間で完全に混合できるよう
に、例えばバッチ式では、水、低級アルコール及び/又
は酸を4分以内の短時間でキナクリドン系化合物溶液中
への投入できる装置と共にフルゾーン攪拌羽等の高効率
攪拌羽を有する反応釜を用いることが好ましい。また、
例えば連続式では、エジェクター等を用いて、瞬時にキ
ナクリドン系化合物溶液と水、低級アルコール及び/又
は酸とを混合できる装置を用いることが好ましい。
【0064】キナクリドン系化合物溶液と、水、低級ア
ルコール及び/又は酸に代表される「キナクリドン系化
合物を結晶化しうる化合物」との混合後、顔料を濾過分
離する前に、析出した顔料結晶型や顔料粒子径を整える
ために、5〜100℃、好ましくは15〜70℃の温度
において5分〜10時間、好ましくは20分〜6時間攪
拌して、充分に均一な顔料懸濁液とすることが好まし
い。
【0065】さらに、酸を加えて中和した場合は攪拌し
て充分に均一な顔料懸濁液とした後、水を加えて非プロ
トン系極性有機溶媒の濃度を60重量%以下とすること
が好ましい。
【0066】上記顔料懸濁液は、ヌッチェ、フィルター
プレス等の濾過機によってキナクリドン系化合物顔料を
濾別する。次に、中性、酸性、又はアルカリ性の湯、又
は水で洗浄することが好ましい。
【0067】濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾
燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等に
より、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるい
は連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱
型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライアー等があ
る。また、乾燥後の粉砕としては、箱型乾燥機、バンド
乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料が塊状等のとな
った際に顔料を粉末化するために通常行うものであり、
例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミ
ル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0068】本発明の製造法で得られるキナクリドン系
化合物は、上記一般式(I)のものを用いた場合には、
一般式(II)
【0069】
【化6】
【0070】(式中、X又はYは、各々独立的に、水
素、ハロゲン又は炭素原子数1〜4のアルキル基又はア
ルコキシ基を表わし、m及びnは、各々独立的に、0〜
2の整数を表わし、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基
を表す。)で表わされる1種以上の化合物となる。
【0071】得られたキナクリドン系化合物顔料中の副
生成物であるキナクリドンキノン系化合物は、塩基性の
非プロトン系極性有機溶剤の不溶成分として定量するこ
とができる。また、原料の6,13−ジヒドロキナクリ
ドン系化合物及びキナクリドン系化合物の含有量は、例
えば特開平7−18193号公報に記載されているよう
に、得られたキナクリドン系化合物顔料を濃硫酸中に溶
解させ、その吸光度から定量することができる。
【0072】また、特に小さい粒子径の顔料を得るため
に、キナクリドン系化合物溶液と、水、低級アルコール
及び/又は酸との混合の前又は後、好ましくは前に結晶
成長防止剤を添加することも可能である。
【0073】結晶成長防止剤としては、当該技術分野に
おいてよく知られているキナクリドン誘導体が挙げら
れ、例えば、キナクリドンのフタルイミドメチル誘導
体、キナクリドンのスルホン酸誘導体、キナクリドンの
N−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、キナクリドン
のN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド
誘導体等がある。
【0074】結晶成長防止剤の添加量は、有機粗顔料1
00重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好まし
くは0.5〜5重量部である。結晶成長防止剤の添加
は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の
向上、インキ及び塗料等の粘度特性を向上にも寄与す
る。
【0075】本発明の製造方法で得られる顔料は、高い
鮮明度と従来とは異なる色相角を有するので、各種プラ
スチック、塗料、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電
子トナー、カラーフィルター、ジェットインキ、熱転写
インキなどの着色に適するものである。尚、これら用途
において、焼き付け塗料の着色材として、本発明で得ら
れた顔料を用いると、特に優れた鮮明性が発揮される。
【0076】
【実施例】以下、実施例、参考例及び比較例を用いて、
本発明を更に詳細に説明する。以下の例において、
「%」は、特に断りのない限り、『重量%』を表わす。
【0077】(実施例1)6,13−ジヒドロキナクリ
ドン30.0gと10%の水を含有するジメチルスルホ
キシド450.0gと水酸化ナトリウム8.8gを攪拌
機、温度計、およびコンデンサーを備えた1Lフラスコ
に秤リ取り、窒素雰囲気下、60℃で0.5時間攪拌し
て、6,13−ジヒドロキナクリドンが溶解して黄緑色
の溶液となったことを確認した。
【0078】次に、この溶液の温度を120℃にして、
攪拌下で7容量%酸素ガスを毎分2Lの割合で大気圧下
で吹き込んだ。吹き込み開始と同時に青色の溶液とな
り、8時間吹き込みを行った。この溶液を30℃にして
攪拌下で30℃の50%硫酸16.5gを20秒間で投
入した。中和熱による発熱で温度は51℃に上昇した。
【0079】この温度で充分に均質なスラリー状を保つ
ように2時間攪拌を行った。その後、450gの水を攪
拌下で投入してスラリー濃度を下げ、濾過した、次に濾
取した残渣を60℃の湯を用いて洗浄し、次に乾燥させ
て鮮明な赤色のγ型無置換キナクリドン顔料29.5g
を得た。
【0080】該顔料は無置換キナクリドンが97%、キ
ナクリドンキノンが2%、6,13−ジヒドロキナクリ
ドンが1%の組成であった。
【0081】(比較例1)実施例1で使用した7容量%
酸素ガスを空気(21容量%酸素ガス)に変えて実験を
行った。その結果暗赤色のγ型無置換キナクリドン顔料
29.8gを得た。該顔料は無置換キナクリドンが92
%、キナクリドンキノンが6%、ジヒドロキナクリドン
が2%の組成であった。
【0082】(比較例2)6,13−ジヒドロキナクリ
ドン30.0gとメチルアルコール160.0gと水酸
化ナトリウム12.0gを攪拌機、温度計を備えた1L
オートクレーブに秤リ取り、窒素雰囲気下、60℃で
1.0時間攪拌した。次に200gの水と0.8gのア
ントラキノン−2−スルホン酸を添加した。そして、空
気を毎分2Lの割合で0.2MPaの圧力下で吹き込ん
だ。吹き込みを8時間行った後、スラリーを濾過した
後、濾取した残渣を60℃の湯を用いて洗浄した後、乾
燥させて赤色のγ型無置換キナクリドン顔料29.0g
を得た。該顔料は無置換キナクリドンが98重量%、キ
ナクリドンキノンが1%、6,13−ジヒドロキナクリ
ドンが1%の組成であった。
【0083】(実施例2)2,9−ジメチル−6,13
−ジヒドロ−キナクリドン30.0gと10%の水を含
有するジメチルスルホキシド300.0gと水酸化カリ
ウム12.3gを攪拌機、温度計、およびコンデンサー
を備えた1Lフラスコに秤リ取り、窒素雰囲気下、60
℃で0.5時間攪拌して、2,9−ジメチル−6,13
−ジヒドロキナクリドンが溶解して黄緑色の溶液となっ
たことを確認した。
【0084】次に、この溶液の温度を110℃にして、
攪拌下で4容量%酸素ガスを毎分4Lの割合で大気圧下
で吹き込んだ。吹き込み開始と同時に青色の溶液とな
り、8時間吹き込みを行った。この溶液を10℃にして
攪拌下にで10℃の15%塩酸42.8gを3分間で投
入した。中和熱による発熱で温度は31℃に上昇した。
【0085】この温度で充分に均質なスラリー状を保つ
ように30分間攪拌を行った。その後、300gの水を
攪拌下で投入してスラリー濃度を下げ、濾過し、次に濾
取した残渣を60℃の湯を用いて洗浄し、次に乾燥させ
て鮮明なマゼンタ色のβ型2,9−ジメチルキナクリド
ン顔料29.5gを得た。
【0086】該顔料は2,9−ジメチルキナクリドンが
98%、2,9−ジメチルキナクリドンキノンが1%、
2,9−ジメチル−6,13−ジヒドロキナクリドンが
1%の組成であった。
【0087】(比較例3)実施例2で使用した4容量%
酸素ガスを1容量%酸素ガスに変えて実験を行った。そ
の結果マゼンタ色のβ型2,9−ジメチルキナクリドン
顔料29.8gを得た。該顔料は2,9−ジメチルキナ
クリドンが30重量%、2,9−ジメチルキナクリドン
キノンが1%、2,9−ジメチル−6,13−ジヒドロ
キナクリドンが69%の組成であった。
【0088】(比較例4)2,9−ジメチル−6,13
−ジヒドロ−キナクリドン30.0gとメチルアルコー
ル160.0gと水酸化ナトリウム12.0gを攪拌
機、温度計を備えた1Lオートクレーブに秤リ取り、窒
素雰囲気下、60℃で1.0時間攪拌した。そして、6
0℃で空気を毎分2Lの割合で0.2MPaの圧力下で
吹き込んだ。吹き込みを8時間行った後、常圧に戻し、
水160gを加えてマゼンタ色のβ型2,9−ジメチル
キナクリドン顔料29.0gを得た。該顔料は2,9−
ジメチルキナクリドンが25%、2,9−ジメチルキナ
クリドンキノンが1%、2,9−ジメチル−6,13−
ジヒドロキナクリドンが74%の組成であった。
【0089】(実施例3)4,11−ジクロロ−6,1
3−ジヒドロ−キナクリドン30.0gと10%の水を
含有するジメチルホルムアミド300.0gと水酸化ナ
トリウム7.0gを攪拌機、温度計、およびコンデンサ
ーを備えた1Lフラスコに秤リ取り、窒素雰囲気下、6
0℃で0.5時間攪拌して、4,11−ジクロロ−6,
13−ジヒドロキナクリドンが溶解して黄緑色の溶液と
なったことを確認した。
【0090】次に、この溶液の温度を110℃にして、
攪拌下で10容量%酸素ガスを毎分4Lの割合で大気圧
下で吹き込んだ。吹き込み開始と同時に青色の溶液とな
り、8時間吹き込みを行った。この溶液を50℃にして
攪拌下で30℃の80%酢酸12.5gを20秒間で投
入した。中和熱による発熱で温度は61℃に上昇した。
【0091】この温度で充分に均質なスラリー状を保つ
ように4時間攪拌を行った。その後、300gの水を攪
拌下で投入してスラリー濃度を下げ、濾過し、次に濾取
した残渣を60℃の湯を用いて洗浄し、次に乾燥させて
鮮明な赤色のβ型4,11−ジクロロキナクリドン顔料
29.5gを得た。
【0092】該顔料は4,11−ジクロロキナクリドン
が96%、4,11−ジクロロキナクリドンキノンが3
%、4,11−ジクロロ−6,13−ジヒドロキナクリ
ドンが1%の組成であった。
【0093】(実施例4)6,13−ジヒドロキナクリ
ドン30.0gとN−メチル−2−ピロリドン450.
0gと25%ナトリウムメチラートのメチルアルコール
溶液47.6gを攪拌機、温度計、およびコンデンサー
を備えた1Lフラスコに秤リ取り、窒素雰囲気下、60
℃で0.5時間攪拌して、6,13−ジヒドロキナクリ
ドンが溶解して黄緑色の溶液となったことを確認した。
【0094】次に、この溶液の温度を120℃にして、
攪拌下で3容量%酸素ガスを毎分2Lの割合で大気圧下
で吹き込んだ。吹き込み開始と同時に青色の溶液とな
り、6時間吹き込みを行った。この溶液を20℃にして
攪拌下で20℃のメチルアルコール450.0gを4分
間で投入した。希釈熱による発熱で温度は30℃に上昇
した。
【0095】この温度で充分に均質なスラリー状を保つ
ように1時間攪拌を行った。その後、濾過を行い、次に
濾取した残渣を60℃の湯を用いて洗浄し、次に乾燥さ
せて赤紫色のβ型無置換キナクリドン顔料29.5gを
得た。
【0096】該顔料は無置換キナクリドンが98%、キ
ナクリドンキノンが1%、6,13−ジヒドロキナクリ
ドンが1%の組成であった。
【0097】(実施例5)6,13−ジヒドロキナクリ
ドン15.0gと4,11−ジクロロ−6,13−ジヒ
ドロ−キナクリドン15.0gと10%の水を含有する
ジメチルスルホキシド450.0gと水酸化ナトリウム
8.8gを攪拌機、温度計、およびコンデンサーを備え
た1Lフラスコに秤リ取り、窒素雰囲気下、60℃で
0.5時間攪拌して、6,13−ジヒドロキナクリドン
が溶解して黄緑色の溶液となったことを確認した。
【0098】次に、この溶液の温度を120℃にして、
攪拌下で5容量%酸素ガスを毎分2Lの割合で大気圧下
で吹き込んだ。吹き込み開始と同時に青色の溶液とな
り、8時間吹き込みを行った。この溶液を30℃にして
攪拌下で30℃の50%硫酸16.5gを20秒間で投
入した。中和熱による発熱で温度は51℃に上昇した。
【0099】この温度で充分に均質なスラリー状を保つ
ように2時間攪拌を行った。その後、450gの水を攪
拌下で投入してスラリー濃度を下げ、濾過した。次に濾
取した残渣を60℃の湯を用いて洗浄し、次に乾燥させ
て鮮明な赤色の無置換キナクリドンと4,11−ジクロ
ロキナクリドンの固溶体顔料29.5gを得た。
【0100】該顔料は無置換キナクリドンと4,11−
ジクロロキナクリドンが97重量%、キナクリドンキノ
ンと4,11−ジクロロキナクリドンキノンが2重量
%、6,13−ジヒドロキナクリドンと4,11−ジク
ロロ−6,13−ジヒドロキナクリドンが1重量%の組
成であった。
【0101】最適化された本発明の製造方法で得られた
上記各実施例の顔料は、従来の製法で得られた顔料や、
最適化されていない本発明の製造方法で得られた顔料に
比べて、よりキナクリドン系化合物顔料の含有率が高か
った。
【0102】(試験例)《塗料試験》 <メラミンアルキッド焼付塗料の調製> (色エナメルの調製)各実施例及び各比較例で得た各々
の顔料4.0g、アルキッド樹脂(大日本インキ化学工
業株式会社製「ベッコゾールJ−524−IM−6
0」)16.0g、キシレン75%とn−ブタノール2
5%からなる混合溶剤10.0g及びガラスビーズ(3
mmφ)80gを容量100mlのガラス瓶に入れ、ペ
イントコンディショナーを用いて1時間分散させた後、
同じアルキッド樹脂30.2g及びメラミン樹脂(大日
本インキ化学工業株式会社製「スーパーベッカミンL−
117−60」)19.8gを追加し、ペイントコンデ
ィショナーを用いて更に10分間分散させて色エナメル
を得た。
【0103】<塗料の鮮明度の評価>評価方法:色エナ
メルをそれぞれアート紙上にアプリケータを用いてウェ
ット膜厚が150μmとなるように塗布した後、130
℃で20分間焼き付けて試験片を得、得られた試験片を
分光光度計(米国データカラーインターナショナル社製
の「SPECTRAFLASH SF500」)を用い
て測色し、色エナメル塗膜の彩度を表すC*値を求め、
対応する実施例と比較例について、以下のようにそれぞ
れの差を算出して、結果を表1にまとめて示した。
【0104】鮮明度差△C*=(実施例のC*値)−(比
較例のC*値)
【0105】
【表1】
【0106】表1に示した結果から、各実施例で得た顔
料は、メラミンアルキッド焼付塗料に用いた場合、対応
する比較例の顔料に比べて鮮明であることが明らかであ
る。尚、実施例3〜5の顔料も、対応する従来技術で製
造したものに比べて極めて優れた鮮明性を有しているこ
とが確認された。
【0107】
【発明の効果】本発明の製造方法は、特定範囲の酸素濃
度を有する気体と非プロトン系極性有機溶媒とを、ジヒ
ドロキナクリドン系化合物の酸化に用いるので、高収率
でキナクリドン系化合物を得ることが出来、しかも従来
より鮮明度が高いキナクリドン系化合物顔料が得られる
という格別顕著な効果を奏する。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キナクリドン系化合物顔料を製造する方
    法において、6,13−ジヒドロキナクリドン系化合物
    の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液と、2以
    上〜10容量%以下の酸素ガスとを混合して酸化し、該
    ジヒドロキナクリドン系化合物をキナクリドン系化合物
    に転換した後、該キナクリドン系化合物の溶媒溶液と、
    該キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物とを混合
    することによりキナクリドン系化合物の結晶を析出さ
    せ、析出した結晶を分離することを特徴とするキナクリ
    ドン系化合物顔料の製造方法。
  2. 【請求項2】 6,13−ジヒドロキナクリドン系化合
    物が、一般式(I) 【化1】 (式中、X及びYは、各々独立的に、水素、ハロゲン又
    は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表
    わし、m及びnは、各々独立的に、0〜2の整数を表わ
    す。)で表わされる群から選ばれる1種以上の化合物で
    あり、キナクリドン系化合物顔料が、一般式(II) 【化2】 (式中、X及びYは、各々独立的に、水素、ハロゲン又
    は炭素原子数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基を表
    わし、m及びnは、各々独立的に、0〜2の整数を表わ
    す。)で表わされる群から選ばれる1種以上の化合物で
    ある請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒
    溶液中の塩基が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金
    属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物及びア
    ルカリ土類金属のアルコキシドからなる群から選ばれる
    1種以上の塩基である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 6,13−ジヒドロキナクリドン系化合
    物の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液が、水
    及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコールと、塩基
    と、非プロトン系極性有機溶媒とを含む、6,13−ジ
    ヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした溶媒溶液で
    ある請求項1、2又は3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 酸素ガスで酸化する時の反応温度が80
    ℃〜150℃である請求項1、2、3又は4記載の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 キナクリドン系化合物を結晶化しうる化
    合物が、水、炭素原子数1〜4の低級アルコール及び酸
    からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項
    1、2、3、4又は5記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 該キナクリドン系化合物の溶媒溶液と、
    キナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物との混合を
    4分間以下の所要時間で行う請求項1、2、3、4、5
    又は6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 6,13−ジヒドロキナクリドン系化合
    物の塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒溶液が、水
    及び/又は炭素原子数1〜4の低級アルコールと、塩基
    と、非プロトン系極性有機溶媒とを含む、6,13−ジ
    ヒドロキナクリドン系化合物の塩基性とした非プロトン
    系極性有機溶媒溶液であり、かつ、キナクリドン系化合
    物を結晶化しうる化合物が、水、炭素原子数1〜4の低
    級アルコール及び酸からなる群から選ばれる1種以上の
    化合物である請求項1、2、3、4、5、6又は7記載
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 塩基性とした非プロトン系極性有機溶媒
    溶液中の溶媒が、ジメチルスルホキシド、N−メチル−
    2−ピロリドン、又はジメチルホルムアミドからなる群
    から選ばれる1種以上の非プロトン系極性有機溶媒であ
    り、非プロトン系極性有機溶媒の使用割合が6,13−
    ジヒドロキナクリドン系化合物1重量部に対して5〜2
    0重量部である請求項1、2、3、4、5、6、7又は
    8記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 該キナクリドン系化合物の溶媒溶液と
    混合するキナクリドン系化合物を結晶化しうる化合物
    が、硫酸、塩酸又は酢酸である請求項1、2、3、4、
    5、6、7、8又は9記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 6,13−ジヒドロキナクリドン系化
    合物を酸素ガスで酸化するに当たり、触媒の不存在下で
    酸化を行う請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9
    又は10記載の製造方法。
JP10019013A 1998-01-30 1998-01-30 キナクリドン系化合物顔料の製造方法 Pending JPH11209641A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10019013A JPH11209641A (ja) 1998-01-30 1998-01-30 キナクリドン系化合物顔料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10019013A JPH11209641A (ja) 1998-01-30 1998-01-30 キナクリドン系化合物顔料の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11209641A true JPH11209641A (ja) 1999-08-03

Family

ID=11987624

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10019013A Pending JPH11209641A (ja) 1998-01-30 1998-01-30 キナクリドン系化合物顔料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11209641A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007154212A (ja) * 2007-02-16 2007-06-21 Fujifilm Corp 有機顔料分散液およびその製造方法
EP2058373A2 (en) 2003-09-22 2009-05-13 FUJIFILM Corporation Organic pigment fine-particle, and method of producing the same
CN101829570A (zh) * 2010-05-17 2010-09-15 南通市争妍颜料化工有限公司 颜料红3bl缩合工艺中催化剂铜粉的预处理工艺
CN102942802A (zh) * 2012-11-23 2013-02-27 江苏双乐化工颜料有限公司 颜料红122的制备方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2058373A2 (en) 2003-09-22 2009-05-13 FUJIFILM Corporation Organic pigment fine-particle, and method of producing the same
JP2007154212A (ja) * 2007-02-16 2007-06-21 Fujifilm Corp 有機顔料分散液およびその製造方法
CN101829570A (zh) * 2010-05-17 2010-09-15 南通市争妍颜料化工有限公司 颜料红3bl缩合工艺中催化剂铜粉的预处理工艺
CN102942802A (zh) * 2012-11-23 2013-02-27 江苏双乐化工颜料有限公司 颜料红122的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH01213366A (ja) 新規顔料およびそれらの使用方法
JPH1036699A (ja) キナクリドン顔料の製造方法
JPH0680898A (ja) フタロシアニン顔料を基礎とする顔料調製物の製造方法
KR19990023309A (ko) 퀴나크리돈 계열의 혼합된 결정 안료
JP3055365B2 (ja) 2,5−ジ(アリールアミノ)−3,6−ジヒドロテレフタル酸ジアルキルエステル類の製造法およびこれを中間体とするキナクリドン類の製造法
JPH11130974A (ja) 有機顔料の製造方法
US4812568A (en) Process for the preparation of 6,13-dihydroquinacridones and quinacridones
JPH11209641A (ja) キナクリドン系化合物顔料の製造方法
US5393339A (en) Preparation of phthalocyanine pigments
JPH0860009A (ja) 水性媒質中でのジヒドロキナクリドン類からキナクリドン類の製造方法
JP4563804B2 (ja) キナクリドン顔料を製造するための酸化法
EP0764630B1 (en) Process for the preparation of dialkyl succinylsuccinates
JP3850513B2 (ja) キナクリドン顔料を製造するための酸化方法
KR20100016078A (ko) 유기 안료를 마감처리하는 방법
JP2930774B2 (ja) キノフタロンの製造方法
KR20100053602A (ko) 유기 안료의 형성 방법
JPH09110867A (ja) キナクリドン系化合物の製造法及び精製法
JPH11246784A (ja) キナクリドンキノン系化合物の製造方法
EP0567651B1 (en) Process for preparing pigment from 2,9-dimethylquinacridone compound
KR20010006860A (ko) 디옥사진 화합물의 제조 방법
JP2780706B2 (ja) 6,13−ジヒドロキナクリドンの製造法
JP3575704B2 (ja) ジオキサジン化合物の製造法
EP0675170B1 (en) Process for the production of copper phtalocyanine pigment
US6649758B2 (en) Preparation of trans-thiazineindigo pigments
US20100063288A1 (en) Preparation of pigment red 149